説明

廃液浄化装置及び方法

【課題】物理的な手法により汚れ成分を沈殿させて分離することにより、廃液中に汚れ成分として金属化合物のような重量物を含む場合でも汚れ成分を効率的に分離回収する。
【解決手段】廃液に凝集剤としてフェライト粉を注入する凝集剤注入装置10と、フェライト粉が混入された廃液に回転磁界をかけて攪拌する凝集反応装置20と、凝集反応装置からの廃液が注入され、フェライト粉を沈殿させて上部から浄化された液体を取り出し可能とする沈殿槽30とを備える。フェライト粉表面に廃液中の汚れ成分を付着させて沈殿槽にて沈殿させるため、汚れ成分に金属化合物が含まれていても浄化機能を果たさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工油、水溶性冷却液等の廃液を浄化する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、水系産業廃液を物理的手法により処理し、再利用可能な清澄かつ活性化された水を生成する装置が開示されている。具体的には、下記特許文献1の装置は、界面活性剤注入装置に貯留された水系産業廃液を循環管路によって還流し、循環管路中に乱流形成部と磁気処理部とを設けて、循環管路中の廃液を乱流によって攪拌するとともに磁化することにより、廃液中の油脂及び汚泥の粒子に微小気泡を付着して、界面活性剤注入装置内で水系産業廃液中の油脂及び汚泥の粒子を浮上させて分離回収するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−289317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、汚れ成分が金属化合物のような重量物の場合、粒子に微小気泡が付着しても界面活性剤注入装置内での浮力が充分ではなく、効率的な分離回収ができない問題がある。
本発明は、このような問題に鑑み、物理的な手法により汚れ成分を沈殿させて分離することにより、廃液中に汚れ成分として金属化合物のような重量物を含む場合でも汚れ成分を効率的に分離回収することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1発明は、廃液に凝集剤として磁性体粉を注入する磁性体粉注入装置と、前記磁性体粉が混入された廃液に回転磁界をかけて磁性体粉を磁化すると共に攪拌する凝集反応装置と、凝集反応装置からの廃液が注入され、磁性体粉を沈殿させて上部から浄化された液体を取り出し可能とする沈殿槽とを備えることを特徴とする廃液浄化装置である。
第1発明によれば、磁性体粉表面に廃液中の汚れ成分を付着させて沈殿槽にて沈殿させるため、汚れ成分に金属化合物が含まれていても浄化機能を果たさせることができる。
しかも、廃液中の汚れ成分を沈殿させて液体との分離を行うので、汚れ成分を浮上させるものに比べて汚れ成分の除去作業を容易にすることができる。ここでは凝集剤が磁性体粉であるため、一般的な凝集剤に比べて比重が高く、汚れ成分が比重の低いもの、例えばセラミックスであっても、汚れ成分を付着させた磁性体粉の沈殿槽での沈殿を早めることができる。
【0006】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記磁性体粉は、フェライト粉であることを特徴とする。
第2発明によれば、フェライト粉表面には微細な空洞があるため、凝集剤としての表面積を大きくすることができ、廃液中の汚れ成分を効率的に付着させることができる。
【0007】
本発明の第3発明は、上記第1又は2発明において、前記凝集反応装置は、三相交流電流を供給されて内部に回転磁界を発生するように円筒状に配置されたコイルを備えることを特徴とする。
第3発明によれば、フェライト粉が混入された廃液が回転磁界を受けることにより攪拌されるため、廃液が回転磁界中を通過している時間が長く維持され、フェライト粉表面への汚れ成分の付着を促進させることができる。
【0008】
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記凝集反応装置は、前記円筒状配置のコイルの円筒内部に、廃液を通過させる螺旋状のパイプを備えることを特徴とする。
第4発明によれば、フェライト粉が混入された廃液が回転磁界を受けることにより攪拌され、しかもパイプが螺旋状とされているため、廃液が回転磁界中を通過している時間が長く維持され、フェライト粉表面への汚れ成分の付着を促進させることができる。
【0009】
本発明の第5発明は、上記第1乃至4発明のいずれかにおいて、前記凝集反応装置は、前記回転磁界を発生させるための交流電流の周波数を任意に切り換える周波数変換装置を備えることを特徴とする。
第5発明によれば、回転磁界を発生させるための交流電流の周波数を切り換えることができ、例えば汚れ成分に応じた周波数に設定して効率的に汚れ成分を磁性体粉の表面に付着させることができる。
【0010】
本発明の第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記沈殿槽の下部には磁石が設けられていることを特徴とする。
第6発明によれば、沈殿槽下部に磁石を設けたので、汚れ成分が付着した磁性体粉を重力と磁石による吸引力とによって速やかに沈殿させることができ、廃液の浄化効率を高めることができる。
【0011】
本発明の第7発明は、上記第1乃至第6発明のいずれかにおいて、前記沈殿槽にて沈殿された磁性体粉を受けて、磁性体粉の塊を生成する遠心分離機を備えることを特徴とする。
第7発明によれば、磁性体粉を回収して再生処理を施せば磁性体粉を再利用することができる。
【0012】
本発明の第8発明は、上記第7発明において、前記遠心分離機は、回転中心が縦方向に設定されたフィルタ製の回転ドラムと、該回転ドラム内に摺動可能に配置され、前記回転ドラムと同軸上で相対回転して回転ドラム内壁に付着した回収物を下方に掻き落とすスクレーパとを備え、前記回転ドラム内に沈殿槽からの磁性体粉を供給し、回転ドラムを回転させると共に前記スクレーパを回転ドラムに対して相対回転させることにより、回転ドラムの外周側から液体を取り出し、且つスクレーパの下方から回収物としての磁性体粉を取り出すことを特徴とする。
第8発明によれば、スクレーパは回転ドラム内壁に付着した回収物を下方に掻き落とすので、遠心分離機を作動させながら連続的に回収物を回収することができる。
【0013】
本発明の第9発明は、上記第8発明において、前記回転ドラム及びスクレーパは、スクレーパが回転ドラムと同方向で、且つ回転ドラムより高速回転されることにより、回転ドラムに対して相対回転される回転機構を備えることを特徴とする。
第9発明によれば、回転ドラム及びスクレーパを共に回転させながら両者間に相対回転を生じさせるので、遠心分離機を作動させながらの連続的な回収物の回収を実現することができる。
【0014】
本発明の第10発明は、上記第8又は9発明において、前記回転ドラムの内壁と前記スクレーパの外周端との間に所定の隙間が形成されるように設定し、前記沈殿槽からの磁性体粉は前記回転ドラムの下部に供給され、前記回転ドラムの外周側に流出せず残った液体は前記隙間を通って回転ドラムの上部から流出させることを特徴とする。
第10発明によれば、上記隙間には回転ドラムを成すフィルタを通過できなかった磁性体粉が積層され、その積層体を通って磁性体粉中の液体が濾過され、濾過して下から上へ押し出された液体が回転ドラムの上部から取り出される。このため、回転ドラムのフィルタに加えて積層された磁性体粉によっても液体が濾過され、遠心分離機としての濾過能力を高めることができる。
【0015】
本発明の第11発明は、上記8乃至10発明のいずれかにおいて、前記回転ドラムの外周には任意のタイミングで回転ドラム外周に向けて所定圧力の気体を噴出する洗浄器を備え、その噴出された気体により回転ドラムの内壁に付着した磁性体粉を除去させることを特徴とする。
第11発明によれば、任意のタイミングで洗浄器から噴出された気体により回転ドラム内壁に付着した磁性体粉が除去されるため、磁性体粉が回転ドラム内壁に付着して固まることを防止することができる。従って、遠心分離機の性能を維持することができる。
【0016】
本発明の第12発明は、上記第1乃至11発明のいずれかにおいて、前記凝集反応装置に供給される廃液には、界面活性剤が注入されることを特徴とする。
第12発明によれば、廃液に界面活性剤が注入されることにより磁性体粉表面への廃液の付着が良くなり、磁性体粉表面への汚れ成分の付着を促進させることができる。
【0017】
本発明の第13発明は、上記第1乃至第12発明のいずれかにおいて、廃液を生じる機能装置に付属させて貯液槽を設け、機能装置からの廃液を貯液槽に貯え、前記凝集反応装置に供給すると共に、前記沈殿槽から取り出される浄化された液体を貯液槽に貯えることを特徴とする。
第13発明によれば、機能装置に付属する貯液槽に廃液浄化機能を循環系として設けたので、廃液の浄化機能を簡潔に構成することができる。
【0018】
本発明の第14発明は、抽出した廃液中に凝集剤として磁性体粉を注入し、磁性体粉が混入された廃液に回転磁界をかけて攪拌し、攪拌後の廃液を沈殿槽に入れて磁性体粉を沈殿させ、沈殿槽の上部から浄化された液体を取り出すことを特徴とする廃液浄化方法である。
第14発明によれば、磁性体粉に廃液中の汚れ成分を付着させて沈殿槽にて沈殿させるため、汚れ成分に金属化合物が含まれていても浄化機能を果たさせることができる。
しかも、廃液中の汚れ成分を沈殿させて液体との分離を行うので、汚れ成分を浮上させるものに比べて汚れ成分の除去作業を容易にすることができる。
【0019】
本発明の第15発明は、上記第14発明において、前記磁性体粉は、フェライト粉であることを特徴とする。
第15発明によれば、フェライト粉表面には微細な空洞があるため、凝集剤としての表面積を大きくすることができ、廃液中の汚れ成分を効率的に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る廃液浄化装置の一実施形態の配管図である。
【図2】上記実施形態における遠心分離機の部分断面平面図である。
【図3】図2のIII―III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1の実施形態は、鍛造装置或いは転造装置(本発明における機能装置に相当)において加工油として使用され、排出される使用済の加工油を浄化するための装置に本発明を適用した場合を示す。
図中、50は上記機能装置(不図示)に付属され、上記使用済の加工油を貯える貯油槽(本発明における貯液槽に相当)であり、この貯油槽50は機能装置からの加工油を傾斜面部51で受け、ここで機械加工時に油中に混入した大きな金属粉が除去され、その加工油は、その後フィルタ52で更に細かな金属粉が除去されて、廃油(本発明における廃液に相当)として貯油槽50内に貯えられる。
【0022】
ここで貯えられた廃油は、ポンプ61によって凝集反応装置20に供給される。この供給路中には磁性体粉注入装置10、凝集剤注入装置71及び界面活性剤注入装置72が接続されており、磁性体粉注入装置10からは凝集剤としてフェライト粉(本発明における磁性体粉に相当)が廃油中に注入される。ここで、12はフェライト粉を貯えているタンクであり、11はタンク12中のフェライト粉を廃油供給の配管に向けて送り出すチューブポンプである。なお、ここで使用されるフェライト粉は、その粉体の大きさが例えば2〜6ミクロン程度とされている。
凝集剤注入装置71も磁性体粉注入装置10と同様の構成であり、一般的な凝集剤が廃油中に注入される。凝集剤としては藁灰、鹿児島県産のシラス等が使用される。
また、界面活性剤注入装置72からは、界面活性剤が廃油中に注入される。界面活性剤としては、一般的に塗料に混入されるシリコン系の溶液が使用される。
【0023】
凝集反応装置20は、図1では詳細に示されていないが、三相交流電流を供給されて内部に回転磁界を発生するように円筒状に配置されたコイルと、この円筒状に配置されたコイルの円筒内部に、廃油を通過させる螺旋状のパイプとを備える。
凝集反応装置20では、フェライト粉が混入された廃油が回転磁界を受けることによりフェライト粉が磁化されると共に攪拌され、フェライト粉表面に廃液中の汚れ成分が付着される。廃油を通すパイプは螺旋状とされているため、廃油が回転磁界中を通過している時間が長く維持され、フェライト粉表面への汚れ成分の付着を促進させることができる。また、上述のように廃油に一般的な凝集剤及び界面活性剤が注入されているため、廃油に対する一般的な凝集作用が行われると共に、界面活性剤によりフェライト粉表面への廃液の付着が良くなり、フェライト粉表面への汚れ成分の付着を促進させることができる。
コイルの円筒内部に廃油を通過させるパイプは、上記のように螺旋状とせず、上記螺旋状パイプの外縁径に相当する太さのストレートなパイプとしても良い。この場合、パイプ内では回転磁界によって廃油内に複数の小さな渦流が発生され、更にその渦流によって大きな渦流が誘導されて発生される。このような複雑な渦流によって、フェライト粉表面への汚れ成分の付着を促進させることができる。
【0024】
凝集反応装置20は、図示を省略したが、回転磁界を発生させるための交流電流の周波数を任意に切り換える周波数変換装置を備えている。周波数変換装置は、浄化対象である廃油中の汚れ成分である金属化合物の種類に応じて10〜500ヘルツに調整される。
このように、回転磁界を発生させるための交流電流の周波数を切り換えることにより、汚れ成分に応じた周波数に設定して効率的に汚れ成分をフェライト粉の表面に付着させることができる。
【0025】
凝集反応装置20を通った廃油は沈殿槽30に送られ、ここで廃油中のフェライト粉及び一般的な凝集剤が沈殿される。沈殿槽30の内部には廃油流入路31が形成されており、この廃油流入路31は沈殿槽30の上縁部から沈殿槽30の底部付近まで延びている。凝集反応装置20からの廃油は廃油流入路31の上部で受け入れられ、その下部から沈殿槽30内に流入する。
沈殿槽30は、その上部外周側にオーバーフロー部33を備え、オーバーフローした油がフィルタ52を介して貯油槽50に戻されるように配管されている。
また、廃油流入路31の下部には電磁石(本発明における磁石に相当)32が設けられている。このように廃油流入路31の下部に磁石を設けたので、汚れ成分が付着したフェライト粉を重力と磁石による吸引力とによって速やかに沈殿させることができ、廃油の浄化効率を高めることができる。
更に、沈殿槽30の下部のフェライト粉が沈殿する部分には、配管が接続され、バルブ67及びスラリーポンプ68を介して遠心分離機40に沈殿物を供給するようにされている。
【0026】
遠心分離機40は、回転ドラム41がモータ42によって回転され、沈殿物中に含まれる油分を分離して、その油分を貯油槽50に戻すように配管されている。また、回転ドラム41の下部には、押出器81が一体に設けられており、押出器81は回転ドラム41内に残ったフェライト粉を回転ドラム41から押し出してフェライト粉のケーキを成形するようにされている。押出器81の下方には、ケーキタンク82が設けられ、押出器81から押出成形されたケーキを貯えるようにされている。
ケーキは、加熱されて油分を除去して再利用することができる。或いは、油分を含んだフェライト粉は、そのまま焼却炉に入れて焼却炉の加熱促進剤として使うこともできる。
【0027】
沈殿槽30の下部に沈殿したフェライト粉は、遠心分離機40に送られる経路から分岐されて、バルブ69及びスラリーポンプ63を介して脱磁器66に送られ、ここでフェライト粉の脱磁が行われた後、再び凝集反応装置20に供給されている。このように循環路を構成することによりフェライト粉を繰り返し活用することができる。
【0028】
上述の実施形態の浄化装置により浄化された切削油の分析結果は次表1のとおりであり、診断結果は継ぎ足し油として再使用可能とされた。
【表1】


表1において、「診断結果」の「○」は良好、「△」は経過観察要、「×」は要注意を意味する。
また、この切削油の濾過後の残渣量の比較は表2のとおりとなっている。なお、残渣量の求め方は、試料を100mL分取し、ヘキサン・アセトン混合溶媒に溶かし、孔径0.2μmのメンブランフィルタで濾過し、濾過前後の重量差から濾過残渣量を求めた。
【表2】

【0029】
以上のように、実施形態の廃油浄化装置によれば、フェライト粉に廃油中の汚れ成分を付着させて沈殿槽30にて沈殿させるため、汚れ成分に金属化合物が含まれていても浄化機能を果たさせることができる。しかも、廃油中の汚れ成分を沈殿させて油との分離を行うので、汚れ成分を浮上させるものに比べて汚れ成分の除去作業を容易にすることができる。ここでは凝集剤がフェライト粉であるため、一般的な凝集剤に比べて比重が高く、汚れ成分が比重の低いもの、例えばセラミックスであっても、汚れ成分を付着させたフェライト粉の沈殿槽30での沈殿を早めることができる。
また、機能装置に付属する貯油槽50に廃油浄化機能を循環系として設けたので、廃油の浄化機能を簡潔に構成することができる。
【0030】
なお、図1の実施形態では、機能装置から排出され、凝集反応装置20、沈殿槽30を含む浄化装置で上述のように浄化されて貯油槽50に循環され貯留された加工油は、ポンプ65によって再び機能装置に供給され使用されている。
【0031】
次に上記遠心分離機40の詳細構造を図2、3に基づいて説明する。
遠心分離機40は、回転中心が縦方向に設定された焼結フィルタ製の回転ドラム41と、該回転ドラム41内に摺動可能に配置され、回転ドラム41と同軸上で相対回転して回転ドラム41内壁に付着した回収物を下方に掻き落とすスクレーパ43とを備えている。
具体的には、回転ドラム41は、その上下端がリング体412に挟まれており、上側のリング体412は支持体401内に回転自在に支持された外筒411の下端に固定されている。また、下側のリング体412は、ガイド413の上端に固定され、ガイド413は大略漏斗状に形成されており、スクレーパ43によって掻き落とされる固形物(フェライト粉)を、その下方に設けられた基台49の方向へ誘導する。図示を省略したが、基台49の下部には上述の押出器81が設けられている。
一方、スクレーパ43は、本体432が回転ドラム41と回転中心を共通にするように配置されており、本体432の外周には螺旋状にフィン434が設けられ、フィン434の先端は回転ドラム41の内周に対して所定の隙間を形成して配置されている。この隙間は、例えば3ミリに設定されている。また、回転ドラム41のフィルタの孔径は2ミクロンとされている。
本体434の上部は、上記外筒411内で回転自在とされた内筒431の下端に固定されており、本体434の下部は、上記ガイド413内に配置された下部体433の上端に固定されている。
支持体401の側方にはモータ42が連結体402を介して固定されており、モータ42の出力軸にはダブル溝のプーリ441が固定され、このプーリ441とそれぞれベルト結合された2つのプーリ442、443が内筒431と外筒411を回転駆動するように、それぞれの上端に固定されている。プーリ442はプーリ443よりも小径とされており、そのため内筒431は外筒411よりも高速回転されることになる。ここで、2つのプーリ442、443は本発明の回転機構44を成している。
内筒431と本体432には、その回転中心部に貫通孔が形成されており、内筒431の上端にはヘッド46が接続され、このヘッド46を介して内筒431の貫通孔には沈殿槽30からフェライト粉のスラリーが供給されている。一方、本体432の下端部には上記貫通孔に連通された半径方向の孔が形成されており、内筒431の貫通孔を介して供給されるフェライト粉のスラリーを回転ドラム41内に導入するようにしている。
従って、回転ドラム41内に沈殿槽30からのフェライト粉のスラリーを供給し、回転ドラム41を回転させると共にスクレーパ43を回転ドラム41に対して相対回転させることにより、焼結フィルタである回転ドラム41の外周側からフェライト粉のスラリー中の油分を取り出し、且つスクレーパ43の下方から回収物としてのフェライト粉を取り出す。
【0032】
このように遠心分離機40が構成され、スクレーパ43は回転ドラム41内壁に付着した回収物を下方に掻き落とすので、遠心分離機40を作動させながら連続的に回収物を回収することができる。
また、回転ドラム41及びスクレーパ43を共に回転させながら両者間に相対回転を生じさせるので、遠心分離機40を作動させながらの連続的な回収物の回収を実現することができる。
【0033】
上述のように回転ドラム41の内壁とスクレーパ43の外周端との間に所定の隙間が形成され、また、フェライト粉のスラリーは回転ドラム41の下部に供給されている。そして、回転ドラム41の内周側に流出せず残った油があると、その油は上記隙間を通って回転ドラム41の上部から流出される。即ち、回転ドラム41の上側のリング体412の内周端とスクレーパ43の本体432の外周端との間には通路が形成されており、また、この通路に連通されて外筒411の下部には半径方向の孔が形成されている。
上記隙間には回転ドラム41を成すフィルタを通過できなかったフェライト粉が積層され、その積層体を通ってフェライト粉中の油が濾過され、濾過して下から上へ押し出された油が回転ドラム41の上部から取り出される。このため、回転ドラム41のフィルタに加えて積層されたフェライト粉によっても油が濾過され、遠心分離機40としての濾過能力を高めることができる。
遠心分離機40の上部にはヘッド46を除いて遠心分離機40の全体を覆うケース上部47が被せられ、遠心分離機40の下部はケース上部47に一部が結合されたケース下部48で覆われている。
上述のように回転ドラム41のフィルタを通して外周側に通過した油、及び外筒411の下部から流出する油はケース下部48の内側に捕捉され、貯油槽50に送られる。
【0034】
回転ドラム41の外周のケース下部48には任意のタイミングで回転ドラム41外周に向けて所定圧力の空気(気体)を噴出する洗浄器45を備えている。その噴出された空気により回転ドラム41の内壁に付着したフェライト粉を除去している。
このように、任意のタイミングで洗浄器45から噴出された空気により回転ドラム41内壁に付着したフェライト粉が除去されるため、フェライト粉が回転ドラム41内壁に付着して固まることを防止することができる。従って、遠心分離機40の性能を維持することができる。
【0035】
本発明は、上記実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、廃液としては廃油以外に廃水でも良い。また、凝集剤としての磁性体粉は、磁性体の粉末であればフェライト粉以外でも良い。
【符号の説明】
【0036】
10 磁性体粉注入装置
20 凝集反応装置
30 沈殿槽
32 電磁石(磁石)
40 遠心分離機
41 回転ドラム
42 モータ
43 スクレーパ
44 回転機構
45 洗浄器
46 ヘッド
81 押出器
50 貯油槽
66 脱磁器
71 凝集剤注入装置
72 界面活性剤注入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液に凝集剤として磁性体粉を注入する凝集剤注入装置と、
前記磁性体粉が混入された廃液に回転磁界をかけて磁性体粉を磁化すると共に攪拌する凝集反応装置と、
凝集反応装置からの廃液が注入され、磁性体粉を沈殿させて上部から浄化された液体を取り出し可能とする沈殿槽と
を備えることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、前記磁性体粉は、フェライト粉であることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記凝集反応装置は、三相交流電流を供給されて内部に回転磁界を発生するように円筒状に配置されたコイルを備えることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項4】
請求項3において、前記凝集反応装置は、前記円筒状配置のコイルの円筒内部に、廃液を通過させる螺旋状のパイプを備えることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記凝集反応装置は、前記回転磁界を発生させるための交流電流の周波数を任意に切り換える周波数変換装置を備えることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記沈殿槽の下部には磁石が設けられていることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記沈殿槽にて沈殿された磁性体粉を受けて、磁性体粉の塊を生成する遠心分離機を備えることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項8】
請求項7において、前記遠心分離機は、回転中心が縦方向に設定されたフィルタ製の回転ドラムと、該回転ドラム内に摺動可能に配置され、前記回転ドラムと同軸上で相対回転して回転ドラム内壁に付着した回収物を下方に掻き落とすスクレーパとを備え、
前記回転ドラム内に沈殿槽からの磁性体粉を供給し、回転ドラムを回転させると共に前記スクレーパを回転ドラムに対して相対回転させることにより、回転ドラムの外周側から液体を取り出し、且つスクレーパの下方から回収物としての磁性体粉を取り出す
ことを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項9】
請求項8において、前記回転ドラム及びスクレーパは、スクレーパが回転ドラムと同方向で、且つ回転ドラムより高速回転されることにより、回転ドラムに対して相対回転される回転機構を備えることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項10】
請求項8又は9において、前記回転ドラムの内壁と前記スクレーパの外周端との間に所定の隙間が形成されるように設定し、
前記沈殿槽からの磁性体粉は前記回転ドラムの下部に供給され、前記回転ドラムの外周側に流出せず残った液体は前記隙間を通って回転ドラムの上部から流出させることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかにおいて、前記回転ドラムの外周には任意のタイミングで回転ドラム外周に向けて所定圧力の気体を噴出する洗浄器を備え、その噴出された気体により回転ドラムの内壁に付着した磁性体粉を除去させることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項12】
抽出した廃液中に凝集剤として磁性体粉を注入し、
磁性体粉が混入された廃液に回転磁界をかけて攪拌し、
攪拌後の廃液を沈殿槽に入れて磁性体粉を沈殿させ、
沈殿槽の上部から浄化された液体を取り出す
ことを特徴とする廃液浄化方法。
【請求項13】
請求項12において、前記磁性体粉は、フェライト粉であることを特徴とする廃液浄化方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−245466(P2012−245466A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119066(P2011−119066)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(511130302)
【出願人】(511129535)
【Fターム(参考)】