説明

建具

【課題】非常操作ダイヤルを意匠性の低下を招くことなく配置可能な玄関ドアを提供すること。
【解決手段】玄関ドアの縦枠6に非常操作ダイヤルHDを隠蔽する隠蔽パネル40と、この隠蔽パネル40を閉鎖状態に規制するパネル閉鎖規制部70とを設けている。さらに、パネル閉鎖規制部70の板ばね50を操作するための閉鎖切替操作部60を扉10と縦枠6の見付け片部6Eとの隙間Sに面して設けている。このため、閉鎖切替操作部60を屋外側に露出させないため、玄関ドアの意匠性の低下を防止できる。また、通常目視できない位置にある閉鎖切替操作部60の操作のみで開放可能な隠蔽パネル40で非常操作ダイヤルHDを隠蔽するため、意匠性の低下を招くことなく非常操作ダイヤルHDを配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非常時に強制開放可能な非常解除錠が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の構成では、宅配ボックスの扉を施錠、解錠する電子ロック機構を備えている。扉の内部には、電子ロック機構のキャッチ部材に係合されるキーパー部材がねじ止めされている。また、扉には化粧板で閉塞された開口部が設けられている。そして、扉を強制開放する際には、まず化粧板を破砕あるいは取り外すことで開口部を露出させてこの開口部内に挿入した特殊工具の操作によりキーパー部材を扉から分離させて扉を開放する。
【0003】
【特許文献1】特開2000−145233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような構成では、扉を強制開放する際に化粧板を破砕した場合、化粧板を再度元に戻すためには新しい化粧板を用意する必要があった。また、化粧板を取り外す場合、意匠性の観点から取り外し操作する操作部分が外部から目立たなくする必要があった。
本発明の目的は、操作可能な錠操作手段を意匠性の低下を招くことなく配置可能な建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の建具は、枠体と、この枠体に開閉自在に取り付けられている扉体と、前記枠体の屋外側に配置されて前記扉体を施錠および解錠のうち少なくとも一方をする錠装置の操作に利用される錠操作手段と、を備え、前記枠体には、前記扉体の閉鎖時に前記扉体の屋外面周縁の一部に対して隙間を介して対向する枠体対向部と、屋外面に開閉自在に取り付けられて閉鎖時に前記錠操作手段を隠蔽する隠蔽パネルと、この隠蔽パネルを閉鎖状態に規制するパネル閉鎖規制部と、前記枠体対向部の前記隙間側に配置されて前記パネル閉鎖規制部による前記規制およびこの規制の解除の切り替え時に操作される閉鎖切替操作部と、が設けられていることを特徴とする。
ここで、錠装置としては、鍵の挿入、操作部材の回転や上下左右方向への移動、磁気カードの読み取り、顔や指紋あるいは瞳孔さらには静脈などの人体の特徴を認証することで、扉体を施錠および解錠のうち少なくとも一方(以下、施解錠と称す)をする構成が例示できる。さらに、枠体対向部や錠操作手段が設けられる箇所としては、枠体を構成する縦枠材、上枠材、下枠材のいずれであってもよい。
以上の発明によれば、隠蔽パネルの閉鎖規制を解錠するための閉鎖切替操作部を枠体対向部と扉体との隙間に面して配置することで閉鎖切替操作部を屋外側に露出させないため、建具の意匠性の低下を防止できる。さらに、通常目視できない位置にある閉鎖切替操作部の操作のみで開放可能な隠蔽パネルで錠操作手段を隠蔽するため、意匠性の低下を招くことなく隠蔽パネルを開閉操作することができる。
さらには、開閉自在な隠蔽パネルにより錠操作手段を必要なときのみに露出させることができ、風雨にさらされることによる錠操作手段の劣化や損傷を防止できる。そして、部外者に閉鎖切替操作部を見られることがなく防犯性を向上できる。
【0006】
本発明の建具では、前記隠蔽パネルは、一側縁に設けられた回動軸を中心に回動することで前記枠体に開閉自在に取り付けられている構成が好ましい。
この発明によれば、隠蔽パネルの回動先端側を手前に引いたり、手前に押すだけで簡単に隠蔽パネルを開くことができる。
本発明の建具では、前記枠体対向部の屋外側には、当該枠体対向部に沿って移動可能な板ばねが設けられており、前記隠蔽パネルの屋内側には、前記板ばねと前記枠体対向部との間で挟持される被挟持部が設けられており、前記パネル閉鎖規制部は、前記板ばねと前記枠体対向部と前記被挟持部とを有して構成されており、前記閉鎖切替操作部の操作で前記板ばねが移動して前記被挟持部が挟持されることで前記隠蔽パネルを閉鎖状態に規制する構成が好ましい。
この発明によれば、被挟持部を板ばねと枠体対向部との間で挟持するだけの単純な構成で隠蔽パネルを閉鎖状態に規制することができる。
本発明の建具では、前記隠蔽パネルには、閉鎖時に前記枠体対向部を介して前記隙間に突出する突出部が設けられている構成が好ましい。
この発明によれば、扉体と枠体対向部との隙間に突出する突出部を屋外側に押すだけの簡単な操作で隠蔽パネルを開放することができる。また、突出部を屋外側から見難い隙間に突出させているので建具の意匠性および防犯性を向上できる。
本発明の建具では、前記隙間には、前記枠体対向部および前記扉体の一方から他方に向けて延びて前記閉鎖切替操作部を覆う見切り材が設けられている構成が好ましい。
ここで、見切り材としては、例えば枠体対向部に固定された変形可能な樹脂部材、枠体対向部に回動軸を中心に回動可能に固定された板状部材やブロック体、枠体対向部に着脱自在に取り付けられた板状部材やブロック体などが例示できる。
この発明によれば、見切り材で閉鎖切替操作部を覆うため、外部から閉鎖切替操作部を更に見せ難くすることができるので、建具の意匠性を向上できる。また、閉鎖切替操作部が風雨にさらされることを抑制でき閉鎖切替操作部の劣化や損傷を防止できる。
本発明の建具では、前記錠操作手段は、非常時における前記錠装置の操作に利用される非常時錠操作手段であり、前記枠体には、通常時における屋外側からの前記錠装置の操作に利用される通常時錠操作手段が配置され、前記隠蔽パネルには、前記通常錠操作手段を外部に露出させる露出孔が設けられている構成が好ましい。
ここで、非常時錠操作手段が利用される非常時としては、鍵を忘れたり紛失したりすることで通常時錠操作手段を利用できないとき、停電や通常時錠操作手段の故障で通常時錠操作手段が動作しないときが例示できる。
この発明によれば、通常時錠操作手段を常時外部に露出させているため、通常時には閉鎖切替操作部を操作せずに通常時錠操作手段を利用することで扉を容易に施解錠することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る建具である玄関ドア1における扉10の開閉動作を示す横断面図である。図2は、玄関ドア1の縦枠6の隠蔽パネル40の配置状態を示す斜視図である。図3は、隠蔽パネル40の配置状態を示す横断面図である。図4は、縦枠6の突出ねじ49の配置状態を示す横断面図である。図5は、縦枠6の板ばね50の配置状態を示す縦断面図であり、隠蔽パネル40の閉鎖規制状態を示す。図6は、板ばね50の配置状態を示す縦断面図であり、隠蔽パネル40の閉鎖規制解除状態を示す。
図1において、玄関ドア1は、外壁開口部に固定される枠体2とこの枠体2に開閉自在に支持される略四角板状の扉(扉体)10とを備えて構成されている。枠体2は、図示しない上枠、下枠4および左右の縦枠5,6を有して構成されている。
上枠には、それぞれ図示しない錠装置としての施錠ユニットと扉開閉制御ユニットとが設けられている。
縦枠5の縦枠本体5Aと縦枠屋内部材5Cとで囲まれた内部には、後述する支持装置20とこの支持装置20の第2支持部材23を駆動して扉10を開閉動作させる図示しない電動駆動ユニットとが設けられている。この電動駆動ユニットは、扉開閉制御ユニットからの指令を受けて作動するものであって支持装置20の第2支持部材23を回転駆動するモータ等を有して構成されている。
縦枠6は、前記縦枠本体5Aよりも見付け寸法が大きな略矩形中空断面を有して建物躯体に固定される縦枠本体6Aと、縦枠本体6Aの屋内側に設けられる縦枠屋内部材6Cとなどを有して構成されている。さらに、縦枠本体6Aは、その屋外側位置にて見付け方向内側に延びる枠体対向部としての見付け片部6Eを有している。
そして、扉10は、縦枠5に支持装置20を介して支持されて屋外側に開放されるようになっている。この支持装置20は、縦枠5に固定される第1支持部材21と、この第1支持部材21に第1回動軸22を介して回動自在に連結される第2支持部材23と、この第2支持部材23に第2回動軸24を介して回動自在に連結される第3支持部材25とを有して構成されている。なお、扉10の開閉動作については後述する。
【0008】
縦枠本体6A内部と縦枠屋内部材6C内部とを連通した中空空間内部には、図2および図3に示すように図示しない施錠ユニットや電動駆動ユニットを操作するための通常時錠操作手段としての通常操作ユニットOUが縦枠6から露出して設けられている。この通常操作ユニットOUは、屋外側または屋内側から押しボタンを押し込んだりあるいは非接触型カードをかざしたりさらには指紋を認証することで施錠ユニットの施解錠を切り換え操作したり、電動駆動ユニットによる扉10の開閉駆動を操作したりなどができるようになっている。また、通常操作ユニットOUの下方には、錠操作手段である非常時錠操作手段としての非常操作ダイヤルHDが縦枠6から露出して設けられている。この非常操作ダイヤルHDは、停電や通常操作ユニットOUの故障で通常操作ユニットOUが動作しない非常時に操作される。そして、この非常操作ダイヤルHDが操作されると、施錠ユニットの施解錠が切り替えられて非常時においても施錠や解錠ができるようになっている。また、非常操作ダイヤルHDは、上下に開閉可能なダイヤル蓋部材30で略覆われている。
また、縦枠屋内部材6Cの先端部屋外側には、気密材6Gが取り付けられておりこの気密材6Gが閉鎖状態における扉10の戸先側端縁屋内面に当接可能になっている。さらに、縦枠本体6Aの見付け片部6E先端部は、その屋内面と閉鎖状態における扉10との間に指Yが挿入可能な程度の隙間Sが設けられる形状に形成されている。つまり、見付け片部6Eは、扉10の閉鎖時に扉10の屋外面の一縁に対して隙間Sを介して対向する状態で設けられている。そして、見付け片部6E先端部には、屋内側に突出した軟質樹脂製の見切り材6Hが取り付けられこの見切り材6Hが閉鎖状態における扉10に近接して位置するようになっている。
さらに、見付け片部6Eの外側面の上下方向略中央には、回動軸31を中心に回動することで開閉自在な隠蔽パネル40が設けられている。また、この隠蔽パネル40の上下には、縦枠屋外部材32が固定されている。
【0009】
隠蔽パネル40は、略長方形薄箱状のパネル基部41を有している。このパネル基部41の上半分の部分には、通常操作ユニットOUを露出させる露出孔としてのユニット露出窓42が開口形成されている。また、パネル基部41の見付け方向外側面には、回動軸31の回動軸受部43が設けられている。また、パネル基部41の見付け方向内側縁には、見込み方向屋内側に延びた後に見付け方向外側に向かって延びる略L字状のパネル片部44が設けられている。このパネル片部44の上端側、下端側、および、上下方向略中間部には、見付け方向外側に延びる上延出片部45、被挟持部としての下延出片部46、被挟持部としての中間延出片部47が設けられている。そして、上延出片部45と中間延出片部47との間、中間延出片部47と下延出片部46との間には、後述する板ばねカバー80が嵌合するカバー嵌合隙間48が形成されている。さらに、中間延出片部47には、図2および図4に示すように見込み方向屋内側に向かって突出する突出部としての突出ねじ49が設けられている。
また、見付け片部6Eには、突出ねじ49の先端部分を隙間Sに突出させるための突出挿通孔33が設けられている。さらに、見付け片部6Eにおける突出挿通孔33の上方および下方には、図2および図3に示すように上下方向に移動可能な板ばね50とこの板ばね50を移動させる際に操作される閉鎖切替操作部60とがそれぞれ設けられている。そして、板ばね50と見付け片部6Eと下延出片部46と中間延出片部47とは、パネル閉鎖規制部70を構成している。板ばね50は、図5に示すように略四角板状のばね基部51を有している。このばね基部51の下側縁には、見付け片部6Eとにより下延出片部46や中間延出片部47を挟持する挟持部52が設けられている。この挟持部52は、屋外側に開口する略V字状に屈曲した挟持屈曲部53を備えている。また、ばね基部51の上側縁には、板ばね50の下側への移動を防止するためのばね移動防止係合部54が設けられている。このばね移動防止係合部54は、屋外側に開口する略V字状に屈曲した移動防止屈曲部55を備えている。一方、閉鎖切替操作部60は、略長方形板状のつまみ部61を有している。このつまみ部61の屋外側面には、ばね取付部62が設けられている。
そして、板ばね50と閉鎖切替操作部60は、ばね基部51およびばね取付部62が見付け片部6Eに開口形成された操作長孔34内に位置しかつばね取付部62とばね固定板63とがばね基部51を挟んだ状態で固定されることで、上下方向に移動可能に見付け片部6Eに取り付けられている。
【0010】
板ばね50を覆う板ばねカバー80は、カバー内側部81とカバー外側部83とを備えている。カバー内側部81は、断面略コ字状のチャンネル状に形成され屋外側に開口する状態で見付け片部6Eにねじ止めされている。このカバー内側部81における一対の略板状部分を連結する板状部分には、ばね移動防止係合部54の移動防止屈曲部55が係合することで板ばね50の下側への移動を防止する移動防止係止孔82が設けられている。カバー外側部83は、カバー内側部81よりも上下方向に長い断面略コ字状のチャンネル状に形成され内部に収容されたカバー内側部81に溶接されている。このカバー外側部83の上下方向の寸法は、カバー嵌合隙間48の上下方向の寸法よりも小さく、挟持部52の挟持屈曲部53と見付け片部6Eとで下延出片部46や中間延出片部47を挟持したときに挟持屈曲部53が外部に露出し、移動防止係止孔82にばね移動防止係合部54が係止されたときに板ばね50全体がカバー外側部83内に隠れる大きさに設定されている。
【0011】
次に、扉10の開動作について説明する。
支持装置20に支持された扉10は、閉鎖状態において図1の実線で示すように縦枠5,6の見付け片部5E,6Eよりも屋内側に位置するとともに、扉10の左右側端縁が見付け片部5E,6E先端と見込み方向に重なった状態となっている。この際、縦枠5,6に設けた見切り材5H,6Hの先端が扉10に近接することで扉10の左右側端縁が屋外側から見えないとともに、扉10と縦枠本体5Aとの隙間、扉10と縦枠本体6Aとの隙間Sも屋外側から見えないようになっている。また、図4に示すように突出ねじ49の先端部分は隙間Sに突出している。さらに、図5に示すように下延出片部46および中間延出片部47が板ばね50の挟持部52の挟持屈曲部53と見付け片部6Eとで挟持されることで隠蔽パネル40が閉鎖状態に規制され、通常操作ユニットOUが外部に露出して非常操作ダイヤルHDが外部から見えない状態になる。
【0012】
そして、通常操作ユニットOUの操作に基づき扉開閉制御ユニットからの駆動指令を受けた施錠ユニットの駆動によって扉10が解錠される。さらに、電動駆動ユニットの駆動によって図1に仮想線(二点鎖線)で示すように扉10の吊り元側の側端縁が縦枠5よりも屋外側に突出し、戸先側の側端縁が見付け片部6Eよりも屋内側でかつ見付け片部6Eの先端よりも見付け方向内側に離れた位置に移動される(第1開放動作)。次に、縦枠5よりも屋外側に移動された支持装置20の第2回動軸24を中心として扉10が屋外側に回動される(第2開放動作)。この第2開放動作では、電動駆動ユニットによって支持装置20の第2支持部材23の回動がロックされて第2回動軸24が移動しないようになっており、扉10のハンドルを利用者が屋内側から押したり屋外側から引いたりなどの手動によって扉10が屋外側に開放できるようになっている。
一方、通常操作ユニットOUの故障などの非常時に扉10を開く際には、隠蔽パネル40を開いて非常操作ダイヤルHDを操作する。具体的には、利用者は、見切り材6Hを曲げることで図3に示すように指Yを隙間S内に挿入してつまみ部61を上側に移動させ、図6に示すように移動防止係止孔82にばね移動防止係合部54の移動防止屈曲部55を係合させることで板ばね50の下への移動を防止しつつ、隠蔽パネル40を開閉自在な状態にする。さらに、図4に示すように突出ねじ49を手前に押すことで隠蔽パネル40の回動先端側を手前に引き出す。そして、この引き出した部分を操作して隠蔽パネル40を開き非常操作ダイヤルHDを操作することで扉10が解錠されて開放可能な状態となる。
【0013】
このような実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)玄関ドア1の縦枠6に、非常操作ダイヤルHDを隠蔽する隠蔽パネル40とこの隠蔽パネル40を閉鎖状態に規制するパネル閉鎖規制部70とを設けている。さらに、パネル閉鎖規制部70を操作するための閉鎖切替操作部60を扉10と見付け片部6Eとの隙間Sに面して設けている。このため、閉鎖切替操作部60を屋外側に露出させないため、玄関ドア1の意匠性の低下を防止できる。また、通常目視できない位置にある閉鎖切替操作部60の操作のみで開放可能な隠蔽パネル40で非常操作ダイヤルHDを隠蔽するため、隠蔽パネル40を開閉操作する閉鎖切替操作部60を意匠性の低下を招くことなく配置することができる。さらには、非常操作ダイヤルHDを必要なときのみに露出させることができ、風雨にさらされることによる非常操作ダイヤルHDの劣化や損傷を防止できるとともに、部外者に非常操作ダイヤルHDを見られることがなく防犯性を向上できる。
(2)隠蔽パネル40を回動軸31を中心に回動させることで開閉自在に取り付けているため、隠蔽パネル40の回動先端側を手前に引いたり手前に押すだけで簡単に開くことができる。
(3)パネル閉鎖規制部70を板ばね50の挟持部52と、見付け片部6Eと、隠蔽パネル40の下延出片部46および中間延出片部47とで構成している。このため、挟持部52と見付け片部6Eとで下延出片部46を挟持する単純な構成で隠蔽パネル40を閉鎖状態に規制することができる。
(4)隠蔽パネル40に見付け片部6Eを介して隙間Sに突出する突出ねじ49を設けているため、この突出ねじ49を手前側に押すだけの簡単な操作で隠蔽パネル40を開くことができる。また、突出ねじ49を屋外側から見難い隙間Sに突出させているので玄関ドア1の意匠性および防犯性を向上できる。
(5)見付け片部6Eに閉鎖切替操作部60を覆う見切り材6Hを設けているため、外部から閉鎖切替操作部60をさらに見せ難くすることができるので玄関ドア1の意匠性を向上できる。また、閉鎖切替操作部60が風雨にさらされることを防止でき閉鎖切替操作部60の劣化や損傷を抑制できる。
(6)隠蔽パネル40に通常操作ユニットOUを露出させるユニット露出窓42を設けているため、通常時には閉鎖切替操作部60を操作せずに通常操作ユニットOUを利用することで扉10を容易に施解錠することができる。
(7)隠蔽パネル40を開くために板ばね50を上側に移動させたときに、板ばね50のばね移動防止係合部54の移動防止屈曲部55と板ばねカバー80の移動防止係止孔82とを係合させることで板ばね50の下側への移動を防止している。このため、板ばね50が自重で下側へ移動して隠蔽パネル40が閉鎖状態に規制されることを防止できる。
(8)板ばね50を上側に移動させたときに板ばね50全体を隠す板ばねカバー80を設けているため、隠蔽パネル40を開いたときに利用者の指Yや異物が板ばね50に接触することを防止でき、板ばね50の損傷や変形あるいは利用者の怪我を防止できる。
【0014】
なお、本発明は、前記一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、通常操作ユニットOUを設けずに非常操作ダイヤルHDを通常時の施解錠に利用してもよい。この構成によれば、上述したように非常操作ダイヤルHDが外部から見られない状態で配置されているため、防犯性を維持しつつ鍵などを用いなくても扉10を施解錠することができる。また、このような通常の施解錠に利用する本発明の錠操作手段を隠蔽パネル40で隠蔽する構成の場合、非常操作ダイヤルHDの代わりに顔や指紋あるいは瞳孔さらには静脈などの人体の特徴を認証することで施解錠するユニットを設けてもよい。
また、隠蔽パネル40を開き戸式ではなく、引き戸式や縦枠6から取り外し可能な構成を用いてもよい。さらに、板ばね50を見込み方向に延びる軸を中心に回転させることで挟持部52と見付け片部6Eとにより下延出片部46などを挟持して、隠蔽パネル40を閉鎖状態に規制してもよい。そして、パネル閉鎖規制部70としては、見付け片部6Eに設けた磁性体と隠蔽パネル40に設けた鉄版とを利用してもよい。また、突出ねじ49や見切り材6Hを設けなくてもよい。
また、非常時錠操作手段としてダイヤル錠タイプの非常操作ダイヤルHDについて説明したが、鍵の挿入、操作部材の回転や上下左右方向への移動、磁気カードの読み取り、顔や指紋あるいは瞳孔さらには静脈などの人体の特徴を認証することで、扉体を施解錠する構成のものでもよい。
また、非常操作ダイヤルHD、見付け片部6E、隠蔽パネル40、パネル閉鎖規制部70、および閉鎖切替操作部60が設けられる箇所として縦枠6側に配置するタイプについて説明したが、その他の箇所、例えば、上枠側、下枠4側のいずれであってもよい。なお、通常操作ユニットOUは、扉10側に設けられていてもよい。
また、見切り材6Hとしては、例えば見付け片部6Eに固定された変形可能な樹脂部材、見付け片部6Eに回動軸を中心に回動可能に固定された板状部材やブロック体、見付け片部6Eに着脱自在に取り付けられた板状部材やブロック体などであってもよい。
【0015】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質等を限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質等の限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る玄関ドアにおける扉の開閉動作を示す横断面図である。
【図2】前記玄関ドアの縦枠の隠蔽パネルの配置状態を示す斜視図である。
【図3】前記隠蔽パネルの配置状態を示す横断面図である。
【図4】前記縦枠の突出ねじの配置状態を示す横断面図である。
【図5】前記縦枠の板ばねの配置状態を示す縦断面図であり、隠蔽パネルの閉鎖規制状態を示す。
【図6】前記板ばねの配置状態を示す縦断面図であり、隠蔽パネルの閉鎖規制解除状態を示す。
【符号の説明】
【0017】
1…玄関ドア(建具)、6E…見付け片部(枠体対向部)、6H…見切り材、10…扉(扉体)、31…回動軸、40…隠蔽パネル、42…ユニット露出窓(露出孔)、46…下延出片部(被挟持部)、47…中間延出片部(被挟持部)、49…突出ねじ(突出部)、50…板ばね、60…閉鎖切替操作部、70…パネル閉鎖規制部、HD…非常操作ダイヤル(錠操作手段、非常時錠操作手段)、OU…通常操作ユニット(通常時錠操作手段)、S…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、この枠体に開閉自在に取り付けられている扉体と、前記枠体の屋外側に配置されて前記扉体を施錠および解錠のうち少なくとも一方をする錠装置の操作に利用される錠操作手段と、を備え、
前記枠体には、前記扉体の閉鎖時に前記扉体の屋外面周縁の一部に対して隙間を介して対向する枠体対向部と、屋外面に開閉自在に取り付けられて閉鎖時に前記錠操作手段を隠蔽する隠蔽パネルと、この隠蔽パネルを閉鎖状態に規制するパネル閉鎖規制部と、前記枠体対向部の前記隙間側に配置されて前記パネル閉鎖規制部による前記規制およびこの規制の解除の切り替え時に操作される閉鎖切替操作部と、が設けられている建具。
【請求項2】
前記隠蔽パネルは、一側縁に設けられた回動軸を中心に回動することで前記枠体に開閉自在に取り付けられている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記枠体対向部の屋外側には、当該枠体対向部に沿って移動可能な板ばねが設けられており、
前記隠蔽パネルの屋内側には、前記板ばねと前記枠体対向部との間で挟持される被挟持部が設けられており、
前記パネル閉鎖規制部は、前記板ばねと前記枠体対向部と前記被挟持部とを有して構成されており、前記閉鎖切替操作部の操作で前記板ばねが移動して前記被挟持部が挟持されることで前記隠蔽パネルを閉鎖状態に規制する請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記隠蔽パネルには、閉鎖時に前記枠体対向部を介して前記隙間に突出する突出部が設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の建具。
【請求項5】
前記隙間には、前記枠体対向部および前記扉体の一方から他方に向けて延びて前記閉鎖切替操作部を覆う見切り材が設けられている請求項1から請求項4のいずれかに記載の建具。
【請求項6】
前記錠操作手段は、非常時における前記錠装置の操作に利用される非常時錠操作手段であり、
前記枠体には、通常時における屋外側からの前記錠装置の操作に利用される通常時錠操作手段が配置され、
前記隠蔽パネルには、前記通常錠操作手段を外部に露出させる露出孔が設けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の建具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−275461(P2009−275461A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129884(P2008−129884)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】