建物の壁構造
【課題】外壁パネル間をシールするにあたり、屋外側からの作業を不要にできる建物の壁構造を提供する。
【解決手段】外壁面を形成する外壁材11,21、及び外壁材11,21を屋内側から支持するフレーム材(壁下地材)を有して構成される外壁パネル10,20を備え、このような外壁パネル10,20を複数並べて設置するとともに外壁パネル10,20間をシールする建物の壁構造であり、隣り合う外壁パネル10,20のうち、ジョイント外壁パネル20の外壁材21に、一般外壁パネル10のフレーム材12と壁厚み方向に重複する重複部21aを形成する。これによれば、フレーム材12のうち重複部21aと対向するシール部12aと、重複部21aとを、シール部材S1によりシールさせることができるので、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【解決手段】外壁面を形成する外壁材11,21、及び外壁材11,21を屋内側から支持するフレーム材(壁下地材)を有して構成される外壁パネル10,20を備え、このような外壁パネル10,20を複数並べて設置するとともに外壁パネル10,20間をシールする建物の壁構造であり、隣り合う外壁パネル10,20のうち、ジョイント外壁パネル20の外壁材21に、一般外壁パネル10のフレーム材12と壁厚み方向に重複する重複部21aを形成する。これによれば、フレーム材12のうち重複部21aと対向するシール部12aと、重複部21aとを、シール部材S1によりシールさせることができるので、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルを複数並べて設置する建物の壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等に記載の外壁パネルは、水平断面図である図12に示すように、外壁面1aを形成する外壁材11x、及び外壁材11xを屋内側から支持する壁下地材12xから構成されている。そして、従来の建物の壁構造は、このような外壁パネル10xを複数並べて設置することで構成されている。また、隣り合う外壁材11xの間に不定形シール材S3xを充填することで、外壁パネル10x間をシールしている。
【特許文献1】特開平6−26117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような不定形シール材S3xの充填作業は屋外側から行うことを要するため、外壁パネル10xの屋外側近傍に作業足場2を設置する必要がある。しかしながら、建物を設置する敷地が狭く、隣地境界線R(図1参照)が外壁パネル10xの近傍に位置する場合等、作業足場2を設置するスペースを確保することが困難な場合がある。換言すれば、作業足場2の設置スペースを確保すべく、敷地内における外壁パネル10xの設置位置が制限されてしまう。
【0004】
本発明は、外壁パネル間をシールするにあたり、屋外側からの作業を不要にできる建物の壁構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0006】
すなわち、第1の発明では、外壁面を形成する外壁材、及び前記外壁材を屋内側から支持する壁下地材を有して構成される外壁パネルを備え、前記外壁パネルを複数並べて設置するとともに前記外壁パネル間をシールする建物の壁構造であり、隣り合う前記外壁パネルにおいて、一方の外壁パネルの前記外壁材には、他方の外壁パネルの前記壁下地材と壁厚み方向に重複する重複部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この第1の発明によれば、外壁パネルを複数並べて設置する前に、他方の外壁パネルの壁下地材のうち重複部に対向する部分又は重複部にシール部材を予め取り付けて、重複部と壁下地材とをシール部材(図4に例示される符号S1参照)によりシールさせることができるので、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【0008】
或いは、両外壁パネルの壁下地材と重複部とに囲まれた空間に不定形シール材(図4に例示される符号S3参照)を屋内側から充填でき、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。すなわち、図12に示す従来構造において不定形シール材S3xを屋内側から充填すると、バックアップ材60xが屋外側に露出してしまうこととなるため、外壁パネルの見栄えが著しく損なわれ、現実的ではない。これに対し、上記第1の発明によれば、図4に例示される如く不定形シール材S3を屋内側から充填しても、バックアップ材60が重複部21aにより屋外側から目隠しされることとなる。よって、不定形シール材S3の屋内側からの充填を可能ならしめている。
【0009】
以上により、上記第1の発明によれば、隣り合う外壁パネル間をシールするにあたり、屋外側からの作業を不要にできるので、建物を設置する敷地が狭く外壁パネルの屋外側に作業足場を設置するスペースを確保することが困難な場合であっても、敷地内における外壁パネルの設置位置が制限されることを抑制できる。なお、上記「シール」は、防水シールのみならず防音、防臭等のシールをも含む意味である。
【0010】
また、第2の発明では、前記他方の外壁パネルの端部は、前記壁下地材の端部が前記外壁材からはみ出した段差形状に形成され、前記段差を構成する前記壁下地材の端部に前記重複部を対向配置した状態で、前記一方の外壁パネルの外壁面と前記他方の外壁パネルの外壁面とが略同一平面上に位置するよう構成されていることを特徴とする。これによれば、隣り合う外壁パネルの外壁面を略同一平面上に位置させるので、外壁パネルの見栄えを良好にできる。
【0011】
また、第3の発明では、前記重複部と前記壁下地材との間に配置されてシールするシール部材(図4に例示される符号S1参照)を備えることを特徴とするので、例えば、外壁パネルを複数並べて設置する前にシール部材を重複部に予め取り付けて、重複部と壁下地材とをシール部材によりシールさせることができるので、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【0012】
また、第4の発明では、前記外壁面に対して屋内側に配置され、前記他方の外壁パネル及び建物本体のいずれかである基体と前記一方の外壁パネルとを連結する連結部材を備えることを特徴とし、さらに第5の発明では、前記連結部材は、前記壁下地材のうち前記シール部材によりシールされるシール部に向けて、前記重複部を押し付けるように前記一方の外壁パネルと前記基体とを連結することを特徴とする。
【0013】
これによれば、特に第3の発明に適用した場合において以下の効果が発揮される。すなわち、連結部材により一方の外壁パネルと基体とを連結させることで、壁下地材のシール部に向けて外壁材の重複部が押し付けられるので、この押し付け力により、シール部材はシール部及び重複部に密着することとなる。よって、シール部材によるシール性を向上できる。
【0014】
また、第6の発明では、前記連結部材は、前記一方の外壁パネルと前記基体とに跨って延びる連結部、前記連結部と前記基体とを固定する第1固定部、及び前記連結部と前記一方の外壁パネルとを固定する第2固定部を備え、前記第2固定部は、前記一方の外壁パネルを前記連結部に引き寄せる引寄機構を有することを特徴とする。これによれば、引寄機構を作動させて、一方の外壁パネルを連結部に引き寄せることで、一方の外壁パネルが基体に引き寄せられることとなり、重複部をシール部に向けて押し付けることを容易に実現できる。
【0015】
また、第7の発明では、前記引寄機構はボルト及びナットにより構成され、前記ボルト及び前記ナットの一方は、前記一方の外壁パネルに回転不能に取り付けられ、前記ボルト及び前記ナットの他方を回転させて締め付けることで、前記一方の外壁パネルを前記連結部に引き寄せて前記連結部に固定するよう構成されていることを特徴とする。これによれば、引寄機構の構成を簡素にできるとともに、引寄機構により一方の外壁パネルと連結部との固定を実現できる。なお、引寄機構の他の具体例としては、図10に例示されるバックル44等が挙げられる。
【0016】
ここで、ボルト及びナットを締め付けて一方の外壁パネルを連結部に引き寄せる過程において、一方の外壁パネルの壁下地材が連結部に当接すると、その当接した状態でボルト及びナットをさらに締め付ければ連結部への固定は十分になされるものの、外壁パネルの寸法ばらつきによっては先述した重複部の押付力が不足する場合があり、この場合には、シール部材の密着が不十分となりシール性が十分に確保されていないおそれがある。
【0017】
これに対し、第8の発明では、前記ボルト及び前記ナットの締め付けにより前記固定が完了した状態において、前記一方の外壁パネルの前記壁下地材と前記連結部との間には隙間(図4(b)に例示される符号41c参照)が形成されていることを特徴とする。これによれば、隙間により外壁パネルの寸法ばらつきを吸収できるので、先述した壁下地材と連結部との当接による押付力不足のおそれを回避でき、シール部材のシール性を十分に確保することを確実にできる。
【0018】
また、第9の発明では、前記連結部材を複数箇所に設けたことを特徴とする。特に、上記第5の発明に第9の発明を適用した場合には、連結部材を複数箇所に設けることにより重複部の押付力を複数箇所で生じさせることができるので、シール部材のシール性を向上できる。
【0019】
また、第10の発明では、前記他方の外壁パネルは、前記一方の外壁パネルの水平方向両隣に配置されており、前記連結部材は、前記一方の外壁パネルを前記両隣の外壁パネルに連結させることを特徴とする。これによれば連結部材を両隣の外壁パネルに対して兼用できるので、連結部材の部品点数を半減できる。さらに、連結部材は両隣の外壁パネルにより両端支持されるので、連結部材による連結を強固にできる。
【0020】
また、第11の発明では、前記一方の外壁パネルと前記他方の外壁パネルとが対向する箇所には、屋内側から不定形シール材(図4に例示される符号S3参照)が充填されていることを特徴とするので、図12に示す従来構造による屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【0021】
また、第12の発明では、前記一方の外壁パネルと前記他方の外壁パネルとは、水平方向又は上下方向に並べて配置されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
[第1の実施形態]
以下、本実施形態に係る建物の壁構造を図1〜図7に基づき説明する。
【0024】
図1は建物1及び建物1が建てられる敷地P1を示す平面図であり、図1に示す敷地P1は、他の建物が建てられた敷地P2と隣接している。そのため、建物1のうち敷地P2の側には、作業足場2(図12参照)を設置するスペースを確保できない状況である。なお、図中の一点鎖線は各敷地P1,P2を区画する隣地境界線を示している。そして建物1には、水平方向に複数並べて設置された外壁パネル10,20,30が備えられている。
【0025】
図2は外壁パネル10,20,30単体を示す斜視図であり、一般外壁パネル10(他方の外壁パネル)及びジョイント外壁パネル20(一方の外壁パネル)を交互に並べるとともに、建物1のコーナ部分にはコーナ外壁パネル30(一方の外壁パネル)が並べて設置される。また、本実施形態に係る建物1は2階建であるため、各外壁パネル10,20,30は1階用外壁パネル10と2階用外壁パネル10に分類され、1階用外壁パネル10の上に2階用外壁パネル10が上下方向に並べて配置されている(図6参照)。以下、単に「外壁パネル10,20,30」と称するものは1階用外壁パネルのことである。以下、符号の添字(1F)は1階用の部材を表し、添字(2F)は2階用の部材を表す。
【0026】
1階用外壁パネル10(1F)及び2階用外壁パネル10(2F)はともに、外壁面1aを形成する外壁材11,21,31と、外壁材21を屋内側から支持するフレーム材12,22,32(壁下地材)とを備えて構成されている。本実施形態に係る外壁材11,21,31は、セメントに木片等を混入させてプレス成形により板状に形成された周知の窯業系サイディングである。なお、このような単一層のサイディングボードに替え、基板にタイルを貼った複合仕上材を外壁材11,21,31に適用してもよい。
【0027】
フレーム材12,22,32は金属製フレームにより枠状に形成されており、フレーム材12,22,32には、屋内側に延出する金属製のブラケット13,23,33が備えられている。フレーム材12,22,32及びブラケット13,23,33を形成する金属製フレームの具体例としては、L形鋼、溝形鋼、リップ付き溝形鋼及び平鋼等が挙げられ、本実施形態では、フレーム材12,22,32に溝形鋼を採用し、ブラケット13,23,33にL形鋼を採用し、各々を溶接により結合させている。
【0028】
本実施形態の建物1は軽量鉄骨を組み立ててなる軸組構造であり、軸組構造の構成部材としての床梁1b及び天井梁1c(建物本体)を備えている。床梁1b及び天井梁1cにはH形鋼が採用されており、図3に示すように、床梁1b及び天井梁1cに先述のブラケット13,23,33をボルト等で結合することにより、外壁パネル10,20,30を床梁1b及び天井梁1cに支持させている。
【0029】
図4は、一般外壁パネル10及びジョイント外壁パネル20を床梁1b及び天井梁1cに取り付けた状態を示す水平断面図である。なお、図4(a)は、ジョイント外壁パネル20を床梁1b及び天井梁1cに仮組みした状態を示し、図4(b)は本固定した状態を示す。図4(a)の仮組み状態では、ジョイント外壁パネル20のブラケット23は、壁厚み方向(図4の左右方向)に移動可能(位置調整可能)な状態で床梁1b及び天井梁1cに支持されている。
【0030】
具体的には、例えば、ブラケット23を梁1b,1cにボルトで固定する場合において、ブラケット23に形成されるボルト挿入穴を壁厚み方向に延びる長穴形状に形成することにより位置調整可能とする。これによれば、図4(a)の仮組み状態ではボルトを緩めた状態で締結し、図4(b)の本固定状態ではボルトを所定トルク以上で締結することで、壁厚み方向に移動可能な状態で床梁1b及び天井梁1cに支持させることを実現できる。
【0031】
ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30の水平方向両端部は、外壁材21,31がフレーム材22,32の端部から水平方向に延出する段差形状に形成されている。一方、一般外壁パネル10の水平方向両端部は、フレーム材12が外壁材11の端部から水平方向に延出する段差形状に形成されており、フレーム材12の水平方向両端部が外壁材11からはみ出した形状である。そして、外壁材21,31の延出部分である重複部21a,31a(図2及び図7(c)参照)は、フレーム材12のはみ出した部分であるシール部12aに対して壁厚み方向(図4の左右方向)に重複する。つまり、シール部12aは重複部21a,31aに覆われて屋外側から目隠しされる。なお、重複部21a,31aは、シール部12aの上下方向全体に亘って延びる形状である。
【0032】
図2及び図3中の網点ハッチに示す如く、重複部21a,31aとシール部12aとの間にはシール部材S1が配置されており、このシール部材S1により、ジョイント外壁パネル20の外壁材21,31と、一般外壁パネル10のフレーム材12との間はシールされる。なお、シール部材S1は、シール部12aの上下方向全体に亘って延びる形状である。本実施形態に係るシール部材S1には、壁圧方向に弾性変形することで外壁材21,31及びフレーム材12と密着することでシール機能を発揮する圧縮水密部材(例えばゴム製シート)が採用されている。なお、当該シール部材S1に、水分を吸収して膨潤することでシール機能を発揮する部材を採用してもよい。
【0033】
1階用外壁パネル10,20,30のフレーム材12,22,32と2階用外壁パネルのフレーム材との間には、シール部材S2が配置されており、このシール部材S2により、1階用フレーム材12,22,32と2階用フレーム材との間はシールされる。なお、シール部材S2は、フレーム材12,22,32の水平方向全体に亘って延びる形状である。シール部材S2の材質はシール部材S1と同様である。
【0034】
シール部材S1は、フレーム材12のシール部12aに接着剤により貼り付けられている。シール部材S2は、1階用フレーム材12,22,32のうち2階用フレーム材に対向する部分に、接着剤により貼り付けられている。これらのシール部材S1,S2は、各外壁パネル10,20,30を床梁1b及び天井梁1cに固定する作業の前に、上記所定箇所に予め貼り付けられている。これにより、当該貼り付けの作業性を向上できる。
【0035】
図1及び図4に示す如く、ジョイント外壁パネル20とその両隣に位置する一般外壁パネル10とは、連結部材40により連結されている。また、コーナ外壁パネル30とその両隣に位置する一般外壁パネル10とは、連結部材50により連結されている。これらの連結部材40,50は、外壁パネル10,20,30の上下方向中央部、上端部及び下端部の3箇所に配置されている。両連結部材40,50の構造は略同一であるため、以下、連結部材40の構成のみについて図4を用いて詳細に説明し、連結部材50の詳細説明は連結部材40の説明を援用する。
【0036】
図5は図4を屋内側から見た斜視図であり、当該図5及び図4に示す如く連結部材40は、次に説明する連結部41、第1固定部42及び第2固定部43を備えて構成されている。連結部41は、ジョイント外壁パネル20と、その両隣に位置する一般外壁パネル10とに跨って水平方向に延びる形状であり、本実施形態では金属製の平板を採用している。なお、連結部材40の連結部41は、ジョイント外壁パネル20の内面に沿って直線的に延びる形状であるのに対し、連結部材50の連結部は、コーナ外壁パネル30の内面に沿って略直角に曲がる形状である。この点を除き、両連結部材40,50の構造は同一である。
【0037】
第1固定部42は、一般外壁パネル10(特許請求の範囲に記載の「基体」に相当)のフレーム材12と連結部41とを固定するものであり、ボルト42a及びナット42bから構成されている。ナット42bは、フレーム材12のフランジ内面に溶接されることで回転不能に取り付けられている。ボルト42aは、連結部41に形成された挿入穴41aに屋内側から挿入されている。そして、ボルト42aをナット42bに締め付けることで、連結部41はフレーム材12に固定されている。
【0038】
第2固定部43は、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22と連結部41とを固定するものであり、ボルト43a及びナット43bから構成されている。ナット43bは、フレーム材22のフランジ内面に溶接されることで回転不能に取り付けられている。ボルト43aは、連結部41に形成された挿入穴41bに屋内側から挿入されている。そして、ボルト43aをナット43bに締め付けることで、フレーム材22は連結部41に固定されている。
【0039】
ボルト43aを締め付ける時には、ジョイント外壁パネル20は図4(a)の仮組み状態であり、ブラケット23が溶接されたフレーム材22は、壁厚み方向に移動可能な状態となっている。したがって、第2固定部43のボルト43aを上述の如く締め付けると、フレーム材22は、連結部41に向けて壁厚み方向に移動して引き寄せられることとなり、つまり、ボルト43a及びナット43bは、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22を連結部41に引き寄せるよう作動する引寄機構として機能する。そして、フレーム材22を連結部41に引き寄せることで、重複部21aはシール部12aに向けて押し付けられることとなる。
【0040】
図4(a)は、ボルト43aを締め付けてジョイント外壁パネル20を連結部41に引き寄せることで、外壁材21の重複部21aがシール部材S1の表面に当接した状態を示す。その後さらにボルト43aを締め付けると、シール部材S1は壁厚み方向に圧縮されて弾性変形する。図4(b)は、シール部材S1を所望量だけ弾性変形させた状態を示す。具体的には、連結部41が変形する程度にボルト43aを締め付けることが望ましい。
【0041】
ジョイント外壁パネル20のフレーム材22の壁厚み方向寸法は、一般外壁パネル10のフレーム材12の壁厚み方向寸法よりも小さく形成されている。また、ジョイント外壁パネル20の外壁材21の壁厚み方向寸法は一般外壁パネル10の外壁材21の壁厚み方向寸法と同一に形成されている。そのため、シール部材S1を所望量だけ弾性変形させた図4(b)の状態では、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22と連結部41との間に隙間41cが形成されることとなる。また、当該図4(b)の状態では、一般外壁パネル10の外壁面1aとジョイント外壁パネル20の外壁面1aとが同一平面上に位置する面一の状態になるよう設定されている。
【0042】
図4(b)に示すように、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22の端面と、一般外壁パネル10のフレーム材12の端面との間には、不定形シール材S3が充填されている。当該充填は屋内側からなされるため、不定形シール材S3の屋外側にバックアップ材60を設置することで、充填した不定形シール材S3の屋外側への流出を防止している。図5では、バックアップ材60を設置した直後の状態であり、不定形シール材S3を充填する前の状態を示している。バックアップ材60は、両フレーム材12,22の上下方向全体に亘って延びる形状である。
【0043】
図6(a)は、1階用外壁パネル10(1F)と2階用外壁パネル10(2F)との接続構造を模式的に示す縦断面図である。なお、図6(b)は(a)の拡大図である。なお、この上下階接続構造は、各外壁パネル10,20,30について同一であるため、以下、一般外壁パネル10のみについて上下階接続構造を説明する。
【0044】
1階用外壁材11(1F)の上端部11a及び2階用外壁材11(2F)の下端部11bは、壁厚み方向に薄肉の形状に形成されており、上端部11a及び下端部11bは壁厚み方向に重複するよう配置されている。なお、上端部11aが下端部11bの屋内側に位置する。また、上端部11aには、1階用フレーム材12(1F)の上端面とともにシール部材S2が貼り付けられている。
【0045】
次に、建物1の床梁1b及び天井梁1cに複数の外壁パネル10,20,30を組み付ける施工手順を、図7等を用いて説明する。なお、図7(a)〜(d)は外壁パネル10,20,30を上方から見た平面図であり、図7(e),(f)は外壁パネル10,20,30を屋外側から見た斜視図である。
【0046】
先ず、図1に示す前面道路に搬入された1階用一般外壁パネル10(1F)をクレーンで吊り上げ、床梁1b及び天井梁1cの所定箇所に据え付ける。そして、一般外壁パネル10のブラケット13を床梁1b及び天井梁1cにボルト締結して固定する(図7(a)参照)。
【0047】
次に、前面道路に搬入されたジョイント外壁パネル20をクレーンで吊り上げ、床梁1b及び天井梁1cの所定箇所に据え付ける。そして、ジョイント外壁パネル20のブラケット23を床梁1b及び天井梁1cにボルト締結する(図7(b)参照)。この段階では、ボルトを緩ませた状態で締結し、図4(a)に示す仮組み状態にする。同様にして、コーナ外壁パネル30も床梁1b及び天井梁1cの所定箇所に仮組みする(図7(c)参照)。
【0048】
次に、各外壁パネル10,20,30の屋内側からの作業として、連結部材40,50を所定位置に取り付け(図7(e)参照)、ボルト42aを挿入穴41aに屋内側から挿入し、ナット42bに締め付ける。これにより、一般外壁パネル10のフレーム材12に連結部41を固定する。次に、ボルト43aを挿入穴41bに屋内側から挿入し、ナット43bに締め付ける。これにより、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22及びコーナ外壁パネル30のフレーム材32を連結部41に固定する(図7(d)参照)。
【0049】
次に、各外壁パネル10,20,30の屋内側からの作業として、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30のフレーム材22,32の端面と、一般外壁パネル10のフレーム材12の端面との間に、バックアップ材60を取り付ける(図7(f)参照)。次に、コーキングガン61(充填装置)を用いて、前記両フレーム材22,32の端面間に不定形シール材S3を充填する。2階用外壁パネル10,20,30についても、上述した1階用外壁パネル10,20,30と同様の施工手順により組み付ける。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0051】
(1)外壁パネル10,20,30を複数並べて設置する前に、シール部12aにシール部材S1を予め取り付けて、重複部21a,31a及びシール部12aにシール部材S1を密着させることにより、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30の外壁材21,31と、一般外壁パネル10のフレーム材12とをシールさせることができるので、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。よって、建物1を設置する敷地P1が狭く外壁パネル10,20,30の屋外側に作業足場2(図12参照)を設置するスペースを確保することが困難な場合であっても、敷地P1内における外壁パネル10,20,30の設置位置が制限されることを抑制できる。また、外壁パネル10,20,30の屋外側の作業足場2を不要にできるので、建物1の施工における仮設コストの削減を図ることができる。
【0052】
(2)隣り合う外壁パネル10,20,30を連結部材40,50で連結するとともに、当該連結部材40,50のボルト43aを締め付けることで、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30のフレーム材22,32を連結部41に引き寄せる。これにより、重複部21a,31aがシール部12aに向けて押し付けられることとなり、シール部材S1は壁厚み方向に圧縮されて弾性変形し、重複部21a,31a及びシール部12aにシール部材S1が十分に密着する。よって、シール部材S1によるシール性を向上できる。
【0053】
(3)連結部材40,50のボルト43aを締め付けてシール部材S1を所望量だけ弾性変形させた図4(b)の状態において、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30のフレーム材22,32と連結部41との間に隙間41cが形成されている。これによれば、隙間41cにより外壁パネル10,20,30の壁厚み方向の寸法ばらつきを吸収できるので、フレーム材22,32と連結部41とが当接することにより重複部21a,31aのシール部12aへの押付力が不足してシール部材S1を所望量だけ弾性変形できなくなるおそれを回避できる。よって、シール部材S1のシール性を十分に確保することを確実にできる。
【0054】
(4)連結部材40,50は、外壁パネル10,20,30の複数箇所(上下方向中央部、上端部及び下端部の3箇所)に配置されているので、重複部21a,31aのシール部12aへの押付力を複数箇所で生じさせることができる。よって、シール部材S1のシール性を向上できる。
【0055】
(5)連結部材40は、ジョイント外壁パネル20とその両隣に位置する一般外壁パネル10とを連結するので、連結部41の両端が一般外壁パネル10に支持された状態で、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22を連結部41に引き寄せる。よって、このような引寄力に対する連結部41の曲げ応力を低減でき、連結部41に要求される曲げ剛性を軽減できる。
【0056】
(6)ジョイント外壁パネル20のフレーム材22の端面と一般外壁パネル10のフレーム材12の端面との間に、不定形シール材S3を屋内側から充填しても、バックアップ材60が重複部21aにより屋外側から目隠しされることとなる。また、不定形シール材S3を屋内側から充填でき、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【0057】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、第2固定部43をボルト43a及びナット43bから構成しており、ジョイント外壁パネル20にナット43bを固定してボルト43aを屋内側から締め付けることで、ジョイント外壁パネル20を連結部41に固定している。
【0058】
これに対し図8(a)(b)に示す本実施形態では、第2固定部43をナット43c及びボルト43dから構成し、ジョイント外壁パネル20にボルト43dを固定してナット43cを屋内側から締め付けることで、ジョイント外壁パネル20を連結部41に固定している。より具体的には、ジョイント外壁パネル20の外壁材21又はフレーム材22にボルト43dを溶接して固定している。これによっても、上記第1の実施形態と同様の効果が発揮される。
【0059】
[第3の実施形態]
上記第2の実施形態ではフレーム材22にボルト43dを溶接にて固定している。これに対し図9(a)(b)(c)に示す本実施形態では、ボルト43dに係止片43eを溶接し、その係止片43eをフレーム材12,22に係止させることで、ボルト43dの回転を規制している。これによっても、上記第2の実施形態と同様の効果が発揮される。
【0060】
[第4の実施形態]
上記各実施形態では、連結部41、ボルト43a,43d及びナット43b,43cから連結部材40を構成している。これに対し図10(a)(b)に示す本実施形態では、バックル44により連結部材40を構成している。当該バックル44により、ジョイント外壁パネル20と一般外壁パネル10とを連結している。
【0061】
また、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22に溶接等により固定された係止フック44aにバックル44を係止させた状態で、図10(b)中の矢印に示す如くバックル44を屋内側から回動操作すると、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22が屋内側に引き寄せられる。すると、重複部21aがシール部12aに向けて押し付けられることとなり、重複部21a及びシール部12aにシール部材S1が十分に密着する。よって、上記各実施形態と同様にして、シール部材S1によるシール性を十分に向上できる。
【0062】
また、バックル44のねじ部44bを調整操作することで、重複部21aのシール部12aへの押付力を調整してシール部材S1の弾性変形量を調整できるので、シール部材S1を所望量だけ弾性変形させるよう、容易に調整できる。
【0063】
[第5の実施形態]
上記各実施形態では、ジョイント外壁パネル20の外壁材21の両端に重複部21aを形成し、一般外壁パネル10のフレーム材12の両端にシール部12aを形成している。これに対し図11に示す本実施形態では、ジョイント外壁パネル20及び一般外壁パネル10を同一の構造にしている。すなわち、ジョイント外壁パネル20一端には、外壁材21に形成された重複部21aを備え、他端には、フレーム材22に形成されたシール部22aを備えている。同様に、一般外壁パネル10の一端には、外壁材11に形成された重複部11cを備え、他端には、フレーム材12に形成されたシール部12aを備えている。
【0064】
これによれば、上記各実施形態と同様の効果が発揮されるとともに、ジョイント外壁パネル20及び一般外壁パネル10を同一の構造にできるので、外壁パネルの種類を減らすことができる。
【0065】
[他の実施形態]
上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。また、本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、各実施形態の特徴的構造をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0066】
・上記各実施形態では、連結部材40,50の一端を一般外壁パネル10に連結させて、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30を一般外壁パネル10に引き寄せるよう構成しているが、連結部材40,50の一端を建物本体(例えば床梁1b又は天井梁1c)に連結させて、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30を建物本体に引き寄せるよう構成してもよい。
【0067】
・上記各実施形態では、一般外壁パネル10のシール部12aにシール材S1を貼り付けているが、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30の重複部21a,31aにシール材S1を貼り付けるようにしてもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、隣り合う外壁パネル10,20,30間のシールを、シール材S1及び不定形シール材S3の両方で行っているが、いずれか一方のシール材を廃止して他方のシール材のみとでシールするようにしてもよい。
【0069】
・上記各実施形態では、水平方向に隣り合う外壁パネル10,20,30間のシールについて、シール部12a及び重複部21aを形成しているが、上下方向に隣り合う外壁パネル10(1F),10(2F)についてシール部12a及び重複部21aを形成してシール材S1,S3によりシールするようにしてもよい。
【0070】
・コーナ外壁パネル30の連結部材50の連結部は、コーナ外壁パネル30の内面に沿って略直角に曲がる形状に形成してもよいし、図7(d)に示す如く直線的に延びる形状に形成して、隣合う一般外壁パネル10の各々に対して別々の連結部を用いるようにしてもよい。
【0071】
・上記各実施形態で採用されている締め付け用のボルト42a,43a及びナット43cと連結部41との間にはワッシャを介在させることが望ましく、これらのボルト42a,43a及びナット43cにワッシャ付のボルト及びナットを適用することがより望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る建物が建てられる敷地を示す平面図。
【図2】図1の外壁パネル単体を示す斜視図。
【図3】図2の外壁パネルを床梁及び天井梁に支持させた状態を示す斜視図。
【図4】図2の一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルを、床梁及び天井梁に取り付けた状態を示す水平断面図。
【図5】図4の外壁パネルを屋内側から見た斜視図。
【図6】(a)は1階用外壁パネルと2階用外壁パネルとの接続構造を模式的に示す縦断面図、(b)は(a)の拡大図。
【図7】図2の各外壁パネルを床梁及び天井梁に組み付ける施工手順を説明する模式図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルの連結構造を示す図であり、(a)は水平断面図、(b)は屋内側から見た斜視図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルの連結構造を示す図であり、(a)は水平断面図、(b)は屋内側から見た斜視図。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルの連結構造を示す図であり、(a)は水平断面図、(b)は屋内側から見た斜視図。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルの連結構造を示す水平断面図。
【図12】従来の外壁パネルのシール構造を模式的に示す水平断面図。
【符号の説明】
【0073】
1…建物、1a…外壁面、1b…床梁(建物本体)、1c…天井梁(建物本体)、
10…一般外壁パネル(他方の外壁パネル)、
20…ジョイント外壁パネル(一方の外壁パネル)、
30…コーナ外壁パネル(一方の外壁パネル)、
11,21,31…外壁材、
12,22,32…フレーム材(壁下地材)、
11c,21a,31a…重複部、
12a,22a…シール部、
40,50…連結部材、
S1…シール部材、S3…不定形シール材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルを複数並べて設置する建物の壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等に記載の外壁パネルは、水平断面図である図12に示すように、外壁面1aを形成する外壁材11x、及び外壁材11xを屋内側から支持する壁下地材12xから構成されている。そして、従来の建物の壁構造は、このような外壁パネル10xを複数並べて設置することで構成されている。また、隣り合う外壁材11xの間に不定形シール材S3xを充填することで、外壁パネル10x間をシールしている。
【特許文献1】特開平6−26117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような不定形シール材S3xの充填作業は屋外側から行うことを要するため、外壁パネル10xの屋外側近傍に作業足場2を設置する必要がある。しかしながら、建物を設置する敷地が狭く、隣地境界線R(図1参照)が外壁パネル10xの近傍に位置する場合等、作業足場2を設置するスペースを確保することが困難な場合がある。換言すれば、作業足場2の設置スペースを確保すべく、敷地内における外壁パネル10xの設置位置が制限されてしまう。
【0004】
本発明は、外壁パネル間をシールするにあたり、屋外側からの作業を不要にできる建物の壁構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0006】
すなわち、第1の発明では、外壁面を形成する外壁材、及び前記外壁材を屋内側から支持する壁下地材を有して構成される外壁パネルを備え、前記外壁パネルを複数並べて設置するとともに前記外壁パネル間をシールする建物の壁構造であり、隣り合う前記外壁パネルにおいて、一方の外壁パネルの前記外壁材には、他方の外壁パネルの前記壁下地材と壁厚み方向に重複する重複部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この第1の発明によれば、外壁パネルを複数並べて設置する前に、他方の外壁パネルの壁下地材のうち重複部に対向する部分又は重複部にシール部材を予め取り付けて、重複部と壁下地材とをシール部材(図4に例示される符号S1参照)によりシールさせることができるので、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【0008】
或いは、両外壁パネルの壁下地材と重複部とに囲まれた空間に不定形シール材(図4に例示される符号S3参照)を屋内側から充填でき、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。すなわち、図12に示す従来構造において不定形シール材S3xを屋内側から充填すると、バックアップ材60xが屋外側に露出してしまうこととなるため、外壁パネルの見栄えが著しく損なわれ、現実的ではない。これに対し、上記第1の発明によれば、図4に例示される如く不定形シール材S3を屋内側から充填しても、バックアップ材60が重複部21aにより屋外側から目隠しされることとなる。よって、不定形シール材S3の屋内側からの充填を可能ならしめている。
【0009】
以上により、上記第1の発明によれば、隣り合う外壁パネル間をシールするにあたり、屋外側からの作業を不要にできるので、建物を設置する敷地が狭く外壁パネルの屋外側に作業足場を設置するスペースを確保することが困難な場合であっても、敷地内における外壁パネルの設置位置が制限されることを抑制できる。なお、上記「シール」は、防水シールのみならず防音、防臭等のシールをも含む意味である。
【0010】
また、第2の発明では、前記他方の外壁パネルの端部は、前記壁下地材の端部が前記外壁材からはみ出した段差形状に形成され、前記段差を構成する前記壁下地材の端部に前記重複部を対向配置した状態で、前記一方の外壁パネルの外壁面と前記他方の外壁パネルの外壁面とが略同一平面上に位置するよう構成されていることを特徴とする。これによれば、隣り合う外壁パネルの外壁面を略同一平面上に位置させるので、外壁パネルの見栄えを良好にできる。
【0011】
また、第3の発明では、前記重複部と前記壁下地材との間に配置されてシールするシール部材(図4に例示される符号S1参照)を備えることを特徴とするので、例えば、外壁パネルを複数並べて設置する前にシール部材を重複部に予め取り付けて、重複部と壁下地材とをシール部材によりシールさせることができるので、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【0012】
また、第4の発明では、前記外壁面に対して屋内側に配置され、前記他方の外壁パネル及び建物本体のいずれかである基体と前記一方の外壁パネルとを連結する連結部材を備えることを特徴とし、さらに第5の発明では、前記連結部材は、前記壁下地材のうち前記シール部材によりシールされるシール部に向けて、前記重複部を押し付けるように前記一方の外壁パネルと前記基体とを連結することを特徴とする。
【0013】
これによれば、特に第3の発明に適用した場合において以下の効果が発揮される。すなわち、連結部材により一方の外壁パネルと基体とを連結させることで、壁下地材のシール部に向けて外壁材の重複部が押し付けられるので、この押し付け力により、シール部材はシール部及び重複部に密着することとなる。よって、シール部材によるシール性を向上できる。
【0014】
また、第6の発明では、前記連結部材は、前記一方の外壁パネルと前記基体とに跨って延びる連結部、前記連結部と前記基体とを固定する第1固定部、及び前記連結部と前記一方の外壁パネルとを固定する第2固定部を備え、前記第2固定部は、前記一方の外壁パネルを前記連結部に引き寄せる引寄機構を有することを特徴とする。これによれば、引寄機構を作動させて、一方の外壁パネルを連結部に引き寄せることで、一方の外壁パネルが基体に引き寄せられることとなり、重複部をシール部に向けて押し付けることを容易に実現できる。
【0015】
また、第7の発明では、前記引寄機構はボルト及びナットにより構成され、前記ボルト及び前記ナットの一方は、前記一方の外壁パネルに回転不能に取り付けられ、前記ボルト及び前記ナットの他方を回転させて締め付けることで、前記一方の外壁パネルを前記連結部に引き寄せて前記連結部に固定するよう構成されていることを特徴とする。これによれば、引寄機構の構成を簡素にできるとともに、引寄機構により一方の外壁パネルと連結部との固定を実現できる。なお、引寄機構の他の具体例としては、図10に例示されるバックル44等が挙げられる。
【0016】
ここで、ボルト及びナットを締め付けて一方の外壁パネルを連結部に引き寄せる過程において、一方の外壁パネルの壁下地材が連結部に当接すると、その当接した状態でボルト及びナットをさらに締め付ければ連結部への固定は十分になされるものの、外壁パネルの寸法ばらつきによっては先述した重複部の押付力が不足する場合があり、この場合には、シール部材の密着が不十分となりシール性が十分に確保されていないおそれがある。
【0017】
これに対し、第8の発明では、前記ボルト及び前記ナットの締め付けにより前記固定が完了した状態において、前記一方の外壁パネルの前記壁下地材と前記連結部との間には隙間(図4(b)に例示される符号41c参照)が形成されていることを特徴とする。これによれば、隙間により外壁パネルの寸法ばらつきを吸収できるので、先述した壁下地材と連結部との当接による押付力不足のおそれを回避でき、シール部材のシール性を十分に確保することを確実にできる。
【0018】
また、第9の発明では、前記連結部材を複数箇所に設けたことを特徴とする。特に、上記第5の発明に第9の発明を適用した場合には、連結部材を複数箇所に設けることにより重複部の押付力を複数箇所で生じさせることができるので、シール部材のシール性を向上できる。
【0019】
また、第10の発明では、前記他方の外壁パネルは、前記一方の外壁パネルの水平方向両隣に配置されており、前記連結部材は、前記一方の外壁パネルを前記両隣の外壁パネルに連結させることを特徴とする。これによれば連結部材を両隣の外壁パネルに対して兼用できるので、連結部材の部品点数を半減できる。さらに、連結部材は両隣の外壁パネルにより両端支持されるので、連結部材による連結を強固にできる。
【0020】
また、第11の発明では、前記一方の外壁パネルと前記他方の外壁パネルとが対向する箇所には、屋内側から不定形シール材(図4に例示される符号S3参照)が充填されていることを特徴とするので、図12に示す従来構造による屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【0021】
また、第12の発明では、前記一方の外壁パネルと前記他方の外壁パネルとは、水平方向又は上下方向に並べて配置されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
[第1の実施形態]
以下、本実施形態に係る建物の壁構造を図1〜図7に基づき説明する。
【0024】
図1は建物1及び建物1が建てられる敷地P1を示す平面図であり、図1に示す敷地P1は、他の建物が建てられた敷地P2と隣接している。そのため、建物1のうち敷地P2の側には、作業足場2(図12参照)を設置するスペースを確保できない状況である。なお、図中の一点鎖線は各敷地P1,P2を区画する隣地境界線を示している。そして建物1には、水平方向に複数並べて設置された外壁パネル10,20,30が備えられている。
【0025】
図2は外壁パネル10,20,30単体を示す斜視図であり、一般外壁パネル10(他方の外壁パネル)及びジョイント外壁パネル20(一方の外壁パネル)を交互に並べるとともに、建物1のコーナ部分にはコーナ外壁パネル30(一方の外壁パネル)が並べて設置される。また、本実施形態に係る建物1は2階建であるため、各外壁パネル10,20,30は1階用外壁パネル10と2階用外壁パネル10に分類され、1階用外壁パネル10の上に2階用外壁パネル10が上下方向に並べて配置されている(図6参照)。以下、単に「外壁パネル10,20,30」と称するものは1階用外壁パネルのことである。以下、符号の添字(1F)は1階用の部材を表し、添字(2F)は2階用の部材を表す。
【0026】
1階用外壁パネル10(1F)及び2階用外壁パネル10(2F)はともに、外壁面1aを形成する外壁材11,21,31と、外壁材21を屋内側から支持するフレーム材12,22,32(壁下地材)とを備えて構成されている。本実施形態に係る外壁材11,21,31は、セメントに木片等を混入させてプレス成形により板状に形成された周知の窯業系サイディングである。なお、このような単一層のサイディングボードに替え、基板にタイルを貼った複合仕上材を外壁材11,21,31に適用してもよい。
【0027】
フレーム材12,22,32は金属製フレームにより枠状に形成されており、フレーム材12,22,32には、屋内側に延出する金属製のブラケット13,23,33が備えられている。フレーム材12,22,32及びブラケット13,23,33を形成する金属製フレームの具体例としては、L形鋼、溝形鋼、リップ付き溝形鋼及び平鋼等が挙げられ、本実施形態では、フレーム材12,22,32に溝形鋼を採用し、ブラケット13,23,33にL形鋼を採用し、各々を溶接により結合させている。
【0028】
本実施形態の建物1は軽量鉄骨を組み立ててなる軸組構造であり、軸組構造の構成部材としての床梁1b及び天井梁1c(建物本体)を備えている。床梁1b及び天井梁1cにはH形鋼が採用されており、図3に示すように、床梁1b及び天井梁1cに先述のブラケット13,23,33をボルト等で結合することにより、外壁パネル10,20,30を床梁1b及び天井梁1cに支持させている。
【0029】
図4は、一般外壁パネル10及びジョイント外壁パネル20を床梁1b及び天井梁1cに取り付けた状態を示す水平断面図である。なお、図4(a)は、ジョイント外壁パネル20を床梁1b及び天井梁1cに仮組みした状態を示し、図4(b)は本固定した状態を示す。図4(a)の仮組み状態では、ジョイント外壁パネル20のブラケット23は、壁厚み方向(図4の左右方向)に移動可能(位置調整可能)な状態で床梁1b及び天井梁1cに支持されている。
【0030】
具体的には、例えば、ブラケット23を梁1b,1cにボルトで固定する場合において、ブラケット23に形成されるボルト挿入穴を壁厚み方向に延びる長穴形状に形成することにより位置調整可能とする。これによれば、図4(a)の仮組み状態ではボルトを緩めた状態で締結し、図4(b)の本固定状態ではボルトを所定トルク以上で締結することで、壁厚み方向に移動可能な状態で床梁1b及び天井梁1cに支持させることを実現できる。
【0031】
ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30の水平方向両端部は、外壁材21,31がフレーム材22,32の端部から水平方向に延出する段差形状に形成されている。一方、一般外壁パネル10の水平方向両端部は、フレーム材12が外壁材11の端部から水平方向に延出する段差形状に形成されており、フレーム材12の水平方向両端部が外壁材11からはみ出した形状である。そして、外壁材21,31の延出部分である重複部21a,31a(図2及び図7(c)参照)は、フレーム材12のはみ出した部分であるシール部12aに対して壁厚み方向(図4の左右方向)に重複する。つまり、シール部12aは重複部21a,31aに覆われて屋外側から目隠しされる。なお、重複部21a,31aは、シール部12aの上下方向全体に亘って延びる形状である。
【0032】
図2及び図3中の網点ハッチに示す如く、重複部21a,31aとシール部12aとの間にはシール部材S1が配置されており、このシール部材S1により、ジョイント外壁パネル20の外壁材21,31と、一般外壁パネル10のフレーム材12との間はシールされる。なお、シール部材S1は、シール部12aの上下方向全体に亘って延びる形状である。本実施形態に係るシール部材S1には、壁圧方向に弾性変形することで外壁材21,31及びフレーム材12と密着することでシール機能を発揮する圧縮水密部材(例えばゴム製シート)が採用されている。なお、当該シール部材S1に、水分を吸収して膨潤することでシール機能を発揮する部材を採用してもよい。
【0033】
1階用外壁パネル10,20,30のフレーム材12,22,32と2階用外壁パネルのフレーム材との間には、シール部材S2が配置されており、このシール部材S2により、1階用フレーム材12,22,32と2階用フレーム材との間はシールされる。なお、シール部材S2は、フレーム材12,22,32の水平方向全体に亘って延びる形状である。シール部材S2の材質はシール部材S1と同様である。
【0034】
シール部材S1は、フレーム材12のシール部12aに接着剤により貼り付けられている。シール部材S2は、1階用フレーム材12,22,32のうち2階用フレーム材に対向する部分に、接着剤により貼り付けられている。これらのシール部材S1,S2は、各外壁パネル10,20,30を床梁1b及び天井梁1cに固定する作業の前に、上記所定箇所に予め貼り付けられている。これにより、当該貼り付けの作業性を向上できる。
【0035】
図1及び図4に示す如く、ジョイント外壁パネル20とその両隣に位置する一般外壁パネル10とは、連結部材40により連結されている。また、コーナ外壁パネル30とその両隣に位置する一般外壁パネル10とは、連結部材50により連結されている。これらの連結部材40,50は、外壁パネル10,20,30の上下方向中央部、上端部及び下端部の3箇所に配置されている。両連結部材40,50の構造は略同一であるため、以下、連結部材40の構成のみについて図4を用いて詳細に説明し、連結部材50の詳細説明は連結部材40の説明を援用する。
【0036】
図5は図4を屋内側から見た斜視図であり、当該図5及び図4に示す如く連結部材40は、次に説明する連結部41、第1固定部42及び第2固定部43を備えて構成されている。連結部41は、ジョイント外壁パネル20と、その両隣に位置する一般外壁パネル10とに跨って水平方向に延びる形状であり、本実施形態では金属製の平板を採用している。なお、連結部材40の連結部41は、ジョイント外壁パネル20の内面に沿って直線的に延びる形状であるのに対し、連結部材50の連結部は、コーナ外壁パネル30の内面に沿って略直角に曲がる形状である。この点を除き、両連結部材40,50の構造は同一である。
【0037】
第1固定部42は、一般外壁パネル10(特許請求の範囲に記載の「基体」に相当)のフレーム材12と連結部41とを固定するものであり、ボルト42a及びナット42bから構成されている。ナット42bは、フレーム材12のフランジ内面に溶接されることで回転不能に取り付けられている。ボルト42aは、連結部41に形成された挿入穴41aに屋内側から挿入されている。そして、ボルト42aをナット42bに締め付けることで、連結部41はフレーム材12に固定されている。
【0038】
第2固定部43は、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22と連結部41とを固定するものであり、ボルト43a及びナット43bから構成されている。ナット43bは、フレーム材22のフランジ内面に溶接されることで回転不能に取り付けられている。ボルト43aは、連結部41に形成された挿入穴41bに屋内側から挿入されている。そして、ボルト43aをナット43bに締め付けることで、フレーム材22は連結部41に固定されている。
【0039】
ボルト43aを締め付ける時には、ジョイント外壁パネル20は図4(a)の仮組み状態であり、ブラケット23が溶接されたフレーム材22は、壁厚み方向に移動可能な状態となっている。したがって、第2固定部43のボルト43aを上述の如く締め付けると、フレーム材22は、連結部41に向けて壁厚み方向に移動して引き寄せられることとなり、つまり、ボルト43a及びナット43bは、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22を連結部41に引き寄せるよう作動する引寄機構として機能する。そして、フレーム材22を連結部41に引き寄せることで、重複部21aはシール部12aに向けて押し付けられることとなる。
【0040】
図4(a)は、ボルト43aを締め付けてジョイント外壁パネル20を連結部41に引き寄せることで、外壁材21の重複部21aがシール部材S1の表面に当接した状態を示す。その後さらにボルト43aを締め付けると、シール部材S1は壁厚み方向に圧縮されて弾性変形する。図4(b)は、シール部材S1を所望量だけ弾性変形させた状態を示す。具体的には、連結部41が変形する程度にボルト43aを締め付けることが望ましい。
【0041】
ジョイント外壁パネル20のフレーム材22の壁厚み方向寸法は、一般外壁パネル10のフレーム材12の壁厚み方向寸法よりも小さく形成されている。また、ジョイント外壁パネル20の外壁材21の壁厚み方向寸法は一般外壁パネル10の外壁材21の壁厚み方向寸法と同一に形成されている。そのため、シール部材S1を所望量だけ弾性変形させた図4(b)の状態では、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22と連結部41との間に隙間41cが形成されることとなる。また、当該図4(b)の状態では、一般外壁パネル10の外壁面1aとジョイント外壁パネル20の外壁面1aとが同一平面上に位置する面一の状態になるよう設定されている。
【0042】
図4(b)に示すように、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22の端面と、一般外壁パネル10のフレーム材12の端面との間には、不定形シール材S3が充填されている。当該充填は屋内側からなされるため、不定形シール材S3の屋外側にバックアップ材60を設置することで、充填した不定形シール材S3の屋外側への流出を防止している。図5では、バックアップ材60を設置した直後の状態であり、不定形シール材S3を充填する前の状態を示している。バックアップ材60は、両フレーム材12,22の上下方向全体に亘って延びる形状である。
【0043】
図6(a)は、1階用外壁パネル10(1F)と2階用外壁パネル10(2F)との接続構造を模式的に示す縦断面図である。なお、図6(b)は(a)の拡大図である。なお、この上下階接続構造は、各外壁パネル10,20,30について同一であるため、以下、一般外壁パネル10のみについて上下階接続構造を説明する。
【0044】
1階用外壁材11(1F)の上端部11a及び2階用外壁材11(2F)の下端部11bは、壁厚み方向に薄肉の形状に形成されており、上端部11a及び下端部11bは壁厚み方向に重複するよう配置されている。なお、上端部11aが下端部11bの屋内側に位置する。また、上端部11aには、1階用フレーム材12(1F)の上端面とともにシール部材S2が貼り付けられている。
【0045】
次に、建物1の床梁1b及び天井梁1cに複数の外壁パネル10,20,30を組み付ける施工手順を、図7等を用いて説明する。なお、図7(a)〜(d)は外壁パネル10,20,30を上方から見た平面図であり、図7(e),(f)は外壁パネル10,20,30を屋外側から見た斜視図である。
【0046】
先ず、図1に示す前面道路に搬入された1階用一般外壁パネル10(1F)をクレーンで吊り上げ、床梁1b及び天井梁1cの所定箇所に据え付ける。そして、一般外壁パネル10のブラケット13を床梁1b及び天井梁1cにボルト締結して固定する(図7(a)参照)。
【0047】
次に、前面道路に搬入されたジョイント外壁パネル20をクレーンで吊り上げ、床梁1b及び天井梁1cの所定箇所に据え付ける。そして、ジョイント外壁パネル20のブラケット23を床梁1b及び天井梁1cにボルト締結する(図7(b)参照)。この段階では、ボルトを緩ませた状態で締結し、図4(a)に示す仮組み状態にする。同様にして、コーナ外壁パネル30も床梁1b及び天井梁1cの所定箇所に仮組みする(図7(c)参照)。
【0048】
次に、各外壁パネル10,20,30の屋内側からの作業として、連結部材40,50を所定位置に取り付け(図7(e)参照)、ボルト42aを挿入穴41aに屋内側から挿入し、ナット42bに締め付ける。これにより、一般外壁パネル10のフレーム材12に連結部41を固定する。次に、ボルト43aを挿入穴41bに屋内側から挿入し、ナット43bに締め付ける。これにより、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22及びコーナ外壁パネル30のフレーム材32を連結部41に固定する(図7(d)参照)。
【0049】
次に、各外壁パネル10,20,30の屋内側からの作業として、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30のフレーム材22,32の端面と、一般外壁パネル10のフレーム材12の端面との間に、バックアップ材60を取り付ける(図7(f)参照)。次に、コーキングガン61(充填装置)を用いて、前記両フレーム材22,32の端面間に不定形シール材S3を充填する。2階用外壁パネル10,20,30についても、上述した1階用外壁パネル10,20,30と同様の施工手順により組み付ける。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0051】
(1)外壁パネル10,20,30を複数並べて設置する前に、シール部12aにシール部材S1を予め取り付けて、重複部21a,31a及びシール部12aにシール部材S1を密着させることにより、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30の外壁材21,31と、一般外壁パネル10のフレーム材12とをシールさせることができるので、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。よって、建物1を設置する敷地P1が狭く外壁パネル10,20,30の屋外側に作業足場2(図12参照)を設置するスペースを確保することが困難な場合であっても、敷地P1内における外壁パネル10,20,30の設置位置が制限されることを抑制できる。また、外壁パネル10,20,30の屋外側の作業足場2を不要にできるので、建物1の施工における仮設コストの削減を図ることができる。
【0052】
(2)隣り合う外壁パネル10,20,30を連結部材40,50で連結するとともに、当該連結部材40,50のボルト43aを締め付けることで、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30のフレーム材22,32を連結部41に引き寄せる。これにより、重複部21a,31aがシール部12aに向けて押し付けられることとなり、シール部材S1は壁厚み方向に圧縮されて弾性変形し、重複部21a,31a及びシール部12aにシール部材S1が十分に密着する。よって、シール部材S1によるシール性を向上できる。
【0053】
(3)連結部材40,50のボルト43aを締め付けてシール部材S1を所望量だけ弾性変形させた図4(b)の状態において、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30のフレーム材22,32と連結部41との間に隙間41cが形成されている。これによれば、隙間41cにより外壁パネル10,20,30の壁厚み方向の寸法ばらつきを吸収できるので、フレーム材22,32と連結部41とが当接することにより重複部21a,31aのシール部12aへの押付力が不足してシール部材S1を所望量だけ弾性変形できなくなるおそれを回避できる。よって、シール部材S1のシール性を十分に確保することを確実にできる。
【0054】
(4)連結部材40,50は、外壁パネル10,20,30の複数箇所(上下方向中央部、上端部及び下端部の3箇所)に配置されているので、重複部21a,31aのシール部12aへの押付力を複数箇所で生じさせることができる。よって、シール部材S1のシール性を向上できる。
【0055】
(5)連結部材40は、ジョイント外壁パネル20とその両隣に位置する一般外壁パネル10とを連結するので、連結部41の両端が一般外壁パネル10に支持された状態で、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22を連結部41に引き寄せる。よって、このような引寄力に対する連結部41の曲げ応力を低減でき、連結部41に要求される曲げ剛性を軽減できる。
【0056】
(6)ジョイント外壁パネル20のフレーム材22の端面と一般外壁パネル10のフレーム材12の端面との間に、不定形シール材S3を屋内側から充填しても、バックアップ材60が重複部21aにより屋外側から目隠しされることとなる。また、不定形シール材S3を屋内側から充填でき、屋外側からのシール材充填作業を不要にできる。
【0057】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、第2固定部43をボルト43a及びナット43bから構成しており、ジョイント外壁パネル20にナット43bを固定してボルト43aを屋内側から締め付けることで、ジョイント外壁パネル20を連結部41に固定している。
【0058】
これに対し図8(a)(b)に示す本実施形態では、第2固定部43をナット43c及びボルト43dから構成し、ジョイント外壁パネル20にボルト43dを固定してナット43cを屋内側から締め付けることで、ジョイント外壁パネル20を連結部41に固定している。より具体的には、ジョイント外壁パネル20の外壁材21又はフレーム材22にボルト43dを溶接して固定している。これによっても、上記第1の実施形態と同様の効果が発揮される。
【0059】
[第3の実施形態]
上記第2の実施形態ではフレーム材22にボルト43dを溶接にて固定している。これに対し図9(a)(b)(c)に示す本実施形態では、ボルト43dに係止片43eを溶接し、その係止片43eをフレーム材12,22に係止させることで、ボルト43dの回転を規制している。これによっても、上記第2の実施形態と同様の効果が発揮される。
【0060】
[第4の実施形態]
上記各実施形態では、連結部41、ボルト43a,43d及びナット43b,43cから連結部材40を構成している。これに対し図10(a)(b)に示す本実施形態では、バックル44により連結部材40を構成している。当該バックル44により、ジョイント外壁パネル20と一般外壁パネル10とを連結している。
【0061】
また、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22に溶接等により固定された係止フック44aにバックル44を係止させた状態で、図10(b)中の矢印に示す如くバックル44を屋内側から回動操作すると、ジョイント外壁パネル20のフレーム材22が屋内側に引き寄せられる。すると、重複部21aがシール部12aに向けて押し付けられることとなり、重複部21a及びシール部12aにシール部材S1が十分に密着する。よって、上記各実施形態と同様にして、シール部材S1によるシール性を十分に向上できる。
【0062】
また、バックル44のねじ部44bを調整操作することで、重複部21aのシール部12aへの押付力を調整してシール部材S1の弾性変形量を調整できるので、シール部材S1を所望量だけ弾性変形させるよう、容易に調整できる。
【0063】
[第5の実施形態]
上記各実施形態では、ジョイント外壁パネル20の外壁材21の両端に重複部21aを形成し、一般外壁パネル10のフレーム材12の両端にシール部12aを形成している。これに対し図11に示す本実施形態では、ジョイント外壁パネル20及び一般外壁パネル10を同一の構造にしている。すなわち、ジョイント外壁パネル20一端には、外壁材21に形成された重複部21aを備え、他端には、フレーム材22に形成されたシール部22aを備えている。同様に、一般外壁パネル10の一端には、外壁材11に形成された重複部11cを備え、他端には、フレーム材12に形成されたシール部12aを備えている。
【0064】
これによれば、上記各実施形態と同様の効果が発揮されるとともに、ジョイント外壁パネル20及び一般外壁パネル10を同一の構造にできるので、外壁パネルの種類を減らすことができる。
【0065】
[他の実施形態]
上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。また、本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、各実施形態の特徴的構造をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0066】
・上記各実施形態では、連結部材40,50の一端を一般外壁パネル10に連結させて、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30を一般外壁パネル10に引き寄せるよう構成しているが、連結部材40,50の一端を建物本体(例えば床梁1b又は天井梁1c)に連結させて、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30を建物本体に引き寄せるよう構成してもよい。
【0067】
・上記各実施形態では、一般外壁パネル10のシール部12aにシール材S1を貼り付けているが、ジョイント外壁パネル20及びコーナ外壁パネル30の重複部21a,31aにシール材S1を貼り付けるようにしてもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、隣り合う外壁パネル10,20,30間のシールを、シール材S1及び不定形シール材S3の両方で行っているが、いずれか一方のシール材を廃止して他方のシール材のみとでシールするようにしてもよい。
【0069】
・上記各実施形態では、水平方向に隣り合う外壁パネル10,20,30間のシールについて、シール部12a及び重複部21aを形成しているが、上下方向に隣り合う外壁パネル10(1F),10(2F)についてシール部12a及び重複部21aを形成してシール材S1,S3によりシールするようにしてもよい。
【0070】
・コーナ外壁パネル30の連結部材50の連結部は、コーナ外壁パネル30の内面に沿って略直角に曲がる形状に形成してもよいし、図7(d)に示す如く直線的に延びる形状に形成して、隣合う一般外壁パネル10の各々に対して別々の連結部を用いるようにしてもよい。
【0071】
・上記各実施形態で採用されている締め付け用のボルト42a,43a及びナット43cと連結部41との間にはワッシャを介在させることが望ましく、これらのボルト42a,43a及びナット43cにワッシャ付のボルト及びナットを適用することがより望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る建物が建てられる敷地を示す平面図。
【図2】図1の外壁パネル単体を示す斜視図。
【図3】図2の外壁パネルを床梁及び天井梁に支持させた状態を示す斜視図。
【図4】図2の一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルを、床梁及び天井梁に取り付けた状態を示す水平断面図。
【図5】図4の外壁パネルを屋内側から見た斜視図。
【図6】(a)は1階用外壁パネルと2階用外壁パネルとの接続構造を模式的に示す縦断面図、(b)は(a)の拡大図。
【図7】図2の各外壁パネルを床梁及び天井梁に組み付ける施工手順を説明する模式図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルの連結構造を示す図であり、(a)は水平断面図、(b)は屋内側から見た斜視図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルの連結構造を示す図であり、(a)は水平断面図、(b)は屋内側から見た斜視図。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルの連結構造を示す図であり、(a)は水平断面図、(b)は屋内側から見た斜視図。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る一般外壁パネル及びジョイント外壁パネルの連結構造を示す水平断面図。
【図12】従来の外壁パネルのシール構造を模式的に示す水平断面図。
【符号の説明】
【0073】
1…建物、1a…外壁面、1b…床梁(建物本体)、1c…天井梁(建物本体)、
10…一般外壁パネル(他方の外壁パネル)、
20…ジョイント外壁パネル(一方の外壁パネル)、
30…コーナ外壁パネル(一方の外壁パネル)、
11,21,31…外壁材、
12,22,32…フレーム材(壁下地材)、
11c,21a,31a…重複部、
12a,22a…シール部、
40,50…連結部材、
S1…シール部材、S3…不定形シール材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁面を形成する外壁材、及び前記外壁材を屋内側から支持する壁下地材を有して構成される外壁パネルを備え、前記外壁パネルを複数並べて設置するとともに前記外壁パネル間をシールする建物の壁構造であり、
隣り合う前記外壁パネルにおいて、一方の外壁パネルの前記外壁材には、他方の外壁パネルの前記壁下地材と壁厚み方向に重複する重複部が形成されていることを特徴とする建物の壁構造。
【請求項2】
前記他方の外壁パネルの端部は、前記壁下地材の端部が前記外壁材からはみ出した段差形状に形成され、
前記段差を構成する前記壁下地材の端部に前記重複部を対向配置した状態で、前記一方の外壁パネルの外壁面と前記他方の外壁パネルの外壁面とが略同一平面上に位置するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建物の壁構造。
【請求項3】
前記重複部と前記壁下地材との間に配置されてシールするシール部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の壁構造。
【請求項4】
前記外壁面に対して屋内側に配置され、前記他方の外壁パネル及び建物本体のいずれかである基体と前記一方の外壁パネルとを連結する連結部材を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【請求項5】
前記連結部材は、前記壁下地材のうち前記シール部材によりシールされるシール部に向けて、前記重複部を押し付けるように前記一方の外壁パネルと前記基体とを連結することを特徴とする請求項4に記載の建物の壁構造。
【請求項6】
前記連結部材は、前記一方の外壁パネルと前記基体とに跨って延びる連結部、前記連結部と前記基体とを固定する第1固定部、及び前記連結部と前記一方の外壁パネルとを固定する第2固定部を備え、
前記第2固定部は、前記一方の外壁パネルを前記連結部に引き寄せる引寄機構を有することを特徴とする請求項5に記載の建物の壁構造。
【請求項7】
前記引寄機構はボルト及びナットにより構成され、
前記ボルト及び前記ナットの一方は、前記一方の外壁パネルに回転不能に取り付けられ、
前記ボルト及び前記ナットの他方を回転させて締め付けることで、前記一方の外壁パネルを前記連結部に引き寄せて前記連結部に固定するよう構成されていることを特徴とする請求項6に記載の建物の壁構造。
【請求項8】
前記ボルト及び前記ナットの締め付けにより前記固定が完了した状態において、前記一方の外壁パネルの前記壁下地材と前記連結部との間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の建物の壁構造。
【請求項9】
前記連結部材を複数箇所に設けたことを特徴とする請求項4〜8のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【請求項10】
前記他方の外壁パネルは、前記一方の外壁パネルの両隣に配置されており、
前記連結部材は、前記一方の外壁パネルを前記両隣の外壁パネルに連結させることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【請求項11】
前記一方の外壁パネルと前記他方の外壁パネルとが対向する箇所には、屋内側から不定形シール材が充填されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【請求項12】
前記一方の外壁パネルと前記他方の外壁パネルとは、水平方向又は上下方向に並べて配置されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【請求項1】
外壁面を形成する外壁材、及び前記外壁材を屋内側から支持する壁下地材を有して構成される外壁パネルを備え、前記外壁パネルを複数並べて設置するとともに前記外壁パネル間をシールする建物の壁構造であり、
隣り合う前記外壁パネルにおいて、一方の外壁パネルの前記外壁材には、他方の外壁パネルの前記壁下地材と壁厚み方向に重複する重複部が形成されていることを特徴とする建物の壁構造。
【請求項2】
前記他方の外壁パネルの端部は、前記壁下地材の端部が前記外壁材からはみ出した段差形状に形成され、
前記段差を構成する前記壁下地材の端部に前記重複部を対向配置した状態で、前記一方の外壁パネルの外壁面と前記他方の外壁パネルの外壁面とが略同一平面上に位置するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建物の壁構造。
【請求項3】
前記重複部と前記壁下地材との間に配置されてシールするシール部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の壁構造。
【請求項4】
前記外壁面に対して屋内側に配置され、前記他方の外壁パネル及び建物本体のいずれかである基体と前記一方の外壁パネルとを連結する連結部材を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【請求項5】
前記連結部材は、前記壁下地材のうち前記シール部材によりシールされるシール部に向けて、前記重複部を押し付けるように前記一方の外壁パネルと前記基体とを連結することを特徴とする請求項4に記載の建物の壁構造。
【請求項6】
前記連結部材は、前記一方の外壁パネルと前記基体とに跨って延びる連結部、前記連結部と前記基体とを固定する第1固定部、及び前記連結部と前記一方の外壁パネルとを固定する第2固定部を備え、
前記第2固定部は、前記一方の外壁パネルを前記連結部に引き寄せる引寄機構を有することを特徴とする請求項5に記載の建物の壁構造。
【請求項7】
前記引寄機構はボルト及びナットにより構成され、
前記ボルト及び前記ナットの一方は、前記一方の外壁パネルに回転不能に取り付けられ、
前記ボルト及び前記ナットの他方を回転させて締め付けることで、前記一方の外壁パネルを前記連結部に引き寄せて前記連結部に固定するよう構成されていることを特徴とする請求項6に記載の建物の壁構造。
【請求項8】
前記ボルト及び前記ナットの締め付けにより前記固定が完了した状態において、前記一方の外壁パネルの前記壁下地材と前記連結部との間には隙間が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の建物の壁構造。
【請求項9】
前記連結部材を複数箇所に設けたことを特徴とする請求項4〜8のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【請求項10】
前記他方の外壁パネルは、前記一方の外壁パネルの両隣に配置されており、
前記連結部材は、前記一方の外壁パネルを前記両隣の外壁パネルに連結させることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【請求項11】
前記一方の外壁パネルと前記他方の外壁パネルとが対向する箇所には、屋内側から不定形シール材が充填されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【請求項12】
前記一方の外壁パネルと前記他方の外壁パネルとは、水平方向又は上下方向に並べて配置されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の建物の壁構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−191513(P2009−191513A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32773(P2008−32773)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】
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