説明

建築板、建築板の製造方法及び建築板の施工方法。

【課題】成形による凹凸模様のピッチずれが発生せず、また、凹凸模様の形状の制約が少なく、インクジェット塗装と相まって高い意匠性を付与することができる建築板を提供する。
【解決手段】セメント系無機質板からなる下地板2と、表面がインクジェット塗装にて塗装され、且つ前記下地板2の一面に添着されている複数の建材ブロック3とを具備するする。かかる建築板1は建材ブロック3により形状の制約の少ない凹凸模様が付されると共にインクジェット塗装による意匠性の高い模様が付される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット塗装が施された建築板、この建築板の製造方法、及びこの建築板の施工方法を提供することを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
外壁材、屋根材、塀材などの建築用外装材には、セメント系の建築板が広く用いられている。このような建築板は、建物の外観の形成を担うため、各種の意匠を実現する表面化粧について技術的な検討が加えられている。たとえばセメント系成形材料を抄造したり押出成形したりして得られる湿潤シートに凹凸プレス加工を施した後に養生硬化させたり、或いはセメント系成形材料を注型成形するなどし、このようにして作製される無機質板の凹凸模様表面を塗装することが一般的に行われている。
【0003】
塗装の一方式として、最近、コンベア上で搬送される基材の表面に向けて、この基材の搬送速度と同期させてインクジェットノズルヘッドより塗料を噴射するインクジェット塗装が考えられている。このようなインクジェット塗装は、これまで一般的に用いられてきた塗装ロール等に比べ、局所的なしかも位置制御された塗装が可能である。したがって、濃淡表現などにより自然な風合いの高意匠塗装された建築板が製造可能であるという利点がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−17007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなプレス成形や注型成形にて無機質板の表面に凹凸模様を形成する場合には、凹凸模様の深さが制限されて深い凹凸模様を形成することは困難であり、また脱型方向によって凹凸模様の角度も制限されていしまい、形成可能な凹凸模様の制約が大きく、近年の更なる高意匠化への要請に対応するのは困難となってきている。また、このようなプレス成形にて凹凸模様を形成する場合には、硬化前の軟質な成形体にプレス成形を施し、この軟質な状態で成形体をラインに流すために変形により凹凸模様の柄ピッチずれが生じやすくなり、また硬化後の成形体に切削加工を施して凹凸模様を形成するとしてもこの切削加工時の位置ずれによりやはり柄ピッチずれが生じやすく、このため外観の統一感を発現させたり凹凸模様と一致させた塗装処理を施したりすることが困難なものであった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、成形による凹凸模様のピッチずれが発生せず、また、凹凸模様の形状の制約が少なく、インクジェット塗装と相まって高い意匠性を付与することができる建築板、この建築板の製造方法、及びこの建築板の施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る建築板は、セメント系無機質板からなる下地板2と、表面がインクジェット塗装にて塗装され、且つ前記下地板2の一面に添着されている複数の建材ブロック3とを具備することを特徴とするものである。
【0007】
また請求項2に係る発明は、上記建材ブロック3が、無機粉粒体と、熱可塑性樹脂とを配合した成形材料を加熱溶融して成形されたものであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、上記下地板2が、顔料を含有するセメント系成形材料を成形して形成されたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る建築板の製造方法は、セメント系無機質板からなる下地板2の一面に複数の建材ブロック3を添着した後、前記建材ブロック3の表面にインクジェット塗装を施すことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る建築板の施工方法は、上記のような建築板1を、端部同士を突き合わせた状態で複数枚設置した後、隣接する建築板1の突き合わされた端部間に亘って、予めインクジェット塗装が施された建材ブロック3aを添着することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る建築板によれば、建築板に建材ブロックによる適宜の凹凸模様を付すと共にインクジェット塗装による意匠模様を付すことができ、下地板とは別体の建材ブロックによって凹凸深さや凹凸の角度等のような凹凸模様の制約が抑制された種々の凹凸模様を形成することが可能となると共に、インクジェット塗装による意匠模様を付与することができ、これらが相まって非常に意匠性の高い外観を発現させることができるものであり、またこのとき建材ブロックの添着位置はガイド等を用いて所望の位置に正確に配置することが容易となって凹凸模様のピッチずれが生じることも防止することができるものである。
【0012】
また、請求項2に係る発明によれば、熱可塑性樹脂をバインダーとして無機粉粒体を結合させた建材ブロックを用いることができ、無機粉粒体として窯業系無機質建材の廃材、例えば下地板の端材や廃材を用い、或いは更に熱可塑性樹脂としてプラスチック製品の廃材を用いることによって、これらの廃材を大量使用することが可能になり、資源リサイクルを可能とすることができ、また、このような廃材からなる建材ブロックを用いているにもかかわらず、インクジェット塗装を施すことにより意匠性の高い外観を付与することができるものである。
【0013】
また、請求項3に係る発明によれば、下地板に塗装を施す必要がなくなり、また下地板に経年劣化等により欠けなどが生じてもこの欠け部分等も着色された状態となって外観の劣化を抑制することができるものである。
【0014】
また、本発明に係る建築板の製造方法によれば、下地板とは別体に形成された複数の建材ブロックに対して一括してインクジェット塗装を効率よく施すことができ、且つ位置制御された正確な位置に意匠性の高い所望の塗装を施すことができるものである。
【0015】
また、本発明に係る建築板の施工方法によれば、隣り合う建築板の端部間に亘る建材ブロックが、この建築板間の継ぎ目を目立たなくすることができ、全体的に統一された意匠性の高い外観を現出させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
建築板1の下地板2となる無機質板の作製には、セメントと補強繊維を主成分とするセメント系成形材料を成形した湿潤シート(グリーンシート)を用いることができる。この湿潤シートは、セメント系の水性スラリーをセメント系成形材料として用いて、長網式、丸網式の各種の抄造法により抄造したり、押出成形したりするなどして得られるものである。セメント系成形材料としては、例えば水硬性のセメント成分が30〜95質量%、シリカ、珪石粉、フライアッシュ等の充填材が2〜60質量%、パルプ等の補強繊維が3〜10質量%を占める固形分からなるものとし、この固形分100質量部に対し、水40〜100質量部程度の割合としたスラリーを用いることができる。なお、セメント成分は、普通ポルトランドセメントをはじめ、高炉セメント等の、適宜に組成調整されたものを用いることができる。補強繊維のパルプは、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、あるいはその混合物等を用いることができる。この湿潤シートを養生硬化することにより、下地板2を得ることができる。
【0018】
このとき、上記セメント系成形材料として顔料を含有するものを用いると、下地板2には塗装を施すことなく着色することができる。また、この下地板2に欠け等が生じてもその欠けた部分も着色された状態となって外観上違和感がなくなるものである。
【0019】
セメント系成形材料に含有される顔料としては、例えばベンガラ等の無機顔料等の適宜のものを用いることができる。また、この顔料の含有量は、セメント系成形材料の固形成分全量に対して1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。
【0020】
また、このように下地板2を着色する場合には、まず顔料を含有しないセメント系成形材料を成形した湿潤シートを成形した後、この湿潤シートの表面に顔料を含有するセメント系成形材料を散布して積層し、これを養生硬化することにより下地板2を形成するようにしても良い。この場合、形成される下地板2の表層部分のみを着色することができる。このようにすると、着色が必要なのは下地板2の表層部分のみであるから、この部分のみを着色することで、下地板2における着色が不要な部分を着色しないようにすることができて、不要な顔料の使用を削減することができ、省資源化と材料コストの低減とに寄与することができる。
【0021】
また、上記下地板2の養生硬化は適宜の手法で行うことができるが、オートクレーブ養生をすることが望ましく、その際の温度としては140℃以上とすることが好適である。また、実際的には、養生は、オートクレーブ養生と、これに先行しての促進前養生、つまり加温のために水蒸気が投入される前養生との二段階での養生であることが望ましい。これによって、下地板2の強度が向上し、組織と性能の均一化が図られることになる。
【0022】
この養生時には、養生前の湿潤シートの表面にシーラーを塗布することが好ましい。このシーラーを塗布することにより、養生時にエフロレッセンスが発生することを防止することができ、更にシーラーの塗膜が耐透水性を発揮することで、建築板1の耐透水性を向上することができる。シーラーは特に制限されず、例えばアクリルエマルジョン塗料を用いることができるが、ウレタン系、シリコン系、フッ素系等の水性エマルジョン塗料を用いることもできる。シーラーの塗布量は適宜設定される。
【0023】
このようなシーラーの塗装は、養生前に行うものであるが、上記のように促進前養生を行う場合には促進前養生後にシーラーを塗布し、次いでオートクレーブ養生を行うことが好ましく、これにより建築板の耐凍害性や寸法安定性を向上することができる。
【0024】
このような養生硬化により得られた下地板2には、必要に応じて乾燥処理や切削加工が施される。
【0025】
一方、建材ブロック3は、無機粉粒体と、熱可塑性樹脂とを配合した成形材料を加熱溶融して成形することにより得られる。
【0026】
無機粉粒体としては、無機質材料を粉砕したものを用いることができるものであり、例えば窯業系無機質建材を切削加工する場合に発生する端材や、使用済みの窯業系無機質建材の廃材を使用することができ、資源の再利用が可能となる。このとき上記の下地板2の端材や廃材も使用することができ、本発明の建築板1のリサイクルが可能となる。また、フライアッシュ、ペーパースラッジ灰、焼却灰、その溶融スラグなどの焼却灰を用いることもでき、これらの産業廃棄物にあっても、大量の有効再利用が可能になるものである。またこれらはもともと粉粒状であるため、粉砕を行なうことが不要であり、製造コストを低く抑えることができるものである。
【0027】
無機粉粒体の粒径は特に制限されるものではないが、平均粒径が0.01〜7mmの範囲のものを用いるのが好ましい。
【0028】
また本発明において熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂の成形品からなるプラスチック製品の廃材を用いることができる。プラスチック製品の廃材も窯業系無機質建材と同様に発生量は大量であるので、プラスチック製品を原料として使用すれば、廃材の有効利用が可能になるものである。プラスチック製品を構成する熱可塑性樹脂としては特に制限されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレンなど任意のものを用いることができる。
【0029】
そして上記の無機粉粒体と熱可塑性樹脂とを配合し、混合・混練することによって成形材料を得ることができる。また、この成形材料中にはエラストマーを配合しても良い。エラストマーとしては特に限定されるものではなく、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の適宜のものを用いることができる。成形材料中の無機粉粒体と熱可塑性樹脂とエラストマーの配合量は特に限定されるものではなく、各材料の特性をバランス良く発揮させるために適宜の割合で配合する。また、成形材料にはこれらの三成分の他に、必要に応じて着色剤等の微量成分を配合しても良いのはいうまでもない。
【0030】
また、成形材料中に配合される熱可塑性樹脂及びエラストマーとしては、その一部又は全部として、エラストマーが添加された熱可塑性樹脂の成形品を用いることもでき、このときこのような成形品からなるプラスチック製品の廃材を用いることができる。このようなプラスチック製品も例えば自動車のバンパー等として広く用いられているため、その廃材も窯業系無機質建材と同様に発生量は大量であるので、プラスチック製品を原料として使用すれば、エラストマーの供給源としても廃材の有効利用が可能になるものである。
【0031】
しかして、無機粉粒体と熱可塑性樹脂とエラストマーを配合し、これを熱可塑性樹脂の溶融温度付近、例えば200〜230℃で加熱しながら強制的に混合・混練することによって、成形材料を得ることができるものであり、そしてこの溶融状態にある成形材料を型に充填し、例えば100〜130℃で6〜8MPaの条件で加熱圧縮成形し、冷却固化させた後に脱型することによって、建材ブロック3を製造することができるものである。
【0032】
このようにして製造される建材ブロック3は、熱可塑性樹脂をバインダーとして無機粉粒体を結合させたものであり、無機質粉粒体と熱可塑性樹脂が成形品中の大部分を占めるので、無機粉粒体として窯業系無機質建材の廃材を用いる場合、また熱可塑性樹脂としてプラスチック製品の廃材を用いる場合、これらの廃材を大量に有効再利用することが可能になるものである。
【0033】
ここで、建材ブロック3は上記のような廃材を用いて形成すると外観は良くないものであるが、後述するようにインクジェット塗装を施すことで高い意匠性が付与される。
【0034】
また建材ブロック3は熱可塑性樹脂をバインダーとしているために、高い曲げ強度を得ることができるものである。しかもエラストマーを配合しているために耐衝撃性を向上することができ、曲げ強度に加えて衝撃強度が高い成形品を得ることができるものである。
【0035】
ここで、上記成形材料中の各成分の配合量は適宜調整されるものであるが、例えば成形材料を無機紛粒体と、エラストマーが添加された熱可塑性樹脂の成形品とで調製する場合には、成形材料中の無機紛粒体の配合量が60〜65重量%、成形品の配合量が35〜40質量%の範囲となるようにすることができる。
【0036】
このような建材ブロック3は適宜の形状とすることができるが、本実施形態では、矩形平板状に形成している。また、このような形状に限らず、種々の形状に形成することができ、このとき建材ブロック3は下地材2と別体に形成されることから、成形の際の形状の制約が少ないものである。
【0037】
そして、上記の下地板2の一面に、複数の建材ブロック3を添着することにより配列して、建築板1を得ることができる。建材ブロック3の下地板2への添着は適宜の手法によりなされるが、例えば建材ブロック3の裏面と下地板2の一面との間に接着剤を介在させて貼着することができる。また、下地板2に建材ブロック3を係止可能な取付金具を取着すると共に建材ブロック3の裏面に前記取付金具に係止される係止凹部を設け、この取付金具に建材ブロック3の係止凹部を係止して固定したり、下地板2の成形時に建材ブロック3を係止可能な係止凸部を一体に設けると共に建材ブロック3の成形時に前記係止凸部に嵌合係止される係止凹部を設けて、前記係止凸部に係止凹部を嵌合係止させることにより建材ブロック3を固定したりすることもでき、このとき接着剤による接着を併用することもできる。
【0038】
ここで、上記建材ブロック3には、インクジェット塗装を施す。インクジェット塗装は、建材ブロック3を上記のように下地板2に添着する前に行うことができ、また建材ブロック3を下地板2に添着した後、下地板2に添着された状態で行うこともできる。
【0039】
インクジェット塗装にあたっては、まず建材ブロック3の表面に受理層を積層して形成する。受理層はインクジェット塗装時に塗布されるインクを滲みなく定着させる機能を有し、インクを吸収する性質を有するもの、例えば吸水性を有する多孔質の層を形成するものである。具体的には例えば炭酸カルシウム等の体質顔料や適宜のバインダー等を溶剤に分散させたもの等を用い、これをスプレー等して塗布した後、100〜200℃で焼き付け乾燥等することにより成膜することにより、受理層を形成することができる。この受理層の厚みは特に制限されないが、5〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0040】
受理層の形成後、この受理層の表面にインクジェット塗装を施す。インクジェット塗装は、例えば塗装対象の基材6である建材ブロック3や、この建材ブロック3を複数添着しした下地板2を、図3に示すように、ロールコンベア等で構成される搬送路7上で搬送しながら複数のインクジェットノズルヘッド8の下方を順次通過させ、このとき基材6の搬送速度と同期させてインクジェットノズルヘッド8から所定の色のインクを受理層の表面の所定の位置に噴射することで行うことができる。各インクジェットノズルヘッド8は、例えばイエロー、シアン、マゼンダ、ブラック等のうち一色のインクを噴射するノズルを複数配列して形成され、これが基材6の搬送路7に沿って各色ごとに配設されている。インクジェット塗装に用いるインクとしては適宜のものを用いることができ、例えば水性インクを用いることができる。
【0041】
かかるインクジェット塗装により、基材6に所望の意匠模様を発現させることができる。またこのようなインクジェット塗装を施すことで位置制御された塗装が可能であり、また濃淡表現などにより自然な風合いの高意匠塗装が可能となる。
【0042】
このとき特に下地板2の一面に複数の建材ブロック3を添着したたものに対してインクジェット塗装を施すようにすると、下地板2とは別体に形成された複数の建材ブロック3に対して一括してインクジェット塗装を効率よく施すことができる。また、インクジェット塗装時には、上記のように位置制御された塗装が可能であるから、建材ブロック3の表面のみに意匠性の高い塗装を施し、建材ブロック3の間に露出する下地板2の表面には塗装を施さないようにすることができる。勿論、意図的に下地板2の表面に塗装を施しても良い。
【0043】
また、建材ブロック3を下地板2に添着させずに塗装する場合には、インクジェット塗装後に、この複数の建材ブロック3を下地板2に添着する。
【0044】
このようにして、下地板2にインクジェット塗装が施された建材ブロック3が複数添着された構成を有する建築板1を得ることができる。かかる建築板1は、建材ブロック3による適宜の凹凸模様が付され、且つインクジェット塗装による意匠模様が付されることとなり、またこれにより凹凸深さや凹凸の角度等のような凹凸模様の制約が抑制された種々の凹凸模様を形成することが可能となる。そして、このような凹凸模様と、インクジェット塗装による意匠模様とが相まって非常に意匠性の高い外観を発現するものである。またこのとき建材ブロック3を添着するにあたっては、その配置位置はガイド等を用いて正確に制御することが容易となるために凹凸模様のピッチずれが生じることも防止することができるものである。
【0045】
また、上記建築板1には、必要に応じて、表面保護用のクリアー層を形成する。クリアー層は適宜のクリアー塗料を塗布成膜することにより形成することができ、例えばアクリルシリコン系と用、アクリルエマルジョン系塗料等を用い、これを建築板1の建材ブロック3が添着されている側の面にスプレー等して塗布した後、80〜150℃で焼き付け乾燥等することにより成膜することにより、クリアー層を形成することができる。このクリアー層の厚みは特に制限されないが、1〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0046】
また、更に無機質塗料層を形成することも好ましい。無機質塗料層はクリアー層の表面に無機質塗料を塗布成膜することで形成することができ、これにより建築板1の耐候性を向上することができる。無機質塗料としては適宜のものを用いることができるが、例えばオルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液に、ポリオルガノシロキサンや、アルキルチタン酸塩等の縮合反応触媒を加え、或いは更にシリカを加えたケイ素アルコキシド系塗料等を用い、これを静電塗装等して塗布した後、60〜120℃で焼き付け乾燥等することにより成膜することにより、無機質塗料層を形成することができる。この無機質塗料層の厚みは特に制限されないが、1〜10μmの範囲であることが好ましい
また、更に光触媒層を形成することも好ましい。光触媒層は、無機質塗料層の表面に光触媒を含有する無機質塗料を塗布成膜することで形成することができ、これにより建築板1の防汚性を向上することができる。光触媒を含有する無機質塗料としては適宜のものを用いることができるが、例えば上記のようなケイ素アルコキシド系塗料に酸化チタン等の光触媒を加えたものを等を用い、これをスプレー塗装等して塗布した後、60〜120℃で焼き付け乾燥等することにより成膜することにより、光触媒層を形成することができる。この光触媒層の厚みは特に制限されないが、0.2〜1.0μmの範囲であることが好ましい。
【0047】
図2(a)は上記のようにして形成される建築板1の一例を示すものであり、下地板2には矩形状の複数の建材ブロック3をその長手方向に沿って間隔をあけて一列に配列させると共にかかる建材ブロック3の列を間隔をあけて複数列に配列させて、添着している。このとき隣接する建材ブロック3の列間では建材ブロック3の配置位置を建材ブロック3の長手方向にずらしている。これにより、例えば煉瓦調の外観を発現することができる。このようにして同一寸法の建材ブロック3を添着すると、建築板1の端部では建材ブロック3の長手方向よりも小さく、建材ブロック3がそままでは添着できない部分4が発生するが、この場合はその部分4の寸法にあわせて他よりも長手方向の寸法を小さく形成した小片状の建材ブロック3(3b)を添着することができる。
【0048】
図2(b)は建築板1の敷設例を示すものであり、例えば建物の外壁側の胴縁等の軸組等の下地板2に、建築板1を建材ブロック3が添着された側の面が屋外側に配置されるようにして敷設することができる。複数の建築板1を敷設する場合には、建築板1を上下左右に隣接させて敷設することができる。このとき、隣接する建築板1間に亘って建材ブロック3の配置位置が整然と揃うようにして外観の統一をはかることが好ましく、このため、本実施形態では、長手方向に並ぶ建材ブロック3の配列が隣り合う建築板1間に亘って連続するように配設されている。また、建築板1の端部の小片状の建材ブロック3bには、これに隣接する他の建築板1における小片状の建材ブロック3bが隣接して配置されるようにして、各建築板1の小片状の建材ブロック3b,3bが一体となって一つの建材ブロック3を構成するかのような外観を発現させることができる。
【0049】
また、図1(a)に示す例では、図2(a)に示す例において、建築板1における建材ブロック3がそのままでは添着できない部分4には、建材ブロック3を添着しないままにしている。
【0050】
このような建築板1も上記と同様にして敷設することができる。この場合、図1(b)に示すように、建築板1の端部の建材ブロック3が添着されていない部分4には、これに隣接する他の建築板1における建材ブロック3が添着されていない部分4が隣接して配置されるようにする(図1(b)の上段部分参照)。このとき、建築板1の施工作業時には隣接する建築板1間に亘って、建材ブロック3が添着されていない部分4同士が隣接して構成される空き領域5が形成される。そこで、施工作業者が、前記空き領域5に、隣接する建築板1間に亘って、予めインクジェット塗装が施された通常の寸法の建材ブロック3(3a)を添着する(図1(b)の下段部分参照)。このようにすると、前記建材ブロック3aによって、隣接して敷設される建築板1間の継ぎ目が目立たなくなり、全体的に更に統一感のとれた外観を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は建築板1の正面図、(b)は前記建築板1が敷設された状態を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態の他例を示すものであり、(a)は建築板1の正面図、(b)は前記建築板1が敷設された状態を示す正面図である。
【図3】インクジェット塗装工程の一例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 建築板
2 下地板
3 建材ブロック
3a 建材ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系無機質板からなる下地板と、表面がインクジェット塗装にて塗装され、且つ前記下地板の一面に添着されている複数の建材ブロックとを具備することを特徴とする建築板。
【請求項2】
上記建材ブロックが、無機粉粒体と、熱可塑性樹脂とを配合した成形材料を加熱溶融して成形されたものであることを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
上記下地板が、顔料を含有するセメント系成形材料を成形して形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築板。
【請求項4】
セメント系無機質板からなる下地板の一面に複数の建材ブロックを添着した後、前記建材ブロックの表面にインクジェット塗装を施すことを特徴とする建築板の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の建築板を、端部同士を突き合わせた状態で複数枚設置した後、隣接する建築板の突き合わされた端部間に亘って、予めインクジェット塗装が施された建材ブロックを添着することを特徴とする建築板の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−100328(P2007−100328A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288771(P2005−288771)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】