説明

建築物変化検出装置、建築物変化検出方法、及びプログラム

【課題】地図上の建築物の変化をより高精度に検出する。
【解決手段】建築物変化検出装置1は、旧年度時点と新年度時点との間における地図上の検出対象領域の建築物の変化を検出する。旧年度画像データ取得部10は、旧年度時点において検出対象領域を撮影した旧年度画像データを取得する。新年度画像データ取得部20は、新年度時点において検出対象領域を撮影した新年度画像データを取得する。地物変化検出部30は、旧年度画像データと新年度画像データとを比較して、検出対象領域における地物の変化を検出する。建築物非存在領域特定部40は、検出対象領域の中において、建築物が存在しない建築物非存在領域を特定する。建築物変化検出部50は、検出対象領域から建築物非存在領域を除外した領域において地物変化検出部30により変化が検出された地物を、検出対象領域において変化した建築物とすることにより、検出対象領域の建築物の変化を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図上の地物、特に建築物の変化を検出する建築物変化検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
地図上の建築物(建物)の変化を検出する方法として、航空写真上に地図を投影し、目視により地図上の建築物と航空写真上の建築物とを1件ずつ比較することで、その変化を検出する方法がある。しかし、この手法では、地図上の建築物の変化をすべて目視により調査するために多大な手間及びコストがかかり、また、人手による作業のために検出漏れが発生するという問題があった。
【0003】
地図上の建築物の変化とは、建物の滅失又は建物の新築を原因とする変化を指す。建物の滅失とは、建物が無くなり更地になることをいう。また、建物の新築とは、更地に新たな建物が追加されることをいう。
【0004】
このような事情から、例えば、特許文献1に記載されているように、航空写真や衛星画像等を用いた建築物変化検出方法が提案されている。特許文献1には、航空写真や衛星画像によって同一地域を撮像した2種類以上の画像を利用して、地図上の家屋形状から作成した不定形窓と一致する建物を画像中から自動的に探し、不定形窓と一致する建物が存在しない場合は建物が滅失していることを知らせるイメージマッチング方法が記載されている。
【0005】
その他、新旧の画像データ又はレーザデータから建物等の変化を判定する技術が、特許文献2、特許文献5、及び特許文献6に記載されている。また、特許文献3及び特許文献4には、地図と画像データとを照合して、建物の新築等の地図上の地物の変化を判定する技術が記載されている。
【0006】
なお、特許文献7には、ステレオ画像から3次元の数値データを求める方法が記載されている。
【0007】
また、本願と同一の出願人により出願された特願2007−145971の明細書には、地表を撮影した複数の画像からステレオマッチング処理により地表上の地物の高さデータを抽出し、高さの変化に基づき建物の滅失及び新築を検出する発明が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−63580号公報
【特許文献2】特開2004−117245号公報
【特許文献3】特開2004−198530号公報
【特許文献4】特開2005−234603号公報
【特許文献5】特開2007−3244号公報
【特許文献6】特開2007−34808号公報
【特許文献7】特開平3−167678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述の関連技術を単純に用いて、画像データから求められる地物の高さの変化に基づき建築物の滅失及び新築を検出する場合、建築物以外の地物である例えば、樹木、道路、河川、湖沼等の影響により、以下のような誤検出が発生する恐れがある。
【0010】
例えば、樹木は成長、剪定、伐採等により高さが変化する。そのため、樹木の変化した箇所が、建築物の変化した箇所であると誤って検出されてしまう可能性が考えられる。例えば、所定の位置の樹木が成長して高くなった場合に、その位置に建築物が新築されたと誤って検出される可能性がある。また、樹木が伐採されて高さが低くなった場合には、建築物が滅失したと誤って検出される可能性がある。
【0011】
また、道路は車両が通行するため、例えば大型の車両が通行している時に画像が撮影されると、その位置に建築物が新築されたと誤って検出される可能性がある。また、逆に、道路上に以前は存在していた車両が次の撮影時に存在していない場合には、建築物が滅失したと誤って検出される可能性がある。
【0012】
また、河川、湖沼等は、天候、干満等により地表面からの高さが大きく変化するため、建築物の変化を検出する際の誤検出の大きな要因となっている。
【0013】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、地図上の建築物の変化をより高精度に検出することができる建築物変化検出装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る建築物変化検出装置は、
第1の時点と、前記第1の時点より後の第2の時点と、の間における地図上の所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出装置であって、
前記第1の時点において前記所定の領域を撮影した第1の画像データを取得する第1画像データ取得手段と、
前記第2の時点において前記所定の領域を撮影した第2の画像データを取得する第2画像データ取得手段と、
前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較して、前記所定の領域における建築物を含む地物の変化を検出する地物変化検出手段と、
前記所定の領域の中において、建築物が存在しない建築物非存在領域を特定する建築物非存在領域特定手段と、
前記所定の領域から前記建築物非存在領域を除外した領域において前記地物変化検出手段により変化が検出された地物を、前記所定の領域において変化した建築物とすることにより、前記所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第2の観点に係る建築物変化検出方法は、
第1の時点と、前記第1の時点より後の第2の時点と、の間における地図上の所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出方法であって、
前記第1の時点において前記所定の領域を撮影した第1の画像データと、前記第2の時点において前記所定の領域を撮影した第2の画像データと、を比較して、前記所定の領域における建築物を含む地物の変化を検出する地物変化検出手順と、
前記所定の領域の中において、建築物が存在しない建築物非存在領域を特定する建築物非存在領域特定手順と、
前記所定の領域から前記建築物非存在領域を除外した領域において、前記地物変化検出手順により変化が検出された地物を抽出し、該抽出した地物を前記所定の領域において変化した建築物とみなすことにより、前記所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出手順と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
第1の時点と、前記第1の時点より後の第2の時点と、の間における地図上の所定の領域の建築物の変化を検出するためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記第1の時点において前記所定の領域を撮影した第1の画像データを取得する第1画像データ取得手段、
前記第2の時点において前記所定の領域を撮影した第2の画像データを取得する第2画像データ取得手段、
前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較して、前記所定の領域における建築物を含む地物の変化を検出する地物変化検出手段、
前記所定の領域の中において、建築物が存在しない建築物非存在領域を特定する建築物非存在領域特定手段、
前記所定の領域から前記建築物非存在領域を除外した領域において前記地物変化検出手段により変化が検出された地物を、前記所定の領域において変化した建築物とすることにより、前記所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出手段、
として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、地図上の建築物の変化をより高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、図中の同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態では、任意の第1の時点と、その後の第2の時点と、の間における地図上の所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出装置について説明する。
なお、第1の時点と第2の時点とは異なる日時であれば良いが、以下では、第1の時点と第2の時点との間を、旧年度とその1年後の新年度との間の1年間とする場合を例にとり、建築物変化検出装置について説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る建築物変化検出装置1の構成例を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、建築物変化検出装置1は、旧年度画像データ取得部10と、新年度画像データ取得部20と、地物変化検出部30と、建築物非存在領域特定部40と、建築物変化検出部50と、を備える。
【0021】
旧年度画像データ取得部10は、旧年度の所定の日時(以下、旧年度時点と称する)において、建築物の変化を検出する対象とする所定の領域(以下、検出対象領域と称する)を撮影した画像データ(以下、旧年度画像データ)を取得する。
具体的には、旧年度画像データ取得部10は、検出対象領域を上空から撮影した視差のある2枚の航空写真の画像データを取得する。この2枚の航空写真は、後の処理にて、地表上に存在する建築物、樹木、道路、河川、湖沼等を含む地物の高さを、ステレオ写真測量により測定するために用いられる。
【0022】
新年度画像データ取得部20は、旧年度時点から約1年後の新年度の所定の日時(以下、新年度時点と称する)において、旧年度画像データと同一の検出対象領域を撮影した画像データ(以下、新年度画像データと称する)を取得する。
新年度画像データ取得部20も、旧年度画像データ取得部10と同様に、検出対象領域を上空から撮影した視差のある2枚の航空写真の画像データを取得する。
【0023】
地物変化検出部30は、旧年度画像データと新年度画像データとを比較して、検出対象領域における地物の変化を検出する。
【0024】
具体的には、地物変化検出部30は、まず、旧年度画像データ取得部10が取得した視差のある2枚の航空写真の旧年度画像データから、ステレオ写真測量により、旧年度時点における検出対象領域の地物を含む地表面の高さを求める。次に、地物変化検出部30は、求めた地物を含む地表面の高さから、地表面の標高を差し引くことにより、地表面を基準とした地物の高さを求める。なお、検出対象領域の地表面の標高データは、例えば、建築物変化検出装置1の中に予め記憶されている。このようにして、地物変化検出部30は、検出対象領域の全地点における旧年度時点での地表上の地物の高さを求める。
【0025】
また、地物変化検出部30は、新年度画像データ取得部20が取得した視差のある2枚の航空写真の新年度画像データを用いて、上述した旧年度画像データを用いた処理と同様の処理を行うことにより、検出対象領域の全地点における新年度時点での地表上の地物の高さを求める。
【0026】
続いて、地物変化検出部30は、検出対象領域の全地点において、旧年度時点での地物の高さと新年度時点での地物の高さとを比較して、地物の変化を検出する。
【0027】
例えば、検出対象領域内のある地点において、旧年度時点では地物が無く、つまり地物の高さが0であったが、新年度時点では地物の高さが例えば8mである場合には、地物変化検出部30は、その地点に地物が新設されたことを検出する。また、旧年度時点から新年度時点にかけて、地物の高さが例えば4mから8mに高くなっている場合には、その地点に地物が一部新設されたことを検出する。なお、以下では、新設に、一部新設を含めるものとする。
【0028】
また、例えば、検出対象領域内のある地点において、旧年度時点では地物の高さが例えば8mであったが、新年度時点では地物の高さが0である場合には、地物変化検出部30は、その地点で地物が滅失したことを検出する。また、旧年度時点から新年度時点にかけて、地物の高さが例えば8mから4mに低くなっている場合には、その地点で地物が一部滅失したことを検出する。なお、以下では、滅失に、一部滅失を含めるものとする。
【0029】
このようにして、地物変化検出部30は、2つの異なる時期における検出対象領域内の高さの変化点を抽出することで、地物の新設、滅失等の変化が生じた場所を検出する。
地物変化検出部30は、検出した結果に基づき、図2に示すような、検出対象領域内において地物の変化が検出された場所を示す地物変化検出マップ101を作成する。なお、地物変化検出マップ101の中で、実線で囲まれた場所が地物の新設が検出された場所であり、破線で囲まれた場所が地物の滅失が検出された場所である。
【0030】
建築物非存在領域特定部40は、検出対象領域の中において、建築物が存在しない建築物非存在領域を特定する。
本実施形態に係る建築物検出装置1は、地表上の地物の中の、特に建築物の変化を検出する装置である。そのため、建築物以外の地物の変化の検出を除外する必要がある。
【0031】
ところで、地表上の地物には、建築物、樹木、道路、河川、湖沼等が含まる。そして、それらの場所では何れも高さが変化する。例えば、建築物は、新設(新築)、滅失等により高さが変化する。一方、樹木は、成長、剪定、伐採等により高さが変化する。また、道路は、道路上の車両の存在により高さが変化する。また、河川、湖沼等は、天候、干満等により高さが変化する。
【0032】
そのため、高さの情報に基づき、建築物の変化を検出する場合には、建築物以外の地物の高さの変化の検出を除外する必要がある。
そこで、建築物非存在領域特定部40は、検出対象領域の中から、建築物が存在しないことが明らかな領域である建築物非存在領域を除外するために、そのような建築物非存在領域を特定する。
【0033】
ここで、樹木、道路、河川、湖沼等の場所には建築物は存在しないため、建築物非存在領域には、樹木、道路、河川、湖沼等の場所が含まれる。
【0034】
建築物非存在領域特定部40は、建築物非存在領域を、例えば、樹木(森林)、道路、河川、湖沼等の位置を示す地図データから特定する。なお、この場合、図2に示すような検出対象領域の地図データ102が、例えば、建築物変化検出装置1の中に予め記憶されている。
また、建築物非存在領域特定部40は、検出対象領域を撮影した画像データを画像処理して、検出対象領域内の樹木、道路、河川、湖沼等の場所を特定することにより、建築物非存在領域を特定するようにしても良い。
【0035】
建築物非存在領域特定部40は、特定した建築物非存在領域に基づき、図2に示すような、検出対象領域の中における建築物非存在領域の位置を示す変化検出用除外パターン103を作成する。なお、変化検出用除外パターン103の中で、塗りつぶされている領域が建築物非存在領域である。
【0036】
建築物変化検出部50は、検出対象領域から建築物非存在領域を除外した領域において地物変化検出部30により変化が検出された地物を、検出対象領域において変化した建築物とすることにより、検出対象領域の建築物の変化を検出する。
【0037】
具体的には、建築物変化検出部50は、地物変化検出部30が作成した地物変化検出マップ101と、建築物非存在領域特定部40が作成した変化検出用除外パターン103と、を重ね合わせて、図2に示すようなパターン適用マップ104を作成し、地物変化検出マップ101に示されている地物の変化が検出された場所から、変化検出用除外パターン103に示されている建築物非存在領域に含まれる場所を除外する。このようにして、建築物変化検出部50は、図2に示すような、検出対象領域内において建築物の変化が検出された場所を示す建築物変化検出マップ105を作成する。
【0038】
図2は、建築物変化検出マップ105の作成過程を説明するための図である。
地物変化検出部30は、検出対象領域内において地物の変化が検出された場所を示す地物変化検出マップ101を作成する。地図データ102には、検出対象領域内の地図上の地物の位置が示されている。建築物非存在領域特定部40は、地図データ102に基づき、検出対象領域の中における建築物非存在領域の位置を示す変化検出用除外パターン103を作成する。
【0039】
建築物変化検出部50は、地物変化検出マップ101と変化検出用除外パターン103とを重ね合わせて、地物変化検出マップ101を変化検出用除外パターン103でマスクしたパターン適用マップ104を作成する。そして、建築物変化検出部50は、パターン適用マップ104に基づき、地物変化検出マップ101内の地物の変化検出場所から変化検出用除外パターン103で示される建築物非存在領域以外の変化検出場所を抽出することにより、建築物の変化検出場所を示す建築物変化検出マップ105を作成する。
【0040】
建築物変化検出部50は、作成した建築物変化検出マップ105を、建築物の変化の検出結果として、出力する。
なお、建築物の変化の検出結果は、マップ形式でなく、建築物の変化が検出された場所の位置情報を緯度及び経度等の情報で示す形式であっても良い。
【0041】
また、上記実施形態においては、検出対象領域内の地物の変化を検出してから、建築物非存在領域内で検出された変化を除外したが、検出対象領域から建築物非存在領域を除外してから、除外済みの領域内の地物の変化を検出することにより、建築物の変化を検出するようにしても良い。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る建築物変化検出装置においては、建築物以外の地物の変化が検出される建築物非存在領域を、検出対象領域から除外することにより、検出対象領域内の建築物の変化を検出する。
従って、本実施形態に係る建築物変化検出装置によれば、建築物以外の地物の変化を建築物の変化として検出する誤検出の発生率を抑えることができ、建築物の変化を高精度に検出することができる。
【0043】
図3は、本実施形態に係る建築物変化検出装置1の物理的な構成例を概略的に示すブロック図である。
本実施形態に係る建築物変化検出装置1は、一般的なコンピュータ装置と同様のハードウェア構成によって実現することができ、CPU(Central Processeing Unit)111、主記憶部112、出力部113、入力部114、インタフェース部115、補助記憶部116、及びシステムバス117から構成される。主記憶部112、出力部113、入力部114、インタフェース部115、及び補助記憶部116はいずれもシステムバス117を介してCPU111に接続されている。
【0044】
CPU111は、補助記憶部116に記憶されているプログラムに従って、上述した建築物の変化を検出するための建築物変化検出処理を実行する。
主記憶部112は、RAM(Random Access Memory)等のメインメモリであり、データの作業領域やデータの一時退避領域に用いられる。
【0045】
出力部113は、ディスプレイやプリンタ、スピーカ等を含み、建築物変化検出装置1における建築物変化検出処理の処理結果を出力する。例えば、出力部113は、処理結果として、建築物変化検出部50により作成された建築物変化検出マップ105を出力する。
【0046】
入力部114は、キーボードやマウス等から構成され、オペレータの指示を入力する。
インタフェース部115は、周辺機器と接続され、周辺機器との間でデータの送受信を行う。例えば、インタフェース部115が、画像データの撮影装置と接続され、撮影装置から画像データを受信することにより、建築物変化検出装置1が旧年度画像データ及び新年度画像データを取得する。
【0047】
補助記憶部116は、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリから構成され、建築物変化検出処理をCPU111に行わせるためのプログラム及びデータを予め記憶する。また、補助記憶部116は、CPU111の指示に従って、プログラム及びデータをCPU111に供給し、更に、CPU111から供給されるデータを記憶する。
例えば、補助記憶部116は、検出対象領域の地表面の標高データ、検出対象領域の地図データ102等を記憶する。
【0048】
図1に示した旧年度画像データ取得部10、新年度画像データ取得部20、地物変化検出部30、建築物非存在領域特定部40、建築物変化検出部50の各部の機能は、CPU111が、補助記憶部116に記憶されている建築物変化検出処理用のプログラムを主記憶部112にロードして実行し、図3に示した各部を制御することにより、ソフトウェア的に実現される。
なお、図1に示した各部を、それらの機能を実現する専用回路を組み込んだLSI(Large Scale Integration)等のハードウェア部品により、ハードウェア的に実現しても良い。
【0049】
図4は、建築物変化検出処理の一例を示すフローチャートである。
この処理は、建築物変化検出装置1において、CPU111がプログラムに従って、システムバス117を介して、主記憶部112、出力部113、入力部114、インタフェース部115、補助記憶部116等を制御することにより実行される。
【0050】
建築物変化検出処理が開始する、まず、建築物の変化の検出対象領域を撮影した旧年度画像データと新年度画像データとを比較して、検出対象領域における建築物を含む地物の変化を検出する(ステップS11)。
【0051】
具体的には、建築物変化検出装置1は、例えば、インタフェース部115に接続された撮影装置から旧年度画像データと新年度画像データとを取り込み、補助記憶部116に記憶しておく。建築物変化検出装置1は、補助記憶部116に記憶されている旧年度画像データと新年度画像データとをデジタル画像処理により比較し、旧年度画像データと新年度画像データとの間の違いに基づき、検出対象領域内の地物の変化を検出する。建築物変化検出装置1は、この検出に基づき、変化が検出された地物の位置情報を有する地物変化検出マップ101を作成する。
【0052】
次に、建築物変化検出装置1は、検出対象領域の中において、建築物が存在しない建築物非存在領域を特定する(ステップS12)。
【0053】
具体的には、建築物変化検出装置1は、検出対象領域内の樹木、道路、河川、湖沼等の位置情報を有する地図データ102を補助記憶部116に記憶しておく。建築物変化検出装置1は、地図データ102に基づき、建築物が存在しない位置である樹木、道路、河川、湖沼等の位置を建築物非存在領域として特定する。建築物変化検出装置1は、検出対象領域の中における建築物非存在領域の位置情報を有する変化検出用除外パターン103を作成する。
【0054】
なお、建築物非存在領域は、地図データ102からでなく、旧年度画像データ、新年度画像データ等の検出対象領域を撮影した画像データから特定するようにしても良い。
【0055】
次に、建築物変化検出装置1は、検出対象領域からステップS12で特定された建築物非存在領域を除外した領域において、ステップS11で変化が検出された地物を抽出し、抽出された地物を検出対象領域において変化した建築物とみなすことにより、検出対象領域の建築物の変化を検出し(ステップS13)、この建築物変化検出処理を終了する。
【0056】
具体的には、建築物変化検出装置1は、地物変化検出マップ101と変化検出用除外パターン103とを重ね合わせたパターン適用マップ104を作成する。建築物変化検出装置1は、パターン適用マップ104上の変化検出用除外パターン103でマスクされていない領域において、地物の変化が検出されている位置を抽出することにより、検出対象領域内において建築物の変化が検出された位置情報を有する建築物変化検出マップ105を作成する。
【0057】
なお、上記建築物変化検出処理では、検出対象領域内の地物の変化を検出してから、建築物非存在領域を特定し、建築物非存在領域内で検出された変化を除外した。しかしながら、まず、建築物非存在領域を特定し、検出対象領域から建築物非存在領域を除外した後に、除外済みの領域内の地物の変化を検出することにより、建築物の変化を検出するようにしても良い。
【0058】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態として、図1に示した建築物非存在領域特定部40で特定される建築物非存在領域を、地物の種類毎に分けて特定する場合について説明する。
【0059】
地物のうち、樹木は、成長するものであり、その剪定、伐採、植樹等も比較的容易であるため、その存在場所が地図データ上に正確に示されていない可能性がある。
一方で、道路、河川、湖沼等は、存在する場所が移動する可能性は低く、その存在場所は地図データ上に比較的正確に示されている。
そこで、本実施形態では、建築物以外の地物を、樹木と、樹木以外の道路、河川、湖沼等を含む地物と、に分ける場合について説明する。
【0060】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る建築物変化検出装置1の構成例を概略的に示すブロック図である。
図5に示す第2の実施形態に係る建築物変化検出装置1は、建築物非存在領域特定部40に、樹木領域特定部201と地図データ取得部301と建築物不変領域特定部302とが含まれている点で、第1の実施形態に係る建築物変化検出装置1と異なる。
【0061】
樹木領域特定部201には、旧年度画像データ及び新年度画像データが入力される。樹木領域特定部201は、旧年度画像データ及び新年度画像データの少なくとも1つに基づき、検出対象領域の中における、樹木が存在する樹木領域を、建築物非存在領域として特定する。
【0062】
具体的には、樹木領域特定部201は、検出対象領域を撮影した画像データを画像処理して、検出対象領域内の樹木が存在する樹木領域を特定し、検出対象領域の中における樹木領域の位置を示す樹木領域除外パターンを作成する。
【0063】
樹木領域は、短期間のうちに、樹木が伐採されてその場所に建築物が新設されるような場合も考えられる。
一方で、道路、河川、湖沼等が存在する領域は、短期間のうちにその存在が変化する可能性は低く、また、それらの領域上に建築物が存在する可能性も低い。
そこで、以下、道路、河川、湖沼等の領域を、建築物の変化が発生しない建築物不変領域と称する。
【0064】
地図データ取得部301は、検出対象領域の地図データを取得する。
建築物不変領域特定部302は、地図データ取得部301が取得した地図データに基づき、検出対象領域の中における、建築物の変化が発生しない道路、河川、及び湖沼を含む建築物不変領域を、前記建築物非存在領域として特定する。
【0065】
具体的には、建築物不変領域特定部302は、建築物不変領域を、道路、河川、湖沼等の位置を示す地図データから特定し、検出対象領域の中における建築物不変領域の位置を示す建築物不変領域除外パターンを作成する。
【0066】
建築物変化検出部50は、樹木領域特定部201が作成した樹木領域除外パターンと、建築物不変領域特定部302が作成した建築物不変領域除外パターンと、を取得し、これらを組み合わせて、樹木領域と建築物不変領域とを含む建築物非存在領域の位置を示す第1の実施形態で説明した図2の変化検出用除外パターン103を作成する。
【0067】
建築物変化検出部50は、第1の実施形態と同様に、変化検出用除外パターン103を用いて、検出対象領域から建築物非存在領域を除外した領域において地物変化検出部30により変化が検出された地物を、検出対象領域において変化した建築物とすることにより、検出対象領域の建築物の変化を検出する。
【0068】
第2の実施形態においては、画像データに基づき樹木領域を特定し、特定した樹木領域を検出対象領域から除外することにより、検出対象領域内の建築物の変化を検出する。
従って、本実施形態によれば、位置変化が比較的大きい樹木の影響を効率よく排除して、建築物の変化を高精度に検出することができる。
【0069】
また、第2の実施形態においては、地図データに基づき道路、河川、及び湖沼を含む建築物不変領域を特定し、特定した建築物不変領域を検出対象領域から除外することにより、検出対象領域内の建築物の変化を検出する。
従って、本実施形態によれば、位置変化が比較的少ない道路、河川、湖沼等の影響を効率よく排除して、建築物の変化を高精度に検出することができる。
【0070】
[第3の実施形態]
建築物の変化を検出する際の樹木の影響を考えた場合、次にような態様が考えられる。
1.旧年度画像データでは樹木領域であったが、新年度データでは樹木が伐採されてその場所に建築物が新設されている。
2.旧年度画像データでは建築物が存在していたが、新年度データでは建築物が滅失してその場所に樹木が植えられ樹木領域となっている。
【0071】
そこで、樹木領域の様々な変化態様を考慮して建築物の変化を検出する建築物変化検出装置1を、本発明の第3の実施形態として説明する。
なお、第3の実施形態では、理解の容易のために、樹木以外の道路、河川、湖沼等の地物の影響についての説明は省略する。そのため、第3の実施形態の説明に用いる図においては、第2の実施形態で説明した図5の地図データ取得部301及び建築物不変領域特定部302は図示しない。しかしながら、当然に、第3の実施形態に係る建築物変化検出装置1に地図データ取得部301及び建築物不変領域特定部302を付加しても良い。
【0072】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る建築物変化検出装置1の構成例を概略的に示すブロック図である。
図6に示す第3の実施形態に係る建築物変化検出装置1は、図5に示した建築物非存在領域特定部40が、樹木領域特定部201に置き換わっている点で、第2の実施形態に係る建築物変化検出装置1と異なる。
【0073】
また、第3の実施形態に係る建築物変化検出装置1においては、地物変化検出部30は、地物滅失検出部211と、地物新設検出部212と、を含む。また、樹木領域特手部201は、旧年度樹木領域特定部221と、新年度樹木領域特定部222と、を含む。また、建築物変化検出部50は、建築物滅失検出部231と、建築物新設検出部232と、検出組み合わせ部233と、を含む。
【0074】
更に、第3の実施形態においては、旧年度画像データは、検出対象領域がカラー撮影された旧年度カラー画像データと、赤外撮影された旧年度赤外画像データと、を含む。また、新年度画像データは、検出対象領域がカラー撮影された新年度カラー画像データと、赤外撮影された新年度赤外画像データと、を含む。
なお、本実施形態においては、赤外画像データとして、検出対象領域が近赤外撮影された近赤外画像データを用いる。
【0075】
旧年度カラー画像データは、旧年度画像データ取得部10と旧年度樹木領域特定部221とに入力される。旧年度赤外画像データは、旧年度樹木領域特定部221に入力される。
新旧年度カラー画像データは、新年度画像データ取得部20と新年度樹木領域特定部222とに入力される。新年度赤外画像データは、新年度樹木領域特定部222に入力される。
【0076】
地物滅失検出部211は、地物の変化として、地物の滅失を検出する。
具体的には、地物滅失検出部211は、旧年度カラー画像データと新年度カラー画像データとを比較して、地物の変化のうち、地物の滅失のみを検出する。地物滅失検出部211は、検出した結果に基づき、図7に示すような、検出対象領域内において地物の滅失が検出された場所を示す地物滅失検出マップ241を作成する。なお、地物滅失検出マップ241の中で、破線で囲まれた場所が地物の滅失が検出された場所を示している。
【0077】
地物新設検出部212は、地物の変化として、地物の新設を検出する。
具体的には、地物新設検出部212は、旧年度カラー画像データと新年度カラー画像データとを比較して、地物の変化のうち、地物の新設のみを検出する。地物新設検出部212は、検出した結果に基づき、図8に示すような、検出対象領域内において地物の新設が検出された場所を示す地物新設検出マップ251を作成する。なお、地物新設検出マップ251の中で、実線で囲まれた場所が地物の新設が検出された場所を示している。
【0078】
旧年度樹木領域特定部221は、旧年度カラー画像データと旧年度赤外画像データとを用いて、旧年度時点における検出対象領域の中の樹木領域である旧年度樹木領域を特定する。
【0079】
カラー画像データ及び赤外画像データに基づき、検出対象領域の中の樹木領域を特定するには、まず、赤外画像データから樹木の温度範囲に属している領域を抽出する。次に、カラー画像データから、樹木に多い緑色の補色である赤色の成分が、所定の閾値より少ない領域を抽出する。そして、赤外画像データ及びカラー画像データからそれぞれ抽出した領域の重なる領域を、樹木領域として特定する。
【0080】
旧年度樹木領域特定部221は、入力される旧年度赤外画像データ及び旧年度カラー画像データに基づき、検出対象領域の中の旧年度樹木領域と特定する。
旧年度樹木領域特定部221は、特定した旧年度樹木領域に基づき、検出対象領域の中における旧年度樹木領域の位置を示す旧年度樹木領域除外パターンを作成する。
【0081】
ところで、旧年度時点で樹木領域であった場所は、その後に樹木が伐採されて、新年度時点では建築物が新設されていることがあり得る。その一方で、旧年度時点で樹木領域であった場所は、旧年度時点で建築物が存在していないことが明らかであるため、新年度時点で建築物が滅失することはあり得ない。そこで、旧年度樹木領域特定部221は、旧年度樹木領域除外パターンを、図7に示すような、旧年度樹木領域を建築物の滅失検出の対象から除外するため滅失検出用除外パターン242とする。なお、滅失検出用除外パターン242の中で、塗りつぶされている領域が旧年度樹木領域である。
【0082】
旧年度時点で樹木領域であった場所において、例え地物の滅失が検出されても、それは、建築物の滅失でないため、この滅失検出用除外パターン242を用いることにより、建築物以外の滅失を建築物の滅失であると誤検出することを防ぐことができる。
【0083】
新年度樹木領域特定部222は、新年度カラー画像データと新年度赤外画像データとを用いて、新年度時点における検出対象領域の中の樹木領域である新年度樹木領域を特定する。
【0084】
新年度樹木領域特定部222は、入力される新年度赤外画像データ及び新年度カラー画像データに基づき、旧年度樹木領域特定部221と同様な樹木領域の特定処理を行うことにより、検出対象領域の中の新年度樹木領域と特定する。
新年度樹木領域特定部222は、特定した新年度樹木領域に基づき、検出対象領域の中における新年度樹木領域の位置を示す新年度樹木領域除外パターンを作成する。
【0085】
ところで、新年度時点で樹木領域である場所は、旧年度時点で存在していた建築物が滅失し、その後に植樹されていることがあり得る。その一方で、新年度時点で樹木領域である場所は、新年度時点で建築物が存在していないことが明らかであるため、新年度時点で建築物が新設されていることはあり得ない。そこで、新年度樹木領域特定部222は、新年度樹木領域除外パターンを、図8に示すような、新年度樹木領域を建築物の新設検出の対象から除外するため新設検出用除外パターン252とする。なお、新設検出用除外パターン252の中で、塗りつぶされている領域が新年度樹木領域である。
【0086】
新年度時点で樹木領域である場所において、例え地物の新設が検出されても、それは、建築物の新設でないため、この新設検出用除外パターン252を用いることにより、建築物以外の新設を建築物の新設であると誤検出することを防ぐことができる。
【0087】
建築物滅失検出部231は、検出対象領域から旧年度樹木領域を除外した領域において地物滅失検出部211により滅失が検出された地物を、検出対象領域において滅失した建築物とすることにより、検出対象領域の建築物の滅失を検出する。
【0088】
具体的には、建築物滅失検出部231は、地物滅失検出部211が作成した地物滅失検出マップ241と、旧年度樹木領域特定部221が作成した滅失検出用除外パターン242と、を重ね合わせて、図7に示すようなパターン適用マップ243を作成し、地物滅失検出マップ241に示されている地物の滅失が検出された場所から、滅失検出用除外パターン242に示されている旧年度樹木領域に含まれる場所を除外する。このようにして、建築物滅失検出部231は、図7に示すような、検出対象領域内において建築物の滅失が検出された場所を示す建築物滅失検出マップ244を作成する。
【0089】
図7は、建築物滅失検出マップ244の作成過程を説明するための図である。
建築物滅失検出部231は、地物滅失検出マップ241と滅失検出用除外パターン242とを重ね合わせて、地物滅失検出マップ241を滅失検出用除外パターン242でマスクしたパターン適用マップ243を作成する。そして、建築物滅失検出部231は、パターン適用マップ243に基づき、地物滅失検出マップ241内の地物の滅失検出場所から滅失検出用除外パターン242で示される旧年度樹木領域以外の滅失検出場所を抽出することにより、建築物の滅失検出場所を示す建築物滅失検出マップ244を作成する。
【0090】
建築物新設検出部232は、検出対象領域から新年度樹木領域を除外した領域において地物新設検出部212により新設が検出された地物を、検出対象領域において新設した建築物とすることにより、検出対象領域の建築物の新設を検出する。
【0091】
具体的には、建築物新設検出部232は、地物新設検出部212が作成した地物新設検出マップ251と、新年度樹木領域特定部222が作成した新設検出用除外パターン252と、を重ね合わせて、図8に示すようなパターン適用マップ253を作成し、地物新設検出マップ251に示されている地物の新設が検出された場所から、新設検出用除外パターン252に示されている新年度樹木領域に含まれる場所を除外する。このようにして、建築物新設検出部232は、図8に示すような、検出対象領域内において建築物の新設が検出された場所を示す建築物新設検出マップ254を作成する。
【0092】
図8は、建築物新設検出マップ254の作成過程を説明するための図である。
建築物新設検出部232は、地物新設検出マップ251と新設検出用除外パターン252とを重ね合わせて、地物新設検出マップ251を新設検出用除外パターン252でマスクしたパターン適用マップ253を作成する。そして、建築物新設検出部232は、パターン適用マップ253に基づき、地物新設検出マップ251内の地物の新設検出場所から新設検出用除外パターン252で示される新年度樹木領域以外の新設検出場所を抽出することにより、建築物の新設検出場所を示す建築物新設検出マップ254を作成する。
【0093】
検出組み合わせ部233は、建築物滅失検出部231による建築物の滅失の検出と、建築物新設検出部232による建築物の新設の検出と、組み合わせて、検出対象領域の建築物の新設及び滅失を含む変化を検出する。
【0094】
図9は、検出組み合わせ部233による組み合わせの過程を説明するための図である。
検出組み合わせ部233は、建築物滅失検出部231が作成した図7の建築物滅失検出マップ244と、建築物新設検出部232が作成した図8の建築物新設検出マップ254と、を組み合わせて、検出対象領域において、建築物の滅失が検出された場所と新設が検出された場所とを共に示す図9の建築物変化検出マップ261を作成する。
【0095】
この建築物変化検出マップ261は、検出対象領域内において建築物の変化が検出された位置情報と、滅失、新設等の変化の種類を示す情報と、を有する。
検出組み合わせ部233は、作成した建築物変化検出マップ261を、建築物の変化の検出結果として、出力する。
【0096】
以上説明した第3の実施形態においては、ステレオ写真測量に用いられる2枚のカラー画像データと同時に撮影される赤外画像データを利用して樹木領域を特定する。従って、第3の実施形態によれば、建築物の変化の検出において、樹木に関連する検出不要点及び検出誤りを削減することができ、建築物の変化の検出精度を向上させることができる。
【0097】
また、第3の実施形態においては、樹木部分が建築物の変化検出対象から除外される。従って、第3の実施形態によれば、建築物の変化の検出における検出不要点を削減することができ、樹木自身の変化箇所が差分として検出されることを防止することができる。
【0098】
また、第3の実施形態においては、新旧の赤外画像データを使い分けて、新設検出用の除外パターンと滅失検出用の除外パターンとを用意している。従って、第3の実施形態によれば、樹木部分が建築物に変わった場合やその逆の場合にも建築物の変化を検出することができ、樹木部分での建築物の新設及び滅失の検出漏れを防ぐことができる。
例えば、樹木から建築物又は建築物から樹木に変化した箇所であっても、建築物の変化を検出することができる。
【0099】
なお、第3の実施形態においては、旧年度時点及び新年度時点の両時点の赤外画像データを取得している。しかしながら、どちらか一方の時点の赤外画像データしか得られない場合であっても、建築物変化検出装置1は、両時点の赤外画像データを得られない場合に比べて、建築物の変化の検出精度を上げることができる。
【0100】
例えば、旧年度時点の赤外画像データのみが得られた場合には、樹木領域特定部201の中で、旧年度樹木領域特定部221だけを動作させて、滅失検出用除外パターン242を作成する。これにより、建築物の滅失の検出精度を上げることができる。
また、新年度時点の赤外画像データのみが得られた場合には、樹木領域特定部201の中で、新年度樹木領域特定部222だけを動作させて、新設検出用除外パターン252を作成する。これにより、建築物の新設の検出精度を上げることができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明を実施するにあたっては、種々の形態による変形及び応用が可能であり、上記第1〜第3の実施形態に限られるものではない。
例えば、上述した建築物変化検出装置1の構成、処理手順、マップ、パターン等は一例であり、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に変更及び修正が可能である。
例えば、上述したマップ、パターン等は、理解を容易にするためにマップ形式で説明しているが、位置情報、変化情報等を所定のデータ構造で示すような形式であっても良い。
【0102】
また、上記実施形態に係る建築物変化検出装置1の機能は、専用のハードウェアによっても、また、通常のコンピュータシステムによっても実現することができる。
【0103】
例えば、上記実施形態において建築物変化検出装置1の補助記憶部116に記憶されているプログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する装置を構成することができる。
【0104】
また、プログラムをインターネット等の通信ネットワーク上の所定のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロード等するようにしても良い。
【0105】
また、通信ネットワークを介してプログラムを転送しながら起動実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
更に、プログラムの全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報をコンピュータが通信ネットワークを介して送受信しながらプログラムを実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
【0106】
なお、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等しても良い。
【0107】
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る建築物変化検出装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【図2】建築物変化検出マップの作成過程を説明するための図である。
【図3】本実施形態に係る建築物変化検出装置の物理的な構成例を概略的に示すブロック図である。
【図4】建築物変化検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る建築物変化検出装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る建築物変化検出装置の構成例を概略的に示すブロック図である。
【図7】建築物滅失検出マップの作成過程を説明するための図である。
【図8】建築物新設検出マップの作成過程を説明するための図である。
【図9】検出組み合わせ部による組み合わせの過程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0109】
1 建築物変化検出装置
10 旧年度画像データ取得部
20 新年度画像データ取得部
30 地物変化検出部
40 建築物非存在領域特定部
50 建築物変化検出部
101 地物変化検出マップ
102 地図データ
103 変化検出用除外パターン
104、243、253 パターン適用マップ
105、261 建築物変化検出マップ
111 CPU
112 主記憶部
113 出力部
114 入力部
115 インタフェース部
116 補助記憶部
117 システムバス
201 樹木領域特定部
211 地物滅失検出部
212 地物新設検出部
221 旧年度樹木領域特定部
222 新年度樹木領域特定部
231 建築物滅失検出部
232 建築物新設検出部
233 検出組み合わせ部
241 地物滅失検出マップ
242 滅失検出用除外パターン
244 建築物滅失検出マップ
251 地物新設検出マップ
252 新設検出用除外パターン
254 建築物新設検出マップ
301 地図データ取得部
302 建築物不変領域特定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時点と、前記第1の時点より後の第2の時点と、の間における地図上の所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出装置であって、
前記第1の時点において前記所定の領域を撮影した第1の画像データを取得する第1画像データ取得手段と、
前記第2の時点において前記所定の領域を撮影した第2の画像データを取得する第2画像データ取得手段と、
前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較して、前記所定の領域における建築物を含む地物の変化を検出する地物変化検出手段と、
前記所定の領域の中において、建築物が存在しない建築物非存在領域を特定する建築物非存在領域特定手段と、
前記所定の領域から前記建築物非存在領域を除外した領域において前記地物変化検出手段により変化が検出された地物を、前記所定の領域において変化した建築物とすることにより、前記所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出手段と、
を備えることを特徴とする建築物変化検出装置。
【請求項2】
前記建築物非存在領域特定手段は、
前記第1の画像データ及び前記第2の画像データの少なくとも1つに基づき、前記所定の領域の中における、樹木が存在する樹木領域を、前記建築物非存在領域として特定する樹木領域特定手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の建築物変化検出装置。
【請求項3】
前記第1の画像データは、カラー撮影された第1のカラー画像データと、赤外撮影された第1の赤外画像データと、を含み、
前記第2の画像データは、カラー撮影された第2のカラー画像データと、赤外撮影された第2の赤外画像データと、を含み、
前記地物変化検出手段は、
地物の変化として、地物の滅失を検出する地物滅失検出手段と、
地物の変化として、地物の新設を検出する地物新設検出手段と、を有し、
前記樹木領域特定手段は、
前記第1のカラー画像データと前記第1の赤外画像データとを用いて、前記第1の時点における前記所定の領域の中の樹木領域である第1の樹木領域を特定する第1樹木領域特定手段と、
前記第2のカラー画像データと前記第2の赤外画像データとを用いて、前記第2の時点における前記所定の領域の中の樹木領域である第2の樹木領域を特定する第2樹木領域特定手段と、を有し、
前記建築物変化検出手段は、
前記所定の領域から前記第1の樹木領域を除外した領域において前記地物滅失検出手段により滅失が検出された地物を、前記所定の領域において滅失した建築物とすることにより、前記所定の領域の建築物の滅失を検出する建築物滅失検出手段と、
前記所定の領域から前記第2の樹木領域を除外した領域において前記地物新設検出手段により新設が検出された地物を、前記所定の領域において新設した建築物とすることにより、前記所定の領域の建築物の新設を検出する建築物新設検出手段と、
前記建築物滅失検出手段による建築物の滅失の検出と、前記建築物新設検出手段による建築物の新設の検出と、組み合わせて、前記所定の領域の建築物の新設及び滅失を含む変化を検出する手段と、を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の建築物変化検出装置。
【請求項4】
前記建築物非存在領域特定手段は、
前記所定の領域の地図データを取得する地図データ取得手段と、
前記地図データに基づき、前記所定の領域の中における、建築物の変化が発生しない道路、河川、及び湖沼を含む建築物不変領域を、前記建築物非存在領域として特定する建築物不変領域特定手段と、を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の建築物変化検出装置。
【請求項5】
第1の時点と、前記第1の時点より後の第2の時点と、の間における地図上の所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出方法であって、
前記第1の時点において前記所定の領域を撮影した第1の画像データと、前記第2の時点において前記所定の領域を撮影した第2の画像データと、を比較して、前記所定の領域における建築物を含む地物の変化を検出する地物変化検出手順と、
前記所定の領域の中において、建築物が存在しない建築物非存在領域を特定する建築物非存在領域特定手順と、
前記所定の領域から前記建築物非存在領域を除外した領域において、前記地物変化検出手順により変化が検出された地物を抽出し、該抽出した地物を前記所定の領域において変化した建築物とみなすことにより、前記所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出手順と、
を備えることを特徴とする建築物変化検出方法。
【請求項6】
第1の時点と、前記第1の時点より後の第2の時点と、の間における地図上の所定の領域の建築物の変化を検出するためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記第1の時点において前記所定の領域を撮影した第1の画像データを取得する第1画像データ取得手段、
前記第2の時点において前記所定の領域を撮影した第2の画像データを取得する第2画像データ取得手段、
前記第1の画像データと前記第2の画像データとを比較して、前記所定の領域における建築物を含む地物の変化を検出する地物変化検出手段、
前記所定の領域の中において、建築物が存在しない建築物非存在領域を特定する建築物非存在領域特定手段、
前記所定の領域から前記建築物非存在領域を除外した領域において前記地物変化検出手段により変化が検出された地物を、前記所定の領域において変化した建築物とすることにより、前記所定の領域の建築物の変化を検出する建築物変化検出手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−128565(P2010−128565A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299620(P2008−299620)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】