説明

建装材

【課題】柔軟性および耐磨耗性に優れる建装材。
【解決手段】下記成分(A)、(B)および(C)を含有する樹脂組成物からなる建装材であって、樹脂組成物全体を100重量%とするとき、成分(A)の含有量が25〜85重量%であり、成分(B)の含有量が1〜20重量%であり、成分(C)の含有量が10〜70重量%である樹脂組成物からなる建装材。
(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体
(B)粘着付与樹脂
(C)無機充填材

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性および耐磨耗性に優れる建装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床材、天井材、壁紙等の建装材には、機械的強度や耐熱性が要求される。例えば、特開昭61−231040号公報には、エチレン−アクリル酸エチル共重合体を主成分とする樹脂成分に無機難燃剤を含有する、耐熱性および機械的強度のすぐれた難燃性エチレン−アクリル酸エチル共重合体組成物からなる成形体が記載されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−231040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された組成物からなる成形体では、柔軟性および耐磨耗性において十分に満足のいくものとはいえなかった。
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題、すなわち、本発明の目的は、柔軟性および耐磨耗性に優れる建装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、下記成分(A)、(B)および(C)を含有する樹脂組成物からなる建装材であって、樹脂組成物全体を100重量%とするとき、成分(A)の含有量が25〜85重量%であり、成分(B)の含有量が1〜20重量%であり、成分(C)の含有量が10〜70重量%である樹脂組成物からなる建装材に係るものである。
(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体
(B)粘着付与樹脂
(C)無機充填材
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、柔軟性および耐磨耗性に優れる建装材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられる成分(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体は、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体である。
【0008】
α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素原子数3〜8の不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエステルであって、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチルおよびメタクリル酸イソブチル等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチルである。
【0009】
成分(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体として好ましくは、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体である。成分(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0010】
成分(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体に含有されるα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位の含有量は、柔軟性の観点から少なすぎないことが好ましく、耐磨耗性の観点から多すぎないことが好ましい。好ましくは、エチレンに由来する単量体単位の含有量が60〜90重量%であり、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルに由来する単量体単位の含有量が40〜10重量%であり、より好ましくはエチレンに由来する単量体単位の含有量が65〜87重量%であり、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルに由来する単量体単位の含有量が35〜13重量%であり、さらに好ましくはエチレンに由来する単量体単位の含有量が70〜85重量%であり、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルに由来する単量体単位の含有量が30〜15重量%である(ただし、成分(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体全体を100重量%とする)。
【0011】
成分(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体のメルトフローレイトは、外観の観点から小さすぎないことが好ましく、加工性の観点から大きすぎないことが好ましい。メルトフローレイトとして好ましくは0.1〜20g/10分であり、より好ましくは0.5〜15g/10分であり、さらに好ましくは1〜10g/10分である。なお、成分(A)のメルトフローレイトは、JIS K 7210に従い、試験温度190℃、試験荷重21.18Nの条件で測定される。
【0012】
成分(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法が用いられる。例えば、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルをラジカル発生剤の存在下に、重合圧力50〜400MPa、重合温度100〜300℃において適当な重合溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる高圧ラジカル重合法等が挙げられる。
【0013】
本発明に用いられる成分(B)粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、合成石油樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、スチレン系樹脂およびイソプレン系樹脂等が挙げられる。
【0014】
ロジン系樹脂としては、例えば、天然ロジン、重合ロジン、部分または完全水添ロジン、これら各種ロジンのエステル化物(グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、エチレングリコールエステル、メチルエステル等)、不均化物、フマル化物、ライム化物またはこれらを適宜組み合わせたロジン誘導体が挙げられる。
【0015】
ポリテルペン系樹脂としては、例えば、環状テルペン(α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン等)の単独重合体または共重合体、および上記の各種のテルペンとフェノール系化合物(フェノール、ビスフェノール等)との共重合体であるα−ピネン−フェノール樹脂、ジペンテン−フェノール樹脂、テルペン−ビスフェノール樹脂等のテルペン−フェノール系樹脂、さらには上記各種テルペンと芳香族モノマーとの共重合体である芳香族変性テルペン樹脂が挙げられる。
【0016】
合成石油樹脂としては、例えば、ナフサ分解油(C5留分、C6〜C11留分、その他オレフィン系留分等)の単独重合体または共重合体およびこれら重合体の水添物である脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環式系石油樹脂、脂肪族−脂環式共重合樹脂等が挙げられる。さらに、上記の各種のナフサ分解油と前記の各種テルペンとの共重合体やその水添物である共重合系石油樹脂等も挙げられる。ナフサ分解油のC5留分として好ましくは、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン等のメチルブテン類、1−ペンテン、2−ペンテン等のペンテン類、ジシクロペンタジエン等であり、C6〜C11留分として好ましくは、インデン、スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等のメチルスチレン類、メチルインデン、エチルインデン、ビニルキシレン、プロペニルベンゼン等であり、その他オレフィン系留分として好ましくはブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ブタジエン、オクタジエン等である。
【0017】
フェノール系樹脂としては、例えば、アルキルフェノール樹脂、アルキルフェノールとアセチレンとの縮合によるアルキルフェノール−アセチレン樹脂、およびこれらの変性物が挙げられる。ここで、これらフェノール系樹脂としては、フェノールを酸触媒でメチロール化したノボラック型樹脂、アルカリ触媒でメチロール化したレゾール型樹脂のいずれであってもよい。
【0018】
キシレン系樹脂としては、例えば、m−キシレンとホルムアルデヒドから成るキシレン−ホルムアルデヒド樹脂、これに第3成分を添加して反応させた変性樹脂等が挙げられる。
【0019】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレンの低分子量重合体、α−メチルスチレンとビニルトルエンとの共重合樹脂、スチレンとアクリロニトリルとインデンとの共重合樹脂等が挙げられる。
【0020】
イソプレン系樹脂としては、例えば、イソプレンの二量化物であるC10脂環式化合物とC10鎖状化合物を共重合して得られる樹脂等が挙げられる。
【0021】
粘着付与樹脂として好ましくは、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、合成石油樹脂であり、より好ましくは脂肪族および/または脂環式構造を有する樹脂である。ここで脂肪族および/または脂環式構造を有する石油樹脂類として特に好ましいものとして、ロジン系樹脂では部分または完全水添ロジンとそれらの誘導体、ポリテルペン系樹脂では環状テルペンの単独重合体あるいは共重合体、合成石油樹脂では脂肪族系石油樹脂、脂環式系石油樹脂、脂肪族−脂環式共重合樹脂、ナフサ分解油と各種テルペンとの共重合体の水添物が挙げられる。成分(B)粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明に用いられる成分(C)無機充填材としては、通常用いられる無機充填材を用いることができ、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸カルシウム等が挙げられる。また、ウォラストナイト等の繊維型フィラーでもよい。これらの中で好ましくは、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムの中から選ばれる少なくとも1種の無機充填材である。なお、無機充填剤の表面を、樹脂成分への分散性、機械的強度の向上、耐磨耗性、耐炭酸ガス白化性、耐湿性、耐油性、耐化学薬品性、加工性等を付与するために脂肪酸またはその金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびアルミニウムカップリング剤から選ばれた少なくとも1種の表面処理剤で処理したものを使用することができる。成分(C)無機充填材は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の樹脂組成物に含有される成分(A)、(B)および(C)の含有量は、樹脂組成物全体を100重量%とするとき、成分(A)の含有量が25〜85重量%であり、成分(B)の含有量が1〜20重量%であり、成分(C)の含有量が10〜70重量%である。各成分の含有量が上記範囲にあるとき、柔軟性および耐磨耗性に優れる建装材を得ることができる。好ましくは成分(A)の含有量が30〜80重量%であり、成分(B)の含有量が3〜15重量%であり、成分(C)の含有量が15〜60重量%である。
【0024】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、造核剤、紫外線防止剤、可塑剤、発泡剤、発泡助剤、分散剤、防曇剤、抗菌剤、架橋剤、架橋助剤、有機多孔質パウダー、顔料等の添加剤を任意の組合わせで添加することができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のブレンド方法を用いることができる。公知のブレンド方法としては、例えば、成分(A)〜(C)と必要に応じて添加剤等の他の成分とを、ドライブレンドやメルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーが挙げられ、メルトブレンドする方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーが挙げられる。
【0026】
本発明の建装材の製造方法としては、本発明の樹脂組成物を、例えば、カレンダー成形法、押出し成型法等の成形法によって、単層シート、難燃紙またはカーペット等を貼合した多層積層体に成形する方法が挙げられる。この際、樹脂組成物を発泡させることでさらに良好な風合いを有する建装材を製造することも可能である。
【0027】
本発明の建装材としては、例えば、床材、天井材、壁紙等が挙げられる。床材としては、例えば、床タイル、床シート、タイルカーペット、自動車用カーペット、幅木材等が挙げられる。また、タイルカーペットや自動車用カーペット等は、本発明の樹脂組成物をカーペットバッキングとしてカーペットと貼合することによって製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明の樹脂組成物の物性評価は、以下の方法によって行った。
(1)メルトフローレイト(MFR)
JIS K 7210(1995)に従い、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定を行った。
(2)メタクリル酸メチル単量体単位含有量
装置として日本分光(株)製FT/IR−7300を用い、厚さ0.3mmのシートの赤外線吸収スペクトル分析法に基づき下記式1よって求めた。
MMA=4.1×log(I0/I)/t−5.3 式1
上記式1において、MMAはメタクリル酸メチル単量体単位の含有量(重量%)、Iは周波数3448cm-1での透過光強度、I0は周波数3448cm-1での入射光強度、tは測定試料シート厚さ(cm)を表す。I0を求めるときのベースラインは3510〜3310cm-1とした。
(3)曲げ剛性率
厚さが2mmのプレス成形シートから試験片を切り出し、ASTM D747に規定された方法に従い曲げ剛性率を測定した。
曲げ剛性率が低いほど、柔軟性に優れる。
(4)磨耗量
厚さが2mmのプレス成形シートから試験片を切り出し、JIS K 7204(1977)に従い、摩耗輪H−18を用いて、荷重9.8Nで1000回転した後の試験片の質量の減少を磨耗量とした。磨耗量が小さいほど耐磨耗性に優れる。
【0029】
実施例に使用した材料は、以下のとおりである。
(1)成分(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体
A1:エチレン−メタクリル酸メチル共重合体 住友化学(株)製 アクリフト WK307(MFR 7g/10分、メタクリル酸メチル単量体単位含有量 25重量%)
A2:エチレン−メタクリル酸メチル共重合体 住友化学(株)製 アクリフト WH206(MFR 2g/10分、メタクリル酸メチル単量体単位含有量 20重量%)
(2)成分(B)粘着付与樹脂
B1:ヤスハラケミカル株式会社製 クリアロンP135
(3)成分(C)無機充填材
C1:白石カルシウム株式会社製 炭酸カルシウム PO−150−B−10
【0030】
実施例および比較例
表1に示した組成の混合物をラボプラストミル(東洋精機(株)製、30C150(R100H))を用い、150℃、60回転/分、5分間の条件で混練し、本発明の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性評価結果を表1に示した。
【0031】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)および(C)を含有する樹脂組成物からなる建装材であって、樹脂組成物全体を100重量%とするとき、成分(A)の含有量が25〜85重量%であり、成分(B)の含有量が1〜20重量%であり、成分(C)の含有量が10〜70重量%である樹脂組成物からなる建装材。
(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体
(B)粘着付与樹脂
(C)無機充填材
【請求項2】
成分(A)エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体が、該共重合体(A)全体を100重量%とするとき、エチレンに由来する単量体単位の含有量が60〜90重量%であり、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルに由来する単量体単位の含有量が40〜10重量%であり、メルトフローレイトが0.1〜20g/10分である共重合体である請求項1に記載の樹脂組成物からなる建装材。
【請求項3】
成分(C)無機充填材が、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機充填材である請求項1または2に記載の樹脂組成物からなる建装材。

【公開番号】特開2007−309037(P2007−309037A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141220(P2006−141220)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】