建設機械のキャビン
【課題】 フレーム式のキャビンにおいて、機種に見合ったキャビン強度の確保という目的を低コストで達成でき、しかもキャビン重量を軽減する。
【解決手段】 後部フレーム体Aと、この後部フレーム体Aの前方に配置される前部フレーム体Bとを備え、この前部フレーム体Bを、オペレータ保護機能無しと、オペレータ保護機能付きの軽量機種と、オペレータ保護機能付きの重量機種の三種類の機種間で共用される共通部分、後部フレーム体Aを上記各機種に応じて異なる強度を持った交換部分として、これらを結合することにより、骨組となるキャビンフレーム21を構成した。
【解決手段】 後部フレーム体Aと、この後部フレーム体Aの前方に配置される前部フレーム体Bとを備え、この前部フレーム体Bを、オペレータ保護機能無しと、オペレータ保護機能付きの軽量機種と、オペレータ保護機能付きの重量機種の三種類の機種間で共用される共通部分、後部フレーム体Aを上記各機種に応じて異なる強度を持った交換部分として、これらを結合することにより、骨組となるキャビンフレーム21を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械のキャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の好適例である油圧ショベルを例にとって従来の技術を説明する。
【0003】
油圧ショベルは、図11,12に示すようにクローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に垂直軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体2と、この上部旋回体2に装着された作業アタッチメント3とによって構成され、上部旋回体2にキャビン4が設けられる。
【0004】
ここで、一般的には、上部旋回体2の右側(キャビン4内に着座したオペレータから見た右側。以下にいう左右及び前後の方向性について同じ)に作業アタッチメント3、左側にキャビン4がそれぞれ設けられ、キャビン4の左側面にドア5によって開閉される出入口6が設けられる。
【0005】
このキャビン4として、パイプ材からなる骨組構造のキャビンフレームにドアや窓ガラス等の付属材を取付けて構成されるフレーム式のものが公知である(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
このフレーム式キャビンにおけるキャビンフレームの一般的構成を図13に示す。
【0007】
このキャビンフレーム7は、前部左右両側に立設されたフロントピラー8,9と、後部左右両側に立設されたリアピラー10,11と、左側のフロント、リア両ピラー8,10間のほぼ中央部に立設されたセンターピラー12と、左側のフロント、リア両ピラー8,10の上端間に架け渡された左ルーフメンバー13と、右側のフロント、リア両ピラー9,11の上端間に架け渡された右ルーフメンバー14と、左右のフロントピラー8,9の上端間に架け渡された上フロントクロスメンバー15と、同下端間に架け渡された下フロントクロスメンバー16と、左右のリアピラー10,11の上端間に架け渡された上リアクロスメンバー17と、同下端間に架け渡された下リアクロスメンバー18とによって構成されている。
【0008】
これら各構成要素の接合部分は溶接によって一体化される。
【0009】
また、左フロント、センター両ピラー8,12と左ルーフメンバー13とによって図11中の出入口6が形成される。
【0010】
この公知のキャビンフレーム7においては、左右のフロントピラー8,9と上下のフロントクロスメンバー15,16で前面側の門形構造体、左右のリアピラー10,11と上下のリアクロスメンバー17,18で後面側の門形構造体をそれぞれ構成し、この前後の門形構造体を左右のルーフメンバー13,14でつないだ構成となっている。
【0011】
このフレーム構成では、キャビンに作用する荷重が前後の門形構造体に伝えられてフレーム全体に分散され、すべての構成要素で均等に受けることになる。
【0012】
従って、全構成要素に均一な強度・剛性が求められる。
【0013】
ところで、油圧ショベルのキャビンには、機械の転倒時(横転時)にオペレータの居住部分の変形を抑えてオペレータを保護するオペレータ保護機能付きのものと、このようなオペレータ保護機能を持たないものの二通りがある。
【0014】
この場合、オペレータ保護機能付きのものでは、転倒時に居住空間を確保するのに必要な強度を求められるのに対し、オペレータ保護機能無しのものでは相対的に低強度でよい。
【0015】
また、オペレータ保護機能付きのキャビンにおいては、車体重量によって転倒時にキャビンに作用する荷重も変わるため、車体重量別の各機種に応じて強度が異なる複数種類に分けられ、結果、オペレータ保護機能無しのものも含めて三種類以上に分けられる。
【特許文献1】特開2004−42739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここで、従来のフレーム式キャビンでは、各機種に見合った強度を確保するためには機種ごとに強度の異なるフレームを製作しなければならないため、製作コストが高くなる。
【0017】
また、オペレータ保護機能付きの重い機種の場合に、フレーム全体として構成要素の断面強度を高くとらなければならないため、キャビンが重量化するという問題があった。
【0018】
そこで本発明は、フレーム式のキャビンにおいて、機種に見合ったキャビン強度の確保という目的を低コストで達成でき、しかもキャビン重量を軽減することができる建設機械のキャビンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1の発明は、後部フレーム体と、この後部フレーム体の前方に配置される前部フレーム体とを備え、この前部フレーム体を複数の機種間で共用される共通部分、上記後部フレーム体を上記各機種に応じて異なる強度を持った交換部分として、これらが結合されることにより、骨組となるキャビンフレームが構成されるものである。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、後部フレーム体が、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った強度部分であって、かつ、車体重量による機種に応じた強度を持った交換部分として構成されたものである。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、キャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素は、各機種間で外形寸法は同じで、機種に応じて肉厚寸法が異なる鋼材によって成形されたものである。
【0022】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、キャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素は、機種間で外形寸法は同じで、補強部材による補強分を加えた断面強度が機種に応じて異なる鋼材によって成形されたものである。
【0023】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの構成において、後部フレーム体の構成要素として、少なくとも、キャビンの左右片側において前後方向中間部に配置されるセンターピラーと、このセンターピラーよりも後方で左右両側に配置される左右のリアピラーと、この各ピラーの上端同士を連結する連結部材とを備え、この各構成要素により、外郭形状が平面視三角形の門形構造体である後部フレーム体が構成されたものである。
【0024】
請求項6の発明は、請求項5の構成において、後部フレーム体のセンターピラーが、左右両側のうちキャビン出入口側に配置されたものである。
【0025】
請求項7の発明は、請求項5または6の構成において、後部フレーム体の平面形状が非直角三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたものである。
【0026】
請求項8の発明は、請求項7の構成において、後部フレーム体の平面形状が二等辺三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、フレーム式のキャビンにおいて、キャビンフレームを前部フレーム体と後部フレーム体とに分け、これらを結合してキャビンフレームを構成するため、後部フレーム体のみを機種(請求項2ではオペレータ保護機能付きのキャビンにおける車体重量別の複数の機種を含む)に応じて交換すればよい。
【0028】
このため、キャビンフレーム全体を別々に製作し、機種に応じて取り替える場合と比較して、製作コストが格段に安くてすむ。また、重い機種においても、後部フレーム体のみを交換すればよいため、全体を重いものに交換する場合と比べてキャビンフレームの重量(ひいてはキャビン重量)を軽減することができる。
【0029】
また、請求項2の発明によると、居住部分でない前部フレーム体は相対的に低強度とすることができるため、同フレーム体の構成要素の量を少なくし、かつ、その断面サイズを小さくすることが可能となる。
【0030】
これにより、オペレータ保護機能を確保しながら、前方視界を広げ、かつ、キャビンの軽量化という要請にも応えることができる。
【0031】
なお、後部フレーム体の強度を機種に応じて変える手段としては、請求項3のように外形寸法は変えずに構成要素の肉厚寸法を変えてもよいし、請求項4のように補強部材による補強分を加えた断面強度を変えてもよい。
【0032】
あるいは、肉厚寸法は同じで外形寸法(断面サイズ)を変えてもよいし、肉厚寸法と外形寸法の両方を変えてもよい。
【0033】
請求項5〜8の発明によると、後部フレーム体を平面視三角形(左右非対称)の門形構造体として構成しているため、後部フレーム体が高強度・高剛性となって高い荷重支持性能を発揮し、とくに耐ねじれ荷重の点ですぐれたものとなる。
【0034】
つまり、必要な強度(オペレータ保護機能付きの場合は居住空間を確保するのに必要な強度)を維持しながら、後部フレーム体の構成要素を減量して同フレーム体を軽くすることができる。
【0035】
この場合、請求項6の発明によると、とくにオペレータ保護機能付きのキャビンにおいて、転倒時に側方荷重が直接作用する出入口側にセンターピラーを配置したことにより、荷重を後部フレーム体に確実に伝え、変形抑制作用を確保できる。
【0036】
また、請求項7,8の発明によると、後部フレーム体の平面形状を非直角三角形としたから、直角三角形の場合と比較して耐ねじれ強度を高め、変形抑制効果が高いものとなる。
【0037】
とくに、平面形状を二等辺三角形とした請求項8の発明によると、耐ねじれ強度が三角形のうちでも最大となって後部フレーム体が最も変形しにくくなる。このため、転倒時のオペレータ保護の目的を確実に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施形態を図1〜図10によって説明する。
【0039】
以下の実施形態では、フレーム式のキャビンにおいて、キャビンフレームを、
イ)オペレータ保護機能を持たないもの、
ロ)オペレータ保護機能付きで車体重量が軽いもの、
ハ)オペレータ保護付きで車体重量が重いもの
の三つの機種に適用する場合を例にとっている。
【0040】
第1実施形態(図1〜図4参照)
第1実施形態におけるキャビンフレーム21は、後部フレーム体Aと、この後部フレーム体Aの前方に配置される前部フレーム体Bとを備え、前部フレーム体Bを各機種に共用される共通部分、後部フレーム体Aを各機種に見合った強度を持つものに交換される交換部分として、これらを結合することによって構成される。
【0041】
共通部分である前部フレーム体Bは、上端部が後向きに湾曲した左右のフロントピラー22,23と、このフロントピラー22,23の上端から後向きに水平に延びる左右のルーフメンバー24,25と、両フロントピラー22,23の下端部間に架け渡された下側フロントクロスメンバー26と、両フロントピラー22,23の下端部後面に水平に取付けられた左右の前下枠27,28とによって構成されている。
【0042】
一方、交換部分である後部フレーム体Aは、左右のリアピラー29,30と、左リアピラー29と前部フレーム体Bの左フロントピラー22との間に位置するセンターピラー31と、このセンターピラー31と左リアピラー29の下端部間に架け渡された左側の後下枠32と、右リアピラー30の後面に水平に取付けられた右側の後下枠33と、この後下枠33の後端と左リアピラー29の下端部間に架け渡された下側リアクロスメンバー34とを具備している。
【0043】
なお、この後部フレーム体Aのセンターピラー31と、前部フレーム体Bの左フロントピラー22と左ルーフメンバー24とによって、図11中に示す出入口6が形成される。
【0044】
また、センターピラー31は、左側の前後方向真ん中に配置してもよいし、真ん中よりも前後いずれかにずれた位置に配置してもよい。
【0045】
センターピラー31と左右のリアピラー29,30は、平面視で三角形の各頂点に位置する状態で配置され、これら各ピラー29〜31の上端間に三角形配置で連結部材としての枠材35,36,37が一体に架け渡されている。
【0046】
こうして、後部フレーム体Aが、外郭形状が平面視で三角形となる左右非対称の門形構造体として構成されている。
【0047】
この場合、右リアピラー30は、センターピラー31と左リアピラー29との間の前後方向中央(真ん中)の位置で右側に配置され、後部フレーム体Aの平面形状が二等辺三角形となっている(図3参照)。
【0048】
後部及び前部両フレーム体A,Bの各構成要素はいずれも四角パイプ状の鋼材から成っている。
【0049】
ここで、後部フレーム体Aを構成する各構成要素について、適用対象である三機種のうち、オペレータ保護機能を持たない機種に対しては図4(a)に示す相対的に最小の肉厚寸法S1を持った第1の鋼材X1、オペレータ保護機能付きで軽量の機種に対しては図4(b)に示す中間の肉厚寸法S2を持った第2の鋼材X2、オペレータ保護機能付きで重量の機種に対しては図4(c)に示す最大の肉厚寸法S3を持った第3の鋼材X3がそれぞれ使用される。
【0050】
この肉厚寸法の違いによって、外形寸法は同じで断面強度が異なる三種類の構成要素が製作され、この構成要素により、相対的に小、中、大の三通りの、各機種に見合う強度を持った三種類の後部フレーム体Aが製作されて、これらが機種に応じて使い分けられる。
【0051】
この場合、オペレータ保護機能付きの機種に使用されるキャビンフレーム21については、後部フレーム体Aが、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分なキャビン強度を持つことを前提としてその構成要素の断面強度が設定される。
【0052】
このように、フレーム前部(前部フレーム体B)を各機種間で共用する一方、居住部分であるフレーム後部(後部フレーム体A)を、機種に応じて異なる強度を持った交換部分とし、これらを結合してキャビンフレーム21を構成するため、後部フレーム体Aのみを、機種に見合った強度を持つものに取り替えればよい。
【0053】
このため、キャビンフレーム21全体を別々に製作し、機種に応じて取り替える場合と比較して、製作コストが格段に安くてすむ。
【0054】
また、オペレータ保護付きのキャビンにおける重い機種においても、後部フレーム体Aのみを交換すればよいため、全体を大強度・大重量のものに交換する場合と比べてキャビンフレーム21の重量を軽減することができる。
【0055】
また、このフレーム構成によると、強度部分である後部フレーム体Aを、門形構造体として構成しているため、とくにオペレータ保護機能付きのキャビンにおいて、転倒時に左側面部に加えられる側方荷重(図3中に二重線矢印で示す)を後部フレーム体Aで集中的に受け、同フレーム体A全体が変形する。
【0056】
この場合、側方荷重が直接作用する出入口側にセンターピラー31を配置しているため、荷重を後部フレーム体Aに確実に伝え、変形抑制作用を有効に発揮させることができる。
【0057】
しかも、同フレーム体Aが平面視三角形であるため、荷重の伝達性が良くて各要素の強度を最大限に生かし、全体として高い荷重支持性能(とくに耐ねじれ強度)を得ることができる。
【0058】
加えて、平面形状が二等辺三角形であるため、耐ねじれ強度が三角形のうちでも最大となって最も変形し難くなる。
【0059】
以上の点から、後部フレーム体Aについて、最小限の構成要素で必要な強度・剛性を得ることができるため、同フレーム体Aそのものを軽くできる。このため、キャビンフレーム21をさらに軽量化し、キャビン全体の軽量化の要請にも応えることができる。
【0060】
さらに、前部フレーム体Bは高強度を要求されないことから、その構成要素が最小限に少なくてすみ、その断面サイズも後部フレーム体Aのそれよりも小さくてよいため、作業時に必要な前方視界及び側方視界を最大限に広げることができる。図3において、キャビン内のオペレータOからの視界となる領域に斜線を付して示している。
【0061】
他の実施形態
後部フレーム体Aの各構成要素の断面強度を機種に応じて変える手段として、図5に示す第2実施形態では、オペレータ保護機能を持たない機種用として特別な補強を持たない四角パイプ状の第1の鋼材Y1、オペレータ保護機能付きの軽量機種用として四角パイプ内に一つの補強部材38を設けた第2の鋼材Y2、オペレータ保護機能付きの重量機種用として四角パイプ内に二つの補強部材38,38を持った第3の鋼材Y3を用いている。
【0062】
このように、補強部材38による補強分を加えた断面強度を各機種に応じて異ならせる構成によっても、機種に応じた小、中、大の三種類の断面強度(後部フレーム体Aの強度)を持った構成要素を得ることができる。
【0063】
なお、補強部材38は、四角パイプと一体に成形してもよいし、溶接等によって後付けしてもよい。
【0064】
また、補強部材38の数でなく肉厚寸法を変えることによって断面強度を異ならせてもよい。さらに、各機種用の構成要素をいずれも補強部材付きとし、補強部材の数や肉厚寸法で断面強度を異ならせるようにしてもよい。
【0065】
一方、後部フレーム体Aの構成要素の断面強度を変える別の手段として、各機種を通じて肉厚寸法は同じで外形寸法(断面サイズ)を変えてもよいし、肉厚寸法と外形寸法との両方を変えてもよい。
【0066】
また、構成要素として、四角パイプに限らず丸パイプを用いてもよいし、パイプ以外の鋼材(たとえばC型チャンネル材やアングル材)を用いてもよい。あるいは、部位に応じてこれらを使い分けてもよい。
【0067】
図6に示す第3実施形態においては、第1実施形態と基本的に同じフレーム構成をとりながら、後部フレーム体Aの各ピラー29〜31を連結する連結部材として、各ピラー29〜31の各上端間に跨って三角形の板材39を一体状態で設けたフレーム構成をとっている。
【0068】
この構成によると、後部フレーム体Aが第1実施形態の場合よりはやや重くなるが、同フレーム体Aの一体強度を高めることが可能となる。また、第1実施形態のように複数の枠材35〜37を用いる場合と比較して、連結部材が一つでよいため、組立が容易となる。
【0069】
図7,8に示す第4及び第5両実施形態においては、後部フレーム体Aを構成する右リアピラー30の前後方向位置が第1実施形態の場合と異なる。すなわち、右リアピラー30を、第4実施形態の場合はセンターピラー31と同じ前後方向位置(キャビン前後方向のほぼ中央部)に、第5実施形態においては左リアピラー29と同じ前後方向位置にそれぞれ配置している。
【0070】
この構成によっても、第1実施形態に近い荷重支持性能を得ることができる。
【0071】
図9,10には、第1実施形態に対して前部フレーム体Bの骨組構造を変えた二例としての第6及び第7両実施形態を示す。
【0072】
第6実施形態では第1実施形態の右フロントピラー23を、また第7実施形態では同左フロントピラー22をそれぞれ省略する一方、下側フロントクロスメンバー26と平行に上側フロントクロスメンバー39を追加した例を示す。
【0073】
このように、前部フレーム体Bは高強度・高剛性を要求されないため、構成要素の配置パターンを、視界の拡充や軽量化等の観点で広い選択肢から選択することが可能となる。
【0074】
ところで、上記実施形態では、後部フレーム体Aのセンターピラー31を左側に配置したが、出入口が右側に形成される場合にはセンターピラー31も右側に配置するのが望ましい。
【0075】
また、上記実施形態では、後部フレーム体Aを平面視三角形の門形構造体として構成したが、たとえばピラーを追加することによって平面視四角形その他の門形構造体として構成してもよい。あるいは、同フレーム体Aの上面部のみを平面視四角形その他に形成してもよい。
【0076】
さらに、上記実施形態では、オペレータ保護機能無しと、オペレータ保護機能付きの軽量機種と、同重量機種の三機種に適用する場合について説明したが、オペレータ保護機能付きのものを三種類以上に分けて計四機種以上の機種を対象とする場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図2】同分解斜視図である。
【図3】同平面図である。
【図4】(a)〜(c)は後部フレーム体の構成要素として使用される肉厚寸法が異なる三種類の鋼材を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明の第2実施形態にかかるキャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素として使用される三種類の鋼材を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図8】本発明の第5実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図9】本発明の第6実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図10】本発明の第7実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図11】本発明が適用される油圧ショベルの概略側面図である。
【図12】同平面図である。
【図13】従来のキャビンフレームを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
21 キャビンフレーム
A 後部フレーム体
29,30 後部フレーム体を構成する左右のリアピラー
31 同センターピラー
32 同左側の下枠
33 同後下枠
34 同下側クロスメンバー
35,36,37 連結部材としての枠材
X1,X2,X3 構成要素に用いられる三種類の鋼材
Y1,Y2,Y3 構成要素に用いられる三種類の鋼材
38 補強部材
B 前部フレーム体
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械のキャビンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の好適例である油圧ショベルを例にとって従来の技術を説明する。
【0003】
油圧ショベルは、図11,12に示すようにクローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に垂直軸まわりに旋回自在に搭載された上部旋回体2と、この上部旋回体2に装着された作業アタッチメント3とによって構成され、上部旋回体2にキャビン4が設けられる。
【0004】
ここで、一般的には、上部旋回体2の右側(キャビン4内に着座したオペレータから見た右側。以下にいう左右及び前後の方向性について同じ)に作業アタッチメント3、左側にキャビン4がそれぞれ設けられ、キャビン4の左側面にドア5によって開閉される出入口6が設けられる。
【0005】
このキャビン4として、パイプ材からなる骨組構造のキャビンフレームにドアや窓ガラス等の付属材を取付けて構成されるフレーム式のものが公知である(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
このフレーム式キャビンにおけるキャビンフレームの一般的構成を図13に示す。
【0007】
このキャビンフレーム7は、前部左右両側に立設されたフロントピラー8,9と、後部左右両側に立設されたリアピラー10,11と、左側のフロント、リア両ピラー8,10間のほぼ中央部に立設されたセンターピラー12と、左側のフロント、リア両ピラー8,10の上端間に架け渡された左ルーフメンバー13と、右側のフロント、リア両ピラー9,11の上端間に架け渡された右ルーフメンバー14と、左右のフロントピラー8,9の上端間に架け渡された上フロントクロスメンバー15と、同下端間に架け渡された下フロントクロスメンバー16と、左右のリアピラー10,11の上端間に架け渡された上リアクロスメンバー17と、同下端間に架け渡された下リアクロスメンバー18とによって構成されている。
【0008】
これら各構成要素の接合部分は溶接によって一体化される。
【0009】
また、左フロント、センター両ピラー8,12と左ルーフメンバー13とによって図11中の出入口6が形成される。
【0010】
この公知のキャビンフレーム7においては、左右のフロントピラー8,9と上下のフロントクロスメンバー15,16で前面側の門形構造体、左右のリアピラー10,11と上下のリアクロスメンバー17,18で後面側の門形構造体をそれぞれ構成し、この前後の門形構造体を左右のルーフメンバー13,14でつないだ構成となっている。
【0011】
このフレーム構成では、キャビンに作用する荷重が前後の門形構造体に伝えられてフレーム全体に分散され、すべての構成要素で均等に受けることになる。
【0012】
従って、全構成要素に均一な強度・剛性が求められる。
【0013】
ところで、油圧ショベルのキャビンには、機械の転倒時(横転時)にオペレータの居住部分の変形を抑えてオペレータを保護するオペレータ保護機能付きのものと、このようなオペレータ保護機能を持たないものの二通りがある。
【0014】
この場合、オペレータ保護機能付きのものでは、転倒時に居住空間を確保するのに必要な強度を求められるのに対し、オペレータ保護機能無しのものでは相対的に低強度でよい。
【0015】
また、オペレータ保護機能付きのキャビンにおいては、車体重量によって転倒時にキャビンに作用する荷重も変わるため、車体重量別の各機種に応じて強度が異なる複数種類に分けられ、結果、オペレータ保護機能無しのものも含めて三種類以上に分けられる。
【特許文献1】特開2004−42739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここで、従来のフレーム式キャビンでは、各機種に見合った強度を確保するためには機種ごとに強度の異なるフレームを製作しなければならないため、製作コストが高くなる。
【0017】
また、オペレータ保護機能付きの重い機種の場合に、フレーム全体として構成要素の断面強度を高くとらなければならないため、キャビンが重量化するという問題があった。
【0018】
そこで本発明は、フレーム式のキャビンにおいて、機種に見合ったキャビン強度の確保という目的を低コストで達成でき、しかもキャビン重量を軽減することができる建設機械のキャビンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1の発明は、後部フレーム体と、この後部フレーム体の前方に配置される前部フレーム体とを備え、この前部フレーム体を複数の機種間で共用される共通部分、上記後部フレーム体を上記各機種に応じて異なる強度を持った交換部分として、これらが結合されることにより、骨組となるキャビンフレームが構成されるものである。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、後部フレーム体が、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った強度部分であって、かつ、車体重量による機種に応じた強度を持った交換部分として構成されたものである。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、キャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素は、各機種間で外形寸法は同じで、機種に応じて肉厚寸法が異なる鋼材によって成形されたものである。
【0022】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの構成において、キャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素は、機種間で外形寸法は同じで、補強部材による補強分を加えた断面強度が機種に応じて異なる鋼材によって成形されたものである。
【0023】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの構成において、後部フレーム体の構成要素として、少なくとも、キャビンの左右片側において前後方向中間部に配置されるセンターピラーと、このセンターピラーよりも後方で左右両側に配置される左右のリアピラーと、この各ピラーの上端同士を連結する連結部材とを備え、この各構成要素により、外郭形状が平面視三角形の門形構造体である後部フレーム体が構成されたものである。
【0024】
請求項6の発明は、請求項5の構成において、後部フレーム体のセンターピラーが、左右両側のうちキャビン出入口側に配置されたものである。
【0025】
請求項7の発明は、請求項5または6の構成において、後部フレーム体の平面形状が非直角三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたものである。
【0026】
請求項8の発明は、請求項7の構成において、後部フレーム体の平面形状が二等辺三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、フレーム式のキャビンにおいて、キャビンフレームを前部フレーム体と後部フレーム体とに分け、これらを結合してキャビンフレームを構成するため、後部フレーム体のみを機種(請求項2ではオペレータ保護機能付きのキャビンにおける車体重量別の複数の機種を含む)に応じて交換すればよい。
【0028】
このため、キャビンフレーム全体を別々に製作し、機種に応じて取り替える場合と比較して、製作コストが格段に安くてすむ。また、重い機種においても、後部フレーム体のみを交換すればよいため、全体を重いものに交換する場合と比べてキャビンフレームの重量(ひいてはキャビン重量)を軽減することができる。
【0029】
また、請求項2の発明によると、居住部分でない前部フレーム体は相対的に低強度とすることができるため、同フレーム体の構成要素の量を少なくし、かつ、その断面サイズを小さくすることが可能となる。
【0030】
これにより、オペレータ保護機能を確保しながら、前方視界を広げ、かつ、キャビンの軽量化という要請にも応えることができる。
【0031】
なお、後部フレーム体の強度を機種に応じて変える手段としては、請求項3のように外形寸法は変えずに構成要素の肉厚寸法を変えてもよいし、請求項4のように補強部材による補強分を加えた断面強度を変えてもよい。
【0032】
あるいは、肉厚寸法は同じで外形寸法(断面サイズ)を変えてもよいし、肉厚寸法と外形寸法の両方を変えてもよい。
【0033】
請求項5〜8の発明によると、後部フレーム体を平面視三角形(左右非対称)の門形構造体として構成しているため、後部フレーム体が高強度・高剛性となって高い荷重支持性能を発揮し、とくに耐ねじれ荷重の点ですぐれたものとなる。
【0034】
つまり、必要な強度(オペレータ保護機能付きの場合は居住空間を確保するのに必要な強度)を維持しながら、後部フレーム体の構成要素を減量して同フレーム体を軽くすることができる。
【0035】
この場合、請求項6の発明によると、とくにオペレータ保護機能付きのキャビンにおいて、転倒時に側方荷重が直接作用する出入口側にセンターピラーを配置したことにより、荷重を後部フレーム体に確実に伝え、変形抑制作用を確保できる。
【0036】
また、請求項7,8の発明によると、後部フレーム体の平面形状を非直角三角形としたから、直角三角形の場合と比較して耐ねじれ強度を高め、変形抑制効果が高いものとなる。
【0037】
とくに、平面形状を二等辺三角形とした請求項8の発明によると、耐ねじれ強度が三角形のうちでも最大となって後部フレーム体が最も変形しにくくなる。このため、転倒時のオペレータ保護の目的を確実に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施形態を図1〜図10によって説明する。
【0039】
以下の実施形態では、フレーム式のキャビンにおいて、キャビンフレームを、
イ)オペレータ保護機能を持たないもの、
ロ)オペレータ保護機能付きで車体重量が軽いもの、
ハ)オペレータ保護付きで車体重量が重いもの
の三つの機種に適用する場合を例にとっている。
【0040】
第1実施形態(図1〜図4参照)
第1実施形態におけるキャビンフレーム21は、後部フレーム体Aと、この後部フレーム体Aの前方に配置される前部フレーム体Bとを備え、前部フレーム体Bを各機種に共用される共通部分、後部フレーム体Aを各機種に見合った強度を持つものに交換される交換部分として、これらを結合することによって構成される。
【0041】
共通部分である前部フレーム体Bは、上端部が後向きに湾曲した左右のフロントピラー22,23と、このフロントピラー22,23の上端から後向きに水平に延びる左右のルーフメンバー24,25と、両フロントピラー22,23の下端部間に架け渡された下側フロントクロスメンバー26と、両フロントピラー22,23の下端部後面に水平に取付けられた左右の前下枠27,28とによって構成されている。
【0042】
一方、交換部分である後部フレーム体Aは、左右のリアピラー29,30と、左リアピラー29と前部フレーム体Bの左フロントピラー22との間に位置するセンターピラー31と、このセンターピラー31と左リアピラー29の下端部間に架け渡された左側の後下枠32と、右リアピラー30の後面に水平に取付けられた右側の後下枠33と、この後下枠33の後端と左リアピラー29の下端部間に架け渡された下側リアクロスメンバー34とを具備している。
【0043】
なお、この後部フレーム体Aのセンターピラー31と、前部フレーム体Bの左フロントピラー22と左ルーフメンバー24とによって、図11中に示す出入口6が形成される。
【0044】
また、センターピラー31は、左側の前後方向真ん中に配置してもよいし、真ん中よりも前後いずれかにずれた位置に配置してもよい。
【0045】
センターピラー31と左右のリアピラー29,30は、平面視で三角形の各頂点に位置する状態で配置され、これら各ピラー29〜31の上端間に三角形配置で連結部材としての枠材35,36,37が一体に架け渡されている。
【0046】
こうして、後部フレーム体Aが、外郭形状が平面視で三角形となる左右非対称の門形構造体として構成されている。
【0047】
この場合、右リアピラー30は、センターピラー31と左リアピラー29との間の前後方向中央(真ん中)の位置で右側に配置され、後部フレーム体Aの平面形状が二等辺三角形となっている(図3参照)。
【0048】
後部及び前部両フレーム体A,Bの各構成要素はいずれも四角パイプ状の鋼材から成っている。
【0049】
ここで、後部フレーム体Aを構成する各構成要素について、適用対象である三機種のうち、オペレータ保護機能を持たない機種に対しては図4(a)に示す相対的に最小の肉厚寸法S1を持った第1の鋼材X1、オペレータ保護機能付きで軽量の機種に対しては図4(b)に示す中間の肉厚寸法S2を持った第2の鋼材X2、オペレータ保護機能付きで重量の機種に対しては図4(c)に示す最大の肉厚寸法S3を持った第3の鋼材X3がそれぞれ使用される。
【0050】
この肉厚寸法の違いによって、外形寸法は同じで断面強度が異なる三種類の構成要素が製作され、この構成要素により、相対的に小、中、大の三通りの、各機種に見合う強度を持った三種類の後部フレーム体Aが製作されて、これらが機種に応じて使い分けられる。
【0051】
この場合、オペレータ保護機能付きの機種に使用されるキャビンフレーム21については、後部フレーム体Aが、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分なキャビン強度を持つことを前提としてその構成要素の断面強度が設定される。
【0052】
このように、フレーム前部(前部フレーム体B)を各機種間で共用する一方、居住部分であるフレーム後部(後部フレーム体A)を、機種に応じて異なる強度を持った交換部分とし、これらを結合してキャビンフレーム21を構成するため、後部フレーム体Aのみを、機種に見合った強度を持つものに取り替えればよい。
【0053】
このため、キャビンフレーム21全体を別々に製作し、機種に応じて取り替える場合と比較して、製作コストが格段に安くてすむ。
【0054】
また、オペレータ保護付きのキャビンにおける重い機種においても、後部フレーム体Aのみを交換すればよいため、全体を大強度・大重量のものに交換する場合と比べてキャビンフレーム21の重量を軽減することができる。
【0055】
また、このフレーム構成によると、強度部分である後部フレーム体Aを、門形構造体として構成しているため、とくにオペレータ保護機能付きのキャビンにおいて、転倒時に左側面部に加えられる側方荷重(図3中に二重線矢印で示す)を後部フレーム体Aで集中的に受け、同フレーム体A全体が変形する。
【0056】
この場合、側方荷重が直接作用する出入口側にセンターピラー31を配置しているため、荷重を後部フレーム体Aに確実に伝え、変形抑制作用を有効に発揮させることができる。
【0057】
しかも、同フレーム体Aが平面視三角形であるため、荷重の伝達性が良くて各要素の強度を最大限に生かし、全体として高い荷重支持性能(とくに耐ねじれ強度)を得ることができる。
【0058】
加えて、平面形状が二等辺三角形であるため、耐ねじれ強度が三角形のうちでも最大となって最も変形し難くなる。
【0059】
以上の点から、後部フレーム体Aについて、最小限の構成要素で必要な強度・剛性を得ることができるため、同フレーム体Aそのものを軽くできる。このため、キャビンフレーム21をさらに軽量化し、キャビン全体の軽量化の要請にも応えることができる。
【0060】
さらに、前部フレーム体Bは高強度を要求されないことから、その構成要素が最小限に少なくてすみ、その断面サイズも後部フレーム体Aのそれよりも小さくてよいため、作業時に必要な前方視界及び側方視界を最大限に広げることができる。図3において、キャビン内のオペレータOからの視界となる領域に斜線を付して示している。
【0061】
他の実施形態
後部フレーム体Aの各構成要素の断面強度を機種に応じて変える手段として、図5に示す第2実施形態では、オペレータ保護機能を持たない機種用として特別な補強を持たない四角パイプ状の第1の鋼材Y1、オペレータ保護機能付きの軽量機種用として四角パイプ内に一つの補強部材38を設けた第2の鋼材Y2、オペレータ保護機能付きの重量機種用として四角パイプ内に二つの補強部材38,38を持った第3の鋼材Y3を用いている。
【0062】
このように、補強部材38による補強分を加えた断面強度を各機種に応じて異ならせる構成によっても、機種に応じた小、中、大の三種類の断面強度(後部フレーム体Aの強度)を持った構成要素を得ることができる。
【0063】
なお、補強部材38は、四角パイプと一体に成形してもよいし、溶接等によって後付けしてもよい。
【0064】
また、補強部材38の数でなく肉厚寸法を変えることによって断面強度を異ならせてもよい。さらに、各機種用の構成要素をいずれも補強部材付きとし、補強部材の数や肉厚寸法で断面強度を異ならせるようにしてもよい。
【0065】
一方、後部フレーム体Aの構成要素の断面強度を変える別の手段として、各機種を通じて肉厚寸法は同じで外形寸法(断面サイズ)を変えてもよいし、肉厚寸法と外形寸法との両方を変えてもよい。
【0066】
また、構成要素として、四角パイプに限らず丸パイプを用いてもよいし、パイプ以外の鋼材(たとえばC型チャンネル材やアングル材)を用いてもよい。あるいは、部位に応じてこれらを使い分けてもよい。
【0067】
図6に示す第3実施形態においては、第1実施形態と基本的に同じフレーム構成をとりながら、後部フレーム体Aの各ピラー29〜31を連結する連結部材として、各ピラー29〜31の各上端間に跨って三角形の板材39を一体状態で設けたフレーム構成をとっている。
【0068】
この構成によると、後部フレーム体Aが第1実施形態の場合よりはやや重くなるが、同フレーム体Aの一体強度を高めることが可能となる。また、第1実施形態のように複数の枠材35〜37を用いる場合と比較して、連結部材が一つでよいため、組立が容易となる。
【0069】
図7,8に示す第4及び第5両実施形態においては、後部フレーム体Aを構成する右リアピラー30の前後方向位置が第1実施形態の場合と異なる。すなわち、右リアピラー30を、第4実施形態の場合はセンターピラー31と同じ前後方向位置(キャビン前後方向のほぼ中央部)に、第5実施形態においては左リアピラー29と同じ前後方向位置にそれぞれ配置している。
【0070】
この構成によっても、第1実施形態に近い荷重支持性能を得ることができる。
【0071】
図9,10には、第1実施形態に対して前部フレーム体Bの骨組構造を変えた二例としての第6及び第7両実施形態を示す。
【0072】
第6実施形態では第1実施形態の右フロントピラー23を、また第7実施形態では同左フロントピラー22をそれぞれ省略する一方、下側フロントクロスメンバー26と平行に上側フロントクロスメンバー39を追加した例を示す。
【0073】
このように、前部フレーム体Bは高強度・高剛性を要求されないため、構成要素の配置パターンを、視界の拡充や軽量化等の観点で広い選択肢から選択することが可能となる。
【0074】
ところで、上記実施形態では、後部フレーム体Aのセンターピラー31を左側に配置したが、出入口が右側に形成される場合にはセンターピラー31も右側に配置するのが望ましい。
【0075】
また、上記実施形態では、後部フレーム体Aを平面視三角形の門形構造体として構成したが、たとえばピラーを追加することによって平面視四角形その他の門形構造体として構成してもよい。あるいは、同フレーム体Aの上面部のみを平面視四角形その他に形成してもよい。
【0076】
さらに、上記実施形態では、オペレータ保護機能無しと、オペレータ保護機能付きの軽量機種と、同重量機種の三機種に適用する場合について説明したが、オペレータ保護機能付きのものを三種類以上に分けて計四機種以上の機種を対象とする場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図2】同分解斜視図である。
【図3】同平面図である。
【図4】(a)〜(c)は後部フレーム体の構成要素として使用される肉厚寸法が異なる三種類の鋼材を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明の第2実施形態にかかるキャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素として使用される三種類の鋼材を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図8】本発明の第5実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図9】本発明の第6実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図10】本発明の第7実施形態にかかるキャビンフレームを示す斜視図である。
【図11】本発明が適用される油圧ショベルの概略側面図である。
【図12】同平面図である。
【図13】従来のキャビンフレームを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
21 キャビンフレーム
A 後部フレーム体
29,30 後部フレーム体を構成する左右のリアピラー
31 同センターピラー
32 同左側の下枠
33 同後下枠
34 同下側クロスメンバー
35,36,37 連結部材としての枠材
X1,X2,X3 構成要素に用いられる三種類の鋼材
Y1,Y2,Y3 構成要素に用いられる三種類の鋼材
38 補強部材
B 前部フレーム体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部フレーム体と、この後部フレーム体の前方に配置される前部フレーム体とを備え、この前部フレーム体を複数の機種間で共用される共通部分、上記後部フレーム体を上記各機種に応じて異なる強度を持った交換部分として、これらが結合されることにより、骨組となるキャビンフレームが構成されることを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体が、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った強度部分であって、かつ、車体重量による機種に応じた強度を持った交換部分として構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項3】
請求項1または2記載の建設機械のキャビンにおいて、キャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素は、各機種間で外形寸法は同じで、機種に応じて肉厚寸法が異なる鋼材によって成形されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構成要素について、キャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素は、各機種間で外形寸法は同じで、補強部材による補強分を加えた断面強度が機種に応じて異なる鋼材によって成形されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の構成要素として、少なくとも、キャビンの左右片側において前後方向中間部に配置されるセンターピラーと、このセンターピラーよりも後方で左右両側に配置される左右のリアピラーと、この各ピラーの上端同士を連結する連結部材とを備え、この各構成要素により、外郭形状が平面視三角形の門形構造体である後部フレーム体が構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体のセンターピラーが、左右両側のうちキャビン出入口側に配置されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項7】
請求項5または6記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の平面形状が非直角三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項8】
請求項7記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の平面形状が二等辺三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項1】
後部フレーム体と、この後部フレーム体の前方に配置される前部フレーム体とを備え、この前部フレーム体を複数の機種間で共用される共通部分、上記後部フレーム体を上記各機種に応じて異なる強度を持った交換部分として、これらが結合されることにより、骨組となるキャビンフレームが構成されることを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体が、機械の転倒時にオペレータの居住空間を確保するのに十分な強度を持った強度部分であって、かつ、車体重量による機種に応じた強度を持った交換部分として構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項3】
請求項1または2記載の建設機械のキャビンにおいて、キャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素は、各機種間で外形寸法は同じで、機種に応じて肉厚寸法が異なる鋼材によって成形されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構成要素について、キャビンフレームにおける後部フレーム体の構成要素は、各機種間で外形寸法は同じで、補強部材による補強分を加えた断面強度が機種に応じて異なる鋼材によって成形されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の構成要素として、少なくとも、キャビンの左右片側において前後方向中間部に配置されるセンターピラーと、このセンターピラーよりも後方で左右両側に配置される左右のリアピラーと、この各ピラーの上端同士を連結する連結部材とを備え、この各構成要素により、外郭形状が平面視三角形の門形構造体である後部フレーム体が構成されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体のセンターピラーが、左右両側のうちキャビン出入口側に配置されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項7】
請求項5または6記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の平面形状が非直角三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【請求項8】
請求項7記載の建設機械のキャビンにおいて、後部フレーム体の平面形状が二等辺三角形となるようにセンターピラー及び左右のリアピラーが配置されたことを特徴とする建設機械のキャビン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−37360(P2006−37360A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214596(P2004−214596)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】
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