説明

建設機械

【課題】メンテナンス作業時等にメンテナンスカバー及びフロアマットを容易に取り扱うことができ、作業性を向上させることができる建設機械を提供する。
【解決手段】フロア部材13のメンテナンス用開口13C,13Dを塞ぐように取り付けるメンテナンスカバー23は、板体に上下方向に折り曲げた凹凸曲げ部を形成することにより断面凹凸形状の立体構造体として構成する。メンテナンスカバー23を含めてフロア部材13の足乗せ部13Bを覆うように敷設するフロアマット43は、前後方向に分割された前側マット44及び後側マット45からなり、後側マット45のみを取り外した状態でメンテナンスカバー23の脱着作業が可能なように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に係わり、特に、フロア部材の足乗せ部にメンテナンス用開口を設けた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建設機械の一つである油圧ショベルは、下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に設けられ、ブーム、アーム、及び作業具(例えばバケット)等からなる多関節型の作業装置とを備えている(例えば、特許文献1参照)。そして、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、この旋回フレーム上に設けられたフロア部材と、このフロア部材上に取り付けられ、オペレータが着座する運転席とを備えている。また、運転席の前側にはオペレータの足を載せる足乗せ部が形成され、この足乗せ部には、フロア部材の下側に配置された機器類のメンテナンス作業が行えるようにメンテナンス用開口が形成されている。また、フロア部材のメンテナンス用開口を塞ぐためにメンテナンスカバーが着脱可能に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−32271号公報(図4等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のメンテナンスカバーは、平板で形成されている。ここで、メンテナンスカバーは、オペレータが搭乗する際にオペレータの全体重が作用することから、十分な強度をもって形成する必要がある。しかし、メンテナンスカバーの強度を高めるために板厚寸法を大きくすれば、重量が増大する。そのため、例えばメンテナンス作業を行う際、メンテナンスカバーの脱着作業に手間を要してしまうという課題が生じる。また、上記特許文献1には記載されていないものの、メンテナンスカバーを含めて足乗り部全体を覆うようにフロアマットが敷設されており、このフロアマットは、一般的に1枚で構成される。そのため、例えばメンテナンスカバーの脱着作業を行う際、フロアマットの取り外しに手間を要してしまうという課題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、メンテナンス作業時等にメンテナンスカバー及びフロアマットを容易に取り扱うことができ、作業性を向上させることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、前記上部旋回体に俯仰可能に設けた作業装置とを備え、前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、前記旋回フレーム上に設けられ、運転席が取り付けられてその前側にオペレータの足乗せ部を形成するフロア部材と、前記フロア部材の下側に配置された機器類のメンテナンスが行えるように前記フロア部材の足乗せ部に形成されたメンテナンス用開口と、前記メンテナンス用開口を塞ぐように前記フロア部材に着脱可能に取り付けられたメンテナンスカバーと、前記メンテナンスカバーを含めて前記フロア部材の足乗せ部を覆うように敷設されたフロアマットとを有する建設機械において、前記メンテナンスカバーは、板体に上下方向に折り曲げた凹凸曲げ部を形成することにより断面凹凸形状の立体構造体として構成し、前記フロアマットは、前後方向に分割された前側マット及び後側マットからなり、前記前側マット及び前記後側マットのうち前記後側マットのみを取り外した状態で前記メンテナンスカバーの脱着作業が可能なように構成する。
【0007】
このように本発明においては、メンテナンスカバーは、断面凹凸形状の立体構造体とするから、曲げ荷重等に対する剛性を高めることができる。これにより、例えば同等の剛性をもった厚肉な平板構造とする場合に比べ、メンテナンスカバーの重量を軽減することができる。また、フロアマットは、前後方向に分割された前側マット及び後側マットからなり、後側マットのみを取り外した状態でメンテナンスカバーの脱着作業が可能なように構成している。これにより、前後方向に分割しない場合と比べ、メンテナンスカバーの脱着作業を行う際に取り外さなければならないマットの大きさを小さくすることができる。したがって、本発明においては、メンテナンス作業時等にメンテナンスカバー及びフロアマットを容易に取り扱うことができ、作業性を向上させることができる。
【0008】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記前側マットの後端部と前記後側マットの前端部との隙間及び段差が生じないように、前記前側マットの後端部に前記後側マットの前端部を受ける段差部を形成する。
【0009】
これにより、前側マットの後端部と後側マットの前端部との隙間を無くすことができ、その隙間から砂利等が落下するのを防止することができる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記前側マットの後端部を左右方向に凹凸状に形成し、これに嵌合するように前記後側マットの前端部を左右方向に凹凸状に形成する。
【0011】
これにより、前側マットと後側マットとの横方向の位置ずれを防止することができ、位置ずれによって生じる隙間から砂利等が落下するのを防止することができる。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記メンテナンスカバーは、上下方向に貫通した排水用穴を有し、前記後側マットは、前記メンテナンスカバーの排水用穴を塞ぐように下方側に突出した栓部を有する。
【0013】
例えばメンテナンスカバーの排水用穴を塞がない場合には、フロア部材の下側に配置された機器類の発熱によって温められた熱風が運転室内に侵入する恐れがある。これに対し本発明においては、後側マットの栓部で排水用穴を塞ぐことにより、熱風の侵入を防止することができ、さらに後側マットの位置ずれも防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メンテナンス作業時等にメンテナンスカバー及びフロアマットを容易に取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による小型の油圧ショベルの構造を表す側面図である。
【図2】上部旋回体の詳細構造を表す斜視図である。
【図3】図2中III部の部分拡大図である。
【図4】上部旋回体の運転室内の詳細構造を表す平面図である。
【図5】図4で示す上部旋回体からフロアマットを取り外した状態を表す平面図である。
【図6】図5で示す上部旋回体からメンテナンスカバーを取り外した状態を表す平面図である。
【図7】図6で示す上部旋回体からフロア部材を取り外した状態を表す平面図であり、フロア部材の下側に配置された機器を示す。
【図8】フロア部材の構造を表す平面図である。
【図9】フロア部材及びメンテナンスカバーの組付状態を表す平面図である。
【図10】フロア部材、メンテナンスカバー、及びフロアマットの組付状態を表す平面図である。
【図11】図10中断面XI−XIにおける断面図である。
【図12】図10中断面XII−XIIにおける断面図である。
【図13】メンテナンスカバーの構造を表す斜視図である。
【図14】メンテナンスカバーの構造を表す分解斜視図である。
【図15】フロアマットの構造を表す平面図である。
【図16】フロアマットの構造を表す分解平面図である。
【図17】本発明の第1の変形例によるメンテナンスカバーの構造を表す斜視図である。
【図18】本発明の第2の変形例によるメンテナンスカバーの構造を表す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による小型の油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。図2は、上部旋回体の詳細構造を表す斜視図(但し、便宜上、ドア及びフロアマットの図示を省略している)であり、図3は、図2中III部の部分拡大図である。なお、以降、油圧ショベルが図1に示す状態にてオペレータが運転席に着座した場合におけるオペレータの前側(図1中左側)、後側(図1中右側)、左側(図1中紙面に向かって手前側)、右側(図1中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0018】
図1〜図3において、油圧ショベル1は、下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、この上部旋回体4の支持構造体をなす旋回フレーム6と、この旋回フレーム6に水平方向に回動可能に取り付けられたスイングポスト33と、このスイングポスト33に上下方向に回動可能に(俯仰可能に)設けられた多関節型の作業装置5と、旋回フレーム6上の左側前部に設けられたフロア部材13と、このフロア部材13上に運転室を形成するキャブ21と、旋回フレーム6におけるキャブ21以外の部分に着脱可能に取り付けられた外装カバー7と、旋回フレーム6の後側に設けられたカウンタウェイト8とを備えている。なお、図示しないが、旋回フレーム6の後側にはエンジン及び油圧ポンプ等が搭載され、旋回フレーム6の右側には燃料タンク及び作動油タンク等が搭載されており、これらの機器が外装カバー7で覆われている。
【0019】
下部走行体2は、略H字状のトラックフレーム2Aと、このトラックフレーム2Aの左右両側の前端近傍に回転可能に支持された左右の遊動輪2Bと、トラックフレーム2Aの左右両側の後端近傍に回転可能に支持された左右の駆動輪2Cと、これら左右の駆動輪2Cをそれぞれ駆動する左右の走行用油圧モータ(図示せず)と、遊動輪2Bと駆動輪2Cと間で巻き回された左右の履帯(クローラ)2Dとを備えている。旋回装置3は、トラックフレーム2Aの中央部と旋回フレーム6との間に設けられており、後述する旋回用油圧モータ10(図7参照)によって動作するようになっている。
【0020】
スイングポスト33は、スイング用油圧シリンダ(図示せず)によって左右に回動し、作業装置5を左右にスイングさせるようになっている。作業装置5は、スイングポスト33に回動可能に結合されたブーム34と、ブーム34に回動可能に結合されたアーム35と、アーム35に回動可能に結合されたバケット36とを備えている。そして、ブーム34、アーム35、及びバケット36は、それぞれブーム用油圧シリンダ37、アーム用油圧シリンダ38、及びバケット用油圧シリンダ39によって動作するようになっている。なお、バケット36は、他の作業具(例えばブレーカ等)に交換可能としている。
【0021】
キャブ21は、箱体として構成されている。詳細には、底部の骨組みである矩形状のベース枠体21Aと、このベース枠体21Aの左側端部に立設された逆U字状の左ピラー21Bと、ベース枠体21Aの右側端部に立設された逆U字状の右ピラー21Cと、左ピラーの前後方向の中間に位置して上下方向に延在する中間ピラー21Dと、左ピラー21Bと右ピラー21Cとの間に設けられた前面部21E、後面部21F、及び天井面部21Jと、右ピラー21Cの枠内に設けられた右側面部21Hと、中間ピラー21Dの後側で左ピラー21Bとの間に設けられた左側面部21Gとを有している。また、中間ピラー21Dの前側で左ピラー21Bとの間には、オペレータがキャブ21に乗り降りするときの乗降口21Kが形成されている。そして、中間ピラー21Dにヒンジを介してドア21L(図1参照)が取り付けられ、乗降口21Kを開閉するようになっている。ベース枠体21Aは、例えば断面L字状の鋼材を溶接して矩形状の枠体を形成したものであり、フロア部材13の周縁部分に重ねた状態で複数(図3では1つのみ図示)のボルト22を用いて取り付けられている。
【0022】
次に、上部旋回体4の詳細構造について説明する。
【0023】
図4は、上部旋回体4の運転室内の詳細構造を表す平面図(但し、便宜上、キャブ21及び空調ダクトの図示を省略している)である。図5は、図4で示す上部旋回体4からフロアマットを取り外した状態を表す平面図であり、図6は、図5で示す上部旋回体4からメンテナンスカバーを取り外した状態を表す平面図である。また、図7は、図6で示す上部旋回体4からフロア部材13等を取り外した状態を表す平面図であり、フロア部材13の下側に配置された機器を示す。図8は、フロア部材13の構造を表す平面図である。
【0024】
図7に示すように、旋回フレーム6は、底板6Aと、この底板6Aに立設されて前後方向に延在する左縦板6B及び右縦板6Cと、これら底板6A及び縦板6B,6Cの左右両側に位置して略L字状に屈曲する左サイドフレーム6D及び右サイドフレーム6Eとを有している。また、旋回フレーム6の前側に位置して左右方向に延在する台座状の前側支持部材6Fと、旋回フレーム6の前後方向の中間に位置して左右方向に延在する台座状の後側支持部材6Gとが設けられている。そして、図6等に示すように、支持部材6F,6G上に4つの防振マウント14を介してフロア部材13が取り付けられている。
【0025】
また、図7に示すように、旋回フレーム6の底板6Aの旋回中心にはセンタジョイント9が設けられ、このセンタジョイント9の近傍に旋回用油圧モータ10が設けられている。また、旋回フレームの左縦板6Bの左側には制御弁装置11が設けられている。なお、センタジョイント9、旋回用油圧モータ10、及び制御弁装置11は、フロア部材13の下側に配置された機器である。
【0026】
下部走行体2の走行用油圧モータは、センタジョイント9及び油圧ホース12を介して制御弁装置11に接続されている。ブーム用油圧シリンダ37、アーム用油圧シリンダ38、バケット用油圧シリンダ39、旋回用油圧モータ10、及びスイング用油圧シリンダは、油圧ホース12を介して制御弁装置11に接続されている。制御弁装置11は、油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の油圧パイロット式スプール弁を有している。
【0027】
そして、後述する左右の走行用操作レバー・ペダル18の操作によって対応する油圧パイロット式スプール弁が切り換えられて、左右の走行用油圧モータが駆動する。また、後述する操作ペダル19の操作によって対応する油圧パイロット式スプール弁が切り換えられて、スイング用油圧シリンダが駆動する。また、後述する作業用操作レバー17の操作によって対応する油圧パイロット式スプール弁が切り換えられて、ブーム用油圧シリンダ37、アーム用油圧シリンダ38、バケット用油圧シリンダ39、及び旋回用油圧モータ10が駆動するようになっている。
【0028】
図8に示すように、フロア部材13は長方形状の平板であり、その後側部分は運転席取付部13Aである。そして、図6等に示すように、フロア部材13の運転席取付部13Aには、箱形状の運転席取付台15がボルト止めされている。運転席取付台15は、オペレータが着座する運転席16を支持するとともに、内部に空調装置の室内機等(図示せず)を収容している。空調装置の室内機からの温風又は冷風は、空調用ダクト(前述の図2参照)を介して、例えばオペレータの上半身、足元、運転室の前側等に向けて吹き出されるようになっている。また、運転席16の左側には、アーム35及び旋回装置3を操作するための十字操作式の作業用操作レバー17が設けられている。また、運転席16の右側には、ブーム34及びバケット36を操作するための十字操作式の作業用操作レバー17が設けられている。
【0029】
フロア部材13の中間部分から前側部分(言い換えれば、運転席16の前側部分)は、オペレータの足を乗せる足乗せ部13Bである。足乗せ部13Bの前側中央部には、左右の走行用油圧モータをそれぞれ操作するための手でも足でも操作可能な左右の走行用操作レバー・ペダル18(前述の図2も参照)と、これら走行用操作レバー・ペダル18の操作方向及び操作量に対応する操作パイロット圧(油圧)を生成して制御弁装置11に出力するパイロット弁装置29とが設けられている。また、走行用操作レバー・ペダル18の左側には、オプション用油圧アクチュエータ(例えばバケット36の代わりに装着されたブレーカに内蔵された油圧モータ等)を操作するための操作ペダル19が設けられている。また、走行用操作レバー・ペダル18の右側には、スイングポスト33を操作するための操作ペダル19が設けられている。
【0030】
図8等に示すように、フロア部材13の足乗せ部13B(詳細には、走行用操作レバー・ペダル18等と運転席取付台15との間)には、左側メンテナンス用開口13C及び右側メンテナンス用開口13Dが形成されている。図6に示すように、左側メンテナンス用開口13Cは、制御弁装置11及び油圧ホース等のメンテナンス作業を行うための開口であり、右側メンテナンス用開口13Dは、センタジョイント9、旋回用油圧モータ10、及び油圧ホース等のメンテナンス作業を行うための開口である。そして、図5に示すように、フロア部材13の足乗せ部13Bには、メンテナンス用開口13C,13Dを閉塞するために、複数のボルト28を用いてメンテナンスカバー23が着脱可能に取り付けられている。また、図4に示すように、メンテナンスカバー23を含めてフロア部材13の足乗せ部13Bの全体を覆うようにフロアマット43が敷設されている。このフロアマット43は、オペレータがスリップするのを防止するとともに、オペレータの靴から落ちる泥等がフロア部材13に付着するのを防止するためのものである。
【0031】
次に、本実施形態の要部であるメンテナンスカバー23及びフロアマット43の構造について説明する。
【0032】
図9は、フロア部材13及びメンテナンスカバー23の組付状態を表す平面図であり、図10は、フロア部材13、メンテナンスカバー23、及びフロアマット43の組付状態を表す平面図である。図11は、図10中断面XI−XIにおける断面図であり、図12は、図12中断面XII−XIIにおける断面図である。図13は、メンテナンスカバー23の構造を表す斜視図であり、図14は、分解斜視図である。図15は、フロアマット43の構造を表す平面図であり、図16は、分解平面図である。
【0033】
メンテナンスカバー23は、中央折曲板24と、この中央折曲板の左側に溶接接合された左側折曲板25と、中央折曲板24の右側に溶接接合された右前側折曲板26及び右後側折曲板27とを有し、断面凹凸形状の立体構造体として構成されている。
【0034】
中央折曲板24は、メンテナンスカバー23の大部分を構成するものであり、フロア部材13のメンテナンス用開口13B,13Cのほとんどを覆い隠すようになっている。中央折曲板24は、例えば1枚の略長方形状の鋼板に左右方向に伸びる折曲線に沿ってほぼ直角の曲げ加工を施すことにより、断面凹凸形状の立体構造体として形成された部材である。詳細には、平板部24Aと、この平板部24Aから上側に突出するとともに平板部24Aの左右方向の全長に亘って延在する断面コの字状の突条部24Bとを有している。なお、2つの突条部24Bの両外側(言い換えれば、前側及び後側)に位置する平板部24Aには、ボルト28が挿通されるボルト挿通孔24Cが形成されている。また、2つの突条部24Bの間に位置する平板部24Aには、例えばフロア部材13の左側メンテナンス用開口13Cに対応する位置に、上下方向に貫通した排水用穴24Dが形成されている。
【0035】
そして、中央折曲板24は、左右方向に延在する突条部24Bが高強度なリブとして作用することから、上側からの荷重に耐えて上下方向の撓みを抑えることができる。
【0036】
左側折曲板25は、例えば略長方形状に切り出された1枚の鋼板に前後方向に伸びる折曲線に沿って曲げ加工を施すことにより、断面凹凸形状の立体構造体として形成された部材である。詳細には、平板部25Aと、この平板部25Aの右側で曲げられて立ち上げられ、中央折曲板24の左側面に接合される立上り板部25Bと、フロア部材13との間に隙間(詳細には、キャブ21のベース枠体21Aの厚さ寸法とほぼ同じ隙間寸法)を形成するように、平板部25Aの左側でオフセットするように屈曲された重ね板部25Cと、この重ね板部25Cの左側で曲げられて立ち上げられた滑止め部25Dとを有している。なお、平板部25Aには、ボルト28が挿通されるボルト挿通孔25Eが形成されている。また、重ね板部25Cには、フロア部材13にキャブ21のベース枠体21Aを固定するボルト22との干渉を避けるために切欠き25Fが形成されている(前述の図3も参照)。
【0037】
そして、左側折曲板25は、前後方向に延在する立上り板部25Bが高強度なリブとして作用することから、上側からの荷重に耐えて上下方向の撓みを抑えることができる。また、重ね板部25C及び滑止め部25Dも凹凸曲げ部として機能することから、左側折曲板25の強度を高めることに寄与している。
【0038】
また、図12に示すように、重ね板部25Cは、フロア部材13に固定されたキャブ21のベース枠体21A上に重ねられるので、メンテナンスカバー23に作用する荷重の一部を高強度なベース部材21Aに負担させることができる。
【0039】
また、前述の図3に示すようにキャブ21の乗降口21K側に位置する滑止め部25Dは、その上端部に前後方向に所定の間隔で切欠が形成されることにより、複数の突起25D1が設けられている。これにより、オペレータは足を滑らせることなく運転室に乗り降りすることができる。また、滑止め部25Dは、メンテナンスカバー23と一体的に設けられることから、メンテナンスカバー23とともに簡単に取り付けることができる。
【0040】
右前側折曲板26及び右後側折曲板27は、互いに溶接接合されて、右側折曲板を構成する。右前側折曲板26は、平板部26Aと、この平板部26Aの左側で曲げられて立ち上げられ、中央折曲板24の右側面に接合される立上り部26Bとを有している。同様に、右後側折曲板27は、平板部27Aと、この平板部27Aの左側で曲げられて立ち上げられ、中央折曲板24の右側面に接合される立上り部27Bとを有している。
【0041】
そして、右前側折曲板25は、前後方向に延在する立上り板部26Bが高強度なリブとして作用することから、上側からの荷重に耐えて上下方向の撓みを抑えることができる。また、右後側折曲板25は、斜め方向に延在する立上り板部27Bが高強度なリブとして作用することから、上側からの荷重に耐えて上下方向の撓みを抑えることができる。
【0042】
このようにメンテナンスカバー23は、左右方向に延在する中央折曲板24の突条部24Bと、前後方向に延在する左側折曲板25の立上り部25B及び右前側折曲板26の立上り部26B、及び斜め方向に延在する右後側折曲板27の立上り部27Bとを有している。これにより、上下方向の荷重に対し、左右方向、前後方向、及び斜め方向のいずれの方向に対しても強度を発揮し、上下方向の撓みを抑えることができる。したがって、全体にバランスよく剛性をもたせることができ、板厚を薄くして軽量化を図ることができる。
【0043】
フロアマット43は、前後方向に分割された前側マット44及び後側マット45で構成されており、これら前側マット44及び後側マット45は、例えばゴム材料等で形成されている。
【0044】
後側マット45は、ほぼ水平な面が形成された水平面部45Aと、この水平面部45Aからキャブ21の乗降口21K側に向かって下方に傾斜する傾斜面が形成された傾斜面部45Bと、水平面部45Aの右側から後側にかけて形成されて上方に突出した突堤部45Cとを有している。水平面部45Aの上面側には、左右方向に延在する複数の突条部45Dが前後方向に所定の間隔をもって形成されており、オペレータがスリップするのを防止するようになっている。
【0045】
前側マット44は、フロア部材13に固定されたパイロット弁装置29を覆う箱形状の台座部44Aと、この台座部44Aの左右両側に形成され後側から前側に向かって上方に傾斜した(詳細には、後側マット45の水平面部45Aの高さ位置から台座部44Aの上面高さ位置まで傾斜した)傾斜面部44Bと、右側傾斜面部44Bの右側に形成された突堤部44Cとを有している。なお、前側マット44の台座部44Aは、前側マット44の突堤部44C及び後側マット45の突堤部45Cよりも高くなるように形成されている。
【0046】
前側マット44の台座部44Aには、走行用操作ペダル・ブレーキ18が挿通される開口44Dが形成されている。また、前側マット44の右側傾斜面部44Bには、操作ペダル19が挿通される開口44Eが形成されている。また、前側マット44の左側傾斜面部44Bには、操作ペダル19が挿通される切欠44Fが形成され、対応する後側マット45の前端部の左側にも、操作ペダル19が挿通される切欠45Eが形成されている。そして、前側マット44の開口44E及び切欠44Fの周囲には突堤部44Gが形成され、後側マット45の切欠45Eの周囲には突堤部45Fが形成されている。
【0047】
そして、前側マット44の突堤部44C,44G及び後側マット45の突堤部45C,45Fが形成されることにより、例えばフロア部材13の足乗せ部13Bに敷設されたフロアマット21に洗浄水を吹付けたときに、フロアマット21の周囲に洗浄水が飛散するのを抑えるようになっている。また、後部マット45上の洗浄水は、複数の突条部45Dの間に形成された溝に沿ってキャブ21の乗降口21Kへと案内されて、外部に排出されるようになっている。
【0048】
後側マット45の下面側には、格子状に配置されて、メンテナンスカバー23の断面凹凸形状に対応するように下方側に突出して形成された支持部45Gが形成されている。これにより、後側マット45の水平面部45Aは、上下方向の加重が加えられても、ほぼ水平を維持するようになっている。また、前側マット44の下面側にも、格子状に配置されて下方側に突出して形成された支持部44Hが形成されている。これにより、前側マット44の後端部と後側マット45との前端部との段差を低減するようになっている。また、前側マット44の後端部(但し、切欠44Fの部分を除く)には、後側マット45の前端部を受ける段差部44Jが形成されている。これにより、前側マット44の後端部と後側マット45の前端部との隙間及び段差が生じないようになっている。また、後側マット45の下面側には、下方側に突出してメンテナンスカバー23の排水用穴24Dを塞ぐ略円筒状の栓部45Hが形成されている。
【0049】
次に、フロア部材23の下側に配置された機器類のメンテナンス作業を行う場合の動作について説明する。
【0050】
まず、前側マット44を残して後側マット45のみを取り外し、この後側マット45を作業の邪魔にならないようにキャブ21の外部に移動させる。その後、ボルト28を緩めてメンテナンスカバー23を取り外し、このメンテナンスカバー23を作業の邪魔にならないようにキャブ21の外部に移動させる。そして、フロア部材23の下側に配置された機器類(詳細には、センタジョイント9、旋回用油圧モータ10、及び制御弁装置11等)のメンテナンス作業を行う。メンテナンス作業が終了したら、メンテナンスカバー23をフロア部材13に取り付け、その後、後側マット45を取り付ける。
【0051】
ここで本実施形態においては、メンテナンスカバー23は、断面凹凸形状の立体構造体とするから、曲げ荷重等に対する剛性を高めることができる。これにより、例えば同等の剛性をもった厚肉な平板構造とする場合と比較して、メンテナンスカバー23の重量を軽減することができる。また、フロアマット43は、前後方向に分割された前側マット44及び後側マット45からなり、後側マット45のみを取り外した状態でメンテナンスカバー23の脱着作業が可能なように構成している。これにより、前後方向に分割されない場合と比較して、メンテナンスカバー23の脱着作業を行う際に取り外さなければならないマットの大きさを小さくすることができる。したがって、本実施形態においては、メンテナンス作業時等にメンテナンスカバー23及びフロアマット43を容易に取り扱うことができ、作業性を向上させることができる。
【0052】
また、前側マット44の後端部に後側マット45の前端部を受ける段差部44Jを形成することにより、前側マット44の後端部と後側マット45の前端部との隙間を無くすことができ、その隙間から砂利等が落下するのを防止することができる。また、図16等で示すように、前側マット44の後端部を左右方向に凹凸状に形成し、これに嵌合するように後側マット45の前端部を左右方向に凹凸状に形成することにより、前側マット44と後側マット45との横方向の位置ずれを防止することができ、位置ずれによって生じる隙間から砂利等が落下するのを防止することができる。
【0053】
また、メンテナンスカバー23の中央折曲板24の窪み(詳細には、中央折曲板24の突条部24B、左側折曲板25の立上り部25B、右前側折曲板26の立上り部26B、及び右後側折曲板27の立上り部27Bによって囲まれた平板部24A)に排水用穴24Dを設けることにより、例えばフロア部材13の洗浄作業時等にメンテナンスカバー23の窪みに溜まりやすい洗浄水を排水することができる。そして、通常時は、後側マット45の栓部45Hでメンテナンスカバー23の排水用穴24Dを塞ぐことにより、フロア部材23の下側に配置された機器類の発熱によって温められた熱風が運転室内に侵入するのを防止することができ、さらに後側マット45の位置ずれも防止することができる。
【0054】
なお、上記一実施形態においては、メンテナンスカバー23の中央折曲板24は、平板部24Aの左右方向の全長に亘って延在する2つの突条部24Bを有する構造を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば図17で示す第1の変形例によるメンテナンスカバー31の中央折曲板32のように、平板部32Aに千鳥配置されるように突条部32Bを形成してもよい。ここで、突条部の個数や配置は、例示したものに限定されることはなく、キャブ21内のレイアウトや操作形態などの条件によって適宜設定することが可能である。
【0055】
また、上記一実施形態においては、メンテナンスカバー23の中央折曲板24は、平板部24Aから上側に突出するように断面コの字状(四角形状)の突条部24Bを形成した構造を例にとって説明したが、これに限られない。例えば図18で示す第2の変形例によるメンテナンスカバー41の中央折曲板42のように、平板部42Aから上側に突出するように断面山形形状(三角形状)の突条部42Bを形成した構造としてもよい。ここで、突条部の形状は、例示したものに限定されることはなく、必要とされる強度の分布やオペレータの足を乗せる位置等の条件によって適宜設定することが可能である。
【0056】
また、上記一実施形態においては、メンテナンスカバー23は、4つの部材(詳細には、中央折曲板24、左側折曲板25、右前側折曲板26、及び右後側折曲板27)で構成された場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、メンテナンスカバーを構成する部材の数は、全体の形状や組立て易さ等によって適宜設定することが可能であり、例えば1つ、2つ、3つ、または5つとしてもよい。具体的には、右前側折曲板26と右後側折曲板27を1つの部材(右側折曲板)として形成してもよいし、これら右前側折曲板26と右後側折曲板27を削除するような構成としてもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0057】
なお、以上においては、本発明の適用対象として、キャブ21を備えたキャブ仕様の油圧ショベル1を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば運転席16の上方を覆うキャノピを備えたキャノピ仕様の油圧ショベルに適用してもよい。また、例えば油圧クレーンやホイールローダ等の他の建設機械に適用してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
4 上部旋回体
5 作業装置
6 旋回フレーム
9 センタジョイント
10 旋回モータ
11 制御弁装置
13 フロア部材
13A 運転席取付部
13B 足乗せ部
13C 左側メンテナンス用開口
13D 右側メンテナンス用開口
16 運転席
21 キャブ
23 メンテナンスカバー
24D 排水用穴
31 メンテナンスカバー
41 メンテナンスカバー
43 フロアマット
44 前側マット
44J 段差部
45 後側マット
45H 栓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体と、前記上部旋回体に俯仰可能に設けた作業装置とを備え、
前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、前記旋回フレーム上に設けられ、運転席が取り付けられてその前側にオペレータの足乗せ部を形成するフロア部材と、前記フロア部材の下側に配置された機器類のメンテナンスが行えるように前記フロア部材の足乗せ部に形成されたメンテナンス用開口と、前記メンテナンス用開口を塞ぐように前記フロア部材に着脱可能に取り付けられたメンテナンスカバーと、前記メンテナンスカバーを含めて前記フロア部材の足乗せ部を覆うように敷設されたフロアマットとを有する建設機械において、
前記メンテナンスカバーは、板体に上下方向に折り曲げた凹凸曲げ部を形成することにより断面凹凸形状の立体構造体として構成し、
前記フロアマットは、前後方向に分割された前側マット及び後側マットからなり、前記前側マット及び前記後側マットのうち前記後側マットのみを取り外した状態で前記メンテナンスカバーの脱着作業が可能なように構成したことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、前記前側マットの後端部と前記後側マットの前端部との隙間及び段差が生じないように、前記前側マットの後端部に前記後側マットの前端部を受ける段差部を形成したことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1又は2記載の建設機械において、前記前側マットの後端部を左右方向に凹凸状に形成し、これに嵌合するように前記後側マットの前端部を左右方向に凹凸状に形成したことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の建設機械において、前記メンテナンスカバーは、上下方向に貫通した排水用穴を有し、前記後側マットは、前記メンテナンスカバーの排水用穴を塞ぐように下方側に突出した栓部を有することを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−222862(P2010−222862A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72155(P2009−72155)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】