説明

弁体開閉装置

【課題】 高精度の部品を必要とせず、弁体の開閉動作の応答性能に優れ、弁体とその当接面での摺動がない弁体直動式の弁体開閉装置を提供する。
【解決手段】 モータ7を駆動源として回転可能に軸支されるらせん状の上カム面34aおよび下カム面38aを有する上カム部材32と下カム部材36を備え、弁体12に上カム面34aおよび下カム面38aと係合するカム係合部52を設け、弁体12の回転方向への移動を規制する回り止め部41b,41bにより、弁体12を支軸13方向にのみ動作するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体開閉装置に関し、更に詳しくは、モータ駆動によって弁体を動作させて流路を開閉する弁体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータを駆動源として弁体を駆動し、冷蔵庫等の冷媒流路を開閉する弁体開閉装置が知られている。例えば特許文献1には、ニードル弁をネジ部材に取り付け、このネジ部材をモータによって回転させることにより、ネジ部材をその軸方向に進退移動させて冷媒が流出する開口を開閉する、いわゆる弁体直動式の弁体開閉機構が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、開口部が設けられたディスク弁をモータによって回転させ、ディスク弁の開口部が、弁座プレートに設けられた流出口のいずれかの位置と一致した場合に、その一致した流出口が開状態となる弁体の開閉機構が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−148645号公報
【特許文献2】特開2004−293573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、モータの回転量に対するネジ部材の軸方向への移動量を正確に制御しなければならないため、ネジ部材及びこのネジ部材が螺合される筒部には高精度の雄ネジ部及び雌ネジ部が必要とされ、量産性に乏しいという問題がある。さらに、モータ一回転当たりのネジ部材の軸方向における移動量が小さいため、ニードル弁の開閉に要するモータの回転数が多くなってしまい、エネルギー効率が悪いだけでなく、弁体の開閉動作の応答が遅いという問題もある。
【0006】
また、特許文献2は、特許文献1のように冷媒の流出口に対して弁体が直動し開閉動作を行うものではなく、ディスク弁と流出口が設けられた弁座プレートが面接触しているため、これらの摺動による摩擦力によって弁体開閉装置の起動性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、弁体の開閉機構において高精度の部品を必要とせず、弁体の開閉動作の応答性能に優れ、弁体と流体流出口との当接面での摺動摩擦が生じない弁体直動式の弁体開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、流体が流入可能な流入部と、流体が流出可能な流出部と、前記流入部と前記流出部の少なくとも一方に設けられた開口部と、該開口部を開閉するための弁体と、該弁体を操作して前記開口部を開状態あるいは閉状態に切り換える駆動機構と、該駆動機構の駆動源であるモータを有する弁体開閉装置において、前記駆動機構は、前記弁体に形成された係合部と、前記モータによって回転駆動されると共に、この回転軸方向に傾斜し前記係合部に係合するカム面を有するカム部材と、該カム部材の回転駆動による弁体の回転を規制し直動させる回り止め部とを備え、前記弁体は、前記カム部材に並設され、前記係合部が前記カム部材の回転にともない前記カム面に沿って移動する力を受けることにより、前記カム部材の回転軸と平行な軸に沿って直動することを要旨とするものである。
【0009】
この場合、請求項2に記載のように、前記開口部は前記流出部に設けられておればよい。
【0010】
また、請求項3に記載のように、前記モータのロータは、前記カム部材の回転中心軸方向に移動可能に保持されると共に、付勢部材により該カム部材を介して前記弁体が前記開口部を閉状態とする方向に付勢されていることが望ましい。
【0011】
さらに、請求項4に記載のように、前記カム部材のカム面は、前記弁体による開口部の開状態と閉状態の少なくとも一方において、少なくとも前記弁体に形成されるカム係合部が前記カム部材の回転軸方向と直交する個所において係合されておれば好適である。
【0012】
また、請求項5に記載のように、前記カム部材は少なくとも2つの部材で構成され、そのうちの一部材は弁体を閉状態に移動可能なカム面が形成された上カム部材であり、異なる一部材は弁体を開状態に移動可能な下カム部材であり、前記上カム部材のカム面と前記したカム部材のカム面は離間すると共に対向する位置に配置され、前記上カム部材と前記下カム部材は一体に回転可能であり、前記弁体に係合されるカム係合部は前記上カム部材のカム面と対向する面と、前記下カム部材のカム面に対向する面とを有し、該カム係合部は前記上カム部材のカム面と前記下カム部材のカム面との間に配置されていればさらに良い。
【0013】
そして、請求項6に記載のように、前記弁体は前記開口部との当接部位は弾性体で形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る弁体開閉装置によれば、モータを駆動源として回転軸方向に傾斜するカム面を有するカム部材が回転することによって、このカム面にカム係合部を介して係合される弁体は、そのカム部材のカム面に沿って移動する力を受けるが、回り止め部によって弁体の回転方向の動作は規制されるため、弁体はカム部材の回転軸と平行にのみ動作することとなる。そのため、弁体と流体の流出開口部との間の摺動がなく、摩擦により弁体の起動性が低下したり、弁体が摩耗してしまうおそれがない。また、上記カム面の斜面形状は自由に設定できるため、モータの回転量を少なくして弁体を開閉操作することができ、弁体の開閉動作の応答性能に優れた弁体開閉装置とすることができる。
【0015】
また、請求項2のように開口部が流体の流出部に設けられておれば、より好適な弁体開閉装置の使用が期待できる。
【0016】
また、請求項3のように、ロータがカム部材の回転中心軸方向に付勢され、前記カム部材を介して前記弁体も開状態に付勢されておれば、モータのトルクと付勢部材の付勢力によって、弁体が開口部に押圧されるため、より確実な開口部の閉状態が得られる。
【0017】
さらに、請求項4のように、前記弁体の開状態もしくは閉状態において、該弁体のカム係合部が、カム部材の回転軸方向と直交する個所で係合されておれば、弁体からの付勢力によって、カム部材が不用意に弁体の閉方向もしくは開方向に回転することを防ぐことができる。
【0018】
また、請求項5のように、前記弁体を閉状態に移動する上カム部材と、弁体を開状態に移動する下カム部材との間のカム溝に、前記弁体のカム係合部が係合されるようにすれば、両カム部材と弁体のカム係合部との組み込み作業が簡単容易になる。また、各カム部材そのものを成型容易な簡易形状とすることができ、部品製造コストの低廉化も図れる。
【0019】
そして、請求項6のように、前記弁体の流体開口部との当接部位が弾性体で形成されていれば、弁体と及び弁体の流体開口部との当接面の面粗度が大きくても、確実に冷媒流路を開閉操作が行われることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る弁体開閉装置1の断面図であり、図2はその外観斜視図である。なお、以下の説明における上下方向とは、図1における上下方向を示すものとする。
【0021】
これらの図に示されるように、本実施形態の弁体開閉装置1には、有底筒状の本体ケース2と、この本体ケース2に被着されるプレート4と、このプレート4および本体ケース2により形成される流体空間92内に開口部3aを通じて流体を流入させるための流入パイプ5と、流体空間92内に流入された流体を開口部3bを通じて流出させるための流出パイプ6とが、それぞれプレート4に取り付けられて配設されている。
【0022】
そして、流体空間92内には、少なくとも流出パイプ6の開口部3bを開閉する弁体12と、この弁体12を操作して開口部3bを開状態あるいは閉状態に切り換える駆動機構部9と、駆動機構部9の駆動源であるステッピングモータ(以下単にモータという)7のロータ10が配設されている。
【0023】
これらの各部材および機構について図1〜4を参照してさらに詳しく説明する。なお、図3は、本体ケース2内の構成を示した外観斜視図であり、図4は、その構成部品の分解斜視図である。
【0024】
本体ケース2は、相対的に大径の大径筒部2aと相対的に小径の小径筒部2bとが、金属ステンレス材料のプレス絞り加工により一体的に形成されてなるものである。また、大径筒部2aの開口端縁にはフランジ部2cが形成されており、このフランジ部2cとプレート4の段差部4aがTIG(タングステンイナートガス)溶接により固着されることによって、流体空間92が形成されている。
【0025】
そして、本体ケース2内には、支軸13の一端が本体ケース2の内底壁面20に形成された凹部20a内に嵌入支持され、他端がプレート4の中心孔3cに挿通され、溶接等により固着されている。
【0026】
また、本体ケース2の小径筒部2b内では、この支軸13にモータ7のロータ10が回転自在に支承されると共に、大径筒部2aには、駆動機構部9を構成する上カム部材32と下カム部材36とが支承されている。
【0027】
さらに、ロータ10には、支軸13に遊挿される軸筒部16に円環状のマグネット(永久磁石)17が、軸筒部16の外周両端縁に周設される保持部16aに支持された状態で一体的に設けられている。
【0028】
そして、このロータ10に対応して本体ケース2の小径筒部2bの外周面には、コイルボビン15,15に駆動コイル14,14が巻回されている2層のステータ72a,72aが配設されたステータ部72が形成されている。このステータ部72は、その外周面を囲うようにステータケース8に固定され、本体ケース2の外側に被着されている。
【0029】
また、このステータ72a,72aの各駆動コイル14,14は、この端子の各先端部分が制御基板74の所定の位置に接続され、この制御基板74は、外部電源端子76と電気的に接続されている。
【0030】
したがって、このモータ7は、ステータ72a,72aの各駆動コイル14,14への通電によって発生する磁界により、ロータ10のマグネット17との間に磁気吸引力、あるいは磁気反発力が生じ、磁界によりロータ10が支軸13の回りを回転駆動されるように構成されている。
【0031】
さらに、ロータ10と本体ケース2の内底壁面20との間には、ロータ10をプレート4方向に付勢する付勢部材22が支軸13に挿通されて取り付けられている。この付勢部材22は、支軸13が挿通される挿通孔が形成されたベース板22aに3枚の板バネ22bが取り付けられており、板バネ22aの先端が本体ケース2の内底壁面20に当接されているため、支軸13に遊挿されたロータ10は常にプレート4側に付勢されることとなる。
【0032】
一方、本体ケース2の大径筒部2aには、駆動機構部9の構成部品である上カム部材32および下カム部材36が配設されている。この上カム部材32および下カム部材36の外観斜視図を図5〜7に示す。
【0033】
図5および図7にその詳細を示す上カム部材32は、相対的に大径のカップリング部33に、上記ロータ10の軸筒部16の下端面に形成される3つのカップリング突起にそれぞれ係合されるカップリング溝33aが円周上等間隔に3個所設けられている。
【0034】
また、相対的に小径の本体部34の下端面には、らせん状に形成された上カム面34a、支軸13方向と直交する押圧面34bおよび底面34cが形成されている。さらに、本体部34には、下カム部材32が遊挿される係合孔35が形成されており、その内壁面から突出してDカット凸部35aが形成されている。
【0035】
そして、図6および図7にその詳細を示す下カム部材36は、上カム部材32の貫通孔35に遊挿可能な外径に形成された円筒部37と、この円筒部37より大径である土台部38とで構成され、中心には支軸13が遊挿される軸孔39が形成されている。
【0036】
この円筒部37と土台部38の境界線上には、上記上カム面34aと同じらせん角度で形成された下カム面38a、支軸13方向と直交する受止面38b、高さ保持突起38cが形成されている。また円筒部37には、その外周面の一部が平面に切削されたDカット凹部37aが形成されている。
【0037】
この上カム部材32と下カム部材36は、図7に示すように、Dカット凸部35aとDカット凹部37aの回転方向位置を合わせ、下カム部材36の円筒部37が上カム部材32の貫通孔35に挿通されて係合されるが、このそれぞれのDカット部の係合によって、ロータ10から上カム部材32が回転動力を受けた場合、上カム部材32と下カム部材36は、一体的に回転運動することとなる。また、軸方向については、下カム部材36の高さ保持突起38cが上カム部材32の底面34cに当接されることにより、上カム部材32の軸方向位置が決定される。
【0038】
この時、上カム部材32の上カム面34aと下カム部材36の下カム面38aは、接することなく一定間隔を空けて位置決めされる。また、上カム部材32の押圧面34bと下カム部材36の受止面38bも接することなく同じ間隔を空けて位置決めされる。つまり、上カム部材32と下カム部材36が係合されると、図1に示すように、一定幅でほぼらせん状のカム溝42が形成されることとなる。
【0039】
次に、この上カム部材32および下カム部材36と係合される弁体12の構成およびその動作について説明する。図8は弁体12の外観斜視図であり、図9は開口部3bの開状態時を示した図である。
【0040】
図8に示すように、この上カム部材32および下カム部材36と係合される弁体12には、上カム部材32の本体部34が遊挿可能な円筒形部材であるスライダー部50の内壁から突出して、上カム部材32と下カム部材36が形成する上記カム溝42に係合されるカム係合部52が形成されている。このカム係合部52の支軸13方向の高さは、カム溝42の間隔より小さく形成され、両者が係合した場合に若干の遊びを有するよう形成されている。
【0041】
一方、スライダー部50の外壁面からは、段差のあるブロック状の部材であるパッド保持部54が突出して形成されている。また、図9に示す開口部3bを閉鎖するパッド56は弾性体であるウレタンゴム製で、その取付穴にパッド保持部54が挿通されることで弁体12が構成される。なお、パッド保持部54の先端には抜け止め54aが設けられているため、パッド56が不用意に抜け落ちることはない。また、図に示すパッド56のパッド当接部56aが弁座40に押圧され、流体流出口である開口部3bは閉鎖されることとなる。
【0042】
一方、図4に示されている弁座40は、プレス成形により一体的に製造される部品であり、この弁座40のベース41の略中央には、開口部3bに嵌め込まれて流体の流出通路となるバーリング孔41aが形成されている。また、弁体12の回り止めとなる回り止め部41b,41bが、ベース41から垂直に折り返されて形成されている。
【0043】
さらに、回り止め部41b,41bの近傍には、位置決め孔41c,41cがベース41に形成されており、この位置決め孔41c,41cが、プレート4に設けられた2個所の位置決め突起4a,4aに嵌合されて、弁座40は位置決めされプレート4に固着される。
【0044】
このような構成の駆動機構部9は、図4に示すように、上からロータ10、上カム部材32、下カム部材36の順で支軸13に軸支されると共に、上カム部材と下カム部材の間に弁体12が係合される。
【0045】
つまり、上カム部材32は、カップリング部33を上にし、支軸13に遊挿され、ロータ10の軸筒部16とカップリング部33を介して係合する。そして、上カム部材32の本体部34が弁体12のスライダー部50に遊挿された後、下カム部材36が支軸13に遊挿されて、その土台部38を下方にして上カム部材32と係合する。これによって、上カム部材32と下カム部材36が形成するカム溝42に弁体12のカム係合部52が係合されることとなる。
【0046】
また、このようにして係合された弁体12のパッド保持部54およびパッド56は、プレート4に固着されている弁座40の回り止め部41b,41b間に位置するように組み込まれている。
【0047】
このように構成された弁体開閉装置1において、弁体12のパッド56が開口部3bに当接し、流路を閉鎖した閉状態(図1に示した状態)であるとき、ロータ10をモータ7側から見て反時計回りに回転させると、ロータ10と連動して上カム部材32と下カム部材36も回転し、カム係合部52を介してカム溝42に係合している弁体12は、下カム部材36のカム面38aに沿って、上向きのらせん方向に移動する力を受けることとなる。
【0048】
その時、弁体12は、そのパッド保持部54が弁座40の回り止め部41b,41b間に位置するように載置されているため、下カム部材36の回転周方向の動作は規制される。よって弁体12は、図9に示すように、回転軸である支軸13と平行に、開口部3bから離間する上方向に移動し、流体流出口である開口部3bを開放する。
【0049】
一方、開口部3bを開状態から閉状態とするとき、ロータ10を上記と逆回転させると、ロータ10の回転に連動して上カム部材32と下カム部材36も回転する。すると、カム係合部52を介してカム溝42に係合している弁体12は、今度は上カム部材32のカム面34aに沿って、下向きのらせん方向に移動する力を受けることとなる。
【0050】
そして、弁体12の回転方向の動作は、弁座40の回り止め部41b,41bによって規制されているため、弁体12は支軸13と平行に開口部3bを閉鎖する下方向に移動し、パッド56が弁座40に押圧され、開口部3bは閉鎖される。
【0051】
つまり、弁体開閉装置1では、弁体12が上カム部材32と下カム部材36の回転によるカム溝42の軸方向の変位分、開口部3bに対して支軸13と平行に上下運動を行うことで、パッド56が流体流出口である開口部3bを開閉する弁体直動式の開閉動作を繰り返すこととなる。
【0052】
このように、本発明の一実施形態に係る弁体開閉装置1では、らせん状に形成された上カム部材32の上カム面34aと、下カム部材36の下カム面38aに係合される弁体12が、モータ7を駆動源として、そのらせん方向に沿って移動する力を受けるが、弁座40の回り止め部41b,41bによって弁体12の回転方向の動作は規制され、弁体12は支軸13と平行に動作する。
【0053】
そのため、弁体12と弁座40間での摺動がなく、摩擦により弁体12の起動性が低下したり、弁体が摩耗してしまうおそれがない。また、上カム部材32や下カム部材36は、金型成型により一体的に製造可能であるため量産性に優れており、上記らせん形状は自由に設定できるため、らせん角度を小さくして、小さなモータトルクで確実に流路の開閉を行うことも可能である。
【0054】
また、本実施形態の場合、上カム部材32の上カム面34a、および下カム部材36の下カム面38aは、そのらせん長さが360度以下であるため、ロータ10の回転量を一回転未満に抑えて、弁体12を開閉動作させることができる。
【0055】
つまり、モータの回転量を少なくして流路の開閉動作を行うことができるため、エネルギー効率が良いだけでなく、弁体12の開口部3bにおける開閉動作の応答性に優れたものとなる。
【0056】
さらに、上述したように、ロータ10と本体ケース2の内底壁面20との間には、ロータ10をプレート4側に付勢する付勢部材22が取り付けられており、この付勢力によって、上カム部材32と下カム部材36を介し、弁体12は常にプレート4側に付勢されている。これを利用して開口部3bを閉状態から開状態とするとき、弁体12は、カム溝42の途中位置で弁座40に当接するようにするとよい。
【0057】
つまり、弁体12が弁座40に当接した後、ロータ10はさらに回転し、付勢部材22の付勢力に抗して弁体12をさらに押し下げるように構成することで、モータ7のトルクと付勢部材22の付勢力で弁体12が弁座40に押圧されることとなり、より確実に開口部3bを閉状態とすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、ロータ10の回転運動を受けて弁体12を駆動させるカム部材を、上カム部材32、下カム部材36の2部品に分けて構成している。これにより、カム部材を一部品とした場合と比較し、カム部材が形成するカム溝42に弁体12のカム係合部52を組み込む作業が容易となる。また、上下カム部材をそれぞれ成型容易な簡易形状とすることができる。
【0059】
さらに、開口部3bが閉状態にあるとき、流体のリークを防止し、流路を確実に閉鎖するためには、より強い力で開口部3bを押圧しなければならない。仮に、上カム部材32のカム面34a、つまり傾斜面でカム係合部52を押圧し、パッド56を開口部3bに押し当てた状態で状態でモータ7の給電を停止し、該モータ7のディテントトルクにて開口部3bの閉状態を維持しようとすると、カム面34aの傾斜がカム係合部52との摩擦角以上の角度で形成されていれば、カム面34aとカム係合部52間ですべりが発生し、モータ7のディテントトルクに抗して上カム部材32および下カム部材36が回転し、弁の閉状態を維持することができない。
【0060】
これに対し、本実施形態では、開口部3bの閉状態において、回転軸方向と直交する押圧面34bが、支軸13方向にカム係合部52を押圧する構成としている。そのため、たとえ弁体12が開方向に移動させるような流体圧を受けたとしても、カム部材が開方向に回転することはなく、小さいディテントトルクで弁体12を閉状態位置に確実にロックすることができる。
【0061】
しかも、パッド56は、ウレタンゴムで形成された弾性体であり、弾性変形して開口部3bに密着するため、開口部3bにおける流体のリークを確実に防止することができる。
【0062】
よって、従来技術のように、弁体とその当接部を研磨等して、面粗度を小さくする必要はなく、パッド56が押し当てられる弁座40の面粗度が大きくとも流体通路を確実に閉鎖することができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0064】
例えば、本実施形態に係る弁体開閉装置1は、取付板99によって冷蔵庫等の内部に取付固定されて、イソブタンやフロン等の冷媒流路を開閉制御する場合に好適に使用できるものであるが、その他の液体や気体を開閉制御する開閉バルブにも本願発明の技術的思想は適用可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、弁体12に備えられたパッド56がウレタンゴム製であることを説明したが、弾性力があり、開口部3bを確実に封止できるものであればそれに限られるものではない。
【0066】
また、流体の流出口である開口部3bにのみ流路を開閉する弁体12を設けたが、流体の流入口に設けてもよいし、流出口、流入口の両方に設けてもよい。また、複数の流出口、流入口をもつ弁体開閉装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態に係る弁体開閉装置の断面図である。
【図2】図1に示した弁体開閉装置の外観斜視図である。
【図3】弁体開閉装置の本体ケース内の構成を示した外観斜視図である。
【図4】図3に示した本体ケース内の構成部品の分解斜視図ある。
【図5】駆動機構部の構成部品である上カム部材の外観斜視図である。
【図6】駆動機構部の構成部品である下カム部材の外観斜視図である。
【図7】上カム部材と下カム部材の係合を説明するための外観斜視図である。
【図8】流体の流出口である開口部を開閉する弁体の外観斜視図である。
【図9】流体の流出口である開口部が開放された状態の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 弁体開閉装置
4 プレート
5 流入パイプ
6 流出パイプ
7 モータ
9 駆動機構部
10 ロータ
12 弁体
13 支軸13
32 上カム部材
34a 上カム面
36 下カム部材
38a 下カム面
41b,41b 回り止め部
52 カム係合部
56 パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入可能な流入部と、流体が流出可能な流出部と、前記流入部と前記流出部の少なくとも一方に設けられた開口部と、該開口部を開閉するための弁体と、該弁体を操作して前記開口部を開状態あるいは閉状態に切り換える駆動機構と、該駆動機構の駆動源であるモータを有する弁体開閉装置において、
前記駆動機構は、前記弁体に形成された係合部と、前記モータによって回転駆動されると共に、この回転軸方向に傾斜し前記係合部に係合するカム面を有するカム部材と、該カム部材の回転駆動による弁体の回転を規制し直動させる回り止め部とを備え、
前記弁体は、前記カム部材に並設され、前記係合部が前記カム部材の回転にともない前記カム面に沿って移動する力を受けることにより、前記カム部材の回転軸と平行な軸に沿って直動することを特徴とする弁体開閉装置。
【請求項2】
前記開口部は前記流出部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の弁体開閉装置。
【請求項3】
前記モータのロータは、前記カム部材の回転中心軸方向に移動可能に保持されると共に、付勢部材により該カム部材を介して前記弁体が前記開口部を閉状態とする方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の弁体開閉装置。
【請求項4】
前記カム部材のカム面は、前記弁体による開口部の開状態と閉状態の少なくとも一方において、少なくとも前記弁体に形成されるカム係合部が前記カム部材の回転軸方向と直交する個所において係合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弁体開閉装置。
【請求項5】
前記カム部材は少なくとも2つの部材で構成され、そのうちの一部材は弁体を閉状態に移動可能なカム面が形成された上カム部材であり、異なる一部材は弁体を開状態に移動可能な下カム部材であり、前記上カム部材のカム面と前記したカム部材のカム面は離間すると共に対向する位置に配置され、前記上カム部材と前記下カム部材は一体に回転可能であり、前記弁体に形成されるカム係合部は前記上カム部材のカム面と対向する面と、前記下カム部材のカム面に対向する面とを有し、該カム係合部は前記上カム部材のカム面と前記下カム部材のカム面との間に配置されることを特徴とする請求項1〜3に記載の弁体開閉装置。
【請求項6】
前記弁体は前記開口部との当接部位が弾性体で形成されていることを特徴とする請求項1〜4に記載の弁体開閉装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−32196(P2008−32196A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209448(P2006−209448)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】