説明

引出電極用マニピュレータ・システム及びイオン注入システム

【課題】メンテナンスの回数を少なくかつ故障を少なくした引出電極用マニピュレータを提供すること。
【解決手段】本発明の引出電極用マニピュレーター・システムは、同軸配置された支持管システムの内側支持管248によって支持される抑制電極210と、前記同軸配置された支持管システムの外側支持管246によって支持されている接地電極212と、前記同軸配置された支持管システムの遠方端に位置して、前記支持管システムを機械的に支持し、かつ高電圧真空フィードスルーとして作用する高電圧インシュレータリング211とを含む。この結果、絶縁スタンドオフとしての高電圧インシュレータリング211が、イオン源の近くから同軸配置された支持管システムの遠方端に位置するので、内側支持管を機械的に支持するとともに、高電圧フィードスルーとして作用し、インシュレータリング211の絶縁表面に蒸気が到達して汚染しかつ被覆する可能性を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にイオン注入システムに関し、特に、マニピュレータ内の絶縁体(インシュレータ)に必要とされるメンテナンスの回数を少なくする引出電極用マニピュレータを用いるためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及びその他のイオン関連製品の製造において、イオン注入システムは、半導体ウエハ、ディスプレイパネル、または他の加工品に不純物を添加するのに使用される。一般的なイオン注入システムまたはイオン注入機は、公知の処理法またはプロセスにより、イオンビームを加工物に衝突させ、加工物内に、ドープされたn型又はp型の半導体材料を製造したり、あるいは不活性層を形成する。
【0003】
半導体に不純物をドーピングするとき、イオン注入システムは、選択されたイオン種を注入して所望の半導体材料を製造する。一般的に、ドーパント原子または分子は、イオン化され、分離され、時々加速または減速される。このドーパントイオンは、物理的に衝突して、加工物の表面内に入り、そして、加工物表面下方の結晶格子構造内にとどまることになる。
【0004】
イオン注入システム内のいくつかの領域は、負にバイアスされ、例えば、このシステムでは、一般的に抑制電極が概略−1KVにバイアスされる。これらのシステムは、加速管の出口(又は減速管の入口)に、イオン源の引出電極が設けられ、また、この電極には正の電位が用いられる。抑制電極では、この電極が分離される2つの領域間で電子の移動が阻止または抑制される。抑制電極は、負の電位があまり高くなく、この電極の重量も一般的に少ない(例えば、100gまたはそれ以下)ので、セラミックの小さいスタンドオフ上に取り付けられる。
【0005】
イオン源の引出領域内の抑制電極は、厳しい環境下にある。第1に、高エネルギー、高フラックスのイオンビームが、電極及び開口の材料(主に、金属と炭素)に衝突してスパッタリングを生じ、シールドされない絶縁性表面を被膜し、この表面に導電性又は更に、導電性の「フレーク(flake)」を作り上げる。この導電性フレークは、最終的に、例えば、高電圧スパークを開始する原因となる。
【0006】
第2に、真空環境が、しばしば、イオン源の供給材料から凝縮された蒸気を含む汚染領域となることが知られている。この蒸気は、複雑なシールド構造を介して「スネーク(snake)」を形成して、隠れている絶縁表面上に被膜または堆積する。
【0007】
第3に、上述した2つの理由に関連して、抑制電極は、大きなエネルギー(例えば、数ジュール)が解放される、高頻度でかつ高い電圧のスパークに耐えなければならない。一般的にセラミックのスタンドオフは、金属のシールド層によって保護されるけれど、これらの高電圧のスパークは、隠れている絶縁領域内で二次的なスパークをもたらし、最悪な場合、インシュレータは、突然のサージ電流及び急速な加熱により、クラックを生じる。これらの有害な環境要因に加えて、電極(抑制電極及び接地電極)は、より複雑な状況においても、イオン源に対して適切に機械的に操作されなければならない。
【0008】
抑制電極自体は、マニピュレータと共に移動するが、伝統的に、抑制電極に負の電位を供給するための高電圧真空フィードスルーが、マニピュレータアセンブリの固定フランジに配置されている。この配置は、抑制電極をフィードスルーに接続するために、柔軟なワイヤーまたはスプリングを必要とするだけでなく、フィードスルー自体が上述した全ての問題に対して傷つきやすい。
【0009】
図1は、引出電極用マニピュレータ100の一般的な配置を示している。このマニピュレータ100のイオン源102は、イオン源の前面プレート104と、イオン源102の前面に形成された出口スリット106を備える。出口スリット106は、イオンビーム108をイオン源102から引き出すことができる。絶縁スタンドオフ110は、抑制電極112を接地電極114に取り付けるために用いられ、この接地電極は、電極112,114をイオン源102から可変距離118において、一緒に移動できる。この距離118は、重要な作動変数であり、セットアップごとに変化する、イオンビームエネルギー、イオン源スリット106位置でのビーム電流密度、イオンの質量に従って引き出されるイオンビーム108の最良特性に対して調整されなければならない。また、左右の位置126は、排出ビーム108の角度を補正するために調整可能であり、この調整は、構成要素の配列の狂いまたはイオン源の磁界の影響により発生する。これら2つの調整は、引出電極用マニピュレータ100の機能である。この単純化した機械式の引出電極用マニピュレータ100において、金属製ベローズ120は、真空状態で、2つの動き118と126を導くために用いられる。しかし、差動ポンプによるスライドシールのような、真空状態での他の動作方法もある。
【0010】
図1に示すように、インシュレータのシールドカップ116は、単純化した機械式の引出電極用マニピュレータ100の抑制電圧に対して、絶縁スタンドオフ110、及び高電圧真空フィードスルー122を取り囲む。絶縁スタンドオフ110の形状及び位置に関して、異なる形状、シールド層の配置及び数を含む一定の改良がなされてきたが、今まで、絶縁スタンドオフ110(即ち、抑制インシュレータ)及び抑制フィードスルー116は、周期的なサービスリストのトップリスト上、またはその近くにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、イオンビームの近くから絶縁スタンドオフ及び高電圧真空フィードスルーを取り除くことにより、メンテナンスの回数を少なくかつ従来のマニピュレータより、故障を少なくした、改良型の引出電極用マニピュレータ及びイオン注入システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決するために、本発明は、イオン注入システムの有効な引出電極用マニピュレータのためのシステムを与えることによって、従来の欠点を克服する。従って、本発明のいくつかの構成について基本的な理解を与えるために、単純化した要約を以下に示す。
【0013】
この要約は、本発明の広範囲の概要を示すものではなく、また、本発明の重要な構成を特定し、或いは、本発明の範囲を詳述するものでもない。この要約の目的は、後述されるより詳細な説明の前文として単純化した本発明のいくつかの概念を提供することである。
【0014】
本発明は、一般的にイオン源に近くから高電圧の絶縁スタンドオフ及び高電圧フィードスルーを取り除くことに向けられている。これらの絶縁特性は、表面被膜によって急速に悪化する傾向があり、これらの絶縁体を汚染された環境から遠くに離すために移動し、また一体化する。
【0015】
本発明の基本的な構成によれば、引出電極用マニピュレータ・システムは、イオン源、抑制電極、及び接地電極を含み、前記抑制電極及び接地電極は、2つの同軸配置されて、水冷される支持管によって一端側が支持される。1つの高電圧インシュレータリングが、他端側で同軸配置の支持管を一緒に支持し、高電圧真空フィードスルーとして作用する。同軸配置の支持管の間の長く狭いチャネルが、高電圧インシュレータ上に作られる、凝縮された蒸気およびスパッタされた材料に対して最上のシールドを与え、さらに、インシュレータ内にスパークが起こる前に、このシールドによるギャップが、保護的なスパークギャップとして作用する。
【0016】
従って、本発明の引出電極用マニピュレーター・システムは、同軸配置された支持管システムの内側支持管によって支持される抑制電極と、前記同軸配置された支持管システムの外側支持管によって支持されている接地電極と、前記同軸配置された支持管システムの遠方端に位置して、前記支持管システムを機械的に支持し、かつ高電圧真空フィードスルーとして作用する高電圧インシュレータリングとを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の別の基本的な構成によれば、イオン注入システムは、引出電極用マニピュレータ・システムを含むイオンビーム源を有し、このイオンビーム源は引出電極を形成し、引出電極はイオン源からのイオンを引き出すように開口を形成する。
【0018】
2つの同軸配置されて水冷される支持管システムの内側支持管は、抑制電極を支持する。接地電極は、水冷される外側支持管によって支持される。絶縁スタンドオフは、長い同軸ラインの他端側にある、水冷される外側支持管のフランジと水冷される内側支持管のフランジとの間に配置され、かつ高電圧真空フィードスルーとして作用する。イオン源からイオンビームを受け取るビームラインアセンブリは、選択されたイオンを選択的に通過させる質量分析器と、ビームラインアセンブリからイオンビームを受け取るエンドステーションとを含む。
【0019】
従って、本発明のイオン注入システムは、引出電極用マニピュレーター・システムを含むイオンビーム源と、同軸配置された支持管システムの内側支持管によって支持される抑制電極と、同軸配置された支持管システムの外側支持管によって支持されている接地電極と、高電圧絶縁スタンドオフが前記同軸配置された支持管システムの遠方端に位置して、前記支持管システムを機械的に支持し、かつ高電圧真空フィードスルーとして作用する高電圧インシュレータリングと、選択されたイオンを選択的に通過させる質量分析器を含み、前記イオンビーム源からイオンビームを受け入れるビームラインアセンブリと、該ビームラインアセンブリからイオンビームを受け入れるエンドステーションとを含んでいることを特徴とする。
【0020】
前述しかつ関連した目的を達成するために、本発明は、以下で十分に記載され、かつ特に特許請求の範囲に記載された特徴を有する。以下の記載及びこれに伴う図面は、本発明の詳細な説明の実施形態を開示する。これらの実施形態は、例示的なものであり、本発明の原理のために用いられる種々の方法におけるいくつかの例を示すものである。本発明の他の目的、利点、及び新規な特徴は、図面と関連して考慮するとき、本発明の以下の詳細な記述から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0021】
本発明の引出電極用マニピュレーター・システムは、絶縁スタンドオフとしての高電圧インシュレータリングが、同軸配置された支持管システムの遠方端に配置され、支持管システムを機械的に支持し、かつ高電圧真空フィードスルーとして作用するので、メンテナンスの回数を少なくかつ故障を少なくすることができる。
【0022】
また、本発明のイオン注入システムは、高電圧絶縁スタンドオフが同軸配置された支持管システムの遠方端に位置して、支持管システムを機械的に支持し、かつ高電圧真空フィードスルーとして作用する高電圧インシュレータリングを設けたので、イオン源に近くから高電圧の絶縁スタンドオフ及び高電圧フィードスルーを取り除くことにより、インシュレータリングの絶縁表面に蒸気が到達して汚染しかつ被覆する可能性を大いに減少させることができる。
【0023】
また、2つの同軸配置された支持管に形成される長く狭い空間(ギャップ)は、インシュレータリングの絶縁表面が汚染しかつ被覆する可能性を減少させるとともに、この空間が保護的ギャップとして、インシュレータリング内に電界を発生させ、絶縁材料内でスパークする危険性を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、従来の引出電極装置の断面図である。
【図2】図2は、本発明の1つの実施形態に従う引出電極用マニピュレータの断面図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態に従う引出電極用マニピュレータの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に従うイオン注入システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、分離した絶縁スタンドオフを用いるイオン注入システムに用いられる改良した引出電極用マニピュレータ・システム及び方法を開示する。特に、本発明のシステム及び方法は、絶縁スタンドオフのメンテナンス回数を少なくすると共に、イオン注入システムに用いられるイオンビームを有効に引き出す。従って、本発明は、図面を参照して説明されるであろう。ここで、同等の参照番号は、同等の要素を示すために用いられる。これらの構成の記載は、単に説明のためであり、制限的な意味に解釈されるべきではない。
【0026】
以下の記載は、説明のためであり、種々の特定の詳細は、本発明の理解を完全にするために説明される。当業者であれば、本発明は、これらの特定の詳細なしで、実施できることが明らかであろう。
【0027】
図2を参照すると、図面では、典型的な引出電極用マニピュレータ・システム200の構成要素を単純化した断面概略図が示されている。ここで、本発明の1つ以上の構成が実現される。このシステム200は、例えば、1〜100keVの範囲にあるイオンビームを作り出すように図示されているが、当業者であれば、他の多くの電極インシュレータ配置が用いられることが明らかであろう。システム200は、イオン源前面プレート204、及び出口スリット206を有するイオン源202を含んでいる。当業者には良く知られているように、イオン源202は、例えば、プラズマ発生部品、陰極、フィラメント、陽極、反射電極、ガス供給源、イオン源マグネット部品、及びイオン引出電極/抑制電極アセンブリを含むことができる。
【0028】
イオンビーム208(例えば、単一の破線で簡単に示されている)は、電極204によってイオン源202から引き出される。このイオン源202は、マニピュレータ・システム全体より上位の、0.5〜100KVの引出し電源によって、通常、正にバイアス(正のイオンを引き出すため)されている。また、抑制電極210は、数KVによって接地電極212及び全体のマニピュレータ・システムに対して負にバイアスされている。これにより、複数の電子を反発させる。そうでないと、正にバイアスされたイオン源202に向けて加速されることになる。イオンビームは208は、出口スリット206から引き出される。更に、イオンビーム208は、正のx方向226にある接地電極212に衝突する。いくつかの実施形態において、イオン源202と、移動可能な抑制電極210及び接地電極212との間のギャップ218が調整される。
【0029】
この実施形態では、ギャップ218の寸法は、例えば、高エネルギーのビームに対しては増加し、低エネルギーのビームに対しては減少させることができる。イオン源開口206は、上述した引出しギャップ218と言われる距離によって、抑制電極開口213を有する抑制電極210から調整可能に間隔を置いて配置される。抑制電極210及び接地電極212は、例えば、可変開口電極(VAE)として当業者に知られる、可変の抑制開口213及び接地開口215を調整するために、各々2つ以上の分離プレートを更に含むことができる。接地電極212は、この中に接地電極開口215を有し、図示するように、抑制電極210の他端側に配置される。そして、接地電極212は、抑制電極210に対して固定位置に離間配置されている。
【0030】
抑制電極210及び接地電極212は、機械的に動くマニピュレータ228によって調整することができる。その結果、これらの開口213,215は、y方向230に沿ってイオン源開口206に対して整列される。変形例として、イオン源開口206と抑制電極開口313は、セットアップ中にのみ整列することができる。しかし、当業者には、機械的に動くマニピュレータ228が、y軸方向230にある全ての開口に対するアクティブ制御として利用できることがわかるであろう。
【0031】
イオン源開口206、抑制電極210、及び接地電極212は、互いに電気的に絶縁され、各々は、それぞれ独立した電源232,234,236に接続されている。電源232,234,236及びコントローラ238の各々は、中央プロセッサに接続され、このプロセッサは、電極204,210,212、イオン源アーク室、及びギャップ218のそれぞれの電位を制御するための制御信号を発生させる。こうして、測定されたイオンの品質、例えば、発散、及びビーム透過が、フィードバックループにおいて、イオン発生におけるパラメータ、例えば、ギャップ218、開口(213,215)の整列、電極(204,210,212)に印加される電位等を制御するために用いることができる。
プロセッサは、例えば、測定されたビーム発散に従ってイオンビームの引出パラメータを制御するために制御信号を発生させることができる。
【0032】
接地電極212と抑制電極210は、同軸配置されかつ水冷された支持管246,248によって支持される。同軸配置された支持管の他端に、高電圧インシュレータリング211があり、このインシュレータリング211は、外側支持管246に対して内側支持管248を、また、高電圧真空フィードスルーを機械的に支持するように機能する。2つの同軸配置された支持管の長く狭い空間は、インシュレータリング211の絶縁表面に蒸気が到達して汚染しかつ被覆する可能性を大いに減少させるのに役立つ。また、同軸配置された支持管間の長く狭いギャップは、インシュレータリング211内に電界を発生させ、絶縁材料内でスパークする危険レベルに到達する前に、スパーク用の保護的ギャップとして作用する。
【0033】
2つの支持管246,248は、支持管長さの熱膨張の影響を最小にするために水冷される。支持管の熱膨張は、2つの電極、即ち、接地電極212と抑制電極213の相対的な整列に影響を与えるからである。
【0034】
図3を参照すると、接地電極312及び抑制電極310は、同軸配置されかつ水冷された支持管346,348によって支持されている。この支持管346,348は、インシュレータリング211と支持管246,248の間に配置されたOリング250,251を用いて絶縁スタンドオフ311を挟持する。これにより、汚染物質が絶縁支持体としての絶縁スタンドオフ311を被膜するのを防止する。
【0035】
発明者は、本発明の重要な構成が、高電圧インシュレータリング211が引出電極用マニピュレータ支持体の外側にあることであると認識している。図3に示されたアプローチは、従来の図1及び他の公知システムに示されたアプローチよりもインシュレータを保護することに関してより有効である。
【0036】
図4は、典型的なイオン注入システム400を示し、ここで、システム400は、基板405の単一走査または多重走査でイオンビーム410を走査するように作動することができる。上述したように、本発明の種々の構成は、図4の典型的なシステム400に制限されることなく、これを含むイオン注入システムのいずれの形式とも関連して実現することができる。
【0037】
典型的なイオン注入システム400は、ターミナル412、ビームラインアセンブリ414、及びエンドステーション416を含み、このエンドステーションは、イオンビーム410が加工物の位置445に向けられる処理室436を形成する。ターミナル412内のイオン源420は、電源422から電力が供給され、ビームラインアセンブリ414に引き出されたイオンビーム410を導く。そして、このイオン源420は、イオン源室からイオンを引き出すために、1つ以上の引出電極(図示略)を含み、これにより、引き出されたイオンビーム410をビームラインアセンブリ414の方向に向ける。引出電極用マニピュレータ・システム200は、上述において詳しく論じた。
【0038】
ビームラインアセンブリ414は、例えば、イオン源420近くの入口及び分析開口432を伴う出口とを有するビームガイド430と、引き出されたイオンビーム410を受け入れる質量分析器434とを含んでいる。質量分析器434は、双極磁界を作り出し、分析開口432を介して、適当な質量又はその範囲(例えば、質量分析されたイオンビームは、所望の質量範囲のイオンを有する。)のイオンのみを通過させる。走査システムは、加工物405を横切る広いイオンビーム410を走査し、例えば、静電システム、磁気システム、機械システム、及び同等システムとして構成することができる。イオンビーム410は、加工物走査システム436上の基板405に供給される。ビームラインアセンブリ414に関連した種々のビーム形成及び整形構造体(図示略)を更に設けることができ、これにより、例えば、イオンビーム410が、ビーム経路に沿って、加工物走査システム436上に支持された基板405に輸送されるとき、広いイオンビーム410を維持しかつ制限する。
【0039】
イオンビーム410は、ビームラインアセンブリ414及び関連する分析磁石434内に入る。この質量分析磁石434は、約90°の角度に形成され、磁界がその中に発生する。イオンビーム410が磁石434内に入ると、不適当な電荷質量比のイオンは排除されるように磁界によって相応に曲げられる。特に、電荷質量比があまり大きいまたはあまり小さいイオンが、磁石434の側壁内へ偏向する。このように、磁石434は、所望の電荷質量比を有するイオンのみがイオンビーム410内に留まって、これらのイオンが完全に横切れるようにする。
【0040】
制御電子機器またはコントローラ238(図2)は、他の特性の中で、磁界の強さ及び方向を調整できる。磁界は、例えば、磁石434の界磁磁界を通して流れる電流の量を調整することによって制御される。コントローラ238は、プログラムで制御できるマイクロコントローラ、プロセッサおよび/またはシステム400(例えば、オペレータにより、以前または現在獲得されたデータおよび/またはプログラム)の全体制御を行う他の演算機構を含むことができる。
【0041】
また、ビームラインアセンブリ414は、加速器/減速器を含み、例えば、イオンビーム410を集束、偏向および/または浄化するとともに、イオンを加速および/または減速するために配置されかつバイアスされた複数の電極を含んでいる。
これらの電極は、イオンビームを偏向させ、かついかに詳述するように、イオンビーム410から汚染された粒子を分離することによってビーム410を浄化する。
【0042】
さらに、イオンビームが他の粒子と衝突してビームの完全性が低下することから、ビームイオン源420からエンドステーション416に向かうビームラインアセンブリ414全体を、1つ以上のポンプ(図示略)によって排気する。加速器/減速器の下流には、エンドステーション416があり、このエンドステーションは、ビームラインアセンブリ414から質量分析されたイオンビーム410を受け入れる。エンドステーション416は、1つの支持体又はエンドエフェクタ440を含む走査システム436を含み、このエンドエフェクタ上に加工物405が取り付けられ、これにより加工物を選択的に移動させる。エンドエフェクタ440及び加工物405は、イオンビーム410の−y方向に対して略垂直(即ち、xz平面)なターゲット平面に配置される。
【0043】
ビーム電流は、システム400の多くの構成要素によって影響を受ける。例えば、ビーム電流は、引出電極304上でバイアスされ、抑制電極310及び接地電極312は、ビーム電流に影響を与える。従って、ビーム電流は、1つ以上の各引出電圧源332及び抑制電圧源33の各々を選択的に制御することによって調整することができる。引出電極304及び抑制電極310の結合した組合せは、ここに論じられているが、本発明は、引出電極304及び制御電極310の分離した組合せを考える。この分離した組合せは、それぞれの電極に印加される各電圧を変更できるように、独立して変化できる各電源を有している。更に、接地電極312は、一般的に、接地電位に等しいかまたは異なる他の電極304,312から異なる電圧に調整される。
【0044】
本発明は、好ましい実施形態または他の実施形態に関して記載してきたが、本明細書と添付された図面とを読んで理解すると、他の同業者にも同等の変更や修正を見出すことができるであろう。特に上述の構成要素(アセンブリ、装置、回路等)によって実行される種々の機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」に対する参照を含めて)は、他に表示されていなければ、たとえ開示された構成に構造的に同等でなくても、本発明のここで図示された例示的実施においてその機能を果たすものであれば、説明された構成要素の特定された機能を実行する(即ち、機能的に同等である)いずれかの構成要素に相当するものと意図されている。
【0045】
更に、本発明の特定の特徴が幾つかの実施形態の内のただ一つに対して開示されてきたものであるが、そのような特徴は、いずれかの或る又は特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における一つ以上の特徴と組み合わせられるものである。
【符号の説明】
【0046】
200、300:マニピュレータ・システム 202:イオン源 208:イオンビーム 210、310:抑制電極 211、311:インシュレータリング 212、312:接地電極 238:コントローラ 246、346:外側支持管 248、348:内側支持管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸配置された支持管システムの内側支持管によって支持される抑制電極と、
前記同軸配置された支持管システムの外側支持管によって支持されている接地電極と、
前記同軸配置された支持管システムの遠方端に位置して、前記支持管システムを機械的に支持し、かつ高電圧真空フィードスルーとして作用する高電圧インシュレータリングとを含むことを特徴とする引出電極用マニピュレーター・システム。
【請求項2】
前記同軸配置された支持管システムにおける前記内側支持管及び前記外側支持管は、熱膨張を最小にするために水冷されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
高電圧のインシュレータは、1つの電極を機械的に支持しかつ高電圧真空フィードスルーとして作用することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項4】
絶縁スタンドオフは、セラミックとプラスチックを含む材料から作られることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
水冷される前記内側支持管は、ステンレス鋼、アルミニウム、モリブデン、及び耐熱性金属のいずれかの材料から作られることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
水冷される前記外側支持管は、ステンレス鋼、アルミニウム、モリブデン、及び耐熱性金属のいずれかの材料から作られることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項7】
引出電極用マニピュレーター・システムを含むイオンビーム源と、
同軸配置された支持管システムの内側支持管によって支持される抑制電極と、
同軸配置された支持管システムの外側支持管によって支持されている接地電極と、
高電圧絶縁スタンドオフが前記同軸配置された支持管システムの遠方端に位置して、前記支持管システムを機械的に支持し、かつ高電圧真空フィードスルーとして作用する高電圧インシュレータリングと、
選択されたイオンを選択的に通過させる質量分析器を含み、前記イオンビーム源からイオンビームを受け入れるビームラインアセンブリと、
該ビームラインアセンブリからイオンビームを受け入れるエンドステーションとを含んでいることを特徴とするイオン注入システム。
【請求項8】
前記同軸配置された支持管システムにおける前記内側支持管及び前記外側支持管は、熱膨張を最小にするために水冷されることを特徴とする請求項7記載のイオン注入システム。
【請求項9】
高電圧絶縁スタンドオフは、1つの電極を機械的に支持しかつ高電圧真空フィードスルーとして作用することを特徴とする請求項7記載のイオン注入システム。
【請求項10】
前記絶縁スタンドオフは、水冷される前記内側支持管が貫通する中央開口を有する円筒形状であることを特徴とする請求項7記載のイオン注入システム。
【請求項11】
絶縁スタンドオフは、セラミックの材料から作られることを特徴とする請求項7記載のイオン注入システム。
【請求項12】
水冷される前記内側支持管は、ステンレス鋼、アルミニウム、モリブデン、及び耐熱性金属のいずれかの材料から作られることを特徴とする請求項7記載のイオン注入システム。
【請求項13】
水冷される前記外側支持管は、ステンレス鋼、アルミニウム、モリブデン、及び耐熱性金属のいずれかの材料から作られることを特徴とする請求項7記載のイオン注入システム。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−80446(P2010−80446A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217110(P2009−217110)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(500266634)アクセリス テクノロジーズ インコーポレーテッド (101)
【Fターム(参考)】