説明

張力変動吸収装置、ベルト駆動装置、ベルトユニット及び画像形成装置

【課題】無端状のベルトの安定搬送を実現しつつ、外力によるベルト搬送速度の変動を抑制し得る張力変動吸収装置、並びに、これを用いたベルト駆動装置、ベルトユニット及び画像形成装置の提供。
【解決手段】無端状のベルトと接触しこれを押し込むとともに従動回転する押込ローラ102と、その同軸上に固定され、慣性モーメントを与えるフライホイール124と、押込ローラ102の軸方向両端に位置し、押込ローラ102に固定された内輪104及び内輪104を回転自在に支持する外輪106からなる軸受110と、外輪106を前記ベルトに向けて押し込むように支持する支持部材112と、押込ローラ102の軸方向両端に位置する2つの支持部材112同士または外輪106同士を、押込ローラ102の前記ベルトとの接触側と反対側で連結する連結部材122と、を備える張力変動吸収装置、並びにこれを備えたベルト駆動装置、ベルトユニット及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力変動吸収装置、ベルト駆動装置、ベルトユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルトの表面に転写した後、該中間転写ベルトと転写ローラとの圧接によるニップ内に記録部材を挿通させてこれに転写する画像形成装置において、用紙挿入及び排出時の中間転写ベルトの速度変動による像保持体から中間転写ベルトへの転写時のトナー像の乱れ、特に多色画像形成装置における色ズレの発生を抑制するべく、所定の慣性モーメントを有するテンションローラと、前記所定のばね定数を有して前記テンションローラを前記中間転写ベルトに押し込む前記弾性部材とを備えた張力変動吸収手段を設ける技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−268595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、無端状のベルトの安定搬送を実現しつつ、外力によるベルト搬送速度の変動を抑制し得る張力変動吸収装置、並びに、これを用いたベルト駆動装置、ベルトユニット及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の<1>〜<8>に示す本発明により達成される。
<1> 無端状のベルトと接触しこれを押し込むとともに従動回転する押込ローラと、
該押込ローラと同軸上に固定され、慣性モーメントを与えるフライホイールと、
前記押込ローラの軸方向両端に位置し、当該押込ローラに固定された内輪及び該内輪を回転自在に支持する外輪からなる軸受と、
該軸受の前記外輪を前記ベルトに向けて押し込むように支持する支持部材と、
前記押込ローラの軸方向両端に位置する2つの前記支持部材同士または前記外輪同士を、前記押込ローラの前記ベルトとの接触側と反対側で連結する連結部材と、
を備えることを特徴とする張力変動吸収装置。
【0006】
<2> 前記押込ローラの軸方向における前記内輪の両側に位置し、前記押込ローラに固定された環状の固定部材と、前記内輪とを固定することで、該内輪と前記押込ローラとが固定されていることを特徴とする<1>に記載の張力変動吸収装置。
【0007】
<3> 前記連結部材の軸方向における前記両支持部材の間に、前記押込ローラの周面と外周が接触して従動回転する支持ローラが回転自在に取り付けられてなることを特徴とする<1または2に記載の張力変動吸収装置。
【0008】
<4> 無端状のベルトと、該ベルトを回転駆動する駆動ローラと、前記無端状のベルトを張り渡す少なくとも1個以上の従動ローラと、前記ベルトに押込ローラが接触してこれを押し込む状態で配される<1>〜<3>のいずれかに記載の張力変動吸収装置と、を備えることを特徴とするベルト駆動装置。
【0009】
<5> 前記従動ローラの内の1個が、前記ベルトを介して加えられた外力を受容する受容ローラであることを特徴とする<4>に記載のベルト駆動装置。
【0010】
<6> 前記張力変動吸収装置が、前記ベルトの回転方向における前記受容ローラの上流かつ前記駆動ローラの下流の第1の領域と、前記受容ローラの下流かつ前記駆動ローラの上流の第2の領域の双方に、それぞれ配されてなることを特徴とする<5>に記載のベルト駆動装置。
【0011】
<7> <4>〜<6>のいずれかに記載のベルト駆動装置と、
表面にトナー像を保持し前記ベルトの外周面に接触して配置される像保持体に対向する位置に、前記ベルトの内周面側に設けられた転写手段と、
を備え、
前記像保持体表面のトナー像が、前記転写手段によって前記ベルトの外周面に転写されるように構成されてなることを特徴とするベルトユニット。
【0012】
<8> 像保持体と、該像保持体表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、複数のローラに張り渡された無端状の中間転写ベルトと、該中間転写ベルトの表面に前記像保持体表面に形成されたトナー像を転写する一次転写手段と、前記複数のローラの内の1つに前記中間転写ベルトを挟んで転写ローラが圧接され、前記中間転写ベルトの表面に形成されたトナー像を外部から供給される記録媒体に転写する二次転写手段と、を備え、
前記複数のローラの内、前記中間転写ベルトを挟んで前記転写ローラが圧接されるローラを受容ローラ、他の1つを駆動ローラ、さらに他の1つまたは2つを前記張力変動吸収装置における押込ローラ、そして残りの張架ローラを受容ローラ以外の従動ローラとする<4>〜<6>のいずれかに記載のベルト駆動装置によって前記中間転写ベルトを無端状のベルトとして駆動することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
<1>にかかる発明によれば、本構成を具備しない場合に比べて、無端状のベルトの安定搬送を実現しつつ、外力によるベルト搬送速度の変動を抑制し得る張力変動吸収装置を提供することができる。
【0014】
<2>にかかる発明によれば、本構成を具備しない場合に比べて、より安定した無端状のベルトの搬送を実現することができる。
【0015】
<3>にかかる発明によれば、本構成を具備しない場合に比べて、より一層安定した無端状のベルトの搬送を実現することができる。
【0016】
<4>にかかる発明によれば、本構成を具備しない場合に比べて、無端状のベルトの安定搬送を実現しつつ、外力によるベルト搬送速度の変動を抑制し得るベルト駆動装置を提供することができる。
【0017】
<5>にかかる発明によれば、無端状のベルトを介して受容ローラに加えられた外力によるベルト搬送速度の変動を抑制することができる。
【0018】
<6>にかかる発明によれば、本構成を具備しない場合に比べて、無端状のベルトを介して受容ローラに加えられた外力によるベルト搬送速度の変動をより一層抑制することができる。
【0019】
<7>にかかる発明によれば、本構成を具備しない場合に比べて、無端状のベルトの安定搬送を実現しつつ、外力によるベルト搬送速度の変動を抑制し得るベルトユニットを提供することができる。
【0020】
<8>にかかる発明によれば、本構成を具備しない場合に比べて、受容ローラと転写ローラとの間への記録媒体の進入や排出により中間転写ベルトに外力が加えられた場合にも像の乱れの少ない画像を形成し得る画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のベルト駆動装置を適用可能な画像形成装置の一例であるタンデム型のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1中の各作像ユニットの概略構成図である。
【図3】外力を受けた際の図1に示す画像形成装置の搬送系における作用を説明するための、搬送系のみを抜き出した概略構成図である。
【図4】本発明の例示的一態様である第1の実施形態のベルト駆動装置を示す概略構成図である。
【図5】図4に示す第1の実施形態のベルト駆動装置において、受容ローラの回転を規制する外力を受けた際の各部材の動きを示す概略説明図である。
【図6】図4に示す第1の実施形態のベルト駆動装置において、受容ローラの回転を規制する外力を受けた際の受容ローラ下流に位置する張力変動吸収装置周辺における各部材の動きを示す概略説明図である。
【図7】図4に示す第1の実施形態のベルト駆動装置における張力変動吸収装置のみを抜き出した拡大側面図である。
【図8】図7における押込ローラの軸方向左端近傍の拡大断面図である。
【図9】図4に示す第1の実施形態のベルト駆動装置における張力変動吸収装置の中間転写ベルトによる押込み力が作用した状態を示す概略図である。
【図10】図4に示す第1の実施形態のベルト駆動装置における張力変動吸収装置から連結部材を除した構成の張力変動吸収装置において図9同様の押込み力が作用した状態を示す概略図である。
【図11】図4に示す第1の実施形態のベルト駆動装置における張力変動吸収装置から固定部材を除した構成の張力変動吸収装置において図9同様の押込み力が作用した状態を示す概略図である。
【図12】本発明の例示的一態様である第2の実施形態のベルト駆動装置における張力変動吸収装置のみを抜き出した拡大側面図である。
【図13】図12における押込ローラの軸方向左端近傍の拡大断面図である。
【図14】本発明の例示的一態様である第3の実施形態のベルト駆動装置における張力変動吸収装置のみを抜き出した拡大側面図である。
【図15】図14における押込ローラの軸方向左端近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のベルト駆動装置を適用可能な画像形成装置を例示した上で、本発明の張力変動吸収装置及びベルト駆動装置の実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0023】
[1.画像形成装置の実施形態]
図1は、本発明のベルト駆動装置を適用可能な画像形成装置の一例であるタンデム型のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。ただし、図1において、本発明に特徴的な構成である張力変動吸収装置は描かれていない。この画像形成装置は、基本構成として、電子写真方式により画像情報に基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色成分の未定着トナー画像をそれぞれ形成する4つの作像ユニット48Y,48M,48C,48Kと、この各作像ユニット48(48Y,48M,48C,48K)で形成される各未定着トナー画像が積層転写される中間転写ベルト90と、この中間転写ベルト90の表面に積層転写された未定着トナー画像を用紙68に転写する二次転写装置60と、未定着トナー画像が転写された用紙68を熱および圧力により定着させる定着装置62と、から基本的に構成されている。図中の矢付一点鎖線は、用紙68の搬送経路を示す。用紙68は、給紙部(図示省略)から1枚ずつ供給されるようになっている。
【0024】
作像ユニット48Y、48M、48C、48Kは、水平方向にそって一定の間隔をあけた並列状態で配設されており、そのいずれも同様の構成からなるものである。
【0025】
図2は、これら各作像ユニット48(48Y,48M,48C,48K)の概略構成図である。作像ユニット48は、基本構成として、一様帯電後に像光を照射することにより表面に潜像が形成される円筒状の感光体ドラム2を備えており、この感光体ドラム2の周囲に、感光体ドラム2の表面を一様に帯電させる帯電装置4と、感光体ドラム2に像光を照射して表面に潜像を形成する露光装置6と、感光体ドラム2表面の潜像にトナーを選択的に転移させてトナー画像を形成する現像装置8と、感光体ドラム2表面に形成されたトナー画像を中間転写ベルト90に転写する一次転写装置14と、感光体ドラム2表面に残留したトナーを回収するクリーニング装置22と、感光体ドラム2表面に残留した電位を除去する除電ランプ12を備える。
【0026】
感光体ドラム2は、全体としてドラム状に形成されたもので、その外周面(ドラム表面)に感光層を有している。この感光体ドラム2は図2の矢印A方向に回転可能に設けられている。
【0027】
感光体ドラム2は、少なくとも潜像(静電荷像)が形成される機能を有する。静電潜像保持体としては、電子写真感光体が好適なものとして挙げられる。感光体ドラム2は、円筒状の導電性の基体外周面に有機感光層等を含む感光層が形成されてなる。この感光層は一般的に、基体表面に必要に応じて下引き層が形成され、さらに電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とがこの順序で形成されたものである。電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であってもよい。
【0028】
これらは、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個の層(電荷発生層、電荷輸送層)に含有させて積層した積層型感光体であるが、電荷発生物質及び電荷輸送物質の両方を同一の層に含む単層型感光体であってもよく、好ましくは積層型感光体である。また、下引き層と感光層との間に中間層を有していてもよい。また、有機感光層に限らずアモルファスシリコン感光膜等他の種類の感光層を使用してもよい。
【0029】
帯電装置4は、感光体ドラム2の表面を一様に帯電するものである。帯電装置4としては、例えば、導電性または半導電性の接触型帯電器である帯電ローラが用いられるが、コロトロンなどの非接触型帯電器を用いてもよい。帯電ローラを用いた場合には、感光体ドラム2に対し、直流電流を印加するか、交流電流を重畳させて印加してもよい。このような帯電装置4により、感光体ドラム2との接触部近傍の微小空間で放電を発生させることにより感光体ドラム2表面を帯電させる。
【0030】
帯電手段によって感光体ドラム2の表面は、通常、−300V〜−1000Vに帯電される。また、前記の導電性または半導電性の帯電ローラは単層構造あるいは多重構造でもよい。さらに、帯電ローラの表面をクリーニングする機構を設けてもよい。
【0031】
露光装置6は、帯電装置4によって一様に帯電された感光体ドラム2に像様の光Xを照射することにより、静電潜像を形成するものである。露光装置6としては、特に制限はなく、例えば、静電潜像保持体表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッター光等の光源を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。
【0032】
現像装置8は、静電潜像保持体上に形成された潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する機能を有するものである。現像装置8としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、静電荷像現像用のトナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤が収容され、当該磁性キャリアによって形成された磁気ブラシにより、トナーを感光体ドラム2に付着させる現像器等が挙げられる。現像の際、感光体ドラム2には、通常直流電圧が使用されるが、さらに交流電圧を重畳させて使用してもよい。
【0033】
作像ユニット48Yの現像装置8にはイエロートナー、作像ユニット48Mの現像装置8にはマゼンタトナー、作像ユニット48Cの現像装置8にはシアントナー、作像ユニット48Kの現像装置8にはブラックトナーが、それぞれ収容される。
【0034】
一次転写装置14は、感光体ドラム2との間で中間転写ベルト90を挟持しつつ、感光体ドラム2表面に形成されたトナー像を無端状の中間転写ベルト90の外周面に転写(一次転写)するものである。
【0035】
一次転写装置14としては、例えば、中間転写ベルト90の裏側からトナー像のトナーとは逆極性の電荷を与え、静電気力によりトナー像を中間転写ベルト90表面に転写するもの、あるいは中間転写ベルト90の裏面に直接接触して転写する導電性または半導電性のローラ等を用いた転写ローラ及び転写ローラ押圧装置を用いればよい。
【0036】
転写ローラには、感光体ドラム2に付与する転写電流として、直流電流を印加してもよいし、交流電流を重畳させて印加してもよい。転写ローラは、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、周速等に応じて、各種条件乃至諸元を適宜設定すればよい。また、低コスト化のため、転写ローラとして単層の発泡ローラ等が好適に用いられる。
【0037】
クリーニング装置22は、転写後に感光体ドラム2表面に残ったトナー等をクリーニング(除去)するものである。クリーニング装置22としては、本例においてはブレードクリーニング方式を採用しているが、感光体ドラム2表面の残留トナーを清掃し得るものであれば、ブラシクリーニング方式、ローラクリーニング方式を採用したもの等、適宜選定して差し支えない。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。中でも、耐摩耗性に優れていることから、特にポリウレタン弾性体を用いることが好ましい。
【0038】
なお、転写効率の高いトナーを使用する場合には、クリーニング装置22が省略された態様であっても構わない。
【0039】
それぞれの作像ユニット48において、感光体ドラム2表面が、帯電装置4によって一様に帯電され、露光装置6で画像情報に基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色成分の潜像が形成され、これに応じてそれぞれの色のトナーが収容された現像装置8により未定着トナー画像が各感光体ドラム2に形成される(感光体ドラム2を除く以上の構成が、本発明に言う「トナー像形成手段」の一例と言える。)。それぞれの感光体ドラム2表面に形成された各色の未定着トナー像は、一次転写装置14によって順次中間転写ベルト90の表面に積層転写される構成となっている。
【0040】
中間転写ベルト90は、図示しない回転駆動源により回転駆動する駆動ローラ52と、従動回転して中間転写ベルト90を支持する従動ローラ54と、二次転写装置60における受容ローラ64と、図1においては不図示の後述する1個または2個の押込ローラと、からなる複数のローラに張架されるとともに、駆動ローラ52と従動ローラ54との間で、前記各作像ユニット48における感光体ドラムの一次転写位置を通過する状態で配設されている。中間転写ベルト90は駆動ローラ52によって矢印B方向に周動回転する。
【0041】
中間転写ベルト90としては、特に制限はなく、従来公知のものが問題なく使用可能であるが、例えば、ベルト基材表面に表面層を積層形成した2層構造のものが使用される。
【0042】
中間転写ベルト90に用いられる材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンテレフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフロロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料等が挙げられるが、機械的強度の観点から熱硬化ポリイミド樹脂を用いた中間転写ベルトが好ましい。
【0043】
二次転写装置60は、中間転写ベルト90を挟むような状態で対向配設される受容ローラ64と二次転写ローラ66とでその主要部が構成されている。この二次転写ローラ66と中間転写ベルト90との間に形成されるニップ部に用紙68を挿通し、静電的作用を施すことで、中間転写ベルト90表面の未定着トナー画像を用紙68表面に転写するように構成されている。二次転写装置60としては、特に制限はなく、従来公知の構成を問題なく採用することができる。具体的には、既述の一次転写装置14と同様の構成の物を適用することができる。
【0044】
また、定着装置62は、記録媒体に転写されたトナー像を加熱、加圧あるいは加熱加圧等より定着するものである。本実施形態のような2ローラ方式の他、加熱側または加圧側がベルト状で他方がローラ状のベルト−ローラニップ方式、加熱側及び加圧側の双方ともベルト状の2ベルト方式等が挙げられる。ベルトについては、複数のローラでベルトを張架する方式の他、ベルトを張架せずに用いるフリーベルト方式も挙げられる。本発明においては、いずれの方式の定着装置であっても構わない。
【0045】
トナー像が転写されて最終的な記録画像が形成される用紙(記録媒体)68としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録媒体の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用される。
【0046】
このような基本構成からなる本例の画像形成装置では、次のようにしてカラー画像の形成が行われる。
【0047】
まず、各作像ユニット48において、各感光体ドラムに形成される4色の未定着トナー画像が、一次転写装置14の静電的な転写作用により中間転写ベルト90の表面に重ね合わせられるようにして順次一次転写される。
【0048】
中間転写ベルト90に転写されて担持された未定着トナー画像は、そのベルトの回転に伴って二次転写装置60を通過するように搬送されることにより用紙68に転写される。すなわち、中間転写ベルト90表面の未定着トナー画像は、受容ローラ64と二次転写ローラ66との間のニップ部に中間転写ベルト90とともに挿通される用紙68に接した状態で静電的に転写される。
【0049】
トナー画像が転写された用紙68は、二次転写装置60から排出されると、搬送ガイド58を経由して定着装置62により定着され、その後、系外に排出される。その結果、用紙68の片面に対してフルカラー画像が形成される。
【0050】
以上の如き、画像形成装置において、用紙68として厚紙が用いられた場合、矢付一点鎖線に示されるように用紙68が二次転写装置60に進入する際、その厚みに基づく抵抗により、中間転写ベルト90の矢印B方向への搬送、並びに、受容ローラ64の回転が規制される。すなわち、用紙68としての厚紙の進入は、本画像形成装置の搬送系に対して、受容ローラ64の回転を規制する外力となる。
【0051】
このような外力を受けた際の本画像形成装置の搬送系における作用を、図3を用いて説明する。図3は、図1に示す画像形成装置における搬送系のみを抜き出した概略構成図である。矢印C1方向から、二次転写ローラ66と中間転写ベルト90を挟んで対向配設される受容ローラ64との間に用紙68が進入する際(図1参照)、その厚みに基づく大きな抵抗を受けるため、中間転写ベルト90の矢印B方向への搬送、並びに、受容ローラ64の回転が規制される。
【0052】
受容ローラ64の回転が規制される中、駆動ローラ52はそのままの速度で回転駆動を続けるため、中間転写ベルト90の進行方向(矢印B方向)における、受容ローラ64の上流側であって駆動ローラ52の下流側の第1の領域D及び第1の領域D’において、中間転写ベルト90が弛緩し、受容ローラ64の下流側であって駆動ローラ52の上流側の第2の領域Eにおいて、中間転写ベルト90が緊張する。
【0053】
一方、矢印C2方向へ、二次転写ローラ66と中間転写ベルト90を挟んで対向配設される受容ローラ64との間から用紙68が排出される際(図1参照)、その厚みに基づく回転負荷の低下により、中間転写ベルト90の矢印B方向への搬送、並びに、受容ローラ64の回転が促進される。
【0054】
受容ローラ64の回転が促進される中、駆動ローラ52はそのままの速度で回転駆動を続けるため、中間転写ベルト90の進行方向(矢印B方向)における、受容ローラ64の上流側であって駆動ローラ52の下流側の第1の領域D及び第1の領域D’において、中間転写ベルト90が緊張し、受容ローラ64の下流側であって駆動ローラ52の上流側の第2の領域Eにおいて、中間転写ベルト90が弛緩する。
【0055】
この中間転写ベルト90の搬送速度の変動は、各作像ユニット48における感光体ドラムの一次転写位置でのトナー像の転写に影響し、像の乱れや色ズレの原因になる。本例において、本発明の張力変動吸収装置を中間転写ベルト90に適用することで、外力による影響を緩和している。
【0056】
当該張力変動吸収装置は、外力によって中間転写ベルト90が緊張あるいは弛緩する作用を利用する。そのため、当該張力変動吸収装置は、第1の領域D,D’及び第2の領域Eのいずれか、または双方に備えられればよいが、図1の画像形成装置においては、第1の領域D’にはタンデム状に作像ユニット48が配置されているため、実質的には第1の領域D’に設けることはできない。よって、かかる張力変動吸収装置は、本例において、第1の領域D及び第2の領域Eのいずれか、または双方に備えられる。
【0057】
[2.ベルト駆動装置の実施形態]
以下、本発明の張力変動吸収装置の例示的態様を挙げ、ベルト駆動装置の実施形態を示すことで、本発明をより具体的に説明する。
【0058】
(第1の実施形態)
図4に、本発明の例示的一態様である第1の実施形態のベルト駆動装置の概略構成図を示す。図4は、図1に示す画像形成装置における搬送系のみを抜き出し、これに張力変動吸収装置の構成を加えたものである。本実施形態は、図1の画像形成装置における第1の領域D及び第2の領域Eの双方に張力変動吸収装置を備えた例である。なお、図4においては、本実施形態に特徴的な構成が一部欠けた状態で図示されているが、当該構成については後に明らかにする。
【0059】
図4に示されるように、図1の画像形成装置における第1の領域Dには張力変動吸収装置100Dが、同第2の領域Eには張力変動吸収装置100Eが、それぞれ備えられている。張力変動吸収装置100D及び張力変動吸収装置100Eは、同一の構成であり、区別のために、同一の部材に対して数字の番号の末にアルファベットのDまたはEを付した符号を与えている。以降、張力変動吸収装置100D及び張力変動吸収装置100Eに共通する事項については、符号の末のアルファベットを除して説明する(例えば、「張力変動吸収装置100」と標記した場合には、「張力変動吸収装置100D及び張力変動吸収装置100E」を意味する。)。
【0060】
張力変動吸収装置100は、中間転写ベルト90と接触しこれを押し込むとともに従動回転する押込ローラ102と、押込ローラ102と同軸上に固定され、慣性モーメントを与える不図示のフライホイールと、押込ローラ102の軸方向両端に位置し、押込ローラ102を回転自在に支持する軸受110と、軸受110を支持する支持部材112とからなり、装置筺体に固定されたばね台座116に一端が固定された弾性部材であるばね114によって、支持部材112を中間転写ベルト90に向けて(図示の両矢印におけるmo方向に)押し込むように構成されている。
【0061】
また、軸受110は、押込ローラ102を支持する内輪104、及び、内輪104との間にベアリング108を介すことにより内輪104を回転自在に支持する外輪106からなる。
【0062】
一方、中間転写ベルト90は、駆動ローラ52と、従動ローラ54と、押込ローラ102Dと、受容ローラ64と、押込ローラ102Eと、からなる複数のローラに張り渡された状態になっている。
【0063】
押込ローラ102Dに巻き付いた部位の中間転写ベルト90には、回転方向(矢印B方向)上流側に生ずる張力t1及び下流側に生ずる張力t2が作用しており、それらが合成した垂直力として、周内方向に押し込まれる力N(図示の両矢印におけるmi方向に)が押込ローラ102Dに作用しており、ばね114Dによるmo方向への押圧とバランスが取られている。
【0064】
また、押込ローラ102Eに巻き付いた部位の中間転写ベルト90には、回転方向(矢印B方向)上流側に生ずる張力t3及び下流側に生ずる張力t4が作用しており、それらが合成した垂直力として、周内方向に押し込まれる力N’(図示の両矢印におけるmi方向に)が押込ローラ102Eに作用しており、ばね114Eによるmo方向への押圧とバランスが取られている。
【0065】
本実施形態のベルト駆動装置は、駆動ローラ52の回転駆動によって中間転写ベルト90が矢印B方向に回転する。この状態で、二次転写装置60における受容ローラ64と二次転写ローラ66との間のニップ部に用紙68が矢印C1に示すように進入する(図1、図3参照)等、受容ローラ64の回転を規制する外力が加わると、中間転写ベルト90の進行方向(矢印B方向)における、受容ローラ64の上流側であって駆動ローラ52の下流側に位置する張力変動吸収装置100Dの前後において、張力t1及び張力t2の低下が起こり、その合成力である垂直力Nも低下して、図5に示すように中間転写ベルト90が弛緩し、押込ローラ102Dを含む張力変動吸収装置100D全体が矢印mo方向へ移動する。
【0066】
また、中間転写ベルト90の進行方向(矢印B方向)における、受容ローラ64の下流側であって駆動ローラ52の上流側に位置する張力変動吸収装置100Eの前後においては、張力t3及び張力t4の上昇が起こり、その合成力である垂直力N’も上昇して、図5に示すように中間転写ベルト90が緊張し、押込ローラ102Eを含む張力変動吸収装置100E全体が矢印mi方向へ移動する。
【0067】
ここで、図5は、本実施形態のベルト駆動装置において、受容ローラ64の回転を規制する外力を受けた際の各部材の動きを示す概略説明図である。図5中の破線は、外力を受ける前の各部材の位置を示すものである。
【0068】
図6に、本実施形態のベルト駆動装置において、受容ローラ64の回転を規制する外力を受けた際の受容ローラ64下流に位置する張力変動吸収装置100E周辺における各部材の動きを示す概略説明図である。図6中の破線は、外力を受ける前の各部材の位置を示すものである。
【0069】
受容ローラ64の回転を規制する外力を受けた際には、図6に示されるように、ベルト進行方向Bとは逆方向の張力変動ΔTが生じて中間転写ベルト90が緊張し、押込ローラ102Eを含む張力変動吸収装置100E全体が中間転写ベルト90の周内方向(矢印mi方向)へと移動して、中間転写ベルト90の道程が短縮する。すると、図6に示されるようにベルト進行方向Bとは逆方向の速度変動が発生し、押込ローラ102Eにその回転方向とは逆方向の回転加速度が発生する。すなわち、押込ローラ102Eはベルトから押込ローラ102Eの回転方向とは逆方向の摩擦力を受ける。そして、その反力として中間転写ベルト90に張力変動ΔTと逆方向の摩擦力f(図示)が発生し、張力増加分を打ち消すように作用する。張力変動吸収装置100Dについても同様に分析することができる。
【0070】
以上のように張力変動吸収装置100が作用することによって、受容ローラ64の回転を規制する外力が加えられた際の中間転写ベルト90の張力変動が吸収される。
【0071】
一方、本実施形態の構成によれば、二次転写装置60における受容ローラ64と二次転写ローラ66との間のニップ部に進入した厚紙の用紙68が矢印C2に示すように排出される(図1、図3参照)等、受容ローラ64の回転を促進する外力が加わると、中間転写ベルト90の進行方向(矢印B方向)における、受容ローラ64の上流側であって駆動ローラ52の下流側に位置する張力変動吸収装置100Dの前後において、張力t1及び張力t2の上昇が起こり、その合成力である垂直力Nも上昇して中間転写ベルト90が緊張する一方、受容ローラ64の下流側であって駆動ローラ52の上流側に位置する張力変動吸収装置100Eの前後においては、張力t3及び張力t4の低下が起こり、その合成力である垂直力N’も低下して中間転写ベルト90が弛緩する。
【0072】
即ち、用紙68が排出する際の受容ローラ64の回転を促進する外力が加わったとき、用紙68が進入する際の受容ローラ64の回転を規制する外力が加わった場合とは、受容ローラ64の上下流で緊張と弛緩が逆に作用し、張力変動吸収装置100D及び100Eもそれぞれ逆方向に移動して、用紙68が進入する際と同様に張力変動を打ち消す摩擦力が発生する。このように張力変動吸収装置100が作用することによって、受容ローラ64の回転を促進する外力が加えられた際の中間転写ベルト90の張力変動が吸収される。
【0073】
なお、本実施形態においては、張力変動吸収装置100D及び100Eの2つが、受容ローラ64の上下流にそれぞれ配されている態様を挙げて説明しているが、張力変動吸収装置は受容ローラ64上下流の少なくとも一方に配されていれば、ベルトの張力変動を吸収する作用乃至効果を期待できる。勿論、本実施形態のように上下流の双方(図3における領域D,D’及びE)に配されることが、ベルトの張力変動をより効果的に吸収できる点で好ましい。
【0074】
図6を用いて説明した、押込ローラ102Eと中間転写ベルト90との間に作用する摩擦力fは、以下の式(1)で表すことができる。
f=a/r2×I ・・・式(1)
【0075】
上記式(1)中、fは摩擦力、aは押込ローラ102Eの矢印mi方向への移動に基づく中間転写ベルト90の加速度、rは押込ローラ102Eのローラ径、Iは押込ローラ102Eの回転慣性とフライホイールの回転慣性からなる張力変動吸収装置100Eの回転慣性、をそれぞれ表す。
【0076】
上記式(1)において、加速度aは押込ローラ102Eの矢印mi方向への移動速度に依存し、短時間で大きく移動するほど大きな値になる。また、突発的な外乱を打消ために高速での応答が求められる。よって、張力変動吸収装置100Eには、その質量を小さくすることが求められる。
【0077】
また、張力変動を打ち消すに十分な摩擦力fを得るには、押込ローラ102Eのローラ径rが小さく、その回転慣性Iが大きいことが望まれる。よって、押込ローラ102Eとしてできるだけ小径のローラを用い、その端部に適切な慣性モーメントを与えるフライホイールを装着した構成にすることにより、高い張力変動吸収効果を実現することができる。
【0078】
上記式(1)において押込ローラ102Eの半径rは二乗された状態で分母に位置していることから、押込ローラ102Eの小径化は、理論上、小径化分の二乗の摩擦力増大効果が見込まれる(直接の影響)。また、半径rが小さくなると、張力変動吸収装置の質量が小さくなる分、矢印mi方向への移動が大きくなり、加速度aが大きくなる(加速度aへの影響)。特に、本実施形態では半径rがフライホイールの径より小さいため、張力変動吸収装置の回転慣性に占める割合が少なく、rが小さくなっても、張力変動吸収装置の回転慣性への影響が小さいがほぼ変わらない(張力変動吸収装置の回転慣性への影響)。以上の考察から、押込ローラの小径化は、小径化分の二乗よりも大きな摩擦力増大効果が見込まれる。
【0079】
以上、受容ローラ64の回転を規制する外力を受けた際の受容ローラ64下流に位置する張力変動吸収装置100Eについて述べたが、同上流に位置する張力変動吸収装置100Dについても同様に分析することができる。即ち、押込ローラ102Dについても、そのローラ径を極力小さくすることが望ましい。
【0080】
押込ローラ102は、摩擦力で張力変動分を打ち消すように作用するため、張力変動吸収効果を発現するに十分な圧力で中間転写ベルト90を押し込むことが求められる。そのため、そのローラ径が小さいとその剛性が確保し辛く、もしも曲げ変形が生じればベルトの安定走行のための支持機能が損なわれ、ベルトの蛇行やしわが生じたり、フライホイール偏心による慣性変動外乱などが生じたりといった問題が発生する懸念がある。
【0081】
なお、図5及び図6においては、図示の便宜と説明の容易化を図る意図で、押込ローラ102の変位を若干大袈裟に描いている。しかし、押込ローラ102の変位は、主として用紙68の厚みによってもたらされるので、より微視的な変位の場合を含むものである。
【0082】
図7に、本実施形態のベルト駆動装置における張力変動吸収装置のみを抜き出した拡大側面図を示す。当該図7は、図4に示された張力変動吸収装置100を抜き出して、中間転写ベルト90の回転方向(矢印B方向)の上流側から見た側面図である。図7に示された張力変動吸収装置100は、図4において省略された本実施形態に特徴的な構成を含んで描かれている。
【0083】
なお、本実施形態において、領域Dに配された張力変動吸収装置100Dと、領域Eに配された張力変動吸収装置100Eとは共通するため、両者区別することなく説明する(以降の実施形態においても同様。)。
【0084】
図7に示される張力変動吸収装置100は、当該図では省略された中間転写ベルト90と矢印C側の面で接触しこれを押し込むとともに従動回転する押込ローラ102の軸方向両端に、押込ローラ102を回転自在に支持する軸受110,110’(図7においては支持部材112,112’の内側に位置するため図面上には現れていない。)と、軸受110,110’を支持する支持部材112,112’とが位置し、弾性部材であって装置筺体に固定されたばね台座116,116’に一端が固定されたばね114,114’によって、支持部材112,112’を中間転写ベルト90に向けて(図4の両矢印におけるmo方向に)押し込むように構成されている。また、押込ローラ102の一端には、慣性モーメントを与えるフライホイール124が、押込ローラ102と同軸上に固定されている。
【0085】
さらに、押込ローラ102の軸方向両端に位置する支持部材112と支持部材112’とが連結部材122によって、押込ローラ102の中間転写ベルト90との接触側と反対側で連結されている。本実施形態において、連結部材122は装置全体の軽量化のためにワイヤを用いている。ただし、ワイヤに代えて、シャフト状部材や梁状部材を用いても構わない。
【0086】
連結部材の材質としては、ワイヤの場合、鉄、銅、アルミニウムなどの金属、ステンレス等の合金、これら金属や合金の表面をメッキしたワイヤ等の金属系のワイヤが好ましく用いられるが、繊維を撚った糸や紐、樹脂製の糸や紐等であっても問題無い。シャフト状部材や梁状部材の場合には、ワイヤ同様の金属や樹脂の物が好適である。
【0087】
図8に、図7における押込ローラ102の軸方向左端近傍の拡大断面図を示す。なお、本実施形態において、押込ローラ102の軸方向両端の構成は、フライホイール124を除き、左右対称であって基本的に同一なので、図8を用いて説明する以下の構成については、左端のみならず右端近傍についても同様である。
【0088】
図7及び図8に示されるように、軸受110は、押込ローラ102を環で支持する内輪104、及び、内輪104との間にベアリング108を介すことにより内輪104を回転自在に支持する外輪106からなる。
【0089】
さらに、押込ローラ102の軸方向における内輪104の両側には環状の固定部材118,120が配されている。この固定部材118,120の内周には雌ねじが設けられ、押込ローラ102の軸方向における内輪104の両側に設けられた雄ねじにそれぞれねじ込まれ、固定部材118,120の内輪104側端面が内輪104の端面に強く押し付けられて、内輪104を両側から挟み込むようにして両者間が固定されている。即ち、押込ローラ102と内輪104とが固定部材118,120を介して固定されている。
【0090】
本実施形態において、押込ローラ102と固定部材118,120との固定は、両者間を接着剤などで固着させることで為されている。即ち、押込ローラ102と内輪104とが固定部材118,120を介して固定されている。
【0091】
以上の如き張力変動吸収装置100が、図4に示されるように100D及び100Eの張力変動吸収装置としてベルト駆動装置に備えられる。張力変動吸収装置100E側に着目すると、既述のように、中間転写ベルト90によって、周内方向に押し込まれる力N’(図示の両矢印におけるmi方向に)が押込ローラ102Eに作用している。そして、受容ローラ64が中間転写ベルト90を介して、例えば図5に示される如き外力を受けた際に、このmi方向への中間転写ベルト90による押込み力はより一層強くなる。当該mi方向への押込み力は、図7において矢印C方向からの押込ローラ102への負荷に相当する。
【0092】
図9に、中間転写ベルト90による押込み力が作用した状態の張力変動吸収装置100の概略図を示す。図9に示されるように、中間転写ベルト90による押込み力は、押込ローラ102の外周面に対して連結部材122とは反対側から(矢印C方向から)作用する。
【0093】
図10に、本実施形態における張力変動吸収装置から連結部材122を除した構成の張力変動吸収装置において図9同様の押込み力が作用した状態の概略図を示す。図10において、点線は、押込み力が作用していない元の状態を示すものである。
【0094】
図10に示されるように、矢印C方向から中間転写ベルト90による押込み力が作用すると、その負荷により押込ローラ102が実線で描かれた状態になるように変形しようとする。このとき、押込ローラ102、支持部材112,112’の内側に位置する軸受(110,110’)及び固定部材118,120が一体となって動くため、支持部材112,112’が実線図示のように、当該図面の紙面に垂直な線を軸として、矢印J,J’方向に回転しようとする。
【0095】
これに対して、本実施形態における張力変動吸収装置では、図9に示されるように、支持部材112と支持部材112’との間を、押込ローラ102の中間転写ベルト90との接触側と反対側で連結する連結部材122が配されているため、連結部材122が伸ばされる強い張力が発生し、連結部材122の引っ張り剛性がそれを打ち消すように作用するため、押込ローラ102の曲げ変形が抑制される。
【0096】
図11に、本実施形態における張力変動吸収装置から固定部材118,120,118’,120’を除した構成の張力変動吸収装置において図9同様の押込み力が作用した状態の概略図を示す。図11において、点線は、押込み力が作用していない元の状態を示すものである。押込ローラ102と支持部材112,112’の内側に位置する内輪(114,114’)とを固定する固定部材118,120,118’,120’が無いため、両者が固定されていない状態になっている。押込ローラ102と内輪(114,114’)とが固定されていなければ、両者間の多少のガタ(視認できない程度を含む隙間)によって、当該箇所において押込ローラ102の曲げ変形による支持部材112,112’を回転させる動き(矢印J,J’方向への回転)が吸収されてしまう。そのため、連結部材102が配されていたとしても、これに強い張力を発生させることができず、押込ローラ102の曲げ変形を打ち消す効果が抑制される。
【0097】
これに対して、本実施形態における張力変動吸収装置では、押込ローラ102と内輪(114,114’)とが固定部材118,120,118’,120’によって固定されているため、連結部材122が伸ばされる強い張力が発生し、連結部材122の剛性がそれを打ち消すように作用するため、押込ローラ102の曲げ変形が抑制される。
【0098】
以上のように、本実施形態においては、小さな曲げ変形に対しても大きな張力が発生するため、連結部材122としてワイヤの如き軽量の部材を選択して利用することができ、装置の重量増加を抑制しつつ押込ローラ102の曲げ変形抑制効果が得られる。
【0099】
また、本実施形態では、押込ローラ102と内輪104,104’との固定に、押込ローラ102の軸方向における内輪104,104’の両側に位置し、押込ローラ102に固定された環状の固定部材118,120,118’,120’を用いているため、この固定部材118,120,118’,120’が押込ローラ102の補強部材としての機能も併せ持つことになり、押込ローラ102の曲げ変形抑制効果を一層高めている。
【0100】
このように押込ローラ102の曲げ変形抑制効果が奏されることから、本実施形態によれば、中間転写ベルト90の安定搬送が実現され、外力によるベルト搬送速度の変動を抑制することができるという張力変動吸収装置100本来の機能が発現される。
【0101】
(第2の実施形態)
図12に、本発明の例示的一態様である第2の実施形態のベルト駆動装置における張力変動吸収装置の拡大側面図を示す。図12は、図4に示された張力変動吸収装置100に代えて適用される、本実施形態に特徴的な構成を含む張力変動吸収装置200を示すものであり、第1の実施形態のベルト駆動装置における図7と同様の方向から見た側面図である。
【0102】
また、図13は、図12における押込ローラ102の軸方向左端近傍の拡大断面図である。
【0103】
なお、第1の実施形態と同様の構成・機能の部材については、図7及び図8と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略することにする。本実施形態の張力変動吸収装置は、図7や図8に無い新たな符号の部材が、第1の実施形態の構成に代えてあるいは加えて用いられる他、図7や図8における固定部材118,120,118’,120’が配されない点が異なる。
【0104】
本実施形態においては、環状の固定部材に拠らず、押込ローラ102と内輪204とが直接固定されており、両者間の固定は、接着剤などで固着させることで為されている。
【0105】
また、本実施形態において、押込ローラ102の軸方向両端に位置する支持部材112と支持部材112’とを、押込ローラ102の中間転写ベルト90との接触側と反対側で連結する連結部材222には、曲げ剛性を有するシャフト状部材を用いている。
【0106】
さらに、本実施形態においては、連結部材222の軸方向における支持部材112と支持部材112’との中間位置に、押込ローラ102の周面と外周が接触して従動回転する支持ローラ224が回転自在に取り付けられている。
【0107】
以上の如き張力変動吸収装置100が、図4に示されるように100D及び100Eの張力変動吸収装置としてベルト駆動装置に備えられる。
【0108】
本実施形態においても、支持部材112と支持部材112’との間を、押込ローラ102の中間転写ベルト90との接触側と反対側で連結する連結部材222が配されているとともに、押込ローラ102と内輪(214,214’)とが固定されているため、第1の実施形態と同様、中間転写ベルト90による押込み力によって矢印C方向から押込ローラ102に負荷がかかった際に生ずる押込ローラ102の曲げ変形抑制効果が得られる。
【0109】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の上記効果に加え、従動回転する支持ローラ224の外周が接触する押込ローラ102の周面において、支持ローラ224によって押込ローラ102の変形を押し戻す力が発生するため、押込ローラ102の曲げ変形抑制効果を一層高めている。
【0110】
このように押込ローラ102の曲げ変形抑制効果が奏されることから、本実施形態によれば、中間転写ベルト90の安定搬送が実現され、外力によるベルト搬送速度の変動を抑制することができるという張力変動吸収装置200本来の機能が発現される。
【0111】
支持ローラ224としては、接触安定性の観点から、各種ゴム材料を好適な材質として利用することができるが、これら弾性材料の中でも高硬度の物の如く、食い込み変形に対して大きな反力が得られる材料で形成することが望ましい。
【0112】
本実施形態においては、押込ローラ102の軸方向中間位置(連結部材222の軸方向における支持部材112と支持部材112’との中間位置)に支持ローラ224を配しているが、連結部材222の軸方向における支持部材112と支持部材112’との間であればいずれの位置に配することも可能である。
【0113】
勿論、連結部材222の軸方向における支持部材112と支持部材112’との中間位置が、曲げ変形が生じた場合に押込ローラ102が通常最も変位するので、当該位置に支持ローラ224を配することが、最も高い効果を期待することができる点で好ましい。
【0114】
(第3の実施形態)
図14に、本発明の例示的一態様である第3の実施形態のベルト駆動装置における張力変動吸収装置の拡大側面図を示す。図14は、図4に示された張力変動吸収装置100に代えて適用される、本実施形態に特徴的な構成を含む張力変動吸収装置300を示すものであり、第1の実施形態のベルト駆動装置における図7と同様の方向から見た側面図である。
【0115】
また、図15は、図14における押込ローラ102の軸方向左端近傍の拡大断面図である。
【0116】
なお、第1の実施形態と同様の構成・機能の部材については、図7及び図8と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略することにする。また、第2の実施形態と同様の構成・機能の部材については、図12及び図13と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略することにする。
【0117】
本実施形態は、第1の実施形態の構成を維持したまま、第2の実施形態の特徴を取り入れたものであり、第2の実施形態では配されていなかった固定部材118,120,118’,120’が配されている。
【0118】
本実施形態においても、支持部材112と支持部材112’との間を、押込ローラ102の中間転写ベルト90との接触側と反対側で連結する連結部材222が配されているとともに、押込ローラ102と内輪(214,214’)とが固定されているため、第1の実施形態と同様、中間転写ベルト90による押込み力によって矢印C方向から押込ローラ102に負荷がかかった際に生ずる押込ローラ102の曲げ変形抑制効果が得られる。
【0119】
また、本実施形態においても、押込ローラ102の軸方向両端に位置する支持部材112と支持部材112’とを、押込ローラ102の中間転写ベルト90との接触側と反対側で連結する連結部材222には、剛性を有するシャフト状部材を用い、連結部材222の軸方向における支持部材112と支持部材112’との中間位置に、押込ローラ102の周面と外周が接触して従動回転する支持ローラ224が回転自在に取り付けられているため、第2の実施形態と同様、支持ローラ224によって押込ローラ102の変形を押し戻す力が発生し、押込ローラ102の曲げ変形抑制効果を一層高めている。
【0120】
さらに、本実施形態では、押込ローラ102と内輪104,104’との固定に、押込ローラ102の軸方向における内輪104,104’の両側に位置し、押込ローラ102に固定された環状の固定部材118,120,118’,120’を用いているため、第1の実施形態と同様、この固定部材118,120,118’,120’が押込ローラ102の補強部材としての機能も併せ持つことになり、押込ローラ102の曲げ変形抑制効果をより一層高めている。
【0121】
このように押込ローラ102の曲げ変形抑制効果が奏されることから、本実施形態によれば、中間転写ベルト90の安定搬送が実現され、外力によるベルト搬送速度の変動を抑制することができるという張力変動吸収装置300本来の機能が発現される。
【0122】
[3.総括]
以上、本発明について、3つの好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の張力変動吸収装置やベルト駆動装置はこれら実施形態の構成に限定されるものではない。
【0123】
例えば、以上の実施形態では、図1の画像形成装置における第1の領域Dと第2の領域Eの双方に張力変動吸収装置を備えた例のみを例示しているが、本発明においては、無端状のベルトの回転方向における受容ローラの上流かつ駆動ローラの下流の第1の領域と、前記受容ローラの下流かつ前記駆動ローラの上流の第2の領域のいずれか一方に、張力変動吸収装置を備えた構成であっても構わない。ただし、双方に張力変動吸収装置を備えることで、受容ローラの上流側と下流側に同時に生ずるベルトの弛緩と緊張をより効果的に緩和して、張力変動を吸収することができる。
【0124】
また、以上の実施形態においては、押込ローラと内輪との固定に、固定部材を用いた例(第1の実施形態及び第3の実施形態)と、接着剤などで固着させた例(第2の実施形態)が挙げられているが、これらに限定されるものでは無く、例えば、一般的に押込ローラの端部に脱落防止のために設けられるイーリングと内輪との間にワッシャーのような部材を押し込むことで押込ローラと内輪とを固定するような方法であっても構わない。
【0125】
一方、本発明のベルト駆動装置を適用した本発明の画像形成装置について、上記実施形態では、いわゆるタンデム方式のフルカラー画像形成装置を例に挙げて説明したが、本発明においてはこれに限定されるものでは無く、1つの像保持体表面に複数の色のトナー像を形成し得る回転切替形の現像装置を用いて、複数の色のトナー像を現像しつつ、その都度中間転写体表面に積層し、全色積層後一括して記録媒体に転写してフルカラー画像を形成する、いわゆるロータリー方式の画像形成装置や、単一のトナー像形成手段しか有さない単色の画像形成装置であっても、本発明のベルト駆動装置を適用することができる。
【0126】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のベルト駆動装置及び画像形成装置を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明のベルト駆動装置乃至画像形成装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のベルト駆動装置は、上記実施形態では画像形成装置における中間転写ベルトの搬送に適用する例が例示されているが、その他画像形成装置において、複数のローラに張り渡された無端状のベルトを搬送するとともに、当該複数のローラのいずれかが外力を受容する構成を含む場合に、当該無端状のベルトのベルト搬送装置として適用可能である。
【0128】
画像形成装置における中間転写ベルトは、複数のローラに張り渡された状態で、感光体ドラムの如き潜像保持体に対向する位置の中間転写ベルトの周内に転写手段を設けて、ベルトユニットとして取引、搬送、利用される場合がある。本発明のベルト駆動装置は、そのようなベルトユニットにも勿論適用することができる。そして、本発明のベルト駆動装置を中間転写ベルトの搬送に用いた当該ベルトユニットは、本発明のベルトユニットに相当する。
【符号の説明】
【0129】
2:感光体ドラム、 4:帯電装置、 6:露光装置、 8:現像装置、 12:除電ランプ、 14:一次転写装置、 22:クリーニング装置、 48:作像ユニット、 52:駆動ローラ、 54:従動ローラ、 58:搬送ガイド、 60:二次転写装置、 62:定着装置、 64:受容ローラ、 66:二次転写ローラ、 68:用紙、 90:中間転写ベルト、 100,200,300:張力変動吸収装置、 102:押込ローラ、 104,204:内輪、 106:外輪、 108:ベアリング、 110,110’:軸受、 112,112’:支持部材、 114,114’:ばね、 116,116’:ばね台座、 118,120,118’,120’:固定部材、 122,222:連結部材、 124:フライホイール、 224:支持ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトと接触しこれを押し込むとともに従動回転する押込ローラと、
該押込ローラと同軸上に固定され、慣性モーメントを与えるフライホイールと、
前記押込ローラの軸方向両端に位置し、当該押込ローラに固定された内輪及び該内輪を回転自在に支持する外輪からなる軸受と、
該軸受の前記外輪を前記ベルトに向けて押し込むように支持する支持部材と、
前記押込ローラの軸方向両端に位置する2つの前記支持部材同士または前記外輪同士を、前記押込ローラの前記ベルトとの接触側と反対側で連結する連結部材と、
を備えることを特徴とする張力変動吸収装置。
【請求項2】
前記押込ローラの軸方向における前記内輪の両側に位置し、前記押込ローラに固定された環状の固定部材と、前記内輪とを固定することで、該内輪と前記押込ローラとが固定されていることを特徴とする請求項1に記載の張力変動吸収装置。
【請求項3】
前記連結部材の軸方向における前記両支持部材の間に、前記押込ローラの周面と外周が接触して従動回転する支持ローラが回転自在に取り付けられてなることを特徴とする請求項1または2に記載の張力変動吸収装置。
【請求項4】
無端状のベルトと、該ベルトを回転駆動する駆動ローラと、前記無端状のベルトを張り渡す少なくとも1個以上の従動ローラと、前記ベルトに押込ローラが接触してこれを押し込む状態で配される請求項1〜3のいずれかに記載の張力変動吸収装置と、を備えることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項5】
前記従動ローラの内の1個が、前記ベルトを介して加えられた外力を受容する受容ローラであることを特徴とする請求項4に記載のベルト駆動装置。
【請求項6】
前記張力変動吸収装置が、前記ベルトの回転方向における前記受容ローラの上流かつ前記駆動ローラの下流の第1の領域と、前記受容ローラの下流かつ前記駆動ローラの上流の第2の領域の双方に、それぞれ配されてなることを特徴とする請求項5に記載のベルト駆動装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載のベルト駆動装置と、
表面にトナー像を保持し前記ベルトの外周面に接触して配置される像保持体に対向する位置に、前記ベルトの内周面側に設けられた転写手段と、
を備え、
前記像保持体表面のトナー像が、前記転写手段によって前記ベルトの外周面に転写されるように構成されてなることを特徴とするベルトユニット。
【請求項8】
像保持体と、該像保持体表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、複数のローラに張り渡された無端状の中間転写ベルトと、該中間転写ベルトの表面に前記像保持体表面に形成されたトナー像を転写する一次転写手段と、前記複数のローラの内の1つに前記中間転写ベルトを挟んで転写ローラが圧接され、前記中間転写ベルトの表面に形成されたトナー像を外部から供給される記録媒体に転写する二次転写手段と、を備え、
前記複数のローラの内、前記中間転写ベルトを挟んで前記転写ローラが圧接されるローラを受容ローラ、他の1つを駆動ローラ、さらに他の1つまたは2つを前記張力変動吸収装置における押込ローラ、そして残りの張架ローラを受容ローラ以外の従動ローラとする請求項4〜6のいずれかに記載のベルト駆動装置によって前記中間転写ベルトを無端状のベルトとして駆動することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−133107(P2012−133107A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284898(P2010−284898)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】