説明

強化エラストマーをコーティングした保護用バリア布帛及びその製法

コーティングされたバリア布帛を、二つの部分(低温硬化ポリオキシシロキサン組成物、及び特有の2パス、2種類の硬化速度、コーティング工程)を用いて調製した。好ましくは、上記コーティングされた布帛は、コーティングされた生地の内面に重なった、第二のコーティングされていない布帛を有する。この好ましい方法により、複数の洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクルを受けた後でさえ、非常に優れた耐久性を有する再利用可能な医療用バリア布帛が、実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年6月16日に出願された米国仮出願シリアルNO.60/580,149に由来する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、バリア布帛(barrier fabric)の改良に関するものである。詳細には、本発明は、特に、再利用でき、又は使い捨てしない医療製品における使用向けのバリア布帛の改良、及びその製法に関する。これらの製品は、ウイルス、及び液体バリア特性の大幅な改良を示すだけでなく、改良された洗浄、及び耐オートクレーブ性を有している。
【背景技術】
【0003】
バリア布帛は、一般的に、液体の浸透に影響されないことを特徴としている。さらに厳しい技術的要求を有するバリア布帛はまた、医療分野で用いるのに特に適しており、伝染性微生物、例えば、ウイルス、及びバクテリア、血液、及び外科手術等に関連する他の液体感染の拡大を制御、又は抑制する。
【0004】
バリア布帛の特性は、医療製品、例えば、外科、及び/又は処置範囲で無菌を維持するために用いられる外科用無菌布、並びに外科用ガウン等の保護服にとって重要である。これらバリア布帛は、病院、医院、診療所等において、医療従事者、例えば、ドクター、医療助手、ナース、看護助手者により広く使用されている。特に、汚染された体液と接触する可能性のある場所では、医療従事者、及び患者を保護するあらゆる努力がなされている。医療従事者は、手術、血液採取の際、又は汚染された液体を含む検体の作業中に、医療用バリア布帛を規定通りに使用し、彼ら自身を保護し、不注意による感染性物質の感染により、次の患者への交差汚染又は二次汚染を防いでいる。
【0005】
現在、二つのタイプのバリア布帛、シングルユーズ、すなわち、使い捨て可能な材料、及び再利用可能な材料がある。使い捨て可能な布帛は、概して、軽量合成繊維、又は天然繊維と混合された合繊繊維から作られる不織布で構成されている。撥液体性(liquid repellency)に関して、使い捨て可能な不織布の性能は、一般的には満足できるものである。しかし、これらの布帛は、多くの医学系用途において所望の保護を得るのに必要だと思われる範囲の特性を、備えていないことが多い。
【0006】
一方、再利用可能な医療用バリア布帛は、通常、織布であり、そして、綿、綿及びポリエステル混合物、又はポリエステルから構成され、そして伝染性物質又は保菌生物の拡大を防ぐ、又は減らすために縫い目が多く、物理的バリアを備える。再利用可能な布帛それ自体は、ドレープ適性(drapeability)及び風合い、並びに1回の使用あたりの低コストに関するポテンシャルに関して、より満足を与える一方で、当該再利用可能な布帛は、使い捨て可能な材料の経験に基づく市場が要求する撥液体性に欠け、そしてそのうち、特に、洗浄、及び蒸気消毒(オートクレーブ)が繰り返された後、それらの一部の保護特性が失われることが多い。
【0007】
保護用バリア布帛を用いて製造された製品物、例えば、外科用ガウンが再利用されうる回数及び入手価格は、上記製品の1回の使用当たりのコストに対して直接的な関係を有する。使い捨て可能な外科用ガウンに関して、例えば、1回の使用あたりのコストは、本質的に、単にそれらの入手価格、及び処理費用である。使い捨て可能なガウンは、便利さにおいて確かに利点がある。しかし、再利用可能なガウンは、良好なドレープ適性及び手触りを有する点において、感触上の利点を有し、そしてそれは、不織布で製作された使い捨て可能なガウンのドレープ適性及び手触りよりも好ましい。ドレープ適性及び手触りは、再利用可能な外科用ガウンの構成において用いられる織布の「風合い」の重要な要素である。
【0008】
これら全ては、再利用可能な医療/外科用バリア保護服及び製品の1回の使用あたりのコストを最小限に抑える競合意欲があることに重点を置いている。
しかし、重要なことには、再利用可能な外科用ガウン、外科用無菌布、及び他の使い捨て不可の医療/外科用バリア布帛製品には、バリア布帛を組み込む他の製品又は衣服と、それらを区別するさらなる要求がある。すなわち、各使用の後、例えば、再利用可能な外科用ガウンを、次の再利用のために、洗浄、乾燥、及び殺菌しなければならない。これらの手順には、上記ガウンの遮断特性を即座に下げ、そして上記ガウンが再利用されうる回数を制限しうる、強力な界面活性剤及び高温が含まれる。
【0009】
上記再利用可能な医療/外科用製品向けの典型的な、画一的な洗浄/オートクレーブサイクルには、一般的に、上記製品を、90°〜100°Fにおいて、2〜5分、水中に浸漬する初期フラッシュが含まれる。次いで、上記製品を、汚れを落とすために、120°〜150°Fにおいて、3〜10分間、アルカリ浴(10超のpH)に浸漬させる。次に、上記製品を、約160°Fの界面活性剤浴の中に、約6〜10分間入れる。次に、約150°Fにおいて,約6分間、漂白浴に入れる。続いて、160°Fから室温まで、次第に下げることができる温度で、一回又は2回以上のすすぎを行う。最後に、pHが4〜7の範囲で調整され、そして柔軟剤がまた用いられうる酸性サワー浴がある。次いで、一回又は2回以上ののすすぎがある。
【0010】
上記製品は、これら全ての浴とまではいかないが、いくつかの中で、機械的に攪拌される。また、次の各浴に続いて、次の工程に持ち越される液体を最小化するための、脱水(スピン)サイクルが存在する。
次いで、上記製品を、160°Fの平均温度において、回転乾燥機内で乾燥する。上記製品に対する典型的な乾燥時間は、20〜40分程度である。製品を400°Fを超える温度にさらしうる上記乾燥機の中では、熱染みができうることに留意すべきである。
【0011】
乾燥の後、上記製品を、オートクレーブ内に置き、そして、少なくとも4分、そして好ましくは約15分の間、約260°Fの温度において加圧蒸気により殺菌する。
これら厳しい条件は、通常の衣類に導入されているバリア布帛の洗浄、又はドライクリーニングに存在する条件よりも、けた違いに大きい。実は、通常の衣類に用いることを目的するバリア布帛(悪天候用衣服(foul weather gear))の多くは、1回又は比較的少ない画一的な洗浄/オートクレーブサイクルの後には、使用することができなくなる。
【0012】
高分子膜は、従来、限られた用途の医療製品、例えば、使い捨て可能な布帛で構成される外科用無菌布、及びガウンに関してバリア特性を付与するために、織布とのラミネートとして使用されており、そしてその技術は、これらラミネート品、及びそれらの医療用途に関して、充実したものである(米国特許第4,379,192号明細書、及び同第6,238,767号明細書等)。微孔フィルム、及び上記膜を作る方法は、例えば、米国特許第3,844,865号明細書により教示され、そして上記多孔性膜、及び不織布材料等を用いるラミネート品は、例えば、米国特許第5,560,974号明細書;同第5,169,712号明細書;同第6,610,163号明細書及び同第5,695,868号明細書に教示されている。
【0013】
概して、使い捨て可能な複合材料の中で利用されている上記布帛は、不織布材料であり、そして上記フィルムは、低基本重量(basis weight)のポリエチレン、ポリプロピレン混合物、例えば、ポリオレフィン、及びコポリマー、(エチレン及びプロピレンコポリマー)である。画一的な繰り返しの洗浄及び殺菌サイクルをこれら複合材料に試みると、これらの積層膜は直ちに離層し、そしてそれらの必要な保護用バリア特性の多くを保持することができなくなる。複数の洗浄/殺菌サイクルの際及び/又はその後に、保護用バリア布帛の、上記所望でない離層を防ぐ手順は、多くの形態を要する。第一に、ポリマーコーティング、含浸、若しくは飽和(saturating)技法を用いること、並びに/又は織布、ポリマー及び/若しくはポリマー処理織布の複層とともに、これらの用いる技法を用いることである。最高の機能性は、フルオロケミカル、及びケイ素型ポリマーの使用を経由した技術によるこれら技法を用いて、得られる。
【0014】
早くから、上記布帛の感触の良い仕上がり又は風合いを低下させ、そして上記コーティングされた布帛面に多くの布帛では目立たないゴム引き仕上げ(rubberized finish)を付与する傾向があるシリコーン織布コーティングが、特に衣類に用いられている。上記技術はまた、高いレベルの液体抵抗性を得るための試みにおいて、ポリオルガノシロキサンのコーティング化用途に取り組んでいる。当業者は、多孔質のテキスタイルウェブをシリコーンでコーティングしているが、早くから、これらのシリコーンポリマーが布帛の表面に留まる傾向があった。すなわち、上記ポリマーは、それぞれ内部の繊維及び/又はヤーン束上に、フィルムを付与しなかった。結果として、上記コーティングは、はがれ(abraid)、そして/又は即座に洗い流される傾向があった。
【0015】
上記布帛の隙間に、より深く浸透するポリマーを得るために、飽和、又は含浸技法が、当業者により用いられている。これらの技法は、概して、低粘度の液状シリコーン樹脂を用いて、布帛を含浸させて達成されている。この様式では、上記低粘度ポリマー溶液を、容易にウェブの隙間に流し、そして吸着又は内部吸着させることができる。液状又はペースト状組成物の布帛への浸積適用を、例えば、いわゆるパッド法により達成することができ、そこでは、布帛材料を最初に浴に通し、次に、シングルディップ又はシングルディップバッディングと呼ばれることがある工程内で圧搾ローラーに通す。あるいは、上記布帛を、圧搾ローラーの間を通すことができ、上記ローラーの下のローラーが、液状又はペースト状の組成物を、ダブルディップ又はダブルディップバッディングと呼ばれることがある工程に運ぶ。しかし、この工程(米国特許第2,673,823号明細書で教示される)は、大量にシリコーンを含浸させたゴム引き材料を生成する傾向がある。すなわち、上記布帛の隙間を、完全に満たすか、又は染み込ませることが多い。上記処理されたウェブは、実質的に、もとの感触及び視覚特性を欠いており、その代わりに、硬化シリコーンポリマー特有のゴム特性を有する。
【0016】
組成物をウェブの隙間に入れるウェブの前処理は、米国特許第3,594,213号明細書に教示されるように、上記組成物の流れを助けるために、水又は揮発性有機ベース溶媒等の溶媒を含む低粘度組成物を用いることに依存している。しかし、上記溶媒系システムは、ランダム及び一貫性のない様式で、上記布帛上にポリマーを堆積させる傾向があり、ポリマー特有のスポットを作り、そのようにして得られた製品の全体的な接着強度を制限してしまう。そして当然ながら、上記溶媒処理は、溶媒の除去及び処理に関して、環境及び経済上の意義性を有することが多い。非硬化性溶媒及び熱の使用が開示され、多孔質の布帛染み込みに関してポリマー組成物の粘性を減少させている(米国特許第4,588,614号明細書に教示されている)。
【0017】
複数の画一的な洗浄/オートクレーブの後、高い液体不浸透性を有する布帛をうまく得て、そして現在、商業的に許容できる選択技術の一つである別の方法は、米国特許第5,236,532号明細書及び同第5,183,702号明細書に説明されており、そこでは、粘性状態の高い未硬化のシリコーンの薄膜を、一組のロールの間で機械的にきつく圧縮して固い織布を作り、接触表面上に「ナッブ(nab)」と共に形成し、そして親水仕上げで事前処理する。続いて、上記複合材料を、硬化させる。
【0018】
引例の多くには、バリア布帛の所望の特性を最大化するための試みの中で、層化技法の使用が開示されている。そのような技法には、積層処理布帛、未処理布帛、及び/又は粘着剤タイコートを有する多孔質膜が含まれる。しかし、これら技法は、固体膜、積層布帛製品に関する上述の同じ制限、例えば、磨耗又は洗浄/殺菌サイクルの際の層間剥離を呈し、そしてさらに粘着剤の使用に対して生じる環境課題に悩まされることになる。その上、更なる困難性は、処理された生地、粘着剤、膜等のような種々の層間の機械的性能の差の調和を、確保する事に直面することである。例えば、上述3つの材料のいずれかの収縮が、他の材料のどちらの初期降伏応力に達すると、これらは変形してしまうであろう。そして、それが最大抗張力に達すると、これらは、複層化複合材料の層間剥離に至るであろう。
【0019】
米国特許第4,872,220号明細書;同第5,024,594号明細書;同第5,180,585号明細書;同第5,335,372号明細書;同第5,391,423号明細書;同第5,532,053号明細書及び同第6,238,767号明細書には、上記布帛複合材料への浸透から血液、微生物、及びウイルスを防御するために、布帛及び/又はポリマー層を利用する製品が記載されている。さらに、米国特許第4,991,232号明細書には、上記衣服への浸透から血液を防ぐために、複数のプリエ(plies)を含む医療衣服が記載されている。同様に、米国特許第5,027,438号明細書は、二つの微孔性ウレタンコーティング化布帛の間に、静菌性含浸布帛がはさまれているバリア複合材料を創作した。有害なこの布帛及び/又はポリマーの層化は、伝統的に重い衣服を生じさせ、そして追加の材料を利用する。
【0020】
低粘度の流体ポリマーを実現するため、そして布帛の隙間に浸透させるために当該低粘度の流体ポリマーを用いるために当業者に用いられる他の技法は、上記ポリマーを高せん断下に置きながら布帛の生地に適用されるチキソトロピック及び擬塑性ポリマーを使用することを経ることである。この工程、及びそれから製造された生成物は、現在では、商業的な医療用バリア布帛領域の中で、選択技術の一つである。米国特許第6,071,602号明細書は、ウェブの効果的な空孔率及び接着付着を制御するため、ひいては、病気を引き起こす微生物による浸透に対する抵抗材料であるといわれているウェブを実現するための技法を開示している。米国特許第6,342,280号明細書、及び同第6,416,613号明細書はまた、チキソトロピック方法論を用い、せん断低粘度化(shear thinning)の未硬化の、本質的に溶媒を含まない擬塑性ポリマーである複層化複合材料を製造し、
多孔質の生地にこの液体を適用し、それによって一部の隙間の空間を開放しながら、上記布帛の大部分を封入し、
ポリマー層を、未硬化の、封入された生地の表面に適用し、
上記層を、上記未硬化の封入された生地に圧縮し、そして
上記完了した複合材料を硬化させる。
この方法の中でうまく用いることができるポリマーには、シリコーン、ポリウレタン、フルオロシリコーン、アクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ネオプレン、及びそれらの混合物が含まれるといわれている。
【0021】
保護用バリア布帛分野で重要な技術は、膨張させた微孔性のポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)フィルムを利用する技術である。これらのePTFEフィルムに関する開示は、通常、3層の複合材料の一部としてそれらを表現する。例えば、米国特許第4,433,026号明細書は、バリア布帛を教示し、そこでは、上記ePTFEフィルムが、ポリエステル織布、及びポリエステル編物間に挟まれており、米国特許第5,155,867号明細書は、バリア布帛下着を開示し、そこでは、上記ePTFEフィルムが、親水性ポリウレタン膜−伸縮性編物複合材料の上に、層をなしており、そして米国特許第5,948,707号明細書は、滑り止め包帯の裏地(liner)を開示し、そこでは、上記ePTFEフィルムが、上記フィルムと、上記フィルムの他の面に接着したやわらかい布帛との片面に、エラストマー、例えば、シリコーン、ポリウレタン等の不連続コーティングを有している。
【0022】
膨張された微孔性PTFEの保護用布帛複合材料は、良好な撥水性と、複数回の洗浄/オートクレーブサイクルの後でさえも他のバリア特性とを保持すると報告される一方で、それらは、製造するには高価な製品である傾向がある。
【0023】
溶媒又は高価な装置、例えば、高せん断発生装置、又は高圧ローラーを用いることなく、布帛生地上の薄膜に良好にコーティングすることができる比較的低コストの材料に関する探索において、当業者(特に、エアーバッグの製造に関する当業者)は、薄膜のエラストマーを製造するための、いわゆる低温硬化シリコーン組成物の望ましさ(特に、ヒドロシレーション(hydrosilation)、又は重付加により架橋させる2成分型の望ましさ)を、最近になって理解し始めている。一般に、上記2成分を、低粘度組成物を形成させるためにともに混合し、任意の一般的な工程(ドクターブレード、又はナイフオーバーロール、ナイフオーバーエアー、転写若しくはキスコーティング、又はスクリーン印刷工程等)を用いて布帛上にコーティングし、そして一つのポリオルガノシロキサンの不飽和基(アルケニル、例えば、ビニルシリコーン基)を、同じ又は別のポリオルガノシロキサンの水素に重付加させて進行させる熱硬化を行う。これは高度に望ましい方法である。なぜなら、これら薄膜シリコーンコーティングは、即座に適用され、そして比較的低温で熱硬化されるとすぐに硬化し、これらシリコーン本来の特徴である、水撥水性を持ったコーティングを形成することができる。さらに、これらコーティングは、優れた老化挙動を有する。というのは、それらは、熱及び機械的性質等の特性を、充分に時間が経過しても保持するからである。
【0024】
これら2成分の代表的な低温硬化シロキサン系は、欧州特許出願公開第0,553,840号明細書に開示されている下記:
(A)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン、
(B)各分子中に、ケイ素と結合している水素原子を、少なくとも2つ有するポリオルガノハイドロゲノシロキサン、
(C)金属触媒(当該金属は白金族に属している)、
(D)エポキシ官能有機ケイ素化合物から成る接着促進剤、
(E)無機充填剤、例えば、補強充填剤、例えば、ヒュームド酸化チタン、微粒子シリカ、例えば、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、焼成シリカ、及び本質的には補強しない充填剤(essentially non−reinforcing filler)、例えば、石英粉末、珪藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、又は炭酸マグネシウム、例えば、有機シランで処理されたシリカ、有機シラザン、又はジオルガノシクロポリシロキサンが導入される、
(F)ポリオルガノシロキサン樹脂、及び
(G)架橋抑制剤として使われる随意選択的な化合物、
を含む組成物である。
米国特許第5,296,298号明細書では、上記成分(A)〜(E)は、再度見出されるが、上記接着促進剤(D)は、エポキシ官能有機ケイ素化合物の、一分子につき(メタ)アクリル、又は(メタ)アクリロキシ基を含むアルコキシル化シラン、及び随意選択的なアルミニウムキレートとの組み合わせからなり、一方、上記無機充填剤(E)は、本発明を具体的に説明する全ての例において用いられているが、随意選択的なものであるとして与えられる。充填剤の例として、本明細書では、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、石英粉末、珪藻土、及びガラスビーズに言及する。
【0025】
上述の組成物により、エアーバック最終用途に問題なく適用されるべき合成繊維ナイロン布帛に、十分良好に付着しないコーティングが製造されたことが、報告されている。
【0026】
欧州特許出願公開第0,681,014号明細書では、十分に改良された布帛付着特性を有するコーティングを生ずる上述のシロキサン組成物と同様の2成分の低温硬化シロキサン組成物が開示されている。
記載されるシリコーンコーティング組成物は、下記によって形成される混合物から成る。
(I)一分子当たり、上記ケイ素に結合した少なくとも2つのC2〜C6アルケニル基を有する、少なくとも一種のポリオルガノシロキサン、
(II)一分子当たり、上記ケイ素に結合した少なくとも2つの水素原子を有する少なくとも一種のポリオルガノシロキサン、
(III)白金族に属する少なくとも一つ金属で構成される、触媒として効果的な量の少なくとも一種の触媒、
(IV)接着促進剤、
(V)随意選択的な無機充填剤、
(VI)随意選択的な少なくとも一種の架橋抑制剤、及び
(VII)随意選択的な少なくとも一種のポリオルガノシロキサン樹脂。
上記接着促進剤は、次の成分の少なくとも3種の組み合わせからもっぱら成る。
(IV.1)一分子あたり、少なくとも一つのC2〜C6アルケニル基を含む、少なくとも一つのアルコキシル化有機シラン、
(IV.2)少なくとも一つのエポキシ基を含む、少なくとも一つの有機ケイ素化合物、及び
(IV.3)少なくとも一種の金属Mキレート、及び/又は次の一般式の一つの金属アルコキシド:M(OJ)n(式中、nは、Mの原子価であり、そしてJは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C8アルキルであり、Mは、Ti、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al、及びMgから成る群から選択される。)。
【0027】
焼成シリカ等の補強充填剤は、この教示の全ての例に表現される。
エアーバック布帛産業において、経済的競争力の理由により、非常に薄いシリコーン層を適用できることが非常に望ましい。すなわち、布帛上のコーティング含浸重量は、30g/m2未満であるべきである。
【0028】
そのため、米国特許第6,586,551号明細書では、上記組成物から全ての補強充填剤を排除することにより、’014組成物が改良された。この様式では、低含浸重量のコーティング化布帛(特に、エアーバッグ産業向けのポリアミド布帛)を、上記満たされた組成物と共に実現されている特性(耐火性及び耐熱性、耐折りじわ性及び耐磨耗性、並びに熱絶縁性)に悪影響を与えることなく容易に得ることができることが報告されており、それらの全ては、上記充填剤を取り除くことにより実際に改良されている。
【0029】
正反対のアプローチを用いて、米国特許第6,562,737号明細書は、許容可能な最終用途(エアーバッグ)の特性、例えば、耐熱特性を保持しながら、コーティングされた生地の重量を増加させることなく生地上のコーティング厚を増加させるために、上記コーティング組成物に、ポリマー壁を有する膨張可能な有機ミクロスフェアを添加した。上記スフェアには、液体又は気体が含まれる。上記スフェアは、好ましくは、それらの膨張前にコーティング組成物の中に導入され、次いでエラストマーコーティングの架橋中の適度な加熱によって、誘導されるかもしれない。
【0030】
所望の撥液体性及び撥微生物性を有する、薄くコーティングされたバリア布帛を調製するための努力が、一般的に許容されている一方、経済上のコストの実行値は、依然としてとらえどころのない目標である。なぜなら、厳しい使用(例えば、激しい磨耗、非常に多い回数の折り曲げ及び/又は複数回の厳しい画一的な洗浄/殺菌サイクル)の下、接着及び/又はポリマー付着の不具合は、ランダムな層間剥離と、ピンホールと、バリア布帛の保護特性の破壊とを生じさせ、可能なバリア布帛の耐用年数をかなり短縮してしまうからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
従って、本発明は、優れた初期の撥ウイルス性及び撥液体性を有し、かつ少なくとも75回の画一的な洗浄/オートクレーブサイクル後にそれらの特性を維持することができる、保護用バリア布帛複合材料(特に、医療用バリア布帛市場向けに好適なポリエステルを含む保護用バリア布帛複合材料)を実現することと、上記保護用バリア布帛複合材料の製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、バリア布帛、特に、再利用可能な医療用バリア布帛(外科的衣服及び無菌布等)向けに適しているバリア布帛を調製する方法を提供する。本方法は、織布(好ましくはポリエステル含有布帛)上に、無溶媒、無充填、低温硬化、低粘度のシロキサン組成物の2種のコーティングを適用することを含む。そして内側の第2のコーティングは、随意選択的に、布帛、好ましくは、やわらかい天然繊維布帛によって覆われている。
【0033】
この方法によって製造された上記布帛は、多数の洗浄/オートクレーブ殺菌サイクルの後でも長期間の顕著な不浸透性、特に優れたウイルス性及び撥液体性に耐えることが理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、選択された低温硬化組成物と、この組成物のコーティングを織布、好ましくは、ポリエステル含有織布の片面に適用するための2パス法とに関する。この様式では、優れた再利用可能なバリア布帛、又はバリア布帛製品が要求される厳しい技術基準を満たすことができるものを生産することができる。特に、一つは、医療ウイルス/液体バリア用途のために要求された、厳しい技術基準を満たすことができる。
【0035】
通常は、(i)外科用ガウン又は無菌布等の製品のあらかじめ作成された織布製品に、あるいは(ii)上記素材より前の繊維材料に、上記コーティングされたバリア布帛を縫い合わせることにより、コーティングされた上記織布の「内」面に、やわらかい布帛を重ねることが好ましい。
【0036】
本発明の、無充填の、無溶媒の、低温硬化しているシロキサン組成物は:
(1)一分子当たり、上記ケイ素に結合した少なくとも2つのC2〜C6アルケニル基を有する、少なくとも一種のポリオルガノシロキサン、
(2)一分子当たり、上記ケイ素に結合した少なくとも2つの水素原子を有する、少なくとも一種のポリオルガノシロキサン、
(3)白金族に属する少なくとも一種の金属で構成される、触媒として効果的な量の少なくとも一種の触媒、
(4)下記から本質的に成る接着促進剤:
(4.1)3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートシラン(MEMO)、
(4.2)少なくとも一つのエポキシ基を含む、少なくとも一つの有機ケイ素化合物、及び
(4.3)少なくとも一種の金属Mキレート、及び/又は次の一般式の一つの金属アルコキシド:M(OJ)n(式中、nは、Mの原子価であり、そしてJは、直鎖又は分岐鎖のC1〜C8アルキルであり、Mは、Ti、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al、及びMgから成る群から選択される。)、
の少なくとも3成分化合物を含む接着促進剤、
(5)少なくとも一種のポリオルガノシロキサン樹脂、並びに
(6)少なくとも一種の架橋抑制剤、
から本質的に成る。
【0037】
上記接着促進剤(4)に関して、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートシラン(MEMO)(4.1)は、上記組成物の総量に基づいて、0.5重量%〜5重量%で存在している。
【0038】
上記接着促進剤の有機ケイ素化合物(4.2)に関して、本発明に従って次の選択が提供される。:
下記一般式を満足する物質(4.2a):
【化1】

(式中、
6は、直鎖又は分岐鎖のC1〜C4アルキル基であり、
7は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
yは、0,1,2又は3に等しく、好ましくは、0又は1に等しく、そしてさらに好ましくは、0に等しく、そして
【化2】

(式中、
E及びDは、同一又は異なる基であり、そして直鎖又は分岐鎖のC1〜C4アルキルから選択され、
zは、0又は1に等しく、
8、R9及びR10は、同一又は異なる基であり、そして水素又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1〜C4アルキルを表し;詳細には、水素であることが好ましく、
あるいは、R8及びR9又はR10は、上記エポキシを含む2つの炭素原子と一緒になって、5員〜7員のアルキル環を構成することができる。)
である)。
下記を含むエポキシ官能ポリジオルガノシロキサンから成る物質(4.2b):
次の式の少なくとも一つのシロキシ官能単位:
pqSiO[4-(p+q)]/2 (4.2b1)
(式中、
Xは、上記式(4.2a)で定義された通りの基であり、
Gは、上記触媒の活性に好ましくない任意の作用を起こさない一価の炭化水素基であり、そして好ましくは、随意選択的に少なくとも一つのハロゲン原子により置換された、1〜8の炭素原子を有するアルコキシ基から選択され、有利には、メチル、エチル、プロピル、及び3,3,3−トリフルオロプロピル基、又はアリール基、(有利にはキシリル、トリル、及びフェニル基から選択される)から選択され、
pは、1又は2であり、そして
qは、0,1又は2であり、
ここで、p+qは1、2又は3である)、及び
次の式の随意選択的な少なくとも一つのシロキシ官能単位:
rSiO[4-r]/2 (4.2b2)
(式中、Gは、上記と同じ意味を有し、そしてrは、0〜3、好ましくは、1〜3の値を有する。)。
化合物(4.2)は、好ましくはエポキシアルコキシモノシラン(4.2a)である。
上記化合物(4.2)は、上記組成物の総量に基づいて、0.5〜5.0重量%で存在する。
上記化合物(4.2a)の例として:
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、及び
3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリンエトキシシランを言及することができる。
【0039】
本発明に従う、シリコーン組成物の接着促進剤(4)の本質的な最終化合物(4.3)に関して、好ましい物質は、金属Mが、Ti、Zr、Ge、Li、及びMnから成る群から選択される物質である。チタンが特に好ましいことを強調すべきである。金属Mを、例えば、ブトキシ型のアルコキシ基と結合させることができる。
【0040】
上記接着促進剤(4)の化合物(4.3)は、上記組成物の総量に基づいて、0.38〜2.0重量%、好ましくは、0.40〜1.0重量%、そして最も好ましくは、0.45〜0.60重量%存在している。
【0041】
本発明によると、上記接着促進剤(4)を形成させるために好ましい組み合わせの一つは、下記:
3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートシラン(MEMO)、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、及び
ブチルチタネート、
である。
【0042】
定量的には、3つの化合物に関して重量比で表される上記(4.1)、(4.2)及び(4.3)の化合物の重量比は、次の通りであることを明記することができる:
(4.1)10以上、好ましくは15〜70、そしてさらに好ましくは25〜65、
(4.2)90以下であり、好ましくは70〜15、そしてさらに好ましくは65〜25、及び
(4.3)1以上、好ましくは5〜30、そしてさらに好ましくは8〜25、
(4.1)、(4.2)及び(4.3)のこれら合計比率は、100%に等しいことが理解される。
【0043】
一方では、それらは、上記シリコーンコーティングの付着性能と構造性能の間に相関があり、そして他方では、(4.1):(4.2)の重量比があることを示すことができる。従って、この比率は、好ましくは2:1〜0.5:1であり、1:1が特に望ましい。
上記接着促進剤は、組成物の総量に対して、1.1〜12、好ましくは、1.5〜5、そしてさらに好ましくは2〜3重量%の量で存在することが好ましい。
【0044】
本発明に従う、上記組成物は、構造中に少なくとも一つのアルケニル残基を含むポリオルガノシロキサン樹脂(5)を少なくとも一つ必ず含み、そしてこの樹脂は、0.1〜20重量%、そして好ましくは0.2〜10重量%の重量含有率の一又は複数のアルケニル基を有している。
【0045】
これら樹脂は、周知の市販の分岐鎖有機ポリシロキサンポリマー又はオリゴマーである。それらは、溶液状、好ましくは、シロキサン溶液である。それらは、その構造中に、少なくとも二つの異なる官能単位(R3SiO0.5(M官能単位)、R2SiO(D官能単位)、RSiO1.5(T官能単位)、及びSiO2(Q官能単位)の式の官能単位より選択され、これらの官能単位の少なくとも一つは、T又はQ官能単位である)を有する。
上記基Rは、同一又は異なり、そして直鎖又は分岐鎖C1〜C6アルキル基、及びC2〜C4アルケニル、フェニル、並びに3,3,3−トリフルオロプロピル基から選択される。例えば、アルキル基として、Rは、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、及びn−ヘキシルラジカル基であることができ、そしてアルケニル基として、Rは、ビニル基であることができる。
【0046】
前述のタイプの樹脂(5)において、基Rのいくつかは、アルケニル基であることを理解すべきである。
分岐鎖有機ポリシロキサンポリマー又はオリゴマーの例は、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂及びMDT樹脂であり、場合によっては、アルケニル官能基は、M,D、及びT官能単位に伴う。特に好適な樹脂の例として、0.2〜10重量%のビニル基含有率を有する、ビニルMDQ樹脂の製造について言及することができる。
【0047】
この化合物(5)は、上記シリコーンエラストマーコーティングの機械的強度を上げ、そしてその付着を良くする機能を有する。この構造用樹脂は、上記組成物の全成分に対して、10〜70重量%、好ましくは30〜60重量%、そしてさらに好ましくは、40〜50重量%の濃度で存在する。
【0048】
上記ポリオルガノシロキサン樹脂(5)は、少なくとも2重量%、好ましくは4〜14重量%、そして最も好ましくは5〜12重量%のSiO2官能単位(Q官能単位)を含むことが好ましい。
このポリジオルガノシロキサン樹脂(5)は、1000mPa・s以上、そして好ましくは5000〜200,000mPa・sの粘度を有すべきである。
【0049】
望ましい順に、この粘度は、10,000〜200,000mPa・s、特に30,000〜170,000、そして最も好ましくは、50,000〜140,000であるべきである。異なる粘度のいくつかのオイル(1)の混合物の場合には、混合物全体の粘度を評価する。
【0050】
ポリオルガノシロキサンオイル(1)は、重量に関して(weight−wise)、本発明に従う組成物の主要成分である。これは、下記を含む物質であることが有利である。
(i)次の式のシロキシ官能単位:
abSiO[4-(a+b)]/2 (1.1)
(式中、
Tは、アルケニル基、好ましくはビニル又はアリルであり、
Zは、上記触媒の活性に好ましくない任意の作用を起こさない一価の炭化水素基、そして好ましくは、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(随意選択的に、少なくとも一つのハロゲン原子、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、及び3,3,3−トリフルオロプロピル基により置換される)、並びに、好ましくはアリール基(さらに好ましくは、キシリル、トリル、及びフェニル基)から選択され、
aは、1又は2であり、
bは、0,1、又は2であり、そして
a+bは、1〜3、好ましくは、2〜3である)、及び
(ii)随意選択的な、次の式の他のシロキシ官能単位:
cSiO[4-c]/2 (1.2)
(式中、
Zは、上記と同じ意味を有し、
cは、0〜3、好ましくは、2〜3の値を有する。)。
このオイル(1)は、上記組成物の全成分に対して、10〜70重量%、好ましくは、30〜60重量%、そしてさらに好ましくは、40〜60重量%の濃度で存在する。
【0051】
このポリジオルガノシロキサンオイルは、1000mPa・s以上、そして好ましくは、5000〜200,000mPa・sの粘度を有するべきである。
望ましい順に、この粘度は、10,000〜200,000mPa・s、特に30,000〜150,000、そして最も好ましくは、40,000〜110,000であるべきである。異なる粘度のいくつかのオイル(1)の混合物の場合には、混合物全体の粘度を評価する。
【0052】
本明細書中に含まれる上記粘度全ては、それ自体知られている様式、25℃で測定される動的粘度量に相当する。
上記ポリオルガノシロキサンオイル(1)を、式(1.1)の官能単位からのみ形成させることができ、あるいはさらに、式(1.2)の官能単位を含ませることができる。同様に、それは、直鎖、分岐鎖、環状、又は網目構造を有することができる。
【0053】
Zは、メチル、エチル、及びフェニル基から選択されるのが一般的であり、基Zの少なくとも60モル%(又は60数量%)はメチル基である。
式(1.1)のシロキシル官能単位の例は、ビニルジメチルシロキシル官能単位、ビニルフェニルメチルシロキシル官能単位、ビニルメチルシロキシル官能単位、及びビニルシロキシル官能単位である。
【0054】
式(1.2)のシロキシル官能単位の例は、SiO4/2、ジメチルシロキシル、メチルフェニルシロキシル、ジフェニルシロキシル、メチルシロキシル、及びフェニルシロキシル官能単位である。
ポリオルガノシロキサンオイル(1)の例は、直鎖及び環状の化合物、例えば、ジメチルビニルシリル末端ジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端(メチルビニル)(ジメチル)−ポリシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシリル末端(メチルビニル)(ジメチル)ポリシロキサンコポリマー、及び環状メチルビニルポリシロキサンである。
【0055】
上記ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル(2)は、上記シリコーンと結合した少なくとも二つの水素原子を有し、そして好ましくは下記を含む:
(i)次の式のシロキシ官能単位:
deSiO[4-(d+e)]/2 (2.1)
(式中、
Lは、上記触媒の活性に好ましくない任意の作用を起こさない一価の炭化水素基、そして好ましくは、a)1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(随意選択的に、少なくとも一つのハロゲン原子、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、及び3,3,3−トリフルオロプロピル基により置換される)、並びに、b)アリール基(さらに好ましくは、キシリル、トリル、及びフェニル基)から選択され、
dは、1又は2であり、
eは、0、1又は2であり、そして
d+eは、1〜3、好ましくは、2〜3である);及び
(ii)随意選択的な、次の平均式(average formula)の他のシロキシ官能単位:
gSiO[4-g]/2 (2.2)
(式中、
Lは、上記と同じ意味を有し、そして
gは、0〜3、好ましくは2〜3の値を有する。)。
【0056】
このポリオルガノシロキサン(2)の動的粘度は、5mPa・s以上であり、そして好ましくは、10〜100mPa・sである。
このポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル(2)は、上記組成物の全成分に対して、2〜10重量%、好ましくは、3〜8重量%、そしてより好ましくは、4〜6重量%の濃度で存在する。
【0057】
上記ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル(2)を、式(2.1)の官能単位からのみ形成させることができ、あるいは、さらに、式(2.2)の官能単位を含むことができる。
上記ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル(2)は、直鎖、分岐鎖、環状又は網目構造を有することができる。
【0058】
式(2.1)の官能単位の例は:
H(CH32SiO1/2、HCH3SiO2/2、H(C65)SiO2/2である。
式(2.2)の官能単位の例は、式(1.2)の官能単位に関して、上記に記載されるものと同一である。
【0059】
ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル(2)の例は、下記等の直鎖及び環状化合物である:
ハイドロゲンジメチルシリル末端ジメチルポリシロキサン、
トリメチルシリル末端の(ジメチル)(ハイドロゲンメチル)ポリシロキサン官能単位を含むコポリマー、
ハイドロゲンジメチルシリル末端(ジメチル)(ハイドロゲンメチル)ポリシロキサン官能単位を含むコポリマー、
トリメチルシリル末端ハイドロゲンメチル−ポリシロキサン、及び
環状ハイドロゲンメチルポリシロキサン。
【0060】
上記ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル(2)中のケイ素に結合した水素原子数の、上記ポリオルガノシロキサンオイル(1)及び上記樹脂(5)中のアルケニル不飽和を有する基の総数に対する比は、0.4〜10、好ましくは0.6〜5である。
上記重付加シリコーン組成ベースは、直鎖ポリオルガノシロキサン(1)及び(2)例えば、米国特許公開第3,220,972号明細書、同第3,697,473号明細書、及び同第4,340,709号明細書に記載されているものを含むことができるか、あるいは分岐鎖又は網目状ポリオルガノシロキサン(1)及び(2)の両方、例えば、米国特許公開第3,284,406号明細書、及び同第3,434,366号明細書に記載されているものを含むことができる。
【0061】
下記を用いることが好ましい。
式(1.2)(式中、cは2である)の官能単位から形成される鎖を含む、少なくとも一つの直鎖のポリオルガノシロキサンオイル(1)、これらは、式(1.1)(式中、aは1であり、そしてbは2である)の官能単位によりそれらの各末端においてブロックされている、及び
構造中に、上記ケイ素と結合した少なくとも3つの水素原子を含む少なくとも一つの直鎖ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル(2)、これらは、鎖及び/又は鎖末端に位置している。
【0062】
下記を用いることも最も好ましい。
式(1.2)(式中、cは2である)の官能単位から形成される鎖を含む少なくとも一つの直鎖のポリオルガノシロキサンオイル(1)、これらは、式(1.1)(式中、aは1であり、そしてbは2である)の官能単位によりそれらの各末端においてブロックされている、及び
式(2.1)(式中、dは1であり、そしてeは1である)の官能単位から形成される鎖を含む少なくとも一つの直鎖ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル(2)、
随意選択的な式(2.2)(式中、gは2である)の官能単位、これらは式(2.1)の官能単位によってそれらの各末端においてブロックされている。
【0063】
上記触媒(3)はまた、周知である。好ましくは、白金及びロジウム化合物が用いられる。最も好ましくは、米国特許公開第3、159,601号明細書、同第3、159,602号明細書、同第3,220,972号明細書、並びに欧州特許出願公開第0,057,459号明細書、同第0、188,978号明細書、及び同第0,190,530号明細書に記載されるような、白金及び有機物質の錯体と、米国特許公開第3,419,593号明細書、同第3,715,334号明細書、同第3,377,432号明細書、及び同第3,814,730号明細書に記載されるような、白金及びビニルオルガノシロキサンの錯体とが用いられる。
好ましい触媒である白金を用いて、触媒(3)の重量は、白金金属の重量に関して計算され、そして一般的に2〜100ppm、そして好ましくは5〜50ppmである。これら重量は、上記組成物の総量に基づいている。
【0064】
本発明に従う上記シリコーン組成物はまた、下記化合物から選択される付加反応抑制剤(6)(架橋抑制剤)を含む:
随意選択的に、環状構造中に存在することができる少なくとも一つのアルケニル基で置換されたポリオルガノシロキサン(テトラメチルビニルテトラシロキサンであることが特に望ましい)、
ピリジン、
有機ホスフィン及びフォスファイト、
不飽和アミド、
アルキルマレエート、並びに
アルキルアルコール。
【0065】
好ましい熱ヒドロシリル化反応ブロック剤(blockers)の一部を形成する、これらのアルキニルアルコール(フランス国特許第1,528,464号明細書、及びフランス国特許出願公開第2,372,874号明細書を参照)は、下記化学式:
R’−(R”)C(OH)−C≡CH
(式中、
R’は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はフェニル基であり、
R”は、H又は直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシル基若しくはフェニル基であり、基R’,R”、及び三重結合に関してα位にある炭素原子は、R’,及びR”中に含まれる炭素原子の総数が、少なくとも5、好ましくは9〜20であるという条件で随意選択的に、環を形成することができる。)を有する。
【0066】
上記アルコールを250℃よりも高い沸点を有するアルコールから選択することが好ましい。
下記が、これらアルコールの例である:
1−エチニル−1−シクロヘキサノール(1−ethynyl−1−cyclohexanol)、
3−メチル−1−ドデシン−3−オール(3−methyl−1−dodecyn−3−ol)、
3,7,11−トリメチル−1−ドデシ−3−オール(3,7,11−trimethyl−1−dodecyn−3−ol)、
1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール(1,1−diphenyl−2−propyn−l−ol)、
3−エチル−6−エチル−1−ノニン−3−オール(3−ethyl−6−ethyl−l−nonyn−3−ol)、
2−メチル−3−ブチン−2−オール(2−methyl−3−butyn−2−ol)、及び
3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール(3−methyl−l−pentadecyn−3−ol)。
【0067】
これらのα−アルキニルアルコールは、市販の製品である。
上記抑制剤(6)は、上記組成物の総量に対して、0.01〜0.1重量%の量で存在する。
【0068】
本発明の組成物は、シリコーン技術分野では周知である安定化剤(例えば、オルトリン酸溶液)を随意選択的に含むことができる。上記安定化剤は、最終組成物中に、上記組成物の総量に基づいて、好ましくは0.01〜0.1%存在すべきである。
それ自体公知の様式では、一つ又はいくつかの添加剤、例えば着色剤を、上記シリコーンエラストマー組成物に追加することができる。
【0069】
これらの態様に従って、本発明は、上述の上記シリコーン組成物向けの二成分前駆体系を使用することに関している。上記前駆体系は、二つの別の部分A及び部分Bの状態にある。これらは、上記組成物を形成させるためにともに混合されることを意図している。これらの部分A又は部分Bの一つは、触媒(3)と、ポリオルガノシロキサン種(1)又は(2)のうち一つのみとを含んでいる。この前駆体系の別の特徴は、上記ポリオルガノシロキサン(2)を含む上記部分A又は部分Bが、上記接着促進剤(4)の化合物(4.3)と分離されていること、そして接着促進剤(4)の化合物(4.1)を含む部分A又はBが、触媒(3)を含まないことである。この前駆体系のさらに別の特徴は、樹脂(5)を、部分A若しくは部分B、又はAとBの両方で用いることができること、そして触媒(3)が、ポリオルガノシロキサン(2)及び樹脂(5)を含む部分A又は部分B中に存在してはいけないことである。
【0070】
従って、部分Aは、例えば、ポリオルガノシロキサン(1)、ポリオルガノシロキサン(2)、接着促進剤(4)の化合物(4.1)及び(4.2)、樹脂(5)の一部、並びに随意選択的な架橋抑制剤(6)を含むことができ、一方、部分Bは、例えば、ポリオルガノシロキサン(1)の残りの部分、触媒(3)、接着促進剤(4)の化合物(4.3)、樹脂(5)の残りの部分、及び随意選択的な着色成分を含むことができる。
【0071】
部分A及び部分B並びにそれらの混合物の粘度を、成分の量を変えること、そして異なる粘度のポリオルガノシロキサンを選択することにより調製することができる。
一度、部分A及び部分Bをともに混合すると、それらは、すぐに使用可能な低温硬化シリコーン組成物を形成し、好適なコーティング手段、例えば、ドクターブレード又はローラーにより、生地に適用することができる。
【0072】
コーティングすべき生地に適用された上記組成物を、低温、すなわち、室温に近い温度(23℃)で架橋させることができるが、本発明に従う化合物をまた、熱的に促進させる様式及び/又は電磁線(電子線)により架橋させることができることに留意するべきである。
【0073】
本発明に従う上記組成物を、多孔質の柔軟性のある生地、特に、織布(woven)、編物(knitted)又は不織布(non−woven)の繊維状生地(好ましくは、天然又は合成起因の繊維で作られた織布)又はそれらの混合物を、カバー又はコーティングするために用いることができる。例には、綿、羊毛、絹、ジュート、リネン、アセテート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートを含む)、ポリアミド(ナイロンを含む)、アクリル、オレフィン、アラミド、アジオン(azion)、ガラス、モダクリリック、ノボロイド、ニトリル、レーヨン、サラン、スパンデックス、ビニル、ビニヨン、再生セルロース、セルロースアセテート等が含まれる。天然及び合成繊維のブレンドもまた、用いることができる。上記布帛を、ポリエステル繊維で構成することが最も好ましい。
【0074】
本発明の医療用布帛は、好ましくは、100%ポリエステルフィラメントヤーンの織布である(ナイロンは耐久性に欠き、そして通常は、医療用途のバリア布帛には、不適当である。)。所望の布帛密度を得るために、上記ヤーンのデニールは、1インチ当たり少なくとも100のたて糸(end)及びよこ糸(pick)の合計(「巻き数(round count)」と呼ばれることもある)と組み合わせて、50〜100の範囲とするのが通常である。
【0075】
仕上げ前の上記織布は、約60〜300g/m2、好ましくは60〜180g/m2の重量を有し、そして約75g/m2が最も望ましい値である。
【0076】
コーティング前に、上記織布を、糸くず等の異物を除去するために洗浄及び乾燥するのが通常である。次いで、標準的な、適切なテキスタイル仕上げ装置を用いて、処理浴を施され、そこでは、コーティング操作前に、上記布帛に種々の添加剤を適用することができる。典型的な添加剤には、抗菌剤、例えば、3−(トリメトキシシリル)−プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド;静電防止剤化合物、例えば、第四級アンモニウム及びアルキルアミン化合物;及び難燃剤、例えば、環状のホスホン酸エステルが含まれる。それらの全ては、当業者に周知である(例えば、米国特許第4,919,998号明細書を参照のこと。)。上記コーティング処理前に、疎水性ポリエステル布帛に、親水仕上げをまた、適合することができる(米国特許第5,183,702号明細書に開示されている)。
【0077】
任意の添加剤を用いて上記布帛を処理した後、追加の処理前に、水分を除去するために乾燥させる。
【0078】
本発明の方法では、上記ポリオルガノシロキサンコーティング組成物を、一般的な高速アプリケーター(ドクターブレード及びローラー等)を用いて、2パスでポリエステル布帛の片面に適用する。:全てのポリマー組成物における30〜150g/m2の含浸重量のために、第一のパスは、10〜45g/m2の範囲で、上記布帛上に、第一の低コーティング含浸重量を適用し、そして第二のパスは、当該第一のコーティング上に、20〜105g/m2の第二の高重量のコーティングを適用する。
【0079】
上記2パスの適用法は、1パス法よりも、少なくとも二つの大きな利点を有する。最初に、第一のコーティングの上に第二のコーティングを適用することで、未コーティング材料のピンホール又は領域の可能性が事実上排除され、そして重要な追加の機械的圧力を適用して、ポリマー組成物を上記布帛中に導入させる。すなわち、一回の高含浸重量のコーティングを用いた場合、ドクターブレードは生地から離れ、大量のポリマー組成物が上記布帛上を流れてしまう。ひいては、ドクターブレードによって、非常に小さな圧力が、布帛上に直接適応される。しかし、第一の非常に薄く、軽含浸重量のコーティングを用いると、上記ブレードは、実際には上記布帛の表面に非常に近く、機械的圧力がほぼ直接、布帛に適用される。結果として、上記低粘度のポリマー組成物が、織布の隙間に本質的に入り込む。このさらなる圧力は、特に医療用途(例えば、外科用ガウン、及び無菌布)を目的とする布帛、非常に目の詰んだ織布(すなわち、非常に滑らかな表面を有し、そして当該隙間が極めて小さい)を目的とする布帛に非常に重要である。
【0080】
上記未硬化のコーティングされた布帛を、エラストマーコーティングの硬化を促進するため、加熱オーブン(通常は、約180〜220℃で、15秒〜4分)に通すのが通常である。最適な時間及び温度を、組成、コーティング厚等に基づいて容易に決定することができる。本発明の上記2パス法を用いて、第一の適用された低含浸重量コーティングの硬化を、遅らせるか又はさらにゆっくり硬化させ、上記布帛にさらに効果的に浸透する低粘度組成物とすることができる。硬化の際のこの遅延を達成するための方法の一つは、上記オーブンの初期段階でより低い温度を単に用いることである。例えば、一般的なオーブンは、長さが30〜90フィートで、そして約2〜12個のステージ、チャンバー、又は加熱ユニットを含むことができる。
【0081】
そのため、上記ステージを、最初のユニット内の約180℃から最終ユニット内の約220℃まで上昇させて加熱するのが通常である。本発明の方法では、上記第一のコーティングを、約150℃のみの温度を有する初期ユニットを用いて硬化させることができる。思いがけなくも、この低温初期硬化における加熱は、実際には、反応抑制剤が揮発する機会を有しかつ硬化が始まる前に、最初にポリマー組成物の粘度を減少させる原因となる。もちろん、これは、結果として固化が発生する架橋の前に、第一のコーティング材料が上記布帛に浸透するのに役立つ。本発明の第一のコーティングは、上記布帛の表面の本質的な「下塗り」であるということができる。
【0082】
上記第一のコーティングが本質的に硬化したか、又は少なくとも部分的に硬化した後、第二のより高含浸重量のコーティングを、上記第一のコーティング上に適用し、そして一般的な時間及び温度を用いて迅速に硬化させる。
【0083】
使用において、コーティングされた布帛の未コーティング面は、潜在的に汚染されたか又は危険な環境、例えば、体液及び/又は伝染性微生物を含む可能性があるものに面する(以下、「コーティングされた布帛の外面」という。)。そして、コーティングされた布帛の、上記ポリオルガノシロキサン組成物の面は、保護すべき表面、例えば、医療従事者の身体、又は手術野(surgical field)の領域に面する(以下、「コーティングされた布帛の内面」という。)。
【0084】
上記コーティングされた布帛の内面は、医療従事者の皮膚に接触する可能性があるので、例えば、医療用衣料における製造において、上記コーティングされた布帛の内面に、さらに見て美しい感じの良さを与え、そしてそれに満足のいく感触の品質を付与するために、やわらかい布帛ライナー(すなわち、インナー層、好ましくは天然繊維又は天然/合成繊維ブレンドで構成されるインナー層)を、上記コーティングされた布帛のシリコーンコーティングされた内面上に重ねることが好ましい。上記インナーの例には、リネン、綿、及び綿/ポリエステルブレンドで構成されるものが含まれる。上記コーティングされた布帛の内面が重ねられうることがまた想定され、通常、(i)製品の事前作成された織布製品、例えば、外科用ガウン又は無菌布(特に、上記ガウンの前面(エプロン等)及び袖に必要な領域において)、(ii)上記材料及びコーティングされたバリア布帛を、物品(上記例示された外科用ガウン又は無菌布を製造する前の繊維材料等)に縫い合わせる。
【0085】
バリア布帛の耐久性及び実用性の評価、特に医療用バリア布帛として利用されるものの実用性にとって、最も重要なことは、ASTM D 751(A)Mullen型の流体静力学試験、及びASTM D 751(B)HydroSuter試験等の耐流体静力学試験の結果である。上記Mullen試験では、布帛のコーティングされた面を、次第に高くなる圧力及び上記布帛の「漏れ」が記録される圧力で、流体(通常は水)にさらす。上記医療用バリア布帛分野の重要性は、上記布帛が「漏れ」が生ずるまで耐えられた洗浄/オートクレーブサイクルの回数である。
【0086】
上記HydroSuter試験では、コーティングされた布帛は、外面を備える装置のカラムに置かれ、上記表面は、通常、潜在的に危険な環境に面しており、水のすすぎカラムに面している(すなわち、コーティングされた面が、水に面している)。従って、上記エラストマーコーティングは、液体に対する絶対的な非透過性を有しなければならないだけでなく、増加する水頭の圧力の下、破壊を避けるための伸縮特性と共に、布帛への優れた付着を実証しなければならない。この試験では、コーティングされた生地は、水滴が見えるか、あるいは上記材料が破壊された場合には、不合格となる。Mullen試験と同様に、水滴が現れるまで、上記布帛が耐えることができる洗浄/オートクレーブサイクルの回数は重要である。
【0087】
本発明は、医療用バリア布帛産業の最も厳しい基準を満たすことができる、改良されたバリア布帛を提供するが、本発明は、その領域に限定されないと理解すべきである。実は、上記方法、及び上記方法を用いて製造された製品を、同様の特性が要求される任意の用途、例えば、テント用布帛、アウトドア布地及びカバー等向けに用いることができる。
【0088】
本明細書で用いるように、用語「本質的に成る」は、所与の組成物又は生成物の好ましい特性に大きな影響を与えない追加の材料の存在を除外するものではない。
操作例さもなければ他に示された場合以外、本明細書で用いられる成分又は反応条件の量を表す数は、用語「約」によって、全ての場合において修正するように理解される。
【実施例】
【0089】
その組成物の調製、及びポリエステル製医療用バリア布帛向けのコーティングとしての用途を実証する次の例により、本発明をさらに明確に理解することができ、そして本発明の優位性及び別の実施形態を明確にすることができる。下記例は、本発明を制限することを、決して意図するものではない。本発明の強化された性能特性を、比較試験によって、実証する。
【0090】
全てのパーセンテージ及び比率は、他に示されない限り、重量によるとみなされる。
下記例において用いられている特定の洗浄/オートクレーブサイクルは、次の表1に記載されている。
【0091】
【表1】

【0092】
乾燥後、260°F、約15分間、オートクレーブサイクルを用いて、上記布帛を殺菌した。
これらの例では、室温において、ブルックフィールド型粘度計を用いて、粘度を測定した。
【0093】
例I
満たされるシリコーンコーティング組成物の調製(比較例1)
1.1 2成分系の部分Aの調整
下記を、室温で反応器に導入した。
47.7部の下記の事前調製された混合物:
(a)0.8重量%のビニル基(Vi)を含み、そして(CH32SiO0.5官能単位を27重量%、(CH32ViSiO0.5官能単位を0.15重量%、(CH32SiO官能単位を60重量%、(CH3)ViSiO官能単位を2.4重量%、そしてSiO2官能単位を9.6重量%からなるMMViDDViQ構造を有する樹脂を40重量%(以下、この成分を、「樹脂(5)」と称する。)、及び
(b)60,000mPa・sの粘度を有し、(CH32ViSiO0.5官能単位によって各鎖末端において停止されている樹脂を60重量%(以下、この成分を「希釈剤A」と称する。)。
【0094】
100,000mPa・sの粘度を有し、100gのオイル当たり0.003個のVi−Si官能基を含み、(CH32ViSiO0.5官能単位によって、各鎖末端において停止されているポリジメチルシロキサンオイルから成る高粘度オイルのポリオルガノシロキサンオイルを27重量部(以下、この成分を、「高粘度オイル(1)」と称する。)。
材料の表面に官能基を追加するか、あるいは加熱する等の相溶化処理を受けていない、Albacar5970として市販される炭酸カルシウム(CaCO3)固体を16部:この充填剤は、縫い終わった縫い目を強化するため、そして布帛に引き裂き抵抗を付与するために用いられることが多い。
25mPa・sの粘度を有し、そして100gのオイル当たり計0.7個のH−Si官能基を含み、(CH32HSiO0.5官能単位によって各鎖末端において停止されているポリ(ジメチル)(ハイドロゲンメチル)シロキサンオイルから成るポリオルガノシロキサンのオイルを6部(以下、この成分を、「オイル(2)」と称する。)。
ビニルトリメトキシシランから成る接着促進剤(4)の化合物(4.1)を1重量部(以下、この成分を、「VTMO(4.1)」と称する。)。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランから成る接着促進剤(4)の化合物(4.2)を1重量部(以下、この成分を、「GLYMO(4.2)」と称する。)。
【0095】
1.2 2成分系の部分Bの調製
下記を、室温で反応器に導入した。
45部の下記の事前調製された混合物:
(a)0.8重量%のビニル基(Vi)を含み、そして(CH32SiO0.5官能単位を27重量%、(CH32ViSiO0.5官能単位を0.15重量%、(CH32SiO官能単位を60重量%、(CH3)ViSiO官能単位を2.4重量%、そしてSiO2官能単位を9.6重量%からなるMMViDDViQ構造を有する樹脂を40重量%(以下、この成分を、「樹脂(5)」と称する。)、及び
(b)60,000mPa・sの粘度を有し、(CH32ViSiO0.5官能単位によって各鎖末端において停止されている樹脂を60重量%(以下、この成分を「希釈剤A」と称する。)。
【0096】
100,000mPa・sの粘度を有し、100gのオイル当たり0.003個のVi−Si官能基を含み、(CH32ViSiO0.5官能単位によって、各鎖末端において停止されているポリジメチルシロキサンオイルから成る高粘度オイルのポリオルガノシロキサンオイルを51重量部(以下、この成分を、「高粘度オイル(1)」と称する。)。
ブチルチタネートTi(OBu)4から成る接着促進剤(4)の化合物(4.3)を4重量部(以下、この成分を、「TBT(4.3)」と称する。)。
Karstedt触媒として公知であり、10重量%の白金金属を含む、有機金属錯体の状態で導入される、白金金属触媒を0.02重量部(以下、この成分を、「白金触媒(3)」と称する。)。
【0097】
1.3 コーティング組成物の調製
上記コーティング組成物を、室温において、100重量部の部分Aと、10重量部の部分Bとを混合させて得た。そのようにして、対照比較組成物を得た。
【0098】
例II
ポリエステル製織布をコーティングするための、例Iの満たされるシリコーンコーティング組成物の使用
2.1 適用の手順
例Iの組成物を、標準のナイフオーバーロール法を用いて、70デニールのポリエステル製織布上に堆積した。上記コーティング組成物を、上記布帛に、約135g/m2の含浸重量を用いて1パスで堆積させた。次いで、硬化を行わせるために、上記エラストマーコーティングを、180℃で、80秒間、オーブン内で架橋させた。
【0099】
次いで、上記コーティングされた布帛を、複数回の上述の洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクルにさらし、そして上記布帛の試料を、規則的な間隔で試験し、十分な保護用バリア品質が持続しているかどうか試験した。
2.2 結果
上記例IIの方法により調製したバリア布帛に、Mullen及びHydroSuter試験を行う一方で、生じた失敗回数によって描写される結果により、ポリエステル製織布生地からコーティングの大きな層間剥離が生じ、ひいては、上記保護用バリア布帛が、25〜50回の洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクルで破断したことが示された。
【0100】
例III
ポリエステル製織布をコーティングするための、例Iの満たされるシリコーンコーティング組成物の使用(方法の改良1)
3.1 適用の手順
例2.1のように、例Iの組成物を、標準的なナイフオーバーロール方法を用いて、70デニールのポリエステル製織布に堆積させた。しかし、上記コーティング組成物を、2パスで堆積させた。第一のコーティングは、約37g/m2の低含浸重量コーティングであり、そして上記第一のコーティングの頂部に適用される第二のコーティングは、約98g/m2の高含浸重量を有するコーティングであった。上記布帛への総含浸重量は、例2.1のように約135g/m2のままであった。第一のエラストマーコーティングを、180℃で開始し、200℃で終了するオーブン内で、60秒間架橋させ、第二のコーティングを適用する前に硬化を実施した。次いで、二重のコーティングがされた布帛を、再度80秒間、180℃で開始しかつ200℃で終了する上記オーブン内に通した。
【0101】
次いで、上記コーティングされた布帛を、複数回の上述の洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクルにさらし、そして上記布帛の試料を規則的な間隔で試験し、十分な保護用バリア品質が持続しているかどうか試験した。
【0102】
3.2 結果
上記例IIIの方法により調製したバリア布帛に、Mullen及びHydroSuter試験を行う一方で、起きた失敗回数によって描写される結果により、例IIの1パス法がわずかに改良されるものの、上記ポリエステル製織布からの上記コーティングに相当量の層間剥離がまだ生じ、そして上記保護用バリア布帛が、約50回の洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクルで破断したことが示された。
【0103】
例IV
ポリエステル製織布をコーティングするための、例Iの満たされるシリコーンコーティング組成物の使用(方法の改良2)
4.1 適用の手順
例3.1のように、例Iの組成物を、標準的なナイフオーバーロール方法を用いて、70デニールのポリエステル製織布に堆積させた。また、例3.1のように、上記コーティング組成物を、2パスで堆積させた。第一のコーティングは、約37g/m2の低含浸重量コーティングであり、そして上記第一のコーティングの頂部に適用される第二のコーティングは、約98g/m2の高含浸重量を有するコーティングであった。上記布帛への総含浸重量は、例2.1のように約135g/m2のままであった。しかし、硬化する前かつ第二のコーティングが適用される前に、架橋工程を遅らせ、上記ポリエステル製織布内により深く浸透させるために、第一のエラストマーコーティングを、150℃で開始しかつ200℃で終了するオーブン内で、60秒間架橋させた。次いで、二重のコーティングがされた布帛を、再度80秒間、180℃で開始しかつ200℃で終了する上記オーブン内に通し、上記第二のコーティングの硬化を即座に実施した。
【0104】
次いで、上記コーティングされた布帛を、複数回の上述の洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクルにさらし、そして上記布帛の試料を規則的な間隔で試験し、十分な保護用バリア品質が持続しているかどうか試験した。
【0105】
4.2 結果
上記例IVの方法により調製したバリア布帛に、Mullen及びHydroSuter試験を行う一方で、起きた失敗回数によって描写される結果によって、例3の2パスの迅速硬化法がわずかに改良されるものの、上記ポリエステル製織布生地からのコーティングの数回の層間剥離が依然生じ、そして上記保護用バリア布帛が、約50〜75回の洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクルで破断したことが示された。
【0106】
例V
本発明のシリコーンコーティング組成物の調製
5.1 二成分系の部分Aの調製
下記を、室温で反応器に導入した;
100,000cpsの粘度及び110,000g/モルの平均分子量のビニル末端ポリジメチルシロキサンオイルを44.6重量部(以下、この成分を「高粘度オイル(1)」と称する。);
MDViQ樹脂(40%)と、約90,000g/モルの平均分子量を有し、60,000cpsの粘度のビニル末端ポリジメチルシロキサンオイル(60%)との混合物を47.7重量部(以下、この成分を「樹脂(5)」と称する。);
鎖の末端及び規則的な間隔で鎖上にある、ケイ素原子と結合した水素原子を含むポリハイドロゲンオルガノシロキサン架橋剤を5.6重量部。上記架橋剤は、0.7重量%の水素原子を有し、2,500の平均分子量を有し、25cpsの粘度を有する(以下、この成分を「オイル(2)」と称する。);
1−エチニル−l−シクロヘキサノールから成る抑制剤を0.025重量部(以下、この成分を「抑制剤(6)」と称する。);
ビニル官能基とのアルコキシル化オルガノシラン、すなわち、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートから成る、接着促進剤(4)の化合物(4.1)を1重量部(以下、この成分を「MEMO(4−1)」と称する。);
エポキシ官能アルコキシル化オルガノシラン、すなわち、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランから成る、接着促進剤(4)の化合物(4.2)を1重量部(以下、この成分を「GLYMO(4.2)」と称する。):及び
オルトリン酸(H3PO4)に基づく安定化剤を0.025(以下、この成分を「SOL 110」と称する。)。
【0107】
5.2 二成分系の部分Bの調製
下記を、室温で、反応器内で混合させた;
100,000cpsの粘度及び約110,000g/モルの平均分子量の、ビニル末端ポリジメチルシロキサンオイルを50.4重量部(オイル(1));
MDViQ樹脂(40%)と、約90,000g/モルの平均分子量を有し60,000cpsの粘度のビニル末端ポリジメチルシロキサンオイル(60%)との混合物を44.45重量部(樹脂(5));
白金金属触媒、すなわち、塩化白金酸を0.0215重量部(白金触媒(3)):及び
付着促進剤として、並びに付着促進剤系用の縮合触媒として作用するアルコキシ−チタン化合物、すなわち、ブチルチタネート(Ti(OBu)4)から成る接着促進剤(4)の化合物(4.3)を4.95重量部(TBT(4.3))。
【0108】
5.3 二成分系の調製
100重量部の部分A及び10重量部の部分Bを、室温で混合して、上記二成分系を得た。この組成物の全ての組成を、表IIに示す。
【0109】
【表2】

【0110】
比較例Iの組成物により例証される先の布帛コーティング分野の組成と、例Vの組成物により例証される本発明の組成物の大きな違いは、
a)任意の充填剤材料、補強充填剤、又は他のものがないこと;
b)接着促進剤触媒濃度の増加、すなわち、Ti(OBu)4(TBT)は組成物の総量に基づいて、0.36から0.45パーセントに増加したこと;そして
c)架橋抑制剤が存在すること(いくつかの優位性の中で、架橋抑制剤により、架橋前の第一のコーティングのオーブン内での粘度が低下する。)、
である。
【0111】
例VI
ポリエステル製織布をコーティングするための、例VIのシリコーンコーティング組成物の使用(方法の改良3)
6.1 適用の手順
例Vの組成物(本発明の組成物)を、標準的なナイフオーバーロール方法を用いて、70デニールのポリエステル製織布に堆積させた。例4.1のように、上記コーティング組成物を、2パスで堆積させた。第一のコーティングは、約37g/m2の低含浸重量コーティングであり、そして上記第一のコーティングの頂部に適用される第二のコーティングは、約98g/m2の高含浸重量を有するものであった。上記布帛への総含浸重量は、例2.1のように約135g/m2のままであった。また、例4.1のように、硬化させる前かつ第二のコーティングの適用前に、架橋工程を遅らせ、上記ポリエステル製織布内により深く浸透させるために、第一のエラストマーコーティングを、150℃で開始しかつ200℃で終了するオーブン内で、約60秒間架橋させた。次いで、二重のコーティングがされた布帛を、再度80秒間、180℃で開始しかつ200℃で終了する上記オーブン内に通し、上記第二のコーティングの硬化を即座に実施した。
【0112】
次いで、上記コーティングされた布帛を、複数回の上述の洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクルにかけ、上記布帛の試料を規則的な間隔で試験し、十分な保護用バリア品質が持続しているかどうか試験した。
【0113】
6.2 結果
上記例VIの方法により調製したバリア布帛に、Mullen及びHydroSuter試験を行う一方で、起きた失敗の回数によって描写される結果により上記保護用バリア布帛に破断の兆候が観察されるまでに、上記布帛が耐える洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクル回数が大幅に増えた。予想外にも、上記コーティングされた布帛は、任意の保護特性の損失又はポリエステル製織布生地からのコーティングの層間剥離を生ずることなく、75回超のきわめて厳しい洗浄/オートクレーブ/乾燥サイクルに耐えることができた。
【0114】
当該開示の境界及び範囲を、次のパラグラフに開示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の各段階を含むバリア布帛の製法:
下記(1)〜(6)から本質的に成るコーティング組成物を調製する段階:
(1)一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも二つのC2〜C6アルケニル基を有する、少なくとも一種のポリオルガノシロキサンオイル、
(2)一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも2つの水素原子を有する、少なくとも一種のポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル、
(3)白金族に属する少なくとも一種の金属を含んで成る、触媒として有効な量の少なくとも一種の触媒、
(4)下記(4.1)〜(4.3)から本質的に成る接着促進剤:
(4.1)3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートシラン(MEMO)、
(4.2)少なくとも一つのエポキシ基を含む、少なくとも一種の有機ケイ素化合物、及び
(4.3)前記コーティング組成物の総量に基づいて、0.38〜2.0重量%の、少なくとも一種の金属Mキレート及び/又は次の一般式の一つの金属アルコキシド:M(OJ)n(式中、nはMの原子価に等しく、そしてJは直鎖又は分岐鎖のC1〜C8アルキルに等しく、MはTi、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al及びMgから成る群から選択される。)、
(5)R3SiO0.5(M官能単位)、R2SiO(D官能単位)、RSiO1.5(T官能単位)、及びSiO2(Q官能単位)から成る群から選択される少なくとも2種の官能単位を有する、少なくとも一種のポリオルガノシロキサン樹脂、ここで、少なくとも一種の官能単位は、T又はQ官能単位であり、ここで、R基は同一又は異なり、そして直鎖又は分岐鎖のC1〜C6アルキル、C2〜C4アルケニル、フェニル、又は3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、前記樹脂は、0.1〜20重量%のアルケニル基重量含有率を有する、並びに
(6)少なくとも一種の架橋抑制剤;
10〜45g/m2の前記コーティング組成物を用いて、織布の片面に第一のコーティングを適用する段階;
前記第一のコーティングを、少なくとも部分的に硬化させる段階;
20〜105g/m2の前記コーティング組成物を用いて、前記少なくとも部分的に硬化させた第一のコーティング上に第二のコーティングを適用する段階、前記第二のコーティングの露出面を前記布帛の内面とみなし、そして前記布帛の未コーティング面を外面とみなす、そして
前記第一のコーティングの硬化速度が前記第二のコーティングの硬化温度よりも遅いという条件で、前記第二のコーティングを硬化させる段階。
【請求項2】
前記コーティングされたバリア布帛の前記内面に対して、第二の布帛を上に重ねるさらなる段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング組成物において:
一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも二つのC2〜C6アルケニル基を有する前記ポリオルガノシロキサンオイルが、10〜70重量%で存在し、
一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも二つの水素原子を有する前記ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイルが、2〜10重量%で存在し、
前記接着促進剤が、1.1〜12重量%で存在し、
前記樹脂が、10〜70重量%で存在し、そして
前記架橋抑制剤が、0.01〜0.1重量%で存在し、上記全ての重量%は、前記組成物の総重量に基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接着促進剤の前記有機ケイ素化合物が、
次の一般式:
【化1】

[式中、
6は、直鎖又は分岐鎖のC1〜C4アルキル基であり、
7は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
yは、0、1、2、又は3に等しく、そして
【化2】

(式中、
E及びDは、同一又は異なって、直鎖又は分岐鎖のC1〜C4アルキルであり、
zは、0又は1に等しく、
8、R9及びR10は、同一又は異なる基であり、そして水素、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1〜C4アルキルであり、
あるいは、R8及びR9又はR10は、上記エポキシを含む2つの炭素原子と一緒になって、5員〜7員のアルキル環を構成することができる。)である。〕を含むか、又は
次の式の少なくとも一つのシロキシ官能単位:
pqSiO[4-(p+q)]/2 (4.2b1)
(式中、
Xは、上記式(4.2a)で定義される基であり、
Gは、前記触媒の活性に好ましくないいかなる作用も有しない一価の炭化水素基であり、
pは、1又は2であり、そして
qは、0,1又は2であり、
ここで、p+qは1、2又は3である。)及び
次の式の随意選択的な、少なくとも一つのシロキシ官能単位:
rSiO[4-r]/2 (4.2b2)
(式中、Gは上記と同一の意味を有し、そしてrは0〜3の値を有する。)、
を含むエポキシ官能ポリジオルガノシロキサン、
のどちらかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接着促進剤の前記有機ケイ素化合物が、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記接着促進剤の前記金属アルコキシドが、アルコキシチタンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接着促進剤の前記アルコキシチタンが、ブチルチタネートである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記接着促進剤が、下記:
3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートシラン(MEMO)、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、及び
ブチルチタネート、
から本質的に成る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記接着促進剤の総重量に基づく重量%で表される前記接着促進剤の成分の重量割合が、次の通りである、請求項8に記載の方法:
MEMOは、15〜70重量%の範囲で存在し、
前記有機ケイ素化合物は、70〜15重量%の範囲で存在し、そして
前記金属キレート又はアルコキシドは、5〜30重量%の範囲で存在する。
【請求項10】
一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも2つのC2〜C6アルケニル基を有する前記ポリオルガノシロキサンオイルが、下記を含んで成る、請求項1に記載の方法:
(i)次の式のシロキシル官能単位:
abSiO[4-(a+b)]/2 (1.1)
(式中、
Tは、アルケニル基、好ましくはビニル又はアリルであり、
Zは、前記触媒の活性に好ましくないいかなる作用も有しない一価の炭化水素基であり、
aは、1又は2であり、
bは、0,1、又は2であり、そして
a+bは、1〜3である。)、及び
(ii)随意選択的な、次の式の他のシロキシ官能単位:
cSiO[4-c]/2 (1.2)
(式中、
Zは、上記と同一の意味を有し、そして
cは、0〜3の値を有する。)。
【請求項11】
一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも2つの水素原子を有する前記ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイルが、下記を含んで成る、請求項1に記載の方法:
(i)次の式のシロキシル官能単位:
deSiO[4-(d+e)]/2 (2.1)
(式中、
Lは、前記触媒の活性に好ましくないいかなる作用も有しない一価の炭化水素基であり、
dは、1又は2であり、
eは、0、1又は2であり、そして
d+eは、1〜3の値を有する。)、及び
(ii)随意選択的な、次の平均式の他のシロキシ官能単位:
gSiO[4-g]/2 (2.2)
(式中、
Lは、上記と同一の意味を有し、そして
gは、0〜3の値を有する。)。
【請求項12】
次の各段階を含むバリア布帛の製法:
下記(1)〜(6)から本質的に成るコーティング組成物を調製する段階、
(1)下記(i)及び(ii)を含んでなる、一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも2つのC2〜C6アルケニル基を有する少なくとも一種の前記ポリオルガノシロキサンオイル:
(i)次の式のシロキシル官能単位:
abSiO[4-(a+b)]/2 (1.1)
(式中、
Tは、アルケニル基、好ましくはビニル又はアリルであり、
Zは、前記触媒の活性に好ましくないいかなる作用も有しない一価の炭化水素基であり、
aは、1又は2であり、
bは、0,1、又は2であり、そして
a+bは、1〜3である。)、及び
(ii)随意選択的な、次の式の他のシロキシ官能単位:
cSiO[4-c]/2 (1.2)
(式中、
Zは、上記と同一の意味を有し、そして
cは、0〜3の値を有する。)、
(2)下記(i)及び(ii)を含んでなる、一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも2つの水素原子を有する、少なくとも一種の前記ポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル:
(i)次の式のシロキシル官能単位:
deSiO[4-(d+e)]/2 (2.1)
(式中、
Lは、前記触媒の活性に好ましくないいかなる作用も有しない一価の炭化水素基であり、
dは、1又は2であり、
eは、0、1又は2であり、そして
d+eは、1〜3の値を有する。);及び、
(ii)随意選択的な、次の平均式の他のシロキシ官能単位:
gSiO[4-g]/2 (2.2)
(式中、
Lは、上記と同一の意味を有し、そして
gは、0〜3の値を有する。)、
(3)白金族に属する少なくとも一種の金属を含んで成る、触媒として有効な量の少なくとも一種の触媒、
(4)下記から本質的に成る接着促進剤:
3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートシラン(MEMO)
下記を含んで成る少なくとも一種の有機ケイ素化合物:
(i)次の式のシロキシル官能単位:
deSiO[4-(d+e)]/2 (2.1)
(式中、
Lは、前記触媒の活性に好ましくないいかなる作用も有しない一価の炭化水素基であり、
dは、1又は2であり、
eは、0、1又は2であり、そして
d+eは、1〜3の値を有する。);及び
(ii)随意選択的な、次の平均式の他のシロキシ官能単位:
gSiO[4-g]/2 (2.2)
(式中、
Lは、上記と同一の意味を有し、そして
gは、0〜3の値を有する。)、及び
前記コーティング組成物の総量に基づいて、0.38〜2.0重量%の、少なくとも一種のアルコキシチタン、
(5)R3SiO0.5(M官能単位)、R2SiO(D官能単位)、RSiO1.5(T官能単位)、及びSiO2(Q官能単位)から成る群から選択される少なくとも2種の官能単位を有する、少なくとも一種のポリオルガノシロキサン樹脂、ここで、少なくとも一種の官能単位は、T又はQ官能単位であり、ここで、R基は同一又は異なり、そして直鎖又は分岐鎖のC1〜C6アルキル、C2〜C4アルケニル、フェニル、又は3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、前記樹脂は、0.1〜20重量%のアルケニル基重量含有率を有する、並びに
(6)下記から成る群から選択される少なくとも一種の架橋抑制剤;
随意選択的に環状であり、少なくとも一つのアルケニル基で置換されているポリオルガノシロキサン、
ピリジン、
有機ホスフィン及びフォスファイト、
不飽和アミド、
アルキルマレエート、及び
アルキルアルコール、
10〜45g/m2の前記コーティング組成物を用いて、織布の片面に第一のコーティングを適用する段階;
前記第一のコーティングを、少なくとも部分的に硬化させる段階;
20〜105g/m2の前記コーティング組成物を用いて、前記少なくとも部分的に硬化させた第一のコーティング上に第二のコーティングを適用する段階、前記第二のコーティングの露出面を前記布帛の内面とみなし、そして前記布帛の未コーティング面を外面とみなす、そして
前記第一のコーティングの硬化速度が前記第二のコーティングの硬化温度よりも遅いという条件で、前記第二のコーティングを硬化させる段階。
【請求項13】
次の各段階を含むバリア布帛の製法:
下記(1)〜(6)から本質的に成るコーティング組成物を調製する段階、
(1)60,000cpsの粘度及び90,000の平均分子量を有する、40重量%のMDViQ樹脂と、60重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサンオイルとの混合物、
(2)25cpsの粘度と、2,500の平均分子量と、0.7重量%の水素原子とを有し、鎖の末端及び規則的な間隔の鎖上にあるケイ素原子に結合した水素原子を含むポリハイドロゲンオルガノシロキサン架橋剤、
(3)触媒として有効な量の塩化白金酸、
(4)下記から本質的に成る接着促進剤;
3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートシラン(MEMO):
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO):及び
前記コーティング組成物の総重量に基づいて、0.38〜2.0重量%のブチルチタネート:
(5)100,000cpsの粘度及び約110,000g/モルの平均分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンオイル、及び
(6)1−エチニル−l−シクロヘキサノール;
10〜45g/m2の前記コーティング組成物を用いて、織布の片面に第一のコーティングを適用する段階;
前記第一のコーティングを、少なくとも部分的に硬化させる段階;
20〜105g/m2の前記コーティング組成物を用いて、前記少なくとも部分的に硬化させた第一のコーティング上に第二のコーティングを適用する段階、前記第二のコーティングの露出面を前記布帛の内面とみなし、そして前記布帛の未コーティング面を外面とみなす、そして
前記第一のコーティングの硬化速度が前記第二のコーティングの硬化温度よりも遅いという条件で、前記第二のコーティングを硬化させる段階。
【請求項14】
前記コーティングされたバリア布帛の前記内面に対して、第二の布帛を上に重ねるさらなる段階を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
次の各段階を含む方法により製造されたバリア布帛:
下記(1)〜(6)から本質的に成るコーティング組成物を調製する段階:
(1)一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも二つのC2〜C6アルケニル基を有する、少なくとも一種のポリオルガノシロキサンオイル、
(2)一分子当たり、ケイ素と結合した少なくとも二つの水素原子を有する、少なくとも一種のポリハイドロゲンオルガノシロキサンオイル、
(3)白金族に属する少なくとも一種の金属を含んで成る、触媒として有効な量の少なくとも一種の触媒、
(4)下記(4.1)〜(4.3)から本質的に成る接着促進剤:
(4.1)3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートシラン(MEMO)、
(4.2)少なくとも一つのエポキシ基を含む、少なくとも一種の有機ケイ素化合物、及び
(4.3)前記コーティング組成物の総量に基づいて、0.38〜2.0重量%の、少なくとも一種の金属Mキレート及び/又は次の一般式の一つの金属アルコキシド:M(OJ)n(式中、nはMの原子価に等しく、そしてJは直鎖又は分岐鎖のC1〜C8アルキルに等しく、MはTi、Zr、Ge、Li、Mn、Fe、Al、そしてMgから成る群から選択される。)、
(5)R3SiO0.5(M官能単位)、R2SiO(D官能単位)、RSiO1.5(T官能単位)、及びSiO2(Q官能単位)から成る群から選択される少なくとも2種類の官能単位を有する、少なくとも一種のポリオルガノシロキサン樹脂、ここで、少なくとも一種の官能単位は、T又はQ官能単位であり、ここで、R基は同一又は異なり、そして直鎖又は分岐鎖のC1〜C6アルキル、C2〜C4アルケニル、フェニル、又は3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、前記樹脂は、0.1〜20重量%のアルケニル基重量含有率を有する、並びに
(6)少なくとも一種の架橋抑制剤;
30〜45g/m2の前記コーティング組成物を用いて、織布の片面に第一のコーティングを適用する段階;
前記第一のコーティングを、少なくとも部分的に硬化させる段階;
90〜105g/m2の前記コーティング組成物を用いて、前記少なくとも部分的に硬化させた第一のコーティング上に第二のコーティングを適用する段階、前記第二のコーティングの露出面を前記布帛の内面とみなし、そして前記布帛の未コーティング面を外面とみなす、そして
前記第一のコーティングの硬化速度が前記第二のコーティングの硬化温度よりも遅いという条件で、前記第二のコーティングを硬化させる段階。
【請求項16】
第二の布帛が、前記コーティングされたバリア布帛の前記内面の上に重なる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項4に記載の方法により製造されたバリア布帛。
【請求項18】
請求項6に記載の方法により製造されたバリア布帛。
【請求項19】
請求項8に記載の方法により製造されたバリア布帛。
【請求項20】
請求項12に記載の方法により製造されたバリア布帛。
【請求項21】
第二の布帛が、前記コーティングされたバリア布帛の前記内面の上に重なる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
次の各段階を含む方法により製造されたバリア布帛:
(1)60,000cpsの粘度及び90,000の平均分子量を有する、40重量%のMDViQ樹脂と、60重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサンオイルとの混合物、
(2)25cpsの粘度と、2,500の平均分子量と、0.7重量%の水素原子とを有し、鎖の末端及び規則的な間隔の鎖上にあるケイ素原子に結合した水素原子を含むポリハイドロゲンオルガノシロキサン架橋剤、
(3)触媒として有効な量の塩化白金酸、
(4)下記から本質的に成る接着促進剤、
3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートシラン(MEMO):
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO):及び
前記コーティング組成物の総重量に基づいて、0.38〜2.0重量%のブチルチタネート:
(5)100,000cpsの粘度と、約110,000g/モルの平均分子量とを有するビニル末端ポリジメチルシロキサンオイル、並びに
(6)1−エチニル−l−シクロヘキサノール;
10〜45g/m2の前記コーティング組成物を用いて、織布の片面に第一のコーティングを適用する段階;
前記第一のコーティングを、少なくとも部分的に硬化させる段階;
20〜105g/m2の前記コーティング組成物を用いて、前記少なくとも部分的に硬化させた第一のコーティング上に第二のコーティングを適用する段階、前記第二のコーティングの露出面を前記布帛の内面とみなし、そして前記布帛の未コーティング面を外面とみなす、そして
前記第一のコーティングの硬化速度が前記第二のコーティングの硬化速度よりも遅いという条件で、前記第二のコーティングを硬化させる段階。
【請求項23】
前記布帛が、前記コーティングされたバリア布帛の内面の上に重なっている第二の布帛を有する、請求項22に記載の方法により製造されたバリア布帛。

【公表番号】特表2008−503655(P2008−503655A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516742(P2007−516742)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/021330
【国際公開番号】WO2006/007404
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(598109291)ローディア インコーポレイティド (41)
【Fターム(参考)】