説明

弾性コポリマー、コポリマー組成物及び物品におけるそれらの使用

コポリマーが4個から7個までの炭素原子を有するイソオレフィンとアルキルスチレンから生成される。そのコポリマーは実質的に均一な組成分布を有する。そのコポリマーは約8質量%から約12質量%までのアルキルスチレン及び少なくとも85質量%のイソオレフィンを有する。そのコポリマーは約1.1質量%から約1.5質量%までのハロゲンでハロゲン化されることが好ましい。そのコポリマーは弾性ナノ複合材料中にあってもよい。配合コンパウンド中のナノクレーの良好な分散を得るために、少なくとも一種の硬化促進剤がメルカプトベンゾチアゾールジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール、シクロヘキシルベンゾチアゾールジスルフィド、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチウラムジスルフィド、4,4-ジチオジモルホリン、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、及び亜鉛ジブチルホスホロジチエートからなる群から選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2009年9月10日に出願された先の米国仮特許出願第61/241,280 号(これが参考として本明細書にそのまま含まれる)の利益を主張する。
本発明は弾性コポリマー、その弾性組成物を含む組成物、及び物品中のコポリマーの使用に関する。更に特別には、本発明は改良された性能特性及びブレンド特性を有するハロゲン化C4-C7イソオレフィンをベースとするコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ及びゴム工業による新規技術ポリマー及びコンパウンドの採用が多くの製品性能の改良をもたらしていた。例えば、1970年代では、タイヤトレッド中に使用された新規技術カーボンブラックがトレッド磨耗の改良をもたらした。1980年代では、SiCl4 及びTiCl4 カップリングされたゴムの使用の拡大がけん引と磨耗の間の従来の伝統的な取引をしないでタイヤのころがり抵抗の低減及び燃料経済性の改良をもたらした。1990年代では、高度に分散性のシリカ及び半高度に分散性のシリカの導入がタイヤ耐久性及び性能を向上した。
不透過特性が必要とされる、タイヤインナーライナー、及びその他の弾性物品について、向上がまたあった。新規技術が工業を天然ゴムから合成ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、イソオレフィン-アルキルスチレンコポリマー(米国特許第5,162,445 号及び同第5,333,662号を参照のこと) 、熱可塑性熱弾性アロイ、混入充填剤に結合されたコポリマー、即ち、ナノ複合材料へと導いた。
弾性ナノ複合材料は実質的にはベースポリマー及びナノクレーからなる。ミクロンのオーダで測定されるサイズを有する、ナノクレーは、個々のプレート又は層の表面に負に荷電されたイオンを有する個々のプレート又は層の集合又は凝集物である。ナノクレーのクラスに応じて、プレートはカオリンクレーについての10nmからモンモリロナイトクレーについての70nm〜100nmまで、またバーミキュライトについての500nmまでの寸法の範囲であり得る。それを“ナノクレー”と定義するのはクレーの寸法であり、そのサイズのために、レギュラークレーと較べて分散液中で異なって作用するであろう。更なる明瞭化のために、ナノクレーはまたそれが最終的に別の物質中で単層プレートとして、公称1nmの厚さで分散してナノ複合材料を生成し得るように変性し得るクレーと記載し得る。ナノクレーについての変性方法はナノクレーを非極性ポリマーと相溶性にするための、化学添加剤、例えば、表面活性剤の添加、又は加工方法、例えば、ポリマーネットワークもしくはマトリックス中に分散可能なエマルションの生成によるものであってもよい。このような変性後に、ナノクレーは当業界で“オルガノクレー”として知られているものである。
【0003】
層状クレーが種々の適用において広く使用されていた。使用される場合、ナノクレーはベースポリマー中で五つの異なる状態の一つに適応し得る。
第一の状態はナノクレー粒子サイズがミクロンのオーダであるが、ベースポリマー中に一様に分散されている“粒子分散液”である。凝集体及び凝集物という用語がこの状態を記載するのに使用されていた。
第二の状態は“内位添加ナノ複合材料”であり、この場合、ポリマー鎖が層状ナノクレー構造に挿入され、これがポリマー対ナノクレー比にもかかわらず、結晶学的に規則的な様式で生じる。内位添加ナノ複合材料は典型的にはナノクレープレート間に多くのポリマー鎖を含んでもよい。ポリマーで膨潤された、ナノクレーのギャラリー間隔の増大が、生じ、内位添加状態を生じると考えられる。
第三の状態は“凝集ナノ複合材料”である。これは概念上内位添加ナノ複合材料と同じであるが、個々のナノクレー層が、例えば、ナノクレー層のヒドロキシル化された末端間の相互作用のためにしばしば凝集される。
第四の状態は“内位添加−凝集複合材料”である。ナノ複合材料中のナノクレープレートが分離し得るが、100〜500 nmの範囲の厚さを有するタクトイド又は凝集物が生成し得る。
第五の状態は“表層剥離ナノ複合材料”である。表層剥離ナノ複合材料中で、個々のナノクレー層がポリマー中のナノクレー濃度又は配合量に依存する平均距離だけ連続ポリマー内で分離される。
技術の夫々の進歩で、改良がコポリマーの透過特性で得られた。しかしながら、異なる成分がイソオレフィンをベースとするポリマーに導入及び/又はブレンドされるので、ポリマーのその他の性質が悪影響されることがあり、不透過性特性及びブレンド特性における推定の傾向が常に規則的であると判明するとは限らない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は不透過性特徴を必要とする物品、例えば、タイヤインナーライナー、タイヤインナーチューブ、タイヤ硬化性ブラダー、ホース、医療ストッパー、不透過性シート、及びその他の同様の品目中の使用のための改良された能力を有するコポリマーに関する。
本発明は4個から7個までの炭素原子を有するイソオレフィンとアルキルスチレンのコポリマーに関する。そのコポリマーはイソオレフィンとアルキルスチレンの実質的に均一な組成分布を有する。そのコポリマーは約8質量%から約12質量%までのアルキルスチレン及び少なくとも85質量%のイソオレフィンを有する。そのコポリマーはハロゲン化され、約1.1質量%から約1.5質量%までのハロゲンを有することが好ましい。そのコポリマーは約6未満の分子量分布 (MWD / Mw/Mn) を有する。
本発明の一局面において、コポリマーのハロゲン化が塩素又は臭素で達成される。
本発明の別の局面において、コポリマーのアルキルスチレン内容物がパラ-メチルスチレンであり、またコポリマーのイソオレフィン内容物がイソブチレンである。
本発明の別の局面において、コポリマーのアルキルスチレンがハロゲンで官能化され、25モル%までのアルキルスチレンがこうして官能化される。更なる実施態様において、10モル%から25モル%までのアルキルスチレンがハロゲンにより官能化される。
本発明の別の局面において、コポリマーが第二のポリマーとブレンドされてコンパウンドを生成し、そのコンパウンドが5phrから90phrまでのコポリマーを含む。第二のポリマーは天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)ゴム、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、イソブテン-イソプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、星型分岐ブチルゴム、及びこれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0005】
本発明の別の局面において、コポリマーが充填剤、加工オイル、及び硬化パッケージからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分とブレンドされてもよい。
本発明の別の局面において、コポリマーがポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンポリマー、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリルポリマー、スチレン無水マレイン酸ポリマー、芳香族ポリケトン、ポリ(フェニレンエーテル)、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた熱可塑性ポリマーとブレンドされてもよい。本発明のこの実施態様の一局面において、コポリマー及び熱可塑性ポリマーが高せん断の条件下で一緒に動的加硫され、この場合、コポリマーが熱可塑性ポリマー内に微細な粒子として分散される。
本発明の別の局面において、コポリマーが少なくとも一種のナノ充填剤とブレンドされる。ナノ充填剤はシリケート、グラフェン、カーボンナノチューブ、膨張性グラファイト酸化物、カーボネート、金属酸化物、又はタルクであってもよい。この実施態様の一局面において、ナノ充填剤がシリケートである。シリケートは天然又は合成のフィロシリケート、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ベントナイト、ボルコンスコアイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マグダイト、ケニヤアイト、ステベンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミネート酸化物、及びヒドロタルサイトからなる群から選ばれてもよい。
コポリマーがナノ複合材料を生成するのに使用される本発明の別の局面において、弾性強化コンパウンドとして配合される場合、少なくとも一種の硬化促進剤がコンパウンド中に使用される。硬化促進剤がメルカプトベンゾチアゾールジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール、シクロヘキシルベンゾチアゾールジスルフィド、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチウラムジスルフィド、4,4-ジチオジモルホリン、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、及び亜鉛ジブチルホスホロジチエートからなる群から選ばれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】200nm及び20nmで撮られた未配合ナノ複合材料のTEM 顕微鏡写真を示す。
【図2】50nmで撮られた配合ナノ複合材料のTEM 顕微鏡写真を示す。
【図3】50nmで撮られた配合ナノ複合材料のTEM 顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特許請求された発明を理解する目的のために本明細書に採用される好ましい実施態様及び定義を含む、本発明の種々の特別な実施態様、別型、及び例が今記載される。例示実施態様が特別に記載されたが、種々のその他の変更が当業者に明らかであり、本発明の精神及び範囲から逸脱しないで当業者により直ぐになし得ることが理解されるであろう。侵害を決めるために、“発明”の範囲はそれらの均等物及び列挙されるものに均等である要素又は制限を含む、請求項のあらゆる一つ以上に関係するであろう。
定義
現在記載される発明に適用し得る定義は以下に記載されるとおりである。
ゴムはASTM D1566 定義: “大きい変形から回復でき、それが沸騰溶媒に実質的に不溶性である(しかし、膨潤し得る)状態に変性し得るか、又は既に、変性されている…材料”と合致するあらゆるポリマー又はポリマーの組成物を表す。エラストマーはゴムという用語と互換可能に使用し得る用語である。
弾性組成物は先に定義された少なくとも一種のエラストマーを含むあらゆる組成物を表す。
ASTM D1566定義による加硫ゴムコンパウンドは“エラストマーから配合され、小さい力による大きな変形を受け易く、変形力の除去後におよそのそのもとの寸法及び形状に迅速に、力強く回復し得る架橋弾性材料”を表す。硬化弾性組成物は硬化プロセスを受け、かつ/又は有効量の硬化性もしくは硬化パッケージを含み、又はそれを使用して生成されるあらゆる弾性組成物を表し、加硫ゴムコンパウンドという用語と互換可能に使用される用語である。
“phr”という用語はゴム百部当りの部数又は“部数”であり、組成物の成分がエラストマー成分の全ての合計に対して測定される当業界で共通の目安である。全てのゴム成分(一種、二種、三種又はそれ以上の異なるゴム成分が所定のレシピで存在するかどうかを問わない)についての合計のphr又は部数が常に100phrと定義される。全てのその他の非ゴム成分は100部のゴムに対して比率で表され、phrで表される。この方法で、例えば、唯一の成分、又はそれより多い成分のレベルを調節した後に夫々の成分についての%を再度計算することを必要としないでゴムの同じ相対比率に基づいて異なる組成物間の硬化剤又は充填剤配合量等のレベルを容易に比較することができる。
【0008】
炭化水素は主として水素原子及び炭素原子を含む分子又は分子のセグメントを表す。或る実施態様において、炭化水素はまた炭化水素のハロゲン化別型及び以下に更に詳しく説明されるヘテロ原子を含む別型を含む。
アルキルは式から1個以上の水素原子を落とすことによりアルカンから誘導し得るパラフィン系炭化水素基、例えば、メチル基 (CH3)、又はエチル基 (CH3CH2) 、等を表す。
アリールは芳香族化合物の特徴的な環構造を形成する炭化水素基、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン等を表し、典型的にはその構造内に交互の二重結合(“不飽和”)を有する。こうして、アリール基は式から1個以上の水素を落とすことにより芳香族化合物から誘導される基、例えば、フェニル、即ちC6H5である。
置換は少なくとも1個の水素基が、例えば、ハロゲン(塩素、臭素、フッ素、又はヨウ素)、アミノ、ニトロ、スルホキシ(スルホネート又はアルキルスルホネート)、チオール、アルキルチオール、及びヒドロキシ;1個から20個までの炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖、アルキル(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、イソブチル、二級ブチル、三級ブチル等が挙げられる);1個から20個までの炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、二級ブトキシ、三級ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、及びデシルオキシが挙げられる);ハロアルキル(これは少なくとも1個のハロゲンにより置換されている1個から20個までの炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキルを意味する)(例えば、クロロメチル、ブロモメチル、フルオロメチル、ヨードメチル、2-クロロエチル、2-ブロモエチル、2-フルオロエチル、3-クロロプロピル、3-ブロモプロピル、3-フルオロプロピル、4-クロロブチル、4-フルオロブチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、ジフルオロメチル、ジヨードメチル、2,2-ジクロロエチル、2,2-ジブロモエチル、2,2-ジフルオロエチル、3,3-ジクロロプロピル、3,3-ジフルオロプロピル、4,4-ジクロロブチル、4,4-ジブロモブチル、4,4-ジフルオロブチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,3,3-トリフルオロプロピル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、及び2,2,3,3-テトラフルオロプロピルが挙げられる)から選ばれた少なくとも1個の置換基により置換されていることを表す。
ハロゲン化イソブチレン-パラ-メチルスチレンゴム
本発明によれば、コポリマーがC4 -C7 イソオレフィン誘導単位及びアルキルスチレンを含むランダムコポリマーであり、そのコポリマーが少なくとも85質量%、更にまた少なくとも86.5質量%のイソオレフィン、約8質量%から約12質量%までのアルキルスチレン、及び約1.1質量%から約1.5質量%までのハロゲンを含む。一実施態様において、ポリマーが約8質量%から約12質量%までのメチルスチレン、及び1.1〜1.5質量%の臭素又は塩素を含むC4 -C7 α-オレフィンとメチルスチレンのランダム弾性コポリマーであってもよい。例示の材料がポリマー鎖に沿ってランダムに隔置された下記のモノマー単位を含むポリマーと特徴づけられるかもしれない。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R及びR1 は独立に水素、低級アルキル、例えば、C1 -C7 アルキル及び一級又は二級アルキルハライドであり、かつXはハロゲンである。一実施態様において、R及びR1 が夫々水素である。
ランダムポリマー構造中に存在する全アルキル置換スチレン[構造 (1)及び (2)の合計] の25モル%までが一実施態様において、また別の実施態様において10モル%から25モル%までが上記ハロゲン化アルキル置換構造 (2)であってもよい。更に別の実施態様において、ランダムコポリマーそれ自体中の官能化構造 (2)の量が約0.8モル%から約1.10モル%までである。更に別の実施態様において、ランダムコポリマーが0.8〜1.10モル%の官能性ハロゲンを有する。
一実施態様において、エラストマーが約4モル%から約10モル%までのパラ-メチルスチレンを含むイソブチレンとパラ-メチルスチレン (PMS)のランダムポリマーを含み、この場合、ベンジル環に存在するメチル置換基の25モル%までが臭素原子又は塩素原子、例えば、臭素原子(パラ-(ブロモメチルスチレン))だけでなく、酸又はそのエステル官能化別型を含む。
別の実施態様において、官能基はポリマー成分が高温で混合される場合にそれがマトリックスポリマー中に存在する官能基と反応し、又は極性結合を形成し得るように選ばれ、例えば、酸官能基、アミノ官能基又はヒドロキシル官能基である。
或る実施態様において、ランダムコポリマーはそのポリマーの少なくとも95質量%がそのポリマーの平均パラ-アルキルスチレン含量の10%以内のパラ-アルキルスチレン含量を有するような実質的に均一の組成分布を有する。例示のポリマーが4.0未満、また2.5未満の狭い分子量分布 (Mw/Mn) により特徴づけられる。コポリマーが400,000 から2,000,000 までの範囲の粘度平均分子量及びゲル透過クロマトグラフィーにより測定して100,000 から750,000までの範囲の例示の数平均分子量を有する。
【0011】
先に説明されたランダムコポリマーは、典型的には一種以上のハロゲン化炭化水素、例えば、塩素化炭化水素及び/又はフッ素化炭化水素を含む希釈剤中で(例えば、WO 2004/058827及びWO 2004/058828を参照のこと)ルイス酸触媒そして必要により触媒開始剤を使用するスラリー重合、続いてハロゲン及びラジカル開始剤、例えば、熱及び/又は光及び/又は化学開始剤の存在下で溶液中のハロゲン化、好ましくは臭素化、そして、必要により、続いて異なる官能性部分によるハロゲンの置換により調製されてもよい。
或る実施態様において、ハロゲン化ポリ(イソブチレン-コ-p-メチルスチレン)ポリマーが一般にコポリマー中のモノマー誘導単位の合計量に対し約0.7モル%から約1.1モル%までのハロ-メチルスチレン基を含む。別の実施態様において、ハロ-メチルスチレン基の量が0.80モル%から1.10モル%までであり、更に別の実施態様において、0.80モル%から1.00モル%までであり、更にBETの実施態様において、0.85モル%から1.1モル%までであり、更に別の実施態様において、0.85モル%から1.0モル%までであり、この場合、望ましい量があらゆる上限とあらゆる下限のあらゆる組み合わせであってもよい。別の方法で表現すると、本発明のコポリマーが、ポリマーの質量を基準として、約1.1質量%から約1.5質量%までのハロゲン、別の実施態様において、1.1質量%から1.5質量%までのハロゲン、別の実施態様において、1.15質量%から1.45質量%までのハロゲンを含む。好ましい実施態様において、ハロゲンが臭素又は塩素であり、最も好ましい実施態様において、ハロゲンが臭素である。
【0012】
別の実施態様において、コポリマーが実質的に環ハロゲン又はポリマー主鎖中のハロゲンを含まない。一実施態様において、ランダムポリマーがC4 -C7 イソオレフィン誘導単位(又はイソモノオレフィン)、パラ-メチルスチレン誘導単位及びパラ-(ハロメチルスチレン)誘導単位のコポリマーであり、この場合、パラ-(ハロメチルスチレン)単位がパラ-メチルスチレンの合計数を基準として約10モル%から約22モル%までポリマー中に存在し、またパラ-メチルスチレン誘導単位が一実施態様においてポリマーの合計質量を基準として8質量%から12質量%まで、また別の実施態様において9質量%から10.5質量%まで存在する。別の実施態様において、パラ-(ハロメチルスチレン)がパラ-(ブロモメチルスチレン)である。
市販ブロモブチルゴム及び市販パラ-ブロモメチルスチレンイソブチレンの両方の比較サンプルが本発明内のスチレン量及び臭素量を有するコポリマーと比較された。その異なるコンパウンドが以下の表1に示される。
【0013】
表1

【0014】
1 テキサス州、ヒューストンにあるエクソンモービル・ケミカル社からのブロモブチル2222。典型的なムーニー粘度が27から37までの範囲であり、1.8質量%から2.2質量%までの臭素含量を有する。
2 テキサス州、ヒューストンにあるエクソンモービル・ケミカル社からのブロモブチル2255。典型的なムーニー粘度が41から51までの範囲であり、1.8質量%から2.2質量%までの臭素含量を有する。
市販のブロモメチル、異なるパラ-ブロモメチルスチレンイソブチレンコポリマーの比較特性を示すために、6種のイソブチレンをベースとするポリマーを使用するコンパウンドを、モデル工業タイヤインナーライナー配合を使用して調製した。コンパウンド配合物が表2に示される。コンパウンド中の全ての成分が百部当りの部数(phr)で示される。
【0015】
表2

【0016】
1 ニュージャージー州、トレントンにあるR.E.キャロル社からカルソールTM 810 として入手し得る、ASTM型103
2 ストラクトールTM 40 MS; 米国オハイオ州、ストウのストラクトール社から入手し得る、脂肪族-芳香族ナフテン系樹脂の組成物
3 R.T. バンデルビルト(ノーウォーク、CT) 又はエラストケム (シャルドン, OH)から入手し得る、2-メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド
表2のエラストマーコンパウンドの夫々を物理的性質について試験し、その結果を以下に報告する。
【0017】
表3

【0018】
* 17種のコンパウンド及び14の試験標本の平均
表3中の試験データは配合された時の市販のブロモブチルコポリマー及びその他のパラ-ブロモメチルスチレンイソブチレンコポリマーと比較してのコンパウンドBIMSM X についての二三の妥当な点を証明する。
ブロモブチルをベースとするコンパウンドと比較して、パラ-ブロモメチルスチレンイソブチレンコポリマーをベースとするコンパウンドは一層高い粘度を有する。本発明のパラ-ブロモメチルスチレンイソブチレンを含むコンパウンド5は、ブロモブチルをベースとするコンパウンド1に匹敵する粘度を有する。配合されたエラストマーについて、低粘度が取扱目的のために、また生の、又は未硬化の、構築段階中の押出形状を持続するのに望ましい。
パラ-ブロモメチルスチレンイソブチレンコポリマーをベースとするコンパウンド2〜4についての加硫誘導時間及び硬化状態は、レオメーターデータにより証明されるように、ブロモブチルをベースとするコンパウンド1よりも高い。最高の臭素を有する、コンパウンド4は、最高の硬化状態を示す。BIMSM の架橋が臭化亜鉛により触媒作用されるフリーデル-クラフツアルキル化反応により生じ、こうして臭素含量が高い程、架橋密度が大きい。しかしながら、ベースコポリマー中の臭素の量があまりにも高い場合、弾性コンパウンドの破断点伸び及び引裂き強さ特性が悪化される。これがコンパウンド4及び5を比較する際に見られ、1.2モル%Brコポリマーを含む、コンパウンド4につき、破断点伸びがほんの400であり、一方、0.85モル%Brコポリマーを含む、コンパウンド5につき、破断点伸びが740%と高い。多くの反復サイクル適用(例えば、タイヤ、タイヤ硬化性ブラダー)につき、亀裂を防止し、適度の耐疲労性を確実にするために、少なくとも700%の公称の破断点伸びが所望される。
【0019】
コンパウンドの透過性特性に関して、コンパウンド透過性はブロモブチルをベースとするコンパウンドと比較して5質量%のPMS を有するBIMSM 含有コンパウンドについて13〜14%減少する。7.5質量%のPMS含有BIMSM について、そのコンパウンドが透過性の21%減少を有する。10%PMS 含有BIMSM について、そのコンパウンドが透過性の27.5%減少を有する。
総合して、一層高いパラ-メチルスチレン含量及び一層低い臭素含量を有するBIMSM コポリマーはコンパウンド中にブレンドされた場合に加硫速度、コンパウンド機械的性質、及び透過性の殆どのバランスを示す。
一実施態様において、先に説明されたパラ-メチルスチレン及び臭素含量を有するハロゲン化パラメチルスチレンイソブチレンコポリマーはコンパウンドの唯一の弾性成分であってもよく、それにより先に注目された利点を充分に利用する。また別の実施態様において、本発明のコポリマーは異なる/第二の弾性ポリマーとブレンドされてその他の所望の性質又は特性を有するコンパウンドを得てもよい。
その他の弾性ポリマーの例として、天然ゴム(NR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)ゴム (SBR)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)ゴム (IBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、エチレン-プロピレンゴム (EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、イソブテン-イソプレンゴム(ブチルゴム、IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(HIIR)、例えば、塩素化ブチルゴム又は臭素化ブチルゴム、星型分岐ブチルゴム (SBB)、及びこれらの混合物が挙げられる。
コンパウンド中にブレンドされた場合、現在開示されたエラストマーは、個々に、又は異なるエラストマーのブレンド(即ち、反応器ブレンド、物理ブレンド、例えば、溶融混合による)として、一実施態様では10phrから90phrまで、また別の実施態様では10phrから80phrまで、更に別の実施態様では30phrから70phrまで、更に別の実施態様では40phrから60phrまで、更に別の実施態様では5phrから50phrまで、更に別の実施態様では5phrから40phrまで、更に別の実施態様では20phrから60phrまで、更に別の実施態様では20phrから50phrまで組成物中に存在してもよく、選ばれる実施態様は組成物の所望の最終用途適用に依存する。
このような第二のゴムは5phrから90phrまでの範囲の量で最終組成物中に存在してもよい。一層大きい不透過性を得るために、一層小さい透過性特性を有するポリマーの使用が弾性ブレンド中で少量、即ち、50phr未満に制限されるであろう。
【0020】
熱可塑性ポリマー
その他の実施態様において、弾性組成物は少なくとも一種の熱可塑性ポリマーを含んでもよい。熱可塑性材料(また熱可塑性樹脂と称される)は23℃で300 MPa より大きいヤング率を有する熱可塑性ポリマー、コポリマー、又はこれらの混合物である。その樹脂は約170℃〜約260℃、好ましくは260℃未満、最も好ましくは約240℃未満の融解温度を有するべきである。通常の定義により、熱可塑性材料は熱が適用される時に軟化し、冷却後にそのもとの性質を再度獲得する合成樹脂である。
本発明の実施に適した熱可塑性ポリマーは単独で、又は組み合わせて使用されてもよく、窒素、酸素、ハロゲン、硫黄又はその他の基(ハロゲン又は酸性基の如き芳香族官能基と相互作用し得る)を含むポリマーである。これらのポリマーは一実施態様では組成物の30質量%から90質量%まで、別の実施態様では40質量%から80質量%まで、更に別の実施態様では50質量%から70質量%までブレンドされた組成物中に存在する。更に別の実施態様において、ポリマーは組成物の40質量%より大きく、別の実施態様では60質量%より大きいレベルで存在する。
好適な熱可塑性樹脂として、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂(SAN)、スチレン無水マレイン酸樹脂(SMA)、芳香族ポリケトン(PEEK、PED、及びPEKK)、エチレンコポリマー樹脂(EVA又はEVOH)及びこれらの混合物からなる群から選ばれた樹脂が挙げられる。
【0021】
好適な熱可塑性ポリアミド(ナイロン)は結晶性又は樹脂状の、高分子量固形ポリマー(ポリマー鎖内に反復アミド単位を有するコポリマー及びターポリマーを含む)を含む。ポリアミドは一種以上のエプシロンラクタム、例えば、カプロラクタム、ピロリジオン、ラウリルラクタム及びアミノウンデカン酸ラクタム、もしくはアミノ酸の重合、又は二塩基酸とジアミンの縮合により調製されてもよい。繊維形成ナイロン及び成形グレードナイロンの両方が好適である。このようなポリアミドの例はポリカプロラクタム(ナイロン-6)、ポリラウリルラクタム(ナイロン-12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン-6,9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン-6,IP)及び11-アミノ-ウンデカン酸の縮合生成物(ナイロン-11)である。市販の熱可塑性ポリアミドが本発明の実施に有利に使用されてもよく、160〜260℃の軟化点又は融点を有する線状結晶性ポリアミドが好ましい。
使用し得る好適な熱可塑性ポリエステルとして、酸無水物の脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸エステルの一種又は混合物とジオールの一種又は混合物のポリマー反応生成物が挙げられる。満足なポリエステルの例として、ポリ(トランス-1,4-シクロヘキシレンC2-6アルカンジカルボキシレート)、例えば、ポリ(トランス-1,4-シクロヘキシレンスクシネート)及びポリ(トランス-1,4-シクロヘキシレンアジペート);ポリ(シス又はトランス-1,4-シクロヘキサンジメチレン)アルカンジカルボキシレート、例えば、ポリ(シス-1,4-シクロヘキサンジメチレン)オキサレート及びポリ(シス-1,4-シクロヘキサンジメチレン)スクシネート;ポリ(C2-4アルキレンテレフタレート)、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレート;ポリ(C2-4アルキレンイソフタレート)、例えば、ポリエチレンイソフタレート及びポリテトラメチレンイソフタレート並びに同様の材料が挙げられる。好ましいポリエステルは芳香族ジカルボン酸、例えば、ナフタレン酸又はフタル酸とC2-C4ジオールから誘導され、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートである。好ましいポリエステルは160℃〜260℃の範囲の融点を有するであろう。
【0022】
使用し得るその他の熱可塑性ポリマーとして、上記ポリエステルのポリカーボネート類似体、例えば、セグメント化ポリ(エーテル-コ-フタレート);ポリカプロラクトンポリマー;スチレンポリマー、例えば、スチレンと50モル%未満のアクリロニトリルのコポリマー(SAN)並びにスチレン、アクリロニトリル及びブタジエンの樹脂状コポリマー(ABS);スルホンポリマー、例えば、ポリフェニルスルホン;エチレン及びC2-C8α-オレフィンのコポリマー及びホモポリマー、一実施態様において、プロピレン誘導単位のホモポリマー、また別の実施態様において、エチレン誘導単位とプロピレン誘導単位のランダムコポリマー又はブロックコポリマー、並びに当業界で知られているような同様の熱可塑性ポリマーが挙げられる。
別の実施態様において、上記熱可塑性樹脂のいずれかを更に含む本発明の組成物は本発明のエラストマーとブレンドされて動的加硫アロイを生成してもよい。
“動的加硫”という用語は本明細書で加硫可能なエラストマーが熱可塑性樹脂の存在下で高せん断及び上昇した温度の条件下で加硫される加硫方法を意味するのに使用される。その結果として、加硫可能なエラストマーが同時に架橋され、好ましくは、熱可塑性樹脂内に“ミクロゲル”の微細な粒子として分散されるようになる。得られる材料はしばしば動的加硫アロイ(“DVA”)と称される。
動的加硫は成分を装置、例えば、ロールミル、バンバリーTMミキサー、連続ミキサー、ニーダー又は混合押出機、例えば、2軸押出機中でエラストマーの硬化温度以上である温度で混合することにより行なわれる。動的硬化組成物の特異な特徴は、エラストマー成分が完全に硬化し得るという事実にもかかわらず、組成物が通常の熱可塑性樹脂加工技術、例えば、押出、射出成形、圧縮成形等により加工、再加工し得ることである。スクラップ又はフラッシングがまた回収され、再加工し得る。当業者はエラストマーポリマーのみを含む、通常の弾性熱硬化スクラップが、加硫ポリマーの架橋特性のために直ぐに再加工し得ないことを認めるであろう。
この実施態様に従ってDVAを生成する際に、上記熱可塑性樹脂のいずれかが使用されてもよい。好ましい熱可塑性樹脂はポリアミドである。更に好ましいポリアミドはナイロン6及びナイロン11である。好ましくは、一種以上の熱可塑性ポリマーが好適にはポリマーブレンドを基準として、約10質量%から98質量%まで、好ましくは約20質量%から95質量%までの範囲の量で存在してもよく、エラストマーが約2質量%から90質量%まで、好ましくは約5質量%から80質量%までの量で存在してもよい。エラストマーが熱可塑性ポリマー中に分散された粒子としてDVA 中に存在することが好ましい。
DVA 中で、エラストマーが一実施態様では90phrまで、別の実施態様では50phrまで、別の実施態様では40phrまで、更に別の実施態様では30phrまでの範囲で存在してもよい。更に別の実施態様において、エラストマーが少なくとも2phr、別の実施態様では少なくとも5phr、更に別の実施態様では少なくとも5phr、更に別の実施態様では少なくとも10phrで存在してもよい。望ましい実施態様はあらゆるphr上限とあらゆるphr下限のあらゆる組み合わせを含んでもよい。
【0023】
コンパウンド添加剤
表2に既に示されたように、開示された弾性ポリマーが付加的な成分とブレンドされて完全配合エラストマー/ゴムを得てもよい。可能な付加的な成分として、通常の充填剤、ナノ充填剤、加工助剤及び油、並びに硬化パッケージが挙げられる。
通常のエラストマー充填剤は、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、非有機クレー、タルク、二酸化チタン、及びカーボンブラックである。一種以上の充填剤が使用されてもよい。本明細書に使用される、シリカは溶液方法、熱分解方法等の方法により加工され、表面積を有するあらゆる型又は粒子サイズのシリカ又はその他のケイ酸誘導体、もしくはケイ酸(未処理の、沈澱シリカ、結晶性シリカ、コロイドシリカ、ケイ酸アルミニウム又はケイ酸カルシウム、ヒュームドシリカ等を含む)を表すことを意味する。
一実施態様において、充填剤がカーボンブラック又は変性カーボンブラック、及びこれらのいずれかの組み合わせである。別の実施態様において、充填剤がカーボンブラックとシリカのブレンドである。タイヤトレッド及びサイドウォールに通常の充填剤量はブレンドの10phrから100phrまで、別の実施態様では30phrから80phrまで、更に別の実施態様では50phrから80phrまでのレベルで存在する強化グレードのカーボンブラックである。
【0024】
ナノ充填剤
その他の実施態様において、高スチレン含量及び特定のハロゲン含量を有する上記エラストマーはナノ複合材料ポリマー又はナノ複合材料組成物を生成するためにナノ充填剤(必要により変性剤で処理又は前処理されてもよい)を更に含んでもよい。
ナノ充填剤はシリケート、グラフェン、カーボンナノチューブ、膨張可能なグラファイト酸化物、炭酸塩、金属酸化物、又はタルクであってもよい。ナノ充填剤はそのサイズのために“ナノ”と定義され、その最大寸法が約0.0001μmから約100μmの範囲である。ナノ充填剤のその他の特徴は表面積対体積の高い比であり、これは非常に小さい最大寸法を有するが、粒当りの表面積対体積の低い比を有する微細粒カーボンブラックとは区別される。表面積対体積のこの高い比がシートのような構造を有するナノ充填剤を与える。このような材料は典型的には凝集されて、層状ナノ充填剤をもたらす。
或る実施態様において、シリケートは膨張する結晶格子を有するナノクレー鉱物の一般的クラスに属する少なくとも一種の“スメクタイト”又は“スメクタイト型ナノクレー”を含んでもよい。例えば、これはモンモリロナイト、バイデライト、及びノントロナイトからなる複八面体スメクタイト、並びに三八面体スメクタイト(サポナイト、ヘクトライト、及びソーコナイトを含む)を含んでもよい。また、合成により調製されたスメクタイトクレーが含まれる。
【0025】
更に別の実施態様において、シリケートは天然又は合成フィロシリケート、例えば、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ベントナイト、ボルコンスコアイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マグダイト、ケニヤアイト、ステベンサイト等だけでなく、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミネート酸化物、ヒドロタルサイト等を含んでもよい。先の実施態様のあらゆる組み合わせがまた意図されている。
層状ナノ充填剤、例えば、上記層状クレーは、層状充填剤の内層表面に存在するカチオンとのイオン交換反応を受け得る少なくとも一種の薬剤又は添加剤による内位添加又は表層剥離により変性されてもよい。薬剤又は添加剤は層状充填剤の内層表面に存在するカチオンとのイオン交換反応を受けるそれらの能力について選ばれる。好適な表層剥離添加剤として、カチオン表面活性剤、例えば、アンモニウム、アルキルアミンもしくはアルキルアンモニウム(一級、二級、三級及び四級)、脂肪族、芳香族もしくはアリール脂肪族アミン、ホスフィン及びスルフィドのホスホニウム誘導体もしくはスルホニウム誘導体が挙げられる。このような薬剤及び添加剤がまた層状ナノ充填剤についての認められる物理的結果に応じて変性剤、膨潤剤、又は表層剥離剤と称される。
幾つかの市販の変性ナノクレー製品の例はテキサス州、ゴンザレスにあるサウザン・クレー・プロダクツ社製クロイサイト、例えば、クロイサイトNa+, 、クロイサイト30B 、クロイサイト10A 、クロイサイト25A 、クロイサイト93A 、クロイサイト20A 、クロイサイト15A 、及びクロイサイト6Aである。それらはまた日本、東京にあるCO-OP 化学社製SOMASIF クレー及びLUCENTITE クレー、例えば、SOMASIFTM MAE、SOMASIFTM MEE 、SOMASIFTM MPE 、SOMASIFTM MTE、SOMASIFTM ME-100 、LUCENTITETM SPN、及びLUCENTITE(SWN)として入手し得る。
ナノ複合材料は種々の方法、例えば、エマルションブレンド、溶液ブレンド、及び溶融ブレンドを使用して生成し得る。しかしながら、これらの方法は決してナノ複合材料製造に排他的ではない。
【0026】
溶融ブレンド
本発明のナノ複合材料はポリマー溶融ブレンド方法により生成し得る。成分のブレンドはポリマー成分と内位添加物の形態のナノクレーをあらゆる好適な混合装置、例えば、バンバリーTM ミキサー、ブラベンダーTM ミキサー又は好ましくはミキサー/押出機中で合わせ、ナノクレー内位添加物が表層剥離し、ポリマー内に一様に分散されるようになってナノ複合材料を生成するのに充分なせん断の条件下で120℃から300℃までの範囲の温度で混合することにより行ない得る。
乳化方法
乳化方法では、無機ナノクレーの水性スラリーが溶媒(セメント)に溶解されたポリマーと混合される。混合はエマルション又はミクロエマルションを生成するのに充分に激しくあるべきである。或る実施態様において、エマルションが有機溶液中の水性溶液又は懸濁液として生成し得る。実験製造及び大規模製造の両方に通常の方法(バッチ方法及び連続方法を含む)及び装置が本発明のポリマーのナノ複合材料を製造するのに使用されてもよい。
或る実施態様において、ナノ複合材料が水及び少なくとも一種の層状ナノクレーを含む溶液Aを溶媒及び少なくとも一種のエラストマーを含む溶液Bと接触させ、溶媒及び水を溶液A及び溶液Bの接触生成物から除去してナノ複合材料を回収することを含む方法により製造される。或る実施態様において、エマルションが混合物を高せん断ミキサーを使用して撹拌にかけることにより生成される。
【0027】
或る実施態様において、ナノ複合材料が水及び少なくとも一種の層状ナノクレーを含む溶液Aを溶媒及び少なくとも一種のエラストマーを含む溶液Bと接触させることを含む方法により製造され、この場合、接触が乳化剤又は表面活性剤の存在下で行なわれる。
エマルションが炭化水素、水及び表面活性剤(使用される場合)の混合物をエマルションを生成するのに充分な時間の期間、例えば、一般に少なくとも数秒にわたって市販のブレンダー又はその均等物中のような、充分なせん断にかけることにより生成される。エマルションがナノクレーの表層剥離を増進するのに充分な期間、一実施態様では0.1時間から100時間以上まで、別の実施態様では1時間から50時間まで、別の実施態様では2時間から20時間までにわたって、連続もしくは間欠の混合もしくは撹拌を用いて、又は用いないで、また加熱もしくはその他の温度制御を用いて、又は用いないで、エマルション形態に留まるようにし得る。
使用される場合、表面活性剤濃度は比較的安定なエマルションの生成を可能にするのに充分である。好ましくは、使用される表面活性剤の量は全エマルションの少なくとも0.001質量%、更に好ましくは約0.001質量%〜約3質量%、最も好ましくは0.01質量%から2質量%未満までである。
本発明のエマルションを調製するのに有益なカチオン表面活性剤として、三級アミン、ジアミン、ポリアミン、アミン塩だけでなく、四級アンモニウム化合物が挙げられる。本発明のエマルションを調製するのに有益なノニオン表面活性剤として、アルキルエトキシレート、線状アルコールエトキシレート、アルキルグルコシド、アミドエトキシレート、アミンエトキシレート(例えば、ココアミンエトキシレート、牛脂アミンエトキシレート、及びオレイルアミンエトキシレート)、フェノールエトキシレート、及びノニルフェノールエトキシレートが挙げられる。
【0028】
溶液ブレンド
溶液方法では、ナノ複合材料が溶媒及び少なくとも一種の層状充填剤又はナノクレーを含む溶液Aを溶媒及び少なくとも一種のエラストマーを含む溶液Bと接触させ、溶媒を溶液A及び溶液Bの接触生成物から除去してナノ複合材料を生成することにより製造される。
層状充填剤が上記のように有機分子で処理された層状ナノクレーであってもよい。更に別の実施態様において、ナノ複合材料が少なくとも一種のエラストマー及び少なくとも一種の層状充填剤を溶媒中で接触させ、溶媒を接触生成物から除去してナノ複合材料を生成することを含む方法により製造される。
別の実施態様において、ナノ複合材料が少なくとも一種のエラストマー及び少なくとも一種の層状充填剤を2種の溶媒を含む溶媒混合物中で接触させ、溶媒混合物を接触生成物から除去してナノ複合材料を生成することを含む方法により製造される。
更に別の実施態様において、ナノ複合材料が少なくとも一種のエラストマー及び少なくとも一種の層状充填剤を少なくとも2種以上の溶媒を含む溶媒混合物中で接触させ、溶媒混合物を接触生成物から除去してナノ複合材料を生成することを含む方法により製造される。
別の実施態様において、ナノ複合材料が少なくとも一種のエラストマーを溶解し、次いで少なくとも一種の層状充填剤を溶媒又は少なくとも2種の溶媒を含む溶媒混合物中で分散させ、溶媒混合物を接触生成物から除去してナノ複合材料を生成することを含む接触生成物の生成方法により製造される。
更に別の実施態様において、ナノ複合材料が少なくとも一種の層状充填剤を分散させ、次いで少なくとも一種のエラストマーを溶媒又は少なくとも2種の溶媒を含む溶媒混合物に溶解し、溶媒混合物を接触生成物から除去してナノ複合材料を生成することを含む接触生成物の生成方法により製造される。
上記実施態様において、溶媒が組成物の合成質量を基準として、30質量%から99質量%まで、また40質量%から99質量%まで、また50質量%から99質量%まで、また60質量%から99質量%まで、また70質量%から99質量%まで、また80質量%から99質量%まで、また90質量%から99質量%まで、また95質量%から99質量%までナノ複合材料組成物の製造中に存在してもよい。
【0029】
更に、或る実施態様において、2種以上の溶媒がナノ複合材料組成物の製造に準備される場合、夫々の溶媒が100容積%で存在する全溶媒の合計容積で、0.1容量%から99.9容量%まで、また1容量%から99容量%まで、また5容量%から95容量%まで、また10容量%から90容量%までを構成してもよい。
ナノ複合材料中に混入されるナノクレーの量は、こうしてナノクレーを混入するのに使用される方法にもかかわらず、ナノ複合材料の機械的性質又はバリヤー特性、例えば、引張強さ又は酸素透過性の改良を生じるのに充分であるべきである。量はナノ複合材料のポリマー含量を基準として、一般に一実施態様では0.5質量%から10質量%まで、別の実施態様では1質量%から5質量%までの範囲であろう。100部のゴム当りの部数(phr)で表して、ナノクレーが一実施態様では1phrから50phrまで、別の実施態様では5phrから20phrまで、別の実施態様では5phrから10phrまで、更に別の実施態様では5phrから10phrまで存在してもよい。
完全配合コンパウンドでは、コポリマー及びナノクレーを混合するのに乳化方法又は溶液方法を使用する場合(これは予備ブレンドされたナノ複合材料エラストマーを生じる)、ベースエラストマー、ナノ複合材料の量が100部のナノ複合材料当りの部数(phn)で表される。ナノ複合材料が特定のナノクレー配合量を有するように調製されるであろう。
通常のブロモブチルをベースとするインナーライナーコンパウンドは200〜200 cc.mm/m2.日の透過係数を有する。このような組成物に対して、ナノ複合材料中に使用される、上記BIMSM ベースポリマーは、本明細書に記載された硬化組成物又は物品で測定して40℃で約170 cc.mm/m2.日以下の酸素透過係数を有することが好ましい。上記方法のいずれかから生成されたナノ複合材料を含むエラストマーコンパウンドにつき、酸素透過係数が40℃で150 cc.mm/m2.日以下、40℃で140 cc.mm/m2. 日以下、40℃で130 cc.mm/m2.日以下、40℃で120 cc.mm/m2.日以下、40℃で110 cc.mm/m2.日以下、40℃で100 cc.mm/m2.日以下、40℃で90 cc.mm/m2.日以下、又は40℃で80 cc.mm/m2.日以下である。
【実施例】
【0030】
先に明記された範囲のスチレン置換基含量及びハロゲン含量を有するイソブチレンコポリマーを含む配合ナノ複合材料の実施例を調製してナノ-コポリマー及び配合ナノ複合材料の硬化特性及び物理的特性を測定した(下記の表4を参照のこと)。ナノクレーを先に説明された様式で溶融混合によりコンパウンドに添加した。50phrまでの配合量のナノクレーをつくって完全配合インナーライナーコンパウンドの機械的性質に関する効果を測定した。表4中の実施例につき、表2に示された例に使用された、ベースインナーライナー組成物を、弾性ナノ複合材料インナーライナー組成物に使用する。
Mocon Ox-Tran モデル2/61 酸素透過率試験装置及びPerm-Net 操作システム (ASTM D3985)を使用して、酸素透過性を測定した。装置当り6個のセルがあり、そこでセル中の夫々の試験サンプル中のガス透過を個々に測定する。基準線を確立するためのゼロ読み取りを得、次いでサンプルを40℃及び60℃で試験する。酸素透過をO2検出器で測定する。データを透過係数(cc*mm/(m2-日))及び透過性係数(cc*mm/(m2-日-mmHg))として報告する。
ナノ複合材料コンパウンド7〜12の試験が市販のブロモブチルコポリマーと比較して層状ナノクレーとブレンドされた場合のコンパウンドBIMSM X についての二三の妥当な点を証明する。
最高の硬化状態を10phrのナノクレー配合量で得た。ナノクレー配合量が一旦10phrを上回ると、加硫速度(ピーク速度データを参照のこと)がかなり低下した。更に、10phrナノクレー配合量を超えると、破断点伸びが劣化し始めた。20phrのナノクレーでは、引張強さが改良されたが、これがまた一層高いナノクレー配合量で劣化し、引張強さの改良が加硫特性との交換である。50phrのナノクレーでは、透過性係数が非常に低いが、その材料が300%モジュラス及び引裂き強さの低下により証明されるように、一層脆くなった。
全てのナノクレー配合量で、コンパウンドの透過性特性が改善した。再度、一層高いナノクレー配合量のナノ複合材料につき、不透過性の改良が加硫特性との交換である。
【0031】
表4

【0032】
1 テキサス州、ゴンザレスにあるサザン・クレー・プロダクツからのクロサイトNa+ 、モンモリロナイトクレー
架橋剤、硬化剤、硬化パッケージ、及び硬化方法
一般に、ポリマーブレンド、例えば、タイヤを製造するのに使用されるものは、架橋され、それによりポリマーの機械的性質を改良する。加硫ゴムコンパウンドの物理的性質、性能特性、及び耐久性は加硫反応中に形成された架橋の数(架橋密度)及び型に直接関係することが知られている。
本発明の或る実施態様において、弾性組成物及びこれらの組成物からつくられた物品はエラストマーが弾性組成物を硬化する方法を受けることを可能にする少なくとも一種の硬化剤又は架橋剤を含んでもよい。本明細書に使用される、少なくとも一種の硬化パッケージは工業で普通に理解されているように硬化特性をゴムに付与し得るあらゆる材料又は方法を表す。少なくとも一種の硬化パッケージは下記のいずれか及び少なくとも一種を含んでもよい。
特にシリカが主たる充填剤であり、又は別の充填剤と組み合わせ存在する場合、一種以上の架橋剤が本発明の弾性組成物に使用されることが好ましい。好適な硬化成分として、硫黄、金属酸化物、有機金属化合物、及びラジカル開始剤が挙げられる。
過酸化物硬化系又は樹脂硬化系がまた使用されてもよい。しかしながら、エラストマーが熱可塑性樹脂と組み合わされてDVA (熱可塑性樹脂の架橋が所望されない場合)を生成する場合、熱可塑性樹脂が過酸化物の存在が熱可塑性樹脂を架橋させるようなものである場合、過酸化物硬化剤の使用が避けられるかもしれない。
【0033】
硫黄がジエン含有エラストマーに最も普通の化学加硫剤である。それは斜方8員環として、又は無定形ポリマー形態で存在する。典型的な硫黄加硫系は硫黄を活性化するための促進剤、活性剤、及び加硫の速度を制御することを助けるための遅延剤からなる。促進剤は加硫の開始及び速度、並びに形成される硫黄架橋の数及び型を制御するのに利用できる。活性剤はまた硬化剤及び促進剤と組み合わせて使用されてもよい。活性剤は最初に促進剤と反応してゴム可溶性錯体を生成し、次いでこれが硫黄と反応して硫化剤を生成する。活性剤の一般のクラスとして、アミン、ジアミン、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チオカルバメート、キサンテート等が挙げられる。遅延剤は未加硫ゴムを加工するのに充分な時間を可能にするために硬化の初期の開始を遅延するのに使用されてもよい。
ハロゲン含有エラストマー、例えば、本発明のハロゲン化ポリ(イソブチレン-コ-p-メチルスチレン)は金属酸化物とのそれらの反応により架橋されてもよい。金属酸化物はポリマー中のハロゲン基と反応して活性中間体を生成し、次いでこれがさらに反応して炭素-炭素結合を生じると考えられる。金属ハロゲン化物が副生物として放出され、この反応の自己触媒として利用できる。普通の硬化剤として、ZnO 、CaO 、MgO 、Al2O3 、CrO3、FeO 、Fe2O3 、及びNiO が挙げられる。これらの金属酸化物が単独で、又は相当する金属脂肪酸錯体(例えば、Zn、Ca、Mg、及びAlのステアリン酸塩)、又はステアリン酸と硫黄化合物もしくはアルキルペルオキシド化合物のいずれかと組み合わせて使用し得る。更に好ましくは、カップリング剤が二官能性オルガノシラン架橋剤であってもよい。“オルガノシラン架橋剤”はシランカップリングされた充填剤及び/又は架橋活性剤及び/又は当業者に知られているシラン強化剤(ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス-(ベータ-メトキシエトキシ)シラン、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-アミノ-プロピルトリエトキシシラン(ウィトコによりA1100として市販される)、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(ウィトコによるA189)等、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない)である。一実施態様において、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(“Si69”として市販される)が使用される。
【0034】
エラストマーの促進された加硫のメカニズムは硬化剤、促進剤、活性剤及びポリマーの間の複雑な相互作用を伴なう。理想的には、全ての利用できる硬化剤が有効な架橋(これらは二つのポリマー鎖を一緒に結合し、ポリマーマトリックスの総合の強さを高める)の形成に消費される。多くの促進剤が当業界で知られており、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない:ステアリン酸、ジフェニルグアニジン、テトラメチルチウラムジスルフィド、4,4’-ジチオジモルホリン、テトラブチルチウラムジスルフィド、ベンゾチアジルジスルフィド、ヘキサメチレン-1,6-ビスチオ硫酸二ナトリウム塩二水和物(フレクシスによりDURALINKTM HTS として市販される)、2-モルホリノチオベンゾチアゾール (MBS 又はMOR)、90% MOR と10% MBTS のブレンド(MOR 90)、N-ターシャリーブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、及びN-オキシジエチレンチオカルバミル-N-オキシジエチレンスルホンアミド、2-エチルヘキサン酸亜鉛、及びチオ尿素。
ナノクレー、並びにナノクレーと組み合わせて使用される表面活性剤及び膨潤剤の性質のために、本発明者らはまたナノ複合材料コンパウンドに関する異なる促進剤の効果を調べることを選ぶ。選ばれた促進剤はメルカプトベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)、メルカプトベンゾチアゾール (MBT)、シクロヘキシルベンゾチアゾールジスルフィド (CBS) 、ジブチルチオ尿素(DBTU)、トトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、4-4-ジチオジモルホリン(DTDM)、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(ZDMC)、及び亜鉛ジブチルホスホロジチエート(ZDBP)であった。
コンパウンドは表2に示されたのと同じインナーライナー配合を使用した。BIMSM X ナノ複合材料を最初に上記された溶液混合方法により生成してナノ複合材料中7質量%のナノクレー配合量を得た。使用したナノクレーはクロイサイトNa+ であった。ナノ複合材料100部当りの部数(phn)の量で表される成分を含むコンパウンド配合物、加硫特性、及び固体強度特性を以下に表5に示す。
【0035】
表5

【0036】
上記コンパウンドの透過性等級につき、コンパウンド6を基準線100として使用する。芳香族促進剤を使用するコンパウンド、コンパウンド13-15及び18は一層高い透過性平均を示した。コンパウンド16及び17は最低の透過性等級だけでなく、t10値により証明されるような最短のスコーチ又は誘導時間を示した。これは不透過性と硬化誘導時間の間に関係があり得ることを示唆する。更なる比較のために、コンパウンド20が2種の促進剤のブレンドを使用する。スコーチ及び硬化時間だけでなく、固体強度特性は個々の促進剤が単独で使用される場合についての値内に入ると考えられる。
硬化パッケージとナノ複合材料及び配合されたナノ複合材料コンパウンドの両方の透過性の相互作用を更に調べるために、個々のナノ複合材料及びコンパウンドの両方を顕微鏡写真により調べた。図1は7質量%のナノクレーを含む未配合ナノ複合材料のTEM 顕微鏡写真を示す。夫々、左から右へ、200nm及び20nmにおける顕微鏡写真は、ナノクレーが非常に良く分散され、内位添加され、凝集された状態が得られたことを示す。バックグラウンドの明るい灰色はBISMX コポリマーであり、薄いラインはモンモリロナイトクレープレートである。ナノクレープレートは70〜100nmのオーダの公称の直径を有する。
配合ナノ複合材料コンパウンドをまた調べ、TEM 顕微鏡写真を図2に示す。図2の顕微鏡写真を50nmで撮った。TEM 顕微鏡写真中の大きい黒色の物体はカーボンブラックであり、灰色のバックグラウンドは弾性コポリマーであり、薄いラインはナノクレープレートである。そのコンパウンドは7質量%のナノクレー、60phrのN660銘柄カーボンブラック、3.5phrのナフテン油、0.50phrの硫黄、1.0phrの酸化亜鉛、及び1.25phrのMBTS促進剤を含む。カーボンブラック強化弾性ナノ複合材料において、ナノクレープレートがカーボンブラック粒子又は凝集物と会合されるようになる場合、コンパウンド中の湾曲通路を増大することへの寄与(低下された透過性に所望される)が無効にされるかもしれない。図2に示された会合はナノクレーを引き付けるカーボンブラックの表面の極性官能基のためであると考えられる。
1.00phnのDBTUをコンパウンドに混入する、表5のコンパウンド20が図3の、50nmで撮られた、TEM 顕微鏡写真に示される。DBTUの混入はコンパウンドのスコーチ時間を減少し、ムーニー粘度を増大する。図3中に、カーボンブラックと会合されたナノクレーの量の明らかな減少があることが見られる。カーボンブラックと会合されないナノクレー層がある。こうして、所望の湾曲通路の発生を助けてコンパウンド中の酸素及び窒素に対する透過性を減少する多くのナノクレーがある。
本発明に従って製造された組成物は典型的にはゴム混合物中に通例使用されるその他の成分及び添加剤、例えば、有効量のその他の非変色及び非変色性の加工助剤、加工オイル、顔料、酸化防止剤、及び/又はオゾン劣化防止剤を含む。
【0037】
弾性コンパウンドの加工
エラストマーのブレンドは反応器ブレンド及び/又は溶融混合物であってもよい。成分の混合はポリマー成分、充填剤及び内位添加の形態のナノクレーをあらゆる好適な混合装置、例えば、2本ロールオープンミル、ブラベンダーTM 密閉式ミキサー、接線ローターを備えたバンバリーTM密閉式ミキサー、かみあいローターを備えたクラップ密閉式ミキサー、又は好ましくはミキサー/押出機中で、当業界で知られている技術により合わせることにより行なわれてもよい。混合はナノクレー内位添加物を表層剥離させ、ポリマー内に一様に分散されるようになってナノ複合材料を生成するのに充分なせん断の条件下で、一実施態様では組成物中に使用されるエラストマー及び/又は第二のゴムの融点まで、別の実施態様では40℃から250℃まで、更に別の実施態様では100℃から200℃までの範囲の温度で行なわれる。
典型的には、一種以上のエラストマーの70%から100%までが最初に20〜90秒にわたって、又は温度が40℃から70℃までに達するまで混合される。次いで、充填剤の3/4、及びエラストマーの残りの量(存在する場合)が典型的にはミキサーに添加され、温度が90℃から150℃までに達するまで混合が続く。次に、残りの充填剤だけでなく、加工オイルが添加され、温度が140〜190℃に達するまで混合が続く。次いでマスターバッチ混合物がオープンミルでシートにすることにより完成され、硬化剤が添加される場合には、例えば、60℃から100℃までに冷却される。
【0038】
工業上の適用可能性
それ故、本発明は下記の実施態様を提供する。
A. 4個から7個までの炭素原子を有するイソオレフィンとアルキルスチレンのコポリマーであって、前記コポリマーが実質的に均一な組成分布を有し、かつ約8質量%から約12質量%までのアルキルスチレン及び約1.1質量%から約1.5質量%までのハロゲンを含み、かつ前記コポリマーが約6未満のMw/Mnの比を有する、前記コポリマー。
B. ハロゲンが塩素又は臭素から選ばれる、実施態様Aのコポリマー。
C. アルキルスチレンがパラ-メチルスチレンであり、かつイソオレフィンがイソブチレンを含む、実施態様A又はBのコポリマー。
D. アルキルスチレンがハロゲンで官能化され、こうして25モル%までのアルキルスチレンが官能化される、先の実施態様AからCのいずれかのコポリマー。
E. 10モル%から25モル%までのアルキルスチレンがハロゲンにより官能化される、実施態様Dのコポリマー。
F. コポリマーが第二のポリマーとブレンドされてコンパウンドを生成し、そのコンパウンドが5phrから90phrまでのコポリマーを含む、先の実施態様AからEのいずれかのコポリマー。
G. 第二のポリマーが天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)ゴム、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、イソブテン-イソプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、星型分岐ブチルゴム、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、実施態様Fのコポリマー。
H. コポリマーが充填剤、加工オイル、及び硬化パッケージからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分とブレンドされる、先の実施態様AからGのいずれかのコポリマー。
I. コポリマーがポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンポリマー、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリルポリマー、スチレン無水マレイン酸ポリマー、芳香族ポリケトン、ポリ(フェニレンエーテル)、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた熱可塑性ポリマーとブレンドされる、先の実施態様AからHのいずれかのコポリマー。
【0039】
J. コポリマー及び熱可塑性ポリマーが高せん断の条件下で一緒に動的加硫され、コポリマーが熱可塑性ポリマー内に微細な粒子として分散される、実施態様Iのコポリマー。
K. コポリマーが少なくとも一種のナノ充填剤とブレンドされ、そのナノ充填剤がシリケート、グラフェン、カーボンナノチューブ、膨張性グラファイト酸化物、カーボネート、金属酸化物、及びタルクからなる群から選ばれる、先の実施態様AからJのいずれかのコポリマー。
L. ナノ充填剤が少なくとも一種のシリケートであり、その少なくとも一種のシリケートが天然又は合成フィロシリケート、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ベントナイト、ボルコンスコアイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マグダイト、ケニヤアイト、ステベンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミネート酸化物、及びヒドロタルサイトからなる群から選ばれる、先の実施態様AからKのいずれかのコポリマー、並びに
M. コポリマーが更に少なくとも一種の硬化促進剤とブレンドされ、その少なくとも一種の硬化促進剤がメルカプトベンゾチアゾールジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール、シクロヘキシルベンゾチアゾールジスルフィド、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチウラムジスルフィド、4,4-ジチオジモルホリン、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、及び亜鉛ジブチルホスホロジチエートからなる群から選ばれる、実施態様K又はLのいずれかのコポリマー。
【0040】
本発明の弾性組成物は繊維、フィルム、ラミネート、層、工業部品、例えば、自動車部品、アプライアンスハウジング、消費製品、包装等を含む種々の成形物品に押出、圧縮成形、ブロー成形、射出成形、及び積層されてもよい。
上記弾性組成物はタイヤの製造に使用される空気メンブレン、例えば、インナーライナー、インナーチューブサイドウォール、トレッド、ブラダー等の製造に使用されてもよい。インナーライナー及びタイヤを製造するのに使用される方法及び装置は当業界で公知である。本発明はインナーライナー又はタイヤの如き物品の特別な製造方法に限定されない。特に、弾性組成物はトラックタイヤ、バスタイヤ、自動車タイヤ、オートバイタイヤ、オフロードタイヤ、エアークラフトタイヤ等の如き種々のタイヤ適用のための物品に有益である。
別の適用において、弾性組成物はエアークッション、空気ばね、エアーベロー、ホース、アキュムレーターバッグ、及びベルト、例えば、コンベヤベルト又は自動車ベルトに使用されてもよい。それらは成形ゴム部品に有益であり、自動車サスペンションバンパー、自動排気ハンガー、及びボディマウントに広い用途がある。
更に、弾性組成物はまた接着剤、コーキング剤、シーラント、及びグレイジングコンパウンドとして使用されてもよい。それらはまたゴム配合物中の可塑剤、延伸ラップフィルムに製造される組成物への成分、潤滑剤のための分散剤として、また埋め込み材料及び電気ケーブル充填材料に有益である。
本明細書に引用される全ての優先権書類、特許、刊行物、及び特許出願、試験操作(例えば、ASTM方法)、及びその他の書類はこのような開示が本発明と不一致ではない程度まで、またこのような組み込みが許される全ての管轄権について参考として完全に含まれる。
数的下限及び数的上限が本明細書にリストされる場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4個から7個までの炭素原子を有するイソオレフィンとアルキルスチレンのコポリマーであって、前記コポリマーが実質的に均一な組成分布を有し、かつ約8質量%から約12質量%までのアルキルスチレン及び約1.1質量%から約1.5質量%までのハロゲンを含み、かつ前記コポリマーが約6未満のMw/Mnの比を有する、前記コポリマー。
【請求項2】
ハロゲンが塩素又は臭素から選ばれる、請求項1記載のコポリマー。
【請求項3】
アルキルスチレンがパラ-メチルスチレンであり、かつイソオレフィンがイソブチレンを含む、請求項1又は2記載のコポリマー。
【請求項4】
アルキルスチレンがハロゲンで官能化され、こうして25モル%までのアルキルスチレンが官能化されている、請求項1から3のいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項5】
10モル%から25モル%までのアルキルスチレンがハロゲンにより官能化されている、請求項4記載のコポリマー。
【請求項6】
コポリマーが第二のポリマーとブレンドされてコンパウンドを生成し、そのコンパウンドが5phrから90phrまでのコポリマーを含む、請求項1から5のいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項7】
第二のポリマーが天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)ゴム、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、イソブテン-イソプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、星型分岐ブチルゴム、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項6記載のコポリマー。
【請求項8】
コポリマーが充填剤、加工オイル、及び硬化パッケージからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分とブレンドされている、請求項1から7のいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項9】
コポリマーがポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンポリマー、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリルポリマー、スチレン無水マレイン酸ポリマー、芳香族ポリケトン、ポリ(フェニレンエーテル)、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた熱可塑性ポリマーとブレンドされている、請求項1から8のいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項10】
コポリマー及び熱可塑性ポリマーが高せん断の条件下で一緒に動的加硫され、コポリマーが熱可塑性ポリマー内に微細な粒子として分散されている、請求項9記載のコポリマー。
【請求項11】
コポリマーが少なくとも一種のナノ充填剤とブレンドされ、そのナノ充填剤がシリケート、グラフェン、カーボンナノチューブ、膨張性グラファイト酸化物、カーボネート、金属酸化物、及びタルクからなる群から選ばれる、請求項1から10のいずれか1項記載のコポリマー。
【請求項12】
ナノ充填剤が少なくとも一種のシリケートであり、その少なくとも一種のシリケートが天然又は合成フィロシリケート、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ベントナイト、ボルコンスコアイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マグダイト、ケニヤアイト、ステベンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミネート酸化物、及びヒドロタルサイトからなる群から選ばれる、請求項11記載のコポリマー。
【請求項13】
コポリマーが更に少なくとも一種の硬化促進剤とブレンドされ、その少なくとも一種の硬化促進剤がメルカプトベンゾチアゾールジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール、シクロヘキシルベンゾチアゾールジスルフィド、ジブチルチオ尿素、テトラメチルチウラムジスルフィド、4,4-ジチオジモルホリン、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、及び亜鉛ジブチルホスホロジチエートからなる群から選ばれる、請求項11又は12のいずれかに記載のコポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−503962(P2013−503962A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528809(P2012−528809)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/046323
【国際公開番号】WO2011/031437
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】