説明

弾性ローラ用樹脂製芯金、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】電子写真装置の弾性ローラ芯金として金属を使用せず、しかも、切削加工で発生する廃棄材料により環境に対して負荷をかけることなく、さらには芯金を軽量化することが可能で、しかも強度を備えた樹脂製芯金、該芯金を用いた弾性ローラ及び該弾性ローラを現像ローラとする電子写真プロセスカートリッジならびに電子写真装置を提供する。
【解決手段】軸芯部及び該片端に回転動力伝達可能な形状の駆動用部材が一体となっており、多孔性粒子とその粒子径の100%以上180%以下の繊維長を持つ繊維状フィラーとの両方を含有する樹脂組成物により形成される樹脂製芯金により上記課題は達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置の弾性ローラ用芯金、特に、弾性ローラ用樹脂製芯金に関する。また、本発明は、該弾性ローラ用樹脂製芯金を芯金とする弾性ローラ、該弾性ローラを現像ローラとして組み込まれた電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザービームプリンタ等の電子写真装置に用いられる種々の弾性ローラは、鉄、アルミニウム等の金属製芯金の外周上に弾性層や樹脂層が積層されたもので、それぞれの用途にあった特性が付与されている。
【0003】
この金属製芯金は、通常、原料の金属の丸棒から切削加工により形成される。さらに、電子写真装置に用いられる弾性ローラの芯金は、駆動のためにギヤなどの部材と組み合わせられることから、端部は概して複雑な形状になっていることが多い。そのため、芯金に要する費用として、材料費はもとより、加工費が大きな割合を占めている。したがって、芯金は高価なものとなる。さらに端部形状が複雑になるほど、加工の際に丸棒から削りだされる切削屑即ち廃棄物が増えることから、環境に対する負荷軽減という観点からも不十分な方法である。
【0004】
このような問題に対し、材料費が安い、その物性故に加工がしやすい等から加工費が低減でき、さらには金属製芯金に比べて軽量化できるなどのメリットから導電性の樹脂製シャフト(芯金)を使用する手法がとられる場合がある(特許文献1)。また、芯金とローラ本体を兼ねて樹脂製としたローラ本体に薄いポリウレタン層あるいはシリコーンゴム層をRIM又はLIM成形して設けた導電ローラが開示されている(特許文献2)。
【0005】
このように芯金形状を樹脂にて形成し、電子写真装置の弾性ローラ用芯金として使用する場合、該芯金が装着された弾性ローラは別の動力により回転させられている。この際、回転を伝達するために、通常芯金端部には駆動用部材(以下、「ギヤ」ということがある)が装着、若しくは一体的に形成されている。このギヤからの回転力が弾性ローラ本体に伝わるので、ギヤが装着、若しくは一体的に形成された芯金部分に応力が集中し、樹脂製の芯金では耐久性が不十分となっている。
【0006】
このような問題に対し、樹脂製芯金の強度を向上させるために、使用する樹脂中に各種フィラーを配合する手法も提案されている(特許文献3)
【0007】
しかしながら、樹脂中に配合し、該樹脂の機械的強度を充分向上させることが可能なフィラーとしては、その組成、形状等は限定的なものとなり、他の汎用フィラーと比較して高価なものとならざるを得ない。したがって、充分な強度を得るためには本技術の目的の一つである低価格性に対して不十分なものとなっている。さらに該フィラーの粒子形状が複雑な場合は、該樹脂製芯金をインジェクション成形にて作成する際の応力により、フィラー粒子形状が破壊され、結果として成形品に必要な強度が得られない場合もあり、金属代替用の樹脂としては不十分なものとなっている。
【特許文献1】特開2004−150610号公報
【特許文献2】特開2004−151616号公報
【特許文献3】特開2003−195601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、電子写真装置の弾性ローラ芯金として切削加工により削り出される廃材による環境負荷を低減でき、芯金を軽量化することが可能になるばかりではなく、しかも芯金として十分な強度を備えた弾性ローラ用樹脂製芯金を安価に提供することである。また、本発明の他の課題は、該樹脂製芯金を用いた弾性ローラ、該弾性ローラを現像ローラとする電子写真プロセスカートリッジ並びに電子写真装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討し、樹脂製芯金において、駆動用部材を一体成形しても、該樹脂に特定繊維長の繊維状フィラー及び多孔質粒子を混合して配したならば、充分な強度を有する芯金となり得ることを見出し、ついに本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、電子写真装置の弾性ローラ用樹脂製芯金であって、軸芯部の少なくとも片端に駆動用部材が一体成形されており、かつ、多孔性粒子及び該多孔性粒子の平均粒径の100%以上180%以下の繊維長を持つ繊維状フィラーを含有する樹脂組成物により形成されていることを特徴とする弾性ローラ用樹脂製芯金である。
【0011】
また、本発明は、多孔性粒子及び該多孔性粒子の平均粒径の100%以上180%以下の繊維長を持つ繊維状フィラーを含有する樹脂組成物により、軸芯部の少なくとも片端に駆動用部材が一体成形された弾性ローラ用樹脂製芯金の外周に設けられた弾性層の端部が駆動用部材と一体となっていることを特徴とする弾性ローラである。
【0012】
さらに、本発明は、現像ローラに担持された現像剤により、感光ドラム上に形成された静電潜像が可視像化される電子写真プロセスカートリッジであって、該現像ローラが、上記弾性ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジである。
【0013】
さらに、また、本発明は、現像ローラに担持された現像剤により、感光ドラム上に形成された静電潜像が可視像化される電子写真装置であって、該現像ローラが、上記弾性ローラであることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充分な強度を有し、軽量化された、金属製芯金に比して、切削加工により発生する材料の廃棄量を減らした、環境負荷の小さい樹脂製の芯金が提供される。また、該芯金を用いた良好な性能の現像ローラが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の樹脂製芯金を用いた弾性ローラについて説明する。
【0016】
該弾性ローラの一例の断面図を図1に示す。
【0017】
樹脂製の棒状の芯金1の外周面上に、円筒状の弾性層2が形成されている。そして、該弾性層2の端部が芯金1と一体となって形成された駆動用部材4と一体となっている。一方、弾性層2の外周上には、弾性ローラの使用目的に応じて、必要な機能を有する樹脂層3が形成されている。
【0018】
なお、樹脂製芯金1は、樹脂材料としては充分な強度が達成されるならば特に限定されないが、リサイクルを考えたときには熱可塑性樹脂から選択されることが好ましい。
【0019】
本発明では、該樹脂製芯金1に、多孔性粒子と該多孔性粒子の平均粒径の100%以上180%以下の繊維長を持つ繊維状フィラーの両方が配されていることが、芯金の強度、特に駆動用部材と一体となった部分の強度を達成するために必要である。
【0020】
多孔性粒子としては、平均粒径が100μm以下であれば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等から適宜選択することができる。平均粒径が100μmを超えると、繊維状フィラーと併用により期待される補強効果を発揮することができないので好ましくない。この多孔性粒子の配合量は原料樹脂100質量部に対して5質量部以上50質量部とするのが、芯金として充分な強度が得られるので適当である。なお、多孔性粒子としては、平均粒径が0.5μm以上であることが繊維状フィラーとの併用による補強効果を得るために望ましい。
【0021】
なお、該多孔性粒子の表面性状に関しては、同時に配合する繊維状フィラーとの相乗効果を発現するという観点から、多孔性であることが好ましい。即ち多孔性粒子は、その表面の凹凸部で繊維状フィラーと接触し、凹凸の無い粒子に比べ、繊維状フィラーの動きを規制し、見かけ上大きな粒子径を持った粒子のように補強効果を発現する。実際に、繊維状フィラーと表面に凹凸の無い球状フィラーを用いた場合には、それぞれを単独で配合した場合以上の補強効果が発現しなかった。
【0022】
繊維状フィラーとしては、併用する多孔性粒子の平均粒径の100%以上180%以下の繊維長を持つ繊維状フィラーから適宜選択して使用する。具体的には繊維長1μm以上200μm以下であれば、炭素繊維粉末、ガラス繊維粉末、セルロース微粉末、絹微粉末、各種ウイスカーから適宜選択する使用することができる。なお、該繊維状フィラーにおいて、そのアスペクト比が10以上100以下程度であることが芯金の強度補強及び製造に当たっての樹脂への分散性向上から望ましい。
【0023】
繊維状フィラーの繊維長がこの範囲外であると、樹脂製芯金形状とした際、該芯金表面の粗度が大きくなりすぎ、導電性ローラ等として使用する時に、接触している他の部材の摩耗を促進してしまうため好ましくない。
【0024】
この繊維状フィラーの配合量は原料樹脂100質量部に対して5質量部以上50質量部とするのが適当である。配合量がこの範囲であると、芯金として充分な強度が得られる。
【0025】
なお、下記導電剤として、金属繊維、炭素繊維等の導電性を有する繊維状導電剤を使用する場合は、繊維長1μmから100μmの範囲のものを50質量%以上、好ましくは80質量%以上含む場合は、上記繊維状フィラーを兼ねることが可能である。
【0026】
また、弾性ローラが導電性弾性ローラであるときは、芯金は導電性であることが必要である。そのため、樹脂材料自体が導電性を有する場合でも、通常、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維;酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物;硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉;適当な粒子の表面に、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウムなどを電解処理、スプレー塗工、混合振とうなどで付着させた粉体;アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、PAN系カーボンブラック、ピッチ系カーボンブラック等のカーボン粉;KSCN、LiClO4、NaClO4、4級アンモニウム塩等のイオン伝導物質などの導電剤を配することが好ましい。
【0027】
本発明では、さらに、充分な曲げ強度・耐熱性等を付与するために、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、カーボンブラック、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス粉、有機補強剤、有機充填剤等のフィラーを配しても構わない。
【0028】
本発明の樹脂製芯金において、弾性層を形成する軸心部の径として、充分な強度を得るために2mm以上、好ましくは4mm以上が適当である。また、弾性ローラとしての必要な厚みで弾性層が形成できるならばできるだけ大きい方が好ましいが、取り扱い等から15mm以下、好ましくは12mm以下とするのが適当である。
【0029】
さらに、本発明の駆動用部材が一体として設けられた芯金の形状として、軸心部が充分な強度を有するならば、駆動用部材の部分は動力が弾性ローラに充分に伝えることができる形状であれば特に限定されない。例えば、歯車状、Dカット状、矩形状、楕円状等を示すことができ、使用目的に応じて決めればよい。
【0030】
例えば、駆動用部材との部分が歯車状あるいは矩形凸状である場合の例を、(a)正面図及び(b)正面図に示す矢印の側から見た側面図を図3、図4に、それぞれ示す。これらの図3及び図4において、1は樹脂製芯金であり、その片端部に駆動用部材4が一体となっている。
【0031】
この樹脂製芯金が、例えば、樹脂材料として、ポリスチレンを使用した場合、以下のようにして製造できる。
【0032】
片端に駆動用部材部を形成するキャビティを有する円筒形状の金型を射出成形用装置にセットし、金型を60℃から100℃の温度に加熱する。その状態で、該キャビティへ150℃から200℃の範囲で溶融した樹脂材料を注入する。その後、金型を、例えば、室温まで冷やし、金型から射出成形体を取り出す。次いで、60℃から80℃に調整された恒温室に一週間程度おいて歪みをとって、樹脂製芯金を得る。なお、これら温度、時間等は芯金の形状、大きさ、樹脂組成等によって適宜変更できる。
【0033】
弾性層の材料として、公知の弾性ローラに用いられるものから適宜選ぶことができる。また、その硬さも使用目的に応じて適宜決めることができる。なお、導電性弾性ローラの場合、弾性層は導電性を有するが、その導電性の度合いは使用目的に応じて適宜決めることができる。
【0034】
電子写真プロセスに用いられる導電性弾性ローラの場合、弾性層の材料として、液状のゴム材料、好ましくは液状付加反応架橋型シリコーンゴムに導電性付与剤としてカーボンブラック等の導電性フィラーを配合したものが好ましく用いられる。
【0035】
弾性層の材料として、加工性に優れている、硬化反応に伴う副生成物の発生がないため寸法安定性が良好である、硬化後の物性が安定している等の理由から、液状付加反応架橋型シリコーンゴムが好ましい。
【0036】
この付加反応架橋型シリコーンゴムは、例えば、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、及び式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含み、さらにこれらと触媒や他の添加物とを適宜混合させて用いられる。
【0037】
【化1】

【0038】
【化2】

【0039】
なお、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンに、触媒や添加物を配合して得られる組成物を液状シリコーンゴム材料と呼ぶ。
【0040】
式(1)で表されるオルガノポリシロキサンは液状シリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その分子量は特に限定されないが、重量平均分子量としは10万以上100万以下、好ましくは40万以上70万以下が適当である。さらに加工特性及び得られるシリコーンゴム組成物の特性等の観点から、このオルガノポリシロキサンは粘度(25℃)が10Pa・s以上300Pa・s以下、好ましくは50Pa・s以上250Pa・s以下であることが好ましい。
【0041】
オルガノポリシロキサン中のアルケニル基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定されない。しかし、活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基又はアリル基が好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0042】
また、式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするものである。したがって、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2個以上であり、硬化反応を優れて行わせる観点から、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数が3個以上であることが好ましい。
【0043】
ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子量に特に制限は無く、例えば、分子量1000から10000までが使用できる。しかし、硬化反応を適切に行わせるためには、比較的低分子量(例えば重量平均分子量1000以上5000以下)であるものを用いるのが好ましい。
【0044】
オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの架橋反応の触媒として、例えば、塩化白金酸六水和物を使用することができ、また、ヒドロシリル化反応において触媒作用を示す遷移金属化合物も使用可能である。その具体例として、Fe(CO)5、Co(CO)8、RuCl3、IrCl3、〔(オレフィン)PtCl22、ビニル基含有ポリシロキサン−Pt錯体、L2Ni(オレフィン)、L4Pd、L4Pt、L2NiCl2(但し、LはPPh3もしくはPR3であり、ここでPはリン、Phはフェニル基、Rはアルキル基を示す)等を挙げることができる。その中でも、白金、パラジウム又はロジウム系の遷移金属化合物触媒であることが好ましい。
【0045】
触媒の使用量は、白金系金属化合物触媒の場合、液状シリコーンゴム材料中、白金として1〜100質量ppmが好ましいが、この範囲に限定されることはなく、目標とする可使時間、硬化時間、製品形状等により適宜選択される。
【0046】
また、液状シリコーンゴム材料は、硬化反応遅延剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール、フェニルブチノール等の不飽和アルコールを含むことができる。上記硬化反応遅延剤の配合量としては、オルガノポリシロキサン100質量部に対し0.05質量部から0.5質量部の範囲で、目標とする可使時間、硬化時間、製品形状等により適宜決定される。
【0047】
必要な充填剤等が配合された液状シリコーンゴム材料の粘度ρ(25℃)は特に制限はないが、弾性層の形成方法に応じて適宜決定する。例えば、芯金をキャビティ内に収納した金型を用いる様な場合、材料の流動性をある程度抑制して、金型からの材料漏れを防止する観点から10Pa・s以上が好ましい。注入ゲート間にウェルドが発生する等の成形加工性の問題を回避するための観点から、300Pa・s以下が好ましい。
【0048】
本発明では、芯金の周りに弾性層を形成するには、弾性層材料をチューブ状に押し出し、加熱硬化した後、切断し、それに接着剤を塗布した芯金を押し込む方法又は芯金をキャビティ内に収納し、その金型に液状の弾性層材料を注入し、加熱硬化する方法が適当である。
【0049】
弾性層材料として、上記液状シリコーンゴム材料を用いた場合、下記方法によるのが好ましい。
【0050】
加硫接着タイプのシリコーンゴム用プライマーを極薄く塗布した樹脂製芯金を、弾性ローラ外形形状のキャビティを有する円筒状金型内に置き、金型と芯金の間に形成された弾性層形成キャビティ内に液状シリコーンゴム材料を注入する。該金型内で液状シリコーンゴムを100℃から150℃の温度で、0.1時間から1時間の間で一次加熱加硫し、金型より成形物を取り出す。必要により、該成形物をさらに180℃から220℃に温度調整された恒温槽内で加熱加硫を完了させ、芯金の上に弾性層を形成することができる。
【0051】
なお、電子写真プロセスにおいて用いられる弾性ローラが導電性弾性ローラであるときは、使用目的により異なるが、導電性弾性層の厚みとして、通常、2mmから6mmの範囲、好ましくは3mmから5mmの範囲とする。
【0052】
上記したようにして製造される弾性ローラは、そのままでも電子写真プロセスにおいて使用される各種ローラとして使用可能であるが、その表面を必要によりブラストあるいは砥石による研磨の後、表面層が形成されて、目的に応じた弾性ローラとされる。
【0053】
表面層を形成する樹脂材料として、例えば、各種のポリアミド樹脂、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂等を用いることができる。
【0054】
これらの材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、必要な添加剤と共に、適当な溶媒、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン等に分散させて用いる。この分散を行うことにより、表面欠損の少ない表面層を得るための塗工液を得ることができる。なお、溶媒として、樹脂製芯金を侵さないものを選択することが望ましい。
【0055】
得られた表面層形成用の塗工液は、ローラコート法、スプレーコート法、ディッピング法、リングコート法、刷毛塗布等により弾性層の上に塗工することができる。
【0056】
塗工に際して、樹脂製芯金が、塗工液に用いた溶媒に対して耐性に乏しい場合、弾性層から剥き出た部分が溶媒に触れると、強度・寸法精度等に不具合が発生する懸念がある。そのために、剥き出しになっている部分に溶媒が触れないよう、マスキングキャップ、マスキング剤コート等の防御手段をとっておくことが好ましい。特にディッピング法による塗工の場合、この対策が重要である。また、塗工方法を工夫して剥き出し部に溶媒が触れないようにすることも有効である。
【0057】
表面層の厚みとしては、電子写真プロセスに用いる弾性ローラの場合、弾性層から低分子量成分が染み出してきて、感光体ドラムを汚染するのを防止する観点から5μm以上が好ましい。また、弾性ローラの表面が硬くなることを防止し、トナーの融着を防止する観点から500μm以下が好ましい。より好ましくは10μmから30μmの範囲である。
【0058】
弾性ローラが現像ローラである場合、表面層中に平均粒径1μmから20μmの範囲の微粒子を分散させると、現像ローラ表面での現像剤搬送が良好になり、充分な量の現像剤を現像領域に搬送することができるので、好ましい。この目的に使用する微粒子として、例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子等のプラスチックピグメントが挙げられる。特にポリメチルメタクリル酸メチル微粒子やポリウレタン微粒子が好ましい。これらの微粒子はこの微粒子を除く表面層構成成分の総質量に対して3質量%から200質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0059】
次に、本発明の弾性ローラを現像ローラとして組込んでなる電子写真プロセスカートリッジを用いた接触現像方式の電子写真装置の一例の概略を図2に示す。
【0060】
感光体ドラム31、一次帯電ローラ32、現像ローラ33、現像剤供給ローラ34、現像剤層厚規制部材であるトナー層厚規制部材(現像ブレード)35、撹拌羽36及び現像剤であるトナー37が一つにまとめられ、一体的に交換可能なカートリッジとなっている。
【0061】
一次帯電ローラ32で均一に帯電された感光体ドラム31は矢印の方向に回転しており、一次帯電ローラ32と現像ローラ33との間でその表面に記録情報を乗せたレーザー光40が照射され、静電潜像が形成される。一方、撹拌羽36で現像剤供給ローラ34に送られたトナー37は、トナー層厚規制部材35によって現像ローラ33表面に均一にコートされ、感光体ドラム31表面へと運ばれ、感光体ドラム31表面上に形成されている静電潜像をトナー像として顕像化する。感光体ドラム31がさらに回転してトナー像が転写領域に到達すると、紙等の記録メディア43にトナー像が感光体ドラム31に対し対置された転写ローラ42により転写される。感光体ドラム31は、その表面からクリーニング用弾性部材38で記録メディア43に転写せずに残ったトナーが除去された後、一次帯電ローラ32で再び均一に帯電される。
【0062】
記録メディア43に転写された未定着のトナー像は、定着ローラ44と加圧ローラ45の間を通り、圧力と熱で記録メディアに定着され、電子写真装置から排出される。
【0063】
一方、現像に使用されずに残ったトナーを表面に坦持したまま現像ローラ33は現像容器41に戻される。現像容器41の内部では現像剤供給ローラ34が現像ローラ33表面に残ったトナーを取り除くとともに、新しいトナーを現像剤担持ローラ33の表面に供給する。現像ローラ33表面に供給された新しいトナーは、その層厚がトナー層厚規制部材35により再び均一に整えられ、現像領域に搬送されていく。この繰り返しによって現像ローラ33に常に新しいトナーが均一にコートされて静電潜像が現像される。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これは本発明を何ら限定するものではない。
【0065】
まず、以下の実施例及び比較例で行う現像ローラの画出評価について説明する。
【0066】
画出評価:
以下の実施例、比較例で作製した現像ローラを、キヤノン株式会社製の電子写真式レーザービームプリンタ「LBP−2510」(商品名)のカートリッジに現像ローラとして組み込み、ベタ画像及びハーフトーン画像を出力した。得られた画像を目視により観察し、下記基準で評価した。なお、評価に用いた「LBP−2510」は、A4版出力用のマシンで、出力スピード:A4縦16枚/分、画像解像度:600dpiである。また、感光体ドラムはアルミシリンダーにOPC(有機光導電体)層をコートした反転現像方式のものであり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダー樹脂とする電荷輸送層である。
○:いずれの画像にも、濃度ムラが殆ど見られない。
△:ハーフトーン画像に軽微に濃度ムラは観察されるが、実用上問題がない。
×:現像ローラの周回異状による濃度ムラが観察され、実用上問題である。
【0067】
〔実施例1〕
ポリスチレン樹脂ペレット「トーポレックスG120K」(商品名、日本ポリスチレン株式会社製)100質量部に、平均繊維長が75μmのガラス繊維「EFH75−01」(ミルドファイバー、セントラル硝子株式会社製、アスペクト比:12.5)20質量部及び多孔性粒子として平均粒径75μmのケイ酸(微砂C、日本シリカ工業株式会社)20質量部さらにアセチレンブラック3質量部を配合して、原料樹脂組成物を得た。この原料樹脂組成物を、樹脂温度200℃、金型温度80℃で、芯金製造用管型に射出成形して、径8mmで片端部に外径12mmの歯車が付いた図3に示すような樹脂製芯金を得た。なお、歯車厚みは2mmとした。繊維状フィラーの繊維長は多孔性粒子の平均粒径の100%であった。
【0068】
この樹脂製芯金にシリコーン系プライマーを塗布した後、現像ローラ作成用金型にセットした。この金型のキャビティに、液状状態での粘度150Pa・sであり、硬化後のアスカC硬度が40°である液状付加反応型シリコーンゴムを注入した。なお、この液状付加反応型シリコーンゴムはオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジエンポリシロキサン、導電性カーボンブラック、白金触媒、石英、シリカを適宜配合したものである。次いで加熱硬化して、外周上に長さ230mm、厚み2mmのシリコーンゴムの弾性層を歯車に密着した形状で形成した。シリコーンゴム層の加熱硬化条件は100℃×30分とした。
【0069】
次いで、ポリメタクリル酸メチル微粉(平均粒径10μm)10質量部、ケッチェンブラック5質量部及びポリエステル樹脂30質量部を配合し、メチルエチルケトン(MEK)にて固形分10質量%とした表面層用塗料を作製した。この塗料に、上記で得たシリコーンゴムの弾性層を形成したローラを、芯金の露出部(歯車を形成している側と逆側)をマスキングした後、ディッピングし、溶媒を乾燥後硬化して、厚み20μmの表面層を形成して、現像ローラを得た。
【0070】
得られた現像ローラを用いて、画像評価を行った。その結果は「○」であった。
【0071】
〔実施例2〕
ガラス繊維として、平均繊維長が122μmであるガラス繊維「EFH100−31」(ミルドファイバー、セントラル硝子株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作成した。得られた現像ローラを用いた画像評価の結果は「○」であった。繊維状フィラーの繊維長は多孔性粒子の平均粒径の163%であった。
【0072】
〔比較例1〕
ガラス繊維として、平均繊維長が50μmであるガラス繊維「EFH50−31」(ミルドファイバー、セントラル硝子株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作成した。得られた現像ローラを用いた画像評価の結果は「×」であった。繊維状フィラーの繊維長は多孔性粒子の平均粒径の67%であった。
【0073】
〔比較例2〕
ガラス繊維として、平均繊維146μmであるガラス繊維「EFH150−31」(ミルドファイバー、セントラル硝子株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作成した。得られた現像ローラを用いた画像評価の結果は「×」であった。繊維状フィラーの繊維長は多孔性粒子の平均粒径の197%であった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の弾性ローラ一例の断面図である。
【図2】本発明の電子写真装置一例の概念図である。
【図3】本発明の樹脂製芯金の一例の(a)正面図及び(b)矢印方向からの側面図である。
【図4】本発明の樹脂製芯金の他の一例の(a)正面図及び(b)矢印方向からの側面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 樹脂製芯金
2 弾性層
3 表面層
4 駆動用部材
31 感光体ドラム
32 一次帯電ローラ
33 現像ローラ
34 現像剤供給ローラ
35 トナー層厚規制部材(現像ブレード)
36 撹拌羽
37 トナー
38 クリーニング用弾性部材
40 レーザー光
41 現像容器
42 転写ローラ
43 記録メディア
44 定着ローラ
45 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置の弾性ローラ用樹脂製芯金であって、
軸芯部の少なくとも片端に駆動用部材が一体成形されており、
かつ、多孔性粒子及び該多孔性粒子の平均粒径の100%以上180%以下の繊維長を持つ繊維状フィラーを含有する樹脂組成物により形成されている
ことを特徴とする弾性ローラ用樹脂製芯金。
【請求項2】
多孔性粒子及び該多孔性粒子の平均粒径の100%以上180%以下の繊維長を持つ繊維状フィラーを含有する樹脂組成物により、軸芯部の少なくとも片端に駆動用部材が一体成形された弾性ローラ用樹脂製芯金の外周に設けられた弾性層の端部が駆動用部材と一体となっていることを特徴とする弾性ローラ。
【請求項3】
現像ローラに担持された現像剤により、感光ドラム上に形成された静電潜像が可視像化される電子写真プロセスカートリッジであって、該現像ローラが、請求項2に記載の弾性ローラ用樹脂製芯金を用いて作成された弾性ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項4】
現像ローラに担持された現像剤により、感光ドラム上に形成された静電潜像が可視像化される電子写真装置であって、該現像ローラが、請求項2に記載の弾性ローラであることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−176029(P2008−176029A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9092(P2007−9092)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】