説明

弾性不織ウェブを製造する方法

(i)熱可塑性繊維を含有するサーマルボンド不織前駆体ウェブを提供する工程と、(ii)工程(i)の前記前駆体ウェブに弾性サーマルボンド不織ウェブを製造する繊維の軟化点と融点の間の温度で、延伸率45〜70%、歪速度1000〜2400%/分の範囲内で流れ方向に延伸処理を施す工程とを含んでなることを特徴とする、弾性サーマルボンド不織ウェブを製造する方法。弾性サーマルボンド不織ウェブは、100%の伸びから少なくとも70%の復元率および150%の伸びから少なくとも60%の復元率の弾性を交差方向に有するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性サーマルボンド不織ウェブまたはファイバーマットを製造する方法、および本発明による方法により製造された弾性サーマルボンド不織ウェブまたはファイバーマットに関する。本発明はまた、使い捨て衛生保護製品、医療品、保護作業着または個人用品の製造において、本発明により製造した弾性サーマルボンド不織ウェブまたはファイバーマットの使用にも関する。最後に、本発明は、本発明の弾性不織ウェブまたはファイバーマットを含有する製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、前駆体ウェブを特定のガス流で加熱した後機械的処理を行うことによる不織ウェブの熱機械処理の連続プロセスに関する。特許文献2は、サーマルボンディング中の熱収縮に耐えるコンジュゲートファイバーから作成された不織布地に関する。特許文献3は、伸縮および復元機能を有するバリア布地の製造方法に関する。用いる前駆体は、ウェブを含有するメルトブローン繊維であり、ネッキングは50%以下である。この方法では、伸張部分において前駆体ウェブに熱を加えないため、必ずしも最大温度でウェブは伸張されない。
【0003】
サーマルボンド不織ウェブは当技術分野において周知である(非特許文献1、特許文献4、特許文献5、特許文献6)。不織ウェブの伸張については、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13および特許文献14に記載されている。しかしながら、これらの開示内容のいずれも、不織ウェブの伸張と弾性特性の付与の因果関係に関するものはない。
【0004】
サーマルボンド不織ウェブは、成人および幼児用おむつまたは生理用ナプキンのような使い捨て衛生保護製品、マスク、手術衣、ヘッドカバーまたは手術用ドレープのような医療品、カバーオール、ヘッドカバーおよびマスクのような保護作業着、ならびに、下着のような個人用品の大量生産に従来から用いられている。不織ウェブの大きな欠点は、弾性または伸張性および馴染み易さに欠けることである。従来のサーマルボンド不織ウェブは、十分な弾性特性を有していないため、弾性特性を必要とするかかる不織ウェブを含有する製品は、従来から、ファスニングおよび固定用のラテックスバンドを更に含有している。しかしながら、ラテックスストラップを適切に調整することは難しく、固定が緩すぎるかきつすぎるかのいずれかとなるのが普通である。更に、ラテックスストラップはアレルギー性であり、いくらか皮膚を刺激する。加えて、ラテックスおよびゴム成分を大量に使い捨て製品に用いると、清掃プロセス中でのジオキサンやその他有害な放出物のような毒性廃棄物の生成を鑑みると重大な環境問題を生じる。
【0005】
従来技術において、弾性を有する不織ウェブを提供することが試行された。一つの手法では、エラストマーを不織ウェブに、天然または合成ゴムのフィルム、バンドまたは糸として組み込んで、二方向において完全なウェブ弾性を得ている。しかしながら、エラストマーに基づく不織ウェブは、少なくとも一方向において寸法安定性に欠けているため、かかるウェブを自動製造プロセスで取り扱うのは難しい。更に、エラストマー繊維に基づく不織ウェブは高価である。従って、エラストマー繊維の使用により固有の問題が生じ、使い捨て製品の大量製品に不適なものとさせている。
【0006】
不織ウェブに弾性を与える別の手法は、いわゆる熱機械処理に係る。特許文献15には、熱硬化プロセスを行う前に、周囲温度で前駆体を緩速で伸張することによる連続熱機械的方法が開示されている。室温伸張によって、得られるウェブの繊維結合および引張り強度が大幅に減じる可能性があり、ウェブによっては60%と高い延伸率で破断する可能性すらある。特許文献16には、周囲温度の伸張に移す前に、前駆体を徐々に加熱することにより、破断し易いメルトブローン繊維含有ウェブを処理する逆連続熱機械的方法が記載されている。特許文献15および特許文献16の方法だと、得られるウェブの弾性が100%未満となり、伸張後か伸張前に、加熱装置の多数組のロールまたはドラムに通すのに、1〜5分の処理時間をウェブは必要とする。特許文献8には、高温で熱可塑性メルトブローン前駆体を延伸して、ウェブ特性を改善することが記載されている。延伸率は100%〜900%である。しかしながら、弾性はない。
【0007】
不織ウェブに弾性を付与するために高温で延伸工程を用いる方法は、特許文献17および特許文献18(特許文献19)に記載されている。特許文献20は、前駆体として選択したラミネートに適用される特許文献17の方法に関する。従って、サーマルボンド不織前駆体ウェブを、高温で、一方向(流れ方向(machine direction))に伸張処理すると、前駆体ウェブの幅が垂直方向(交差方向(cross direction))に収縮して、交差方向に特定の弾性が得られ、流れ方向には非弾性特性が維持される。流れ方向の寸法安定性と交差方向の弾性特性を組み合わせた異方性弾性は、かかるウェブを自動製造プロセスに用いるのに役立つ。
【0008】
特許文献17および特許文献20には、フィルタ材料の作成用の選択した不織ウェブを必要とする方法が開示されており、10%〜100%の延伸率および2000〜20000%/分、好ましくは、3000〜6000%/分の歪速度を用いて前駆体ウェブを横方向に強化する。前駆体ウェブは、30%を超える高い結晶含量または40%未満の室温破断時伸びを有する必要がある。特許文献17および特許文献20のこれらの高歪速度方法は、この高結晶含量不織ウェブのモルホロジーを大幅に変化させることが示されており、孔径を減少し、孔径分布を狭くする。ある程度の弾性は作成されるが、弾性率は低い(50%の伸びで70%の復元率、100%の伸びで40%の復元率)。連続プロセスが望ましい場合には、ウェブの加熱および伸張を必要とする特許文献17および特許文献20の高歪速度方法を非常に短い距離で行ったり、前駆体ウェブを非常に高速および非常に短い時間、例えば、1秒未満、好ましくは0.5秒未満で処理装置を通過させる。ある程度加熱装置の容積に応じるものの、伸張処理によるウェブの破断を避けるために前駆体ウェブが温度をピックアップする十分な処理時間が必要である。更に、特許文献17および特許文献20の高歪速度方法は、3〜122m/分(10〜400フィート/分)、好ましくは7.5〜60m/分(25〜200フィート/分)の範囲内で可能な処理速度に関して制限されている。
【0009】
特許文献18(特許文献19)には、不織ウェブを高温だが、累積歪速度を350〜950%/分とする35%未満の延伸率で慎重に制御された複数組の伸張ロールにより低速で伸張する方法が開示されている。特許文献16および特許文献18(特許文献19)の両方に記載された低伸張および低速プロセスは、主に、脆く易壊性の材料、一般的に、メルトブローン不織ウェブの処理のために開発されている。特許文献18(特許文献19)の得られたウェブの弾性の程度(50%の伸びで85%の復元率)は、特許文献16(60%の伸びで70%の復元率)のものと同様である。しかしながら、得られたウェブの弾性の程度は、商業的に成功を収める用途に必要な基準を満たすには尚不十分なことが分かった。更に、プロセスは連続モードで実施されるものの、複数組の伸張装置から得られる特許文献18(特許文献19)のプロセス速度は、約60m/分以下であり、大量生産を経済的に行えないものと考えられる。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,113,997号明細書
【特許文献2】英国特許第2 096 048号明細書
【特許文献3】米国特許第5,582,903号明細書
【特許文献4】米国特許第3,978,185号明細書
【特許文献5】米国特許第3,795,571号明細書
【特許文献6】米国特許第3,811,957号明細書
【特許文献7】米国特許第3,772,417号明細書
【特許文献8】米国特許第4,048,364号明細書
【特許文献9】米国特許第4,223,059号明細書
【特許文献10】米国特許第3,949,127号明細書
【特許文献11】米国特許第4,276,336号明細書
【特許文献12】米国特許第5,296,289号明細書
【特許文献13】米国特許第4,443,513号明細書
【特許文献14】欧州特許第0 882 147号明細書
【特許文献15】米国特許第4,965,122号明細書
【特許文献16】米国特許第5,492,753号明細書
【特許文献17】米国特許第5,244,482号明細書
【特許文献18】米国特許第6,051,177号明細書
【特許文献19】欧州特許第0 844 323号明細書
【特許文献20】米国特許第5,599,366号明細書
【非特許文献1】ウェント、工業およびエンジニアリング化学、第48巻(Wendt, Industrial and Engineering Chemistry Volume 48)、第8号(1965年)1342頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服して、高伸張性および復元率を備えた交差方向に弾性特性を有する弾性サーマルボンド不織ウェブを大量生産して、好ましくは得られるウェブの弾性が100%の伸びから少なくとも70%、または150%の伸びから少なくとも60%の復元率である、費用効果のある方法を提供することである。
【0012】
本発明の更なる課題は、処理速度(すなわち、供給速度)が少なくとも100m/分、一般的に少なくとも150m/分、好ましくは200〜400m/分の範囲である方法を提供することである。
【0013】
本発明の更なる課題は、70%を超える復元率で100%を超える交差方向における高伸張性を有する新規な弾性不織ウェブを提供することである。更に、本発明の更なる課題は、60%を超える復元率で150%を超える交差方向における高伸張性を有する新規な弾性不織ウェブを提供することである。
【0014】
本発明の更なる課題は、前駆体ウェブに比べた弾性不織ウェブの最大孔径の増加または20%未満の減少であり、平均流孔径が5%を超えて大幅に減少した弾性不織ウェブを提供することである。
【0015】
本発明の更なる課題は、本発明の弾性不織ウェブを含有する新規な製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの課題は請求の範囲に従って解決される。従って、本発明は、
(i)熱可塑性繊維を含有するサーマルボンド不織前駆体ウェブを提供する工程と、
(ii)工程(i)の前記前駆体ウェブに、弾性サーマルボンド不織ウェブを製造する繊維の軟化点と融点の間の温度で、延伸率45〜70%、歪速度1000〜2400%/分の範囲内で流れ方向に延伸処理を施す工程と
を含んでなることに特徴を有する弾性サーマルボンド不織ウェブを製造する方法を提供する。
【0017】
延伸処理について、熱可塑性繊維がその室温弾性率を失って、軟性、粘性および変形可能となる軟化点より高い温度までウェブは加熱される。工程(ii)における前駆体ウェブの処理速度は、好ましくは少なくとも100m/分、一般的に少なくとも150m/分、好ましくは200〜400m/分の範囲である。
【0018】
本発明は、歪速度のみの制御では、優れた弾性特性を熱機械処理においてサーマルボンド不織前駆体ウェブに付与するのに不十分であるという認識に基づくものである。本発明は更に、優れた弾性特性を得るには更なる手段の制御が不可欠であるという認識に基づくものである。本発明では、歪速度の制御と組み合わせた延伸比(すなわち、延伸率)の制御を、優れた弾性特性を付与するには必須の手段として明示している。延伸比は、ウェブ幅の収縮および伸張性、ならびに弾性の形成に不可欠であることが分かった。低い延伸率だと、前駆体ウェブの幅の減少が不十分で、仕上がりウェブに十分な伸張性および弾性を付与しない。最後に、本発明は、45〜70%の延伸率、1000〜2400%/分の範囲内、好ましくは1950%/分までの歪速度の組み合わせの制御によって、特に、ポリプロピレンを含有する不織前駆体ウェブに、優れた弾性特性を与えるという認識に基づくものである。従って、サーマルボンド不織前駆体ウェブに対する熱機械処理により付与される弾性特性は大幅に改善され、不織ウェブは、交差方向に、100%の伸びから少なくとも70%の復元率、150%の伸びから少なくとも60%の復元率の弾性を示す。更に、不織ウェブは、交差方向における破断時伸び対流れ方向における破断時伸びの比率が少なくとも800%である単方向の弾性を与える。かかる弾性特性を有するサーマルボンド不織ウェブは本発明以前には知られていなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に、本発明のプロセスを実施するための装置の概略を示す。本装置は、ウェブ(1)を巻出しロール(10)から巻取りロール(30)へ移動させる実質的に平行な配置で提供された巻出しロール(10)と巻取りロール(30)とを含んでなる。巻取りロール(10)は、伸張処理前の前駆体ウェブの幅(a)に対応する幅を有しているのが好ましい。巻取りロールは、延伸処理後のウェブの幅(b)に対応する幅を有しているのが好ましい。ウェブ(1)の幅は、延伸処理中に減少するため、巻出しロール(10)は巻取りロール(30)よりも幅が広い。巻出しロール(10)と巻取りロール(30)は縦軸周囲を回転する。回転は、巻出しロール(10)と巻取りロール(30)で独立に制御してもよい。巻出しロールは不織ウェブ(1)を支持する。不織ウェブは、巻出しロール(10)から巻取りロール(30)までオーブンなどの加熱手段(20)を通して伸張される。案内ロール(151)と案内ロール(152)を含んでなる第1のS−ラップ(S−wrap)(15)が、巻出しロール(10)と加熱手段(20)の間に提供されているのが好ましい。更に、案内ロール(251)と案内ロール(252)を含んでなる第2のS−ラップ(25)が、加熱手段(20)と巻取りロール(30)の間に提供されているのが好ましい。巻出しロール(10)により支持される不織ウェブは前駆体ウェブに対応している。前駆体ウェブは、場合によりS−ラップ(15)を通過して流れ方向に巻出しロール(10)から、加熱手段(20)の入口に向かって伸張される。不織ウェブは加熱手段(20)に入り、加熱手段の出口に向かって加熱手段を通して伸張される。前駆体ウェブを加熱する方法は、ウェブの損傷を防止するために適宜、短時間で熱伝達が行われる限りは、特に限定されるものではない。加熱は放射または対流により行ってよい。放射加熱は、赤外線またはマイクロ波を用いて行ってよい。対流加熱は、好適な加熱流体、好ましくは空気のようなガスにより行ってよい。赤外線による加熱が好ましい。加熱手段の下流では、不織ウェブが場合によりS−ラップ(25)を介して巻取りロール(30)まで伸張される。加熱手段(20)は、ウェブの熱可塑性繊維の軟化点と熱可塑性繊維の融点の間の温度まで不織ウェブを加熱するために提供されている。S−ラップ(15)および(25)は、不織ウェブの移動を良好に制御するために提供されている。
【0020】
ここで、本発明のプロセスを図1に示した装置に基づいて説明する。すなわち、弾性サーマルボンド不織ウェブは、巻出しロール(10)により支持された、熱可塑性繊維を含有するサーマルボンド不織前駆体ウェブを提供することにより作成される。巻出しロール(10)は、縦軸周囲を回転して、前駆体ウェブは、速度Aで矢印に沿って流れ方向(MD)に巻出しロール(10)を離れる。前駆体ウェブはS−ラップ(15)を介して加熱手段(20)へ、加熱手段を通って、S−ラップ(25)を介して加熱手段の出口から巻取りロール(30)へ移動する。巻取りロール(30)は、係数(1+X%)、巻出し速度Aより速い速度で駆動される。係数(1+X%)が本発明のプロセスにおいて不織ウェブの延伸率を決める。本発明によれば、前駆体ウェブは、繊維構造を強化し、不織ウェブの幅を減じるために、流れ方向に、45〜70%の延伸率、1000〜2400%/分の範囲、好ましくは1950%/分までの歪速度、繊維の軟化点と融点の間の温度で延伸処理される。延伸処理の結果として、ウェブの幅が交差方向(CD)に減じる。本発明のプロセスを実施する機械は、4〜12m、好ましくは約6〜10m、特に8mの距離で装着された巻出しロールと巻取りロール、およびその間に装着された加熱装置により商業的な規模で構築されているのが好ましい。巻出機は、100m/分を超え、400m/分まで、好ましくは少なくとも150m/分で250m/分までの商業的な速度で操作され、巻取りロールの速度を上げることにより延伸率45%〜70%となるのが有利である。歪速度は、1000〜2400%/分、好ましくは1200〜2200%/分に調整する。好ましい実施形態において、歪速度は1950%/分までである。延伸率は、前駆体ウェブの幅減少の程度に関係している。歪速度は、処理速度に関係しており、歪速度が請求した範囲より遅いと、ウェブが過熱される傾向があって、剛性となることが分かった。一方、歪速度が請求した範囲を超えると、前駆体ウェブは十分に加熱されず、ウェブは延伸処理中に破断するか、またはウェブを延伸張力から開放した後、幅の減少が維持されない。工程(i)における延伸処理は、サーマルボンド不織前駆体ウェブを繊維の軟化点と融点の間の温度で加熱する加熱手段にウェブを導入する工程を含んでなるのが好ましい。延伸ウェブは、延伸処理後、貯蔵ロールに巻く前に冷却されるのが好ましい。加熱および延伸処理の時間、すなわち、前駆体ウェブを巻出し、得られたウェブを巻取る時間は、好ましくは1〜3秒、より好ましくは1.1〜2.8秒の範囲である。
【0021】
弾性不織ウェブには、前駆体ウェブに比べて、弾性不織ウェブの最大孔径が20%未満増加または減少するという特徴があるのが好ましい。得られる弾性または不織ウェブの平均および最小孔径は大幅に減少するのが好ましい。弾性不織ウェブには更に、5%を超える平均流孔径の大幅な減少という特徴があるのが好ましい。
【0022】
本発明のプロセスで用いるウェブは、ポリプロピレン繊維を含有しているのが好ましい。ウェブ中のポリプロピレン繊維の量は少なくとも30重量%であるのが好ましい。ウェブは、熱可塑性繊維またはセルロース系繊維のような繊維を更に含有していてもよい。特定の実施形態において、ウェブはポリプロピレン繊維からなる。本発明の得られる不織ウェブは、異方性弾性特性を有しており、好ましくは交差方向の破断時伸び対流れ方向の破断時伸びの比率が少なくとも800%である。不織ウェブは、スパンボンドウェブ、メルトブローンウェブまたはカードサーマルボンド不織ウェブであってもよく、また、不織ウェブは上述した不織ウェブの2つもしくはそれ以上を含有するラミネートであってもよく、ウェブは上述した不織ウェブと熱可塑性フィルムのラミネートであってもよい。異なるメーカー製のカード、スパンボンド、SMSおよびSMMSをはじめとする数種類のサーマルボンド不織ウェブを処理すると、得られるウェブは、交差方向に高復元率の高伸張性を示す。これらのウェブの交差方向のみの弾性は、不織製品を従来の方法でラテックスストラップを縫製する必要性から変換して完全に開放し、変換された製品は、着用者にとって感覚的に取り付けが容易で、ストレスのない快適さを与える。スパンボンドウェブおよびカードサーマルボンドウェブが好ましい。
【0023】
本発明のウェブは多層ラミネートにしてもよい。多層ラミネートの一例として、米国特許第5,169,706号明細書に開示されているような、層の何枚かがスパンボンドされ、何枚かがスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)ラミネートのようなメルトブローンである実施形態がある。SMMSは、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンドのラミネートである。かかるラミネートは、可動形成ベルトに、まずスパンボンド布地層、次にメルトブローン布地層、最後に他のスパンボンド層を連続付着させ、スポットボンディング装置でラミネートをボンディングすることにより作成される。あるいは、1枚もしくはそれ以上の布地層は、別個に作成して、ロールに集め、別のボンディング工程で組み合わせてもよい。
【0024】
本発明に記載したカードまたはサーマルボンドウェブは、ステープルファイバーを混合およびカーディングして、マットを形成し、これをスポットボンディング法でボンドすることにより得られる。
【0025】
本発明のプロセスは連続的に実施するのが好ましい。本発明による連続プロセスの工程(i)における延伸処理は、サーマルボンド不織ウェブを第1の可変の張力手段へ巻出し、ウェブを繊維の軟化点と融点の間の温度まで加熱するウェブ加熱手段へとウェブを供給し、加熱したウェブを流れ方向に縦に連続的に伸張し、ウェブを冷却し、冷却したウェブを集める工程を含んでなる。加熱および伸張処理は、繊維の軟化点と融点の間の最高可能温度で自然な伸張を可能とするために同時に行うのが好ましい。
【0026】
熱可塑性繊維を含有する不織ウェブは、溶融前の温度範囲で軟化可能である。軟化状態において、機械的な力をウェブに加えて、そのモルホロジーおよび特性を変更することができる。延伸処理および軟化点より低い冷却後、仕上がりウェブはその前駆体とは異なる特徴を示す。
【0027】
図2に、S−ラップのない変形装置の概略側面図を示す。この装置は、1つの巻出機と、巻取機と、そこを通る布地に一定の熱を加えるオーブンを間に含んでなる。不織ウェブの変形は、巻出機と巻取機の間の距離(D)内で行われる。歪速度(%/t)は、一片の布地のある時間における延伸および伸張のある(X)パーセンテージと説明される。伸張パーセンテージは、巻取機対巻出機の速度比により得られ、そこを通る布地の時間は、巻出機速度(A)と巻取機速度[(1+X%)A]の平均でDを除算することにより計算することができる。速度Aはm/分で次のように表される。
X%/{D/[A+(1+X%)A]12}=X%/{2D1[A+(1+X%)A]}={X%×[A+(1+X%)A]}/2D
【0028】
図3に、本発明のプロセスを実施するための装置の更なる実施形態の概略図を示す。この装置は、供給される布地を安定化させるために、巻出機の後に1つのS−ラップ(15)と、巻取機の前に1つのS−ラップ(25)とを含んでいる。不織ウェブの変形は、これら2つのSラップ間の距離(D)内で行われる。伸張パーセンテージは、S−ラップ25対S−ラップ15の速度比により得られ、そこを通る布地の時間は、S−ラップ15の速度(A)とS−ラップ25の速度[(1+X%)A]の平均でDを除算することにより計算することができる。
【0029】
図4は、ベストモードの歪速度(X軸)対延伸率(Y軸)のパラメータに関する本発明と米国特許第5,244,482号明細書および米国特許第6,051,177号明細書(欧州特許第0 844 323号明細書)の関係を示すグラフである。米国特許第5,244,482号明細書には、2000〜20000%/分、好ましい最良の範囲は3000〜6000%/分の歪速度で、延伸率が10〜100%、好ましい最良の範囲が20〜80%で開示されている。米国特許第6,051,177号明細書には、350〜950%/分の歪速度範囲と7〜35%の延伸率範囲が開示されている。一実施形態において、本発明の歪速度範囲は1000〜1950%、延伸率範囲は45〜70%である。米国特許第5,244,482号明細書および米国特許第6,051,177号明細書には、供給速度が120m/分未満、一般的には約60m/分の方法が記載されている。本発明のプロセスにおける供給速度は、少なくとも100m/分、一般的に少なくとも150m/分、好ましくは200〜400m/分の範囲である。本発明は、実施例により示される請求された領域にのみ存在する、処理速度を増大し、弾性特性を改善するチャンスの扉を提供するものである。
【0030】
図5に、米国特許第4,965,122号明細書(図5a)および米国特許第5,492,573号明細書(図5b)から公知の従来技術のプロセスの方法と、処理装置を移動するウェブ部分の典型的な温度プロフィールに基づく本発明(図5c)による方法の概念的な差の概略を示す。
【0031】
図5aに示す米国特許第4,965,122号明細書の方法によれば、前駆体ウェブは周囲温度の巻出しロール(U)から伸張セクション(S)に移動し、ウェブのその部分がウェブの軟化点より低い周囲温度で伸張処理される。次に、伸張されたウェブを、加熱セクション(H)でウェブの繊維の軟化点より高く融点より低い最大温度まで加熱し、周囲温度(C)まで即時に冷却し、巻取りロール(W)に巻き付ける。本方法による加熱および冷却は、伸張条件の記憶を保持することを目的としており、減少させた方向に非破壊伸張後復元させるものである。室温で10%を超える不織布地の伸張は、結合点から繊維を緩く引っ張ったり、かつ、または繊維を破壊することが分かっている。そのため、流れ方向と交差方向の両方の引っ張り強度が大幅に減じる。
【0032】
図5bに示す米国特許第5,492,573号明細書の方法によれば、前駆体ウェブは周囲温度の巻出しロール(U)から加熱セクション(H)に移動し、前駆体ウェブのその部分がウェブの繊維の軟化点より高い最大温度まで加熱処理(H)される。次に、加熱したウェブを伸張セクションに移し、ウェブの温度は必然的に下がる。従って、前駆体ウェブは最高可能温度、すなわち、繊維の融解温度よりも僅かに低い温度では伸張できない。伸張セクションにおいて、部分冷却された前駆体ウェブに、更に冷却しながら、伸張処理(S)を施す。ウェブを冷却し(C)、巻取りロールに巻き付ける(W)。従って、加熱セクションから伸張セクションへ移動する間の温度の喪失に相当する、伸張処理で可能なよりも高い温度まで前駆体ウェブを加熱しなければならない。
【0033】
図5cに示した本発明の好ましいプロセスによれば、前駆体ウェブは巻出しロール(U)から、加熱と伸張を組み合わせた処理が行われるセクションまで移される。前駆体ウェブは、所定の張力下に保持し、巻出しロールと巻取りロールの間を移動するウェブの部分の温度を、ウェブの自然な伸張がなされるレベルまで上げる。伸張は、プロセスの最中に得られる最大温度で非常に短時間になされ、望ましくない過熱は避ける。伸張中の連続加熱のために、所望の弾性特性をウェブに付与するのに必要な、全体の伸張中、ウェブ温度を最良温度に一定に保つよう、温度プロフィールを調整してもよい。従って、本発明のプロセスにおいて、繊維は主に伸張方向に集まるため、前駆体ウェブに比べて、ウェブは流れ方向に高い引っ張り強度を、交差方向に低い引っ張り強度を有している。
【0034】
本発明はまた、本発明のプロセスにより得られた、または得られるポリプロピレン繊維を含有する弾性サーマルボンド不織ウェブも提供する。ウェブの弾性は、縦軸に沿って、幅5−cmおよび長さ10cmのストリップの変化を測定することにより定義される。
(伸張した長さ−復元した長さ)/(伸張した長さ−元の長さ)。
【0035】
弾性サーマルボンド不織ウェブは、100%の伸びから少なくとも70%の復元率および150%の伸びから少なくとも60%の復元率の弾性を交差方向に有するのが好ましい。特定の実施形態において、弾性サーマルボンド不織ウェブは、エラストマーフィルムにラミネートされる。
【0036】
本発明はまた、使い捨て衛生保護製品、医療品、保護作業着または個人用品の製造用の弾性不織ウェブの使用も提供する。本発明はまた、本発明の弾性不織ウェブを含有する製品も提供する。この製品は、使い捨て衛生保護製品、医療品、保護作業着または個人用品である。使い捨て製品は、成人または幼児用おむつ、または生理用ナプキンである。医療品が、マスク、手術衣、ヘッドカバーまたは手術用ドレープである。保護作業着は、カバーオール、ヘッドカバーまたはマスクである。個人用品は下着である。
【0037】
本発明のプロセスは、弾性を付与するのに、高価でアレルギー性のある環境的に安全でないエラストマー繊維は用いない。
【実施例】
【0038】
用語:
不織ウェブの秤量は、通常、1平方メートル当たりの材料のグラム(gsm)で表される。
【0039】
軟化点は、熱可塑性繊維がその室温弾性率を失って、軟性、粘性および加わった力に対して変形可能となる温度である。
【0040】
本明細書で用いる「スパンボンド」という用語は、例えば、米国特許第4,340,563号明細書、米国特許第3,692,618号明細書、米国特許第3,802,817号明細書、米国特許第3,338,992号明細書、米国特許第3,341,394号明細書、米国特許第3,502,763号明細書、米国特許第3,502,538号明細書および米国特許第3,542,615号明細書にあるように、押出しフィラメントの直径の紡糸口金の複数の細かい、通常は、円形毛管から溶融熱可塑性材料をフィラメントとして押出して、即時に縮小される繊維より形成されるウェブのことを指す。スパンボンド繊維は、収集表面に付着させるときは、通常粘着性ではない。スパンボンド繊維は、通常連続しており、7ミクロンを超える、特に、約10〜30ミクロンの平均直径(少なくとも10本の繊維の試料から)を有している。
【0041】
引張り試験:
引張り試験は、単方向応力をかけたときの布地の破断強度および伸びまたは歪みの尺度である。本試験は技術分野に公知であり、ASTM方法D5034の規格に準拠するものである。結果は、破断までのキログラムおよび破断前のパーセント伸張で表される。数が大きければ大きいほど強く、より伸張性のある布地である。「伸び」という用語は、引張り試験中の試料の長さが増大することを意味している。グラブ引張り強度およびグラブ伸びの値は、布地の指定幅、通常、3cmのクランプ幅および一定速度の伸張を用いて得られる。試料は、布地中の近接する繊維により付与される追加の強度と組み合わせて、クランプ幅において繊維の有効強度の代表となる結果を与えるために、クランプより広い。
【0042】
実施例1
17gsmのSMS不織布地を、異なる歪速度および表1に更に示した条件下での幅の減少を示すために、同時加熱および伸張処理のために8−メートルの距離にわたって処理した。表1に示すように、幅を50%減じるのに45%を超える延伸率が必要であった。10m/分速度を増すためには、延伸率を約1.5%増加させて幅の減少を維持する必要がある。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例2
SMS前駆体ウェブの異なる秤量を、巻出し速度200m/分および50%の延伸率で処理した。表2に示す結果は、延伸比は、異なる秤量の前駆体ウェブに対して同様の幅減少をなしたということを示している。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例3
スパンボンド(S)、カード(C)SMSおよびSMMSの不織ウェブを、30〜60%の延伸比で200m/分の巻出し速度で処理した。表3には、延伸比によって、異なるサーマルボンド不織ウェブにおいて30〜60%と同様のパターンで長さ伸張および幅減少がなされ、前駆体幅の50%を減じるのに少なくとも45%の延伸比が必要であったということが示されていた。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例4
スパンボンド35gsm、カード45gsmおよびSMMS25gsmを、30%〜60%の幅減少を得るために、異なる延伸比での処理のために前駆体ウェブとして用いた。結果を表4に示す。弾性はそれぞれ50%、100%および150%の伸びから測定された。幅減少が40%未満の得られたウェブだと、100%を超えて伸張して50%を超える良好な復元率が得られそうにない。これとは対照的に、幅減少が50%を超える得られたウェブは100%の伸びで70%を超える、150%の伸びで60%を超える復元率を示した。
【0049】
【表4】

【0050】
実施例5
表5に示した結果によれば更に、100%(A)および150%(B)伸びで5回の伸張についてウェブの高復元率が確認された。CD/MD破断時伸びの独特な高い比率(1000〜1400%)も示されている。
【0051】
【表5】

【0052】
実施例6
伸張性および復元率を、歪速度の請求された上限および下限の処理済SMSウェブの5−cmストリップで試験した。結果を表6に示す。交差方向(CD)の幅減少、破断時伸び、CD/MD伸び率および100%の伸びでの復元率の独特な特性を測定した。
【0053】
【表6】

【0054】
歪速度は、長さを長くする時間内の長くなった長さのパーセンテージにより計算される。長くなった長さのパーセンテージは延伸比であり、巻出機の巻取り速度を早くすることにより実行される。かかる長さを増大させる時間は、巻出機と巻取りロール間の距離をウェブが通過する速度で除算することにより計算され、その速度は巻出機速度と巻取り速度の平均である。
【0055】
例えば、本発明は、前駆体ウェブの幅を50%減少し、本発明の弾性不織ウェブとするためには、巻出機と巻取機ロールの間の距離が8メートルで、巻出機の最低速度が150m/分で少なくとも45%の延伸比を必要とする。本発明の下限の歪速度は45%/{8m/[150m/min+(150m/分×1.45)]12)=1034%/分で計算する。
(1)45%は延伸比である。
(2)8mは巻出機と巻取機ロールの間の距離、または形成された延伸である。
(3)150m/分は巻出し速度である。
(4)150m/分×1.45=217.5m/分は巻取りロール速度である。
(5)[150m/分+(150m/分×1.45)]/2=183.75m/分は延伸の際のウェブの平均移動速度である。
(6)8m1[150m/分+(150m/分×1.45)]/2=0.04354分は延伸が生じる時間である。
【0056】
0.04354分(2.61秒)処理時間もまた、ウェブが熱をピックアップしてその温度を軟化のために25℃から125℃まで昇温させるために必要である。
【0057】
高速および高延伸比での処理により高い歪速度が得られる。しかしながら、8−メートルの処理の距離の試験によれば、実際的でなく、延伸比が70%を超え、巻取り速度が500m/分では、サーマルボンドポリプロピレン繊維を含有する一般的に入手可能な不織ウェブは壊れるということが分かった。この場合、歪速度は3500%/分で、ウェブを8メートルの距離を通り、100℃温度を増大するために熱をピックアップするのに1.2秒未満であった。
【0058】
前述の米国特許第5,244,482号明細書の発明に記載されているような高い歪速度のために高い延伸比または高速は、特に、現在市販の装置およびポリプロピレン不織ウェブでの連続処理では現実的ではなく不可能と考えられる。融点に非常に近い温度がおそらく、非常に高い歪みと組み合わせて用いられたが、かかる布地は、剛性、および弾性の低さ、幅が非常に狭いことから商業的な価値はあまりない。主として、米国特許第5,244,482号明細書では、30%を超える結晶度、熱可塑性繊維含量、繊維直径、不規則な繊維付着および異方性の引張り特性および40%未満の引張り破断時伸びといった物理特性により前駆体ウェブの選択に多くの制限がかかる。
【0059】
200m/分の供給速度(巻出し速度)の50%の延伸率で、歪速度を1600%/分とさせる本発明によれば最良の結果が得られる。米国特許第5,244,482号明細書に請求されたベストモードの平均歪速度は4750%/分であり、図1に示した装置および50%の延伸率でそれを得るには、供給速度は608m/分と高くしなければならず、本発明の3倍高い。50%の延伸率および市販の不織ウェブで図1による装置で試験すると、ウェブを破壊することなく400m/分より供給速度を早くすることはできない。実際、米国特許第5,244,482号明細書の実験に述べられている最大仕上げ速度は122m/分(400f/分)未満であり、最良の歪速度に達するためには、内容に記載されているように、延伸率は250%と高くするか、または非常に狭い加熱装置で処理しなければならない。本発明の発明者らは、80%を超える延伸率を達成することができないことを経験した。
【0060】
脆く易壊性の材料の処理のために開発された、低速および複数組延伸装置が米国特許第6,051,177号明細書(欧州特許第0 844 323号明細書)に記載されていた。米国特許第6,051,177号明細書(欧州特許第0 844 323号明細書)には、低い30%の延伸率および1分当たり350%〜950%の低い歪速度を使用する方法が記載されている。前駆体ウェブの幅の減少は、複数組の延伸装置を通って、30〜40%であり、仕上がりウェブの弾性は、50%の伸びから85%の復元率であると記載されている。前駆体での幅の減少によれば、延伸比は35%未満となり、理論的には、仕上がりウェブを前駆体の幅にわたって66.7%(100/60)以上伸張することはできない。更に、米国特許第6,051,177号明細書(欧州特許第0 844 323号明細書)には、蓄積歪速度が1分当たり950%未満、350%以上とされる多数組の延伸ロールによる処理が記載されている。請求した最高950%/分の歪速度とするために、8メートルの距離にわたって2組で等しくした35%の延伸比の最低2組の延伸ロールを前提とすると、最大供給(巻出し)速度(x)は、次のようにして計算すると92m/分以下である。
17.5%/[4m/(x+1.175x)/2]+17.5%/{4ml[1.175x+1.175(1.175x)]/2}<_950%/分。
イコール:[17.5%(2.175x)18m]+[17.5%(2.556x)/8m]=950%/分17.5%(4.731x)=7600%m/分x=91.8m/分
【0061】
実際、延伸ロールの存在するセクションが多ければ多いほど、請求された低い歪速度範囲に適合させるために調整すべき処理速度は遅くなる。処理速度は、確かに100m/分未満〜約60m/分である。かかる低速での処理によりコストが上がり、大量生産および低コストの使い捨て不織製品の用途に適合する商業的な価値があまりなくなるが、これより早い処理速度だと請求した制限を超える歪速度となってしまう。多数組の延伸ロールまたはこれより低い歪速度は更に処理速度を落とす。加えて、低延伸比だと、本発明により得られるウェブのような高弾性とするほど十分にウェブを固化しない。
【0062】
最も重要なのは、歪速度は、2つの変数、延伸比と処理率(処理距離/処理速度)を特定せずに処理を説明するのに単独で用いるには不適切である。というのは、式中で異なる組み合わせのパラメータで同じ歪速度が得られるからである。米国特許第5,244,482号明細書および欧州特許第0 844 323号明細書は両方とも、その方法を定義するのに唯一のパラメータとして歪速度か延伸率のいずれかを用いているが、処理率は明らかにしていないため、その歪速度にどのようにして到ったかを知る方法がない。それでもなお、歪速度に係る前述の記載と本発明とには矛盾がない。米国特許第5,244,482号明細書は、歪速度が1分当たり少なくとも2000%を用いる方法を請求しており、米国特許第6,051,177号明細書(欧州特許第0 844 323号明細書)は、350%/分〜950%/分の範囲を請求している。本発明は、図4に示す通り、1000%〜2400%/分の範囲、好ましくは1950%/分までで操作される。米国特許第5,244,482号明細書および米国特許第6,051,177号明細書は、120m/分よりはるかに遅い、通常約60m/分の速度で操作される。一方、本発明による供給速度は、一般的に少なくとも150m/分である。従って、本発明で得られるウェブは、約250m/分の速度で製造され、前述の方法では得られない150%を超える伸張性を示す。
【0063】
実施例7:
ウェブ孔径分布をASTM F316−86により測定した。最大孔径は、ウェブのフローを支持する孔径の分布における最大孔チャネルの直径の標準化された尺度である。平均孔径は、合計フローを支持する孔の平均孔チャネル直径の尺度である。最低孔径は、ウェブで測定された最小の孔径である。
【0064】
表7:
カード、スパンボンドおよびSMMS前駆体および得られるウェブの孔径変化について測定した。本発明で得られたウェブは、平均孔径および最低孔径が大幅に減じたが、最大孔径に増加も大幅な減少も示さなかった。
【0065】
【表7】

【0066】
本発明で得られたウェブの孔径変化は、最大孔径を20%以上減じる米国特許第5,244,482号明細書および平均孔径に変化のない米国特許第5,492,753号明細書のものとは明らかに異なっている。孔径変化における異なる結果は更に、本発明の方法が以前の方法とは異なることを示していた。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のプロセスを実施するための装置の概略を示す。
【図2】本発明のプロセスを実施するための装置の概略側面図を示す。
【図3】本発明のプロセスを実施するための装置の更なる実施形態の概略側面図を示す。
【図4】ベストモードの歪速度(X−軸)対延伸率(Y−軸)のパラメータに関する本発明と米国特許第5,244,482号明細書および米国特許第6,051,177号明細書(欧州特許第0 844 323号明細書)の関係を示すグラフである。
【図5】米国特許第4,965,122号明細書(図5a)、米国特許第5,492,573号明細書(図5b)から公知の従来技術の一般的な温度プロフィール、および本発明(図5c)の温度プロフィールの概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差方向における100%の伸びから少なくとも70%の復元率、または150%の伸びから60%の復元率の弾性を有する弾性サーマルボンド不織ウェブを製造する方法において、
(i)熱可塑性繊維を含有するサーマルボンド不織前駆体ウェブを提供する工程と、
(ii)工程(i)の前記前駆体ウェブに、弾性サーマルボンド不織ウェブを製造する繊維の軟化点と融点の間の温度で、延伸率45〜70%、歪速度1000〜2400%/分の範囲内で流れ方向に延伸処理を施す工程と
を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項2】
処理速度が少なくとも100m/分、一般的に少なくとも150m/分、好ましくは200〜400m/分の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i)における前記延伸処理が、前記サーマルボンド不織前駆体ウェブを前記繊維の軟化点と融点の間の温度で加熱する加熱手段に、前記ウェブを導入する工程を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記延伸処理後に前記ウェブを冷却する工程を更に含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記前駆体ウェブがポリプロピレン繊維を含有している請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリプロピレン繊維が少なくとも30重量%の量で含有されている請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体ウェブがセルロース系繊維を含有している請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記前駆体ウェブがポリプロピレン繊維からなる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記弾性不織ウェブが異方弾性特性を有している請求項1に記載の方法。
【請求項10】
流れ交差方向における破断時伸び対流れ方向における破断時伸びの比率が少なくとも800%である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記不織前駆体ウェブがスパンボンドウェブである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
不織前駆体ウェブがメルトブローンウェブである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記不織前駆体ウェブがカードサーマルボンド不織ウェブである請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記不織ウェブが、請求項11〜13のいずれか一項に記載の2つもしくはそれ以上の不織ウェブのラミネート、または請求項11〜13のいずれか一項に記載の不織ウェブと熱可塑性フィルムのラミネートである請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記サーマルボンド不織ウェブが、熱可塑性繊維とセルロース系繊維のブレンドであり、前記ウェブが少なくとも30%の熱可塑性繊維を含有している請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセスが連続して実行される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(i)における前記延伸処理が、
前記サーマルボンド不織ウェブを第1の可変の張力手段へ巻出し、前記ウェブを前記繊維の軟化点と融点の間の温度まで加熱するウェブ加熱手段へと前記ウェブを供給し、その後で前記加熱したウェブを前記流れ方向に縦に連続的に伸張し、前記ウェブを冷却し、前記冷却したウェブを集める工程を含んでなる請求項16に記載の連続プロセス。
【請求項18】
(a)カード、スパンボンド、SMSおよびSMMSのサーマルボンドポリプロピレン不織ウェブを前駆体ウェブとして提供する工程と、
(b)6〜10メートルの距離で巻出しロールと巻取りロールを提供する工程と、
(c)前記前駆体ウェブを前記巻出しロールから前記巻取りロールまで150m/分〜400m/分の範囲の速度で連続供給する工程と、
(d)前記前駆体ウェブを前記熱可塑性ポリプロピレンの軟化温度と融解温度の間の温度で加熱する工程と、
(e)前記巻取りロールの速度を巻出機よりも少なくとも45%〜70%増加させて、前記ウェブの幅を50%〜65%減じることにより前記加熱ウェブを延伸して、
(f)歪速度を1000%〜2400%/分の範囲内とする工程と
を含んでなる、特に、請求項1〜17のいずれか一項に記載の不織ウェブを処理する熱機械的方法。
【請求項19】
前記巻出しロールが、延伸比を形成するS−ラップ(S−wrap)を作成し、仕上がりウェブを巻取機に放出するための一対のピン−ロールである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記前駆体ウェブが、単一層、あるいはサーマルボンドまたはラミネートされる多層構造体である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項の方法により得られた、または得られる、ポリプロピレン繊維を含有する弾性サーマルボンド不織ウェブ。
【請求項22】
100%の伸びから少なくとも70%の復元率および150%の伸びから少なくとも60%の復元率の弾性を交差方向に有する弾性サーマルボンド不織ウェブ。
【請求項23】
ポリプロピレン熱可塑性繊維を含んでなり、加熱され、150m/分〜400m/分の速度範囲で6〜10メートルの距離にわたって長手方向に延伸されて、その幅を50%〜65%減少させた、カード、スパンボンド、SMSおよびSMMSの不織前駆体から作成された弾性不織ウェブであって、前記延伸が、巻出しロールと巻取りロールの間に装着された加熱装置を通して前記ウェブを供給して、前記熱可塑性繊維の軟化温度と融解温度の間の温度で前記ウェブを加熱することと、巻取りロールの速度を巻出機よりも少なくとも45%自然に(spontaneously)増加させて、1分当たり1000%〜2400%の範囲の歪速度を維持することとによって行われて、前記弾性不織ウェブが、交差方向における100%の伸びから少なくとも70%の復元率、または150%の伸びから60%の復元率の弾性であることを特徴とする、特に、請求項21に記載の弾性不織ウェブ。
【請求項24】
前記前駆体ウェブがコ−フィラメント(co−filament)繊維、またはモノおよびコ−フィラメントの混合物から構成されている請求項23に記載の弾性不織ウェブ。
【請求項25】
前記コ−フィラメントのコアがシースと異なる熱可塑性物質(thermoplastics)から構成されている請求項23に記載の弾性不織ウェブ。
【請求項26】
(a)請求項21に記載の弾性不織ウェブと、
(b)前記弾性不織ウェブにボンドされた伸縮性基材と
を含んでなる弾性ラミネート。
【請求項27】
前記基材がエラストマー層である請求項26に記載の弾性不織ラミネート。
【請求項28】
前記基材がフィルムである請求項26または27に記載の弾性不織ウェブ。
【請求項29】
使い捨て衛生保護製品、医療品、保護作業着または個人用品の製造のための請求項21〜28のいずれか一項に記載の弾性不織ウェブの使用。
【請求項30】
前記使い捨て製品が、成人または幼児用おむつ、または生理用ナプキンである請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記医療品が、マスク、手術衣、ヘッドカバーまたは手術用ドレープである請求項29に記載の使用。
【請求項32】
前記保護作業着が、カバーオール、ヘッドカバーまたはマスクである請求項29に記載の使用。
【請求項33】
前記個人用品が下着である請求項29に記載の使用。
【請求項34】
請求項21〜28のいずれか一項に記載の弾性不織ウェブを含有する製品。
【請求項35】
使い捨て衛生保護製品、医療品、保護作業着または個人用品である請求項34に記載の製品。
【請求項36】
前記使い捨て製品が、成人または幼児用おむつ、または生理用ナプキンである請求項35に記載の製品。
【請求項37】
前記医療品が、マスク、手術衣、ヘッドカバーまたは手術用ドレープである請求項35に記載の製品。
【請求項38】
前記保護作業着が、カバーオール、ヘッドカバーまたはマスクである請求項35に記載の製品。
【請求項39】
前記個人用品が下着である請求項35に記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2007−513269(P2007−513269A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542800(P2006−542800)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/040569
【国際公開番号】WO2005/056900
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(506184141)フエニツクス・インテレクチユアルズ・アンド・テクノロジーズ・マネージメント・インコーポレーテツド (1)
【Fターム(参考)】