弾性波デバイス
【課題】周波数調整を容易に行うことが可能な弾性波デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明は、圧電基板10上に設けられた櫛型電極12及び反射電極14と、櫛型電極12及び反射電極14を覆って設けられた、元素がドープされた酸化シリコン膜(例えば、SiOF膜18)を少なくとも含む第1媒質20と、を備え、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜は、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜である弾性波デバイスである。
【解決手段】本発明は、圧電基板10上に設けられた櫛型電極12及び反射電極14と、櫛型電極12及び反射電極14を覆って設けられた、元素がドープされた酸化シリコン膜(例えば、SiOF膜18)を少なくとも含む第1媒質20と、を備え、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜は、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜である弾性波デバイスである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波を利用した弾性波デバイスの1つとして、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)デバイスが知られている。SAWデバイスは、小型軽量で高減衰量が得られることから、例えば携帯電話端末などの無線機器における45MHz〜2GHzの周波数帯の無線信号を処理する各種回路に用いられている。各種回路としては、例えば送信バンドパスフィルタ、受信バンドパスフィルタ、局発フィルタ、アンテナ共用器、IFフィルタ、FM変調器などが挙げられる。
【0003】
近年、携帯電話端末の高性能化、小型化に伴い、弾性波デバイスの周波数温度特性の向上やサイズの小型化が求められている。周波数温度特性の向上には、例えば圧電基板の表面に形成した櫛型電極を覆って酸化シリコン膜を設ける技術が開発されている。また、デバイスサイズの小型化には、例えば櫛型電極を覆う酸化シリコン膜上に、酸化シリコン膜よりも音速の速い誘電体を設け、誘電体と圧電基板の表面との間に弾性波エネルギーを閉じ込める弾性境界波デバイスが開発されている。
【0004】
これら弾性波デバイスの共通の課題として、製造ばらつきによる周波数のばらつきがある。周波数としては、例えば共振器の場合は共振周波数及び反共振周波数、フィルタの場合は通過帯域の中心周波数が挙げられる。この周波数ばらつきに対して、様々な調整方法が提案されている。例えば、櫛型電極を覆う酸化シリコン膜の膜厚を変化させることで周波数調整を行う方法や、櫛型電極を覆う酸化シリコン膜上に誘電体を形成し、この誘電体の膜厚を変化させることで周波数調整を行う方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2005/093949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電基板の表面に形成した櫛型電極を覆って酸化シリコン膜を設けた弾性波デバイスにおいては、酸化シリコン膜の膜厚を調整することで周波数調整をすることが一般的に行われている。これは、圧電基板の音速に対して酸化シリコン膜の音速が遅いため、酸化シリコン膜に分布する弾性波の大きさを調整することで周波数調整が可能となるためである。しかしながら、酸化シリコン膜の音速は基板の音速に比べて十分小さくないことから、酸化シリコン膜の膜厚変化に対する周波数変動量がそれほど大きくとれない。このため、酸化シリコン膜の膜厚を大きく変化させて周波数調整を行う場合がある。この場合、例えば、製造ばらつきにより、酸化シリコン膜の膜厚を一度の調整で所望の厚さにすることが難しい場合があり、周波数調整を容易にできないことがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、周波数調整を容易に行うことが可能な弾性波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧電基板上に設けられた櫛型電極と、前記櫛型電極を覆って設けられた、元素がドープされた酸化シリコン膜を少なくとも含む第1媒質と、を備え、前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であることを特徴とする弾性波デバイスである。本発明によれば、周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0009】
上記構成において、前記第1媒質は、アンドープの酸化シリコン膜と前記元素がドープされた酸化シリコン膜とを含む構成とすることができる。この構成によれば、周波数温度特性の向上や損失の低減をより安定して実現することができる。
【0010】
上記構成において、前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、前記アンドープの酸化シリコン膜上に設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、を有する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた第1の前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、前記第1の元素がドープされた酸化シリコン膜上に設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、前記アンドープの酸化シリコン膜上に設けられた第2の前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、を有する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、前記元素がドープされた酸化シリコン膜上に設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、を有する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜で構成されている構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、周波数調整膜として用いられる構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は、前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有する構成とすることができる。この構成によれば、第1媒質の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、周波数温度特性を改善することができる。
【0016】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有し、前記元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数が、前記第1媒質に含まれる前記アンドープの酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数よりも大きい構成とすることができる。この構成によれば、第1媒質の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、周波数温度特性をより改善することができる。
【0017】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有し、前記元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅が、前記第1媒質に含まれる前記アンドープの酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅よりも小さい構成とすることができる。この構成によれば、第1媒質の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、周波数温度特性をより改善することができる。
【0018】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、2種類以上の元素がドープされている構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜には、フッ素がドープされている構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記第1媒質上に、前記第1媒質よりも音速の速い第2媒質を備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの上面模式図の例であり、図1(b)は、図1(a)のA−A間の断面模式図の例である。
【図2】図2(a)から図2(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面模式図の例である。
【図3】図3は、周波数調整膜の膜厚に対する周波数変動量の測定結果を示す図である。
【図4】図4は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図5】図5は、実施例3に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図6】図6は、実施例4に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図7】図7は、実施例5に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図8】図8は、実施例6に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図9】図9は、実施例7に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図10】図10は、実施例8に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図11】図11は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図12】図12は、Si−O結合の伸縮振動のFTIR測定結果を示す図である。
【図13】図13は、FTIR法により測定したピーク波数(吸収量最大波数)に対する共振器の反共振周波数のTCFを示す図である。
【図14】図14は、FTIR法により測定した横波光学(TO)モードの半値幅に対する共振器の反共振周波数のTCFを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの上面模式図の例であり、図1(b)は、図1(a)のA−A間の断面模式図の例である。なお、図1(a)においては、第1媒質20を透視して図示している。図1(a)を参照に、櫛型電極12の弾性波の伝搬方向における両側に反射電極14が設けられている。櫛型電極12は、弾性波を励振する電極であり、入力用と出力用との2つの電極が互いに向き合って、それぞれの電極指が互い違いに並んで配置されている。櫛型電極12及び反射電極14は、例えば銅(Cu)を主成分とする材料で形成されている。なお、電極材料としては、Cuの他にも、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、金(Au)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)を用いてもよい。
【0024】
図1(b)を参照に、例えばニオブ酸リチウム(LN)基板からなる圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とが設けられている。櫛型電極12と反射電極14とは、例えば圧電基板10の表面に接して設けられている。櫛型電極12と反射電極14とを覆って、圧電基板10上にアンドープの酸化シリコン膜(以下、SiO2膜16と称す)が設けられている。
【0025】
SiO2膜16上に、フッ素(F)がドープされた酸化シリコン膜(以下、SiOF膜18と称す)が設けられている。SiOF膜18は、例えばSiO2膜16の上面に接して設けられている。SiOF膜18のF含有量は、例えば8.8アトミック%である。このように、櫛型電極12と反射電極14とを覆って、SiO2膜16とSiOF膜18とからなる第1媒質20が設けられている。また、後述により明らかとなるが、SiOF膜18は、製造ばらつきにより生じる周波数のずれを調整するための周波数調整膜として用いられる。
【0026】
次に、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法について説明する。図2(a)から図2(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面模式図の例である。なお、弾性デバイスの製造はウエハ状態の圧電基板を用いて行われ、複数の弾性波デバイスとなるべき領域がウエハ面内に存在するが、図2(a)から図2(c)では、そのうちの1つの弾性波デバイスを図示して説明する。図2(a)を参照に、圧電基板10上に、例えばスパッタ法とエッチング法とを用いて、櫛型電極12と反射電極14とを形成する。なお、櫛型電極12と反射電極14との形成は、例えば蒸着法とリフトオフ法とを用いてもよい。
【0027】
図2(b)を参照に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiO2膜16を形成する。SiO2膜16の成膜条件は、例えば原料ガスにSiH4とN2Oを用い、流量比をSiH4:N2O=1:50とし、成膜温度を270℃とすることができる。SiO2膜16の膜厚は、弾性波デバイスの周波数が所望とする周波数と一致するような膜厚よりも薄い膜厚となるように設定される。この際、ウエハ面内におけるSiO2膜16の膜厚分布を考慮して、SiO2膜16の膜厚を設定することが好ましい。また、周波数としては、弾性波デバイスが共振器の場合は共振周波数及び反共振周波数が挙げられ、弾性波デバイスがフィルタである場合は通過帯域の中心周波数が挙げられる。以下においては、周波数が通過帯域の中心周波数である場合を例に説明する。
【0028】
図2(c)を参照に、例えばCVD法を用いて、SiO2膜16上に、SiOF膜18を形成する。これにより、櫛型電極12と反射電極14と覆う、SiO2膜16とSiOF膜18とからなる第1媒質20が形成される。SiOF膜18の成膜は、SiO2膜16の成膜に続いて、同じCVD装置内で真空を破ることなく連続して行う。これにより、SiO2膜16とSiOF膜18との界面に不純物などが混入することを抑制できる。SiOF膜18の成膜条件は、例えば原料ガスにSiH4、N2O、C2F6を用い、流量比をSiH4:N2O:C2F6=1:50:3とし、成膜温度を270℃とすることができる。SiOF膜18の膜厚は、弾性波デバイスの通過帯域の中心周波数が所望とする中心周波数と一致するように設定される。
【0029】
櫛型電極12、SiO2膜16及びSiOF膜18の膜厚は、製造ばらつきにより、所望の膜厚からずれてしまう場合やウエハ面内に分布が生じる場合がある。このために、弾性波デバイスの通過帯域の中心周波数が所望とする中心周波数からずれてしまうことがある。そこで、次の方法により周波数調整を行う。
【0030】
まず、SiOF膜18を形成した後、ウエハ面内に形成された複数の弾性波デバイスそれぞれにおいて通過帯域の中心周波数を測定する。そして、得られた中心周波数の測定値が所望とする中心周波数と一致するように、例えばエッチング法を用いて、SiOF膜18の膜厚を薄くする。また、例えばCVD法を用いて、SiOF膜18をさらに成膜して、SiOF膜18の膜厚を厚くする。上述したように、櫛型電極12、SiO2膜16及びSiOF膜18の膜厚は、ウエハ面内でばらつきがある。このため、ウエハ面内の複数の弾性波デバイスそれぞれで、周波数調整の際のSiOF膜18に対するエッチング量や成膜量が異なる場合がある。この場合、例えばレジストなどのマスク層を利用してSiOF膜18をエッチングや成膜することで、複数の弾性波デバイスそれぞれで、SiOF膜18のエッチング量や成膜量を異ならせることができる。これにより、ウエハ面内の複数の弾性波デバイスそれぞれに対して周波数調整を行うことができる。このように、SiOF膜18は、製造ばらつきにより生じる周波数のずれを調整するための周波数調整膜として用いられる。
【0031】
ここで、SiOF膜18(F含有量:8.8アトミック%)の膜厚Hと周波数変動量Mとの関係を調査した。また、比較のために、SiO2膜を周波数調整膜に用いる場合での、SiO2膜の膜厚Hと周波数変動量Mとの関係も調査した。調査方法は、まず、図2(a)及び図2(b)で説明した製造方法を行い、圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiO2膜16を形成する。そして、SiO2膜16上に、周波数調整膜(SiOF膜又はSiO2膜)を成膜して、周波数調整膜の膜厚が0nm、100nm、200nmのときの通過帯域の中心周波数を測定することで行った。なお、周波数調整膜(SiOF膜又はSiO2膜)は、図2(b)及び図2(c)で説明した製造条件により形成した。図3は、周波数調整膜の膜厚Hに対する周波数変動量Mの測定結果を示す図である。図3において、周波数調整膜の膜厚Hが0nmのときの通過帯域の中心周波数を基準として周波数変動量Mを示している。また、SiOF膜での測定値を黒三角で示し、その近似直線を実線で示している。SiO2膜での測定値を黒四角で示し、その近似直線を破線で示している。
【0032】
図3を参照に、周波数調整膜にSiO2膜を用いる場合は、膜厚Hと周波数変動量Mとの間に、M=0.096Hの関係式が成り立つ結果となった。一方、周波数調整膜にSiOF膜を用いる場合は、膜厚Hと周波数変動量Mとの間に、M=0.265Hの関係式が成り立つ結果となった。このことから、周波数調整膜にSiOF膜を用いる場合は、SiO2膜を用いる場合に比べて、膜厚に対する周波数変動量が大きくなることが分かった。例えば、同一の周波数変動量を得るためには、SiOF膜の膜厚は、SiO2膜の膜厚に比べて、およそ36%程度に薄くできることが分かった。このように、SiOF膜において膜厚変化に対する周波数変動量が大きくなるのは、SiOF膜がSiO2膜に比べて音速の遅い膜であることによるものである。以上のことから、周波数調整量が同じである場合、周波数調整膜にSiOF膜を用いることで、SiO2膜を用いる場合と比べて、膜厚変化量を小さくできることが分かった。
【0033】
以上説明してきたように、実施例1に係る弾性波デバイスは、図1(b)のように、圧電基板10上に設けられた櫛型電極12を覆って第1媒質20が設けられている。第1媒質20は、櫛型電極12を覆って設けられたSiO2膜16(アンドープの酸化シリコン膜)と、SiO2膜16上に設けられた、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であるSiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)と、を有する。図2(c)で説明したように、SiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)は、周波数調整膜として用いられる。そして、図3で説明したように、SiOF膜18を周波数調整膜として用いることで、SiO2膜16を周波数調整膜に用いる場合と比べて、周波数調整の際の膜厚変化量を小さくすることができる。膜厚変化量を小さくできることで、製造ばらつきによる所望の膜厚からのずれ量を小さくできる。このため、SiOF膜18に対する1度の膜厚調整で、第1媒質20の膜厚を所望の厚さとすることが容易にできることとなり、周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0034】
また、図1(b)のように、第1媒質20は、SiO2膜16とSiOF膜18とで形成されている。図3で説明したように、SiOF膜18は、SiO2膜16に比べて膜厚に対する周波数変動量が大きい。このことから、第1媒質20をSiO2膜16とSiOF膜18とで形成することで、SiO2膜16のみで形成する場合に比べて、第1媒質20の膜厚を薄くできる。したがって、周波数調整前の段階において、第1媒質20の膜厚の製造ばらつきによる所望の膜厚からのずれ量やウエハ面内での分布量を抑えることができ、周波数調整での膜厚変化量を小さくできる。このことからも、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚が薄くて済むことから、プロセス時間を短縮することもできる。
【0035】
また、第1媒質20を構成するSiO2膜16とSiOF膜18との弾性定数の温度係数は正である。一方、圧電基板10の弾性定数の温度係数は負である。つまり、SiO2膜16(アンドープの酸化シリコン膜)とSiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)との弾性定数の温度係数は、圧電基板10の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有する。このため、弾性波デバイス全体として、弾性定数の温度係数を0に近づけることができ、周波数温度特性を改善することができる。
【0036】
例えば特許文献1では、櫛型電極を覆う酸化シリコン膜上に誘電体を形成し、この誘電体の膜厚を変化させることで周波数調整を行っている。そして、この誘電体には、弾性定数の温度係数が負となる材料を用いている。しかしながら、これでは、弾性波エネルギーが分布する部分に負の温度係数を有する材料が用いられることとなり、弾性波デバイス全体で弾性定数の温度係数を0に近づけることが困難で、周波数温度特性が低下してしまう。また、弾性波デバイス全体で弾性定数の温度係数を0に近づけようとすると、酸化シリコン膜の膜厚を非常に大きくしなければならず、成膜時間、膜厚分布ともに大きくなってしまう。
【0037】
また、第1媒質20は、SiO2膜16とSiOF膜18とで構成されている。SiOF膜18は、SiO2にFがドープされていることから、Fの濃度如何などによって膜質が変わってきてしまう。一方、SiO2膜16は、元素がドープされていないため、膜質のばらつきを小さく抑えることができる。したがって、周波数温度特性の向上や損失の低減を安定して実現するために、弾性波エネルギーが伝搬する大部分をSiO2膜16で形成し、残りの部分をSiOF膜18で形成する場合が好ましい。つまり、第1媒質20を構成するSiO2膜16の膜厚は相対的に厚く、SiOF膜18の膜厚は相対的に薄い場合が好ましい。このように、SiO2膜16は、周波数温度特性の向上などを安定して実現するために設けられ、周波数調整には用いられない膜である。一方、SiOF膜18は、周波数調整を容易に行うことを可能とするために設けられた膜である。
【実施例2】
【0038】
図4は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図4を参照に、第1媒質20上に、例えば酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。その他の構成については、実施例1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0039】
酸化アルミニウム膜の音速は、アンドープの酸化シリコン膜の音速よりも速い。また、上述しているように、Fがドープされた酸化シリコン膜の音速は、アンドープの酸化シリコン膜の音速よりも遅い。したがって、第1媒質20上に設けられた第2媒質22の音速は、第1媒質20の音速よりも速くなる。このため、弾性波エネルギーは、第2媒質22と圧電基板10の表面との間に閉じ込められる。即ち、実施例2に係る弾性波デバイスは、弾性境界波デバイスである。
【0040】
このように、実施例2に係る弾性波デバイスは、SiO2膜16とSiOF膜18とからなる第1媒質20上に、第1媒質20よりも音速の速い酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。このような弾性波デバイスであっても、実施例1と同じように、SiOF膜18を周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0041】
なお、第2媒質22を形成する際にも製造ばらつきにより膜厚が所望の厚さからずれてしまうことがあるが、第2媒質22に伝搬する弾性波エネルギーは非常に小さいため、第2媒質22に製造ばらつきが生じたとしても、それによる周波数のずれは非常に小さいため、ほとんど無視することができる。
【実施例3】
【0042】
図5は、実施例3に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図5を参照に、実施例1と異なる点は、櫛型電極12と反射電極14とを覆う第1媒質20が、SiOF膜18aとSiO2膜16とSiOF膜18bとの3層構造になっている点である。即ち、第1媒質20は、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiOF膜18aと、その上に設けられたSiO2膜16と、SiO2膜16上に設けられたSiOF膜18bと、を有する。SiO2膜16は、例えばSiOF膜18aの上面に接して設けられている。SiOF膜18bは、例えばSiO2膜16の上面に接して設けられている。
【0043】
実施例3に係る弾性波デバイスは、次の製造方法により製造される。圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とを形成した後、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiOF膜18aを形成する。その後、SiOF膜18aを用いて周波数調整を行う。ここでの周波数調整は、例えばウエハ間に生じる周波数ばらつきを抑制することを目的に行う。ウエハ間で周波数ばらつきが生じるのは、例えば複数のウエハに対して櫛型電極12及び反射電極14となる金属膜を同時に成膜する際に、ウエハ間で金属膜の膜厚ばらつきが生じるためである。周波数調整は、ウエハ間の弾性波デバイスで通過帯域の中心周波数が同じ大きさとなるように、SiOF膜18aの膜厚を薄くしたり、厚くしたりすることで行う。これにより、櫛型電極12の製造ばらつきにより生じる周波数ばらつきを低減することができる。
【0044】
SiOF膜18aによる周波数調整後、SiOF膜18a上に、SiO2膜16を形成する。SiO2膜16上に、SiOF膜18bを形成する。その後、SiOF膜18bを用いて周波数調整を行う。ここでの周波数調整は、例えばウエハ面内に生じる周波数ばらつきを抑制することを目的に行う。ウエハ面内で周波数ばらつきが生じるのは、ウエハ面内で櫛型電極12、SiO2膜16及びSiOF膜18a、18bの膜厚にばらつきがあるためである。周波数調整は、弾性波デバイスの通過帯域の中心周波数が所望とする中心周波数と一致するように、SiOF膜18bの膜厚を薄くしたり、厚くしたりすることで行う。
【0045】
このように、実施例3に係る弾性波デバイスでは、第1媒質20は、櫛型電極12を覆って設けられたSiOF膜18a(Fがドープされた酸化シリコン膜)と、SiOF膜18a上に設けられたSiO2膜16(アンドープの酸化シリコン膜)と、SiO2膜16上に設けられたSiOF膜18b(Fがドープされた酸化シリコン膜)と、を有する。このような構造の弾性波デバイスであっても、実施例1と同じように、SiOF膜18a、18bを周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0046】
また、実施例3に係る弾性波デバイスによれば、SiOF膜18aを用いて1回目の周波数調整(例えば、ウエハ間の周波数ばらつきの抑制)を行い、SiOF膜18bを用いて2回目の周波数調整(例えば、ウエハ面内の周波数ばらつきの抑制)を行うことができる。このように、周波数調整を2回に分けて行えるため、各周波数調整での調整幅が小さくなり、SiOF膜18a、18bそれぞれの膜厚変化量を小さくできる。よって、周波数調整をより容易に且つより精度良く行うことが可能となる。
【実施例4】
【0047】
図6は、実施例4に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図6を参照に、第1媒質20上に、例えば酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。その他の構成については、実施例3と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
図6のように、実施例4に係る弾性波デバイスは、第1媒質20上に、第1媒質20よりも音速の速い第2媒質22が設けられた、弾性境界波デバイスである。このような弾性波デバイスであっても、実施例1と同じように、SiOF膜18a、18bを周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。さらに、SiOF膜18a、18bによって、周波数調整を2回に分けて行えるため、周波数調整をより容易に且つより精度良く行うことが可能となる。
【実施例5】
【0049】
図7は、実施例5に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図7を参照に、実施例1と異なる点は、櫛型電極12と反射電極14とを覆う第1媒質20が、櫛型電極12と反射電極14とを覆って設けられたSiOF膜18と、その上に設けられたSiO2膜16と、で構成されている点である。SiO2膜16は、例えばSiOF膜18の上面に接して設けられている。
【0050】
実施例5に係る弾性波デバイスは、以下の製造方法により製造される。圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とを形成した後、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiOF膜18を形成する。その後、SiOF膜18を用いて周波数調整を行う。ここでの周波数調整は、例えばウエハ間に生じる周波数ばらつきを抑制して、ウエハ間の弾性波デバイスで通過帯域の中心周波数が同じ大きさとなることを目的に行い、SiOF膜18の膜厚を薄くしたり、厚くしたりすることで行う。
【0051】
SiOF膜18による周波数調整後、SiOF膜18上に、SiO2膜16を形成する。その後、SiO2膜16を用いて周波数調整を行う。ここでの周波数調整は、例えばウエハ面内に生じる周波数ばらつきを抑制して、弾性波デバイスの通過帯域の中心周波数が所望とする中心周波数と一致することを目的に行い、SiO2膜16の膜厚を薄くしたり、厚くしたりすることで行う。
【0052】
このように、実施例5に係る弾性波デバイスは、第1媒質20は、櫛型電極12を覆って設けられたSiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)と、SiOF膜18上に設けられたSiO2膜16(アンドープの酸化シリコン膜)と、を有する。このような構造の弾性波デバイスであっても、SiOF膜18を周波数調整膜として用いて、例えばウエハ間の周波数ばらつきの抑制を行うことができる。このため、第1媒質20がアンドープの酸化シリコン膜のみで構成された弾性波デバイスに比べて、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、実施例1と同じように、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【実施例6】
【0053】
図8は、実施例6に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図8を参照に、第1媒質20上に、例えば酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。その他の構成については、実施例5と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0054】
図8のように、実施例6に係る弾性波デバイスは、第1媒質20上に、第1媒質20よりも音速の速い第2媒質22が設けられた、弾性境界波デバイスである。このような弾性波デバイスであっても、SiOF膜18を周波数調整膜として用いて、例えばウエハ間の周波数ばらつきの調整を行うことができるため、実施例5と同じように、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、実施例1と同じように、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【実施例7】
【0055】
図9は、実施例7に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図9を参照に、実施例1と異なる点は、櫛型電極12と反射電極14とを覆う第1媒質20が、櫛型電極12と反射電極14とを覆って設けられたSiOF膜18のみからなる点である。
【0056】
このように、第1媒質20が、櫛型電極12を覆って設けられたSiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)で構成されている場合でも、実施例1と同じように、SiOF膜18を周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【実施例8】
【0057】
図10は、実施例8に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図10を参照に、第1媒質20上に、例えば酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。その他の構成については、実施例7と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
図10のように、実施例8に係る弾性波デバイスは、第1媒質20上に、第1媒質20よりも音速の速い第2媒質22が設けられた、弾性境界波デバイスである。このような弾性波デバイスであっても、実施例1と同じように、SiOF膜18を周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0059】
以上説明してきたように、実施例1から実施例8では、圧電基板10上の櫛型電極12を覆って、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であるSiOF膜18を少なくとも含む第1媒質20が設けられている。このような構成により、周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0060】
実施例1から実施例8では、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜が、SiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)である場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。F以外の元素がドープされた酸化シリコン膜であっても、アンドープの酸化シリコン膜に比べて、音速の遅い膜となり膜厚変化に対する周波数変動量が大きくなる場合であればよい。つまり、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜は、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜の場合であればよい。アンドープの酸化膜よりも音速の遅い膜となるのは、Fがドープされた酸化シリコン膜の他に、例えば塩素(Cl)、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)がドープされた酸化シリコン膜が挙げられる。このように、元素がドープされた酸化シリコン膜は、Si−O結合におけるOと置換する元素がドープされることが好ましい。また、これらの元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は正であり、圧電基板10の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有する。したがって、第1媒質20の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、弾性波デバイス全体として弾性定数の温度係数を0に近づけることが容易にでき、周波数温度特性を改善することができる。
【0061】
実施例1から実施例6のように、第1媒質20は、アンドープの酸化シリコン膜と元素がドープされた酸化シリコン膜とを含む場合が好ましい。アンドープの酸化シリコン膜は、元素がドープされた酸化シリコン膜に比べて、膜質のばらつきを小さくできるため、周波数温度特性の向上や損失の低減をより安定して実現できるからである。このことから、アンドープの酸化シリコン膜の膜厚は相対的に厚く、元素がドープされた酸化シリコン膜の膜厚は相対的に薄い場合が好ましい。
【0062】
第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜は、上述した元素が1種類ドープされた場合に限らず、2種類、3種類、4種類など、2種類以上の元素がドープされている場合でもよい。この場合でも、アンドープの酸化シリコン膜に比べて、音速の遅い膜となり膜厚変化に対する周波数変動量が大きくなる。
【0063】
弾性波デバイスの製造方法として、圧電基板10上に櫛型電極12を形成する。櫛型電極12を覆うように、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であると共に周波数調整膜として用いられる元素がドープされた酸化シリコン膜を少なくとも含む第1媒質20を形成する。元素がドープされた酸化シリコン膜を用いて周波数調整をする。この製造方法により、周波数調整を容易に行うことができる。また、圧電基板10上に櫛型電極12を形成する。櫛型電極12を覆うように、アンドープの酸化シリコン膜と、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であると共に周波数調整膜として用いられる元素がドープされた酸化シリコン膜と、を含む第1媒質20を形成する。元素がドープされた酸化シリコン膜を用いて周波数調整をする。この製造方法により、周波数調整を容易に行うことができると共に、周波数温度特性の向上や損失の低減をより安定して実現できる。
【0064】
上述したように、周波数温度特性を改善する点から、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は、圧電基板10の弾性定数の温度係数と反対の符号を有する場合が好ましい。この場合に、元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR(フーリエ変換赤外分光)法におけるピーク波数が、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも大きいことがより好ましい。また、元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅が、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも小さいことがより好ましい。これらが好ましい理由を以下に説明する。
【0065】
図11は、比較例1に係る共振器の断面模式図の例である。図11を参照に、例えばLN基板からなる圧電基板50上に、櫛型電極52及び反射電極54が設けられている。櫛型電極52と反射電極54とは、例えばCuを主成分とする材料で形成されている。櫛型電極52と反射電極54とを覆って、圧電基板10上に、アンドープの酸化シリコン膜(以下、SiO2膜56と称す)が設けられている。SiO2膜56は、例えばCVD法を用いて成膜し、膜厚は0.3λとする。なお、λは弾性波の波長であり、櫛型電極12の電極指の周期に相当する。
【0066】
SiO2膜56を、CVD法を用いて様々な成膜条件により成膜した。成膜条件として、温度、圧力、原料ガス、原料ガスの流量、高周波出力(プラズマを生成するための高周波電力)を変化させた。このように、様々な成膜条件を用いて製造した複数の共振器それぞれについて、反共振周波数のTCF(周波数温度係数)を測定した。また、SiO2膜56の成膜条件と同じ成膜条件で成膜したSiO2膜を、FTIR(フーリエ変換赤外分光)法を用いて測定した。FTIR法は、物質に赤外光を照射し、分子の振動エネルギーに対応したエネルギーを有する赤外光の吸収量から物質の組成などを調べる測定方法である。ここで、SiO2内のSi−O結合の伸縮振動の吸収波形に注目した。
【0067】
図12は、Si−O結合の伸縮振動のFTIR測定結果を示す図であり、波数に対して任意座標の吸収量を示している。吸収量が最大になるピーク波数を測定し、吸収量が最大になるピーク波数をピーク波数(吸収量最大波数)で示している。また、伸縮振動の吸収には横波光学(TO)モードと縦波光学(LO)モードとがある。そこで、図12では、伸縮振動の吸収をTOモードとLOモードとに分離し、TOモードの半値幅を測定した。また、TOモードのピーク波数をピーク波数(TOモードピーク)で示している。
【0068】
図13は、FTIR法により測定したピーク波数(吸収量最大波数)に対する共振器の反共振周波数のTCFを示す図である。図13において、各成膜条件における測定結果を黒三角で示す。図13を参照に、ピーク波数が大きくなると反共振周波数のTCFは増加し、0に近づいて、TCFが改善されることが分かる。
【0069】
図14は、FTIR法により測定した横波光学(TO)モードの半値幅に対する共振器の反共振周波数のTCFを示す図である。図14において、各成膜条件における測定結果を黒三角で示す。図14を参照に、半値幅が小さくなると反共振周波数のTCFは増加し、0に近づいて、TCFが改善されることが分かる。
【0070】
ここで、ピーク波数がTCFに関係していることについて考えられる理由を説明する。Central-force networkモデル(J. Vac. Sci. Technol. Vol. B5, pp530-537(1987))によれば、Si−O結合の伸縮振動のピーク波数は、Si−O結合角度に次式のように依存していることが知られている。
k2=(f/mo)・[sin2(θ/2)] (数式1)
ここで、kはピーク波数、fはSiとOとの間の原子間力、moは酸素の原子量、θはSi−O−Siの結合角度である。
また、Lorentz-Lorentz関係から、誘電率と密度と分子分極率との関係は次式で表される。
(e−1)/(e+2)=4π・ρ・C (数式2)
ここで、eは酸化シリコン膜の誘電率、ρは酸化シリコン膜の密度、Cは分子分極率である。
酸化シリコン膜の誘電率、密度及び分子分極率は、Si−O−Si結合角度θと相関性がある。このため、数式1と数式2とから、ピーク波数と誘電率、密度及び分子分極率とが関係付けられる。
【0071】
TCFは、室温(25℃)における弾性波の速度を用い以下のように表される。
TCF=1/v・(δv/δT)−α (数式3)
ここで、vは弾性波の伝搬速度、(δv/δT)は伝搬速度vの温度Tに対する変化率、αは線熱膨張係数である。
文献“Temperature-compensated surface-acoustic-wave devices with SiO2 film overlays” J. Appl. Phys. Vol.50, No.3, pp1360-1369 (1979))によれば、(δv/δT)は、基板(または酸化シリコン膜)の物質定数(つまり、誘電率、密度及びヤング率など)の温度係数から求められる。このように、数式3から、酸化シリコン膜の誘電率、密度及びヤング率などの物質定数とTCFとが関係付けられる。
【0072】
以上のように、数式1から数式3により、Si−O結合の伸縮振動のピーク波数はTCFに関係しているものと考えられる。
【0073】
なお、図13及び図14では、共振器の反共振周波数のTCFについて記載したが、共振器の共振周波数のTCF又は共振器を用いたフィルタの周波数特性のTCFについても、図13及び図14と同様の結果を得ることができる。
【0074】
図13及び図14で説明したように、櫛型電極を覆うように酸化シリコン膜が設けられた弾性波デバイスでは、ピーク波数が大きくなると反共振周波数のTCFが増加して0に近づき、半値幅が小さくなると反共振周波数のTCFが増加して0に近づく。このことを踏まえると、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数を、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも大きくすることで、第1媒質20の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、反共振周波数などのTCFを0に近づけることができ、周波数温度特性をより改善することができる。また、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅を、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも小さくすることで、第1媒質20の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、反共振周波数などのTCFを0に近づけることができ、周波数温度特性をより改善することができる。
【0075】
第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜が、上述したF、Cl、C、N、P、Sがドープされた酸化シリコン膜である場合、FTIR法におけるピーク波数は、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも大きくなる。また、FTIR法における半値幅は、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも小さくなる。
【0076】
SiOF膜18の成膜で、原料ガスとしてSiH4、N2O、C2F6を用いる場合を例に説明したが、これに限られる訳ではない。Siソースとして、SiH4の他に、例えばtetraethoxysilan(TEOS)、SiF4などを用いてもよい。Fソースとして、C2F6の他に、例えばCF4、NF3、F2、HF、SF6、ClF3、BF3、BrF3、SF4、SiF4、NF4Cl、FSiH2、F3SiHなどを用いてもよい。
【0077】
圧電基板10は、LN基板の他に、例えばタンタル酸リチウム(LT)基板、ZnO基板、KNbO3基板、LBO基板、水晶基板などを用いてもよい。圧電基板10は、弾性定数が負の温度係数を有する場合が好ましく、上記に挙げた種類の基板は弾性定数に負の温度係数を有する。
【0078】
第2媒質22は、酸化アルミニウム膜である場合に限られる訳ではなく、第1媒質20よりも音速の速い誘電体であればよい。即ち、第2媒質22は、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜及び元素がドープされた酸化シリコン膜よりも音速の速い誘電体であればよい。例えば、第2媒質22は、酸化アルミニウム膜の他に、窒化シリコン膜を用いてもよい。
【0079】
実施例1から実施例8において、圧電基板10、櫛型電極12及び反射電極14と第1媒質20との間に、例えば窒化シリコンなどの絶縁膜が介在している場合でもよい。
【0080】
実施例1から実施例8では、図1(a)のように、弾性波デバイスは1ポート共振子の場合を例に説明したが、この場合に限られず、多重モード型弾性波フィルタやラダー型フィルタなど、その他の弾性波デバイスの場合でもよい。
【0081】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 圧電基板
12 櫛型電極
14 反射電極
16 SiO2膜
18 SiOF膜
20 第1媒質
22 第2媒質
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波を利用した弾性波デバイスの1つとして、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)デバイスが知られている。SAWデバイスは、小型軽量で高減衰量が得られることから、例えば携帯電話端末などの無線機器における45MHz〜2GHzの周波数帯の無線信号を処理する各種回路に用いられている。各種回路としては、例えば送信バンドパスフィルタ、受信バンドパスフィルタ、局発フィルタ、アンテナ共用器、IFフィルタ、FM変調器などが挙げられる。
【0003】
近年、携帯電話端末の高性能化、小型化に伴い、弾性波デバイスの周波数温度特性の向上やサイズの小型化が求められている。周波数温度特性の向上には、例えば圧電基板の表面に形成した櫛型電極を覆って酸化シリコン膜を設ける技術が開発されている。また、デバイスサイズの小型化には、例えば櫛型電極を覆う酸化シリコン膜上に、酸化シリコン膜よりも音速の速い誘電体を設け、誘電体と圧電基板の表面との間に弾性波エネルギーを閉じ込める弾性境界波デバイスが開発されている。
【0004】
これら弾性波デバイスの共通の課題として、製造ばらつきによる周波数のばらつきがある。周波数としては、例えば共振器の場合は共振周波数及び反共振周波数、フィルタの場合は通過帯域の中心周波数が挙げられる。この周波数ばらつきに対して、様々な調整方法が提案されている。例えば、櫛型電極を覆う酸化シリコン膜の膜厚を変化させることで周波数調整を行う方法や、櫛型電極を覆う酸化シリコン膜上に誘電体を形成し、この誘電体の膜厚を変化させることで周波数調整を行う方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2005/093949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電基板の表面に形成した櫛型電極を覆って酸化シリコン膜を設けた弾性波デバイスにおいては、酸化シリコン膜の膜厚を調整することで周波数調整をすることが一般的に行われている。これは、圧電基板の音速に対して酸化シリコン膜の音速が遅いため、酸化シリコン膜に分布する弾性波の大きさを調整することで周波数調整が可能となるためである。しかしながら、酸化シリコン膜の音速は基板の音速に比べて十分小さくないことから、酸化シリコン膜の膜厚変化に対する周波数変動量がそれほど大きくとれない。このため、酸化シリコン膜の膜厚を大きく変化させて周波数調整を行う場合がある。この場合、例えば、製造ばらつきにより、酸化シリコン膜の膜厚を一度の調整で所望の厚さにすることが難しい場合があり、周波数調整を容易にできないことがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、周波数調整を容易に行うことが可能な弾性波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧電基板上に設けられた櫛型電極と、前記櫛型電極を覆って設けられた、元素がドープされた酸化シリコン膜を少なくとも含む第1媒質と、を備え、前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であることを特徴とする弾性波デバイスである。本発明によれば、周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0009】
上記構成において、前記第1媒質は、アンドープの酸化シリコン膜と前記元素がドープされた酸化シリコン膜とを含む構成とすることができる。この構成によれば、周波数温度特性の向上や損失の低減をより安定して実現することができる。
【0010】
上記構成において、前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、前記アンドープの酸化シリコン膜上に設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、を有する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた第1の前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、前記第1の元素がドープされた酸化シリコン膜上に設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、前記アンドープの酸化シリコン膜上に設けられた第2の前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、を有する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、前記元素がドープされた酸化シリコン膜上に設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、を有する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜で構成されている構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、周波数調整膜として用いられる構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は、前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有する構成とすることができる。この構成によれば、第1媒質の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、周波数温度特性を改善することができる。
【0016】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有し、前記元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数が、前記第1媒質に含まれる前記アンドープの酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数よりも大きい構成とすることができる。この構成によれば、第1媒質の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、周波数温度特性をより改善することができる。
【0017】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有し、前記元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅が、前記第1媒質に含まれる前記アンドープの酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅よりも小さい構成とすることができる。この構成によれば、第1媒質の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、周波数温度特性をより改善することができる。
【0018】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、2種類以上の元素がドープされている構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記元素がドープされた酸化シリコン膜には、フッ素がドープされている構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記第1媒質上に、前記第1媒質よりも音速の速い第2媒質を備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの上面模式図の例であり、図1(b)は、図1(a)のA−A間の断面模式図の例である。
【図2】図2(a)から図2(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面模式図の例である。
【図3】図3は、周波数調整膜の膜厚に対する周波数変動量の測定結果を示す図である。
【図4】図4は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図5】図5は、実施例3に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図6】図6は、実施例4に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図7】図7は、実施例5に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図8】図8は、実施例6に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図9】図9は、実施例7に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図10】図10は、実施例8に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図11】図11は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。
【図12】図12は、Si−O結合の伸縮振動のFTIR測定結果を示す図である。
【図13】図13は、FTIR法により測定したピーク波数(吸収量最大波数)に対する共振器の反共振周波数のTCFを示す図である。
【図14】図14は、FTIR法により測定した横波光学(TO)モードの半値幅に対する共振器の反共振周波数のTCFを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの上面模式図の例であり、図1(b)は、図1(a)のA−A間の断面模式図の例である。なお、図1(a)においては、第1媒質20を透視して図示している。図1(a)を参照に、櫛型電極12の弾性波の伝搬方向における両側に反射電極14が設けられている。櫛型電極12は、弾性波を励振する電極であり、入力用と出力用との2つの電極が互いに向き合って、それぞれの電極指が互い違いに並んで配置されている。櫛型電極12及び反射電極14は、例えば銅(Cu)を主成分とする材料で形成されている。なお、電極材料としては、Cuの他にも、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、金(Au)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)を用いてもよい。
【0024】
図1(b)を参照に、例えばニオブ酸リチウム(LN)基板からなる圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とが設けられている。櫛型電極12と反射電極14とは、例えば圧電基板10の表面に接して設けられている。櫛型電極12と反射電極14とを覆って、圧電基板10上にアンドープの酸化シリコン膜(以下、SiO2膜16と称す)が設けられている。
【0025】
SiO2膜16上に、フッ素(F)がドープされた酸化シリコン膜(以下、SiOF膜18と称す)が設けられている。SiOF膜18は、例えばSiO2膜16の上面に接して設けられている。SiOF膜18のF含有量は、例えば8.8アトミック%である。このように、櫛型電極12と反射電極14とを覆って、SiO2膜16とSiOF膜18とからなる第1媒質20が設けられている。また、後述により明らかとなるが、SiOF膜18は、製造ばらつきにより生じる周波数のずれを調整するための周波数調整膜として用いられる。
【0026】
次に、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法について説明する。図2(a)から図2(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面模式図の例である。なお、弾性デバイスの製造はウエハ状態の圧電基板を用いて行われ、複数の弾性波デバイスとなるべき領域がウエハ面内に存在するが、図2(a)から図2(c)では、そのうちの1つの弾性波デバイスを図示して説明する。図2(a)を参照に、圧電基板10上に、例えばスパッタ法とエッチング法とを用いて、櫛型電極12と反射電極14とを形成する。なお、櫛型電極12と反射電極14との形成は、例えば蒸着法とリフトオフ法とを用いてもよい。
【0027】
図2(b)を参照に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiO2膜16を形成する。SiO2膜16の成膜条件は、例えば原料ガスにSiH4とN2Oを用い、流量比をSiH4:N2O=1:50とし、成膜温度を270℃とすることができる。SiO2膜16の膜厚は、弾性波デバイスの周波数が所望とする周波数と一致するような膜厚よりも薄い膜厚となるように設定される。この際、ウエハ面内におけるSiO2膜16の膜厚分布を考慮して、SiO2膜16の膜厚を設定することが好ましい。また、周波数としては、弾性波デバイスが共振器の場合は共振周波数及び反共振周波数が挙げられ、弾性波デバイスがフィルタである場合は通過帯域の中心周波数が挙げられる。以下においては、周波数が通過帯域の中心周波数である場合を例に説明する。
【0028】
図2(c)を参照に、例えばCVD法を用いて、SiO2膜16上に、SiOF膜18を形成する。これにより、櫛型電極12と反射電極14と覆う、SiO2膜16とSiOF膜18とからなる第1媒質20が形成される。SiOF膜18の成膜は、SiO2膜16の成膜に続いて、同じCVD装置内で真空を破ることなく連続して行う。これにより、SiO2膜16とSiOF膜18との界面に不純物などが混入することを抑制できる。SiOF膜18の成膜条件は、例えば原料ガスにSiH4、N2O、C2F6を用い、流量比をSiH4:N2O:C2F6=1:50:3とし、成膜温度を270℃とすることができる。SiOF膜18の膜厚は、弾性波デバイスの通過帯域の中心周波数が所望とする中心周波数と一致するように設定される。
【0029】
櫛型電極12、SiO2膜16及びSiOF膜18の膜厚は、製造ばらつきにより、所望の膜厚からずれてしまう場合やウエハ面内に分布が生じる場合がある。このために、弾性波デバイスの通過帯域の中心周波数が所望とする中心周波数からずれてしまうことがある。そこで、次の方法により周波数調整を行う。
【0030】
まず、SiOF膜18を形成した後、ウエハ面内に形成された複数の弾性波デバイスそれぞれにおいて通過帯域の中心周波数を測定する。そして、得られた中心周波数の測定値が所望とする中心周波数と一致するように、例えばエッチング法を用いて、SiOF膜18の膜厚を薄くする。また、例えばCVD法を用いて、SiOF膜18をさらに成膜して、SiOF膜18の膜厚を厚くする。上述したように、櫛型電極12、SiO2膜16及びSiOF膜18の膜厚は、ウエハ面内でばらつきがある。このため、ウエハ面内の複数の弾性波デバイスそれぞれで、周波数調整の際のSiOF膜18に対するエッチング量や成膜量が異なる場合がある。この場合、例えばレジストなどのマスク層を利用してSiOF膜18をエッチングや成膜することで、複数の弾性波デバイスそれぞれで、SiOF膜18のエッチング量や成膜量を異ならせることができる。これにより、ウエハ面内の複数の弾性波デバイスそれぞれに対して周波数調整を行うことができる。このように、SiOF膜18は、製造ばらつきにより生じる周波数のずれを調整するための周波数調整膜として用いられる。
【0031】
ここで、SiOF膜18(F含有量:8.8アトミック%)の膜厚Hと周波数変動量Mとの関係を調査した。また、比較のために、SiO2膜を周波数調整膜に用いる場合での、SiO2膜の膜厚Hと周波数変動量Mとの関係も調査した。調査方法は、まず、図2(a)及び図2(b)で説明した製造方法を行い、圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiO2膜16を形成する。そして、SiO2膜16上に、周波数調整膜(SiOF膜又はSiO2膜)を成膜して、周波数調整膜の膜厚が0nm、100nm、200nmのときの通過帯域の中心周波数を測定することで行った。なお、周波数調整膜(SiOF膜又はSiO2膜)は、図2(b)及び図2(c)で説明した製造条件により形成した。図3は、周波数調整膜の膜厚Hに対する周波数変動量Mの測定結果を示す図である。図3において、周波数調整膜の膜厚Hが0nmのときの通過帯域の中心周波数を基準として周波数変動量Mを示している。また、SiOF膜での測定値を黒三角で示し、その近似直線を実線で示している。SiO2膜での測定値を黒四角で示し、その近似直線を破線で示している。
【0032】
図3を参照に、周波数調整膜にSiO2膜を用いる場合は、膜厚Hと周波数変動量Mとの間に、M=0.096Hの関係式が成り立つ結果となった。一方、周波数調整膜にSiOF膜を用いる場合は、膜厚Hと周波数変動量Mとの間に、M=0.265Hの関係式が成り立つ結果となった。このことから、周波数調整膜にSiOF膜を用いる場合は、SiO2膜を用いる場合に比べて、膜厚に対する周波数変動量が大きくなることが分かった。例えば、同一の周波数変動量を得るためには、SiOF膜の膜厚は、SiO2膜の膜厚に比べて、およそ36%程度に薄くできることが分かった。このように、SiOF膜において膜厚変化に対する周波数変動量が大きくなるのは、SiOF膜がSiO2膜に比べて音速の遅い膜であることによるものである。以上のことから、周波数調整量が同じである場合、周波数調整膜にSiOF膜を用いることで、SiO2膜を用いる場合と比べて、膜厚変化量を小さくできることが分かった。
【0033】
以上説明してきたように、実施例1に係る弾性波デバイスは、図1(b)のように、圧電基板10上に設けられた櫛型電極12を覆って第1媒質20が設けられている。第1媒質20は、櫛型電極12を覆って設けられたSiO2膜16(アンドープの酸化シリコン膜)と、SiO2膜16上に設けられた、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であるSiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)と、を有する。図2(c)で説明したように、SiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)は、周波数調整膜として用いられる。そして、図3で説明したように、SiOF膜18を周波数調整膜として用いることで、SiO2膜16を周波数調整膜に用いる場合と比べて、周波数調整の際の膜厚変化量を小さくすることができる。膜厚変化量を小さくできることで、製造ばらつきによる所望の膜厚からのずれ量を小さくできる。このため、SiOF膜18に対する1度の膜厚調整で、第1媒質20の膜厚を所望の厚さとすることが容易にできることとなり、周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0034】
また、図1(b)のように、第1媒質20は、SiO2膜16とSiOF膜18とで形成されている。図3で説明したように、SiOF膜18は、SiO2膜16に比べて膜厚に対する周波数変動量が大きい。このことから、第1媒質20をSiO2膜16とSiOF膜18とで形成することで、SiO2膜16のみで形成する場合に比べて、第1媒質20の膜厚を薄くできる。したがって、周波数調整前の段階において、第1媒質20の膜厚の製造ばらつきによる所望の膜厚からのずれ量やウエハ面内での分布量を抑えることができ、周波数調整での膜厚変化量を小さくできる。このことからも、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚が薄くて済むことから、プロセス時間を短縮することもできる。
【0035】
また、第1媒質20を構成するSiO2膜16とSiOF膜18との弾性定数の温度係数は正である。一方、圧電基板10の弾性定数の温度係数は負である。つまり、SiO2膜16(アンドープの酸化シリコン膜)とSiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)との弾性定数の温度係数は、圧電基板10の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有する。このため、弾性波デバイス全体として、弾性定数の温度係数を0に近づけることができ、周波数温度特性を改善することができる。
【0036】
例えば特許文献1では、櫛型電極を覆う酸化シリコン膜上に誘電体を形成し、この誘電体の膜厚を変化させることで周波数調整を行っている。そして、この誘電体には、弾性定数の温度係数が負となる材料を用いている。しかしながら、これでは、弾性波エネルギーが分布する部分に負の温度係数を有する材料が用いられることとなり、弾性波デバイス全体で弾性定数の温度係数を0に近づけることが困難で、周波数温度特性が低下してしまう。また、弾性波デバイス全体で弾性定数の温度係数を0に近づけようとすると、酸化シリコン膜の膜厚を非常に大きくしなければならず、成膜時間、膜厚分布ともに大きくなってしまう。
【0037】
また、第1媒質20は、SiO2膜16とSiOF膜18とで構成されている。SiOF膜18は、SiO2にFがドープされていることから、Fの濃度如何などによって膜質が変わってきてしまう。一方、SiO2膜16は、元素がドープされていないため、膜質のばらつきを小さく抑えることができる。したがって、周波数温度特性の向上や損失の低減を安定して実現するために、弾性波エネルギーが伝搬する大部分をSiO2膜16で形成し、残りの部分をSiOF膜18で形成する場合が好ましい。つまり、第1媒質20を構成するSiO2膜16の膜厚は相対的に厚く、SiOF膜18の膜厚は相対的に薄い場合が好ましい。このように、SiO2膜16は、周波数温度特性の向上などを安定して実現するために設けられ、周波数調整には用いられない膜である。一方、SiOF膜18は、周波数調整を容易に行うことを可能とするために設けられた膜である。
【実施例2】
【0038】
図4は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図4を参照に、第1媒質20上に、例えば酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。その他の構成については、実施例1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0039】
酸化アルミニウム膜の音速は、アンドープの酸化シリコン膜の音速よりも速い。また、上述しているように、Fがドープされた酸化シリコン膜の音速は、アンドープの酸化シリコン膜の音速よりも遅い。したがって、第1媒質20上に設けられた第2媒質22の音速は、第1媒質20の音速よりも速くなる。このため、弾性波エネルギーは、第2媒質22と圧電基板10の表面との間に閉じ込められる。即ち、実施例2に係る弾性波デバイスは、弾性境界波デバイスである。
【0040】
このように、実施例2に係る弾性波デバイスは、SiO2膜16とSiOF膜18とからなる第1媒質20上に、第1媒質20よりも音速の速い酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。このような弾性波デバイスであっても、実施例1と同じように、SiOF膜18を周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0041】
なお、第2媒質22を形成する際にも製造ばらつきにより膜厚が所望の厚さからずれてしまうことがあるが、第2媒質22に伝搬する弾性波エネルギーは非常に小さいため、第2媒質22に製造ばらつきが生じたとしても、それによる周波数のずれは非常に小さいため、ほとんど無視することができる。
【実施例3】
【0042】
図5は、実施例3に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図5を参照に、実施例1と異なる点は、櫛型電極12と反射電極14とを覆う第1媒質20が、SiOF膜18aとSiO2膜16とSiOF膜18bとの3層構造になっている点である。即ち、第1媒質20は、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiOF膜18aと、その上に設けられたSiO2膜16と、SiO2膜16上に設けられたSiOF膜18bと、を有する。SiO2膜16は、例えばSiOF膜18aの上面に接して設けられている。SiOF膜18bは、例えばSiO2膜16の上面に接して設けられている。
【0043】
実施例3に係る弾性波デバイスは、次の製造方法により製造される。圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とを形成した後、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiOF膜18aを形成する。その後、SiOF膜18aを用いて周波数調整を行う。ここでの周波数調整は、例えばウエハ間に生じる周波数ばらつきを抑制することを目的に行う。ウエハ間で周波数ばらつきが生じるのは、例えば複数のウエハに対して櫛型電極12及び反射電極14となる金属膜を同時に成膜する際に、ウエハ間で金属膜の膜厚ばらつきが生じるためである。周波数調整は、ウエハ間の弾性波デバイスで通過帯域の中心周波数が同じ大きさとなるように、SiOF膜18aの膜厚を薄くしたり、厚くしたりすることで行う。これにより、櫛型電極12の製造ばらつきにより生じる周波数ばらつきを低減することができる。
【0044】
SiOF膜18aによる周波数調整後、SiOF膜18a上に、SiO2膜16を形成する。SiO2膜16上に、SiOF膜18bを形成する。その後、SiOF膜18bを用いて周波数調整を行う。ここでの周波数調整は、例えばウエハ面内に生じる周波数ばらつきを抑制することを目的に行う。ウエハ面内で周波数ばらつきが生じるのは、ウエハ面内で櫛型電極12、SiO2膜16及びSiOF膜18a、18bの膜厚にばらつきがあるためである。周波数調整は、弾性波デバイスの通過帯域の中心周波数が所望とする中心周波数と一致するように、SiOF膜18bの膜厚を薄くしたり、厚くしたりすることで行う。
【0045】
このように、実施例3に係る弾性波デバイスでは、第1媒質20は、櫛型電極12を覆って設けられたSiOF膜18a(Fがドープされた酸化シリコン膜)と、SiOF膜18a上に設けられたSiO2膜16(アンドープの酸化シリコン膜)と、SiO2膜16上に設けられたSiOF膜18b(Fがドープされた酸化シリコン膜)と、を有する。このような構造の弾性波デバイスであっても、実施例1と同じように、SiOF膜18a、18bを周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0046】
また、実施例3に係る弾性波デバイスによれば、SiOF膜18aを用いて1回目の周波数調整(例えば、ウエハ間の周波数ばらつきの抑制)を行い、SiOF膜18bを用いて2回目の周波数調整(例えば、ウエハ面内の周波数ばらつきの抑制)を行うことができる。このように、周波数調整を2回に分けて行えるため、各周波数調整での調整幅が小さくなり、SiOF膜18a、18bそれぞれの膜厚変化量を小さくできる。よって、周波数調整をより容易に且つより精度良く行うことが可能となる。
【実施例4】
【0047】
図6は、実施例4に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図6を参照に、第1媒質20上に、例えば酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。その他の構成については、実施例3と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
図6のように、実施例4に係る弾性波デバイスは、第1媒質20上に、第1媒質20よりも音速の速い第2媒質22が設けられた、弾性境界波デバイスである。このような弾性波デバイスであっても、実施例1と同じように、SiOF膜18a、18bを周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。さらに、SiOF膜18a、18bによって、周波数調整を2回に分けて行えるため、周波数調整をより容易に且つより精度良く行うことが可能となる。
【実施例5】
【0049】
図7は、実施例5に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図7を参照に、実施例1と異なる点は、櫛型電極12と反射電極14とを覆う第1媒質20が、櫛型電極12と反射電極14とを覆って設けられたSiOF膜18と、その上に設けられたSiO2膜16と、で構成されている点である。SiO2膜16は、例えばSiOF膜18の上面に接して設けられている。
【0050】
実施例5に係る弾性波デバイスは、以下の製造方法により製造される。圧電基板10上に、櫛型電極12と反射電極14とを形成した後、櫛型電極12と反射電極14とを覆うSiOF膜18を形成する。その後、SiOF膜18を用いて周波数調整を行う。ここでの周波数調整は、例えばウエハ間に生じる周波数ばらつきを抑制して、ウエハ間の弾性波デバイスで通過帯域の中心周波数が同じ大きさとなることを目的に行い、SiOF膜18の膜厚を薄くしたり、厚くしたりすることで行う。
【0051】
SiOF膜18による周波数調整後、SiOF膜18上に、SiO2膜16を形成する。その後、SiO2膜16を用いて周波数調整を行う。ここでの周波数調整は、例えばウエハ面内に生じる周波数ばらつきを抑制して、弾性波デバイスの通過帯域の中心周波数が所望とする中心周波数と一致することを目的に行い、SiO2膜16の膜厚を薄くしたり、厚くしたりすることで行う。
【0052】
このように、実施例5に係る弾性波デバイスは、第1媒質20は、櫛型電極12を覆って設けられたSiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)と、SiOF膜18上に設けられたSiO2膜16(アンドープの酸化シリコン膜)と、を有する。このような構造の弾性波デバイスであっても、SiOF膜18を周波数調整膜として用いて、例えばウエハ間の周波数ばらつきの抑制を行うことができる。このため、第1媒質20がアンドープの酸化シリコン膜のみで構成された弾性波デバイスに比べて、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、実施例1と同じように、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【実施例6】
【0053】
図8は、実施例6に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図8を参照に、第1媒質20上に、例えば酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。その他の構成については、実施例5と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0054】
図8のように、実施例6に係る弾性波デバイスは、第1媒質20上に、第1媒質20よりも音速の速い第2媒質22が設けられた、弾性境界波デバイスである。このような弾性波デバイスであっても、SiOF膜18を周波数調整膜として用いて、例えばウエハ間の周波数ばらつきの調整を行うことができるため、実施例5と同じように、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、実施例1と同じように、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【実施例7】
【0055】
図9は、実施例7に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図9を参照に、実施例1と異なる点は、櫛型電極12と反射電極14とを覆う第1媒質20が、櫛型電極12と反射電極14とを覆って設けられたSiOF膜18のみからなる点である。
【0056】
このように、第1媒質20が、櫛型電極12を覆って設けられたSiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)で構成されている場合でも、実施例1と同じように、SiOF膜18を周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【実施例8】
【0057】
図10は、実施例8に係る弾性波デバイスの断面模式図の例である。図10を参照に、第1媒質20上に、例えば酸化アルミニウム膜からなる第2媒質22が設けられている。その他の構成については、実施例7と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
図10のように、実施例8に係る弾性波デバイスは、第1媒質20上に、第1媒質20よりも音速の速い第2媒質22が設けられた、弾性境界波デバイスである。このような弾性波デバイスであっても、実施例1と同じように、SiOF膜18を周波数調整膜として用いることができ、周波数調整を容易に行うことが可能となる。また、第1媒質20の膜厚を薄くすることができ、これによっても周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0059】
以上説明してきたように、実施例1から実施例8では、圧電基板10上の櫛型電極12を覆って、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であるSiOF膜18を少なくとも含む第1媒質20が設けられている。このような構成により、周波数調整を容易に行うことが可能となる。
【0060】
実施例1から実施例8では、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜が、SiOF膜18(Fがドープされた酸化シリコン膜)である場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。F以外の元素がドープされた酸化シリコン膜であっても、アンドープの酸化シリコン膜に比べて、音速の遅い膜となり膜厚変化に対する周波数変動量が大きくなる場合であればよい。つまり、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜は、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜の場合であればよい。アンドープの酸化膜よりも音速の遅い膜となるのは、Fがドープされた酸化シリコン膜の他に、例えば塩素(Cl)、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)がドープされた酸化シリコン膜が挙げられる。このように、元素がドープされた酸化シリコン膜は、Si−O結合におけるOと置換する元素がドープされることが好ましい。また、これらの元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は正であり、圧電基板10の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有する。したがって、第1媒質20の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、弾性波デバイス全体として弾性定数の温度係数を0に近づけることが容易にでき、周波数温度特性を改善することができる。
【0061】
実施例1から実施例6のように、第1媒質20は、アンドープの酸化シリコン膜と元素がドープされた酸化シリコン膜とを含む場合が好ましい。アンドープの酸化シリコン膜は、元素がドープされた酸化シリコン膜に比べて、膜質のばらつきを小さくできるため、周波数温度特性の向上や損失の低減をより安定して実現できるからである。このことから、アンドープの酸化シリコン膜の膜厚は相対的に厚く、元素がドープされた酸化シリコン膜の膜厚は相対的に薄い場合が好ましい。
【0062】
第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜は、上述した元素が1種類ドープされた場合に限らず、2種類、3種類、4種類など、2種類以上の元素がドープされている場合でもよい。この場合でも、アンドープの酸化シリコン膜に比べて、音速の遅い膜となり膜厚変化に対する周波数変動量が大きくなる。
【0063】
弾性波デバイスの製造方法として、圧電基板10上に櫛型電極12を形成する。櫛型電極12を覆うように、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であると共に周波数調整膜として用いられる元素がドープされた酸化シリコン膜を少なくとも含む第1媒質20を形成する。元素がドープされた酸化シリコン膜を用いて周波数調整をする。この製造方法により、周波数調整を容易に行うことができる。また、圧電基板10上に櫛型電極12を形成する。櫛型電極12を覆うように、アンドープの酸化シリコン膜と、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であると共に周波数調整膜として用いられる元素がドープされた酸化シリコン膜と、を含む第1媒質20を形成する。元素がドープされた酸化シリコン膜を用いて周波数調整をする。この製造方法により、周波数調整を容易に行うことができると共に、周波数温度特性の向上や損失の低減をより安定して実現できる。
【0064】
上述したように、周波数温度特性を改善する点から、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は、圧電基板10の弾性定数の温度係数と反対の符号を有する場合が好ましい。この場合に、元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR(フーリエ変換赤外分光)法におけるピーク波数が、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも大きいことがより好ましい。また、元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅が、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも小さいことがより好ましい。これらが好ましい理由を以下に説明する。
【0065】
図11は、比較例1に係る共振器の断面模式図の例である。図11を参照に、例えばLN基板からなる圧電基板50上に、櫛型電極52及び反射電極54が設けられている。櫛型電極52と反射電極54とは、例えばCuを主成分とする材料で形成されている。櫛型電極52と反射電極54とを覆って、圧電基板10上に、アンドープの酸化シリコン膜(以下、SiO2膜56と称す)が設けられている。SiO2膜56は、例えばCVD法を用いて成膜し、膜厚は0.3λとする。なお、λは弾性波の波長であり、櫛型電極12の電極指の周期に相当する。
【0066】
SiO2膜56を、CVD法を用いて様々な成膜条件により成膜した。成膜条件として、温度、圧力、原料ガス、原料ガスの流量、高周波出力(プラズマを生成するための高周波電力)を変化させた。このように、様々な成膜条件を用いて製造した複数の共振器それぞれについて、反共振周波数のTCF(周波数温度係数)を測定した。また、SiO2膜56の成膜条件と同じ成膜条件で成膜したSiO2膜を、FTIR(フーリエ変換赤外分光)法を用いて測定した。FTIR法は、物質に赤外光を照射し、分子の振動エネルギーに対応したエネルギーを有する赤外光の吸収量から物質の組成などを調べる測定方法である。ここで、SiO2内のSi−O結合の伸縮振動の吸収波形に注目した。
【0067】
図12は、Si−O結合の伸縮振動のFTIR測定結果を示す図であり、波数に対して任意座標の吸収量を示している。吸収量が最大になるピーク波数を測定し、吸収量が最大になるピーク波数をピーク波数(吸収量最大波数)で示している。また、伸縮振動の吸収には横波光学(TO)モードと縦波光学(LO)モードとがある。そこで、図12では、伸縮振動の吸収をTOモードとLOモードとに分離し、TOモードの半値幅を測定した。また、TOモードのピーク波数をピーク波数(TOモードピーク)で示している。
【0068】
図13は、FTIR法により測定したピーク波数(吸収量最大波数)に対する共振器の反共振周波数のTCFを示す図である。図13において、各成膜条件における測定結果を黒三角で示す。図13を参照に、ピーク波数が大きくなると反共振周波数のTCFは増加し、0に近づいて、TCFが改善されることが分かる。
【0069】
図14は、FTIR法により測定した横波光学(TO)モードの半値幅に対する共振器の反共振周波数のTCFを示す図である。図14において、各成膜条件における測定結果を黒三角で示す。図14を参照に、半値幅が小さくなると反共振周波数のTCFは増加し、0に近づいて、TCFが改善されることが分かる。
【0070】
ここで、ピーク波数がTCFに関係していることについて考えられる理由を説明する。Central-force networkモデル(J. Vac. Sci. Technol. Vol. B5, pp530-537(1987))によれば、Si−O結合の伸縮振動のピーク波数は、Si−O結合角度に次式のように依存していることが知られている。
k2=(f/mo)・[sin2(θ/2)] (数式1)
ここで、kはピーク波数、fはSiとOとの間の原子間力、moは酸素の原子量、θはSi−O−Siの結合角度である。
また、Lorentz-Lorentz関係から、誘電率と密度と分子分極率との関係は次式で表される。
(e−1)/(e+2)=4π・ρ・C (数式2)
ここで、eは酸化シリコン膜の誘電率、ρは酸化シリコン膜の密度、Cは分子分極率である。
酸化シリコン膜の誘電率、密度及び分子分極率は、Si−O−Si結合角度θと相関性がある。このため、数式1と数式2とから、ピーク波数と誘電率、密度及び分子分極率とが関係付けられる。
【0071】
TCFは、室温(25℃)における弾性波の速度を用い以下のように表される。
TCF=1/v・(δv/δT)−α (数式3)
ここで、vは弾性波の伝搬速度、(δv/δT)は伝搬速度vの温度Tに対する変化率、αは線熱膨張係数である。
文献“Temperature-compensated surface-acoustic-wave devices with SiO2 film overlays” J. Appl. Phys. Vol.50, No.3, pp1360-1369 (1979))によれば、(δv/δT)は、基板(または酸化シリコン膜)の物質定数(つまり、誘電率、密度及びヤング率など)の温度係数から求められる。このように、数式3から、酸化シリコン膜の誘電率、密度及びヤング率などの物質定数とTCFとが関係付けられる。
【0072】
以上のように、数式1から数式3により、Si−O結合の伸縮振動のピーク波数はTCFに関係しているものと考えられる。
【0073】
なお、図13及び図14では、共振器の反共振周波数のTCFについて記載したが、共振器の共振周波数のTCF又は共振器を用いたフィルタの周波数特性のTCFについても、図13及び図14と同様の結果を得ることができる。
【0074】
図13及び図14で説明したように、櫛型電極を覆うように酸化シリコン膜が設けられた弾性波デバイスでは、ピーク波数が大きくなると反共振周波数のTCFが増加して0に近づき、半値幅が小さくなると反共振周波数のTCFが増加して0に近づく。このことを踏まえると、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数を、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも大きくすることで、第1媒質20の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、反共振周波数などのTCFを0に近づけることができ、周波数温度特性をより改善することができる。また、第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅を、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも小さくすることで、第1媒質20の膜厚が厚くなるのを抑制しつつ、反共振周波数などのTCFを0に近づけることができ、周波数温度特性をより改善することができる。
【0075】
第1媒質20に含まれる元素がドープされた酸化シリコン膜が、上述したF、Cl、C、N、P、Sがドープされた酸化シリコン膜である場合、FTIR法におけるピーク波数は、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも大きくなる。また、FTIR法における半値幅は、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜よりも小さくなる。
【0076】
SiOF膜18の成膜で、原料ガスとしてSiH4、N2O、C2F6を用いる場合を例に説明したが、これに限られる訳ではない。Siソースとして、SiH4の他に、例えばtetraethoxysilan(TEOS)、SiF4などを用いてもよい。Fソースとして、C2F6の他に、例えばCF4、NF3、F2、HF、SF6、ClF3、BF3、BrF3、SF4、SiF4、NF4Cl、FSiH2、F3SiHなどを用いてもよい。
【0077】
圧電基板10は、LN基板の他に、例えばタンタル酸リチウム(LT)基板、ZnO基板、KNbO3基板、LBO基板、水晶基板などを用いてもよい。圧電基板10は、弾性定数が負の温度係数を有する場合が好ましく、上記に挙げた種類の基板は弾性定数に負の温度係数を有する。
【0078】
第2媒質22は、酸化アルミニウム膜である場合に限られる訳ではなく、第1媒質20よりも音速の速い誘電体であればよい。即ち、第2媒質22は、第1媒質20に含まれるアンドープの酸化シリコン膜及び元素がドープされた酸化シリコン膜よりも音速の速い誘電体であればよい。例えば、第2媒質22は、酸化アルミニウム膜の他に、窒化シリコン膜を用いてもよい。
【0079】
実施例1から実施例8において、圧電基板10、櫛型電極12及び反射電極14と第1媒質20との間に、例えば窒化シリコンなどの絶縁膜が介在している場合でもよい。
【0080】
実施例1から実施例8では、図1(a)のように、弾性波デバイスは1ポート共振子の場合を例に説明したが、この場合に限られず、多重モード型弾性波フィルタやラダー型フィルタなど、その他の弾性波デバイスの場合でもよい。
【0081】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 圧電基板
12 櫛型電極
14 反射電極
16 SiO2膜
18 SiOF膜
20 第1媒質
22 第2媒質
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に設けられた櫛型電極と、
前記櫛型電極を覆って設けられた、元素がドープされた酸化シリコン膜を少なくとも含む第1媒質と、を備え、
前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であることを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第1媒質は、アンドープの酸化シリコン膜と前記元素がドープされた酸化シリコン膜とを含むことを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、前記アンドープの酸化シリコン膜上に設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、を有することを特徴とする請求項2記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた第1の前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、前記第1の元素がドープされた酸化シリコン膜上に設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、前記アンドープの酸化シリコン膜上に設けられた第2の前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、を有することを特徴とする請求項2記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、前記元素がドープされた酸化シリコン膜上に設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、を有することを特徴とする請求項2記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜で構成されていることを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、周波数調整膜として用いられることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は、前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有し、
前記元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数が、前記第1媒質に含まれる前記アンドープの酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数よりも大きいことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有し、
前記元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅が、前記第1媒質に含まれる前記アンドープの酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅よりも小さいことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項11】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、2種類以上の元素がドープされていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項12】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜には、フッ素がドープされていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項13】
前記第1媒質上に、前記第1媒質よりも音速の速い第2媒質を備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項1】
圧電基板上に設けられた櫛型電極と、
前記櫛型電極を覆って設けられた、元素がドープされた酸化シリコン膜を少なくとも含む第1媒質と、を備え、
前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、アンドープの酸化シリコン膜よりも音速の遅い膜であることを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第1媒質は、アンドープの酸化シリコン膜と前記元素がドープされた酸化シリコン膜とを含むことを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、前記アンドープの酸化シリコン膜上に設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、を有することを特徴とする請求項2記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた第1の前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、前記第1の元素がドープされた酸化シリコン膜上に設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、前記アンドープの酸化シリコン膜上に設けられた第2の前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、を有することを特徴とする請求項2記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜と、前記元素がドープされた酸化シリコン膜上に設けられた前記アンドープの酸化シリコン膜と、を有することを特徴とする請求項2記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記第1媒質は、前記櫛型電極を覆って設けられた前記元素がドープされた酸化シリコン膜で構成されていることを特徴とする請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、周波数調整膜として用いられることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は、前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有し、
前記元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数が、前記第1媒質に含まれる前記アンドープの酸化シリコン膜のFTIR法におけるピーク波数よりも大きいことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜の弾性定数の温度係数は前記圧電基板の弾性定数の温度係数に対して反対の符号を有し、
前記元素がドープされた酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅が、前記第1媒質に含まれる前記アンドープの酸化シリコン膜のFTIR法における半値幅よりも小さいことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項11】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜は、2種類以上の元素がドープされていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項12】
前記元素がドープされた酸化シリコン膜には、フッ素がドープされていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項13】
前記第1媒質上に、前記第1媒質よりも音速の速い第2媒質を備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−55371(P2013−55371A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189984(P2011−189984)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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