説明

弾性波素子とこれを用いた電子機器

【課題】IDT電極を覆うように絶縁体を圧電基板上に形成する弾性波素子において、メッキ液による内部電極の断線を抑制すること。
【解決手段】本発明の弾性波素子1は、内部電極4と側壁5との間に設けられかつ側壁5の外側に突出すると共に内部電極4よりもメッキ液溶解性の低い材質からなる腐食防止層15を備える。この腐食防止層15により、たとえ側壁5と内部電極4との間に隙間が生じ、側壁5と内部電極4との境界部分に電極下地層9が十分に付着しなくとも、内部電極4と側壁5との間の腐食防止層15により、電解メッキ処理工程における内部電極4の腐食を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波素子とこれを用いた携帯電話等の電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の弾性波素子について図7を用いて説明する。図7は、従来の弾性波素子の断面模式図である。
【0003】
図7において、従来の弾性波素子101として、圧電基板102と、この圧電基板102の上に設けられたIDT電極103とを備え、このIDT電極103を外部から保護すべく、IDT電極103を覆うように絶縁体110を圧電基板102上に形成するチップサイズパッケージ素子が知られている。
【0004】
この従来の弾性波素子101は、圧電基板102の上に設けられると共にIDT電極103に電気的に接続された例えばアルミニウムからなる内部電極104と、内部電極104の上であってIDT電極103の周囲に設けられた側壁105と、この側壁105の上に接着層106を介してIDT電極103上の空間108を覆うように設けられた蓋体107と、内部電極104の上であって空間108及び側壁105の外側に設けられた例えば銅からなる電極下地層109と、この電極下地層109の上に絶縁体110を貫通するように設けられて外部電極111とIDT電極103とを電気的に接続する接続電極112とを備える。
【0005】
尚、この出願に関する先行文献として、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/106831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の弾性波素子101における接続電極112の形成方法として、メッキの下地層となる金属薄膜からなる電極下地層109をスパッタにより形成し、その後に電極下地層109に通電しながら電解メッキ工程により接続電極112を柱状に形成する方法が知られている。
【0008】
この電極下地層109をスパッタにより形成する際、側壁105と内部電極104との間に剥離による隙間が生じていた場合、側壁105と内部電極104との境界部分に電極下地層109が十分に付着しないという問題が生じる。
【0009】
これにより、側壁105と内部電極104と境界部において、内部電極104が電極下地層109から露出し、その後の上記電解メッキ処理工程におけるメッキ液によって内部電極104が腐食される。その結果、内部電極104の断線が生じて歩留まりが悪くなるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、メッキ液による内部電極の断線を抑制することによって歩留まり率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の弾性波素子は、内部電極と側壁との間に設けられかつ側壁の外側に突出すると共に内部電極よりもメッキ液溶解性の低い材質からなる腐食防止層を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明の弾性波素子は、たとえ側壁と内部電極との間に隙間が生じ、側壁と内部電極との境界部分に電極下地層が十分に付着しなくとも、内部電極と側壁との間の腐食防止層により、電解メッキ工程における内部電極の腐食を抑制することができる。その結果、内部電極の断線を抑制し、歩留まり率を向上することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における弾性波素子の断面模式図
【図2】(a)〜(c)は同弾性波素子の製造工程の説明図
【図3】(d)〜(f)は同弾性波素子の製造工程の説明図
【図4】(g)〜(j)は同弾性波素子の製造工程の説明図
【図5】同弾性波素子を適用した弾性波フィルタの絶縁体等を省略した上面模式図
【図6】同弾性波素子を適用した弾性波フィルタの絶縁体等を省略した上面模式図
【図7】従来の弾性波素子の断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における弾性波素子について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態1における弾性波素子1の断面模式図である。
【0016】
図1において、弾性波素子1は、圧電基板2と、この圧電基板2の上面(圧電基板2の主面)に設けられたIDT(InterDigital Transducer)電極3とを備え、このIDT電極3を外部から保護すべく、IDT電極3を覆うように絶縁体10を圧電基板2上に形成するチップサイズパッケージ素子である。
【0017】
この弾性波素子1は、圧電基板2の上に設けられると共にIDT電極3に電気的に接続された内部電極4と、内部電極4の上であってIDT電極3の周囲に設けられた側壁5と、この側壁5の上に接着層6を介してIDT電極3上の空間8を覆うように設けられた蓋体7とを備える。
【0018】
さらに、弾性波素子1は、内部電極4の上であって空間8から見て側壁5の外側に設けられた電極下地層9と、この電極下地層9の上に絶縁体10を貫通するように設けられて外部電極11とIDT電極3とを電気的に接続する接続電極12とを備える。
【0019】
また、弾性波素子1は、蓋体7の機械的強度を向上すべく、蓋体7の上に蓋体下地層13を介して設けられた蓋体補強層14も備える。
【0020】
さらにまた、弾性波素子1は、内部電極4と側壁5との間に設けられかつ側壁5の外側に突出すると共に内部電極4よりもメッキ液溶解性の低い材質からなる腐食防止層15を備える。
【0021】
以下、弾性波素子1の各構成について詳述する。
【0022】
圧電基板2は、板厚100〜350μm程度の単結晶圧電体からなり、例えば、水晶、タンタル酸リチウム系、ニオブ酸リチウム系、又はニオブ酸カリウム系の基板である。
【0023】
IDT電極3は、膜厚0.1〜0.5μm程度の櫛形電極であり、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、チタン、タングステン、白金、クロム、モリブデンの少なくとも一種からなる単体金属、又はこれらを主成分とする合金又はそれらの金属が積層された構成である。
【0024】
内部電極4は、IDT電極3と外部電極11とを電気的に接続する導体であり、例えば、アルミニウム、銅、銀からなる単体金属、又はこれらを主成分とする合金又はそれらの金属が積層された構成である。
【0025】
側壁5は、IDT電極3の周囲の少なくとも一部を囲む高さが5〜15μm程度の側壁で、例えば、絶縁体からなり、所定の形状に加工することが容易なことから樹脂を用いることが好ましく、さらに、感光性樹脂を用いることで圧電基板2上に複数個の弾性波素子を作るための側壁5を精度良く所望の形状に形成することが可能である。感光性樹脂としては、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂、感光性アクリレート樹脂等、感光性を有する樹脂材料であれば様々な材料を用いることが可能である。感光性ポリイミド樹脂はガラス転移点が高く、高温環境下での信頼性が高いため、側壁5として特に好ましい。
【0026】
接着層6は、厚みが1〜10μm程度の接着剤からなり、例えば、エポキシ系、ポリフェニレン系、若しくはブタジエン系の樹脂、またはこれらの混合樹脂からなる。この接着層6は、単位面積当たりの絶縁体10に対する接着力が側壁5より大きい材料で構成される。
【0027】
蓋体7は、接着層6を介して側壁5の上部に接着されることにより保持された厚みが1〜10μm程度の天板であり、圧電基板2および側壁5とともにIDT電極3を収容している。この蓋体7には、金属を用いると機械的強度に優れ、かつ導電性を有することにより蓋体7の電位を制御することが可能となる点で好ましく、さらに銅を用いると単結晶の圧電基板2と線膨張係数が略等しい点でより好ましい。蓋体7は箔状のものを用いることができ、さらにあらかじめ接着層6を形成していて、その後に側壁5の上部に貼り付ける構成にすると、製造上の取り扱いが便利である。
【0028】
空間8は、圧電基板2、側壁5および蓋体7によって囲まれた領域である。この空間8は気密性を有するものであり、その内部にIDT電極3が収容されている。この空間8内は通常気圧の空気であっても構わないが、減圧密封されているとIDT電極3の腐食を防止できるので、なお好ましい。
【0029】
電極下地層9は、内部電極4上であって側壁5の外側、即ち、側壁5の空間8の逆側に形成されると共に側壁5の外側面に形成された金属薄膜であり、その材質としては、チタン、銅、ニッケル、クロム、マグネシウムの少なくとも一種からなる単体金属、又はこれらを主成分とする合金など、内部電極4よりもメッキ液溶解性の低い材質からなる。特にチタンは密着性が高いので電極下地層9として好ましく、電極下地層9をチタンの上部に銅を形成する2層構造にすると、後述する接続電極12が形成しやすく好ましい。
【0030】
絶縁体10は、圧電基板2の上であって側壁5の外側面及び側壁5上及び蓋体7上に形成されて、側壁5とともに接続電極12を囲んでいる。さらに、この絶縁体10は、圧電基板2の主面上全体を覆うことにより機械的衝撃や湿気からIDT電極3等を保護する機能を有している。当然ながら、絶縁体10は、蓋体7と蓋体補強層14を覆う構成になっている。この絶縁体10の材質としては、熱硬化性樹脂を用いると取り扱い性に優れる点で好ましく、エポキシ樹脂は耐熱性および気密性の点で特に好ましく、さらにエポキシ樹脂中に無機フィラーを含有させることで線膨張係数を低減することができ、なお好ましい。無機フィラーとしては、アルミナ粉末、二酸化珪素粉末、酸化マグネシウム粉末等を用いることができる。なお、これらの粉末に限らず様々な無機系材料の使用が可能である。
【0031】
外部電極11は、絶縁体10の外部に形成され、接続電極12と電気的に接続する電極である。本実施の形態においては、外部電極11と側壁5との間に絶縁体10を形成することにより、外部電極11は側壁5とは直接接しない構成となっている。
【0032】
接続電極12は、電極下地層9を介して内部電極4上に電解メッキ処理により形成された電極である。接続電極12の材質としては、銅を用いると機械的強度に優れ、かつ線膨張係数を圧電基板2と整合することができるため好ましい。
【0033】
蓋体下地層13は蓋体7上に形成された金属薄膜である。蓋体下地層13としては、チタン、銅、ニッケル、クロム、マグネシウムの少なくとも一種からなる単体金属、又はこれらを主成分とする合金を用いることができる。特にチタンは密着性が高いので蓋体下地層13として好ましく、蓋体下地層13をチタンの上部に銅を形成する2層構造にすると、後述する蓋体補強層14が形成しやすく好ましい。この蓋体下地層13は、電解メッキの下地となるものである。
【0034】
蓋体補強層14は、蓋体下地層13の上面に電解メッキ処理により厚みが20〜40μm程度となるように形成された層であり、その材質としては、銅を用いると機械的強度に優れ、かつ線膨張係数を圧電基板2と整合することができるため好ましい。
【0035】
腐食防止層15は、内部電極4と側壁5との間に設けられかつ上方から見て側壁5の外側に突出すると共に厚みが0.01〜1μm程度となるように形成された層であり、その材質として内部電極4よりもメッキ液溶解性の低い材質からなる。この腐食防止層15は、金属でなくとも良いが、金属であると抵抗損を低減することができ、例えば、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、金、白金の少なくとも一種からなる単体金属、又はこれらを主成分とする合金からなる。特に、チタンは密着性が高くかつメッキ液溶解性が低いので腐食防止層15として好ましい。なお、腐食防止層15は絶縁性媒質でもよく、例えば、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化ケイ素を主成分とする媒質からなる。
【0036】
この腐食防止層15により、たとえ側壁5と内部電極4との間に隙間が生じ、側壁5と内部電極4との境界部分に電極下地層9が十分に付着しなくとも、内部電極4と側壁5との間の腐食防止層15により、電解メッキ処理工程における内部電極4の腐食を抑制することができる。その結果、内部電極4の断線を抑制し、歩留まり率を向上することができるのである。
【0037】
さらにまた、この腐食防止層15は、酸化チタン等の酸化金属であると、腐食防止層15の粗度が増し、さらに腐食防止層15と側壁5との密着性を向上させることができる。
【0038】
この腐食防止層15を、側壁5の底面の外側縁部と内部電極4との間のみに設けることにより腐食防止層15による抵抗損を抑制することができるが、腐食防止層15が金属からなる場合は、腐食防止層15を側壁5の底面全面と内部電極4との間に設けることにより、内部電極4と側壁5との密着性を向上させることができる。
【0039】
以上のように構成された実施の形態1における弾性波素子の製造方法について、以下に説明する。
【0040】
図2(a)〜(c)、図3(d)〜(f)、図4(g)〜(j)は、実施の形態1における弾性波素子1の製造工程を示す図である。
【0041】
まず、図2(a)に示すように、圧電基板2の表面に、レジストを用いたフォトリソグラフィ技術にて、複数のIDT電極3をスパッタ形成すると共に、内部電極4およびこの内部電極4の上面に腐食防止層15を蒸着形成する。
【0042】
次に、図2(b)に示すように、感光性のポリイミド系樹脂16を圧電基板2にスピンコート法、ディスペンス法、又はスクリーン印刷法等の膜形成方法によりIDT電極3及び内部電極4を覆って圧電基板2の主面の全面に形成する。特にスピンコート法は均一な膜厚を形成する方法として好ましい。
【0043】
そして、この上面から露光、現像を行い、そして熱硬化させることにより、図2(c)に示すように、IDT電極3を囲む側壁5を形成する。尚、側壁5を、所定の形状に加工した後、必要に応じて加熱処理を施し、材料の硬化を促進させる。
【0044】
さらに、図3(d)に示す様に、蓋体7となる金属箔17を、接着剤18を介して側壁5の上面に貼り合わせ、その上からレジスト(図示せず)を用いてフォトリソグラフィにより金属箔17を所定のパターン形状にエッチングし、レジストを除去して、その後、接着剤18の不要部分をドライエッチングにて除去することで、図3(e)に示す様に、蓋体7と接着層6によってIDT電極3上の空間8を覆う構成を得る。尚、側壁5の上面の全面に蓋体7と接着層6を残さないことが望ましい。即ち、上方から見て蓋体7と接着層6が側壁5の上面の外縁部より内側に形成されていることが好ましい。これは、上方から見て蓋体7と接着層6が側壁5の上面より外側に突出していると、この後の下地層19のスパッタ形成の際、側壁5の外側面や側壁5と腐食防止層15との境界部に下地層19が付着しにくくなるという問題が生じるからである。
【0045】
その次に、図3(f)に示す様に、圧電基板2の主面上の全面に下地層19をスパッタにより形成する。この下地層19の内、この側壁5の外側面に形成された部分と内部電極4の上面に形成された部分が電極下地層9となり、蓋体7の上面に形成された部分が蓋体下地層13となる。
【0046】
このように、側壁5に形成された孔に電極下地層をスパッタ形成するのではなく、周囲の一部が露出した側壁5に電極下地層9を形成することにより、電極下地層9が断線することを防止している。これにより後工程の電解メッキ処理で形成する接続電極12の断線を抑制している。
【0047】
そして、フォトリソグラフィ技術にてレジスト(図示せず)を電解メッキ成長させる部分を残して形成する。具体的には、レジストは、電極下地層9となる下地層19の上部と、蓋体下地層13となる下地層19の上部は露出させ、その他の部分を覆うように形成される。そして、1度目の電解メッキ処理を施すことにより、電極下地層9上に接続電極12の一部を形成し、同時に、蓋体下地層13上にも蓋体補強層14を形成する。このように、蓋体補強層14を形成することにより蓋体7を補強することができ、さらにこの蓋体補強層14の形成を接続電極12の形成と同時に行うために、効率よく蓋体補強層14を形成することができる。
【0048】
さらに、レジスト(図示せず)を接続電極12の上部の空間を除いて圧電基板2の主面側の全面に形成する。ここでは、レジストは、蓋体補強層14の上面にも形成される。その後、2度目の電解メッキ処理を施すことにより、接続電極12を形成したレジストを更に上まで成長させ、更に、レジストを除去し、図4(g)に示す状態を得る。
【0049】
尚、蓋体7の強度が十分である場合などで蓋体補強層14を形成しないときには、一回の電解メッキ処理工程のみで接続電極12を形成する。
【0050】
また、図4(g)では接続電極12と蓋体補強層14は分離独立した構造としているが、接続電極12の少なくとも1つと蓋体補強層14間のレジストを除去して、1度目の電解メッキ処理の工程で接続電極12と蓋体補強層14が接続するようにしても良い。こうすることで、蓋体7および蓋体補強層14が電気的に浮いた状態を回避し、電位を安定させることができるものである。特にグランド端子となる接続電極12と接続させることで、蓋体7および蓋体補強層14をグランド電位とすることができ、IDT電極3をノイズから保護するシールド層としての役割を持たすことが可能となる。
【0051】
さらに、図4(h)に示すように、下地層19を介して導通している蓋体補強層14と接続電極12とを電気的に絶縁状態にする。この下地層19の除去は、エッチングで行う。なお、蓋体補強層14と接続電極12を意図的にメッキにより接続させる場合には、蓋体補強層14と接続電極12間の下地層19の除去は行わない。
【0052】
さらにまた、図4(i)に示すように、接続電極12の上面を露出させながら、その他の圧電基板2の主面および主面上の構造物を覆う絶縁体10を形成する。この絶縁体10の形成方法としては、印刷工法を用いる。なお、絶縁体10を接続電極12と全く同じ高さに形成するためには、一度、接続電極12の上面より高く絶縁体10を形成し、その後に絶縁体10を機械的に削る方法を用いることもできる。この場合において、圧電基板2の主面および接続電極12も含めた主面上の全ての構造物を覆うように絶縁体10を形成した後に、機械的に絶縁体10を削ってもよい。なお、この機械的に絶縁体10を削る際に、接続電極12を全く削らないで、絶縁体10と接続電極12の高さを同一にすることは困難なので、接続電極12も一部削ることになるが、この分を考慮して、接続電極12を電解メッキ処理で形成する際に、最終的に必要になる高さより高く形成しておくとよい。なお、この様に、絶縁体10および接続電極12を削ることにより、これらの上面の高さが同一になり、さらに平面度も高くなるので、実装時には好ましい構造になる。
【0053】
尚、蓋体補強層14上において、1度目の電解メッキ処理工程後に形成するレジスト(図示せず)が絶縁体10を兼ねてもよい。
【0054】
最後に、図4(j)に示すように、接続電極12の上面と電気的に接続される外部電極11を形成する。そして、ダイシングにより圧電基板2および絶縁体10を同時に切断することにより、集合基板から個片の弾性波素子1を得る。
【0055】
次に、実施の形態1の弾性波素子1を弾性波フィルタに適用したときの内部電極4と側壁5のパターン配置について、図面を参照しながら説明する。
【0056】
図5、図6は、実施の形態1における弾性波フィルタの内部電極4と側壁5のパターン配置を示す上面図である。尚、図5、図6において、内部電極4のうち側壁5に隠れて表示されていない部分が存在している。また、図5、図6において、内部電極4と側壁5のパターン配置を明確化すべく、蓋体7、電極下地層9、絶縁体10、接続電極12等は省略している。
【0057】
実施の形態1の弾性波素子1を適用した弾性波フィルタ21は、圧電基板2の表面において、入出力端子(図示せず)に接続された2個のパッド用内部電極4aと、この2個のパッド用内部電極4aの間に配線用内部電極4bを介して直列に接続された複数の直列IDT電極3aと、グランド端子(図示せず)に接続されたグランド用内部電極4cと、このグランド用内部電極4cと配線用内部電極4bの間に接続された並列IDT電極3bを備える。
【0058】
図5に示す様に、パッド用内部電極4aと側壁5との間に設けられた腐食防止層15は、上方から見て側壁5の外側に突出するように設けられる。
【0059】
また、図6に示す様に、パッド用内部電極4aの上部において側壁5に孔が設けられてこの孔を貫通するように接続電極(図示せず)が設けられる構成の場合、パッド用内部電極4aと側壁5との間に設けられた腐食防止層15は、上方から見てこの孔の内方に突出するように設けられる。
【0060】
この腐食防止層15により、たとえ側壁5とパッド用内部電極4aとの間に隙間が生じ、側壁5とパッド用内部電極4aとの境界部分に電極下地層(図示せず)が十分に付着しなくとも、パッド用内部電極4aと側壁5との間の腐食防止層15により、電解メッキ処理工程におけるパッド用内部電極4aの腐食を抑制することができる。その結果、パッド用内部電極4a内部電極4の断線を抑制し、歩留まり率を向上することができるのである。
【0061】
尚、本実施の形態1の弾性波素子1を、ラダー型フィルタだけでなくDMSフィルタ等の他のフィルタ(図示せず)に適用しても構わない。さらに、弾性波素子1を、このフィルタと、フィルタに接続された半導体集積回路素子(図示せず)と、半導体集積回路素子(図示せず)に接続された再生装置とを備えた電子機器に適用しても良い。これにより、フィルタ、及び電子機器における通信品質を向上することができるのである。
【0062】
また、参考ではあるが、本実施の形態1においては、弾性波素子1の構成及び製造方法を説明したが、この構成及び製造方法における接続電極12を形成する方法は半導体チップ等の弾性波素子以外の電子部品の構成及び製造方法にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の弾性波素子は、メッキ液による内部電極の断線を抑制するという効果を有し、移動体通信機器などの電子機器に適用可能なものである。
【符号の説明】
【0064】
1 弾性波素子
2 圧電基板
3 IDT電極
4 内部電極
5 側壁
6 接着層
7 蓋体
8 空間
9 電極下地層
10 絶縁体
11 外部電極
12 接続電極
13 蓋体下地層
14 蓋体補強層
15 腐食防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の上に設けられたIDT電極と、
前記圧電基板の上に設けられると共に前記IDT電極に電気的に接続された内部電極と、
前記内部電極の上であって前記IDT電極の周囲に設けられた側壁と、
前記側壁の上に前記IDT電極上の空間を覆うように設けられた蓋体と、
前記内部電極の上であって前記空間及び前記側壁の外側に設けられた電極下地層と、
前記電極下地層の上に設けられた接続電極とを備え、
前記内部電極と前記側壁との間に設けられかつ前記側壁の外側に突出すると共に前記内部電極よりもメッキ液溶解性の低い材質からなる腐食防止層を備えた弾性波素子。
【請求項2】
前記腐食防止層は金属からなる請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項3】
前記腐食防止層はチタン、クロム、モリブデン、タングステン、金、白金の少なくとも一種からなる単体金属、又はこれらを主成分とする合金からなる請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項4】
前記腐食防止層は、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化ケイ素を主成分とする媒質からなる請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項5】
前記腐食防止層は酸化金属からなる請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項6】
前記腐食防止層は前記側壁の底面全面と前記内部電極との間に設けられた請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項7】
前記蓋体は前記側壁の上面の外縁部より内側に形成された請求項1に記載の弾性波素子。
【請求項8】
請求項1に記載の弾性波素子と、
前記弾性波素子に接続された半導体集積回路素子と、
前記半導体集積回路素子に接続された再生装置とを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−23930(P2011−23930A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166541(P2009−166541)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】