説明

弾性表面波デバイス

【課題】SH波を利用したSAWデバイスの通電時の周波数シフトを低減する方法を提供する。
【解決手段】水晶基板11は、Yカット水晶基板の回転角θを結晶軸Zより反時計方向に約−50°とし、結晶軸Xに対し90°±5°方向(Z’軸方向)に伝搬するSH波型表面波を励起する基板を用いる。そして、水晶基板11のZ’軸方向に沿ってアルミニウム、又はアルミニウムを主成分とする合金のIDT電極12と、その両側にグレーティング反射器13a、13bとを配置して、SH波型SAW共振子を構成する。また、前記IDT電極12を構成する電極指の電極指幅/(電極指幅+電極指間のスペース)をライン占有率mrとした時に、ライン占有率mrが、0.41<mr<0.53を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波デバイスに関し、特にSH(Shear Horizontal)波を利用した弾性表面波デバイスであって、通電時の周波数シフトを低減した弾性表面波デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:以下、SAWと称す)デバイスは移動体通信用端末や車載用機器等の部品として幅広く利用され、小型であること、Q値が高いこと、周波数温度特性が優れていること等が強く要求されている。
これらの要求を実現するSAWデバイスとして、STカット水晶基板を用いたSAWデバイスがある。STカット水晶基板は本来、結晶X軸を回転軸としてXZ面を結晶Z軸より−Y軸方向に42.75°回転した面(XZ’面)を持つ水晶板のカット名であったが、近年では前記回転角度が42.75°の場合だけでなく、42.75°未満の場合(例えば前記回転角度が33°の場合)においても、STカット水晶基板と称される場合が少なくない。STカット水晶基板においては、結晶X軸方向に伝搬するレイリー波と呼ばれる(P+SV)波であるSAW(以下、STカット水晶SAWと称す)を利用するのが一般的である。STカット水晶SAWデバイスの用途は、発振素子として用いられるSAW共振子や、移動体通信端末のRF段とIC間に配置されるIF用フィルタなど幅広く存在する。
【0003】
STカット水晶SAWデバイスが小型でQ値の高いデバイスを実現できる理由として、SAWの反射を効率良く利用できる点が挙げられる。以下、図12に示すSTカット水晶SAW共振子を例に説明する。該STカット水晶SAW共振子は、STカット水晶基板101上にそれぞれ互いに間挿し合う複数本の電極指を有する櫛形電極(以下、IDT電極と称す)102を配置し、該IDT電極102の両側にSAWを反射する為のグレーティング反射器103a、103bを配置した構造である。STカット水晶SAWは圧電基板の表面に沿って伝搬する波であるので、グレーティング反射器103a、103bにより効率良く反射され、SAWのエネルギーをIDT電極102内に十分閉じ込めることができるので、小型で且つQ値の高いデバイスが得られる。
【0004】
更に、SAWデバイスを使用する上で重要な要素に周波数温度特性がある。上述のSTカット水晶SAWにおいては、周波数温度特性の1次温度係数が零であり、その特性は2次曲線で表され、頂点温度を使用温度範囲の中心に位置するように調整すると周波数変動量が格段に小さくなるので周波数安定性に優れていることが一般的に知られている。
しかし、前記STカット水晶SAWデバイスは、1次温度係数は零であるが、2次温度係数は−0.034(ppm/℃2)と比較的大きいので、使用温度範囲を拡大すると周波数変動量が極端に大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
前記問題を解決する手法として、Meirion Lewis,“Surface Skimming Bulk Waves, SSBW”,IEEE Ultrasonics Symp.Proc., pp.744〜752(1977)及び特公昭62−016050号に開示されたSAWデバイスがある。このSAWデバイスは、図13に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−50°回転した付近に設定し、且つ、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して垂直方向(Z’軸方向)にしたことが特徴である。なお、前述のカット角をオイラー角で表示する場合は(0°,θ+90°,90°)=(0°,40°,90°)となる。このSAWデバイスは、圧電基板の表面直下を伝搬するSH波をIDT電極によって励起し、その振動エネルギーを電極直下に閉じ込めることを特徴としていて、周波数温度特性が3次曲線となり、使用温度範囲における周波数変動量が極めて少なくなるので良好な周波数温度特性が得られる。
【0006】
しかし、前記SH波は基本的に基板内部に潜って進んでいく波である為、圧電基板表面に沿って伝搬するSTカット水晶SAWと比較してグレーティング反射器によるSAWの反射効率が悪い。従って、小型で高QなSAWデバイスを実現し難いという問題がある。また、前述の先行文献においてもSAWの反射を利用しない遅延線としての応用については開示されているものの、SAWの反射を利用したデバイスへの応用は提案されておらず、発振素子やフィルタ素子としての実用化は困難であると言われていた。
この問題を解決すべく、特公平01−034411号では、図14に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを−50°付近に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対し垂直方向(Z’軸方向)にした圧電基板111上に800±200対もの多対のIDT電極112を形成することにより、グレーティング反射器を利用せずIDT電極112自体の反射だけでSAWエネルギーを閉じ込め高Q化を図った所謂多対IDT型SAW共振子が開示されている。
【0007】
しかし、前記多対IDT型SAW共振子はグレーティング反射器を設けたSAW共振子と比較して効率的なエネルギー閉じ込め効果が得られず、高いQ値を得るのに必要なIDT電極の対数が800±200対と非常に多くなってしまうので、STカット水晶SAW共振子よりもデバイスサイズが大きくなってしまい、近年の小型化の要求に応えることができないという問題があった。
また、前記特公平01−034411号公報に開示されているSAW共振子においては、IDT電極にて励振されたSAWの波長をλとした時、電極膜厚を2%λ以上、好ましくは4%λ以下にすることによりQ値を高めることができるとされており、共振周波数200MHzの場合、4%λ付近でQ値が飽和に達するが、その時のQ値は20000程度しか得られずSTカット水晶SAW共振子と比較してもほぼ同等のQ値しか得られない。この原因として、膜厚が2%λ以上4%λ以下の範囲ではSAWが圧電基板表面に十分集まっていないので反射が効率良く利用できないことが考えられる。
【0008】
そこで、WO2005/099089にて開示されているように、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板上に、アルミニウム、又はアルミニウムを主成分とする合金からなるIDT電極を形成し、該IDT電極のSAWの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12としたSAWデバイスが発明された。当該発明によれば、本来、圧電基板内部に潜って進んでいく波を基板表面に集中させてグレーティング反射器等によりSAWの反射を効率良く利用することができるので、従来のSTカット水晶SAWデバイスと比較して小型でQ値が高く、且つ周波数温度特性に優れたSAWデバイスが実現できる。
【特許文献1】特公昭62−016050号公報
【特許文献2】特公平01−034411号公報
【特許文献3】WO2005/099089
【特許文献4】特開2006−165746公報
【非特許文献1】Meirion Lewis,“Surface Skimming Bulk Waves,SSBW”,IEEE Ultrasonics Symp.Proc.,pp.744〜752(1977)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、SAW共振子や、SAWフィルタなどのSAWデバイスにおいて、重要な特性の1つとして、通電時における周波数シフト特性がある。通電時における周波数シフトは、SAWデバイスに形成された電極に長時間電流を流して電極を励振させると、電極を形成している金属材料の粒子が移動するなどの原因により共振周波数が変動することに起因して発生する。
しかしながら、上述した従来の特許文献においては、SAWデバイスの特性を決定する各種のパラメータと通電時の周波数シフト特性との関係について検討されておらず、通電時の周波数シフトを低減する方法について記載されていない。
本発明は、上述したような問題を解決するためになされたものであって、SH波を利用したSAWデバイスの通電時の周波数シフトを低減する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係るSAWデバイスは、圧電基板と、該圧電基板上に形成されアルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金からなるIDT電極とを備え、励振波をSH波としたSAWデバイスであって、前記圧電基板は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板であり、励振するSAWの波長をλとした時、前記IDT電極の波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とし、前記IDT電極を構成する電極指の電極指幅/(電極指幅+電極指間のスペース)をライン占有率mrとした時に、ライン占有率mrが、0.41<mr<0.53を満足するものであることを特徴としている。
このような本発明のSAWデバイスによれば、ライン占有率mrを、0.41<mr<0.53の範囲に収めることにより、従来のSAWデバイスと比べて通電時の周波数シフトが小さくなる特性が得られ、SAWデバイスの通電時の経年変化による周波数変動を低減できることから、SAWデバイスの性能を向上させる上で大きな効果を発揮する。
【0011】
また、本発明に係るSAWデバイスは、前記IDT電極の表面上に陽極酸化膜を形成したことを特徴としている。
このような本発明のSAWデバイスによれば、SAWデバイスを形成する電極の表面上に陽極酸化膜を形成することにより、SAWデバイスの信頼性を向上させる上で大きな効果を発揮する。
また、本発明に係るSAWデバイスは、前記圧電基板の主表面をエッチング処理した後、該圧電基板の主表面に前記櫛形電極を形成したことを特徴としている。
このような本発明のSAWデバイスによれば、圧電基板の主表面に所定の厚みのエッチングを施すことによって圧電基板の結晶面を主表面上に露出させた後、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とした合金からなる電極を形成したので、アルミニウム膜またはアルミニウム合金膜の結晶性が高まり、通電によるアルミニウム粒子の移動が抑圧される。よって、SAWデバイスの周波数変動などの経時変化が低減され、本発明におけるライン占有率を所定の範囲に収めることとあわせて、SAWデバイスの周波数シフトをさらに低減することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係るSAWデバイスは、前記圧電基板上にIDT電極を少なくとも1個配置した1ポートのSAW共振子であることを特徴としている。
このような本発明のSAWデバイスによれば、1ポートのSAW共振子に本発明を適用させることにより、小型でQ値が高く、通電時の周波数シフト特性が向上したSAWデバイスを実現することができる。
また、本発明に係るSAWデバイスは、前記圧電基板のSAWの伝搬方向に沿ってIDT電極を少なくとも2個配置した2ポートのSAW共振子であることを特徴としている。
このような本発明のSAWデバイスによれば、2ポートのSAW共振子に本発明を適用させることにより、小型でQ値が高く、通電時の周波数シフト特性が向上したSAWデバイスを実現することができる。
また、本発明に係るSAWデバイスは、前記圧電基板のSAWの伝搬方向に対して複数個のSAW共振子を平行に近接配置した横結合型多重モードフィルタであることを特徴としている。
このような本発明のSAWデバイスによれば、横結合型多重モードフィルタに本発明を適用させることにより、小型で低損失な、通電時の周波数シフト特性が向上したSAWデバイスを実現することができる。
【0013】
また、本発明に係るSAWデバイスは、前記圧電基板のSAWの伝搬方向に沿って複数個のIDT電極を配置した縦結合型多重モードフィルタであることを特徴としている。
このような本発明のSAWデバイスによれば、縦結合型多重モードフィルタに本発明を適用させることにより、小型で低損失な、通電時の周波数シフト特性が向上したSAWデバイスを実現することができる。
また、本発明に係るSAWデバイスは、前記圧電基板上に複数個のSAW共振子を梯子状に接続したラダー型弾性表面波フィルタあることを特徴としている。
このような本発明のSAWデバイスによれば、ラダー型弾性表面波フィルタに本発明を適用させることにより、小型で低損失な、通電時の周波数シフト特性が向上したSAWデバイスを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
本発明を説明する前に本発明の前提となる特許文献3の弾性表面波デバイスについて説明する。
この場合の弾性表面波デバイスは、図1(a)に示すように、Yカット水晶基板の回転角θを結晶軸Zより反時計方向に約−50°とし、結晶軸Xに対し90°±5°方向に伝搬するSH波型SAWである。また、図1(b)は、SH波型SAW共振子の構成を示す図であって、水晶基板1の主面上にZ’軸方向に沿ってIDT電極2を配置すると共に、該IDT電極2の両側にグレーティング反射器3a、3bを配設してSH波型SAW共振子を構成する。IDT電極2は互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対の櫛形電極より構成され、それぞれの櫛形電極よりリード電極を伸ばす。IDT電極2、グレーティング反射器3a、3bの電極材料はアルミニウム、又はアルミニウムを主成分とする合金とし、IDT電極2、グレーティング反射器3a、3bの電極膜厚HをSH波型表面波の波長λで基準化したH/λを基準化電極膜厚とし、IDT電極2を構成する電極指幅をL、電極指幅Lと電極指間のスペースSとの和を(L+S)としたとき、L/(L+S)をライン占有率mrとし、特に記述しないときは、mr=0.60を用いる。
【0015】
図1(b)においては、電極膜厚H/λを、従来の値より大きく設定することで、SH波型SAWを圧電基板表面に集中させて、グレーティング反射器によりSH波型表面波の反射を効率良く利用できるようにし、少ないIDT電極対数やグレーティング反射器本数でもSH波型表面波エネルギーをIDT電極内に閉じ込めるようにしてデバイスサイズの小型化を図った。
図2は、図1(b)に示したSH波型SAW共振子において、圧電基板1に−51°回転Yカット90°X伝搬水晶基板(オイラー角表示では(0°,39°,90°))を用い、共振周波数を315MHz、電極膜厚H/λを0.06、IDT電極2の対数を100対、グレーティング反射器3a、3bの本数を各々100本として構成したSH波型SAW共振子の周波数温度特性(実線)を示した図である。また、比較の為に、圧電基板の大きさを同一にしたSTカット水晶SAW共振子の周波数温度特性を破線で示し、重ね書きした。
【0016】
図3は、特許文献3のSH波型SAW共振子における電極膜厚H/λとQ値の関係を示したものであり、共振子設計条件は前述と同等である。同図より、0.04<H/λ<0.12の範囲においてSTカット水晶SAW共振子のQ値(15000)を上回る値が得られることが分かる。更に、0.05<H/λ<0.10の範囲に設定することにより20000以上もの高いQ値が得られる。
また、特許文献2にある多対IDT型SAW共振子と本発明のSH波型SAW共振子のQ値を比較すると、特公平01−034411号で得られているQ値は共振周波数が207.561(MHz)における値であり、これを本実施例で適用している共振周波数315(MHz)に変換するとQ値は15000程度となり、STカット水晶SAW共振子とほぼ同等である。また、共振子のサイズを比較すると、特許文献2の多対IDT型SAW共振子は800±200対もの対数が必要なのに対し、本発明ではIDTとグレーティング反射器の両方で200対分の大きさで十分であるので格段に小型化できる。従って、電極膜厚を0.04<H/λ<0.12の範囲に設定し、グレーティング反射器を設けて効率良くSH波型SAWを反射することで、特許文献2に開示されている多対IDT型SAW共振子よりも小型で且つQ値が高いSAWデバイスを実現できる。
【0017】
次に、図4は、図1(b)に示したSH波型SAW共振子における電極膜厚H/λと2次温度係数の関係を示したものであり、共振子設計条件は前述と同等である。図4より高いQ値が得られる0.04<H/λ<0.12の範囲において、STカット水晶SAW共振子の2次温度係数−0.034(ppm/℃2)よりも良好な値が得られた。
以上より電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12の範囲に設定することで、STカット水晶SAWデバイス、及び特許文献2に開示されているSAWデバイスよりも小型でQ値が高く、且つ周波数安定性に優れたSAWデバイスを提供できることが分かった。
なお、これまでカット角θを−51°とした場合についてのみ示してきたが、図1(b)に示したSAW共振子においてはカット角θを変えても膜厚依存性は大きく変化せず、−51°から数度ずれたカット角においても電極膜厚を0.04<H/λ<0.12の範囲に設定することで、良好なQ値と2次温度係数が得られる。
【0018】
ところで、特許文献3のSH波型SAW共振子は、非常に広い温度範囲では3次的な温度特性となるが、特定の狭い温度範囲では2次特性と見なすことができ、その頂点温度Tpは電極膜厚やカット角によって変化する。従って、いくら周波数温度特性が優れていても頂点温度Tpが使用温度範囲外となってしまうと周波数安定性は著しく劣化してしまうので、実用的な使用温度範囲(−50℃〜+125℃)において優れた周波数安定性を実現するには、2次温度係数だけでなく頂点温度Tpについても詳細に検討する必要がある。
図5(a)は、図1(b)に示したSH波型SAW共振子においてカット角θを−50.5°としたときの電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係を示している。図5(a)から明らかなように、電極膜厚H/λを大きくすると頂点温度Tpは下がり、電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係は次の近似式で表わされる。
Tp(H/λ)=−41825×(H/λ)2+2855.4×(H/λ)−26.42・・・(1)
また、−50°近傍のカット角においても切片を除けばおおよそ(1)式が適用できる。
【0019】
また、図5(b)は、図1(b)に示したSAW共振子において電極膜厚H/λを0.06とした時のカット角θと頂点温度Tpの関係を示している。図5(b)から明らかなように、カット角θの絶対値を小さくすると頂点温度Tpは下がり、カット角θと頂点温度Tpの関係は次の近似式で表わされる。
Tp(θ)=−43.5372×θ−2197.14・・・(2)
式(1)及び式(2)から電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とした時に頂点温度Tpを実用的な使用温度範囲(−50〜+125℃)に設定するには、カット角θを−59.9°≦θ≦−48.9°の範囲に設定すれば良いことが分かる。
また、電極膜厚H/λとカット角θの双方を考慮する場合、頂点温度Tpは式(1)及び式(2)から次の近似式で表わされる。
Tp(H/λ,θ)=Tp(H/λ)+Tp(θ)=−41825×(H/λ)2+2855.4×(H/λ)−43.5372×θ−2223.56・・・(3)
式(3)より、頂点温度Tpを使用温度範囲(−50〜+125℃)に設定するには、次式で表される範囲に電極膜厚H/λ及びカット角θを設定すれば良い。
0.9613≦−18.498×(H/λ)2+1.2629×(H/λ)−0.019255×θ≦1.0387・・・(4)
【0020】
このように、特許文献3では、カット角θが−59.9°≦θ≦−48.9°の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、SAWの伝搬方向がX軸に対してほぼ垂直方向として励振されるSH波を用い、IDT電極やグレーティング反射器の電極材料をアルミニウム、またはアルミニウムを主とした合金にて構成し、その電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とすることで、STカット水晶SAWデバイスより小型で、且つQ値が大きく、且つ周波数安定性の優れているSAWデバイスを実現できる。
ここで、より最適な条件について検討すると、電極膜厚H/λは図3よりQ値として20000以上が得られる0.05<H/λ<0.10の範囲に設定するのが好ましい。また、頂点温度Tpをより実用的な使用温度範囲(0°〜+70℃)に設定するためには、カット角θは−55.7°≦θ≦−50.2°の範囲に設定するのが好ましく、更には、式(3)より得られる次式の範囲にカット角θ及び電極膜厚H/λを設定するのが好ましい。
0.9845≦−18.518×(H/λ)2+1.2643×(H/λ)−0.019277×θ≦1.0155・・・(5)
以上では、図5(a)のカット角θを−50.5°とした時の電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係、及び図5(b)の電極膜厚H/λを0.06とした時のカット角θと頂点温度Tpの関係から、頂点温度Tpが実用的な使用温度範囲に入るような電極膜厚H/λとカット角θの関係式を導き出したが、更にカット角θの範囲を広げて実験を行ったところ、より詳細な条件を見出すことができたので以下説明する。
【0021】
図6は、前記SH波型SAW共振子において頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時の水晶基板のカット角θと電極膜厚H/λの関係を示しており、各Tp特性の近似式は以下の通りである。
Tp=−50(℃):H/λ≒−1.02586×10−4×θ3−1.73238×10−2×θ2−0.977607×θ−18.3420
Tp=0(℃):H/λ≒−9.87591×10−5×θ3−1.70304×10−2×θ2−0.981173×θ−18.7946
Tp=+70(℃):H/λ≒−1.44605×10−4×θ3−2.50690×10−2×θ2−1.45086×θ−27.9464
Tp=+125(℃):H/λ≒−1.34082×10−4×θ3−2.34969×10−2×θ2−1.37506×θ−26.7895
図6から、頂点温度Tp(℃)を実用的な範囲である−50≦Tp≦+125に設定するには、Tp=−50℃及びTp=+125℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−1.34082×10−4×θ3−2.34969×10−2×θ2−1.37506×θ−26.7895<H/λ<−1.02586×10−4×θ3−1.73238×10−2×θ2−0.977607×θ−18.3420となるようにカット角θ及び電極膜厚H/λを設定すれば良いことが分かる。また、この時の電極膜厚H/λの範囲は、従来のSTカット水晶デバイスより優れた特性が得られる0.04<H/λ<0.12とし、カット角θの範囲は図6の点Aから点Bに示す範囲の−64.0<θ<−49.3とする必要がある。
【0022】
更により最適な条件について検討すると、頂点温度Tp(℃)はより実用的な使用温度範囲である0≦Tp≦+70に設定するのが望ましい。Tp(℃)を前述の範囲に設定するには、図6に示すTp=0℃及びTp=+70℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−1.44605×10−4×θ3−2.50690×10−2×θ2−1.45086×θ−27.9464<H/λ<−9.87591×10−5×θ3−1.70304×10−2×θ2−0.981173×θ−18.7946となるようにカット角θ及び電極膜厚H/λを設定すれば良い。また、電極膜厚H/λはQ値が20000以上得られる0.05<H/λ<0.10の範囲にするのが望ましく、電極膜厚を前述の範囲とし、頂点温度Tp(℃)を0≦Tp≦+70の範囲内に設定するには、カット角θを図6の点Cから点Dに示す範囲の−61.4<θ<−51.1に設定する必要がある。
以上、詳細に検討した結果、カット角θが−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、SAWの伝搬方向がX軸に対してほぼ垂直方向として励振されるSH波を用い、IDT電極やグレーティング反射器の電極材料をアルミニウム、またはアルミニウムを主とした合金にて構成し、その電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10とすることで、STカット水晶SAWデバイスよりQ値が大きく優れた温度特性が得られると共に、頂点温度Tpを実用的な使用温度範囲内に設定できる。
【0023】
ところで、上述した特許文献3においてはSAWデバイスの特性を決定する各種のパラメータと通電時の周波数シフト特性との関係については検討されておらず、通電時の周波数シフトを低減する方法について記載されていない。
そこで、本願発明者らは、鋭意検討を行った結果、通電時の周波数シフトの低減を図る方法を見出した。以下、本実施形態のSAWデバイスについて詳細に説明する。
図7は、本発明の実施形態に係るSH波型SAW共振子の構成を示す図である。
水晶基板11は、Yカット水晶基板の回転角θを結晶軸Zより反時計方向に約−50°とし、結晶軸Xに対し90°±5°方向(Z’軸方向)に伝搬するSH波型SAWを励起する基板を用いる。そして、水晶基板11のZ’軸方向に沿ってアルミニウム、又はアルミニウムを主成分とする合金のIDT電極12と、その両側にグレーティング反射器13a、13bとを配置して、SH波型SAW共振子を構成する。IDT電極12は、互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対の櫛形電極より形成され、それぞれの櫛形電極よりリード電極を伸ばして二端子とする。
なお、水晶基板11のカット角θ、電極材料、IDT電極の基準化電極膜厚H/λ(λ
はSH波型SAWの波長)等は前述した特許文献3に基づくものとする。
【0024】
本願発明者らは、SAWデバイスの通電時の周波数シフトの大きな原因が、SAWデバイスに形成したIDT電極に長時間電流を流し、IDT電極を励振した際に、アルミニウムの成分である粒子が移動して周波数変動を起こすことであると考えられていることから、SAWデバイスを構成するIDT電極のライン占有率の値について着目した。前述したように、ライン占有率とは、IDT電極12を構成する電極指幅をLとし、電極指幅Lと電極指間のスペースSとの和を(L+S)としたとき、L/(L+S)により求めたものである。そこで、図7に示した性能のSAW共振子について、ライン占有率mrを変化させた際の周波数シフトΔFの特性を測定した。
図8は、その代表的なサンプルのライン占有率mrを変化させた際の周波数シフトΔF特性のグラフ図を示す。また、図8のグラフ図は、SAW共振子に、+5dBmのレベルで周波数433.92MHzの測定周波数信号を通電した際の特性であり、周囲温度25℃の環境で24時間放置した後の周波数シフトを測定したものである。前述した特願2004−310452においては、SAWデバイスの評価を周波数315MHzで行っているが、ライン占有率を変化させた際の周波数シフト特性の測定に当たっては、測定周波数信号をより高周波として厳しい条件での周波数シフト特性を測定した。図8のグラフ図に示すように、ライン占有率mrを0.41<mr<0.53の範囲とすると、周波数シフトΔFは2.18ppm以内となり、先行技術において説明したように、mrを0.6と設定した場合の周波数シフトΔFがおおよそ0.57ppmで有ることに比べ、格段に周波数シフト特性が改善されることを見出した。また、好ましくは、ライン占有率mrを0.47<mr<0.5の範囲とすれば、周波数シフトΔFは、1ppm以内となることが分かる。
【0025】
次に、図8に示したグラフ図において、ライン占有率mrを0.53以上とすると、周波数シフト特性の傾斜が大きくなり、周波数シフトΔFが増加しているが、これは、次のような理由によるものと推測される。SAW共振子を構成しているIDT電極は、電極材料であるアルミニウムの粒子の膜が積み重なって出来ている。このIDT電極に通電による励振や機械的変移が加わると、IDT電極の密度の具合や局所的な応力によりアルミニウムの粒子が移動して共振周波数が変化する。この応力は、IDT電極の+電極指と−電極指とが互いに逆方向に励振されることにより生ずるもので、電極指のエッジの部分がもっとも大きくなることが知られている。そこで、ライン占有率が大きくて電極指が太くなっていると、電極指間のスペースが狭くなり、従って、電極指に加わる応力が増加し、通電時の周波数シフトも大きくなると考えられる。
次に、図8に示したグラフ図において、通電時の周波数シフト特性の測定は、SAW共振子に、+5dBmのレベルの測定周波数信号を24時間通電した後に行ったが、これは、例えば、SAW共振子を微弱電波を利用したキーレスエントリシステムに使用した場合に当てはめると、キーレスエントリシステムにおけるSAW共振子の励振レベルは、+5dBmより一桁以上小さいレベルであり、また動作時間も1回当たり数msec程度であることを考えると、5年以上のエージング特性を測定した場合と同等の評価試験である。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、IDT電極の電極材料は、前述したアルミニウムやそれを主成分とした合金のほか、金、銀、銅、タングステン、タンタルなど、またはそれらを主成分とした合金を用いることも可能であるが、材料費が安く、成膜やエッチング加工が容易であるアルミニウムやそれを主成分とした合金を用いるのが最も好ましい。
また、IDT電極やグレーティング反射器の表面上にアルミナのような陽極酸化膜や、SiO2等の保護膜を施したり、電極の上部あるいは下部に密着層あるいは耐電力向上等の目的で別の金属薄膜を形成したりした場合においても、本発明を適用することにより、同様の効果を得られることは明らかである。
また、水晶基板の主表面を所定の厚さでエッチングした後、IDT電極を形成したSAWデバイスが実用化されているが、この手法を採用したSAWデバイスであっても本発明を適用することにより、同様の効果を得ることができる。IDT電極を形成するアルミニウム膜の結晶の結晶粒界が双晶粒界であると、隣り合う結晶粒同士が双晶の関係にあり、粒界エネルギーが小さくなることが知られており、その目的のため、例えば水晶基板の主表面を所定の厚さでエッチングした後、IDT電極を形成する。従って、そのような状態のIDT電極に長期間の振動が加えられてもアルミニウム膜を構成する粒子は移動しにくく、長期間、SAWデバイスを通電しても共振周波数は、経時変化しにくい。そこで、この手法を採用することにより、本発明におけるライン占有率を所定の範囲に収めることとあわせて、SAWデバイスの通電時の周波数シフトをさらに低減することが可能となる。
【0027】
次に、これまで、図7に示すような1ポートのSAW共振子についてのみ言及してきたが、それ以外のSAWデバイスにおいても本発明を適用できる。以下、種々のSAWデバイスの構造について説明する。
図9は水晶基板21上にSAWの伝搬方向に沿ってIDT電極22、23を配置し、その両側にグレーティング反射器24a、24bを配置した2ポートSH波型SAW共振子を示しており、1ポートSH波型SAW共振子と同じく高いQ値を実現できる。
図10は、SAW共振子フィルタの1つの方式としてSAW共振子の音響結合を利用した2重モードSAW(DMS)フィルタを示しており、図10(a)は、水晶基板31上にSAW共振子32を伝搬方向に対して平行に近接配置した横結合型DMSフィルタであり、図10(b)は水晶基板41上にIDT電極42からなるSH波型SAW共振子をSAWの伝搬方向に沿って配置した2ポートの縦結合型DMSフィルタである。前記横結合型DMSフィルタは伝搬方向に対し垂直方向の音響結合を利用し、前記縦結合型DMSフィルタは伝搬方向に対し水平方向の音響結合を利用している。これらDMSフィルタは平坦な通過帯域と良好な帯域外抑圧度が得られる特徴がある。
なお、前記縦結合型DMSフィルタは、通過域近傍を高減衰にするためにSAW共振子を接続する場合がある。また、更に高次のモードを利用した多重モードSAWフィルタや、伝搬方向に対し垂直方向と水平方向の双方で音響結合させた多重モードSAWフィルタにも応用できる。
【0028】
図11は、SAW共振子フィルタの別の方式として、水晶基板51上に複数の1ポートSAW共振子52を直列、並列、直列と梯子(ラダー)状に配置してフィルタを構成したラダー型SAWフィルタを示している。ラダー型SAWフィルタは前記DMSフィルタと比較して通過域近傍の減衰傾度が急峻なフィルタ特性が得られる。
以上、本発明に係るSAWデバイスについて具体的な実施形態を説明したが、ライン占有率mrを、0.41<mr<0.53の範囲に収めることにより、従来のSAWデバイスと比べて格段と優れた通電時の周波数シフト特性が得られ、SAWデバイスを使用する上で大きな効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は先行技術のSH波型SAW共振子の基板のカット角θと電極の配置を示す図、(b)は先行技術のSH波型SAW共振子の構成を示す図である。
【図2】先行技術のSH波型SAW共振子の周波数温度特性と、STカット水晶SAW共振子の周波数温度特性とを重ね書きした図である。
【図3】先行技術のSH波型SAW共振子の電極膜厚H/λとQ値との関係を示す図である。
【図4】先行技術のSH波型SAW共振子の電極膜厚H/λと2次温度係数との関係を示す図である。
【図5】(a)は先行技術のSH波型SAW共振子の電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係を示す図、(b)はカット角θと頂点温度Tpの関係を示す図である。
【図6】SH波型SAW共振子の頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125であるときのカット角θと電極膜厚H/λの関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るSH波型SAW共振子の構成を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るSH波型SAW共振子の通電時の周波数シフト特性を示す図である。
【図9】2ポートSH波型SAW共振子の構成を示す図である。
【図10】(a)は横結合型DMSフィルタの構成を示す図、(b)は縦結合型DMSフィルタの構成を示す図である。
【図11】ラダー型SAWフィルタの構成を示す図である。
【図12】従来のSTカット水晶SAW共振子の構成を示す図である。
【図13】(a)(b)は−50°回転Yカット90°X伝搬水晶基板を説明する図である。
【図14】従来の多対IDT型SAW共振子の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1、11、21、31、41、51…水晶基板、2、12、22、23、42…IDT電極、3a、3b、13a、13b、24a、24b…グレーティング反射器、32…SAW共振子、52…1ポートSAW共振子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、該圧電基板上に形成されアルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金からなる櫛形電極とを備え、励振波をSH波とした弾性表面波デバイスであって、
前記圧電基板は、回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より反時計方向に−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板であり、
励振する弾性表面波の波長をλとした時、前記櫛形電極の波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とし、
前記櫛形電極を構成する電極指の電極指幅/(電極指幅+電極指間のスペース)をライン占有率mrとした時に、ライン占有率mrが、0.41<mr<0.53を満足することを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記櫛形電極の表面上に陽極酸化膜を形成したことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記弾性表面波デバイスは、前記圧電基板の主表面をエッチング処理した後、該圧電基板の主表面に前記櫛形電極を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記弾性表面波デバイスは、前記圧電基板上に櫛形電極を少なくとも1個配置した1ポートの弾性表面波共振子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記弾性表面波デバイスは、前記圧電基板の弾性表面波の伝搬方向に沿って櫛形電極を少なくとも2個配置した2ポートの弾性表面波共振子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記弾性表面波デバイスは、前記圧電基板の弾性表面波の伝搬方向に対して複数個の弾性表面波共振子を平行に近接配置した横結合型多重モードフィルタであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
前記弾性表面波デバイスは、前記圧電基板の弾性表面波の伝搬方向に沿って複数個の櫛形電極を配置した縦結合型多重モードフィルタであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項8】
前記弾性表面波デバイスは、前記圧電基板上に複数個の弾性表面波共振子を梯子状に接続したラダー型弾性表面波フィルタあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−301020(P2008−301020A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143000(P2007−143000)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】