説明

弾性表面波フィルタおよび弾性表面波共振器

【課題】高Q,低挿入損失で電極へのダメージに対する耐性の高いSAWフィルタ及びSAW共振器を得る。
【解決手段】弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数の交差電極指及びこれら交差電極指を接続するバスバーを有する櫛形電極を対向させかつ交差電極指同士を互いに交差させてなるIDTを圧電基板上に備えたSAWフィルタで、前記IDTは、交差電極指から分岐し、かつ交差電極指同士が交差する交差部とバスバーとの間の非交差部内に位置する、1つ以上の分岐電極指を備え、当該分岐電極指は、弾性表面波の伝搬方向に略直交する方向に延びる分岐電極指本体部を含む。縦結合多重モード型フィルタ、ラダー型フィルタ、共振器、縦結合多重モード型フィルタに共振器を直列に接続したフィルタ等の何れにも適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波フィルタおよび弾性表面波共振器に係り、特に、移動体通信などに使用される共振器型の弾性表面波フィルタや弾性表面波共振器において高いQ値(共振周波数と反共振周波数でのインピーダンス比)および低挿入損失を実現するデバイス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電効果によって発生する弾性表面波(Surface Acoustic Wave/以下、SAWということがある)を利用したSAWデバイスは、小型軽量で信頼性に優れることから、移動体通信機器の送受信フィルタやアンテナデュプレクサなどに近年広く使用されている。
【0003】
かかるSAWデバイスは、一般に、弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数の交差電極指とこれら交差電極指を接続するバスバーとを有する櫛形電極を互いに対向させかつ交差電極指同士を交差させた交差指状電極(インターデジタルトランスデューサ:Interdigital Transducer/以下、IDTということがある)を圧電基板上に設けることにより共振器を形成し、これを電気的にあるいは音響的に接続することにより構成される。
【0004】
共振器の接続構造としては、複数のIDTを弾性表面波の伝搬経路内に配して音響的に結合させる構造(例えば縦結合多重モード型SAWフィルタ)や、梯子形に複数の共振器を接続するラダー型構造等が知られている。また、各共振器の両端部に弾性表面波を閉じ込めるために反射器が設けられたり、IDTの電極周期や対数、交差幅等の幾何学形状を様々に変更することによって電気特性を改善する試みがなされている。
【0005】
例えば、このようなSAWデバイスを開示するものとして下記特許文献があるが、これらの文献記載の発明では、それぞれ次のような工夫がなされている。
【特許文献1】特開2005‐295049号公報
【特許文献2】特開2002‐314366号公報
【特許文献3】特開2003‐309448号公報
【特許文献4】特開2005‐159835号公報
【特許文献5】特開平11‐225038号公報
【0006】
特許文献1(特開2005‐295049)は、バスバーに非導電部と導電部とを一定のピッチで繰り返して設けバスバー部のSAWの音速を低下させ、更に櫛形電極の電極指の中心線に対して前記導電部の中心線をシフトさせることにより、挿入損失と帯域幅の改善を図り、更にIDT電極の欠損を防ぐ。
【0007】
特許文献2(特開2002‐314366)では、バスバーからダミー電極を延長し、交差電極指先端との距離を小さくすることにより、SSBW(Surface Skimming Bulk Wave)を抑圧し、フィルタの平坦度を高める。
【0008】
特許文献3(特開2003‐309448)では、縦結合共振子型フィルタに直列に接続されたSAW共振器において、バスバーから延長したダミー電極と交差電極指との距離を小さくし、あるいはダミー電極の長さを適切にすることによりSSBWに起因するスプリアスをシフトさせることで、挿入損失、帯域幅およびVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)の改善を図る。
【0009】
特許文献4(特開2005‐159835)は、縦結合多重モードフィルタにおいて、弾性表面波の斜め方向への放射を抑制するように、IDTの電極指とバスバーとの間にダミー電極指224を設ける。これにより、主導波路の外側の音速を、導波路である櫛形電極の交差部における弾性表面波速度より遅くし、弾性表面波の斜め放射を抑制することで挿入損失と帯域幅を改善する。
【0010】
特許文献5(特開平11‐225038)は、バスバーから交差電極指に対して複数の電極を接続するようにして、IDT電極の欠損を防ぐものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年、移動体通信機器をはじめとする電子機器の高機能・多機能化ならびに高周波化に伴ってSAWデバイスへの特性要求も一段と厳しくなる傾向にある。例えば、共振器やフィルタの特性として、高いQ値と同時に低挿入損失の実現、製造時・使用時の温度や電力に対する優れた耐性、様々な設計仕様に対する適応性(設計の自由度)などが求められている。
【0012】
ところが、上記特許文献記載の発明を含め従来の手法では、バスバー自体の構造を変えたりダミー電極を付加するなどバスバーに何らかの加工を施すことにより特性改善を図るものではあるが、これらバスバー自体の構造を変える従来の手法では、上記要求に応えるのに十分とは言えない面がある。
【0013】
なぜなら、バスバー自体の構造を変える従来の手法(特許文献1等)では、IDTの電極交差部に近い部分に共通の電極(バスバーの一部)が存在することとなり、このため、非交差部(IDTの電極交差部とバスバーとの間の領域)において弾性表面波音速を下げることが難しく、電極の交差部に弾性表面波を十分に閉じ込めることが出来ないからである。
【0014】
また、SAWデバイスでは、製造加工中や使用状態において高温に晒され、あるいは圧電基板に蓄積された静電気によって高電圧が印加されることにより、極めて薄くかつ微細化されたIDT電極がダメージを受けることがあるが、これらのダメージは、特に面積の広いバスバー部分に生じることが多い。したがって、バスバーの構造変更により特性改善を図るデバイス構造では、特性改善の効果が喪失される可能性があり、電極ダメージに対する耐性の点で不利な面もある。
【0015】
したがって、本発明の目的は、SAWデバイスの電気特性(特にQ値および挿入損失)と電極へのダメージに対する耐性を一層向上させるとともに、これら特性改善および耐性向上が可能な新たなデバイス構造を提示することによりSAWデバイスの設計の自由度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係るSAW(弾性表面波)フィルタは、弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数の交差電極指およびこれら交差電極指を接続するバスバーを有する櫛形電極を対向させかつ交差電極指同士を互いに交差させてなる交差指状電極を、圧電基板上に備えたSAWフィルタであって、前記交差指状電極は、前記交差電極指から分岐し、かつ前記交差電極指同士が交差する交差部と前記バスバーとの間の非交差部内に位置する、1つ以上の分岐電極指を備え、当該分岐電極指は、弾性表面波の伝搬方向にほぼ直交する方向に延びる分岐電極指本体部を含む。
【0017】
本発明のSAWフィルタは、バスバーの構造変更によらず、IDT(交差指状電極)の交差電極指に変更を加えることにより、特性改善とダメージに対する耐性の向上を図るものである。
【0018】
すなわち、IDTの電極交差部(交差電極指同士が交差した領域)とバスバー間の領域(電極の非交差部)内に分岐電極指を設ける。この分岐電極指は、弾性表面波の伝搬方向にほぼ直交する方向に延びる分岐電極指本体部を含んでおり、当該分岐電極指本体部を非交差部に配置することで、交差部の外側領域における弾性表面波の音速を下げ、交差部内に弾性表面波を閉じ込め、交差部外への弾性表面波の漏れを防ぐことが出来る。
【0019】
本発明では特に、弾性表面波の音速を下げる電極は、バスバーから延長したものでなく交差電極指から分岐させたものであり、またバスバー自体の形状変更(前記特許文献1のようにバスバーに非導電部を設ける)を行うものでもないから、交差部に近い部分に共通の電極(弾性表面波の伝搬方向に連続した電極)が存在することがなく、また交差部により近い部分において弾性表面波の音速を低減させることが出来るから、従来と比較して弾性表面波の漏れをより良好に防ぐことができ、高いQ値と低挿入損失を実現することが可能となる。
【0020】
また本発明は、温度負荷等によるダメージを受けやすいバスバーに変更を加えるものではないから、上記改善された電気特性が電極(バスバー)の欠損によって喪失される可能性を低減することができ、バスバーの構造変更やダミー電極に依存する従来のデバイス構造と比較してダメージに対する耐性も大きく、設計の自由度も増大する。
【0021】
尚、本発明はこのように分岐電極指を設けることを特徴とするものであるが、これと併せて従来のようなバスバーの構造変更やダミー電極の付加を禁止するものではなく、バスバーの構造変更やダミー電極に加えて上記分岐電極指を設けても構わない。
【0022】
分岐電極指は、その先端部が電気的に開放された状態とされていても良い。電気的に開放状態とすることにより、隣り合う(当該分岐電極指が接続されている)交差電極指と間で電位が一様でなくなり(当該分岐電極指が接続されている交差電極指と分岐電極指との間に電位差を生じさせることができ)、非交差部の電位分布が一様でなくなるから、弾性表面波を交差部内に、より良好に閉じ込めることが可能となる。
【0023】
このような分岐電極指を設ける構造は、縦結合多重モード型SAWフィルタに対しても適用することができ、同様の効果を得ることが出来る。具体的には、本発明の縦結合多重モード型SAWフィルタは、弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数の交差電極指およびこれら交差電極指を接続するバスバーを有する櫛形電極を対向させかつ交差電極指同士を互いに交差させてなる複数の交差指状電極を、弾性表面波の伝搬方向に音響結合させるように圧電基板上に備えた縦結合多重モード型SAWフィルタであって、前記交差指状電極は、前記交差電極指から分岐し、かつ前記交差電極指同士が交差する交差部と前記バスバーとの間の非交差部内に位置する、1つ以上の分岐電極指を備え、当該分岐電極指は、弾性表面波の伝搬方向にほぼ直交する方向に延びる分岐電極指本体部を含む。
【0024】
さらに本発明では、互いに並列に接続された第一のSAWフィルタと第二のSAWフィルタとを備え、これら第一および第二のSAWフィルタとして上記本発明に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを用いた構成を採用することも可能である。
【0025】
また、これらの縦結合多重モード型SAWフィルタに、SAW共振器を直列に更に接続しても良い。この共振器としては、例えば次に述べる本発明の共振器を利用することも可能である。
【0026】
本発明に係る共振器は、弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数の交差電極指およびこれら交差電極指を接続するバスバーを有する櫛形電極を対向させかつ交差電極指同士を互いに交差させてなる交差指状電極を、圧電基板上に備えたSAW共振器であって、前記交差指状電極は、前記交差電極指から分岐し、かつ前記交差電極指同士が交差する交差部と前記バスバーとの間の非交差部内に位置する、1つ以上の分岐電極指を備え、当該分岐電極指は、弾性表面波の伝搬方向にほぼ直交する方向に延びる分岐電極指本体部を含む。
【0027】
このように本発明は共振器に対しても適用することができ、前記フィルタについて述べたのと同様の効果を得ることが出来る。
【0028】
本発明に係るSAWフィルタでは、交差電極指の周期をλ、分岐電極指の幅をWとしたときに、W≧0.08λとすることが望ましい。尚、交差電極指の周期λとは、同一櫛形電極に属する同一方向に延びる隣り合う電極指の配設ピッチをいう(図2参照)。
【0029】
また、分岐電極指本体部の交差部側の端と、対向する櫛形電極の交差電極指の先端との間隔をG1としたときに、G1≦0.36λとすることが望ましい。
【0030】
さらに、分岐電極指本体部の長さをL1としたときに、L1≧0.21λとすることが望ましい。
【0031】
いずれも、Q値および挿入損失に関し、より良好な特性改善効果を得るためである。尚、これらの好ましい数値については、実測データに基づいて、後の実施の形態において更に詳しく述べる。
【0032】
本発明では、ラダー型SAWフィルタを構成することも可能であり、当該ラダー型SAWフィルタは、入力端子と出力端子との間の伝送路上に直列に接続された1つ以上の直列腕共振器と、当該伝送路から分岐した分岐路上に接続された1つ以上の並列腕共振器と、を備え、前記1つ以上の直列腕共振器および1つ以上の並列腕共振器のうちの少なくとも1つの共振器として前記本発明に係るSAW共振器を使用する。
【0033】
さらに本発明のSAWフィルタ又はSAW共振器では、圧電基板として、焦電性改善処理を施した圧電基板を使用しても良い。
【0034】
電極の静電破壊に対する耐性をより一層向上させるためである。圧電基板は一般に焦電性を有するから、温度変化に伴い基板表面に不均一な電荷分布が生じ、この電荷が蓄積されるとデバイスの製造時や各種電子機器に実装された後における実使用時に特性劣化やIDT部の放電による電極へのダメージを引き起こすことが危惧される。これに対し、前記圧電基板として、焦電性改善処理を施した圧電基板を使用すれば、かかる問題を回避し、より信頼性に優れたSAWフィルタないしSAW共振器を提供することが可能となる。
【0035】
焦電性改善処理とは、具体的には、(1)圧電基板に添加物を添加すること、(2)還元処理を行うこと、あるいは(3)その他の方法により圧電基板の体積抵抗を低減する処理を施すことを言う。
【0036】
上記(1)の方法についてさらに具体的に述べれば、圧電基板として例えばLiTaO3(以下、LTという)基板またはLiNbO3(以下、LNという)基板を使用し、当該基板に、例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銅(Cu)またはチタン(Ti)等のうちの1種類以上の添加物を加える。添加物を混合させる操作は、例えばチョクラルスキー法において圧電材料の単結晶を生成する場合に、溶融圧電材料に上記いずれかの添加物を添加することにより行うことが出来る。また上記(2)の方法については、例えば、圧電基板を構成する圧電単結晶を引き上げ、スライスした後に結晶中の酸素を除去する還元処理を行えば良い。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、SAWデバイスの電気特性(特にQ値および挿入損失)と電極へのダメージに対する耐性を向上させることが出来るとともに、設計の自由度を高めることが可能となる。
【0038】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。尚、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
〔第1実施形態〕
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示すものである。これらの図に示すようにこのSAWフィルタは、2つの縦結合多重モード型SAWフィルタ11,21を、入力端子1と出力端子2との間に直列に接続したものである。入力端子1に接続される第1段のSAWフィルタ11は、弾性表面波の伝搬方向に直線状に(一列に)配列して音響結合させた3つのIDT12,13,14と、左右両側のIDT13,14の外側に配した反射器15,16とを備え、これらを圧電基板上に設けたものである。尚、これらの図面(後述の他の図においても同様)では、各IDTおよび反射器について電極指の本数を実際の本数より少なく簡略化して示している。
【0040】
第1段のフィルタ11を構成する各IDT12,13,14は、バスバー32とこれから延びる複数本の交差電極指33とからなる櫛形電極12a,12b,13a,13b,14a,14bを互いに対向するように配置してなり、各交差電極指33は、その基端部(バスバー32との接続部に近い部分)から分岐する分岐電極指31を備えている。これら分岐電極指31は、交差電極指33に対して略直交して弾性表面波の伝搬方向に平行に延びる分岐部31aと、この分岐部31aの先端から略直角に折れ曲がって当該分岐電極指31が交差電極指33を介して接続されているバスバー32に向け交差電極指33に略平行に(弾性表面波の伝搬方向に略直交する方向に)延びる分岐指本体部31bとからなり、略L字状の全体形状を有する。
【0041】
分岐電極指31(分岐指本体部31b)の先端は、バスバー32や他の電極指等のいずれの電極にも接続されていない、電気的に開放された自由端としてある。また、これら分岐電極指31は、両櫛形電極の交差電極指33が交差する交差部35とバスバー32との間の領域(非交差部)36内に配置されている。尚、これら対向するように配置され各IDT12,13,14を構成する2つの櫛形電極12a,12b,13a,13b,14a,14bは、一方が信号ラインに接続され、他方がグランドに接続される。
【0042】
第1段のフィルタ11と出力端子2との間に直列に接続される第2段のSAWフィルタ21は、第1段のフィルタ11と同様に、音響結合した3つのIDT22,23,24とその両側に配した反射器25,26とからなり、各IDT22,23,24の交差電極指33が分岐電極指31を備える。ただし、弾性表面波の伝搬方向に一列に並べられた3つのIDT22,23,24のうち、中央のIDT22は、弾性表面波の伝搬方向にIDTを2分割し、分割された各部分22A,22Bに平衡出力端子2a,2bをそれぞれ接続してある。
【0043】
本実施形態に係るフィルタは、中心周波数が942.5MHzのEGSMの受信用フィルタを想定したもので、詳細な仕様としては、例えば次のとおりとすることが出来る。
【0044】
圧電基板としては、添加物(例えばFe)を添加することにより焦電性改善処理を施された42±6°YカットX伝搬LT基板を使用する。各IDT12,13,14,22,23,24および反射器15,16,25,26の電極は、例えばAl単結晶膜により構成し、厚さを例えば約320nmとする。またこのとき、下地層として、単結晶膜化しやすくするために厚さが例えば4nmのTiN膜を形成する。作製にあたっては、公知のフォトリソグラフィー(フォトエッチング)技術を用いて圧電基板の表面に各SAWフィルタ11,21のパターンを形成し、ダイシングにより個片にした後、フリップチップボンディングによりセラミック基板上に搭載し、樹脂で封止する。入力端子1および出力端子2はそれぞれ、入力インピーダンスが50Ωの不平衡入力端子、ならびに、出力インピーダンスが150Ωの平衡出力端子とする。
【0045】
第1段のフィルタ11の各部寸法ないし電極本数は、例えば次のとおりとする。
・IDT電極の平均周期λ:4.222μm
・IDT電極の平均ピッチp:2.111μm
・反射器の電極ピッチ:2.129μm
・IDT対数:中央のIDT12が23対、外側のIDT13,14が14.5対
・反射器の電極本数:70本
・交差幅(電極指の交差部の幅):46λ
・IDT‐反射器間の距離:0.5λ
・DUTY:IDT、反射器共に0.7
【0046】
尚、IDTの電極の平均周期λとは、図2に示すように、同一櫛形電極に属する同一方向に延びる隣り合う交差電極指の配設ピッチ(電極ピッチpの2倍)の平均値を言う。また、隣接するIDT間で、隣接する他のIDTに近い数本の電極指(狭ピッチ電極指)のピッチを他の部分での電極指のピッチよりも小さくすると、通過帯域内の挿入損失を低減する効果があることが従来から知られており、本実施形態のIDT12,13,14では、このような構造を採る(第2段のフィルタ21、並びに後述の実施形態においても同様)。したがって、上記平均周期および平均ピッチとは、当該IDT電極のすべての電極指の周期ないしピッチを平均したものをそれぞれ意味する。
【0047】
第2段のフィルタ21の各部寸法ないし電極本数は、例えば次のとおりとする。
・IDT電極の平均周期λ:4.222μm
・反射器の電極ピッチ:2.141μm
・IDTの対数:中央のIDT22が30対(中央で2分され直列に接続されている)、外側のIDT23,24が13対
・反射器の電極本数:70本
・交差幅(電極指の交差部の幅):48λ
・IDT‐反射器間の距離:0.5λ
・DUTY:IDT、反射器共に0.7
【0048】
分岐電極指31の各部寸法は、例えば次のとおりとする。
・分岐部31aの幅W1:1μm(=0.24λ)
・分岐指本体部31bの幅W2:交差電極指の幅と同一
・交差電極指33の先端と分岐電極指31との間のギャップG1:0.5μm(=0.12λ)
・分岐指本体部31bの長さL1:3.3μm(=0.78λ)
・分岐指本体部31bの先端とバスバー32との間のギャップG2:0.7μm(=0.17λ)
【0049】
このような仕様に従って作製した第1実施形態に係るフィルタの周波数特性を測定した。比較対照として、従来のフィルタ構造に従って、本実施形態と同様に3つのIDTとその両側に設けた反射器とを備えた2つの縦結合多重モード型SAWフィルタを不平衡信号入力端子と平衡信号出力端子との間に直列に接続したフィルタを2種類用意した。
【0050】
これらのうち、第1の比較例に係るフィルタは、図34に示すように、1段目のフィルタ201および2段目のフィルタ211のいずれを構成する各IDT202,203,204,212,213,214のバスバーや交差電極指にも付加的な構造(バスバーの形状変更やダミー電極等)を備えないものである。第2の比較例に係るフィルタは、図35に示すように、1段目のフィルタ221および2段目のフィルタ231を構成する各IDT222,223,224,232,233,234のバスバーに、導電部と非導電部とを交互に設けた前記特許文献1と同様の構造を備えるものである。
【0051】
図3は、本実施形態、上記比較例1(従来構成1/図34)および比較例2(従来構成2/図35)に係る各フィルタの通過帯域における周波数‐減衰量特性を示すものである。この図から明らかなように、従来のフィルタ構造に較べて本実施形態のフィルタ構造によれば、特に通過帯域の両肩部、すなわち通過帯域の低域側(領域A)と高域側(領域B)において大きな特性改善の効果が得られている。
【0052】
また、当該通過帯域の低域側領域Aを925MHz〜935MHzとしてこの範囲の最小挿入損失を比較すると、従来構成1(バスバーから単純に電極指を延ばしたのみ)に対する改善効果は、約0.24dBであり、従来構成2(バスバーに導電部と非導電部を設けた)に対しても、約0.07dBの改善効果を確認することが出来た。これは、本実施形態のフィルタ構造によれば、IDTの電極交差部により近い部分の音速を下げることが出来るため、更なる低損失化が達成されたものと考えられる。
【0053】
一方、図4は、通過帯域外の周波数特性を測定した結果を示すものであるが、本実施形態と従来構成1,2とはいずれもほぼ同一の特性を示しており、本実施形態の構造を採っても帯域外の特性には影響を及ぼさないことが分かる。
【0054】
また、図5は分岐電極指31の分岐部31aの幅W1を様々に変えたとき、具体的には、W1=0.5μm(0.12λ)、1μm(0.24λ)および2.0μm(0.47λ)としたときの周波数特性を従来構成1との比較において示したものであり、図6は図5の前記領域A部分を拡大して示すものである。これらの図から明らかなように、本発明に係るいずれの構造も従来構成1と比較して良好な周波数特性が得られているが、分岐部31aの幅W1を0.47λから0.24λ、さらに0.12λと小さくするにつれ、より良好な特性が得られることが分かる。
【0055】
図7は、本実施形態に係るフィルタの1段目のフィルタ11の共振特性を測定した結果を示すもので、分岐電極指31の分岐部31aの幅W1を様々に変えたとき、具体的には、W1=0.35μm(0.08λ)、0.5μm(0.12λ)、0.7μm(0.17λ)、1μm(0.24λ)、1.5μm(0.36λ)、2μm(0.47λ)、4.3μm(1.02λ)、8μm(1.89λ)および12μm(2.84λ)としたとき(図8も同様)のQ値の測定値を示している。尚、この線図において、W1/λ=0の点(▲)は、従来構造を備える比較例1(従来構成1)のフィルタの測定結果である。また、多重モード型フィルタの共振特性を測定評価する方法を示す文献として、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)の第3102〜3103頁があるが、上記図7はこの文献に記載された0次モードの測定法に基づいて測定を行った結果を示すものである。
【0056】
この測定結果から明らかなように、本実施形態のフィルタ構造によれば、交差電極指の形状を変更するだけでIDT電極交差部の外側領域の音速を効率良く下げることができ、共振のQ値を向上させ、低損失な特性を実現することが出来ることが分かる。
【0057】
さらに図8は、前記図7と同様に分岐電極指31の分岐部31aの幅W1を変えたときの挿入損失(通過帯域における挿入損失の最小値、および前記領域Aにおける挿入損失の最小値)の変化を測定した結果を示すものである。この測定結果から明らかなように、挿入損失を低減するため、W1≧0.08λとすることが好ましく、特に、0.08λ≦W1≦2.84λとするが好ましく、0.08λ≦W1≦0.36λとすることがより好ましい。
【0058】
図9は、交差電極指33の先端と分岐電極指31との間のギャップG1を変えたとき、具体的には、G1=0.35μm(0.08λ)、0.5μm(0.12λ)、0.7μm(0.17λ)、1μm(0.24λ)、1.5μm(0.36λ)、2.0μm(0.47λ)、3.0μm(0.71λ)としたときの挿入損失(通過帯域における挿入損失の最小値、および前記領域Aにおける挿入損失の最小値)の変化を測定した結果を示すものである。この測定結果から明らかなように、挿入損失を低減するため、G1≦0.36λとすることが好ましく、特に、0.08λ≦G1≦0.36λとすることが望ましい。
【0059】
図10は、分岐電極指31の分岐指本体部31bの長さL1を変えたとき、具体的には、L1=0.5μm(0.12λ)、0.9μm(0.21λ)、1.31μm(0.31λ)、3.3μm(0.78λ)、5.3μm(1.26λ)、7.3μm(1.73λ)、9.3μm(2.2λ)、11.3μm(2.68λ)としたときの挿入損失(通過帯域における挿入損失の最小値、および前記領域Aにおける挿入損失の最小値)の変化を測定した結果を示すものである。この測定結果から明らかなように、挿入損失を低減するため、L1≧0.12λとすることが好ましく、特に、0.12λ≦L1≦2.68λとすることが望ましい。
【0060】
図11は、分岐電極指31(分岐指本体部31b)の先端とバスバー32との間のギャップG2を変えたとき、具体的には、G2=0.35μm(0.08λ)、0.5μm(0.12λ)、0.7μm(0.17um)、1.0μm(0.24λ)、1.5μm(0.36λ)、2.5μm(0.59λ)、4.0μm(0.95λ)および6.0μm(1.42λ)としたときの挿入損失(通過帯域における挿入損失の最小値、および前記領域Aにおける挿入損失の最小値)の変化を測定した結果を示すものである。当該ギャップG2については、いずれの値としても挿入損失を低減することが出来るが、電極指抵抗が問題にならない程度の大きさまで(例えば0.08λ≦G2≦1.42λ)とすることが望ましい。
【0061】
〔第2実施形態〕
図12および図13は、本発明の第2の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示すものである。これらの図に示すようにこのSAWフィルタは、前記第1実施形態のフィルタと同様に、2つの縦結合多重モード型SAWフィルタ41,51を、入力端子1と出力端子2との間に直列に接続したものである。各フィルタ41,51のIDT42,43,44,52,53,54および反射器45,46,55,56の構成、ならびに入出力端子1,2は、前記第1実施形態と基本的に同一であり、各IDT42〜44,52〜54の電極の非交差部36に分岐電極指61を備えているが、これら分岐電極指61の形状が第1実施形態と異なる。
【0062】
具体的には、前記第1実施形態では、分岐指本体部31bが分岐部31aの先端からバスバー32に向け交差電極指33に略平行に延び、分岐電極指31がL字状の全体形状を有したが、この実施形態では、分岐指本体部が分岐部61aの先端から略直角に折れ曲がってバスバー32に向かう方向に延びる第一の分岐指本体部61bと、分岐部61aの先端から略直角に逆方向に折れ曲がって、対向する櫛形電極(交差電極指33の先端部)に向う方向に延びる第二の分岐指本体部61cとからなり、T字状の全体形状を有する。言い換えれば、交差電極指33に略平行に(弾性表面波の伝搬方向に略直交する方向に)延在する分岐電極指本体部の中間部(分岐電極指本体部の一端と他端との間の部分)に、分岐部61aが接続された形状としてある。尚、当該第一および第二の分岐指本体部61b,61cの先端は、バスバー32や他の電極に接続せず、電気的に開放した状態とする。
【0063】
図14は、本実施形態のフィルタにおいて、第一分岐指本体部61bの長さL1と第二分岐指本体部61cの長さL2とを変化させた場合の挿入損失を示すものである。具体的には、分岐指本体部全体の長さ(L1+L2)を3.3μmに固定した上で、第二分岐電極指本体部61cの長さL2を0μm、0.5μm、1.0μm、2.0μmおよび3.3μmとして、分岐指本体部全体の長さ(L1+L2)に対する第二分岐指本体部61cの長さL2の比L2/(L1+L2)(=0,0.15,0.3,0.61,1)と挿入損失との関係を求めた。尚、他のパラメータW1、W2、G1およびG2については、前記第1実施形態と同一である。
【0064】
この結果から明らかなように、L1とL2の合計の長さを固定したときに、その比〔L2/(L1+L2)〕を変えると、全ての場合において従来構成1と比較して挿入損失の改善が見られるが、特に、0.3≦L2/(L1+L2)≦1とすることが好ましいことが分かる。
【0065】
〔第3実施形態〕
図15は、本発明の第3の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示すものである。同図に示すようにこのSAWフィルタは、前記第1および第2実施形態のフィルタと同様に、2つの縦結合多重モード型SAWフィルタ71,81を、入力端子1と出力端子2との間に直列に接続したものである。各フィルタ71,81のIDT72,73,74,82,83,84および反射器75,76,85,86の構成、ならびに入出力端子1,2は、前記第1実施形態と基本的に同一であるが、分岐電極指91の形状が前記実施形態と異なる。
【0066】
具体的には、前記第1および第2実施形態では分岐電極指の先端を電気的に開放状態としたのに対し、本実施形態では、前記第1実施形態におけるL字状の分岐電極指91の先端(分岐指本体部の先端)をバスバー32に接続することにより分岐電極指91の先端部を電気的に短絡した。
【0067】
図16は、本実施形態に係るフィルタの通過帯域における周波数特性を、前記第1実施形態および従来構成1と共に示すものであり、図17は図16の通過帯域低域側の拡大図である。これらの図から分かるように、本実施形態のフィルタ構造によっても、領域AおよびB共に僅かに第1実施形態の方が良好な特性が得られているが、前記第1実施形態とほぼ同様の改善効果を実現することが出来る。
【0068】
この点につき考察すると、本実施形態では、バスバー32と分岐電極指91の先端が短絡していることから、隣接する電極指の電位分布はほぼ一致している。これに対して第1実施形態のフィルタ構造では、交差電極指ならびにこれらか延びる分岐電極指の分岐部を経て分岐指本体部が存在し、しかもその先端が開放であるから、隣接する電極指の電位分布が完全に同じではない。これにより第1実施形態の構造の方が、本実施形態の構造より良好な特性が得られているものと考えられる。
【0069】
さらに本実施形態の変形例として、例えば、本実施形態で多数設けた分岐電極指のうちの一部分だけを短絡状態とし、他を開放状態とするなど、前記第1実施形態の分岐電極指構造(先端を開放したL字状の分岐電極指31)と、本実施形態の分岐電極指構造(先端をバスバーに短絡した分岐電極指91)とを適宜混在させた電極構造としても良い。また、前記第2実施形態の分岐電極指構造(先端を開放したT字状の分岐電極指61)を一部に混在させることも可能である。
【0070】
〔第4実施形態〕
図18は、本発明の第4の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示すものである。同図に示すようにこのSAWフィルタは、前記第1実施形態のフィルタと同様に、2つの縦結合多重モード型SAWフィルタ101,111を、入力端子1と出力端子2との間に直列に接続したもので、各フィルタ101,111を構成するIDT102,103,104,112,113,114の電極非交差部にL字状の分岐電極指31を設けたものである。ただし、前記第1実施形態では、分岐指本体部31bについてそれらが延びる方向をすべてバスバー32に向けたものとしたが、この実施形態では、バスバー32に向け延びる第1実施形態と同様のものと、これとは逆に、対向する櫛形電極に向け延びるものとを交互に配置してある。
【0071】
図19は、本実施形態に係るフィルタの通過帯域における周波数特性を、前記第1実施形態および従来構成1と共に示すものであるが、この図から明らかなように本実施形態のフィルタ構造によっても、前記第1実施形態と同様の(本実施形態の方が若干良好な)改善効果が得られる。
【0072】
〔第5実施形態〕
低損失化のために2つの多重モードフィルタを並列に接続し、IDTの電極指の長さを短くして電極指抵抗を低減するフィルタ構造が知られている。本実施形態は、このようなフィルタ構造に対して本発明を適用したものである。
【0073】
具体的には、図20は本発明の第5の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示すものであるが、同図に示すようにこのフィルタは、2つの縦結合多重モード型フィルタ121,131を入力端子1と出力端子2との間に並列に接続したものである。各フィルタ121,131は共に、前記第1実施形態のフィルタと同様に、3つのIDT122,123,124,132,133,134の両側に反射器125,126,135,136が備えられ、各IDT122〜124,132〜134の電極非交差部には、交差電極指から延びるL字状の分岐電極指31を設けてある。尚、出力端子2は、並列に接続したフィルタ121,131のうち一方のフィルタの位相を他方のフィルタに対して略180°変えることにより平衡出力端子とする。
【0074】
本実施形態のフィルタは、PCS帯の受信用フィルタ(中心周波数1960MHz)を想定したものであり、詳細な仕様は例えば次のとおりとすることが出来る。
【0075】
圧電基板として、添加物(例えばFe)を添加することにより焦電性改善処理を施された42±6°YカットX伝搬LT基板を使用する。各IDT122〜124,132〜134および反射器125,126,135,136の電極は、例えばAl単結晶膜により構成し、厚さを例えば169nmとする。またこのとき、下地層として、単結晶膜化しやすくするために厚さが例えば4nmのTiN膜を形成する。作製にあたっては、公知のフォトリソグラフィー(フォトエッチング)技術を用いて圧電基板の表面に各SAWフィルタのパターンを形成し、ダイシングにより個片にした後、フリップチップボンディングによりセラミック基板上に搭載し、樹脂で封止する。
【0076】
各DMSフィルタ121,131の各部寸法ないし電極本数は、例えば次のとおりとする。
・IDT電極の平均周期λ:2.024μm
・IDT電極の平均ピッチp:1.012μm
・反射器の電極ピッチ:1.012μm
・IDT対数:中央のIDT122,132が41対、外側のIDT123,124,133,134が18.5対
・反射器の電極本数:65本
・交差幅(電極指の交差部の幅):42λ
・IDT‐反射器間の距離:0.5λ
・DUTY:IDT、反射器共に0.62
【0077】
尚、前記第1実施形態と同様に、本実施形態のIDTでも、狭ピッチ電極指を設けてある。また、前記他方のフィルタについては、2つの両外側のIDTの位相を変えることで平衡出力2a,2bとしてある。
【0078】
分岐電極指31の各部寸法は、例えば次のとおりとする。
・分岐部の幅W1:0.5μm(=0.25λ)
・分岐指本体部の幅W2:交差電極指の幅と同一
・交差電極指の先端と分岐電極指との間のギャップG1:0.45μm(=0.22λ)
・分岐指本体部の長さL1:2.0μm(=0.99λ)
・分岐指本体部の先端とバスバーとの間のギャップG2:0.45μm(=0.22λ)
【0079】
図21は、本実施形態に係るフィルタの通過帯域における周波数特性を、従来の同様の並列接続構造を有するフィルタ(従来構成3および従来構成4)の特性と比較して示すものである。尚、従来構成3は、前記図20に示した本実施形態のフィルタと同様に2つの多重モードフィルタを並列に接続し(図34の1段目のフィルタ201と、このフィルタの位相を略180°変えたフィルタとを並列に接続し、IDTおよび反射器の各部仕様(電極本数や周期、ピッチ、交差幅、寸法等)については第5実施形態と同一とし)、各IDTのいずれにも分岐電極指を備えていないものである。また従来構成4は、同様に2つの多重モードフィルタを並列に接続した構成であるが、各IDTのいずれにも分岐電極指を備えておらず、かつ図35に示した従来構成2のようにバスバーに加工を施した(バスバーに導電部と非導電部を設けた)ものである。
【0080】
図21から分かるように、本実施形態のフィルタ構造によっても、通過帯域における挿入損失を低減することができ、特に、通過帯域の低域側領域C、および高域側領域Dにおいて損失の良好な改善効果が得られている。具体的には、従来構成3と比較した改善効果は、通過帯域低域側で約0.23dBで、従来構成4と比べても、通過帯域低域側で0.07dBの改善を確認することが出来た。これは、前記各実施形態と同様に、IDTの電極交差部により近い部分の音速を下げることが出来るために、更なる低損失化が達成されたものと考えられる。
【0081】
さらに図22は、通過帯域外の周波数特性を測定した結果を示すものであるが、本実施形態と従来構成3,4とはいずれもほぼ同一の特性を示しており、本実施形態の構造を採用しても通過帯域外の特性には影響を及ぼさないことが分かる。
【0082】
図23は、本実施形態において分岐電極指の分岐部の幅W1を様々に変えたとき、具体的には、W1=0.27μm(0.13λ)、0.35μm(0.17λ)、0.5μm(0.25λ)、0.8μm(0.40λ)、1.4μm(0.69λ)、2.0μm(0.99λ)および4.0μm(1.98λ)としたときの挿入損失の変化を前記従来構成3との比較において示したものである。この図から明らかなように、本発明に係るいずれの構造も従来構成3と比較して良好な挿入損失の低減効果が得られている。したがって、少なくとも、0.13λ≦W1≦1.98λとすれば、良好な損失改善効果が得られる点で好ましい。
【0083】
〔第6実施形態〕
図24は、本発明の第6の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示すものである。同図に示すようにこのSAWフィルタは、前記第5実施形態のフィルタと同様に、2つの縦結合多重モード型フィルタ141,151を入力端子1と出力端子2との間に並列に接続したものである。各フィルタ141,151は共に、前記第2実施形態のフィルタと同様に、3つのIDT142,143,144,152,153,154を備え、各IDT142〜144,152〜154の電極非交差部には、交差電極指33から延びるT字状の分岐電極指61を設けてある。
【0084】
ただし、この実施形態では、2つのフィルタ141,151の外側にそれぞれ反射器145,156を設けると共に、両フィルタ141,151の間に数本の電極列からなる反射器146を設けて両フィルタ141,151を音響結合させる。尚、両フィルタ141,151間に介在させた反射器146は、省略することも可能である。
【0085】
〔第7実施形態〕
図25は、本発明の第7の実施形態に係るSAW共振器を示すものである。同図に示すようにこのSAW共振器161は、1つのIDT162の両側に反射器163,164を配置してなるもので、前記第1実施形態と同様に、IDT162の各交差電極指33の基端部にL字状の分岐電極指31を設けてある。尚、IDT162の両側に配した反射器163,164は、IDT162をいわゆる多対型共振器とすれば、省くことも可能である。本実施形態の各部構成の具体的な例としては、例えば次のような構成を採ることが出来る。
【0086】
圧電基板として、添加物(例えばFe)を添加することにより焦電性改善処理を施された42±6°YカットX伝搬LT基板を使用する。IDT162および反射器163,164の電極は、例えばAl単結晶膜により構成し、厚さを例えば169nmとし、下地層として、単結晶膜化しやすくするために厚さが例えば4nmのTiN膜を形成する。
【0087】
また、IDT162および反射器163,164の各部寸法および電極本数を例えば次のとおりとする。
・IDTおよび反射器の電極周期λ:1.968μm
・IDTおよび反射器の電極ピッチp:0.984μm
・交差幅(電極指の交差部の幅):30λ
・IDTの電極対数:159対
・反射器の電極本数:80本
・IDT‐反射器間の距離:0.5λ
・DUTY:0.62
【0088】
分岐電極指31の各部寸法は、例えば次のとおりとする。
・分岐部の幅W1:0.63μm(=0.32λ)
・分岐指本体部の幅W2:交差電極指の幅と同一
・交差電極指の先端と分岐電極指との間のギャップG1:0.5μm(=0.25λ)
・分岐指本体部の長さL1:2.0μm(=1.02λ)
・分岐指本体部の先端とバスバーとの間のギャップG2:0.5μm(=0.25λ)
【0089】
このような仕様を有する共振器を作成して周波数‐インピーダンス特性を測定した。図26および図27はその結果を、同様の構造を有する従来の共振器である従来構成5(IDTの両側に反射器を備えるが、分岐電極指は無い)との比較において示すものであるが、これらの図から明らかなように、IDTの両側に反射器を備えた共振器に対して本発明を適用することで、共振のQ値(共振周波数と反共振周波数でのインピーダンス比)を向上させることが出来ることが分かる(50.4dBから53.3dBへと2.9dB改善が可能)。
【0090】
〔第8実施形態〕
図28は、本発明の第8の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示すものである。同図に示すようにこのSAWフィルタは、前記第5実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタにおいて、並列に接続した2つの縦結合多重モード型フィルタ121,131と、不平衡入力端子1との間にSAW共振器161を直列に接続したものである。SAW共振器161としては、IDTに分岐電極指を備えた前記第7実施形態の構造を有する共振器を使用する。また、並列接続した2つのフィルタ121,131についても、これらを構成するIDTの電極非交差部には、交差電極指から延びるL字状の分岐電極指を設けてある。
【0091】
尚、上記共振器161は、多対型共振器としても構わない。また図29に示すように、共振器を構成するIDT165の交差電極指が交互に交差されずに、一方の櫛形電極からの電極指が連続した部分を有するようにしても(電極指の一部をいわゆる間引いた後にダミーの電極指を配置した形態としても)良い。この場合、当該連続部分の電極非交差部に、L字状の分岐電極指の先端から電極をさらに延長し、例えば鉤状に引き回した分岐電極指166を設けることも可能である。
【0092】
本実施形態のフィルタは、DCS帯の受信用フィルタ(中心周波数1842.5MHz)を想定したものであり、詳細な仕様は例えば次のとおりとすることが出来る。
【0093】
圧電基板として、添加物(例えばFe)を添加することにより焦電性改善処理を施された42±6°YカットX伝搬LT基板を使用する。各IDTおよび反射器の電極は、例えばAl単結晶膜により構成し、厚さを例えば169nmとする。また、下地層として、単結晶膜化しやすくするために厚さが例えば4nmのTiN膜を形成する。作製にあたっては、圧電基板の表面に各フィルタ121,131および共振器161のパターンを形成し、ダイシングにより個片にした後、フリップチップボンディングによりセラミック基板上に搭載し、樹脂で封止する。
【0094】
各DMSフィルタ121,131の各部寸法ないし電極本数は、例えば次のとおりとする。
・IDT電極の平均周期λ:2.149μm
・IDT電極の平均ピッチp:1.0745μm
・反射器の電極ピッチ:1.089μm
・IDT対数:中央のIDTが24対、外側のIDTが12.5対
・反射器の電極本数:75本
・交差幅(電極指の交差部の幅):44λ
・IDT‐反射器間の距離:0.5λ
・DUTY:IDT、反射器共に0.64
【0095】
尚、前記第5実施形態と同様に、本実施形態のIDTでも、狭ピッチ電極指を設けてある。また、出力端子は、並列に接続したフィルタのうち一方のフィルタの位相を他方のフィルタに対して略180°変える(2つの両外側のIDTの位相を変える)ことにより平衡出力端子2a,2bとした。
【0096】
各フィルタ121,131における分岐電極指31の各部寸法は、例えば次のとおりとする。
・分岐部の幅W1:0.6μm(=0.28λ)
・分岐指本体部の幅W2:交差電極指の幅と同一
・交差電極指の先端と分岐電極指との間のギャップG1:0.45μm(=0.21λ)
・分岐指本体部の長さL1:2.8μm(=1.30λ)
・分岐指本体部の先端とバスバーとの間のギャップG2:0.45μm(=0.21λ)
【0097】
SAW共振器161のIDTおよび反射器の各部寸法および電極本数は、例えば次のとおりとする。
・IDTおよび反射器の電極周期λ:2.098μm
・IDTおよび反射器の電極ピッチp:1.049μm
・交差幅(電極指の交差部の幅):21.6λ
・IDTの電極対数:160対
・反射器の電極本数:65本
・IDT‐反射器間の距離:0.5λ
・DUTY:0.64
【0098】
SAW共振器161における分岐電極指31の各部寸法は、例えば次のとおりとする。
・分岐部の幅W1:0.67μm(=0.32λ)
・分岐指本体部の幅W2:交差電極指の幅と同一
・交差電極指の先端と分岐電極指との間のギャップG1:0.7μm(=0.33λ)
・分岐指本体部の長さL1:2.8μm(=1.33λ)
・分岐指本体部の先端とバスバーとの間のギャップG2:0.7μm(=0.33λ)
【0099】
図30は、本実施形態が備える上記SAW共振器の周波数‐インピーダンス特性を測定した結果を示すものである。同図から分かるように、本発明を適用した上記共振器では、分岐電極指を備えない従来の共振器(従来構成5)と比較してQ値を54.2dBから60.5dBへと6.3dB向上させることが出来た。
【0100】
また図31は、本実施形態のフィルタの通過帯域における周波数特性を、比較例の特性とともに示すものである。尚、当該比較例は、図28に示したフィルタ構造において、直列に接続する共振器161として分岐電極指を備えていない通常(従来)の共振器を用いた(並列接続した2つの縦結合多重モード型SAWフィルタはいずれも分岐電極指を有する)ものである。図31から明らかなように、並列接続された縦結合多重モード型SAWフィルタに本発明を適用するだけでなく、これらのフィルタに直列に接続された共振器にも本発明を適用することで、より一層の特性改善、特に通過域高域側での損失改善の効果が得られることが分かる。
【0101】
〔第9実施形態〕
本発明を適用したSAW共振器は、ラダー型のSAWフィルタに利用することも可能である。図32はこのようなラダー型回路の基本構成を示すものであり、本発明の第9の実施形態は、入力端子と出力端子とを結ぶ伝送路173上に配置される直列腕共振器171、ならびに当該伝送路173から分岐してグランドに接続される分岐路174上に配置される並列腕共振器172としてそれぞれ、前記第7実施形態に係るSAW共振器161を用い、ラダー型SAWフィルタを構成する。このようなフィルタによれば、Q値が向上したSAW共振器161を用いることで挿入損失を改善することが出来る。
【0102】
直列腕共振器171および並列腕共振器172は、1つ以上任意の数だけ設けて良く、これにより2段以上のラダー型SAWフィルタを構成することが可能である。また、当該ラダー型フィルタは、総ての共振器が上記本発明に係る共振器161により構成されている必要は必ずしも無く(総ての共振器が本発明の共振器161であっても勿論良い)、一部の共振器のみに本発明に係る共振器161を使用したフィルタであっても構わない。さらに格子型回路としても良い。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0104】
例えば、フィルタ(IDTや反射器)各部の寸法数値や電極本数、電極の膜厚、圧電基板の種類等の詳細は一例として述べたものであって、このほかの数値や構成を採ることも勿論可能である。また、実施形態において電極はAl単結晶膜により形成することとしたが、Al合金やCu、Auなどでも良く、複数種類の材料を積層した積層構造とすることも出来る。また、実施形態では圧電基板としてLT基板を使用したが、例えばLN(LiNbO3)基板や水晶基板、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスのような圧電セラミックスからなる基板、その他の圧電基板を用いても良い。また、実施形態では圧電基板に焦電性の改善処理を行ったが、当該処理は必須のものではない。
【0105】
さらに、前記実施形態では、縦結合多重モード型フィルタとしてIDTを伝搬方向に3つ並べたフィルタを使用したが、IDTを2つ並べた所謂2IDTや、4つ以上並べた所謂4IDT以上の縦結合多重モード型フィルタに対しても本発明は適用可能である。また入出力端子に関し、第1から第6および第8実施形態では、入力端子を不平衡端子、出力端子を平衡端子としたが、これら入力側端子および出力側端子はいずれも、不平衡端子または平衡端子のいずれとすることも可能である。
【0106】
交差電極指および分岐電極指の形状は、前記図面に示した例に限定されず、特に、非交差部における形状について、交差電極指および分岐電極指ともに様々な形状を採ることが可能である。例えば、図33は電極指の他の形状例を示すものであるが、同図(a)から(c)に示すように交差電極指33が非交差部においてクランク状に折れ曲がった形状とされ、当該クランク状になされた交差電極指33の基端部にL字状ないし直線状の形状とした分岐電極指181,182,183が接続されていても良い。また、本発明においては、交差電極指の中心と、分岐電極指の分岐指本体部の中心とがずれていても構わない(例えば同図(a),(b)参照)。
【0107】
また、同図(d)に示すように、交差電極指33の両側に分岐電極指184を設けても良いし、同図(e)に示すように、交差部を構成する交差電極指33の本体部分から分岐するようにバスバーへの接続電極185と、本発明に言う分岐電極指185aとが設けられた形状とすることも出来る。さらに、同図(f)に示すように、分岐電極指186が曲線状に曲がった部分を有していても良い。これら図33に示した例のほかにも、さらに様々な電極形状を採ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示す図である。
【図2】前記第1実施形態に係るフィルタのIDTの電極非交差部を拡大して示す図である。
【図3】前記第1実施形態に係るフィルタの通過帯域における周波数‐減衰量特性を、従来構造のフィルタと比較して示す線図である。
【図4】前記第1実施形態に係るフィルタの通過帯域外の周波数特性を、従来構造のフィルタと比較して示す線図である。
【図5】前記第1実施形態に係るフィルタにおいて、分岐電極指の分岐部の幅W1を変化させたときの周波数特性を従来構造のフィルタと比較して示す線図である。
【図6】前記図5の線図の通過帯域低域側肩部を拡大して示す線図である。
【図7】前記第1実施形態の1段目のフィルタの共振特性を示す線図である。
【図8】前記第1実施形態に係るフィルタにおいて、分岐電極指の分岐部の幅W1を変えたときの挿入損失の変化を示す線図である。
【図9】前記第1実施形態に係るフィルタにおいて、交差電極指の先端と分岐電極指との間のギャップG1を変えたときの挿入損失の変化を示す線図である。
【図10】前記第1実施形態に係るフィルタにおいて、分岐電極指の分岐指本体部の長さL1を変えたときの挿入損失の変化を示す線図である。
【図11】前記第1実施形態に係るフィルタにおいて、分岐電極指(分岐指本体部)の先端とバスバーとの間のギャップG2を変えたときの挿入損失の変化を示す線図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示す図である。
【図13】前記第2実施形態に係るフィルタのIDTの電極非交差部を拡大して示す図である。
【図14】前記第2実施形態に係るフィルタにおいて、第一分岐指本体部の長さL1と第二分岐指本体部の長さL2とを変えたときの挿入損失の変化を示す線図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示す図である。
【図16】前記第3実施形態に係るフィルタの通過帯域における周波数特性を、前記第1実施形態および従来構造のフィルタと比較して示す線図である。
【図17】前記図16の通過帯域低域側を拡大して示す線図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示す図である。
【図19】前記第4実施形態に係るフィルタの通過帯域における周波数特性を、前記第1実施形態および従来構造のフィルタと比較して示す線図である。
【図20】本発明の第5の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示す図である。
【図21】前記第5実施形態に係るフィルタの通過帯域における周波数特性を、従来構造のフィルタと比較して示す線図である。
【図22】前記第5実施形態に係るフィルタの通過帯域外の周波数特性を、従来構造のフィルタと比較して示す線図である。
【図23】前記第5実施形態に係るフィルタにおいて、分岐電極指の分岐部の幅W1を変えたときの挿入損失の変化を示す線図である。
【図24】本発明の第6の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示す図である。
【図25】本発明の第7の実施形態に係るSAW共振器を示す図である。
【図26】前記第7実施形態に係るSAW共振器の周波数‐インピーダンス特性を示す線図である。
【図27】前記第7実施形態に係るSAW共振器の特性を示すスミスチャートである。
【図28】本発明の第8の実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示す図である。
【図29】前記第8実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタにおいて使用可能なSAW共振器の別の例を示す図である。
【図30】前記第8実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタに備えたSAW共振器の周波数‐インピーダンス特性を示す線図である。
【図31】前記第8実施形態に係る縦結合多重モード型SAWフィルタの通過帯域における周波数特性を示す線図である。
【図32】本発明の第9の実施形態に係るラダー型SAWフィルタの基本構成を示す図である。
【図33】(a)から(f)はそれぞれ、本発明に係るフィルタないし共振器を構成するIDTの交差電極指および分岐電極指の他の形状例を示す図である。
【図34】従来のフィルタ構造に従って構成した第1の比較例に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示す図である。
【図35】従来のフィルタ構造に従って構成した第2の比較例に係る縦結合多重モード型SAWフィルタを示す図である。
【符号の説明】
【0109】
1 入力端子
2 出力端子
11,21,41,51,71,81,101,111,121,131,141,151 縦結合多重モード型SAWフィルタ
12〜14,42〜44,52〜54,72〜74,82〜84,102〜104,112〜114,122〜124,132〜134,142〜144,152〜154,162 IDT(交差指状電極)
12a,12b,13a,13b,14a,14b 櫛形電極
15,16,45,46,55,56,75,76,85,86,105,106,115,116,125,126,135,136,145,146,156,163,164 反射器
31,61,91,166,181,182,183,184,185a,186 分岐電極指
31a,61a 分岐部
31b,61b,61c 分岐指本体部
32 バスバー
33 交差電極指
35 IDT電極の交差部
36 IDT電極の非交差部
161 SAW共振器
171 直列腕共振器
172 並列腕共振器
185 交差電極指とバスバーとの接続電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数の交差電極指およびこれら交差電極指を接続するバスバーを有する櫛形電極を対向させかつ交差電極指同士を互いに交差させてなる交差指状電極を、圧電基板上に備えた弾性表面波フィルタであって、
前記交差指状電極は、
前記交差電極指から分岐し、かつ前記交差電極指同士が交差する交差部と前記バスバーとの間の非交差部内に位置する、1つ以上の分岐電極指
を備え、
当該分岐電極指は、
弾性表面波の伝搬方向にほぼ直交する方向に延びる分岐電極指本体部
を含む
ことを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
前記分岐電極指の先端部が電気的に開放されている
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項3】
弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数の交差電極指およびこれら交差電極指を接続するバスバーを有する櫛形電極を対向させかつ交差電極指同士を互いに交差させてなる複数の交差指状電極を、弾性表面波の伝搬方向に音響結合させるように圧電基板上に備えた縦結合多重モード型弾性表面波フィルタであって、
前記交差指状電極は、
前記交差電極指から分岐し、かつ前記交差電極指同士が交差する交差部と前記バスバーとの間の非交差部内に位置する、1つ以上の分岐電極指
を備え、
当該分岐電極指は、
弾性表面波の伝搬方向にほぼ直交する方向に延びる分岐電極指本体部
を含む
ことを特徴とする縦結合多重モード型弾性表面波フィルタ。
【請求項4】
互いに並列に接続された第一の弾性表面波フィルタと第二の弾性表面波フィルタとを備えた弾性表面波フィルタであって、
前記第一の弾性表面波フィルタおよび前記第二の弾性表面波フィルタとして請求項3に記載の弾性表面波フィルタを用いた
ことを特徴とする縦結合多重モード型弾性表面波フィルタ。
【請求項5】
請求項3または4に記載の縦結合多重モード型弾性表面波フィルタに、弾性表面波共振器を直列に接続した
ことを特徴とする縦結合多重モード型弾性表面波フィルタ。
【請求項6】
弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数の交差電極指およびこれら交差電極指を接続するバスバーを有する櫛形電極を対向させかつ交差電極指同士を互いに交差させてなる交差指状電極を、圧電基板上に備えた弾性表面波共振器であって、
前記交差指状電極は、
前記交差電極指から分岐し、かつ前記交差電極指同士が交差する交差部と前記バスバーとの間の非交差部内に位置する、1つ以上の分岐電極指
を備え、
当該分岐電極指は、
弾性表面波の伝搬方向にほぼ直交する方向に延びる分岐電極指本体部
を含む
ことを特徴とする弾性表面波共振器。
【請求項7】
前記弾性表面波共振器として請求項6に記載の弾性表面波共振器を用いた
ことを特徴とする請求項5に記載の縦結合多重モード型弾性表面波フィルタ。
【請求項8】
交差電極指の周期をλとし、
前記分岐電極指の幅をWとしたときに、
W≧0.08λ
としたことを特徴とする請求項1から5および7のいずれか一項に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項9】
交差電極指の周期をλとし、
前記分岐電極指本体部の前記交差部側の端と、対向する櫛形電極の交差電極指の先端との間隔をG1としたときに、
G1≦0.36λ
としたことを特徴とする請求項1から5、7および8のいずれか一項に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項10】
前記分岐電極指本体部の長さをL1としたときに、
L1≧0.21λ
としたことを特徴とする請求項1から5および7から9のいずれか一項に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項11】
入力端子と出力端子との間の伝送路上に直列に接続された1つ以上の直列腕共振器と、当該伝送路から分岐した分岐路上に接続された1つ以上の並列腕共振器と、を備えたラダー型弾性表面波フィルタであって、
前記1つ以上の直列腕共振器および1つ以上の並列腕共振器のうちの少なくとも1つの共振器として請求項6に記載の弾性表面波共振器を用いた
ことを特徴とするラダー型弾性表面波フィルタ。
【請求項12】
前記圧電基板として、焦電性改善処理を施した圧電基板を用いた
ことを特徴とする請求項1から5および7から11のいずれか一項に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項13】
前記圧電基板として、焦電性改善処理を施した圧電基板を用いた
ことを特徴とする請求項6に記載の弾性表面波共振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2008−92017(P2008−92017A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267536(P2006−267536)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】