説明

弾性表面波装置およびその封止状態判断方法

【課題】 小型化が可能で封止状態の判断が容易な弾性表面波装置およびその封止状態判断方法を提供する。
【解決手段】 圧電基板11の下面にIDT電極21a,21bとIDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dと帯状の導体からなるモニター用パターン23とモニター用パッド電極24a,24bとが形成されるとともに、IDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dとモニター用パターン23とモニター用パッド電極24a,24bとを露出する保護膜31が形成された弾性表面波素子10が実装用基体に実装され、IDT電極21a,21bおよびモニター用パターン23が封止部材により同じ封止空間に気密封止された弾性表面波装置である。モニター用パターン23の腐食による電気抵抗の変化によって封止状態を判断できるので、小型化が可能で封止状態の判断が容易な弾性表面波装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性表面波装置およびその封止状態判断方法に関するものであり、特に小型化が可能で封止状態の判断が容易な弾性表面波装置およびその封止状態判断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信機器などの電子機器において使用されるレゾネータ、フィルタ、デュプレクサ等の電子部品として弾性表面波装置が広く用いられているが、近年の電子機器の小型化に伴い、これらの弾性表面波装置に対しても小型化の要求が強まっている。
【0003】
弾性表面波装置はその信頼性を確保するために弾性表面波の励振部および伝搬部を密閉された空間に封止する必要があり、その封止状態を判断するためにバブルリークテストやヘリウムリークテストが行なわれてきた。バブルリークテストは、弾性表面波装置を高温の液体中に投入し、弾性表面波装置の封止空間内の気体が膨張して外部に漏れ出すことによって発生する泡を視認することによって、封止状態が不良であると判断する。ヘリウムリークテストは、弾性表面波装置を入れたチャンバー内を減圧した後にヘリウムガスを注入して加圧することによって封止状態の悪い弾性表面波装置の封止空間内にヘリウムガスを浸入させ、チャンバー内のヘリウムガスを排出した後で弾性表面波装置の封止空間から漏れ出てくるヘリウムガスを検知器で検知することによって、封止状態が不良であると判断する(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平3−2540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した封止状態の判断方法はそれぞれ問題点を有しており、近年要求が高まっている小型の弾性表面波装置に対して適応することは困難であった。
【0005】
例えば、弾性表面波装置の小型化に伴ってその内部の封止空間も小型化すると、封止空間内に閉じ込められている気体の量が減少する。これによって、バブルリークテストを行なった際に、封止状態が不良であっても封止空間内に閉じ込められている気体が封止空間の外に漏れ出し難くなるため、バブルリークテストによる封止状態の判断が困難になる。
【0006】
また、特許文献1にも記載されているように、ヘリウムリークテストに使用するヘリウムガスはエポキシ樹脂などの樹脂に吸着する性質を有している。近年の弾性表面波装置は小型化のために基板に搭載した弾性表面波素子を樹脂で封止した構造を有しているものが多く、このような弾性表面波素子にヘリウムリークテストを実施した場合は、封止樹脂に吸着された多量のヘリウムガスが長時間に渡って少しずつ樹脂から放出されるため、この樹脂から放出されたヘリウムガスを検出することによって、封止状態が不良でなくとも封止不良と判断されてしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、小型化が可能で封止状態の判断が容易な弾性表面波装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、本発明の弾性表面波装置の封止状態を容易に判断することができる弾性表面波装置の封止状態判断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の弾性表面波装置は、圧電基板の一方主面にIDT電極と該IDT電極に接続されたIDT電極用パッド電極と帯状の導体からなるモニター用パターンと該モニター用パターンの両端にそれぞれ接続された一対のモニター用パッド電極とが形成されるとともに前記IDT電極用パッド電極と前記モニター用パターンと前記モニター用パッド電極とを露出させて前記IDT電極を被覆した保護膜が形成された弾性表面波素子が、絶縁基板に前記IDT電極用パッド電極に対応したIDT電極用端子電極と前記モニター用パッド電極に対応したモニター用端子電極と該モニター用端子電極に接続されたモニター用外部電極とが形成された実装用基体に、前記IDT電極用パッド電極と前記IDT電極用端子電極とを、および前記モニター用パッド電極と前記モニター用端子電極とをそれぞれ接続導体で接続して実装されているとともに、前記IDT電極および前記モニター用パターンが封止部材により同じ封止空間に気密封止されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の弾性表面波装置は、上記構成において、前記モニター用パターンが前記IDT電極と同じ材料で同じ厚みに形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明の弾性表面波装置は、上記構成において、一対の前記モニター用外部電極の一方がグランド電位に接続され、このモニター用外部電極に接続された前記モニター用パッド電極が前記IDT電極のグランド電位に接続される部位に接続されていることを特徴とするものである。
【0011】
またさらに、本発明の弾性表面波装置は、上記構成において、前記モニター用パターンが途中に他の帯状の部分の幅よりも狭い狭幅部を有することを特徴とするものである。
【0012】
さらにまた、本発明の弾性表面波装置は、上記構成において、複数の前記狭幅部が並列に接続されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の弾性表面波装置の封止状態判断方法は、上記構成の弾性表面波装置を、一対の前記モニター用外部電極間の電気抵抗を測定した後に、前記モニター用パターンを腐食させる気体または液体中に放置し、しかる後に、一対の前記モニター用外部電極間の電気抵抗を再度測定し、放置後の電気抵抗の測定値が放置前の測定値に対して増加しているものを封止状態が不良であると判断することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の弾性表面波装置は、圧電基板の一方主面にIDT電極とIDT電極に接続されたIDT電極用パッド電極と帯状の導体からなるモニター用パターンとモニター用パターンの両端にそれぞれ接続された一対のモニター用パッド電極とが形成されるとともにIDT電極用パッド電極とモニター用パターンとモニター用パッド電極とを露出させてIDT電極を被覆した保護膜が形成された弾性表面波素子が、絶縁基板にIDT電極用パッド電極に対応したIDT電極用端子電極とモニター用パッド電極に対応したモニター用端子電極とモニター用端子電極に接続されたモニター用外部電極とが形成された実装用基体に、IDT電極用パッド電極とIDT電極用端子電極とを、およびモニター用パッド電極とモニター用端子電極とをそれぞれ接続導体で接続して実装されているとともに、IDT電極およびモニター用パターンが封止部材により同じ封止空間に気密封止されている。このような構成を有する本発明の弾性表面波装置によれば、IDT電極と同じ封止空間に気密封止された帯状の導体からなるモニター用パターンの両端にそれぞれ接続された一対のモニター用外部電極を有していることから、封止状態が不良である場合にモニター用パターンを腐食させる気体または液体が封止空間に浸入すると、それによってモニター用パターンが腐食してモニター用パターンの電気抵抗が増大するので、モニター用パターンの両端に接続された一対のモニター用外部電極間の電気抵抗の変化の有無を測定することによって封止状態の良否を判断することができる。これにより、封止部材として樹脂を使用した場合においても、ヘリウムリークテストと異なって容易に封止状態を判断でき、封止空間が小さい場合においても、バブルリークテストと異なって容易に封止状態を判断できるので、小型化が可能で封止状態の判断が容易な弾性表面波装置を得ることができる。さらに、モニター用パターンを露出させてIDT電極を被覆した保護膜が形成されていることから、IDT電極に導電性異物が接触することにより生じる電気的短絡の発生を保護膜によって防止しつつ、モニター用パターンを腐食させる気体または液体をモニター用パターンに接触させることが可能となるため、導電性異物の接触によるIDT電極の電気的短絡が防止され、且つ封止状態の判断が容易な弾性表面波装置を得ることができる。
【0015】
また、本発明の弾性表面波装置によれば、モニター用パターンがIDT電極と同じ材料で同じ厚みに形成されていることきには、モニター用パターンをIDT電極と同時に形成することが可能となるので、単純な工程で製造可能な弾性表面波装置を得ることができる。
【0016】
さらに、本発明の弾性表面波装置によれば、一対のモニター用外部電極の一方がグランド電位に接続され、このモニター用外部電極に接続されたモニター用パッド電極がIDT電極のグランド電位に接続される部位に接続されているときには、IDT電極のグランド電位に接続される部位に接続されているモニター用パッド電極をグランド電位に接続されるIDT電極用パッド電極としても利用することが可能となってIDT電極用パッド電極の個数を削減することができ、さらに、モニター用外部電極の一方をグランド電位に接続されるIDT電極用外部電極としても利用することが可能になって外部電極の個数を削減することができるので、小型化が可能な弾性表面波装置を得ることができる。
【0017】
またさらに、本発明の弾性表面波装置によれば、モニター用パターンが途中に他の帯状の部分の幅よりも狭い狭幅部を有するときは、モニター用パターンの他の部分と比較して狭幅部の腐食が速く進行するので、封止状態の判断に要する時間が短縮された弾性表面波装置を得ることができる。なお、モニター用パターン全体の幅が狭い場合と比較すると、幅の狭い部分の長さが短いので製造時に断線等の初期不良が発生する確率が低いため、歩留まり良く製造可能な弾性表面波装置を得ることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の弾性表面波装置によれば、複数の狭幅部が並列に接続されているときは、製造時に並列に接続された全ての狭幅部で断線が発生した場合以外は封止状態の判断が可能で不良とはならないため、さらに歩留まり良く製造可能な弾性表面波装置を得ることができる。
【0019】
本発明の弾性表面波装置の封止状態判断方法によれば、一対のモニター用外部電極間の電気抵抗を測定した後に、モニター用パターンを腐食させる気体または液体中に放置し、しかる後に、一対のモニター用外部電極間の電気抵抗を再度測定し、放置後の電気抵抗の測定値が放置前の測定値に対して増加しているものを封止状態が不良であると判断することから、封止部材として樹脂を使用した場合においても、ヘリウムリークテストと異なって容易に封止状態を判断でき、封止空間が小さい場合においても、バブルリークテストと異なって容易に封止状態を判断できるので、小型の弾性表面波装置の封止状態を容易に判断することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の弾性表面波装置およびその封止状態判断方法を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態の第1の例)
図1(a)は本発明の弾性表面波装置の実施の形態の一例を模式的に示す外観斜視図であり、図1(b)は(a)におけるA−A’線断面図である。図2(a)は図1の弾性表面波装置を構成する弾性表面波素子の下面を模式的に示す平面図であり、図2(b)は(a)の保護膜を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。図3(a)は図1の弾性表面波装置を構成する実装用基体の上面を模式的に示す平面図であり、図3(b)は図1の弾性表面波装置を構成する実装用基体の下面を模式的に示す平面図である。
【0022】
本例の弾性表面波装置は、圧電基板11の下面に、IDT電極21a,21bと、IDT電極21aに接続されたIDT電極用パッド電極22a,22cと、IDT電極21bに接続されたIDT電極用パッド電極22b,22dと、帯状の導体からなるモニター用パターン23と、モニター用パターン23の両端にそれぞれ接続された一対のモニター用パッド電極24a,24bとが形成されるとともに、IDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dとモニター用パターン23とモニター用パッド電極24a,24bとを露出させてIDT電極21a,21bを被覆した保護膜31が形成された弾性表面波素子10を有している。また、本例の弾性表面波装置は、絶縁基板41に、IDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dに対応したIDT電極用端子電極52a,52b,52c,52dと、モニター用パッド電極24a,24bに対応したモニター用端子電極54a,54bと、モニター用端子電極54a,54bに接続されたモニター用外部電極64a,64bとが形成された実装用基体40を有している。そして、IDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dとIDT電極用端子電極52a,52b,52c,52dとを、およびモニター用パッド電極24a,24bとモニター用端子電極54a,54bとをそれぞれ接続導体71で接続して弾性表面波素子10が実装用基体40に実装されているとともに、IDT電極21a,21bおよびモニター用パターン23が封止部材81により同じ封止空間82に気密封止されている。
【0023】
封止空間82は、絶縁基板41の上面と、圧電基板11の下面と、圧電基板11の上面から絶縁基板41の上面にかけて被覆する封止部材81とに囲まれて形成されており、この封止空間82の中に、IDT電極21a,21b、IDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22d、モニター用パターン23、モニター用パッド電極24a,24b、IDT電極用端子電極52a,52b,52c,52d、モニター用端子電極54a,54bおよび接続導体71が気密封止されている。
【0024】
また、IDT電極21a,21bは弾性表面波の伝搬方向に沿って並んで形成されており、その両側に一対の反射器電極25が形成されて、圧電基板11とIDT電極21a,21bと反射器電極25とによって、特定の周波数の信号を選択的に通過させる共振器型の弾性表面波フィルタが構成されている。そして、反射器電極25はIDT電極21a,21bと同様に保護膜31に被覆されて封止空間82に気密封止されている。
【0025】
さらに、絶縁基板41の上面に形成されたモニター用端子電極54a,54bと絶縁基板41の下面に形成されたモニター用外部電極64a,64bとがモニター用配線導体74a,74bによってそれぞれ接続されており、絶縁基板41の上面に形成されたIDT電極用端子電極52a,52b,52c,52dと絶縁基板41の下面に形成されたIDT電極用外部電極62a,62b,62c,62dとがIDT電極用配線導体(図示せず)によって接続されている。このようにして、モニター用パターン23の両端は、モニター用パッド電極24a,24bと、接続導体71,71と、モニター用端子電極54a,54bと、モニター用配線導体74a,74bとを介してモニター用外部電極64a,64bに接続されている。また、IDT電極21aは、IDT電極用パッド電極22a,22cと、接続導体(図示せず)と、IDT電極用端子電極52a,52cと、IDT電極用配線導体(図示せず)とを介してIDT電極用外部電極62a,62cに接続されている。さらに、IDT電極21bは、IDT電極用パッド電極22b,22dと、接続導体(図示せず)と、IDT電極用端子電極52b,52dと、IDT電極用配線導体(図示せず)とを介してIDT電極用外部電極62b,62dに接続されている。そして、例えば、IDT電極21aを入力側のIDT電極とし、IDT電極21bを出力側のIDT電極として不平衡入出力とする場合には、外部からの電気信号をIDT電極用外部電極62aに入力してIDT電極用外部電極62bから濾波された電気信号を出力する。このときIDT電極用外部電極62c,62dはグランド電位に接続される。
【0026】
このような構成を有した本例の弾性表面波装置によれば、IDT電極21a,21bと同じ封止空間82に気密封止された帯状の導体からなるモニター用パターン23の両端に接続されたモニター用外部電極64a,64bを弾性表面波装置の表面に有していることから、封止状態が不良である場合にモニター用パターン23を腐食させる気体または液体が封止空間82に浸入すると、それによってモニター用パターン23が腐食してその電気抵抗が増大するので、モニター用パターン23の両端に接続された一対のモニター用外部電極64a,64b間の電気抵抗の変化の有無によって封止状態の良否を判断することができる。これにより、封止部材として樹脂を使用した場合においても、ヘリウムリークテストと異なって容易に封止状態を判断でき、封止空間が小さい場合においても、バブルリークテストと異なって容易に封止状態を判断できるので、小型化が可能で封止状態の判断が容易な弾性表面波装置を得ることができる。
【0027】
また、IDT電極21a,21bは異なる電位に接続される一対の櫛形電極の櫛歯同士が微小な間隔をあけて噛み合うように配置された構造をそれぞれ有していることから、導電性を有する異物が接触すると、異なる電位を有する隣り合う櫛歯同士が接続されて電気的短絡が生じるという問題が発生するが、本例の弾性表面波装置によれば、モニター用パターン23を露出させてIDT電極21a,21bを被覆した保護膜31を有していることから、IDT電極21a,21bに導電性異物が接触することにより生じる電気的短絡の発生を保護膜31によって防止しつつ、モニター用パターン23を腐食させる気体または液体をモニター用パターン23に接触させることが可能となるため、導電性異物の接触によるIDT電極21a,21bの電気的短絡が防止され、且つ封止状態の判断が容易な弾性表面波装置を得ることができる。なお、モニター用パターン23の全ての部分が保護膜31から露出している必要はなく、同様にIDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dおよびモニター用パッド電極24a,24bの全ての部分が保護膜31から露出している必要はない。
【0028】
さらに、本例の弾性表面波装置は、IDT電極21a,21bと同じ封止空間82に気密封止された帯状の導体からなるモニター用パターン23の両端に接続されたモニター用外部電極64a,64bを弾性表面波装置の表面に有している。このような本例の弾性表面波装置によれば、例えば、一対のモニター用外部電極64a,64b間の電気抵抗を測定した後に、モニター用パターン23を腐食させる気体または液体中に弾性表面波装置を放置することによって、封止状態が不良である弾性表面波装置の封止空間82内のモニター用パターン23を腐食させて電気抵抗を増大させ、しかる後に、一対のモニター用外部電極64a,64b間の電気抵抗を再度測定することによって、放置後の電気抵抗の測定値が放置前の測定値に対して増加しているものを封止状態が不良であると判断するような封止状態判断方法を用いることが可能となる。
【0029】
(実施の形態の第2の例)
図4(a)は本発明の弾性表面波装置の実施の形態の他の例を模式的に示す外観斜視図であり、図4(b)は(a)におけるB−B’線断面図である。図5(a)は図4の弾性表面波装置を構成する弾性表面波素子の下面を模式的に示す平面図であり、図5(b)は(a)の保護膜を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。図6(a)は図4の弾性表面波装置を構成する実装用基体の上面を模式的に示す平面図であり、図6(b)は図4の弾性表面波装置を構成する実装用基体の下面を模式的に示す平面図である。なお、本例においては前述した第1の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
【0030】
本例の弾性表面波装置における特徴的な部分は、IDT電極21a,21bとIDT電極用パッド電極22a,22bとモニター用パターン23とモニター用パッド電極24aと反射器電極25とを囲繞する環状パッド電極26が圧電基板11の下面に形成され、IDT電極用端子電極52a,52bとモニター用端子電極54aとを囲繞する環状端子電極56が絶縁基板41の上面に環状パッド電極26に対応して形成されており、環状パッド電極26と環状端子電極56とが環状接続導体76によって接続されて、絶縁基板41の上面と圧電基板11の下面と環状接続導体76とによって囲まれた封止空間82が形成されていることである。
【0031】
そして、IDT電極21a,21bとIDT電極用パッド電極22a,22bとモニター用パターン23とモニター用パッド電極24aと反射器電極25とIDT電極用端子電極52a,52bとモニター用端子電極54aとが封止空間82の中に気密封止されている。すなわち、本例の弾性表面波装置においては環状接続導体76が封止部材として機能している。なお、このように環状接続導体76を封止部材として用いる構成は、前述の第1の例に適用してもよい。また、この第2の例における封止部材として第1の例における封止部材81を適用しても構わない。
【0032】
さらに、絶縁基板41の下面にはモニター用外部電極64a,64bおよびIDT電極用外部電極62a,62bが形成されており、モニター用端子電極54aはモニター用配線導体74aを介してモニター用外部電極64aに、環状端子電極56はモニター用配線導体74bを介してモニター用外部電極64bに、IDT電極用端子電極52aはIDT電極用配線導体(図示せず)を介してIDT電極用外部電極62aに、IDT電極用端子電極52bはIDT電極用配線導体(図示せず)を介してIDT電極用外部電極62bにそれぞれ接続されている。
【0033】
本例の弾性表面波装置によれば、環状パッド電極26はモニター用パターン23の一方端に接続されると同時にIDT電極21a,21bにも接続されていることから、環状パッド電極26はモニター用パッド電極として機能すると同時にIDT電極用パッド電極としても機能するので、弾性表面波素子10のパッド電極の個数を削減して小型の弾性表面波素子10とすることができ、これにより小型の弾性表面波装置を得ることができる。このとき、環状パッド電極26はIDT電極21a,21bのグランド電位に接続される部位に接続されており、また、環状パッド電極26は環状接続導体76と環状端子電極56とモニター用配線導体74bとモニター用外部電極64bとを介してグランド電位に接続されるので、モニター用パッド電極24aおよびモニター用パターン23が環状パッド電極26を介してIDT電極21a,21bと接続されても、弾性表面波装置の電気特性に大きな影響を及ぼすことはない。
【0034】
さらに、本例の弾性表面波装置によれば、モニター用外部電極64bはモニター用パターン23およびIDT電極21a,21bに接続されており、且つ外部のグランド電位に接続されることから、モニター用外部電極として機能すると同時にグランド電位に接続されるIDT電極用外部電極としても機能するので、弾性表面波装置の外部電極の個数を削減することが可能となり、さらに小型の弾性表面波装置を得ることができる。
【0035】
またさらに、本例の弾性表面波装置によれば、モニター用パターン23が途中に他の帯状の部分の幅よりも狭い狭幅部23a,23b,23cを有していることから、モニター用パターン23の他の部分と比較して狭幅部23a,23b,23cの腐食が速く進行するので、封止状態の判断に要する時間を短縮することができる。なお、モニター用パターン23全体の幅が狭い場合と比較すると、幅の狭い部分の長さが短いので製造時に断線等の初期不良が発生する確率が低いため、歩留まり良く製造可能な弾性表面波装置を得ることができる。
【0036】
さらにまた、本発明の弾性表面波装置によれば、複数の狭幅部23a,23b,23cが並列に接続されていることから、製造時に並列に接続された全ての狭幅部23a,23b,23cで断線が発生した場合以外は封止状態の判断が可能で不良とはならないため、さらに歩留まり良く製造可能な弾性表面波装置を得ることができる。
【0037】
なお、図には示されていないが、圧電基板11の破損を防止するための薄い樹脂層で圧電基板11の上面や側面を被覆すると、より信頼性の高い弾性表面波装置を得ることができる。
【0038】
(実施の形態の第3の例)
図7は本発明の弾性表面波装置の実施の形態のさらに他の例を模式的に示す縦断面図である。なお、本例においては前述した第1の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
【0039】
本例の弾性表面波装置における特徴的な部分は、IDT電極21a,21bとIDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dとモニター用パターン23とモニター用パッド電極24a,24bと反射器電極25と保護膜31とが圧電基板11の上面に形成された弾性表面波素子10が、絶縁基板41の上面に形成された凹部43の中に搭載されており、凹部43の上端が封止部材81によって封止されて封止空間82が形成され、その中に弾性表面波素子10の全体が気密封止されていることである。
【0040】
このような構造を有する本例の弾性表面波装置においても、前述した実施の形態の第1の例の弾性表面波装置や実施の形態の第2の例の弾性表面波装置と同様に、容易に封止状態を判断することができる。
【0041】
(実施の形態の第4の例)
次に、本発明の弾性表面波装置の封止状態判断方法の実施の形態の一例について、図1〜図7に示した弾性表面波装置を例にとって説明する。
【0042】
本例の弾性表面波装置の封止状態判断方法は、一対のモニター用外部電極64a,64b間の電気抵抗を測定した後に、モニター用パターン23を腐食させる気体または液体中に弾性表面波装置を放置し、しかる後に、一対のモニター用外部電極64a,64b間の電気抵抗を再度測定し、放置後の電気抵抗の測定値が放置前の測定値に対して増加しているものを封止状態が不良であると判断することを特徴とするものである。
【0043】
これにより、封止部材として樹脂を使用した場合においても、ヘリウムリークテストと異なって容易に封止状態を判断でき、封止空間が小さい場合においても、バブルリークテストと異なって容易に封止状態を判断できる。
【0044】
また、モニター用パターンを腐食させる気体または液体中に弾性表面波装置を放置する前後における電気抵抗の2回の測定値を比較して電気抵抗が増大したものを封止状態が不良であると判断すればよいので、例えばネットワークアナライザ等を用いて測定した弾性表面波装置の電気特性の変化によって封止状態を判断する場合と比較すると、複雑なネットワークアナライザ等の測定装置を操作して弾性表面波装置の電気特性を表す波形の微妙な変化から封止状態の良否を判断する必要がないので、熟練した作業者による高度な判断が不要であり、抵抗計のような単純で安価な測定装置のみを用いて、誰にでも容易に封止状態を判断することが可能な弾性表面波装置の封止状態判断方法である。
【0045】
本例の弾性表面波装置の封止状態判断方法において、モニター用外部電極64a,64b間の電気抵抗の測定は、例えばミリオームメーターのような抵抗計を用いて、そのプローブをモニター用外部電極64a,64bに接触させることにより容易に測定することができる。
【0046】
また、本例の弾性表面波装置の封止状態判断方法において、モニター用パターン23を腐食させる気体または液体の種類および弾性表面波装置の放置時間については、モニター用パターン23の材質および形状等に応じて適宜選択可能である。
【0047】
モニター用パターン23を腐食させる気体としては、例えば塩素や四塩化珪素などの腐食性ガスが使用できるが、モニター用パターン23の材質としてイオン化傾向が高く腐食しやすい金属を選択すれば、水蒸気も充分使用可能である。このようなモニター用パターン23を腐食させる気体を使用する場合は、弾性表面波装置をチャンバーに投入した後に、チャンバー内にモニター用パターン23を腐食させる気体を注入する。このときモニター用パターン23を腐食させる気体を注入後に加圧すると、モニター用パターン23を腐食させる気体の封止空間82内への浸入を早めることができ、封止状態の判断に要する時間を削減することができる。また、モニター用パターン23を腐食させる気体の注入前にチャンバー内を減圧すると、モニター用パターン23を腐食させる気体の封止空間82内への浸入をさらに早めることができ、封止状態の判断に要する時間をさらに削減することができる。
【0048】
また、モニター用パターン23を腐食させる液体としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液や、塩酸などの酸性溶液が使用でき、このような液体中に弾性表面波装置を浸漬した後に、弾性表面波装置に付着した液体を洗浄して取り除いて乾燥させる。この場合もモニター用パターン23の材質にイオン化傾向が高く腐食しやすい金属を選択することにより、酸性やアルカリ性の度合いが小さい液体を使用することが可能となり、弾性表面波装置の他の部分へのダメージをなくすことができる。
【0049】
本発明の弾性表面波装置および弾性表面波装置の封止状態判断方法において、圧電基板11は、例えば、水晶,タンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶,四ホウ酸リチウム単結晶等の圧電性の単結晶、あるいはチタン酸鉛,ジルコン酸鉛等の圧電セラミックスから成り、IDT電極21a,21b等の各種電極を支持する支持体として機能するとともに、IDT電極21a,21bを介して圧電基板11に電気信号が印加されると、所定の弾性表面波を発生させる機能を有する。なお、圧電基板11の厚みは0.1〜0.5mm程度がよく、0.1mm未満では機械的強度が不足して脆くなり、0.5mmを超えると弾性表面波装置の薄型化の障害となり材料コストも大きくなるので好ましくない。
【0050】
圧電基板11が圧電単結晶から成る場合は、圧電単結晶材料のインゴット(母材)を所定の結晶方向となるように切断および研磨し、タンタル酸リチウム単結晶およびニオブ酸リチウム単結晶などの強誘電体単結晶の場合は電界下徐冷法などによって単一分域化処理することにより、所望の圧電特性を有した圧電基板11を得ることができる。
【0051】
圧電基板11が圧電セラミックスから成る場合は、原料粉末にバインダを加えてプレスする方法、あるいは原料粉末を水や分散剤と共にボールミルを用いて混合した後に乾燥し、バインダ,溶剤,可塑剤等を加えてドクターブレード法により成型する方法などによってシート状と成し、それを必要に応じて積層しプレスした後に、800℃〜1400℃のピーク温度で0.5〜8時間焼成し、例えば、厚み方向に80〜200℃の温度にて3〜6kV/mmの電圧をかけて分極処理を施すことによって、所望の圧電特性を有した圧電基板11を得ることができる。
【0052】
IDT電極21a,21bは、弾性表面波の伝搬方向に沿って配設した複数のフィンガー電極(電極指)の一端がバスバー電極(共通電極)で接続されて成る一対の櫛歯状電極が、それぞれの櫛歯状電極の電極指が弾性表面波の伝搬方向に交互に配置されるように噛み合わせた状態で対向配置されて構成されている。そして、所定の電気信号が印加されると圧電基板11の表面に電極指の配列ピッチに対応した弾性表面波を発生させる機能を有する。
【0053】
反射器電極25は、弾性表面波の伝搬方向に沿ってIDT電極21a,21bの電極指とほぼ同じピッチで等間隔に配設した複数の反射電極の両端を、共通電極で接続して構成されている。そして、IDT電極21a,21bの形成領域で発生する弾性表面波を反射して、一対の反射器電極25の間に閉じ込める機能を有する。このような一対の反射器電極25とその間に配置されたIDT電極21a,21bとによって、共振器型の弾性表面波フィルタが構成されている。
【0054】
IDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dおよびモニター用パッド電極24a,24bは、それぞれIDT電極21a,21bおよびモニター用パターン23と接続されており、弾性表面波素子10と実装用基体40とを電気的に接続する接続導体71が接合される部分である。
【0055】
環状パッド電極26は、IDT電極21a,21bとIDT電極用パッド電極22a,22bとモニター用パターン23とモニター用パッド電極24aと反射器電極25とを囲繞するようにリング状(環状)に形成されており、環状接続導体76によって環状端子電極56と接続されることにより、圧電基板11の下面と絶縁基板41の上面との間に封止空間91を形成する機能を有すると同時にIDT電極21a,21bおよびモニター用パターン23を環状接続導体76に電気的に接続する機能を有する。
【0056】
なお、上記IDT電極21a,21b,IDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dおよびモニター用パッド電極24a,24b,環状パッド電極26および反射器電極25等の圧電基板11に形成される電極は、例えば、AlやAlを主成分とする合金等の金属材料から成り、例えば、蒸着やスパッタリングによって圧電基板11の表面に形成した電極膜上にレジストをスピンコートし、ステッパー装置などを用いて露光・現像した後に、RIE(Reactive Ion Etching)装置などを用いてエッチングすることによって形成される。IDT電極21a,21bおよび反射器電極25の厚みは、例えば0.1〜1μm程度であり、使用する圧電基板や所望する周波数特性および温度特性に応じて決定される。IDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dおよびモニター用パッド電極24a,24bおよび環状パッド電極26については、半田との接合性を向上させるために上面をCr,Ni,Au等で被覆することが望ましく、耐食性を向上するために表面はAuで被覆することが望ましい。厚みも他の電極よりも厚い方が望ましい。
【0057】
モニター用パターン23はIDT電極21a,21bと同じ封止空間82に気密封止されており、封止状態が不良である弾性表面波装置の封止空間82に浸入したモニター用パターン23を腐食させる気体または液体により腐食して電気抵抗が増加することによって、弾性表面波装置の封止状態が不良であることを示す機能を有する。よって、モニター用パターン23としては腐食しやすい材質および形状であることが望ましい。
【0058】
モニター用パターン23の材質としてはイオン化傾向の高い金属が望ましく、特に酸化に伴うギブズの自由エネルギー変化が負であるような金属は、酸化反応が進行しやすく腐食しやすいので、封止状態の判断に要する時間が削減できるため望ましい。また、IDT電極用外部電極62a,62b,62c,62dおよびモニター用外部電極64a,64bの表面の材質よりもイオン化傾向が高い金属であることが望ましく、これにより、腐食性の気体または液体として、モニター用パターン23の材質は腐食させるがIDT電極用外部電極62a,62b,62c,62dおよびモニター用外部電極64a,64bの表面の材質は腐食させないものを選択することによって、IDT電極用外部電極62a,62b,62c,62dおよびモニター用外部電極64a,64bに損傷を与えることなく弾性表面波装置の封止状態の判断を行なうことができる。IDT電極21a,21bや反射器電極25の材質としてよく利用され、イオン化傾向が高く腐食しやすいAlおよびAlを主成分とするAl−Cu,Al−Si,Al−Si−Cu等の合金によってモニター用パターン23を形成すれば、モニター用パターン23を腐食させる気体として水蒸気を使用できるので、弾性表面波装置を何ら損傷することなく、簡単な設備を用いて容易に弾性表面波装置の封止状態を判断することができる。
【0059】
モニター用パターン23の形状としては、腐食を短時間で進行させるという観点から、厚みが薄く幅が狭い方が望ましいが、全体的に幅が狭いと製造時に断線不良が発生しやすくなるので、部分的に狭幅部23a,23b,23cを有する形状とするのが望ましい。狭幅部23a,23b,23cの形状としては、例えば、厚みが0.05μm〜0.2μm,幅が0.5μm〜2μm,長さが50μm〜200μmとされる。モニター用パターン23をIDT電極21a,21bおよび反射器電極25と同じ材料で同じ厚みに形成する場合には、モニター用パターン23をIDT電極21a,21bおよび反射器電極25と同時に形成することが可能となるので、単純な工程で製造可能な弾性表面波装置を得ることができる。
【0060】
保護膜31は、IDT電極21a,21bに金属性異物などが付着して電気的短絡が発生することを防止する機能を有し、例えばSiOやSiN等の絶縁性もしくは半導電性の材料が好適に使用でき、その厚みは、例えば0.01μm〜0.05μm程度とされる。例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置等を用いて膜を形成した後にフォトリソグラフィー技術を用いてパターンニングして形成することができる。
【0061】
絶縁基板41は、例えば、ガラス−セラミックスやアルミナ等のセラミック材料やエポキシ樹脂等の樹脂材料から成る単層あるいは多層の基板であり、封止空間82を形成する機能に加えて圧電基板11を保護する機能を有する。なお、絶縁基板41の厚みは0.1〜0.5mm程度がよく、0.1mm未満では機械的強度が不足して圧電基板11を保護する機能が低下し、0.5mmを超えると弾性表面波装置の薄型化の障害となり材料コストも大きくなるので好ましくない。
【0062】
絶縁基板41がセラミック材料から成る場合は、例えば、原料粉末にバインダを加えてプレスする方法、あるいは原料粉末を水や分散剤と共にボールミルを用いて混合した後に乾燥し、バインダ,溶剤,可塑剤等を加えてドクターブレード法により成型する方法などによってシート状と成し、それを必要に応じて積層しプレスした後に、800℃〜1400℃のピーク温度で0.5〜8時間焼成することによって形成できる。
【0063】
IDT電極用端子電極52a,52b,52c,52dおよびモニター用端子電極54a,54bは、弾性表面波素子10と実装用基体40とを電気的に接続する接続導体71が接合される部分であり、IDT電極用配線導体(図示せず)およびモニター用配線導体74a,74bによってIDT電極用外部電極62a,62b,62c,62dおよびモニター用外部電極64a,64bと接続されている。
【0064】
環状端子電極56は、IDT電極用端子電極52a,52bおよびモニター用端子電極54aを囲繞するようにリング状に形成されており、環状接続導体76によって環状パッド電極26と接合されることにより、圧電基板11の下面と絶縁基板41の上面との間に封止空間82を形成する機能を有する。
【0065】
IDT電極用外部電極62a,62b,62c,62dおよびモニター用外部電極64a,64bは、絶縁基板41の下面に形成されており、弾性表面波装置を実装基板等に機械的に接合し電気的に接続する機能を有する。また、IDT電極用配線導体(図示せず)およびモニター用配線導体74a,74bによってIDT電極用端子電極52a,52b,52c,52d、モニター用端子電極54a,54bまたは環状端子電極56と接続されている。
【0066】
なお、絶縁基板41に形成される上記のIDT電極用端子電極52a,52b,52c,52d、モニター用端子電極54a,54b、環状端子電極56、IDT電極用外部電極62a,62b,62c,62dおよびモニター用外部電極64a,64bは、Ag,Cu等の良導電性の金属膜から成り、例えば、Ag,Cu等から成る導電ペーストを従来周知のスクリーン印刷法やローラー転写等を用いて塗布して500〜900℃程度で焼成することにより形成できる。さらに表面にNi,Sn,Auなど半田との接合性の高い金属膜をメッキ等によって形成すると、半田との接合性を良好なものとすることができる。また、耐食性向上の観点からは表面をAuの層とすることが望ましい。
【0067】
IDT電極用配線導体(図示せず)およびモニター用配線導体74a,74bは、絶縁基板41の上面に形成されたIDT電極用端子電極52a,52b,52c,52d、モニター用端子電極54a,54bおよび環状端子電極56と、絶縁基板41の下面に形成されたIDT電極用外部電極62a,62b,62c,62dおよびモニター用外部電極64a,64bとを電気的に接続する機能を有し、例えば、絶縁基板41にドリルやレーザー等によって形成した孔にAg,Cu等の導電性ペーストを充填して500〜900℃程度で焼成することにより形成される。
【0068】
接続導体71はIDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dおよびモニター用パッド電極24a,24bとIDT電極用端子電極52a,52b,52c,52dおよびモニター用端子電極54a,54bとを電気的に接続する機能を有する。接続導体71の材質としては、前述した実施の形態の第1の例の弾性表面波装置および実施の形態の第2の例の弾性表面波装置の場合は、例えばAuや半田などからなる金属バンプが好適に用いられ、前述した実施の形態の第3の例の弾性表面波装置の場合は、例えばAuやAlなどの金属細線が好適に用いられる。
【0069】
環状接続導体76は環状パッド電極26と環状端子電極56とを電気的に接続すると同時に圧電基板11の下面と絶縁基板41の上面との間に封止空間82を形成する機能を有し、前述した実施の形態の第2の例の弾性表面波装置においては封止部材としても機能している。環状接続導体76の材質としては、例えば半田が好適に使用できる。弾性表面波装置を実装基板等に実装するためのリフロー処理を行なう際の再溶融を防止するという観点からは高融点の半田が望ましい。
【0070】
前述した実施の形態の第1の例の弾性表面波装置において、封止部材81は、圧電基板11の上面から絶縁基板41の上面にかけて覆って封止空間82を形成する機能を有し、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が好適に使用され、その厚みは、例えば50μm〜500μm程度とされる。このような封止部材81は、例えば熱硬化性樹脂を用いる場合であれば、弾性表面波素子10のモニター用パッド電極24a,24bおよびIDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22dと、実装用基体40のモニター用端子電極54a,54bおよびIDT電極用端子電極52a,52b,52c,52dとを接続導体71で接続した後に、液状の熱硬化性樹脂を真空印刷機などを用いて塗布し、高温槽などに投入して加熱して硬化させることにより形成することができる。
【0071】
また、前述した実施の形態の第3の例において、封止部材81は絶縁基板41の上面の開口部を覆って封止空間82を形成する機能を有し、例えばFe−Ni−Co等の合金からなる金属が好適に用いられ、その厚みは、例えば10μm〜100μmとされる。また、必要に応じて表面にNiやAuのメッキを施してもよく、例えばシーム溶接等の方法によって実装用基体40の上面に接合される。
【0072】
(変形例)
本発明は前述した実施の形態の第1〜第4の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良が可能である。
【0073】
例えば、前述した実施の形態の例においては、弾性表面波装置として、圧電基板11とIDT電極21a,21bと反射器電極25とによって共振器型の弾性表面波フィルタが構成された例を示したが、反射器電極25を有さないトランスバーサル型の弾性表面波フィルタや、IDT電極を一つしか有さない一端子対弾性表面波共振器およびこれを利用したラダー型の弾性表面波フィルタなど、他の弾性表面波装置においても本発明が有効であることは言うまでもない。
【実施例】
【0074】
次に、本発明の弾性表面波装置および弾性表面波装置の封止状態判断方法の具体例について図4〜図6に示す実施の形態の第2の例の弾性表面波装置を例にとって説明する。
【0075】
まず、分割されて圧電基板11となる圧電母基板としてタンタル酸リチウム(LiTaO)を用い、その主面上に厚みが0.1μmのAl−Cu(Al:99%)の薄膜を形成した。
【0076】
次に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジストを約0.5μmの厚みに塗布した。
【0077】
次に、縮小投影露光装置(ステッパー)を用いてフォトレジストを露光し、現像装置を用いて不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させて、図5に示す弾性表面波素子10におけるIDT電極21a,21b、IDT電極用パッド電極22a,22b、モニター用パターン23、モニター用パッド電極24a、反射器電極25および環状パッド電極26と同形状のレジストパターンを形成した。
【0078】
次に、RIE装置を用いてレジスト非形成部のTi/Al−Cu積層膜をエッチングすることによって、図5に示す弾性表面波素子10におけるIDT電極21a,21b、IDT電極用パッド電極22a,22b、モニター用パターン23、モニター用パッド電極24a、反射器電極25および環状パッド電極26となるように電極パターンを形成し、その後、電極パターン上のレジストを除去した。
【0079】
次に、CVD装置を用いて電極パターンおよび圧電母基板の主面上に保護膜となるSiO膜を約0.02μmの厚みに形成した。
【0080】
次に、SiO膜上にフォトレジストを塗布し、露光および現像してIDT電極用パッド電極22a,22b、モニター用パッド電極24aおよび環状パッド電極26上が開口するようなレジストパターンを形成し、RIE装置を用いてIDT電極用パッド電極22a,22b、モニター用パッド電極24aおよび環状パッド電極26上に位置するSiO膜をエッチングして除去した。
【0081】
次に、スパッタリング装置を使用して全面にCr,Ni,Auの膜をこの順序で成膜し、合計の電極膜厚を約1μmとした。
【0082】
次に、レジストおよびレジスト上に形成されたCr,Ni,Auよりなる導体膜をリフトオフ法により同時に除去し、IDT電極用パッド電極22a,22b,22c,22d、モニター用パッド電極24a,24bおよび環状パッド電極26を完成させた。
【0083】
次に、SiO膜上にフォトレジストを塗布し、露光および現像してモニター用パターン23上が開口するようなレジストパターンを形成し、RIE装置を用いてモニター用パターン23上に位置するSiO膜をエッチングして除去した。
【0084】
次に、ダイシングソーを用いて圧電母基板にダイシング加工を施し、各弾性表面波素子のチップごとに分割して複数の弾性表面波素子10を得た。
【0085】
次に、分割されて実装用基体40となる、上面にIDT電極用端子電極52a,52b、モニター用端子電極54aおよび環状端子電極56が形成され、下面にIDT電極用外部電極62a,62bおよびモニター用外部電極64a,64bが形成され、内部にIDT電極用配線導体(図示せず)およびモニター用配線導体74a,74bがそれぞれ形成されたセラミック基板を用意した。セラミック基板はガラスセラミックスから成る低温焼成基板とした。
【0086】
次に、セラミック基板の上面のIDT電極用端子電極52a,52b、モニター用端子電極54aおよび環状端子電極56上に、半田をスクリーン印刷法にて塗布した後に加熱溶融して半田バンプを形成した。なお、半田にはSn−Pb半田を使用した。
【0087】
次に、フリップチップ実装装置を用いて以上の工程にて作製した複数の弾性表面波素子10を電極の形成面を下にしてセラミック基板上に載置し、半田バンプが溶融しない程度に加熱した上で各弾性表面波素子10に上から圧力と超音波振動を与えてIDT電極用パッド電極22a,22b、モニター用パッド電極24aおよび環状パッド電極26と半田バンプとを超音波融着して仮固定した。
【0088】
次に、複数の弾性表面波素子10が仮固定されたセラミック基板をチャンバー内に投入し、N雰囲気中で加熱して半田バンプを溶融することにより、複数の弾性表面波素子10とセラミック基板とを接合した。これによりIDT電極用パッド電極22a,22bおよびモニター用パッド電極24a,24bとIDT電極用端子電極52a,52bおよびモニター用端子電極54a,54bとが接続導体71によって電気的に接続されると共に、環状パッド電極26と環状端子電極56とが環状接続導体76によって接合されて弾性表面波素子10とセラミック基板との間に封止空間82が形成された。
【0089】
次に、複数の弾性表面波素子10が接合されたセラミック基板にダイシングソーを用いてダイシング加工を施し、個片に分割して複数の弾性表面波装置を得た。なお、モニター用パターン23の厚みは0.1μmとし、狭幅部23a,23b,23cの幅はそれぞれ0.1μm、長さは100μmとした。
【0090】
次に、以上によって作製した本発明の弾性表面波素子のモニター用外部電極64a,64bにプローブを当てて、HIOKI製のミリオームメーター(型式3227)を用いてモニター用外部電極64a,64b間の電気抵抗を測定した。
【0091】
次に、弾性表面波装置を平山製作所製の飽和型超加速寿命試験装置PC−242に投入し、121℃で2気圧の飽和水蒸気雰囲気中に1時間放置した。
【0092】
次に、平山製作所製の飽和型超加速寿命試験装置PC−242から取り出した弾性表面波素子のモニター用外部電極64a,64bにプローブを当てて、HIOKI製のミリオームメーター(型式3227)を用いてモニター用外部電極64a,64b間の電気抵抗を再度測定し、電気抵抗が増加しているものを封止状態が不良であると判断した。
【0093】
次に、封止状態が不良であると判断した弾性表面波装置を分解したところ、モニター用パターン23が腐食していることを確認した。これによって本発明の有効性を確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】(a)は本発明の弾性表面波装置の実施の形態の一例を模式的に示す外観斜視図であり、(b)は(a)におけるA−A’線断面図である。
【図2】(a)は図1の弾性表面波装置を構成する弾性表面波素子の下面を模式的に示す平面図であり、(b)は(a)の保護膜を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。
【図3】(a)は図1の弾性表面波装置を構成する実装用基体の上面を模式的に示す平面図であり、(b)は図1の弾性表面波装置を構成する実装用基体の下面を模式的に示す平面図である。
【図4】(a)は本発明の弾性表面波装置の実施の形態の他の例を模式的に示す外観斜視図であり、(b)は(a)におけるB−B’線断面図である。
【図5】(a)は図4の弾性表面波装置を構成する弾性表面波素子の下面を模式的に示す平面図であり、(b)は(a)の保護膜を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。
【図6】(a)は図4の弾性表面波装置を構成する実装用基体の上面を模式的に示す平面図であり、(b)は図4の弾性表面波装置を構成する実装用基体の下面を模式的に示す平面図である。
【図7】本発明の弾性表面波装置の実施の形態のさらに他の例を模式的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10:弾性表面波素子
11:圧電基板
21:IDT電極
22a,22b,22c,22d:IDT電極用パッド電極
23:モニター用パターン
23a,23b,23c:モニター用パターンの狭幅部
24a,24b:モニター用パッド電極
40:実装用基体
41:絶縁基板
52a,52b,52c,52d:IDT電極用端子電極
54a,54b:モニター用端子電極
64a,64b:モニター用外部電極
81:封止部材
82:封止空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の一方主面にIDT電極と該IDT電極に接続されたIDT電極用パッド電極と帯状の導体からなるモニター用パターンと該モニター用パターンの両端にそれぞれ接続された一対のモニター用パッド電極とが形成されるとともに前記IDT電極用パッド電極と前記モニター用パターンと前記モニター用パッド電極とを露出させて前記IDT電極を被覆した保護膜が形成された弾性表面波素子が、絶縁基板に前記IDT電極用パッド電極に対応したIDT電極用端子電極と前記モニター用パッド電極に対応したモニター用端子電極と該モニター用端子電極に接続されたモニター用外部電極とが形成された実装用基体に、前記IDT電極用パッド電極と前記IDT電極用端子電極とを、および前記モニター用パッド電極と前記モニター用端子電極とをそれぞれ接続導体で接続して実装されているとともに、前記IDT電極および前記モニター用パターンが封止部材により同じ封止空間に気密封止されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】
前記モニター用パターンが前記IDT電極と同じ材料で同じ厚みに形成されていることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
一対の前記モニター用外部電極の一方がグランド電位に接続され、このモニター用外部電極に接続された前記モニター用パッド電極が前記IDT電極のグランド電位に接続される部位に接続されていることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記モニター用パターンが途中に他の帯状の部分の幅よりも狭い狭幅部を有することを特徴とする請求項1記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
複数の前記狭幅部が並列に接続されていることを特徴とする請求項4記載の弾性表面波装置。
【請求項6】
請求項1記載の弾性表面波装置を、一対の前記モニター用外部電極間の電気抵抗を測定した後に、前記モニター用パターンを腐食させる気体または液体中に放置し、しかる後に、一対の前記モニター用外部電極間の電気抵抗を再度測定し、放置後の電気抵抗の測定値が放置前の測定値に対して増加しているものを封止状態が不良であると判断することを特徴とする弾性表面波装置の封止状態判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−85751(P2008−85751A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264265(P2006−264265)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】