説明

弾性表面波装置及びその製造方法

【課題】 異なる複数の周波数特性を有すると共に、IDT電極のメカニカルマイグレーションを抑制した弾性表面波装置及びその製造方法を提供する
【解決手段】 本発明に係る弾性表面波装置1は、圧電基板7と、圧電基板7上に形成され、第1導電膜31を有する第1のIDT電極9と、圧電基板7上に形成された第2のIDT電極13であって、第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33を順次積層した第1の積層体を有する第2のIDT電極13と、を備えるとともに、第2導電膜32がTiからなり、第1導電膜31及び第3導電膜33が第2導電膜32とは異なる材料で構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単一の圧電基板上に互いに異なる周波数特性を有するIDT電極を複数形成した弾性表面波装置が種々提案されている。例えば、特許文献1に記載された弾性表面波装置では、2種類のIDT電極の膜厚を互いに異ならせることによって、2つの周波数特性を得ている。
【特許文献1】特開平10−145172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の弾性表面波装置では、IDT電極を構成する導電膜が単一の材料層で構成されている。そして、IDT電極を構成する導電膜は、一般的にAlやAl合金等の比較的耐電力特性の弱い材料で形成されているため、メカニカルマイグレーションによるIDT電極の短絡や断線が発生するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、異なる複数の周波数特性を有すると共に、IDT電極のメカニカルマイグレーションを抑制した弾性表面波装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る弾性表面波装置は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成され、第1導電膜を有する第1のIDT電極と、前記圧電基板上に形成された第2のIDT電極であって、前記第1導電膜、第2導電膜及び第3導電膜を順次積層した第1の積層体を有する第2のIDT電極と、を備えるとともに、前記第2導電膜がTiからなり、前記第1導電膜及び前記第3導電膜が前記第2導電膜とは異なる材料で構成されていることを特徴とする。
【0006】
また、上記弾性表面波装置において、前記第1のIDT電極は、前記第1導電膜及び前記第2導電膜を順次積層した第2の積層体を有するように構成してもよい。
【0007】
また、前記第1導電膜及び前記第3導電膜は、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Cu及びCu合金のうちの一つからなるように構成することが好ましい。
【0008】
本発明に係る弾性表面波装置の製造方法は、圧電基板上に、第1のIDT電極及び第2のIDT電極を備えた弾性表面波装置を製造する方法であって、前記圧電基板上に、第1導電膜、第2導電膜及び第3導電膜を順次積層した積層体を形成する工程と、前記第3導電膜を選択的にエッチングし、前記積層体に、前記第1導電膜及び前記第2導電膜からなる第1領域と、前記第1導電膜、前記第2導電膜及び前記第3導電膜からなる第2領域とを形成する工程と、前記積層体の前記第1領域をエッチングすることにより前記第1のIDT電極を形成する工程と、前記積層体の前記第2領域をエッチングすることにより前記第2のIDT電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の弾性表面波装置の製造方法は、圧電基板上に、第1のIDT電極及び第2のIDT電極を備えた弾性表面波装置を製造する方法であって、前記圧電基板上に、第1導電膜、第2導電膜及び第3導電膜を順次積層した積層体を形成する工程と、前記第2導電膜及び前記第3導電膜を選択的にエッチングし、前記積層体に、前記第1導電膜からなる第1領域と、前記第1導電膜、前記第2導電膜及び前記第3導電膜からなる第2領域とを形成する工程と、前記積層体の前記第1領域をエッチングすることにより前記第1のIDT電極を形成する工程と、前記積層体の前記第2領域をエッチングすることにより前記第2のIDT電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記いずれかの弾性表面波装置の製造方法において、前記第2の導電膜がTiからなり、前記第1導電膜及び前記第3導電膜が前記第2導電膜とは異なる材料で構成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記第1の導電膜及び前記第3の導電膜が、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Cu及びCu合金のうちの一つからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異なる複数の周波数特性を有すると共に、IDT電極のメカニカルマイグレーションを抑制した弾性表面波装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る弾性表面波装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る弾性表面波装置の平面図である。図2は、図1の弾性表面波装置のII−II線断面図である。図3は、図1の弾性表面波装置のIII−III線断面図である。図4は、図1の弾性表面波装置のIV−IV線断面図である。
【0015】
図1〜図4に示すように、本実施形態に係る弾性表面波装置1は、弾性表面波素子3と、この弾性表面波素子3を接合するベース基板5とを備えている。なお、図1では、説明の便宜のため、ベース基板5及び後述する半田バンプ25の図示を省略している。
【0016】
弾性表面波素子3は、例えば弾性表面波フィルタや弾性表面波共振子等であり、圧電基板7と、圧電基板7上に形成された第1のIDT電極9、第1の電極端子11、第2のIDT電極13、第2の電極端子15及び枠体17とを備えている。圧電基板7は、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶、四ホウ酸リチウム単結晶等の圧電材料で形成されている。
【0017】
第1のIDT電極9は、図1の矢印Y方向に2個並べて配置されている。各第1のIDT電極9は、櫛歯状に形成された2つの電極(以下、第1の櫛歯状電極という)19,19によって構成されている。各第1の櫛歯状電極19,19は、互いに対向し、電極指19a,19aが互いに噛み合うように配置されている。
【0018】
第1の電極端子11は、第1のIDT電極9の基端部19bに連続しており、図2に示すように、後述するベース基板5に設けられた素子接続用電極21に接続されるようになっている。
【0019】
第2のIDT電極13は、第1のIDT電極9と同様に、図1の矢印Y方向に2個並べて配置されている。各第2のIDT電極13は、櫛歯状に形成された2つの電極(以下、第2の櫛歯状電極という)23,23によって構成されている。各第2の櫛歯状電極23,23は、互いに対向し、電極指23a,23aが互いに噛み合うように配置されている。
【0020】
第2の電極端子15は、第2のIDT電極13の基端部23bに連続しており、図2に示すように、後述するベース基板5に設けられた素子接続用電極21に接続されるようになっている。
【0021】
図2に示すように、枠体17は、第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13を一括して取り囲むように、圧電基板7の周縁部に沿って設けられている。
【0022】
ベース基板5は、セラミックやガラスセラミックなどの絶縁性材料で形成されており、図2〜図4に示すように、半田バンプ25によってその周縁部が枠体17の上面に接合されている。こうすることで、弾性表面波素子は、枠体17とベース基板5とによって封止されている。
【0023】
図2に示すように、ベース基板5における第1の電極端子11及び第2の電極端子15に対応する位置には、ベース基板5を貫通する貫通孔5aが形成されている。この貫通孔5aには、素子接続用電極21が設けられており、各素子接続用電極21は、半田バンプ25によって、対応する各電極端子11,15に接合されている。この構成により、ベース基板5に接合された弾性表面波素子3は、ベース基板5の素子接続用電極21に接続される外部の駆動回路と電気的に接続可能となっている。
【0024】
次に、上記のように構成された第1のIDT電極9、第2のIDT電極13、第1の電極端子11、第2のIDT電極13及び枠体17の断面構成について、詳細に説明する。
【0025】
第1のIDT電極9は、図2及び図3に示すように、第1導電膜31及び第2導電膜32を積層した積層体(第2の積層体)で構成されている。そして、第2のIDT電極13は、図2及び図4に示すように、第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33をこの順に積層した積層体(第1の積層体)で形成されている。こうすることで、第2のIDT電極13の膜厚が、第1のIDT電極9の膜厚より大きくなり、第2のIDT電極13が低周波側の周波数帯域に対応するフィルタ特性を有し、第1のIDT電極9が高周波側の周波数帯域に対応するフィルタ特性を有している。
【0026】
枠体17は、図2〜図4に示すように、第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34をこの順に積層して形成されている。こうすることで、枠体17の高さが、第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13の高さより高くなり、第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13と、ベース基板5との間に空隙が確保される。
【0027】
第1の電極端子11及び第2の電極端子15は、図2に示すように、枠体17と同様、第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34をこの順に積層して形成されている。こうすることで、第1の電極端子11及び第2の電極端子15の高さが、枠体17の高さと同じになり、弾性表面波素子3をベース基板5に接合したときに、第1の電極端子11及び第2の電極端子15を、ベース基板5に設けられた素子接続用電極21に接合することができる。
【0028】
なお、上記の第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33は、後述するように、互いに成膜のタイミングを異ならせて形成されている。
【0029】
さらに、第2の導電膜32は、Tiで形成されている。また、第1導電膜31及び第3導電膜33は、第2の導電膜32とは異なる材料で構成されており、例えば、AlやAl合金(例えば、Al−Cu系、Al−Ti系)、CuやCu合金(例えば、Cu−Mg系、Cu−Ti系、Cu−Rd系)、AgやAg合金(例えば、Ag−Mg系、Ag−Ti系、Ag−Rd系)等の金属膜で形成することができる。
【0030】
また、図示しないが、第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13の露出した表面上には、Si,SiO,SiN,Al等の絶縁性の高い材料で形成された保護膜を設けてもよい。これによって、導電性の異物が第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13に付着することによる短絡を防止することができる。
【0031】
次に、以上のように構成された弾性表面波装置1の製造方法について、図5を参照しつつ説明する。なお、ここでは、第1導電膜31及び第3導電膜33を、Al、Al合金、Cu、Cu合金、Ag及びAg合金のうちのいずれかで形成した場合について説明する。
【0032】
まず、圧電基板7を準備し、図5(a)に示すように、この圧電基板7上に、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の結晶成長法を用いて、第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33を順次形成し、これらの導電膜で形成された積層体Lを形成する。
【0033】
次に、図5(b)に示すように、第3導電膜33上にレジストR1を塗布し、フォトリソグラフィー法により所望のパターンを露光、現像した後、図5(c)に示すように、ウェットエッチング法により第3導電膜33を選択的にエッチングする。このとき、エッチング剤としては、第3導電膜33より第2導電膜32のエッチングレートが小さくなるものを使用することができ、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含むアルカリ現像液(東京応化工業株式会社製,製品名:NMD−W)を使用することで、第3導電膜33のみを除去することができる。そして、図5(d)に示すように、レジストR1を剥離する。こうすることで、積層体Lに、第1導電膜31及び第2導電膜32からなる第1領域P(第1の電極端子11を構成する第3導電膜33aが形成された領域を除く)と、この第1の領域以外の第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33からなる第2領域Sとを形成する。なお、図1に、第1領域Pに対応する領域を破線で示す。
【0034】
続いて、図5(e)に示すように、積層体L上にレジストR2を塗布し、フォトリソグラフィー法により所望のパターンを露光、現像した後、図5(f)に示すように、ドライエッチング法により積層体Lの第1領域P及び第2領域Sをエッチングして、圧電基板7の一部を露出させる。このとき、エッチング剤としては、例えば、BCl,Cl,Nの混合ガスを使用する。そして、図5(g)に示すように、レジストR2を剥離する。こうして、第1のIDT電極9と第2のIDT電極13とがそれぞれ形成される。
【0035】
次に、図6(h)に示すように、積層体L及び圧電基板7上にレジストR3を塗布し、フォトリソグラフィー法により所望のパターンを露光、現像した後、図6(i)に示すように、スパッタリング法等により第4導電膜34を形成する。そして、図6(j)に示すように、レジストR3を剥離して、レジストR3上に形成された第4導電膜34を除去する。こうすることで、第1導電膜31、第2導電膜32、第3導電膜33及び第4導電膜34からなる積層体でそれぞれ構成された第1の電極端子11、第2の電極端子15及び枠体17が形成される。
【0036】
以上のようにして、本実施形態に係る弾性表面波素子3が製造される。
【0037】
そして、図2に示すように、弾性表面波素子3をベース基板5に対向させて配置し、半田バンプ25によって、ベース基板5の周縁部と枠体17とを接合するとともに、ベース基板5に設けられた素子接続用電極21と、第1の電極端子11及び第2の電極端子15とを接合する。こうして、本実施形態に係る弾性表面波装置1が製造される。
【0038】
以上のように構成された弾性表面波装置1によれば、第1のIDT電極9が第1導電膜31及び第2導電膜32によって形成され、第2のIDT電極13が第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33によって形成されている。そのため、第2のIDT電極13の膜厚が第1のIDT電極9の膜厚より大きくなっており、第1のIDT電極9の膜厚と第2のIDT電極13の膜厚とが異なるため、異なる2つの周波数帯の周波数信号を抽出する2つのフィルタ部を形成することができる。
【0039】
また、上記弾性表面波装置1では、第1のIDT電極9を構成する第1導電膜31上、並びに、第2のIDT電極13を構成する第1導電膜31と第3導電膜33との間に、第2導電膜32が形成されており、第2導電膜32に機械的強度が高いTiを採用している。そのため、第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13の機械的強度を高めることができる。第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13は圧電基板7を励振するためのものであり、振動による衝撃が大きい部分であるので、このように機械的強度を高めることで、第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13のメカニカルマイグレーションを抑制し、電極の短絡や断線等の発生を防止することができる。また、Tiは比較的電気抵抗が小さいため、弾性表面波装置1の挿入損失の低下は小さい。
【0040】
また、本実施形態によれば、枠体17が、第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13を形成する第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33からなる積層体上に、第4導電膜34を積層することで形成されている。そのため、例えば上記のように結晶成長法によって各導電膜31,32,33を形成する場合には、第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13の圧電基板7上への形成と同時に、枠体17の一部を形成することができる。枠体17は第2のIDT電極13の膜厚より大きく形成する必要があるため、このように枠体17の一部を同時に形成することで、別個に形成する場合に比べて製造時間を短縮することができる。
【0041】
また、本実施形態では、1つの枠体17によって、第1のIDT電極9と第2のIDT電極13とを一括して包囲しているため、弾性表面波装置の小型化を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、第1の電極端子11が、第1導電膜31及び第2導電膜32だけではなく、第3導電膜33を含む積層体で形成されているため、第1の電極端子11の膜厚が厚くなっている。そのため、第1の電極端子11と素子接続用電極21との接続抵抗が小さくなり、弾性表面波装置1の挿入損失が低減される。また、このように第1の電極端子11の膜厚が厚くなると、半田バンプによる半田食われに起因する第1のIDT電極9と第1の電極端子11との断線を防止することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る弾性表面波装置1の製造方法によれば、第3導電膜31を選択的にエッチングすることによって第1のIDT電極9を形成している。そのため、第1のIDT9の膜厚を第3導電膜33の膜厚に依存することなく、第1導電膜31及び第2導電膜32の膜厚のみによって設定することができるので、第1のIDT電極9の膜厚の再現性を高くすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る製造方法によれば、図5(d)に示すように第1のIDT電極9及び第2のIDT電極13に膜厚の差をつけた後に、図5(g)に示すように各電極のパターニングを行っているため、次のような利点がある。つまり、先に各電極のパターニングを行った後に、各電極の膜厚の差をつけるようにした場合は、エッチングされる上層部分のみではなく、下層部分も露出することになる。そのため、例えば、ウェットエッチングでエッチングした場合には、エッチングの必要のない下層部分もエッチングされ、所望の寸法精度でIDT電極を形成することが困難となる。これに対し、本実施形態では、先に膜厚の差をつけてから、各電極をパターニングしているので、エッチングの必要のない層が露出することがなく、IDT電極を精度良く形成することができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、第1のIDT電極9を第1導電膜31及び第2導電膜32によって形成しているが、第1導電膜31のみで形成してもよい。この場合、例えば、図5(d)に示される製造工程に続いて、フォトリソグラフィー法を適用し、第2導電膜32をさらにウェットエッチング法により選択的にエッチングする。このとき、エッチング剤としては、第2導電膜32より第1導電膜31のエッチングレートが小さくなるものを使用することができ、例えば、過酸化水素にアンモニア水を混合した混合液(好ましくは、pH値が8となるように調整したもの)を使用することで、第2導電膜32のみを除去することができる。
【0046】
また、上記実施形態に係る製造方法では、図5(e)〜(g)に示す工程で、第1のIDT電極9と第2のIDT電極13とを同時に形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、第1領域Pのエッチングと第2領域Sのエッチングとを個別に順次行うようにしてもよい。この場合、第1領域P又は第2領域Sのいずれか一方をレジストで完全にマスクし、他方をエッチングしてパターニングした後、続いて逆の工程を行うようにすればよい。
【0047】
また、上記実施形態では、異なる2つの周波数特性を有するように、膜厚の異なる第1のIDT電極9と第2のIDT電極13とを1つの圧電基板7上に形成しているが、これに限定されるものではなく、3つ以上の周波数特性を有するように、膜厚の異なる3つ以上のIDT電極を1つの圧電基板上に形成するようにしてもよい。この場合、例えば、第1導電膜31、第2導電膜32及び第3導電膜33に加え、IDT電極を構成する層としてさらに、エッチングストッパー層となる層を含む複数の導電膜層を対応する周波数帯の数に合わせて設ければよい。
【0048】
また、上記実施形態では、第1の電極端子11、第2の電極端子15及び枠体17の高さが、第2のIDT電極13より高く、第2のIDT電極13が第1のIDT電極9の高さより高くなるように構成されているが、このような関係で構成されている限り、第1のIDT電極9、第1の電極端子11、第2のIDT電極13、第2の電極端子15及び枠体17は、これらを構成する上記例示した導電膜層の他に、1層以上の導電膜を含んでいてもよい。
【0049】
また、上記実施形態において、第1の電極端子11、第2の電極端子15及び枠体17は、第4導電膜34を含む少なくとも1層からなるアンダーバンプメタル層を備えてもよい。このアンダーバンプメタル層は、例えば、図2に示す第4導電膜34と半田バンプ25との間に、図示しない第5導電膜及び第6導電膜を第4導電膜34側からこの順に積層し、第4導電膜34、第5導電膜及び第6導電膜からなる積層体によって構成する。このとき、例えば、第4導電膜34をCr,Ni,Ti等で、第5導電膜をNi,W,Ta,Ru,Pt,Ti,Pd等で、第6導電膜をAu等で形成する。なお、このアンダーバンプメタル層は、3層以外の複数層や単一層で構成してもよく、この場合、半田バンプに対するバリア層となるNi,W,Ta,Ru,Pt,Ti,Pd等からなる層を含むように構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る弾性表面波装置の平面図である。
【図2】図1の弾性表面波装置のII−II線断面図である。
【図3】図1の弾性表面波装置のIII−III線断面図である。
【図4】図1の弾性表面波装置のIV−IV線断面図である。
【図5】図1の弾性表面波装置の製造方法を説明する図である。
【図6】図1の弾性表面波装置の製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
1 弾性表面波装置
3 弾性表面波素子
5 ベース基板
7 圧電基板
9 第1のIDT電極
11 第1の電極端子
13 第2のIDT電極
15 第2の電極端子
17 枠体
25 半田バンプ
31 第1導電膜
32 第2導電膜
33 第3導電膜
34 第4導電膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成され、第1導電膜を有する第1のIDT電極と、
前記圧電基板上に形成された第2のIDT電極であって、前記第1導電膜、第2導電膜及び第3導電膜を順次積層した第1の積層体を有する第2のIDT電極と、
を備えるとともに、
前記第2導電膜がTiからなり、前記第1導電膜及び前記第3導電膜が前記第2導電膜とは異なる材料で構成されていることを特徴とする、弾性表面波装置。
【請求項2】
前記第1のIDT電極は、前記第1導電膜及び前記第2導電膜を順次積層した第2の積層体を有する、請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
前記第1導電膜及び前記第3導電膜は、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Cu及びCu合金のうちの一つからなる、請求項1又は2に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
圧電基板上に、第1のIDT電極及び第2のIDT電極を備えた弾性表面波装置を製造する方法であって、
前記圧電基板上に、第1導電膜、第2導電膜及び第3導電膜を順次積層した積層体を形成する工程と、
前記第3導電膜を選択的にエッチングし、前記積層体に、前記第1導電膜及び前記第2導電膜からなる第1領域と、前記第1導電膜、前記第2導電膜及び前記第3導電膜からなる第2領域とを形成する工程と、
前記積層体の前記第1領域をエッチングすることにより前記第1のIDT電極を形成する工程と、
前記積層体の前記第2領域をエッチングすることにより前記第2のIDT電極を形成する工程と、
を備える、弾性表面波装置の製造方法。
【請求項5】
圧電基板上に、第1のIDT電極及び第2のIDT電極を備えた弾性表面波装置を製造する方法であって、
前記圧電基板上に、第1導電膜、第2導電膜及び第3導電膜を順次積層した積層体を形成する工程と、
前記第2導電膜及び前記第3導電膜を選択的にエッチングし、前記積層体に、前記第1導電膜からなる第1領域と、前記第1導電膜、前記第2導電膜及び前記第3導電膜からなる第2領域とを形成する工程と、
前記積層体の前記第1領域をエッチングすることにより前記第1のIDT電極を形成する工程と、
前記積層体の前記第2領域をエッチングすることにより前記第2のIDT電極を形成する工程と、
を備える、弾性表面波装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2の導電膜がTiからなり、前記第1導電膜及び前記第3導電膜が前記第2導電膜とは異なる材料で構成されている、請求項4又は5に記載の弾性表面波装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の導電膜及び前記第3の導電膜が、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Cu及びCu合金のうちの一つからなる、請求項4から6のいずれかに記載の弾性表面波装置の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−81211(P2010−81211A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246139(P2008−246139)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】