形状計測装置、及び形状計測方法
【課題】 製作や小型化が容易であり、物体の性質や環境に依存すること無く形状を計測可能な形状計測装置及びそのシステムを提供する。また、光学式触覚センサへの応用へ応用し、光学式触覚センサ自体の機能を失わずに新たに形状計測が可能になるような、形状及び計測触覚情報抽出装置及びそのシステムを提供する。さらに、形状計測装置を利用した形状計測装置を利用した硬度計測方法及び硬度計測システムを提供する。
【解決手段】 形状計測装置1は、タッチパッド3と、タッチパッド3の挙動を撮影するCCDカメラ4を備える。CPU12は、CCDカメラ4からの画像情報を画像処理し、画像内の色情報を利用して、タッチパッド3内の各地点での深さを抽出する。即ち、CPU12は、情報抽出手段としての機能を有している。CPU12は、タッチパッド3内の各地点での深さから最終的に物体W1の形状を抽出する。
【解決手段】 形状計測装置1は、タッチパッド3と、タッチパッド3の挙動を撮影するCCDカメラ4を備える。CPU12は、CCDカメラ4からの画像情報を画像処理し、画像内の色情報を利用して、タッチパッド3内の各地点での深さを抽出する。即ち、CPU12は、情報抽出手段としての機能を有している。CPU12は、タッチパッド3内の各地点での深さから最終的に物体W1の形状を抽出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状計測装置、形状計測方法、形状計測システム、光学式触覚センサ、光学式触覚センサを利用した3次元マーカー位置計測方法、力学量及び形状計測方法、力学量及び形状計測システム、形状計測装置を利用した硬度計測方法及び硬度計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物の形状を計測する装置や方法は様々な種類のものが存在し、多くの産業分野で使用されている。大きく分けて接触式と非接触式が存在する。
非接触式では、光学式の方法が広く普及しており、例えば、スリット光源からのスリット光を対象物に照射し、投影された対象物のスリット画像を解析することで、対象物の3次元形状を測定する技術が種々に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スリット光源ではなく、他のパタ−ン光像を利用している技術も存在する(例えば、特許文献2参照)。また、複数の撮像手段を用いて異なる位置・角度から対象物を撮影し、複数の対象物の撮影画像から画像解析によって対象物の3次元形状を測定する、ステレオビジョン法も普及している。他にも、装置から照射した赤外線が対象物に反射して再び装置に戻ってくるまでの時間からその距離計測する赤外線TOF(Time of Flight)方式を用いた形状計測装置や、1チップCMOS/CCDセンサ上にならぶ多くの画素一つ一つが赤外線TOF(Time of Flight)方式により対象までの距離測定する3次元距離測定カメラ等がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
接触式の形状計測装置としては、主にプロ−ブを対象物に接触させる事で対象物の形状を走査していく方式などがある(例えば、特許文献3参照)。
形状計測方法の応用性は広く、例えば触覚センサへの応用が考えられる。触覚センサとは、人間の皮膚のように物に触れた際の様々な触覚情報(接触力、滑り、形状、温度等)を取得することを目的としたセンサであり、ロボットが周囲の環境を認識し自律して行動する場合に、触覚は非常に重要な情報となる。
【0005】
ロボットが人と共存する社会が現実味を帯びてきている近年では、ロボット自体の運動性能や知能を向上させ、人とロボットとの間でのコミュニケ−ション技術のレベルを向上させるために、触覚センサの開発が数多くなされている。対象物と接触した際の対象物の形状を認識する技術も触覚センサの課題の一つであり、触覚センサに適した形状計測装置・方法が必要とされ、いくつか提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−085371号広報
【特許文献2】特開2005−172622号広報
【特許文献3】特開2002−350128号広報
【特許文献4】特開2009−145085号広報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Oggier, B. Buttgen, F. Lustenberger, G. Becker, B. Ruegg, and A. Hodac, “SwissRanger SR3000 and first experiences based on miniaturized 3D−TOF cameras” In Proceedings of the 1st Range Imaging Research Day, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記で述べた光学式の非接触形状計測方法の殆どが、対象物の表面の特性や周囲の環境によっては計測が出来ないという課題を抱えている。対象物の表面が金属のような鏡面を有していたり、対象物が光透過性を有していたり、あるいは対象物が発光している場合等では、他とは異なる光の反射や光の透過・屈折が生じてしまい、正確な計測ができなくなる。また、対象物が黒色を有しており光吸収性が強い場合、あるいは周囲の環境が暗いような場合には、撮像手段へ反射される光の強度が弱いため、形状に依存した光強度の差が現れにくく計測精度が悪化することも問題である。
【0009】
接触式の形状計測方法では対象物表面の光学的特性や周囲の環境には依存しないが、対象物が柔らかい場合プロ−ブ等の接触により対象物を傷つけたり、破損したりしてしまう。
【0010】
また、触覚センサへ応用する場合、装置の小型化・単純化やリアルタイムでの計測が要求されるが、形状計測方法の原理や構造を考えると、これらの要求を全て満たすことは困難である。
【0011】
さらに、いくつもの形状計測装置・方法が提案されているものの、それらは対象物の硬度までは計測不可能である。触覚センサへの応用や、他の分野での利用を考える際に、形状の計測だけでなく対象物の硬度の計測も可能であることが望ましい。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、対象物の材質、色、硬さ等の特性に依存せず、リアルタイムでの計測が可能であり、装置の小型化・単純化も容易であるような形状計測装置、形状計測方法、形状計測システムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、従来の触覚センサの能力を備えたまま、同時に対象物の形状を計測することが可能な新しい光学式触覚センサ、力学量及び形状計測方法、力学量及び形状計測システム、また、形状計測装置を利用した硬度計測方法及び硬度計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象物との接触部である前記対象物の形状に応じて変形可能な膜と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜を撮影する撮像手段と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜に向けて光を照射する光照射手段と、前記膜と接触しており前記光照射手段から照射された光を減衰する光減衰手段と、を含む形状計測装置をその要旨とする。
【0014】
従って、請求項1に記載の発明によると、変形可能な膜と、撮像手段と、光照射手段と、光減衰手段の4つで構成されており、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。よって、従来の光学式触覚センサのシステムと組み合わせる際やその他の分野への応用の際に、他の形状計測装置よりも容易に応用可能となる。
【0015】
また、対象物は膜と接触しており、接触によって対象物の形に合わせて変形した膜の情報を、撮像手段によって解析する。つまり、対象物から直接形状情報を取得せず、膜の形状から取得するため、対象物の材質、色、光の反射率等の特性に依存せずに計測可能となる。
【0016】
さらに、対象物と接触する膜は変形可能であるため、接触時に対象物を傷つけたり、破損したりする事が無い。よって、対象物の硬さの特性に依存せずに計測可能となる。
なお、「変形可能な膜」は、シリコ−ンゴムなどのシリコ−ン樹脂から形成されることが好ましいが、他のゴム類やエラストマ−などの他の弾性体から形成されていてもよい。
【0017】
「撮像手段」としては、画像情報を電気信号として出力するカメラを用いることが好ましく、特にデジタルカメラを用いることが好ましい。ここで、「デジタル式カメラ」としては、CCDカメラや、C−MOS式イメ−ジセンサを用いたデジタルカメラなどが挙げられる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記膜が、前記膜の対象物が接触する側に照射された光を遮断することをその要旨とする。
従って、請求項2に記載の発明によると、膜が外部からの光を遮断するため、対象物の光の反射率が高い場合、対象物が発光している場合、周囲の環境で強い光が照射されているような場合においても、外乱光の影響を受けずに計測可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記膜が、対象物が接触する側とその反対側で異なる色を有していることをその要旨とする。
従って、請求項3に記載の発明によると、膜が対象物の接触する側とその反対側で異なる色を有しており、色によって光の反射率、遮断率(吸収率)を変えられるため、対象物が接触する側は光を遮断しやすい色とし、その反対側は光を遮断し難い色とすることによって、膜が対象物の接触する側の光のみを遮断するような特性を持つことが可能となる。
【0020】
また、膜は対象物が接触する側とは反対側では、光を吸収し難く反射し易いことが望ましい。よって膜の色は、対象物が接触する側では黒色を有し、その反対側では白色を有することが望ましいが、それに近い色であればその他の色を有していても良い。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記光減衰手段が、前記膜と接触する側が変形可能であり、前記膜と接触する側とは反対側が前記膜と接触する側よりも変形しにくい光減衰性部材であることをその要旨とする。
【0022】
従って、請求項4に記載の発明によると、光減衰性を持つ部材を用いて前記光減衰手段を実現することで、装置の小型化・単純化がさらに容易となる。
また、光減衰手段は膜と接触している側では膜の変形を妨げないように膜にあわせて変形する必要があり、膜と接触していない側では、変形しないことが望ましい。これは、本発明では光減衰手段の膜と接触している側とその反対側の距離の変化の情報を利用するため、膜と接触していない側が変形すると、膜と接触している側の変形量が計測できず、膜の変形量が計測できないためである。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記光減衰手段(前記部材)が、変形可能な光減衰性部材と、それと接触している、前記変形可能な光減衰性部材よりも変形しにくい光透過性もしくは半透過性の部材からなることをその要旨とする。
【0024】
従って、請求項5に記載の発明によると、光減衰手段を変形可能な光減衰性部材と変形不可能な光透過性もしくは半透過性の部材によって構成したため、請求項4に記載されるような変形可能は側と変形不可能な側を持つ光透過性の部材が容易に実現可能となる。
【0025】
また、変形可能な光減衰性部材は変形しやすく光を減衰させる特性を持つため、半透過性を持つ気体、液体、弾性体のいずれかであることが望ましい。変形不可能な部材は、透明なアクリル板であることが望ましいが、光透過性もしくは半透過性を持つ他の部材であってもよい。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記光減衰手段が、光の波長によって異なる減衰率を有していることをその要旨とする。
従って、請求項6に記載の発明によると、前記光減衰手段が光の波長によって異なる減衰率を有しており、その減衰された光の影響は撮像手段によって撮影された画像に表れるため、撮影画像が複数のチャンネルを持っている場合、チャンネルによって輝度値を持つ。請求項10〜12においては、波長帯域によって異なる輝度値である必要があるため、重要な要素である。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置を利用して、前記膜に接触する対象物の形状を計測する方法であって、前記撮像手段からの画像情報を画像処理することにより、撮影された画像の色情報を抽出するとともに、前記色情報と前記光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報との対応関係を利用して前記色情報から前記距離に関する情報を抽出する距離情報抽出手段から、前記距離に関する情報を抽出するステップと、前記距離から前記膜の形状を求めるステップと、前記膜の形状から対象物の形状を求めるステップとを含むことをその要旨とする。
【0028】
従って、請求項7に記載の発明によると、前記撮像手段からの画像情報を画像処理されると、撮影された画像の色情報を抽出され、次に距離情報抽出手段によって、光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報を抽出され、その距離から膜の形状が求まり、最終的に対象物の形状が求まる。即ち、単純な装置と画像処理によって対象物の形状が容易に求まり、対象物の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが出来るため、リアルタイムでの形状計測が可能となる。
【0029】
なお、前記対応関係は、例えば、予め計測した前記色情報と前記距離に関する情報を利用して、実験的に求められた対応関係とすることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記対応関係が、光が前記膜によって反射する際の前記膜の反射現象と、前記光が前記光減衰手段を通過する際の前記光減衰手段による減衰現象と、前記光が前記光減衰手段を通過中に生じる異なる方向への散乱現象とを考慮した、前記色情報と前記距離に関する情報との対応関係であることをその要旨とする。
【0030】
従って、請求項8に記載の発明によると、撮影された画像の色情報と光照射手段から照射された光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を求める際に、光減衰手段による減衰と光減衰手段を通過中に生じる散乱を考慮するため、より実際の現象を再現した対応関係がつくられる。
また、膜によって反射する際の前記膜の反射現象を利用するため、膜に対する光の入射角よって変化する膜の反射率の影響を考慮され、より実際の現象を再現した対応関係がつくられる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項7において、前記対応関係が、前記色情報と、光が前記膜によって反射する際の前記膜の反射率と、前記光が前記光減衰手段を通過する際の前記光減衰手段の減衰率と、前記光が光減衰手段を通過中に異なる方向へ散乱する際の前記光減衰手段の散乱率とを含んだ関数を利用した、前記色情報と前記距離に関する情報との対応関係であることをその要旨とする。
【0032】
従って、請求項9に記載の発明によると、色情報と、反射率(反射係数)、減衰率(減衰係数)、散乱率(散乱係数)を含む関数を利用することで、請求項8に記載された光の反射現象、減衰、散乱を考慮しながら、撮影された画像の色情報と光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を求めることが可能となる。
【0033】
請求項10に記載の発明は、請求項9において、前記減衰率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて求めることをその要旨とする。
従って、請求項10に記載の発明によると、色情報と、実測等の手段によって求めた既知である光が光減衰手段を通過する距離を利用することで、光減衰手段の減衰率(減衰係数)を直接計測することなく求めることが可能となる。
【0034】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10において、前記散乱率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて前記関数の中から消去可能であることをその要旨とする。
【0035】
従って、請求項11に記載の発明によると、光が光減衰手段を通過する距離を求めるための関数の中から、光減衰手段の散乱率(散乱係数)を消去可能であるため、散乱率(散乱係数)を直接計測することなく関数を決定することが可能となる。
【0036】
請求項12に記載の発明は、請求項9〜11のいずれか1項において、前記反射率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて前記関数の中から消去可能であることをその要旨とする。
【0037】
従って、請求項12に記載の発明によると、光が光減衰手段を通過する距離を求めるための関数の中から、膜に対する光の反射率を消去可能であるため、反射率を直接計測することなく関数を決定することが可能となる。
【0038】
請求項13に記載の発明は、請求項7〜12のいずれか1項において、前記対応関係が、複数の前記距離の情報を抽出して求める前記膜の角度を利用することをその要旨とする。
【0039】
従って、請求項13に記載の発明によると、請求項9〜12に記載された方法によって求めた対応関係は、実際の対応関係と比べて誤差を生じている場合があるが、付近の距離の情報を利用して膜の角度を求め、その角度と生じる誤差の対応関係を求めることで、膜の角度の情報を利用して誤差の減少が可能となる。これによって、形状計測方法はより正確となる。
【0040】
請求項14に記載の発明は、対象物との接触部である前記対象物の形状に応じて変形可能な膜と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜を撮影する撮像手段と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜に向けて光を照射する光照射手段と、前記膜と接触しており前記光照射手段から照射された光を減衰する光減衰手段からなる形状計測装置と、前記撮像手段からの画像情報を画像処理することにより、撮影された画像の色情報を抽出するとともに、前記色情報と前記光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報との対応関係を求め,前記対応関係を利用して前記色情報から前記距離に関する情報を抽出する距離情報抽出手段と、前記距離から前記膜の形状を求める膜形状計測手段と、前記膜の形状から前記膜に接触した対象物の形状を求める対象物形状計測手段とを備えることを特徴とする形状計測装置を利用した形状計測システムをその要旨とする。
【0041】
従って、請求項14に記載の発明によると、前記撮像手段からの画像情報を画像処理されると、撮影された画像の色情報を抽出され、次に距離情報抽出手段によって光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報を抽出され、その距離から膜の形状が求まり、最終的に対象物の形状が求まる。即ち、単純な装置と画像処理によって対象物の形状が容易に求まり、対象物の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが出来るため、リアルタイムでの形状計測システムが実現可能となる。
【0042】
請求項15に記載の発明は、前記形状計測装置が備える膜(接触部)の対象物が接触する側とは反対側に配置されたマーカー部と、前記膜に対象物が接触した際の前記マーカー部の挙動を撮影する前記形状計測装置が備える撮像手段とを備えたことを特徴とする触覚情報抽出手段と、請求項1〜6のいずれか1項に記載の前記形状計測装置からなる光学式触覚センサをその要旨とする。
【0043】
従って、請求項15に記載の発明によると、触覚部(接触部)にマーカー部が配置され、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の形状計測方法・装置を組み合わせることが可能である。形状計測装置の膜にマーカー部を配置し、それを形状計測装置が持つ撮像手段によって撮影すれば、マーカー部を持つ光学式触覚センサの機能を果たすことが可能である。即ち、この形状計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする装置を実現できる。
【0044】
請求項16に記載の発明は、請求項15記載の光学式触覚センサを利用して、前記マーカー部の3次元空間での挙動を計測する方法であって、前記形状計測装置が備える撮像手段によって撮影した画像から、前記マーカー部の挙動のうち前記画像上の2次元空間での挙動を求めるステップと、前記膜形状計測手段から、前記マーカー部の挙動のうち前記空間と独立した方向の挙動を求めるステップとを含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した3次元マーカー位置計測方法をその要旨とする。
【0045】
従って、請求項16に記載の発明によると、膜形状計測手段によって求めた膜の形状と画像からマーカーの挙動を3次元で取得可能であるため、従来の光学式触覚センサの計測機能がより向上する。複雑な面を持つ対称物との接触時などに対しても、マーカーの挙動情報が3次元になったことで対応可能となる。
【0046】
請求項17に記載の発明は、請求項15又は16記載の光学式触覚センサを利用して、力学量及び前記膜に接触する対象物の形状を計測する方法であって、前記光学式触覚センサを用いて力学量を測定するステップと、前記光学式触覚センサを用いて前記膜に接触する対象物の形状の計測するステップとを含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した力学量及び形状計測方法をその要旨とする。
【0047】
従って、請求項17に記載の発明によると、触覚部(接触部)にマーカー部が配置され、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の形状計測方法・装置を組み合わせることが可能である。形状計測装置の膜にマーカー部を配置し、それを形状計測装置が持つ撮像手段によって撮影すれば、マーカー部を持つ光学式触覚センサの機能を果たすことが可能である。即ち、この形状計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする方法を実現できる。
【0048】
前記力学量としては、例えば、接触力、滑り、摩擦係数からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
請求項18に記載の発明は、請求項15〜17のいずれか1項に記載の光学式触覚センサと、前記光学式触覚センサを用いて力学量を測定する力学量測定手段と、前記光学式触覚センサを用いて前記膜に接触する対象物の形状の計測する前記対象物形状計測手段とを含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した力学量及び形状計測システムをその要旨とする。
【0049】
従って、請求項18に記載の発明によると、触覚部(接触部)にマーカー部が配置され、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の形状計測方法・装置を組み合わせることが可能である。形状計測装置の膜にマーカー部を配置し、それを形状計測装置が持つ撮像手段によって撮影すれば、マーカー部を持つ光学式触覚センサの機能を果たすことが可能である。即ち、この形状計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とするシステムを実現できる。
【0050】
請求項19に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力を抽出する接触力抽出手段とを利用して、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出する方法であって、前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定するステップと、前記接触力抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出するステップと、前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測するステップと、複数の前記接触状態における前記形状から、対象物の変形量の分布に関する情報を抽出するステップと、前記変形量の分布に関する情報と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出するステップとを含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度分布計測方法をその要旨とする。
【0051】
従って、請求項19に記載の発明によると、複数の接触状態における対象物の形状を計測することで、対象物が変形した場合の変形量の分布に関する情報が抽出可能となる。そして、対象物の形状計測装置が備える膜との接触領域内において、対象物の変形量の分布と計測した接触力の分布を利用することで、対象物の接触領域内における硬度の分布に関する情報を求める方法が実現可能となる。
【0052】
請求項20に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定する接触状態選定手段と、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出する接触力抽出手段と、前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測する形状計測手段と、複数の前記接触状態における前記形状から、対象物の変形量の分布に関する情報を抽出する変形量分布情報抽出手段と、前記変形量の分布に関する情報と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出する硬度分布情報抽出手段とを含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度分布計測システムをその要旨とする。
【0053】
従って、請求項20に記載の発明によると、複数の接触状態における対象物の形状を計測することで、対象物が変形した場合の変形量の分布に関する情報が抽出可能となる。そして、対象物の形状計測装置が備える膜との接触領域内において、対象物の変形量の分布と計測した接触力の分布を利用することで、対象物の接触領域内における硬度の分布に関する情報を求めるシステムが実現可能となる。
【0054】
請求項21に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力を抽出する接触力抽出手段と、前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出する位置関係抽出手段とを利用して、対象物の硬さに関する情報を抽出する方法であって、前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定するステップと、前記接触力抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出するステップと、前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測するステップと、前記位置関係抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出するステップと、複数の前記接触状態における前記形状と前記位置関係から、対象物の変形量を抽出するステップと、前記変形量と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さに関する情報を抽出するステップとを含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度計測方法をその要旨とする。
【0055】
従って、請求項21に記載の発明によると、複数の接触状態対して、対象物の形状と形状計測装置と対象物の位置関係を計測することで、対象物が変形した場合の変形量が抽出可能となる。そして、この対象物の変形量と計測した接触力を利用することで、対象物の硬度に関する情報を求める方法が実現可能となる。
【0056】
請求項22に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定する接触状態選定手段と、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出する接触力抽出手段と、前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物をそれぞれ形状の計測する形状計測手段と、複数の前記接触状態における前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出する位置関係抽出手段と、複数の前記接触状態における前記形状と前記位置関係から、対象物の変形量を抽出する変形量抽出手段と、前記変形量と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さに関する情報を抽出する硬度情報抽出手段とを含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度計測システムをその要旨とする。
【0057】
従って、請求項22に記載の発明によると、複数の接触状態対して、対象物の形状と形状計測装置と対象物の位置関係を計測することで、対象物が変形した場合の変形量が抽出可能となる。そして、この対象物の変形量と計測した接触力を利用することで、対象物の硬度に関する情報を求めるシステムが実現可能となる。
【発明の効果】
【0058】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、形状計測装置の製作が容易になり、形状計測装置の小型化が容易になる。また,従来の光学式触覚センサのシステムやその他の分野への応用が容易になる。さらに,対象物の材質、色、光の反射率等の特性に依存せずに対象物の形状を計測可能となる。
【0059】
請求項2に記載の発明によれば、対象物の光の反射率が高い場合、対象物が発光している場合、周囲の環境で強い光が照射されているような場合においても、外乱光の影響を受けずに対象物の形状を計測可能となる。
【0060】
請求項3に記載の発明によれば、膜が対象物の接触する側の光のみを遮断するような特性を持つことが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、装置の小型化・単純化がさらに容易となる。
【0061】
請求項5に記載の発明によれば、膜の形状に応じて変形可能は側と、その側よりも変形しにくい側を持つ光透過性の部材の部材の製作が容易になる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項10〜12に記載の発明より効果的にすることが可能となる.
請求項7に記載の発明によれば、小型で単純な装置と画像処理によって対象物の形状が容易に求まり、対象物の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが可能となり,さらにリアルタイムでの形状計測が可能となる。
【0062】
請求項8に記載の発明によれば、対象の形状を求めるための理論がより実際の現象と近いものになる。
請求項9に記載の発明によれば、光の反射現象、減衰、散乱を考慮しながら、画像処理によって解析した画像の輝度値と光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を求めることが可能となる。
【0063】
請求項10に記載の発明によれば、光減衰手段の減衰率(減衰係数)を直接計測することなく求めることが可能となる。
請求項11に記載の発明によれば、光減衰手段の散乱率(散乱係数)を直接計測することなく,画像の輝度値と光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を表す関数を決定することが可能となる。
【0064】
請求項12に記載の発明によれば、膜の光に対する反射率を直接計測することなく,画像の輝度値と光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を表す関数を決定することが可能となる。
【0065】
請求項13に記載の発明によれば、計測した形状の誤差に対する補正が可能となり、形状計測方法はより正確となる。
請求項14に記載の発明によれば、小型で単純な装置と画像処理によって対象物の形状が容易に求まり、対象物の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが可能となり,さらにリアルタイムでの形状計測が可能なシステムが実現される.
請求項15に記載の発明によれば、形状計測方法を触覚センサへ応用するとともに、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする装置を実現できる。
【0066】
請求項16に記載の発明によれば、従来の光学式触覚センサの計測機能がより向上する。複雑な面を持つ対称物との接触時などに対しても、マーカーの挙動情報が3次元になったことで対応可能となる。
【0067】
請求項17に記載の発明によれば、形状計測方法を触覚センサへ応用するとともに、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする方法を実現できる。
請求項18に記載の発明によれば、形状計測方法を触覚センサへ応用するとともに、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とするシステムを実現できる。
【0068】
請求項19に記載の発明によれば、形状計測装置を利用して対象物の硬度の分布に関する情報を抽出する方法を実現できる。
請求項20に記載の発明によれば、形状計測装置を利用して対象物の硬度の分布に関する情報を抽出するシステムを実現できる。
【0069】
請求項21に記載の発明によれば、形状計測装置を利用して対象物の硬度に関する情報を抽出する方法を実現できる。
請求項22に記載の発明によれば、形状計測装置を利用して対象物の硬度に関する情報を抽出するシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明における形状計測装置を示す全体斜視図。
【図2】タッチパッドの全体斜視図。
【図3】形状計測システムの構成を示すブロック図。
【図4】光がタッチパッド内を進む際の挙動を示す図。
【図5】形状計測システムによる処理の概略を示すフローチャート。
【図6】対象物非接触時における、形状計測システムによる形状計測の結果を示す図。
【図7】対象物接触時における、形状計測システムによる形状計測の結果を示す図。
【図8】形状計測が備える膜の半球状の部分において、物体と接触する側とは反対側に配置されたマーカー部としてのドットパタ−ンを示す図。
【図9】形状計測システムによる処理の概略を示すフローチャート。
【図10】形状計測装置による対象物の硬度分布抽出方法の処理の概略を示すフローチャート。
【図11】形状計測装置による対象物の硬度抽出システムの構成を示すブロック図。
【図12】形状計測装置による対象物の硬度抽出方法の処理の概略を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0071】
[第1の実施形態]
以下、本発明を形状計測システムに具体化した第1の実施形態を、図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0072】
図1に示されるように、形状計測装置1を構成するケ−シング2の先端側には、板と半球を接合した形状を持つタッチパッド3(接触部)が設けられている。ケ−シング2内には、撮像手段としてのCCDカメラ4配置されている。CCDカメラ4は、タッチパッド3において、物体W1と接触する側とは反対側に配置されている。ケ−シング2内には、光照射手段としての照明5が配置されている。照明5は、タッチパッド3において、物体W1と接触する側とは反対側に配置されている。CCDカメラ4は、タッチパッド3を背面側から撮影するようになっている。
【0073】
図2に示されるように、タッチパッドは、変形可能な膜6、光透過性の板7、膜6と板7を固定するための固定具8で構成されており、板7と固定具8で膜6を挟んで固定した状態になっている。膜6と板7の間には、光減衰手段としての液体9が封入されている。
【0074】
CCDカメラ4は、赤、緑、青の3チャンネルのCCDカメラである。2チャンネル以上のカメラであれば良く、CCDカメラでなくC−MOSカメラであっても良い。
照明5は、同軸落射照明(CCS製:LFV−50SW2)を使用した。また、照明5から照射された光が板7で反射した際に、その成分がCCDカメラ4内に進入するのを防ぐために、照明5に偏光板(CCS製:PL−LFV−50SW2)を装着し、CCDカメラ4に偏光フィルタ−を装着した。また、照明5は、光が照射される位置(光源位置)と光が照射される方向が分かるものであれば、他の点光源や面光源であっても良い。
【0075】
膜6の厚さは一様であることが望ましいが、一様でなくても各部分の厚さの情報があればよい。膜6の形状は自由曲面であり、液体9を封入可能な構造であれば平坦な形状などでも良い。また、膜6は透明シリコ−ンゴム(信越シリコ−ン製:KE−1950−10)に黒色の着色剤を混ぜて形成した厚さ0.5mmの黒色の膜と、透明シリコ−ンゴム(信越シリコ−ン製:KE−1950−10)に白色の着色剤を混ぜて形成した厚さ0.5mmの白色の膜を張り合わせて形成したものである。従って、膜6は物体W1と接触する側は黒色を有し、その反対側は白色を有する。
【0076】
板7は透明なアクリル板であるが、光透過性であり計測時に変形しない程の硬さを持っていれば他の材質でも良い。
板8は金属製の板であるが、計測時に変形しない程の硬さを持っていれば他の材質でも良い。
【0077】
液体9は水道水に赤色顔料(ZEBRA製:JK−05)を溶かした赤色半透明の水であるが、顔料を含み変形可能な物質であれば、水以外の液体や、ゲル、気体、弾性体等でも良い。また、顔料の色は赤色でなくても、光の波長帯域によって異なる反射率や散乱率、減衰率を持つ色の顔料であれば良い。さらに、顔料でなくても同程度の大きさであれば他の粒子であっても良い。顔料の濃度としては、赤色半透明の水の内部に浸入する光を減衰させる際の減衰係数によって、好ましい範囲が決定される。本実施形態では、光の波長が約580〜700nmである波長帯域の光に対する減衰係数が約0.029(1/mm)であり、光の波長が約500〜570nmである波長帯域の光に対する減衰係数が約0.034(1/mm)である。それに近い値であれば他の減衰係数であっても良い。
【0078】
即ち、図1及び図2に示される形状計測装置では、照明5から照射された光はタッチパッド3の内部に封入された液体9を通過し、膜6に反射した後、再び液体9を通過し、最終的にCCDカメラ5へ進入する。
【0079】
図3に示されるように、形状計測装置1を備える形状計測システム10は、形状計測システム10全体を制御する制御部11を備えている。制御部11はCPU12を備えており、CPU12には、ROM13、RAM14及び入出力ポ−ト(I/Oポ−ト)15が接続されている。CPU12は、形状計測システム10全体を制御するための各種処理を実行し、その処理結果を所定の制御信号として出力するようになっている。ROM13には、形状計測システム10を制御するための制御プログラムなどが記憶されている。また、RAM14には、形状計測システム10の動作に必要な各種の情報が一時的に記憶されるようになっている。さらに、入出力ポ−ト15には、前記CCDカメラ4及び前記照明5が接続されている。CPU12には、前記タッチパッド3を撮影することでCCDカメラ4から入力される画像情報が、入出力ポ−ト15を介して入力されるようになっている。それとともに、CPU12は、照明5を点灯させるための信号を、入出力ポ−ト15を介して照明5に対して出力するようになっている。
【0080】
図3に示されるCPU12は、入出力ポ−ト15を介して一定時間ごと(本実施形態では100msごと)に入力されたCCDカメラ4からの画像情報を画像処理するようになっている。なお、一定時間ごとに取得した画像情報は、RAM14の記憶領域に一定期間記憶されるとともに、古いものから順次消去されるようになっている。また、画像処理ソフトウェアとしては、市販のもの(MVTec社製:HALCON)が用いられている。そして、CPU12は、撮影された画像の色情報を利用して、タッチパッド3内の各地点での深さL1(図4参照)を抽出するようになっている。即ち、CPU12は、情報抽出手段としての機能を有している。
【0081】
なお、タッチパッド3内の各地点での深さL1を抽出する方法は以下の通りである。タッチパッド3の内部が赤色半透明の液体9で満たされているため、タッチパッド3をCCDカメラ4にて撮影した画像では、タッチパッド3の内部が赤く見える。これは、照明5から照射された光がタッチパッド3の内部に封入された液体9を通過し、膜6に反射した後、再び液体9を通過し、最終的にCCDカメラ4へ進入する際に、液体9によって赤色の波長帯域以外の帯域の光が減衰させられたからである。従って、照明5から照射された光が液体9を通過する距離L1+L2(図4参照)に依存して、CCDカメラ4へ進入する光の強度は異なり、それに伴い撮影画像の各画素における赤、緑、青チャンネルの輝度値にも変化が生じる。即ち、光が液体9を通過する距離L1+L2と撮影画像の各画素の輝度値の関係を表す関数を求めることで、各画素の輝度値から光が液体9を通過する距離L1+L2を求めることが可能となり、最終的にタッチパッド3内の各地点での深さL1が求まる。
【0082】
図4に示されるように、照明5から照射された光16はタッチパッド3内へ進入し、膜6に反射し、CCDカメラ4へと進入する。このとき、一つの画素P(図にはありません)の撮影範囲である3次元の領域V1を定義すると、画素Pが受け取る光量は、領域V1内を進む光の光量の和として考えることが出来る。
【0083】
ここで、領域V1内を進む光は大きく分けて、膜6で反射した光17と、液体9に混入している顔料18によって反射した光19の二種類が存在する。
膜6で反射した光17は、以下のように求める。光16が板7を通過した直後の単位面積辺りの光強度をI0とし、光16が膜6に届いた瞬間の単位面積辺りの光強度をI1とすると、I1=I0×exp(−C0×L1)(式1)となり、光が進んだ距離に依存して光強度が変化する。ここで、C0は液体9による光の減衰率である。これを踏まえて、さらに、膜6での光の反射率をR1、板7での光の透過率をR2、膜6で反射した光17が板7を通過した後の単位面積辺りの光強度をI2と定義すると、I2= R1× R2× I0×exp(−C0×(L1+L2))(式2)となる。
【0084】
次に、深さL3の地点で液体9に混入している顔料18によって反射した光19の強度を求める。深さL3の地点で顔料18によって反射する光19の単位面積辺りの強度はC0×I0×exp(−C0×L3)ΔL3(式3)となる。よって、顔料18での光の反射率をR3、光19が板7を通過した後の単位面積辺りの光強度をI3と定義すると、I3=C0×R3×R2×I0×exp(−C0×(L3+L4))ΔL3(式4)のように与えられる。
【0085】
ここで、深さL3の地点での領域V1が持つ面積A2を考える。A2は幾何学的に求められ、深さL3の一次関数としてA2=A3×(L3+H2)(式5)で与えられる。ただし、A3及びH2は定数である。A3に関しては後述の式変形によって消去されるため求める必要は無く、H2に関しては図4から幾何学的に考えることで、CCDカメラ4から板7までの距離と、板7での屈折率を用いて求めることが可能である。
【0086】
そして、上記のI2及びI3の和が、画素Pが受け取る光量の合計となるので、これをI4と定義すると、
I4=A1×I2+∫I3×A2=A1×R1×R2×I0×exp(−C0×(L1+L2))+A3×R3×R2×I0×(H2/K+1/(C0×K×K)−((L1+H2)/K)+1/(C0×K×K))×exp(−C0×(L1+L2)))(式6)
となる。ただし、K=(L1+L2)/L2とおいた。
【0087】
次に、この式6を画素Pの赤、緑チャンネルの輝度値と対応づける。ここでは、赤、緑の2チャンネルを利用するが、赤、青の2チャンネルでも良い。各チャンネルの輝度値は、各チャンネルが受け取る波長帯域の光の強度に比例しているため、上記の式6を基に、赤、緑チャンネルの輝度値をそれぞれ、B1、B2と定義すると、
B1=D1×A1×I2×R1×R2×I0×exp(−C1×(L1+L2))+D1×A3×R4×R2×I0×(H2/K+1/(C1×K×K)−((L1+H2)/K)+1/(C1×K×K))× exp(−C1×(L1+L2)) (式7)
B2=D2×A1×I2×R1×R2×I0×exp(−C2×(L1+L2)) (式8)
と表現できる。ここで、D1及びD2は定数であり、C1を画素の赤チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する液体9による減衰率、C2を画素の緑チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する液体9による減衰率、R4を画素の赤チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する顔料18での反射率と定義した。ただし、顔料18は赤色を有しており、緑チャンネルが受け取る波長帯域の光は殆ど吸収するため、顔料18による反射成分を近似的に0として上記の式8を求めた。
【0088】
最終的に上記の式8及び9を連立し、変形することによって、膜6の反射率R1を消去可能となる。反射率R1は光16の入射角や膜6の色に対して複雑に依存しているため、これらを消去できることは式が解き易くなることにつながる。
【0089】
さらに、物体W1が接触していない時の、深さL1及び、赤、緑チャンネルの輝度値B1、B2を予め計測しておき、これらをそれぞれ、L5、B3、B4と定義する。L5、B3、B4はL1、B1、B2の初期値として用いられる。そして、L5、B3、B4及びL1、B1、B2を用いて上記の式8及び9を変形することで、
(B2×exp(C2×K×L1)−D3×B1×exp(C1×K×L1))/(C1×K×L1+(C1×K×H2+1)×(1−exp(C1×K×L1)))=(B4×exp(C2×K×L5)−D3× B3×exp(C1×K×L5))/(C1×K×L5+(C1×K×H2+1)×(1−exp(C1×K×L5))) (式9)
が与えられる。ここで、D3は定数である。これによって、顔料18の反射率R4も消去される。反射率R4は光16の入射角や顔料18の色等に対して複雑に依存しているため、これらを消去できることは式が解き易くなることにつながる。そして、この式9を解くことで、画素Pの赤、緑チャンネルの輝度値B1、B2から、タッチパッド3の深さL1を求めることが可能となる。
【0090】
ただし、式9を解くためには、定数D3、画素の赤チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する液体9による減衰率C1、緑チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する液体9による減衰率C2の値が必要となる。この3つの未知量を求めるために、異なる深さL1に対して、3種類の異なるL1、B1、B2の組を予め計測して用意する。この3つの組をそれぞれ式9に代入することで、D3、C1、C2を求めるための非線形連立方程式が完成する。この非線形連立方程式を、ニュ−トン法等を利用して解くことで、D3、C1、C2の値を求めることが可能となる。
【0091】
次に、タッチパッド3内の各地点での深さL1を式9によって求めた際の、実際の真値に対する誤差を補正する。物体W1が接触していない時と比較して、膜6の角度が大きく変化した時に深さL1の真値に対する誤差が大きくなることを実験的に仮定した。また、誤差の大きさを深さL1に依存していることも実験的に仮定した。この二つの過程から、タッチパッド3内のある地点での深さL1に対して、その周囲のいくつか地点での深さの値を用いて膜6の角度を求め、その角度と深さL1を利用して真値に対する誤差を減らすための関数を、実測値を利用して求める。その関数を利用することで、膜6の角度と深さL1から真値に対する誤差が求まり補正が可能となる。
【0092】
以上が、タッチパッド3内の各地点での深さL1を抽出する方法である。
次に、形状計測システム10による物体W1の形状の計測方法を説明する。
図5に示されるように、ステップS110においてタッチパッド3が物体W1に接触すると、CPU12は、タッチパッド3の挙動を撮影することでCCDカメラ4から入力される画像情報を取り込み(ステップS120)、画像処理を行う(ステップS130)。そして、CPU12は、撮影された画像の色情報を利用して、タッチパッド3内の全ての地点での深さL1を抽出する(ステップS140)。このとき、タッチパッド3内の全ての地点での深さが、即ち膜6の物体W1が接触しない側の形状である。次に、CPU12は、膜6の物体W1が接触しない側の形状から各地点における膜6の角度を求め、膜6の厚さが1mmであることと膜6の角度から、膜6の厚みの深さL1と同一方向成分(膜6の内側と外側の深さの差)を求め、その値を深さL1に加算することによって、膜6の物体W1が接触する側の形状を抽出する(ステップS150)。
【0093】
このとき、膜6と物体W1の間の接触領域内において、膜6の物体W1が接触する側の形状が、即ち物体W1の形状であるため、ステップS110からステップS150までの処理を行うことで、物体W1の形状が計測可能となる。
【0094】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の形状計測装置1および形状計測システム10では、タッチパッド3と、CCDカメラ4と、照明5の3つで構成されており、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。よって、従来の光学式触覚センサのシステムと組み合わせる際やその他の分野への応用の際に、他の形状計測装置よりも容易に応用可能となる。また、物体W1はタッチパッド3の膜6と接触しており、接触によって物体W1の形に合わせて変形した膜6の情報を、撮像手段によって解析する。そして、膜6は物体W1の接触する側の光を遮断する。従って、物体W1を傷つけたり、破損したりする事なく、また、物体W1の材質、色、光の反射率、発光性等の特性や、周囲の環境に依存することなく、物体W1の形状を計測可能となる。さらに、単純な装置と画像処理によって物体W1の形状が容易に求まり、物体W1の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが出来るため、リアルタイムでの形状計測が可能となる。
【0095】
図6及び図7に、形状計測システム10による膜6の形状の計測結果を示す。ここで、図6及び図7において、実験結果は、タッチパッド3を側面から見たときの形状として示されている。From side cameraのグラフが膜6の形状を側面から他の撮影手段によって撮影し、画像解析によって形状を求めたものである。Without compensationのグラフは形状計測システム10において補正を行わなかった場合の結果であり、With compensationのグラフは形状計測システム10において補正も含めて行った場合の結果である。図6は物体W1が接触していない時の結果であり、補正の有無によらず平均誤差が0.16mm程度、標準偏差が0.10mm程度であった。図7は物体W1が接触した時の結果であり、補正が無い場合、平均誤差が0.53mm程度、標準偏差が0.39mm程度であり、補正がある場合、平均誤差が0.43mm程度、標準偏差が0.24mm程度であった。これらの数値及び図6、図7から、形状計測システム10による計測は実用性のある精度を十分に達成可能であることを示している。
【0096】
(2)本実施形態では、照明5から照射された光が液体9内を通過する距離を計算することで、タッチパッド3内の各地点での深さL1の深さを求めた。この際、膜6に対する反射現象、液体9内での減衰現象、顔料18に対する反射現象を考慮した深さL1の関数を求めることで、実際の現象を忠実に再現した計測方法となり、より正確に計測可能となる。また、予め計測しておいた、深さL1及び赤、緑チャンネルの輝度値を利用することで、膜6の反射率及び顔料18の反射率を、深さL1を求める関数の中から消去可能し、関数内に含まれる未知数も求めることが出来る。これによって、深さL1を求める関数はより容易に解くが可能となる。さらに、いくつかの深さL1の情報を利用して、タッチパッド3内の各地点での深さの真値に対する誤差の補正が可能となる。これによって、形状計測方法はより正確となる。
[第2の実施形態]
次に、図1〜9に基づき第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と共通している箇所については、同一の番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
【0097】
本実施形態は、前記第1の実施形態を光学式触覚センサへ応用したシステムである。
図8に示されるように、膜6の半球状の部分において物体と接触する側とは反対側に、マーカー部としてのドットパタ−ン20を配置する。
【0098】
ここで、ドットパターン20は、格子状の模様や、三角形の網目状、六角形の網目状(ハニカム状)などの他の模様であってもよい。
これによって、形状計測装置1は形状計測システム10を可能とした状態で、マーカー部の配置された弾性体と撮像手段からなる光学式触覚センサとしても成立する。
【0099】
次に、形状計測システム10による物体W1の形状と触覚情報の同時取得方法を説明する。
図9に示されるように、ステップS160においてタッチパッド3が物体W1に接触すると、CPU12は、タッチパッド3の挙動を撮影することでCCDカメラ4から入力される画像情報を取り込み(ステップS170)、画像処理を行う(ステップS180)。次に、CPU12は、撮影された画像の色情報を利用して、タッチパッド3内の全ての地点での深さL1を抽出し、物体W1の形状を抽出することが可能となる(ステップS190〜S200)。さらに、CPU12は、撮影された画像情報と深さL1を利用して、ドットパタ−ン20の3次元空間での挙動を抽出する(ステップS210)。そして、CPU12は、触覚情報抽出手段に基づいて、ドットパタ−ン20の3次元空間での挙動から触覚情報を抽出する(ステップS220)。以上のステップ160〜220によって、物体W1の形状と触覚情報の同時取得が可能となる。
【0100】
なお、ドットパタ−ン20の3次元空間での挙動を抽出する方法は以下の通りである。
CCDカメラ4から入力される画像情報を用いて、ドットパタ−ン20に対して画像上の2次元空間における挙動を抽出可能となる。それに加え、ステップS190〜S200で求めたタッチパッド3内のドットパタ−ン20が配置された地点での深さL1の情報を利用すれば、画像上の2次元空間と異なる方向のドットパタ−ン20の挙動を抽出することが可能となる。
【0101】
また、触覚情報抽出手段に基づいてドットパタ−ン20の挙動から触覚情報を抽出する方法は、形状計測システム10に組み合わせる光学式触覚センサ及びそのシステムによって異なる。
【0102】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の形状計測装置1および形状計測システム10では、タッチパッド3と、CCDカメラ4と、照明5の3つで構成されており、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。よって、従来の光学式触覚センサのシステムと組み合わせる際やその他の分野への応用の際に、他の形状計測装置よりも容易に応用可能となる。そして、膜6にマーカー部を配置したことで、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の形状計測方法・装置を組み合わせることが可能である。即ち、この形状計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする装置及びシステムを実現できる。
【0103】
(2)本実施形態では、タッチパッド3内のドットパタ−ン20が配置された地点での深さL1の情報を利用すれば、画像上の二次元空間と異なる方向のドットパタ−ン20の挙動を抽出することが可能となり、従来の光学式触覚センサの計測機能がより向上する。複雑な面を持つ対称物との接触時などに対しても、マーカーの位置情報が3次元になったことで対応可能となる。
[第3の実施形態]
次に、図1〜9に基づき第3の実施形態を説明する。なお、第1及び2の実施形態と共通している箇所については、同一の番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
【0104】
本実施形態は、前記第1の実施形態を対象物の硬度分布に関する情報の計測へ応用したシステムである。
次に、形状計測システム10による物体W1の硬度分布に関する情報の抽出方法を説明する。
【0105】
図10に示されるように、ステップS230においてタッチパッド3が物体W1に接触すると、CPU12は、図5に示されたステップS120〜S150の処理を行い物体W1の形状を計測する(ステップS240)。次に、CPU12は、物体W1とタッチパッド3の接触領域内の接触力分布の抽出を行う(ステップS250)。ただし、ここでいう接触力分布とは、タッチパッド3と物体W1の接触面と垂直方向の圧力分布であり、物体W1の接触によって変形したタッチパッド3が、非接触時の形状に復元しようとして生じる力である。この力は作用反作用の原理に基づき、タッチパッド3と物体W1の両者に作用する。
【0106】
ここで、CPU12は、S230〜S250のステップを前回と異なる接触力が発生するような接触状態において再度行う。ただし、接触力とは、タッチパッド3と物体W1の接触面と垂直方向の力であり、物体W1の接触によって変形したタッチパッド3が、非接触時の形状に復元しようとして生じる力である。この力は作用反作用の原理に基づき、タッチパッド3と物体W1の両者に作用する。また、異なる接触力が発生するような接触状態は、手動あるいは任意の制御機構により形状計測装置1の位置を変化させることで,タッチパッド3を物体W1に接触させる際にタッチパッド3を押し付けるための接触力を変化させれば実現可能である。タッチパッド3の形状によって接触力は変化するため、形状計測装置1の位置を物体W1に対して変化させれば接触力も変化可能である。任意の制御機構としては,例えばロボットアームの先端に形状計測装置1を装着し,ロボットアーム先端を動かし形状計測装置1の位置を変化させるようなものがあげられる。
【0107】
即ち、S230〜S250のステップの2回行うことで、物体W1の形状と接触力分布の情報が2つずつ得られる。そして、2つの物体W1の形状を比較することで、物体W1の接触領域内における、2つの物体W1の形状の間での物体W1の変形量の分布を抽出する(ステップS260)。最後に、2つの接触力分布を比較することで接触力分布の変化量を求め、接触力分布の変化量と物体W1の変形量の分布を利用することで、物体W1の硬度分布に関する情報を抽出する(ステップS270)。以上のステップ230〜270によって、物体W1の硬度分布に関する情報の抽出が可能となる。
【0108】
なお、ステップS250において接触力分布を抽出する方法は以下に示すいくつかの方法がある。
第1の方法としては、まず、タッチパッド3が備える板7に直径1〜2mm程度の穴を空け、その穴と任意形状の小型容器をホース等で接合させておく。タッチパッド3の内部には液体9を封入させておき、小型容器には空気を封入させておく。ここで、物体W1がタッチパッド3に接触すると液体9の一部が小型容器に進入する。液体9は非圧縮性であり、タッチパッド3の形状は形状計測システム10によって計測可能であるため、液体9が小型容器に進入する量は、物体W1がタッチパッド3に接触する前のタッチパッド3の形状から求めたタッチパッド3の体積と、物体W1がタッチパッド3に接触している時のタッチパッド3の形状から求めたタッチパッド3の体積との差になる。液体9が小型容器に進入する量から、小型容器に封入された空気の圧縮率が求まるため、気体の「(圧力)×(体積)=(一定)」という性質を利用し、圧縮率からタッチパッド3の内部の圧力を求めることが可能となる。タッチパッド3の内部の圧力が即ち接触力分布となる。
【0109】
第2の方法としては、まず、タッチパッド3の変形量と、タッチパッド3に作用している接触力分布との対応関係を、実際に両者の値を計測していくことで実験的に求める。そして、その対応関係を利用して、タッチパッド3の変形量からタッチパッド3に作用している接触力分布を求める。この方法では、タッチパッド3に封入された液体9は気体や弾性体であっても良い.
第3の方法としては、まず、タッチパッド3に封入された液体9を気体に変更する。第1の方法と同様にして、物体W1の非接触時と接触時におけるタッチパッド3の体積の差を求めることで、タッチパッド3に封入された気体の圧縮率を求める。そして、第1の方法と同様にして、気体の圧縮率からタッチパッド3の内部の圧力を求めることが可能となる。タッチパッド3の内部の圧力が即ち接触力分布となる。
【0110】
なお、ステップS270において物体W1の硬度分布に関する情報を抽出する方法は以下の通りである。
変形量の分布を接触力分布の変化量で割ることによって、物体W1の接触領域内における縦弾性係数の分布に相当する情報が得られる。この分布が物体W1の接触領域内において同一であれば、物体W1の硬度は接触領域内において一定であり、接触領域内において同一でなければ、物体W1の硬度も接触領域内において一定ではない。
【0111】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の形状計測装置1を利用することで、物体W1の硬度分布に関する情報を抽出することが可能となる。即ち、本実施形態の形状計測装置1は、形状計測機能だけでなく、硬度分布情報抽出機能も備えている。
[第4の実施形態]
次に、図1〜9に基づき第4の実施形態を説明する。なお、第1〜3の実施形態と共通している箇所については、同一の番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
【0112】
本実施形態は、前記第1の実施形態を対象物の硬度に関する情報の計測へ応用したシステムである。
次に、形状計測システム10による物体W1の硬度に関する情報の抽出方法を説明する。図11に示されるように、形状計測装置1と物体W1の間の位置関係を抽出するための位置関係抽出手段となる変位センサ21を、形状計測システム10に加えた硬度抽出システム22によって、物体W1の硬度に関する情報を抽出する。
【0113】
図12に示されるように、ステップS280においてタッチパッド3が物体W1に接触すると、CPU12は、図5に示されたステップS120〜S150の処理を行い物体W1の形状を計測する(ステップS290)。次に、CPU12は、図10のステップS250と同様の方法で、接触力の抽出を行う(ステップS300)。次に、CPU12は、変位センサ21を利用して、形状計測装置1に対する物体W1の相対位置を抽出する(ステップS310)。そして、CPU12は、物体W1の形状と相対位置から、物体W1の長さL6を抽出する(ステップS320)。ここで、CPU12は、S280〜S320のステップを前回と異なる接触力が発生するような接触状態において再度行う。ここで、異なる接触力が発生するような接触状態は、手動あるいは任意の制御機構により形状計測装置1の位置を変化させることで,タッチパッド3を物体W1に接触させる際にタッチパッド3を押し付けるための接触力を変化させれば実現可能である。タッチパッド3の形状によって接触力は変化するため、形状計測装置1の位置を物体W1に対して変化させれば接触力も変化可能である。任意の制御機構としては,例えばロボットアームの先端に形状計測装置1を装着し,ロボットアーム先端を動かし形状計測装置1の位置を変化させるようなものがあげられる。S280〜S320のステップの2回行うことで、物体W1の長さL6と接触力分布の情報が2つずつ得られる。そして、2つの物体W1の長さL6から、物体W1の変形量を抽出する(ステップS330)。最後に、2つの接触力を比較することで接触力の変化量を求め、物体W1の変形量を接触力の変化量で割ることによって、物体W1の縦弾性係数に相当する情報、即ち、物体W1の硬度に関する情報を抽出する(ステップS340)。以上のステップ280〜340よって、物体W1の硬度分布に関する情報の抽出が可能となる。
【0114】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の形状計測装置1を利用することで、物体W1の硬度に関する情報を抽出することが可能となる。即ち、本実施形態の形状計測装置1は、形状計測機能だけでなく、硬度情報抽出機能も備えている。 なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、膜6は異なる2色の膜を張り合わせてあるが、光の遮断性が強ければ、1色の膜であってもよい。また、膜には特に模様が着色されていないが、何か着色されていても良い。
・上記各実施形態では、照明5は同軸落射照明であったが、光が照射される位置(光源位置)と光が照射される方向が分かるものであれば、他の点光源や面光源であっても良い。
・上記各実施形態では、タッチパッド3の形状が板と半球を張り合わせた形状を有しているが、内部に液体9を封入可能で、CCDカメラ4から膜6が重なって見えなければ、他の形状でも良い。
・上記各実施形態では、液体9は水道水に赤色顔料を溶かした赤色半透明の水であるが、顔料を含み変形可能な物質であれば、水以外の液体や、ゲル、気体、弾性体等でも良い。また、顔料の色は赤色でなくても、光の波長帯域によって異なる反射率や散乱率、減衰率を持つ色の顔料であれば良い。さらに、顔料でなくても同程度の大きさであれば他の粒子であっても良い。
・上記各実施形態では、ドットパターン20は、格子状の模様や、三角形の網目状、六角形の網目状(ハニカム状)などの他の模様であってもよい。
・上記各実施形態では、ステップS250において接触力分布を抽出する際にタッチパッド3を利用したが、接触力分布を抽出する手段であれば、形状計測装置1に力センサ等を搭載した実施形態等、他の接触力分布抽出手段を備えていれば良い。
・上記各実施形態では、形状計測装置1と物体W1の間の位置関係を抽出するための位置関係抽出手段を変位センサ21としたが、位置関係を抽出できるものであれば他の手段でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0115】
例えば、本発明の形状計測システムを用いれば、物体の性質や環境に依存すること無く形状を計測できる。したがって、様々な種類の物体を扱う工場のラインなどに置いて、本発明の形状計測システムのみで、様々な種類の物体の形状を認識でき、検査用のシステムとして応用できる可能性がある。また、形状計測システムを利用して対象物の硬度に関する情報も抽出可能なため、例えば、内視鏡の先端に小型化した形状計測システムを配置し、体内の硬度を計測することで、癌細胞などの通常の体内細胞よりも硬い物質を発見する手段として応用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0116】
1…形状計測装置
2…ケ−シング
3…接触部としてのタッチパッド
4…CCDカメラ
5…照明
6…接触部としての膜
7…板
8…固定具としての金属板
9…光減衰手段としての液体
10…形状計測システム
20…マーカー部としてのドットパターン
21…位置関係抽出手段としての変位センサ
22…硬度抽出システム
W1…物体
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状計測装置、形状計測方法、形状計測システム、光学式触覚センサ、光学式触覚センサを利用した3次元マーカー位置計測方法、力学量及び形状計測方法、力学量及び形状計測システム、形状計測装置を利用した硬度計測方法及び硬度計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物の形状を計測する装置や方法は様々な種類のものが存在し、多くの産業分野で使用されている。大きく分けて接触式と非接触式が存在する。
非接触式では、光学式の方法が広く普及しており、例えば、スリット光源からのスリット光を対象物に照射し、投影された対象物のスリット画像を解析することで、対象物の3次元形状を測定する技術が種々に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スリット光源ではなく、他のパタ−ン光像を利用している技術も存在する(例えば、特許文献2参照)。また、複数の撮像手段を用いて異なる位置・角度から対象物を撮影し、複数の対象物の撮影画像から画像解析によって対象物の3次元形状を測定する、ステレオビジョン法も普及している。他にも、装置から照射した赤外線が対象物に反射して再び装置に戻ってくるまでの時間からその距離計測する赤外線TOF(Time of Flight)方式を用いた形状計測装置や、1チップCMOS/CCDセンサ上にならぶ多くの画素一つ一つが赤外線TOF(Time of Flight)方式により対象までの距離測定する3次元距離測定カメラ等がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
接触式の形状計測装置としては、主にプロ−ブを対象物に接触させる事で対象物の形状を走査していく方式などがある(例えば、特許文献3参照)。
形状計測方法の応用性は広く、例えば触覚センサへの応用が考えられる。触覚センサとは、人間の皮膚のように物に触れた際の様々な触覚情報(接触力、滑り、形状、温度等)を取得することを目的としたセンサであり、ロボットが周囲の環境を認識し自律して行動する場合に、触覚は非常に重要な情報となる。
【0005】
ロボットが人と共存する社会が現実味を帯びてきている近年では、ロボット自体の運動性能や知能を向上させ、人とロボットとの間でのコミュニケ−ション技術のレベルを向上させるために、触覚センサの開発が数多くなされている。対象物と接触した際の対象物の形状を認識する技術も触覚センサの課題の一つであり、触覚センサに適した形状計測装置・方法が必要とされ、いくつか提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−085371号広報
【特許文献2】特開2005−172622号広報
【特許文献3】特開2002−350128号広報
【特許文献4】特開2009−145085号広報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Oggier, B. Buttgen, F. Lustenberger, G. Becker, B. Ruegg, and A. Hodac, “SwissRanger SR3000 and first experiences based on miniaturized 3D−TOF cameras” In Proceedings of the 1st Range Imaging Research Day, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記で述べた光学式の非接触形状計測方法の殆どが、対象物の表面の特性や周囲の環境によっては計測が出来ないという課題を抱えている。対象物の表面が金属のような鏡面を有していたり、対象物が光透過性を有していたり、あるいは対象物が発光している場合等では、他とは異なる光の反射や光の透過・屈折が生じてしまい、正確な計測ができなくなる。また、対象物が黒色を有しており光吸収性が強い場合、あるいは周囲の環境が暗いような場合には、撮像手段へ反射される光の強度が弱いため、形状に依存した光強度の差が現れにくく計測精度が悪化することも問題である。
【0009】
接触式の形状計測方法では対象物表面の光学的特性や周囲の環境には依存しないが、対象物が柔らかい場合プロ−ブ等の接触により対象物を傷つけたり、破損したりしてしまう。
【0010】
また、触覚センサへ応用する場合、装置の小型化・単純化やリアルタイムでの計測が要求されるが、形状計測方法の原理や構造を考えると、これらの要求を全て満たすことは困難である。
【0011】
さらに、いくつもの形状計測装置・方法が提案されているものの、それらは対象物の硬度までは計測不可能である。触覚センサへの応用や、他の分野での利用を考える際に、形状の計測だけでなく対象物の硬度の計測も可能であることが望ましい。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、対象物の材質、色、硬さ等の特性に依存せず、リアルタイムでの計測が可能であり、装置の小型化・単純化も容易であるような形状計測装置、形状計測方法、形状計測システムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、従来の触覚センサの能力を備えたまま、同時に対象物の形状を計測することが可能な新しい光学式触覚センサ、力学量及び形状計測方法、力学量及び形状計測システム、また、形状計測装置を利用した硬度計測方法及び硬度計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象物との接触部である前記対象物の形状に応じて変形可能な膜と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜を撮影する撮像手段と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜に向けて光を照射する光照射手段と、前記膜と接触しており前記光照射手段から照射された光を減衰する光減衰手段と、を含む形状計測装置をその要旨とする。
【0014】
従って、請求項1に記載の発明によると、変形可能な膜と、撮像手段と、光照射手段と、光減衰手段の4つで構成されており、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。よって、従来の光学式触覚センサのシステムと組み合わせる際やその他の分野への応用の際に、他の形状計測装置よりも容易に応用可能となる。
【0015】
また、対象物は膜と接触しており、接触によって対象物の形に合わせて変形した膜の情報を、撮像手段によって解析する。つまり、対象物から直接形状情報を取得せず、膜の形状から取得するため、対象物の材質、色、光の反射率等の特性に依存せずに計測可能となる。
【0016】
さらに、対象物と接触する膜は変形可能であるため、接触時に対象物を傷つけたり、破損したりする事が無い。よって、対象物の硬さの特性に依存せずに計測可能となる。
なお、「変形可能な膜」は、シリコ−ンゴムなどのシリコ−ン樹脂から形成されることが好ましいが、他のゴム類やエラストマ−などの他の弾性体から形成されていてもよい。
【0017】
「撮像手段」としては、画像情報を電気信号として出力するカメラを用いることが好ましく、特にデジタルカメラを用いることが好ましい。ここで、「デジタル式カメラ」としては、CCDカメラや、C−MOS式イメ−ジセンサを用いたデジタルカメラなどが挙げられる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記膜が、前記膜の対象物が接触する側に照射された光を遮断することをその要旨とする。
従って、請求項2に記載の発明によると、膜が外部からの光を遮断するため、対象物の光の反射率が高い場合、対象物が発光している場合、周囲の環境で強い光が照射されているような場合においても、外乱光の影響を受けずに計測可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記膜が、対象物が接触する側とその反対側で異なる色を有していることをその要旨とする。
従って、請求項3に記載の発明によると、膜が対象物の接触する側とその反対側で異なる色を有しており、色によって光の反射率、遮断率(吸収率)を変えられるため、対象物が接触する側は光を遮断しやすい色とし、その反対側は光を遮断し難い色とすることによって、膜が対象物の接触する側の光のみを遮断するような特性を持つことが可能となる。
【0020】
また、膜は対象物が接触する側とは反対側では、光を吸収し難く反射し易いことが望ましい。よって膜の色は、対象物が接触する側では黒色を有し、その反対側では白色を有することが望ましいが、それに近い色であればその他の色を有していても良い。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記光減衰手段が、前記膜と接触する側が変形可能であり、前記膜と接触する側とは反対側が前記膜と接触する側よりも変形しにくい光減衰性部材であることをその要旨とする。
【0022】
従って、請求項4に記載の発明によると、光減衰性を持つ部材を用いて前記光減衰手段を実現することで、装置の小型化・単純化がさらに容易となる。
また、光減衰手段は膜と接触している側では膜の変形を妨げないように膜にあわせて変形する必要があり、膜と接触していない側では、変形しないことが望ましい。これは、本発明では光減衰手段の膜と接触している側とその反対側の距離の変化の情報を利用するため、膜と接触していない側が変形すると、膜と接触している側の変形量が計測できず、膜の変形量が計測できないためである。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記光減衰手段(前記部材)が、変形可能な光減衰性部材と、それと接触している、前記変形可能な光減衰性部材よりも変形しにくい光透過性もしくは半透過性の部材からなることをその要旨とする。
【0024】
従って、請求項5に記載の発明によると、光減衰手段を変形可能な光減衰性部材と変形不可能な光透過性もしくは半透過性の部材によって構成したため、請求項4に記載されるような変形可能は側と変形不可能な側を持つ光透過性の部材が容易に実現可能となる。
【0025】
また、変形可能な光減衰性部材は変形しやすく光を減衰させる特性を持つため、半透過性を持つ気体、液体、弾性体のいずれかであることが望ましい。変形不可能な部材は、透明なアクリル板であることが望ましいが、光透過性もしくは半透過性を持つ他の部材であってもよい。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記光減衰手段が、光の波長によって異なる減衰率を有していることをその要旨とする。
従って、請求項6に記載の発明によると、前記光減衰手段が光の波長によって異なる減衰率を有しており、その減衰された光の影響は撮像手段によって撮影された画像に表れるため、撮影画像が複数のチャンネルを持っている場合、チャンネルによって輝度値を持つ。請求項10〜12においては、波長帯域によって異なる輝度値である必要があるため、重要な要素である。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置を利用して、前記膜に接触する対象物の形状を計測する方法であって、前記撮像手段からの画像情報を画像処理することにより、撮影された画像の色情報を抽出するとともに、前記色情報と前記光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報との対応関係を利用して前記色情報から前記距離に関する情報を抽出する距離情報抽出手段から、前記距離に関する情報を抽出するステップと、前記距離から前記膜の形状を求めるステップと、前記膜の形状から対象物の形状を求めるステップとを含むことをその要旨とする。
【0028】
従って、請求項7に記載の発明によると、前記撮像手段からの画像情報を画像処理されると、撮影された画像の色情報を抽出され、次に距離情報抽出手段によって、光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報を抽出され、その距離から膜の形状が求まり、最終的に対象物の形状が求まる。即ち、単純な装置と画像処理によって対象物の形状が容易に求まり、対象物の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが出来るため、リアルタイムでの形状計測が可能となる。
【0029】
なお、前記対応関係は、例えば、予め計測した前記色情報と前記距離に関する情報を利用して、実験的に求められた対応関係とすることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記対応関係が、光が前記膜によって反射する際の前記膜の反射現象と、前記光が前記光減衰手段を通過する際の前記光減衰手段による減衰現象と、前記光が前記光減衰手段を通過中に生じる異なる方向への散乱現象とを考慮した、前記色情報と前記距離に関する情報との対応関係であることをその要旨とする。
【0030】
従って、請求項8に記載の発明によると、撮影された画像の色情報と光照射手段から照射された光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を求める際に、光減衰手段による減衰と光減衰手段を通過中に生じる散乱を考慮するため、より実際の現象を再現した対応関係がつくられる。
また、膜によって反射する際の前記膜の反射現象を利用するため、膜に対する光の入射角よって変化する膜の反射率の影響を考慮され、より実際の現象を再現した対応関係がつくられる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項7において、前記対応関係が、前記色情報と、光が前記膜によって反射する際の前記膜の反射率と、前記光が前記光減衰手段を通過する際の前記光減衰手段の減衰率と、前記光が光減衰手段を通過中に異なる方向へ散乱する際の前記光減衰手段の散乱率とを含んだ関数を利用した、前記色情報と前記距離に関する情報との対応関係であることをその要旨とする。
【0032】
従って、請求項9に記載の発明によると、色情報と、反射率(反射係数)、減衰率(減衰係数)、散乱率(散乱係数)を含む関数を利用することで、請求項8に記載された光の反射現象、減衰、散乱を考慮しながら、撮影された画像の色情報と光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を求めることが可能となる。
【0033】
請求項10に記載の発明は、請求項9において、前記減衰率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて求めることをその要旨とする。
従って、請求項10に記載の発明によると、色情報と、実測等の手段によって求めた既知である光が光減衰手段を通過する距離を利用することで、光減衰手段の減衰率(減衰係数)を直接計測することなく求めることが可能となる。
【0034】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10において、前記散乱率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて前記関数の中から消去可能であることをその要旨とする。
【0035】
従って、請求項11に記載の発明によると、光が光減衰手段を通過する距離を求めるための関数の中から、光減衰手段の散乱率(散乱係数)を消去可能であるため、散乱率(散乱係数)を直接計測することなく関数を決定することが可能となる。
【0036】
請求項12に記載の発明は、請求項9〜11のいずれか1項において、前記反射率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて前記関数の中から消去可能であることをその要旨とする。
【0037】
従って、請求項12に記載の発明によると、光が光減衰手段を通過する距離を求めるための関数の中から、膜に対する光の反射率を消去可能であるため、反射率を直接計測することなく関数を決定することが可能となる。
【0038】
請求項13に記載の発明は、請求項7〜12のいずれか1項において、前記対応関係が、複数の前記距離の情報を抽出して求める前記膜の角度を利用することをその要旨とする。
【0039】
従って、請求項13に記載の発明によると、請求項9〜12に記載された方法によって求めた対応関係は、実際の対応関係と比べて誤差を生じている場合があるが、付近の距離の情報を利用して膜の角度を求め、その角度と生じる誤差の対応関係を求めることで、膜の角度の情報を利用して誤差の減少が可能となる。これによって、形状計測方法はより正確となる。
【0040】
請求項14に記載の発明は、対象物との接触部である前記対象物の形状に応じて変形可能な膜と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜を撮影する撮像手段と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜に向けて光を照射する光照射手段と、前記膜と接触しており前記光照射手段から照射された光を減衰する光減衰手段からなる形状計測装置と、前記撮像手段からの画像情報を画像処理することにより、撮影された画像の色情報を抽出するとともに、前記色情報と前記光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報との対応関係を求め,前記対応関係を利用して前記色情報から前記距離に関する情報を抽出する距離情報抽出手段と、前記距離から前記膜の形状を求める膜形状計測手段と、前記膜の形状から前記膜に接触した対象物の形状を求める対象物形状計測手段とを備えることを特徴とする形状計測装置を利用した形状計測システムをその要旨とする。
【0041】
従って、請求項14に記載の発明によると、前記撮像手段からの画像情報を画像処理されると、撮影された画像の色情報を抽出され、次に距離情報抽出手段によって光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報を抽出され、その距離から膜の形状が求まり、最終的に対象物の形状が求まる。即ち、単純な装置と画像処理によって対象物の形状が容易に求まり、対象物の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが出来るため、リアルタイムでの形状計測システムが実現可能となる。
【0042】
請求項15に記載の発明は、前記形状計測装置が備える膜(接触部)の対象物が接触する側とは反対側に配置されたマーカー部と、前記膜に対象物が接触した際の前記マーカー部の挙動を撮影する前記形状計測装置が備える撮像手段とを備えたことを特徴とする触覚情報抽出手段と、請求項1〜6のいずれか1項に記載の前記形状計測装置からなる光学式触覚センサをその要旨とする。
【0043】
従って、請求項15に記載の発明によると、触覚部(接触部)にマーカー部が配置され、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の形状計測方法・装置を組み合わせることが可能である。形状計測装置の膜にマーカー部を配置し、それを形状計測装置が持つ撮像手段によって撮影すれば、マーカー部を持つ光学式触覚センサの機能を果たすことが可能である。即ち、この形状計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする装置を実現できる。
【0044】
請求項16に記載の発明は、請求項15記載の光学式触覚センサを利用して、前記マーカー部の3次元空間での挙動を計測する方法であって、前記形状計測装置が備える撮像手段によって撮影した画像から、前記マーカー部の挙動のうち前記画像上の2次元空間での挙動を求めるステップと、前記膜形状計測手段から、前記マーカー部の挙動のうち前記空間と独立した方向の挙動を求めるステップとを含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した3次元マーカー位置計測方法をその要旨とする。
【0045】
従って、請求項16に記載の発明によると、膜形状計測手段によって求めた膜の形状と画像からマーカーの挙動を3次元で取得可能であるため、従来の光学式触覚センサの計測機能がより向上する。複雑な面を持つ対称物との接触時などに対しても、マーカーの挙動情報が3次元になったことで対応可能となる。
【0046】
請求項17に記載の発明は、請求項15又は16記載の光学式触覚センサを利用して、力学量及び前記膜に接触する対象物の形状を計測する方法であって、前記光学式触覚センサを用いて力学量を測定するステップと、前記光学式触覚センサを用いて前記膜に接触する対象物の形状の計測するステップとを含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した力学量及び形状計測方法をその要旨とする。
【0047】
従って、請求項17に記載の発明によると、触覚部(接触部)にマーカー部が配置され、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の形状計測方法・装置を組み合わせることが可能である。形状計測装置の膜にマーカー部を配置し、それを形状計測装置が持つ撮像手段によって撮影すれば、マーカー部を持つ光学式触覚センサの機能を果たすことが可能である。即ち、この形状計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする方法を実現できる。
【0048】
前記力学量としては、例えば、接触力、滑り、摩擦係数からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
請求項18に記載の発明は、請求項15〜17のいずれか1項に記載の光学式触覚センサと、前記光学式触覚センサを用いて力学量を測定する力学量測定手段と、前記光学式触覚センサを用いて前記膜に接触する対象物の形状の計測する前記対象物形状計測手段とを含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した力学量及び形状計測システムをその要旨とする。
【0049】
従って、請求項18に記載の発明によると、触覚部(接触部)にマーカー部が配置され、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の形状計測方法・装置を組み合わせることが可能である。形状計測装置の膜にマーカー部を配置し、それを形状計測装置が持つ撮像手段によって撮影すれば、マーカー部を持つ光学式触覚センサの機能を果たすことが可能である。即ち、この形状計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とするシステムを実現できる。
【0050】
請求項19に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力を抽出する接触力抽出手段とを利用して、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出する方法であって、前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定するステップと、前記接触力抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出するステップと、前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測するステップと、複数の前記接触状態における前記形状から、対象物の変形量の分布に関する情報を抽出するステップと、前記変形量の分布に関する情報と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出するステップとを含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度分布計測方法をその要旨とする。
【0051】
従って、請求項19に記載の発明によると、複数の接触状態における対象物の形状を計測することで、対象物が変形した場合の変形量の分布に関する情報が抽出可能となる。そして、対象物の形状計測装置が備える膜との接触領域内において、対象物の変形量の分布と計測した接触力の分布を利用することで、対象物の接触領域内における硬度の分布に関する情報を求める方法が実現可能となる。
【0052】
請求項20に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定する接触状態選定手段と、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出する接触力抽出手段と、前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測する形状計測手段と、複数の前記接触状態における前記形状から、対象物の変形量の分布に関する情報を抽出する変形量分布情報抽出手段と、前記変形量の分布に関する情報と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出する硬度分布情報抽出手段とを含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度分布計測システムをその要旨とする。
【0053】
従って、請求項20に記載の発明によると、複数の接触状態における対象物の形状を計測することで、対象物が変形した場合の変形量の分布に関する情報が抽出可能となる。そして、対象物の形状計測装置が備える膜との接触領域内において、対象物の変形量の分布と計測した接触力の分布を利用することで、対象物の接触領域内における硬度の分布に関する情報を求めるシステムが実現可能となる。
【0054】
請求項21に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力を抽出する接触力抽出手段と、前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出する位置関係抽出手段とを利用して、対象物の硬さに関する情報を抽出する方法であって、前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定するステップと、前記接触力抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出するステップと、前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測するステップと、前記位置関係抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出するステップと、複数の前記接触状態における前記形状と前記位置関係から、対象物の変形量を抽出するステップと、前記変形量と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さに関する情報を抽出するステップとを含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度計測方法をその要旨とする。
【0055】
従って、請求項21に記載の発明によると、複数の接触状態対して、対象物の形状と形状計測装置と対象物の位置関係を計測することで、対象物が変形した場合の変形量が抽出可能となる。そして、この対象物の変形量と計測した接触力を利用することで、対象物の硬度に関する情報を求める方法が実現可能となる。
【0056】
請求項22に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定する接触状態選定手段と、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出する接触力抽出手段と、前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物をそれぞれ形状の計測する形状計測手段と、複数の前記接触状態における前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出する位置関係抽出手段と、複数の前記接触状態における前記形状と前記位置関係から、対象物の変形量を抽出する変形量抽出手段と、前記変形量と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さに関する情報を抽出する硬度情報抽出手段とを含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度計測システムをその要旨とする。
【0057】
従って、請求項22に記載の発明によると、複数の接触状態対して、対象物の形状と形状計測装置と対象物の位置関係を計測することで、対象物が変形した場合の変形量が抽出可能となる。そして、この対象物の変形量と計測した接触力を利用することで、対象物の硬度に関する情報を求めるシステムが実現可能となる。
【発明の効果】
【0058】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、形状計測装置の製作が容易になり、形状計測装置の小型化が容易になる。また,従来の光学式触覚センサのシステムやその他の分野への応用が容易になる。さらに,対象物の材質、色、光の反射率等の特性に依存せずに対象物の形状を計測可能となる。
【0059】
請求項2に記載の発明によれば、対象物の光の反射率が高い場合、対象物が発光している場合、周囲の環境で強い光が照射されているような場合においても、外乱光の影響を受けずに対象物の形状を計測可能となる。
【0060】
請求項3に記載の発明によれば、膜が対象物の接触する側の光のみを遮断するような特性を持つことが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、装置の小型化・単純化がさらに容易となる。
【0061】
請求項5に記載の発明によれば、膜の形状に応じて変形可能は側と、その側よりも変形しにくい側を持つ光透過性の部材の部材の製作が容易になる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項10〜12に記載の発明より効果的にすることが可能となる.
請求項7に記載の発明によれば、小型で単純な装置と画像処理によって対象物の形状が容易に求まり、対象物の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが可能となり,さらにリアルタイムでの形状計測が可能となる。
【0062】
請求項8に記載の発明によれば、対象の形状を求めるための理論がより実際の現象と近いものになる。
請求項9に記載の発明によれば、光の反射現象、減衰、散乱を考慮しながら、画像処理によって解析した画像の輝度値と光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を求めることが可能となる。
【0063】
請求項10に記載の発明によれば、光減衰手段の減衰率(減衰係数)を直接計測することなく求めることが可能となる。
請求項11に記載の発明によれば、光減衰手段の散乱率(散乱係数)を直接計測することなく,画像の輝度値と光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を表す関数を決定することが可能となる。
【0064】
請求項12に記載の発明によれば、膜の光に対する反射率を直接計測することなく,画像の輝度値と光が光減衰手段を通過する距離の対応関係を表す関数を決定することが可能となる。
【0065】
請求項13に記載の発明によれば、計測した形状の誤差に対する補正が可能となり、形状計測方法はより正確となる。
請求項14に記載の発明によれば、小型で単純な装置と画像処理によって対象物の形状が容易に求まり、対象物の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが可能となり,さらにリアルタイムでの形状計測が可能なシステムが実現される.
請求項15に記載の発明によれば、形状計測方法を触覚センサへ応用するとともに、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする装置を実現できる。
【0066】
請求項16に記載の発明によれば、従来の光学式触覚センサの計測機能がより向上する。複雑な面を持つ対称物との接触時などに対しても、マーカーの挙動情報が3次元になったことで対応可能となる。
【0067】
請求項17に記載の発明によれば、形状計測方法を触覚センサへ応用するとともに、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする方法を実現できる。
請求項18に記載の発明によれば、形状計測方法を触覚センサへ応用するとともに、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とするシステムを実現できる。
【0068】
請求項19に記載の発明によれば、形状計測装置を利用して対象物の硬度の分布に関する情報を抽出する方法を実現できる。
請求項20に記載の発明によれば、形状計測装置を利用して対象物の硬度の分布に関する情報を抽出するシステムを実現できる。
【0069】
請求項21に記載の発明によれば、形状計測装置を利用して対象物の硬度に関する情報を抽出する方法を実現できる。
請求項22に記載の発明によれば、形状計測装置を利用して対象物の硬度に関する情報を抽出するシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明における形状計測装置を示す全体斜視図。
【図2】タッチパッドの全体斜視図。
【図3】形状計測システムの構成を示すブロック図。
【図4】光がタッチパッド内を進む際の挙動を示す図。
【図5】形状計測システムによる処理の概略を示すフローチャート。
【図6】対象物非接触時における、形状計測システムによる形状計測の結果を示す図。
【図7】対象物接触時における、形状計測システムによる形状計測の結果を示す図。
【図8】形状計測が備える膜の半球状の部分において、物体と接触する側とは反対側に配置されたマーカー部としてのドットパタ−ンを示す図。
【図9】形状計測システムによる処理の概略を示すフローチャート。
【図10】形状計測装置による対象物の硬度分布抽出方法の処理の概略を示すフローチャート。
【図11】形状計測装置による対象物の硬度抽出システムの構成を示すブロック図。
【図12】形状計測装置による対象物の硬度抽出方法の処理の概略を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0071】
[第1の実施形態]
以下、本発明を形状計測システムに具体化した第1の実施形態を、図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0072】
図1に示されるように、形状計測装置1を構成するケ−シング2の先端側には、板と半球を接合した形状を持つタッチパッド3(接触部)が設けられている。ケ−シング2内には、撮像手段としてのCCDカメラ4配置されている。CCDカメラ4は、タッチパッド3において、物体W1と接触する側とは反対側に配置されている。ケ−シング2内には、光照射手段としての照明5が配置されている。照明5は、タッチパッド3において、物体W1と接触する側とは反対側に配置されている。CCDカメラ4は、タッチパッド3を背面側から撮影するようになっている。
【0073】
図2に示されるように、タッチパッドは、変形可能な膜6、光透過性の板7、膜6と板7を固定するための固定具8で構成されており、板7と固定具8で膜6を挟んで固定した状態になっている。膜6と板7の間には、光減衰手段としての液体9が封入されている。
【0074】
CCDカメラ4は、赤、緑、青の3チャンネルのCCDカメラである。2チャンネル以上のカメラであれば良く、CCDカメラでなくC−MOSカメラであっても良い。
照明5は、同軸落射照明(CCS製:LFV−50SW2)を使用した。また、照明5から照射された光が板7で反射した際に、その成分がCCDカメラ4内に進入するのを防ぐために、照明5に偏光板(CCS製:PL−LFV−50SW2)を装着し、CCDカメラ4に偏光フィルタ−を装着した。また、照明5は、光が照射される位置(光源位置)と光が照射される方向が分かるものであれば、他の点光源や面光源であっても良い。
【0075】
膜6の厚さは一様であることが望ましいが、一様でなくても各部分の厚さの情報があればよい。膜6の形状は自由曲面であり、液体9を封入可能な構造であれば平坦な形状などでも良い。また、膜6は透明シリコ−ンゴム(信越シリコ−ン製:KE−1950−10)に黒色の着色剤を混ぜて形成した厚さ0.5mmの黒色の膜と、透明シリコ−ンゴム(信越シリコ−ン製:KE−1950−10)に白色の着色剤を混ぜて形成した厚さ0.5mmの白色の膜を張り合わせて形成したものである。従って、膜6は物体W1と接触する側は黒色を有し、その反対側は白色を有する。
【0076】
板7は透明なアクリル板であるが、光透過性であり計測時に変形しない程の硬さを持っていれば他の材質でも良い。
板8は金属製の板であるが、計測時に変形しない程の硬さを持っていれば他の材質でも良い。
【0077】
液体9は水道水に赤色顔料(ZEBRA製:JK−05)を溶かした赤色半透明の水であるが、顔料を含み変形可能な物質であれば、水以外の液体や、ゲル、気体、弾性体等でも良い。また、顔料の色は赤色でなくても、光の波長帯域によって異なる反射率や散乱率、減衰率を持つ色の顔料であれば良い。さらに、顔料でなくても同程度の大きさであれば他の粒子であっても良い。顔料の濃度としては、赤色半透明の水の内部に浸入する光を減衰させる際の減衰係数によって、好ましい範囲が決定される。本実施形態では、光の波長が約580〜700nmである波長帯域の光に対する減衰係数が約0.029(1/mm)であり、光の波長が約500〜570nmである波長帯域の光に対する減衰係数が約0.034(1/mm)である。それに近い値であれば他の減衰係数であっても良い。
【0078】
即ち、図1及び図2に示される形状計測装置では、照明5から照射された光はタッチパッド3の内部に封入された液体9を通過し、膜6に反射した後、再び液体9を通過し、最終的にCCDカメラ5へ進入する。
【0079】
図3に示されるように、形状計測装置1を備える形状計測システム10は、形状計測システム10全体を制御する制御部11を備えている。制御部11はCPU12を備えており、CPU12には、ROM13、RAM14及び入出力ポ−ト(I/Oポ−ト)15が接続されている。CPU12は、形状計測システム10全体を制御するための各種処理を実行し、その処理結果を所定の制御信号として出力するようになっている。ROM13には、形状計測システム10を制御するための制御プログラムなどが記憶されている。また、RAM14には、形状計測システム10の動作に必要な各種の情報が一時的に記憶されるようになっている。さらに、入出力ポ−ト15には、前記CCDカメラ4及び前記照明5が接続されている。CPU12には、前記タッチパッド3を撮影することでCCDカメラ4から入力される画像情報が、入出力ポ−ト15を介して入力されるようになっている。それとともに、CPU12は、照明5を点灯させるための信号を、入出力ポ−ト15を介して照明5に対して出力するようになっている。
【0080】
図3に示されるCPU12は、入出力ポ−ト15を介して一定時間ごと(本実施形態では100msごと)に入力されたCCDカメラ4からの画像情報を画像処理するようになっている。なお、一定時間ごとに取得した画像情報は、RAM14の記憶領域に一定期間記憶されるとともに、古いものから順次消去されるようになっている。また、画像処理ソフトウェアとしては、市販のもの(MVTec社製:HALCON)が用いられている。そして、CPU12は、撮影された画像の色情報を利用して、タッチパッド3内の各地点での深さL1(図4参照)を抽出するようになっている。即ち、CPU12は、情報抽出手段としての機能を有している。
【0081】
なお、タッチパッド3内の各地点での深さL1を抽出する方法は以下の通りである。タッチパッド3の内部が赤色半透明の液体9で満たされているため、タッチパッド3をCCDカメラ4にて撮影した画像では、タッチパッド3の内部が赤く見える。これは、照明5から照射された光がタッチパッド3の内部に封入された液体9を通過し、膜6に反射した後、再び液体9を通過し、最終的にCCDカメラ4へ進入する際に、液体9によって赤色の波長帯域以外の帯域の光が減衰させられたからである。従って、照明5から照射された光が液体9を通過する距離L1+L2(図4参照)に依存して、CCDカメラ4へ進入する光の強度は異なり、それに伴い撮影画像の各画素における赤、緑、青チャンネルの輝度値にも変化が生じる。即ち、光が液体9を通過する距離L1+L2と撮影画像の各画素の輝度値の関係を表す関数を求めることで、各画素の輝度値から光が液体9を通過する距離L1+L2を求めることが可能となり、最終的にタッチパッド3内の各地点での深さL1が求まる。
【0082】
図4に示されるように、照明5から照射された光16はタッチパッド3内へ進入し、膜6に反射し、CCDカメラ4へと進入する。このとき、一つの画素P(図にはありません)の撮影範囲である3次元の領域V1を定義すると、画素Pが受け取る光量は、領域V1内を進む光の光量の和として考えることが出来る。
【0083】
ここで、領域V1内を進む光は大きく分けて、膜6で反射した光17と、液体9に混入している顔料18によって反射した光19の二種類が存在する。
膜6で反射した光17は、以下のように求める。光16が板7を通過した直後の単位面積辺りの光強度をI0とし、光16が膜6に届いた瞬間の単位面積辺りの光強度をI1とすると、I1=I0×exp(−C0×L1)(式1)となり、光が進んだ距離に依存して光強度が変化する。ここで、C0は液体9による光の減衰率である。これを踏まえて、さらに、膜6での光の反射率をR1、板7での光の透過率をR2、膜6で反射した光17が板7を通過した後の単位面積辺りの光強度をI2と定義すると、I2= R1× R2× I0×exp(−C0×(L1+L2))(式2)となる。
【0084】
次に、深さL3の地点で液体9に混入している顔料18によって反射した光19の強度を求める。深さL3の地点で顔料18によって反射する光19の単位面積辺りの強度はC0×I0×exp(−C0×L3)ΔL3(式3)となる。よって、顔料18での光の反射率をR3、光19が板7を通過した後の単位面積辺りの光強度をI3と定義すると、I3=C0×R3×R2×I0×exp(−C0×(L3+L4))ΔL3(式4)のように与えられる。
【0085】
ここで、深さL3の地点での領域V1が持つ面積A2を考える。A2は幾何学的に求められ、深さL3の一次関数としてA2=A3×(L3+H2)(式5)で与えられる。ただし、A3及びH2は定数である。A3に関しては後述の式変形によって消去されるため求める必要は無く、H2に関しては図4から幾何学的に考えることで、CCDカメラ4から板7までの距離と、板7での屈折率を用いて求めることが可能である。
【0086】
そして、上記のI2及びI3の和が、画素Pが受け取る光量の合計となるので、これをI4と定義すると、
I4=A1×I2+∫I3×A2=A1×R1×R2×I0×exp(−C0×(L1+L2))+A3×R3×R2×I0×(H2/K+1/(C0×K×K)−((L1+H2)/K)+1/(C0×K×K))×exp(−C0×(L1+L2)))(式6)
となる。ただし、K=(L1+L2)/L2とおいた。
【0087】
次に、この式6を画素Pの赤、緑チャンネルの輝度値と対応づける。ここでは、赤、緑の2チャンネルを利用するが、赤、青の2チャンネルでも良い。各チャンネルの輝度値は、各チャンネルが受け取る波長帯域の光の強度に比例しているため、上記の式6を基に、赤、緑チャンネルの輝度値をそれぞれ、B1、B2と定義すると、
B1=D1×A1×I2×R1×R2×I0×exp(−C1×(L1+L2))+D1×A3×R4×R2×I0×(H2/K+1/(C1×K×K)−((L1+H2)/K)+1/(C1×K×K))× exp(−C1×(L1+L2)) (式7)
B2=D2×A1×I2×R1×R2×I0×exp(−C2×(L1+L2)) (式8)
と表現できる。ここで、D1及びD2は定数であり、C1を画素の赤チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する液体9による減衰率、C2を画素の緑チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する液体9による減衰率、R4を画素の赤チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する顔料18での反射率と定義した。ただし、顔料18は赤色を有しており、緑チャンネルが受け取る波長帯域の光は殆ど吸収するため、顔料18による反射成分を近似的に0として上記の式8を求めた。
【0088】
最終的に上記の式8及び9を連立し、変形することによって、膜6の反射率R1を消去可能となる。反射率R1は光16の入射角や膜6の色に対して複雑に依存しているため、これらを消去できることは式が解き易くなることにつながる。
【0089】
さらに、物体W1が接触していない時の、深さL1及び、赤、緑チャンネルの輝度値B1、B2を予め計測しておき、これらをそれぞれ、L5、B3、B4と定義する。L5、B3、B4はL1、B1、B2の初期値として用いられる。そして、L5、B3、B4及びL1、B1、B2を用いて上記の式8及び9を変形することで、
(B2×exp(C2×K×L1)−D3×B1×exp(C1×K×L1))/(C1×K×L1+(C1×K×H2+1)×(1−exp(C1×K×L1)))=(B4×exp(C2×K×L5)−D3× B3×exp(C1×K×L5))/(C1×K×L5+(C1×K×H2+1)×(1−exp(C1×K×L5))) (式9)
が与えられる。ここで、D3は定数である。これによって、顔料18の反射率R4も消去される。反射率R4は光16の入射角や顔料18の色等に対して複雑に依存しているため、これらを消去できることは式が解き易くなることにつながる。そして、この式9を解くことで、画素Pの赤、緑チャンネルの輝度値B1、B2から、タッチパッド3の深さL1を求めることが可能となる。
【0090】
ただし、式9を解くためには、定数D3、画素の赤チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する液体9による減衰率C1、緑チャンネルが受け取る波長帯域の光に対する液体9による減衰率C2の値が必要となる。この3つの未知量を求めるために、異なる深さL1に対して、3種類の異なるL1、B1、B2の組を予め計測して用意する。この3つの組をそれぞれ式9に代入することで、D3、C1、C2を求めるための非線形連立方程式が完成する。この非線形連立方程式を、ニュ−トン法等を利用して解くことで、D3、C1、C2の値を求めることが可能となる。
【0091】
次に、タッチパッド3内の各地点での深さL1を式9によって求めた際の、実際の真値に対する誤差を補正する。物体W1が接触していない時と比較して、膜6の角度が大きく変化した時に深さL1の真値に対する誤差が大きくなることを実験的に仮定した。また、誤差の大きさを深さL1に依存していることも実験的に仮定した。この二つの過程から、タッチパッド3内のある地点での深さL1に対して、その周囲のいくつか地点での深さの値を用いて膜6の角度を求め、その角度と深さL1を利用して真値に対する誤差を減らすための関数を、実測値を利用して求める。その関数を利用することで、膜6の角度と深さL1から真値に対する誤差が求まり補正が可能となる。
【0092】
以上が、タッチパッド3内の各地点での深さL1を抽出する方法である。
次に、形状計測システム10による物体W1の形状の計測方法を説明する。
図5に示されるように、ステップS110においてタッチパッド3が物体W1に接触すると、CPU12は、タッチパッド3の挙動を撮影することでCCDカメラ4から入力される画像情報を取り込み(ステップS120)、画像処理を行う(ステップS130)。そして、CPU12は、撮影された画像の色情報を利用して、タッチパッド3内の全ての地点での深さL1を抽出する(ステップS140)。このとき、タッチパッド3内の全ての地点での深さが、即ち膜6の物体W1が接触しない側の形状である。次に、CPU12は、膜6の物体W1が接触しない側の形状から各地点における膜6の角度を求め、膜6の厚さが1mmであることと膜6の角度から、膜6の厚みの深さL1と同一方向成分(膜6の内側と外側の深さの差)を求め、その値を深さL1に加算することによって、膜6の物体W1が接触する側の形状を抽出する(ステップS150)。
【0093】
このとき、膜6と物体W1の間の接触領域内において、膜6の物体W1が接触する側の形状が、即ち物体W1の形状であるため、ステップS110からステップS150までの処理を行うことで、物体W1の形状が計測可能となる。
【0094】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の形状計測装置1および形状計測システム10では、タッチパッド3と、CCDカメラ4と、照明5の3つで構成されており、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。よって、従来の光学式触覚センサのシステムと組み合わせる際やその他の分野への応用の際に、他の形状計測装置よりも容易に応用可能となる。また、物体W1はタッチパッド3の膜6と接触しており、接触によって物体W1の形に合わせて変形した膜6の情報を、撮像手段によって解析する。そして、膜6は物体W1の接触する側の光を遮断する。従って、物体W1を傷つけたり、破損したりする事なく、また、物体W1の材質、色、光の反射率、発光性等の特性や、周囲の環境に依存することなく、物体W1の形状を計測可能となる。さらに、単純な装置と画像処理によって物体W1の形状が容易に求まり、物体W1の接触領域内の範囲の形状を一度に求めることが出来るため、リアルタイムでの形状計測が可能となる。
【0095】
図6及び図7に、形状計測システム10による膜6の形状の計測結果を示す。ここで、図6及び図7において、実験結果は、タッチパッド3を側面から見たときの形状として示されている。From side cameraのグラフが膜6の形状を側面から他の撮影手段によって撮影し、画像解析によって形状を求めたものである。Without compensationのグラフは形状計測システム10において補正を行わなかった場合の結果であり、With compensationのグラフは形状計測システム10において補正も含めて行った場合の結果である。図6は物体W1が接触していない時の結果であり、補正の有無によらず平均誤差が0.16mm程度、標準偏差が0.10mm程度であった。図7は物体W1が接触した時の結果であり、補正が無い場合、平均誤差が0.53mm程度、標準偏差が0.39mm程度であり、補正がある場合、平均誤差が0.43mm程度、標準偏差が0.24mm程度であった。これらの数値及び図6、図7から、形状計測システム10による計測は実用性のある精度を十分に達成可能であることを示している。
【0096】
(2)本実施形態では、照明5から照射された光が液体9内を通過する距離を計算することで、タッチパッド3内の各地点での深さL1の深さを求めた。この際、膜6に対する反射現象、液体9内での減衰現象、顔料18に対する反射現象を考慮した深さL1の関数を求めることで、実際の現象を忠実に再現した計測方法となり、より正確に計測可能となる。また、予め計測しておいた、深さL1及び赤、緑チャンネルの輝度値を利用することで、膜6の反射率及び顔料18の反射率を、深さL1を求める関数の中から消去可能し、関数内に含まれる未知数も求めることが出来る。これによって、深さL1を求める関数はより容易に解くが可能となる。さらに、いくつかの深さL1の情報を利用して、タッチパッド3内の各地点での深さの真値に対する誤差の補正が可能となる。これによって、形状計測方法はより正確となる。
[第2の実施形態]
次に、図1〜9に基づき第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と共通している箇所については、同一の番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
【0097】
本実施形態は、前記第1の実施形態を光学式触覚センサへ応用したシステムである。
図8に示されるように、膜6の半球状の部分において物体と接触する側とは反対側に、マーカー部としてのドットパタ−ン20を配置する。
【0098】
ここで、ドットパターン20は、格子状の模様や、三角形の網目状、六角形の網目状(ハニカム状)などの他の模様であってもよい。
これによって、形状計測装置1は形状計測システム10を可能とした状態で、マーカー部の配置された弾性体と撮像手段からなる光学式触覚センサとしても成立する。
【0099】
次に、形状計測システム10による物体W1の形状と触覚情報の同時取得方法を説明する。
図9に示されるように、ステップS160においてタッチパッド3が物体W1に接触すると、CPU12は、タッチパッド3の挙動を撮影することでCCDカメラ4から入力される画像情報を取り込み(ステップS170)、画像処理を行う(ステップS180)。次に、CPU12は、撮影された画像の色情報を利用して、タッチパッド3内の全ての地点での深さL1を抽出し、物体W1の形状を抽出することが可能となる(ステップS190〜S200)。さらに、CPU12は、撮影された画像情報と深さL1を利用して、ドットパタ−ン20の3次元空間での挙動を抽出する(ステップS210)。そして、CPU12は、触覚情報抽出手段に基づいて、ドットパタ−ン20の3次元空間での挙動から触覚情報を抽出する(ステップS220)。以上のステップ160〜220によって、物体W1の形状と触覚情報の同時取得が可能となる。
【0100】
なお、ドットパタ−ン20の3次元空間での挙動を抽出する方法は以下の通りである。
CCDカメラ4から入力される画像情報を用いて、ドットパタ−ン20に対して画像上の2次元空間における挙動を抽出可能となる。それに加え、ステップS190〜S200で求めたタッチパッド3内のドットパタ−ン20が配置された地点での深さL1の情報を利用すれば、画像上の2次元空間と異なる方向のドットパタ−ン20の挙動を抽出することが可能となる。
【0101】
また、触覚情報抽出手段に基づいてドットパタ−ン20の挙動から触覚情報を抽出する方法は、形状計測システム10に組み合わせる光学式触覚センサ及びそのシステムによって異なる。
【0102】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の形状計測装置1および形状計測システム10では、タッチパッド3と、CCDカメラ4と、照明5の3つで構成されており、比較的小さく簡単な構造で処理することができる。よって、従来の光学式触覚センサのシステムと組み合わせる際やその他の分野への応用の際に、他の形状計測装置よりも容易に応用可能となる。そして、膜6にマーカー部を配置したことで、その挙動を撮像手段によって撮影するような光学式触覚センサと、本発明の形状計測方法・装置を組み合わせることが可能である。即ち、この形状計測方法・装置は、触覚センサへの応用だけでなく、従来の触覚センサの機能を保持したまま形状計測を可能とする装置及びシステムを実現できる。
【0103】
(2)本実施形態では、タッチパッド3内のドットパタ−ン20が配置された地点での深さL1の情報を利用すれば、画像上の二次元空間と異なる方向のドットパタ−ン20の挙動を抽出することが可能となり、従来の光学式触覚センサの計測機能がより向上する。複雑な面を持つ対称物との接触時などに対しても、マーカーの位置情報が3次元になったことで対応可能となる。
[第3の実施形態]
次に、図1〜9に基づき第3の実施形態を説明する。なお、第1及び2の実施形態と共通している箇所については、同一の番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
【0104】
本実施形態は、前記第1の実施形態を対象物の硬度分布に関する情報の計測へ応用したシステムである。
次に、形状計測システム10による物体W1の硬度分布に関する情報の抽出方法を説明する。
【0105】
図10に示されるように、ステップS230においてタッチパッド3が物体W1に接触すると、CPU12は、図5に示されたステップS120〜S150の処理を行い物体W1の形状を計測する(ステップS240)。次に、CPU12は、物体W1とタッチパッド3の接触領域内の接触力分布の抽出を行う(ステップS250)。ただし、ここでいう接触力分布とは、タッチパッド3と物体W1の接触面と垂直方向の圧力分布であり、物体W1の接触によって変形したタッチパッド3が、非接触時の形状に復元しようとして生じる力である。この力は作用反作用の原理に基づき、タッチパッド3と物体W1の両者に作用する。
【0106】
ここで、CPU12は、S230〜S250のステップを前回と異なる接触力が発生するような接触状態において再度行う。ただし、接触力とは、タッチパッド3と物体W1の接触面と垂直方向の力であり、物体W1の接触によって変形したタッチパッド3が、非接触時の形状に復元しようとして生じる力である。この力は作用反作用の原理に基づき、タッチパッド3と物体W1の両者に作用する。また、異なる接触力が発生するような接触状態は、手動あるいは任意の制御機構により形状計測装置1の位置を変化させることで,タッチパッド3を物体W1に接触させる際にタッチパッド3を押し付けるための接触力を変化させれば実現可能である。タッチパッド3の形状によって接触力は変化するため、形状計測装置1の位置を物体W1に対して変化させれば接触力も変化可能である。任意の制御機構としては,例えばロボットアームの先端に形状計測装置1を装着し,ロボットアーム先端を動かし形状計測装置1の位置を変化させるようなものがあげられる。
【0107】
即ち、S230〜S250のステップの2回行うことで、物体W1の形状と接触力分布の情報が2つずつ得られる。そして、2つの物体W1の形状を比較することで、物体W1の接触領域内における、2つの物体W1の形状の間での物体W1の変形量の分布を抽出する(ステップS260)。最後に、2つの接触力分布を比較することで接触力分布の変化量を求め、接触力分布の変化量と物体W1の変形量の分布を利用することで、物体W1の硬度分布に関する情報を抽出する(ステップS270)。以上のステップ230〜270によって、物体W1の硬度分布に関する情報の抽出が可能となる。
【0108】
なお、ステップS250において接触力分布を抽出する方法は以下に示すいくつかの方法がある。
第1の方法としては、まず、タッチパッド3が備える板7に直径1〜2mm程度の穴を空け、その穴と任意形状の小型容器をホース等で接合させておく。タッチパッド3の内部には液体9を封入させておき、小型容器には空気を封入させておく。ここで、物体W1がタッチパッド3に接触すると液体9の一部が小型容器に進入する。液体9は非圧縮性であり、タッチパッド3の形状は形状計測システム10によって計測可能であるため、液体9が小型容器に進入する量は、物体W1がタッチパッド3に接触する前のタッチパッド3の形状から求めたタッチパッド3の体積と、物体W1がタッチパッド3に接触している時のタッチパッド3の形状から求めたタッチパッド3の体積との差になる。液体9が小型容器に進入する量から、小型容器に封入された空気の圧縮率が求まるため、気体の「(圧力)×(体積)=(一定)」という性質を利用し、圧縮率からタッチパッド3の内部の圧力を求めることが可能となる。タッチパッド3の内部の圧力が即ち接触力分布となる。
【0109】
第2の方法としては、まず、タッチパッド3の変形量と、タッチパッド3に作用している接触力分布との対応関係を、実際に両者の値を計測していくことで実験的に求める。そして、その対応関係を利用して、タッチパッド3の変形量からタッチパッド3に作用している接触力分布を求める。この方法では、タッチパッド3に封入された液体9は気体や弾性体であっても良い.
第3の方法としては、まず、タッチパッド3に封入された液体9を気体に変更する。第1の方法と同様にして、物体W1の非接触時と接触時におけるタッチパッド3の体積の差を求めることで、タッチパッド3に封入された気体の圧縮率を求める。そして、第1の方法と同様にして、気体の圧縮率からタッチパッド3の内部の圧力を求めることが可能となる。タッチパッド3の内部の圧力が即ち接触力分布となる。
【0110】
なお、ステップS270において物体W1の硬度分布に関する情報を抽出する方法は以下の通りである。
変形量の分布を接触力分布の変化量で割ることによって、物体W1の接触領域内における縦弾性係数の分布に相当する情報が得られる。この分布が物体W1の接触領域内において同一であれば、物体W1の硬度は接触領域内において一定であり、接触領域内において同一でなければ、物体W1の硬度も接触領域内において一定ではない。
【0111】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の形状計測装置1を利用することで、物体W1の硬度分布に関する情報を抽出することが可能となる。即ち、本実施形態の形状計測装置1は、形状計測機能だけでなく、硬度分布情報抽出機能も備えている。
[第4の実施形態]
次に、図1〜9に基づき第4の実施形態を説明する。なお、第1〜3の実施形態と共通している箇所については、同一の番号を付す代わりに、その詳細な説明を省略する。
【0112】
本実施形態は、前記第1の実施形態を対象物の硬度に関する情報の計測へ応用したシステムである。
次に、形状計測システム10による物体W1の硬度に関する情報の抽出方法を説明する。図11に示されるように、形状計測装置1と物体W1の間の位置関係を抽出するための位置関係抽出手段となる変位センサ21を、形状計測システム10に加えた硬度抽出システム22によって、物体W1の硬度に関する情報を抽出する。
【0113】
図12に示されるように、ステップS280においてタッチパッド3が物体W1に接触すると、CPU12は、図5に示されたステップS120〜S150の処理を行い物体W1の形状を計測する(ステップS290)。次に、CPU12は、図10のステップS250と同様の方法で、接触力の抽出を行う(ステップS300)。次に、CPU12は、変位センサ21を利用して、形状計測装置1に対する物体W1の相対位置を抽出する(ステップS310)。そして、CPU12は、物体W1の形状と相対位置から、物体W1の長さL6を抽出する(ステップS320)。ここで、CPU12は、S280〜S320のステップを前回と異なる接触力が発生するような接触状態において再度行う。ここで、異なる接触力が発生するような接触状態は、手動あるいは任意の制御機構により形状計測装置1の位置を変化させることで,タッチパッド3を物体W1に接触させる際にタッチパッド3を押し付けるための接触力を変化させれば実現可能である。タッチパッド3の形状によって接触力は変化するため、形状計測装置1の位置を物体W1に対して変化させれば接触力も変化可能である。任意の制御機構としては,例えばロボットアームの先端に形状計測装置1を装着し,ロボットアーム先端を動かし形状計測装置1の位置を変化させるようなものがあげられる。S280〜S320のステップの2回行うことで、物体W1の長さL6と接触力分布の情報が2つずつ得られる。そして、2つの物体W1の長さL6から、物体W1の変形量を抽出する(ステップS330)。最後に、2つの接触力を比較することで接触力の変化量を求め、物体W1の変形量を接触力の変化量で割ることによって、物体W1の縦弾性係数に相当する情報、即ち、物体W1の硬度に関する情報を抽出する(ステップS340)。以上のステップ280〜340よって、物体W1の硬度分布に関する情報の抽出が可能となる。
【0114】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の形状計測装置1を利用することで、物体W1の硬度に関する情報を抽出することが可能となる。即ち、本実施形態の形状計測装置1は、形状計測機能だけでなく、硬度情報抽出機能も備えている。 なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、膜6は異なる2色の膜を張り合わせてあるが、光の遮断性が強ければ、1色の膜であってもよい。また、膜には特に模様が着色されていないが、何か着色されていても良い。
・上記各実施形態では、照明5は同軸落射照明であったが、光が照射される位置(光源位置)と光が照射される方向が分かるものであれば、他の点光源や面光源であっても良い。
・上記各実施形態では、タッチパッド3の形状が板と半球を張り合わせた形状を有しているが、内部に液体9を封入可能で、CCDカメラ4から膜6が重なって見えなければ、他の形状でも良い。
・上記各実施形態では、液体9は水道水に赤色顔料を溶かした赤色半透明の水であるが、顔料を含み変形可能な物質であれば、水以外の液体や、ゲル、気体、弾性体等でも良い。また、顔料の色は赤色でなくても、光の波長帯域によって異なる反射率や散乱率、減衰率を持つ色の顔料であれば良い。さらに、顔料でなくても同程度の大きさであれば他の粒子であっても良い。
・上記各実施形態では、ドットパターン20は、格子状の模様や、三角形の網目状、六角形の網目状(ハニカム状)などの他の模様であってもよい。
・上記各実施形態では、ステップS250において接触力分布を抽出する際にタッチパッド3を利用したが、接触力分布を抽出する手段であれば、形状計測装置1に力センサ等を搭載した実施形態等、他の接触力分布抽出手段を備えていれば良い。
・上記各実施形態では、形状計測装置1と物体W1の間の位置関係を抽出するための位置関係抽出手段を変位センサ21としたが、位置関係を抽出できるものであれば他の手段でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0115】
例えば、本発明の形状計測システムを用いれば、物体の性質や環境に依存すること無く形状を計測できる。したがって、様々な種類の物体を扱う工場のラインなどに置いて、本発明の形状計測システムのみで、様々な種類の物体の形状を認識でき、検査用のシステムとして応用できる可能性がある。また、形状計測システムを利用して対象物の硬度に関する情報も抽出可能なため、例えば、内視鏡の先端に小型化した形状計測システムを配置し、体内の硬度を計測することで、癌細胞などの通常の体内細胞よりも硬い物質を発見する手段として応用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0116】
1…形状計測装置
2…ケ−シング
3…接触部としてのタッチパッド
4…CCDカメラ
5…照明
6…接触部としての膜
7…板
8…固定具としての金属板
9…光減衰手段としての液体
10…形状計測システム
20…マーカー部としてのドットパターン
21…位置関係抽出手段としての変位センサ
22…硬度抽出システム
W1…物体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物との接触部である前記対象物の形状に応じて変形可能な膜(7)と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜を撮影する撮像手段(4)と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜に向けて光を照射する光照射手段(5)と、前記膜と接触しており前記光照射手段から照射された光を減衰する光減衰手段(7,9)と、を含む形状計測装置。
【請求項2】
前記膜が、前記膜の対象物が接触する側に照射された光を遮断することを特徴とする請求項1に記載の形状計測装置。
【請求項3】
前記膜が、対象物が接触する側とその反対側で異なる色を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の形状計測装置。
【請求項4】
前記光減衰手段が、前記膜と接触する側が変形可能であり、前記膜と接触する側とは反対側が前記膜と接触する側よりも変形しにくい光減衰性部材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の形状計測装置。
【請求項5】
前記光減衰手段(前記部材)が、変形可能な光減衰性部材(9)と、それと接触している、前記変形可能な光減衰性部材(9)よりも変形しにくい光透過性もしくは半透過性の部材(7)からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の形状計測装置。
【請求項6】
前記光減衰手段が、光の波長によって異なる減衰率を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の形状計測装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置を利用して、前記膜に接触する対象物の形状を計測する方法であって、
前記撮像手段からの画像情報を画像処理することにより、撮影された画像の色情報を抽出するとともに、
前記色情報と前記光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報との対応関係を利用して前記色情報から前記距離に関する情報を抽出する距離情報抽出手段から、前記距離に関する情報を抽出するステップと、
前記距離から前記膜の形状を求めるステップと、
前記膜の形状から対象物の形状を求めるステップと
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した形状計測方法。
【請求項8】
前記対応関係が、光が前記膜によって反射する際の前記膜の反射現象と、前記光が前記光減衰手段を通過する際の前記光減衰手段による減衰現象と、前記光が前記光減衰手段を通過中に生じる異なる方向への散乱現象とを考慮した、前記色情報と前記距離に関する情報との対応関係であることを特徴とする請求項7に記載の形状計測方法。
【請求項9】
前記対応関係が、前記色情報と、光が前記膜によって反射する際の前記膜の反射率と、前記光が前記光減衰手段を通過する際の前記光減衰手段の減衰率と、前記光が光減衰手段を通過中に異なる方向へ散乱する際の前記光減衰手段の散乱率とを含んだ関数を利用した、前記色情報と前記距離に関する情報との対応関係であることを特徴とする請求項7に記載の形状計測方法。
【請求項10】
前記減衰率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて求めることを特徴とする請求項9に記載の形状計測方法。
【請求項11】
前記散乱率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて前記関数の中から消去可能であることを特徴とする請求項9又は10に記載の形状計測方法。
【請求項12】
前記反射率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて前記関数の中から消去可能であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の形状計測方法。
【請求項13】
前記対応関係が、複数の前記距離の情報を抽出して求める前記膜の角度を利用することを特徴とする請求項7〜12のいずれか1項に記載の形状計測方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、
前記撮像手段からの画像情報を画像処理することにより、撮影された画像の色情報を抽出するとともに、
前記色情報と前記光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報との対応関係を求め,前記対応関係を利用して前記色情報から前記距離に関する情報を抽出する距離情報抽出手段と、
前記距離から前記膜の形状を求める膜形状計測手段と、
前記膜の形状から前記膜に接触した対象物の形状を求める対象物形状計測手段と
を備えることを特徴とする形状計測装置を利用した形状計測システム。
【請求項15】
前記形状計測装置が備える膜(接触部)の対象物が接触する側とは反対側に配置されたマーカー部と、前記膜に対象物が接触した際の前記マーカー部の挙動を撮影する前記形状計測装置が備える撮像手段とを備えたことを特徴とする触覚情報抽出手段と、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置からなる光学式触覚センサ。
【請求項16】
請求項15記載の光学式触覚センサを利用して、前記マーカー部の3次元空間での挙動を計測する方法であって、
前記形状計測装置が備える撮像手段によって撮影した画像から、前記マーカー部の挙動のうち前記画像上の2次元空間での挙動を求めるステップと、
前記膜形状計測手段から、前記マーカー部の挙動のうち前記空間と独立した方向の挙動を求めるステップと
を含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した3次元マーカー位置計測方法。
【請求項17】
請求項15又は16記載の光学式触覚センサを利用して、力学量及び前記膜に接触する対象物の形状を計測する方法であって、
前記光学式触覚センサを用いて力学量を測定するステップと、
前記光学式触覚センサを用いて前記膜に接触する対象物の形状の計測するステップと
を含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した力学量及び形状計測方法。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の光学式触覚センサを用いて力学量を測定する力学量測定手段と、
前記光学式触覚センサを用いて前記膜に接触する対象物の形状の計測する形状計測手段と
を含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した力学量及び形状計測システム。
【請求項19】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力を抽出する接触力抽出手段とを利用して、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出する方法であって、
前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定するステップと、
前記接触力抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出するステップと、
前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測するステップと、
複数の前記接触状態における前記形状から、対象物の変形量の分布に関する情報を抽出するステップと、
前記変形量の分布に関する情報と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出するステップと
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度分布計測方法。
【請求項20】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、
前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定する接触状態選定手段と、
複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出する接触力抽出手段と、
前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測する形状計測手段と、
複数の前記接触状態における前記形状から、対象物の変形量の分布に関する情報を抽出する変形量分布情報抽出手段と、
前記変形量の分布に関する情報と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出する硬度分布情報抽出手段と
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度分布計測システム。
【請求項21】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力を抽出する接触力抽出手段と、前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出する位置関係抽出手段とを利用して、対象物の硬さに関する情報を抽出する方法であって、
前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定するステップと、
前記接触力抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出するステップと、
前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測するステップと、
前記位置関係抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出するステップと、
複数の前記接触状態における前記形状と前記位置関係から、対象物の変形量を抽出するステップと、
前記変形量と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さに関する情報を抽出するステップと
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度計測方法。
【請求項22】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、
前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定する接触状態選定手段と、
複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出する接触力抽出手段と、
前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測する形状計測手段と、
複数の前記接触状態における前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出する位置関係抽出手段と、
複数の前記接触状態における前記形状と前記位置関係から、対象物の変形量を抽出する変形量抽出手段と、
前記変形量と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さに関する情報を抽出する硬度情報抽出手段と
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度計測システム。
【請求項1】
対象物との接触部である前記対象物の形状に応じて変形可能な膜(7)と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜を撮影する撮像手段(4)と、前記膜の対象物が接触する側とは反対側から前記膜に向けて光を照射する光照射手段(5)と、前記膜と接触しており前記光照射手段から照射された光を減衰する光減衰手段(7,9)と、を含む形状計測装置。
【請求項2】
前記膜が、前記膜の対象物が接触する側に照射された光を遮断することを特徴とする請求項1に記載の形状計測装置。
【請求項3】
前記膜が、対象物が接触する側とその反対側で異なる色を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の形状計測装置。
【請求項4】
前記光減衰手段が、前記膜と接触する側が変形可能であり、前記膜と接触する側とは反対側が前記膜と接触する側よりも変形しにくい光減衰性部材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の形状計測装置。
【請求項5】
前記光減衰手段(前記部材)が、変形可能な光減衰性部材(9)と、それと接触している、前記変形可能な光減衰性部材(9)よりも変形しにくい光透過性もしくは半透過性の部材(7)からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の形状計測装置。
【請求項6】
前記光減衰手段が、光の波長によって異なる減衰率を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の形状計測装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置を利用して、前記膜に接触する対象物の形状を計測する方法であって、
前記撮像手段からの画像情報を画像処理することにより、撮影された画像の色情報を抽出するとともに、
前記色情報と前記光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報との対応関係を利用して前記色情報から前記距離に関する情報を抽出する距離情報抽出手段から、前記距離に関する情報を抽出するステップと、
前記距離から前記膜の形状を求めるステップと、
前記膜の形状から対象物の形状を求めるステップと
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した形状計測方法。
【請求項8】
前記対応関係が、光が前記膜によって反射する際の前記膜の反射現象と、前記光が前記光減衰手段を通過する際の前記光減衰手段による減衰現象と、前記光が前記光減衰手段を通過中に生じる異なる方向への散乱現象とを考慮した、前記色情報と前記距離に関する情報との対応関係であることを特徴とする請求項7に記載の形状計測方法。
【請求項9】
前記対応関係が、前記色情報と、光が前記膜によって反射する際の前記膜の反射率と、前記光が前記光減衰手段を通過する際の前記光減衰手段の減衰率と、前記光が光減衰手段を通過中に異なる方向へ散乱する際の前記光減衰手段の散乱率とを含んだ関数を利用した、前記色情報と前記距離に関する情報との対応関係であることを特徴とする請求項7に記載の形状計測方法。
【請求項10】
前記減衰率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて求めることを特徴とする請求項9に記載の形状計測方法。
【請求項11】
前記散乱率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて前記関数の中から消去可能であることを特徴とする請求項9又は10に記載の形状計測方法。
【請求項12】
前記反射率は、前記色情報と、既知である前記距離とを用いて前記関数の中から消去可能であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の形状計測方法。
【請求項13】
前記対応関係が、複数の前記距離の情報を抽出して求める前記膜の角度を利用することを特徴とする請求項7〜12のいずれか1項に記載の形状計測方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、
前記撮像手段からの画像情報を画像処理することにより、撮影された画像の色情報を抽出するとともに、
前記色情報と前記光照射手段から照射された光が前記光減衰手段を通過する距離に関する情報との対応関係を求め,前記対応関係を利用して前記色情報から前記距離に関する情報を抽出する距離情報抽出手段と、
前記距離から前記膜の形状を求める膜形状計測手段と、
前記膜の形状から前記膜に接触した対象物の形状を求める対象物形状計測手段と
を備えることを特徴とする形状計測装置を利用した形状計測システム。
【請求項15】
前記形状計測装置が備える膜(接触部)の対象物が接触する側とは反対側に配置されたマーカー部と、前記膜に対象物が接触した際の前記マーカー部の挙動を撮影する前記形状計測装置が備える撮像手段とを備えたことを特徴とする触覚情報抽出手段と、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置からなる光学式触覚センサ。
【請求項16】
請求項15記載の光学式触覚センサを利用して、前記マーカー部の3次元空間での挙動を計測する方法であって、
前記形状計測装置が備える撮像手段によって撮影した画像から、前記マーカー部の挙動のうち前記画像上の2次元空間での挙動を求めるステップと、
前記膜形状計測手段から、前記マーカー部の挙動のうち前記空間と独立した方向の挙動を求めるステップと
を含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した3次元マーカー位置計測方法。
【請求項17】
請求項15又は16記載の光学式触覚センサを利用して、力学量及び前記膜に接触する対象物の形状を計測する方法であって、
前記光学式触覚センサを用いて力学量を測定するステップと、
前記光学式触覚センサを用いて前記膜に接触する対象物の形状の計測するステップと
を含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した力学量及び形状計測方法。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の光学式触覚センサを用いて力学量を測定する力学量測定手段と、
前記光学式触覚センサを用いて前記膜に接触する対象物の形状の計測する形状計測手段と
を含むことを特徴とする、光学式触覚センサを利用した力学量及び形状計測システム。
【請求項19】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力を抽出する接触力抽出手段とを利用して、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出する方法であって、
前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定するステップと、
前記接触力抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出するステップと、
前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測するステップと、
複数の前記接触状態における前記形状から、対象物の変形量の分布に関する情報を抽出するステップと、
前記変形量の分布に関する情報と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出するステップと
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度分布計測方法。
【請求項20】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、
前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定する接触状態選定手段と、
複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出する接触力抽出手段と、
前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測する形状計測手段と、
複数の前記接触状態における前記形状から、対象物の変形量の分布に関する情報を抽出する変形量分布情報抽出手段と、
前記変形量の分布に関する情報と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さの分布に関する情報を抽出する硬度分布情報抽出手段と
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度分布計測システム。
【請求項21】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力を抽出する接触力抽出手段と、前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出する位置関係抽出手段とを利用して、対象物の硬さに関する情報を抽出する方法であって、
前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定するステップと、
前記接触力抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出するステップと、
前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測するステップと、
前記位置関係抽出手段を用いて、複数の前記接触状態における前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出するステップと、
複数の前記接触状態における前記形状と前記位置関係から、対象物の変形量を抽出するステップと、
前記変形量と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さに関する情報を抽出するステップと
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度計測方法。
【請求項22】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の形状計測装置と、
前記膜と対象物が接触する際の接触状態に対して、前記形状計測装置と対象物の間に作用する接触力が異なるように複数の接触状態を選定する接触状態選定手段と、
複数の前記接触状態における前記接触力をそれぞれ抽出する接触力抽出手段と、
前記形状計測装置を用いて、複数の前記接触状態における前記膜に接触する対象物の形状をそれぞれ計測する形状計測手段と、
複数の前記接触状態における前記形状計測装置と対象物の位置関係を抽出する位置関係抽出手段と、
複数の前記接触状態における前記形状と前記位置関係から、対象物の変形量を抽出する変形量抽出手段と、
前記変形量と複数の前記接触状態における前記接触力から、対象物の硬さに関する情報を抽出する硬度情報抽出手段と
を含むことを特徴とする、形状計測装置を利用した硬度計測システム。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【公開番号】特開2012−42220(P2012−42220A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180928(P2010−180928)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
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