説明

形状記憶性ポリアミドおよびそれを用いた形状記憶性ポリアミド生地の製造方法

本発明は、ε−カプロラクタムまたはヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸を主原料とするポリアミドの重合時に多価カルボン酸および多価アミンを添加して製造され、多価カルボン酸および多価アミンのうち少なくとも1つによって導入される芳香族成分の総含量がポリアミド主原料の含量に対して0.4〜10モル%である形状記憶性ポリアミドおよびそれを用いた形状記憶性ポリアミド生地の製造方法に関する。本発明の形状記憶性ポリアミドを用いて製造されるポリアミド生地は、しわがよりにくく、元の形態に回復しやすい形状記憶性を発現する高機能性生地であるため、各種衣類の素材として用いられることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶性ポリアミドおよびそれを用いた形状記憶性ポリアミド生地の製造方法に関し、詳細には、ポリアミド主鎖に一定比率の芳香族成分を含むことにより後加工の際に形状記憶性を発現することを特徴とする形状記憶性ポリアミドおよびそれを用いた形状記憶性ポリアミド生地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリアミド繊維は、他の合成繊維に比べて強度、耐摩耗性、染色性などが優れていて、多くの分野で非常に有用に使用されてきた。しかしながら、ポリアミド生地を加工した衣類は、洗濯後または着用中にしわがよく発生し、回復性が低いという短所がある。一般的に、衣類のしわは、重合体の分子形態、織物のねじれ数、密度および厚さなどの構造的変数や温湿度のような外部環境によって多様に影響を受ける。
【0003】
このように、多様な要因により発生するポリアミド生地のしわを防ぐ方法としては、酸、アルカリ処理または防縮加工などの樹脂加工、エイジング(ageing)、アニーリング(annealing)などの化学的処理方法および混紡などの物理的方法が多く使用されている。しかし、酸またはアルカリ処理方法は、織物に大きな損傷を与え、しわの少ない繊維との混紡は、しわ防止効果が不十分な側面がある。
【0004】
したがって、最近、洗濯をしても変形またはしわが発生せず、着用中にもしわがよりにくい形状記憶性を有する繊維を開発するための試みが行われている。形状記憶性繊維は、しわがよりにくく、元の形態に回復しやすい機能を有しているため、しわが形成されても手でしわを伸ばすだけで、元の形態に復元しやすく、アイロンがけや洗濯などで優れた耐久性を示す繊維である。
【0005】
形状記憶性織物として、特許文献1では、形状記憶性を有する樹脂繊維と形状記憶性樹脂接着剤とを接着剤で付着したシートを開示している。しかし、このような不織布シートは、短繊維を接着剤で結合した布であるため厚さが厚くて不均一であり、接着剤を使用するため原価が上昇する問題点を有する。また、形状記憶性繊維として形状記憶性ポリエステルまたはポリエチレンテレフタレート繊維は導入されたことがあるが、未だに形状記憶性ポリアミド繊維および生地は開発されていないため、ポリアミド繊維の利点と形状記憶性とを有する高機能性ポリアミド生地の開発が切実に要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−252353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、形状記憶性を発現してしわがよりにくく、復元力に優れた生地への加工が可能な形状記憶性ポリアミドを提供する。
【0008】
また、本発明は、分子鎖中に芳香族化合物を導入したポリアミド部分共重合体を用いる形状記憶性ポリアミド生地の製造方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、本発明により製造された形状記憶性ポリアミド生地およびこれを用いて製作される衣類を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の形状記憶性ポリアミドは、ε−カプロラクタムまたはヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸を主原料とするポリアミドの重合時に多価カルボン酸および多価アミンを添加して製造され、多価カルボン酸および多価アミンのうち少なくとも1つによって導入される芳香族成分の総含量が前記ポリアミド主原料の含量に対して0.4〜10モル%である。
【0011】
本発明の形状記憶性ポリアミド生地の製造方法は、ポリアミドの重合時に多価カルボン酸および多価アミンを添加して、芳香族成分の総含量が主原料の含量に対して0.4〜10モル%であるポリアミド部分共重合体を合成する段階;前段階で得られたポリアミド共重合体を用いて織編物を得る段階;および前記織編物を下記式(1)の条件で熱処理した後、下記式(2)の条件で染色する段階を含む。
【0012】
Tg+40℃≦Tx≦Tm−20℃ (1)
Tg≦Td≦Tx (2)
上記式中、Tgは、ポリアミド共重合体のガラス転移温度であり、
Txは、熱処理温度であり、
Tmは、ポリアミド共重合体の融点であり、
Tdは、染色温度である。
【0013】
本発明の形状記憶性ポリアミド生地は本発明の方法により製造され、本発明の衣類は前記形状記憶性ポリアミド生地により製作される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の形状記憶性ポリアミド生地は、形状記憶特性および形状復元力に優れていて、洗濯による収縮変形が大きくなく、洗濯によるしわが発生せず、着用中にもしわまたは変形が少ない利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
本発明の形状記憶性ポリアミドは、ε−カプロラクタムまたはヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸を主原料とするポリアミドの重合時に多価カルボン酸および多価アミンを添加して製造され、多価カルボン酸および多価アミンのうち少なくとも1つによって導入される芳香族成分の総含量がポリアミド主原料の含量に対して0.4〜10モル%である。
【0017】
本発明の形状記憶性ポリアミドが形状記憶性(memory properties)を実現する原理は、正確には究明されていないが、下記のように推測することができる。原則的にポリアミド繊維は、水素結合力の強い規則的な配列を有していて弾性特性を付与しない。しかしながら、本発明のポリアミドは、芳香族基の存在による鎖のねじれおよびこれによる主鎖間の相互作用の減少によってメモリー性が発現されると推測される。
【0018】
本発明のポリアミド繊維の具体的な例としては、ナイロン6、ナイロン66またはナイロン6とナイロン66との共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ナイロン6は、ε−カプロラクタムを主原料として重合して合成され、ナイロン66は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との重合により形成される。
【0019】
本発明で、前記芳香族成分は、スルホン酸基を含む芳香族成分であることが好ましいが、このように芳香族成分にスルホン酸基が存在すると、スルホン酸基の強いイオン結合に起因した物理的ネットワークによって形状記憶性を発現するのに有利になる。
【0020】
前記芳香族成分は、芳香族多価カルボン酸と脂肪族多価アミンとの組み合わせ、脂肪族多価カルボン酸と芳香族多価アミンとの組み合わせ、または芳香族多価カルボン酸と芳香族多価アミンとの組み合わせにより導入することができる。
【0021】
本発明で使用可能な多価カルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3,5−トリカルボン酸、2,5−および3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、2,5−および3,5−ジカルボキシエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジカルボキシプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルベンゼンスルホン酸、2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジエトキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジエトキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジプロポキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジプロポキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸などのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩ならびにこれらの混合物からなる群より選択されるものを含むが、これらに限定されない。
【0022】
前記多価アミン化合物としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、メタキシレンジアミンおよびこれらの混合物からなる群より選択される任意のものを使用することができる。
【0023】
また、本発明は、形状記憶性ポリアミド生地の製造方法に関する。本発明の形状記憶性ポリアミド生地の製造方法は、ポリアミドの分子鎖中に芳香族基を導入してポリアミド部分共重合体を合成し、これを溶融紡糸して原糸を製造した後、本発明による加工工程を通じて形状記憶性を付与する。
【0024】
具体的に、本発明により形状記憶性ポリアミド生地を製造する場合には、まず、ポリアミドの重合時に多価カルボン酸および多価アミンを添加して、芳香族成分の総含量が主原料の含量に対して0.4〜10モル%であるポリアミド部分共重合体を合成する。例えば、ナイロン6は、ε−カプロラクタムを主原料とし、ナイロン66は、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンを主原料とする。次いで、前段階で得られたポリアミド共重合体を通常の方法で溶融紡糸して製糸した後、製織または編織して織編物を製造する。最後に、前記織編物を下記式(1)の条件で熱処理して熱固定した後、下記式(2)の条件で染色することで、本発明の形状記憶性ポリアミド生地を製造することができる。
【0025】
Tg+40℃≦Tx≦Tm−20℃ (1)
Tg≦Td≦Tx (2)
上記式中、Tgは、ポリアミド共重合体のガラス転移温度であり、
Txは、熱処理温度であり、
Tmは、ポリアミド共重合体の融点であり、
Tdは、染色温度である。
【0026】
本発明で、ε−カプロラクタムまたはアジピン酸およびヘキサメチレンジアミンを主原料とするポリアミド部分共重合体の製造時に、添加される芳香族化合物は、主原料の含量に対して0.4〜10モル%になるように添加される。芳香族化合物の添加量が0.4モル%未満である場合、最終的に得られる織物の形状記憶特性が十分に発現できない。一方、芳香族化合物の添加量が10モル%を超過する場合には、重合度が顕著に低下するかまたはポリアミド生地の固有の特性が消失する。
【0027】
本発明で使用される芳香族化合物は、芳香族多価カルボン酸と脂肪族多価アミンとの組み合わせ、脂肪族多価カルボン酸と芳香族多価アミンとの組み合わせおよび芳香族多価カルボン酸と芳香族多価アミンとの組み合わせから選択することができる。いずれの場合でも全体芳香族化合物の含量は、ポリアミドの主原料の含量に対して10モル%以下にしてポリアミド共重合体を合成する。
【0028】
本発明で使用可能な多価カルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3,5−トリカルボン酸、2,5−および3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、2,5−および3,5−ジカルボキシエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジカルボキシプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルベンゼンスルホン酸、2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジエトキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジエトキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジプロポキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジプロポキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩化合物からなる群より選択される少なくとも一種を挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明で使用可能な多価アミン化合物としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、メタキシレンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明で、ポリアミド共重合体の合成時には、消光剤として二酸化チタンを添加して多様な光沢を実現することができる。さらに、マグネシウム化合物、銅化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物などを添加して機能性を付与することができる。
【0031】
ポリアミド高分子鎖中に芳香族成分が導入されたポリアミド共重合体は、通常の方法で溶融紡糸して原糸を製造した後、製織して織編物を製造し、前記織編物を下記式(1)の条件で乾熱または湿式熱処理して熱固定し、下記式(2)の熱処理温度より低い温度で染色工程を行うことで、織編物に形状記憶特性を付与することができる。
【0032】
Tg+40℃≦Tx≦Tm−20℃ (1)
Tg≦Td≦Tx (2)
上記式中、Tgは、ポリアミド共重合体のガラス転移温度であり、
Txは、熱処理温度であり、
Tmは、ポリアミド共重合体の融点であり、
Tdは、染色温度である。
【0033】
本発明で、前記熱処理温度がポリアミド素材のTg+40℃より低い場合、織編物に対する熱処理固定能力が落ち、素材のTm−20℃より高い場合、素材の部分溶融が起こるため好ましくない。
【0034】
染色温度は、熱処理温度より低い条件が好ましく、ポリアミド素材のガラス転移温度(Tg)より低い温度では染色が不均一であり、ポリアミド素材の融点(Tx)より高い温度では形状記憶特性が消失するため好ましくない。
【0035】
上述した方法により製造される形状記憶性ポリアミド生地は、各種衣類の素材として用いることができる。また、本発明のポリアミド生地は、例えば、身体補正下着、ガードル、オールインワンなどの各種下着はもちろん、ゴルフウェア、登山ウェアなどのスポーツ衣類、靴下、ストッキング、紳士婦人服などの各種衣類の生地として用いることができ、メモリー性が要求される他の分野でも用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げてより詳しく本発明を説明するが、これら実施例は説明を目的としたに過ぎず、本発明の保護範囲を限定すると解釈してはならない。
【0037】
実施例1〜5および比較例1〜2
撹拌器が装着された混合槽にナイロン6用のε−カプロラクタムと、開始剤として水を投入し、下記表1に示す種類および含量の多価カルボン酸および多価アミンを添加した後、250〜300℃で重合した。得られた生成物を水槽に注いで固化させた後、ポリマーレースをチップ化し、抽出および乾燥させることにより、最終チップの物性が硫酸相対粘度約2.6を有する共重合ポリアミドチップを得た。
【0038】
前記共重合ポリアミドチップを水分率0.05重量部以下に維持した後、溶融紡糸した。紡糸ノズルとしては、0.25mmの直径の68ホールを有するSUS−316材質のノズルを使用し、紡糸温度265℃で20℃の冷却空気を風速0.5m/minで当てて冷却させて油剤を付与した後、紡糸速度4500m/minで延伸比を調節して、強度5.2g/dおよび伸度45%の原糸物性を有する70d/68fポリアミド繊維を製造した。
【0039】
製造された原糸を緯入して織編物を製造した後、170℃でスチーム式熱処理をし、次に100℃で染色して生地を製造した。実施例1〜5および比較例1〜2で製造された生地の形状記憶特性を肉眼で評価した結果を下記表1に示す。
【0040】
【表1】

*化合物略語
AA:アジピン酸 HMD:ヘキサメチレンジアミン
TPA:テレフタル酸 MXD:メタキシレンジアミン
IPA:イソフタル酸 t−IPA:1,3,5−トリカルボン酸
SiPA:5−ナトリウムスルホイソフタル酸
[形状記憶特性および形状復元力評価方法]
形状記憶特性は、製織された生地にしわを作った場合、形態維持の可否を肉眼で評価することにより決定され、形状復元力は、しわを伸ばした場合、元の形態に回復する程度を肉眼で評価して決定された。
【0041】
◎:優秀 ○:良好 △:普通 x:効果なし
実施例6〜10および比較例3〜4
前記実施例1〜5のように、撹拌器が装着された混合槽にナイロン66用のアジピン酸およびヘキサメチレンジアミン成分を投入し、下記表2に示す種類および含量の多価カルボン酸および多価アミンを添加した後、270〜350℃で重合した。その後、得られた生成物を水槽に注いで固化させた後、ポリマーレースをチップ化して、最終チップの物性が硫酸相対粘度約2.6を有する共重合ポリアミドチップを得た。
【0042】
前記共重合ポリアミドチップを水分率0.05重量部以下に維持した後、溶融紡糸した。紡糸ノズルとしては、0.25mmの直径の68ホールを有するSUS−316材質のノズルを使用し、紡糸温度295℃で20℃の冷却空気を風速0.5m/minで当てて冷却させて油剤を付与した後、紡糸速度4500m/minで延伸比を調節して、強度5.8g/dおよび伸度43%の原糸物性を有する70d/68fポリアミド繊維を製造した。
【0043】
製造された原糸を緯入して織編物を製造した後、210℃でスチーム熱処理し、次に100℃で染色して生地を製造した。実施例6〜10および比較例3〜4で製造された生地の形状記憶特性を肉眼で評価した結果を下記表2に示す。
【0044】
【表2】

上記結果から、メタ系芳香族化合物の添加により、ナイロン6だけでなくナイロン66も同一の形状記憶特性を発現することを確認することができた。特に、スルホン酸基を含有したポリアミド部分共重合体の場合、その効果が最も優秀であった。
【0045】
以上、好適な実施例を参考として本発明を詳細に説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、添付の特許請求の範囲に開示した発明の範囲および思想から逸脱することなく、各種の変更例または均等な他の実施例に想到し得るであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ε−カプロラクタムまたはヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸を主原料とするポリアミドの重合時に多価カルボン酸および多価アミンを添加して製造され、多価カルボン酸および多価アミンのうち少なくとも1つによって導入される芳香族成分の総含量が前記ポリアミド主原料の含量に対して0.4〜10モル%であることを特徴とする形状記憶性ポリアミド。
【請求項2】
前記ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66またはナイロン6とナイロン66との共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の形状記憶性ポリアミド。
【請求項3】
前記芳香族成分は、スルホン酸基を含む芳香族成分であることを特徴とする、請求項1に記載の形状記憶性ポリアミド。
【請求項4】
前記芳香族成分は、芳香族多価カルボン酸と脂肪族多価アミンとの組み合わせ、脂肪族多価カルボン酸と芳香族多価アミンとの組み合わせ、または芳香族多価カルボン酸と芳香族多価アミンとの組み合わせにより導入されることを特徴とする、請求項1に記載の形状記憶性ポリアミド。
【請求項5】
前記多価カルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3,5−トリカルボン酸、2,5−および3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、2,5−および3,5−ジカルボキシエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジカルボキシプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルベンゼンスルホン酸、2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジエトキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジエトキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジプロポキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジプロポキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩ならびにこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の形状記憶性ポリアミド。
【請求項6】
前記多価アミン化合物は、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、メタキシレンジアミンおよびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の形状記憶性ポリアミド。
【請求項7】
ポリアミドの重合時に多価カルボン酸および多価アミンを添加して、芳香族成分の総含量が主原料の含量に対して0.4〜10モル%であるポリアミド部分共重合体を合成する段階;
前段階で得られたポリアミド共重合体を用いて織編物を得る段階;および
前記織編物を下記式(1)の条件で熱処理した後、下記式(2)の条件で染色する段階を含むことを特徴とする形状記憶性ポリアミド生地の製造方法:
Tg+40℃≦Tx≦Tm−20℃ (1)
Tg≦Td≦Tx (2)
上記式中、Tgは、ポリアミド共重合体のガラス転移温度であり、
Txは、熱処理温度であり、
Tmは、ポリアミド共重合体の融点であり、
Tdは、染色温度である。
【請求項8】
前記ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66またはナイロン6とナイロン66との共重合体であることを特徴とする、請求項7に記載の形状記憶性ポリアミド生地の製造方法。
【請求項9】
前記ポリアミド部分共重合体は、芳香族多価カルボン酸と脂肪族多価アミンとの組み合わせ、脂肪族多価カルボン酸と芳香族多価アミンとの組み合わせ、または芳香族多価カルボン酸と芳香族多価アミンとの組み合わせを有することを特徴とする、請求項8に記載の形状記憶性ポリアミド生地の製造方法。
【請求項10】
前記多価カルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3,5−トリカルボン酸、2,5−および3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、2,5−および3,5−ジカルボキシエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジカルボキシプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルベンゼンスルホン酸、2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジメトキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジエトキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジエトキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩、2,5−および3,5−ジプロポキシカルボキシルエチルベンゼンスルホン酸、ならびに2,5−および3,5−ジプロポキシカルボキシルプロピルベンゼンスルホン酸またはこれらのナトリウム、カリウムもしくはリチウムのスルホン酸塩ならびにこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項7に記載の形状記憶性ポリアミド生地の製造方法。
【請求項11】
前記多価アミン化合物は、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、メタキシレンジアミンおよびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項7に記載の形状記憶性ポリアミド生地の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法により製造されることを特徴とする形状記憶性ポリアミド生地。
【請求項13】
請求項12の生地から製作されることを特徴とする形状記憶性衣類。

【公表番号】特表2010−512445(P2010−512445A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541214(P2009−541214)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006320
【国際公開番号】WO2008/075844
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501434948)ヒョスン・コーポレーション (18)
【氏名又は名称原語表記】HYOSUNG CORPORATION
【Fターム(参考)】