説明

循環装置およびこれを用いた循環浄化槽、並びに汚水浄化装置

【課題】簡易な装置としながらも効率良く汚物を分解し、きれいな循環水を得ることができる汚水浄化技術を提供する。
【解決手段】汚水が内部に通過可能なスリットを有する筐体部1と、該筐体部1に空気を送気するための空気導入部2と、筐体部1に入り込んだ汚水に空気を混合して気泡を含有させるための空気混合部と、気泡が含まれた汚水を筐体部1外へ放出するための放出部4と、筐体部1に設けられ汚水に含まれる未分解有機物を吸着するための吸着部5と、を備え、放出部4より筐体部1の外部に放出した汚水を筐体部1に帰還させて、閉鎖状態にある汚水を浄化することを特徴とする循環装置11。水槽10等の閉鎖状態にある汚水の溶存酸素濃度を高く維持しながら、汚水の温度を若干高めて汚水を循環させて、汚水中の未分解有機物を吸着部5により吸着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ等の汚水を清浄化し、洗浄用として再利用する技術に関し、より詳しくは、閉鎖状態にある汚水を循環させて清浄化する循環装置およびこれを用いた循環浄化槽、並びに汚水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、節水を目的として、微生物で処理を行う汚泥分解法による循環式トイレ(汚水浄化装置)が使用されている。この循環式トイレにより清浄化された水はトイレで洗浄水として再利用されるため、家庭内において節水できるばかりでなく、公園やレジャー施設等の屋外での仮設トイレとしても使用されている。循環式トイレの装置としては、曝気槽を利用するものがあり、この曝気槽を使用すれば微生物に汚物を分解させることができるため、浄化する初期段階で利用されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1記載の水洗式トイレの水循環装置は、汚物を曝気槽で処理後、この曝気槽より送水された排水を溜めて清水と汚泥とに分離する分離槽を備え、この汚泥を下水道に排出させるものである。
特許文献2記載の循環式水洗汚水浄化装置は、水洗汚水を曝気処理する第1曝気槽と、この第1曝気槽でオーバーフローした処理水を曝気処理する第2曝気槽と、この処理水の不純物を除去する濾過槽と、さらにこの処理水を漂白するための脱色槽と、を備えている。
特許文献3記載の簡易水洗トイレは、複数の浄化槽に順に汚水を送って浄化させ、浄化槽には発酵微生物が投入されるとともに、木炭が挿入されたものであり、簡易な構造の装置としている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−339429号公報
【特許文献2】特開2002−102874号公報
【特許文献3】特開2003−184158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の水循環装置は、曝気槽の処理能力が低く、汚泥を下水道に排出しなければならず、汚泥を完全処理できるものではない。このため、下水道に排出するパイプ、エアリフトポンプなどを具備しなければならず、簡易施設等に設けることは困難である。
特許文献2記載の循環式水洗汚水浄化装置は、脱色槽にはオゾン発生器が設けられており、装置が複雑となり、コストも高くなる。
【0006】
また、特許文献1〜3においては、曝気槽から最終装置までの間、各装置を一貫して通過させるのみの処理であるため、汚水は完全に清浄化されていないと推察される。特に、トイレの使用頻度が高まった場合、各装置の処理能力を超えてしまうと、曝気槽以降の装置への負荷が大きくなり、汚水は浄化されないで色がついたままであったり、臭いを除去しきれなかったりして、汚物を素早く処理できず、快適なトイレとしての機能を維持できない等の問題も発生する。
さらに、不使用時においては、水の流れが装置内で止まってしまうため、特に冬場において凍結するという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な装置としながらも効率良く汚物を分解し、きれいな循環水を得ることができる汚水浄化技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の循環装置は、汚水が内部に通過可能なスリットを有する筐体部と、該筐体部に空気を送気するための空気導入部と、筐体部に入り込んだ汚水に空気を混合して気泡を含有させるための空気混合部と、気泡が含まれた汚水を筐体部外へ放出するための放出部と、筐体部に設けられ汚水に含まれる未分解有機物を吸着するための吸着部と、を備え、放出部より筐体部の外部に放出した汚水を筐体部に帰還させて、閉鎖状態にある汚水を浄化することを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、水槽等の閉鎖状態にある汚水の溶存酸素濃度を高く維持しながら、汚水の温度を若干高めて汚水を循環させることができる。これにより、汚水に含まれる微生物の活動を活性化させて、未分解有機物を微生物に分解させながら循環するたびに汚水中の未分解有機物を吸着部により吸着させて汚水を浄化することができる。すなわち、水槽などの閉鎖状態において、微生物による浄化機能と、循環による浄化機能とを併せ持った浄化が可能となる。また、常に汚水が循環して動いた状態となるため、汚水の温度が高まることから、余剰水分が蒸発したり、冬場においても汚水の温度が上昇して汚水の凍結を防止したりすることができる。
【0010】
ここで、空気混合部は、空気導入部と放出部とを汚水が混入可能に隙間を設けて連結して形成することができる。空気導入部と放出部とは連結されているため、空気導入部からエアーブロー等により送気されると、空気導入部と放出部との連結部分を通過して放出部へと移動する。このとき、連結部分には隙間を設けているため、この隙間が負圧となり、汚水が隙間に吸入されることとなる。これにより、汚水と空気とが混合され、この混合される位置が空気混合部として機能する。このように空気が混合された汚水を放出部から筐体外部へと放出することができる。
【0011】
以上のように、空気導入部に空気を送気すれば、負圧が発生して汚水を空気混合部へと吸引するため、この吸引力が、閉鎖状態である水槽内を循環させる原動力となって、放出部より放出した汚水を循環装置の吸着部に帰還させることができ、何度も繰り返し循環させて汚水を浄化することが可能となる。
【0012】
また、吸着部は、筐体部を被覆した層状体であり、該層状体は、汚水が通過するときに未分解有機物を吸着するための活性炭を含む粒状多孔質材の層である吸着層と、該吸着層の下に設けられ該吸着層を支持するとともに該吸着層を通過した汚水を通すための隙間を有する透水層と、を積層した構造とすることができる。このような構成とすれば、吸着層を濾過層として機能させることができ、汚水を何度も通過させて濾過すれば、汚水中の未分解有機物を次第に減少させることができる。また吸着層により濾過された汚水は透水層を通過し、スリットから筐体部内に入り込むこととなる。筐体部内に入り込んだ汚水は、前述のように空気混合部を通過して放出部より放出される。
【0013】
ここで、透水層は、吸着層の下に設けられ該吸着層を支持し粒状多孔質材の層である第1透水層と、該第1透水層の下に設けられ該第1透水層を支持し粒状多孔質材の層である第2透水層と、を積層したものであり、吸着層の粒状多孔質材の粒径に対し第1透水層の粒状多孔質材の粒径が2倍以上5倍以下であり、第1透水層の粒状多孔質材の粒径に対し第2透水層の粒状多孔質材の粒径が2倍以上5倍以下とすることが望ましい。
【0014】
吸着層の粒径に対し第1透水層の粒径を2倍以上5倍以下とすれば、吸着層を第1透水層に支持させることができる。ここで支持とは、第1透水層の上面に渡り吸着層が載置された状態となっており、吸着層の粒状多孔質材が第1透水層の粒状多孔質材に混合されていない状態をいう。前記比率を2倍未満とすると、吸着層を通過した汚水の第1透水層を通過する抵抗が増して通過速度が遅くなり、汚水を水槽内で循環させるのに支障をきたすこととなる。前記比率が5倍を超えると、吸着層の粒子が第1透水層の粒子の隙間に入り込んで混合されてしまい、吸着層が分散されてその機能が劣るとともに、この吸着層がさらに第2透水層へ(下方へ)と拡散してしまうこととなり、吸着層を形成できなくなる。
【0015】
同様に、第1透水層の粒状多孔質材の粒径に対し第2透水層の粒状多孔質材の粒径が2倍以上5倍以下とするとすれば、第1透水層を第2透水層に支持させることができる。ここで支持とは、第2透水層の上面に渡り第1透水層が載置された状態となっており、第1透水層の粒状多孔質材が第2透水層の粒状多孔質材にほとんど混合されていない状態をいう。
また、吸着層と第1透水層と第2透水層は、上方から粒径の小さい順に積層されており、下層に移動するにつれ、隙間が大きくなる構造となっている。このように順次隙間が大きくなるように層を形成して前記層状体とすれば、各層を通過した汚水を、層に滞留させることなく下方へ移動させて、抵抗なく循環装置の筐体部内に帰還させることができる。
【0016】
第1透水層の粒径に対し第2透水層の粒径の比率を2倍未満とすると、第2透水層の隙間を十分に確保できなくなり、第1透水層を通過した汚水が第2透水層に滞留しやすくなり、汚水を筐体部内に帰還させるのに支障をきたす可能性がある。前記比率が5倍を超えると、第1透水層の粒子が第2透水層の粒子の隙間に入り込んで混合されてしまい、吸着層の粒状多孔質材が筐体内に入り込む危険性がある。
【0017】
また本発明の循環浄化槽は、前述の循環装置を槽内に備えたものであるが、さらにこの循環浄化槽を汚水浄化装置に利用すれば、循環浄化槽で十分に浄化するなどしてから後の処理工程で浄化するようにすれば、他の処理装置の負担を軽減することができる。
【0018】
より詳しくは、本発明の汚水浄化装置は、曝気しながら汚物または汚泥を分解して汚水を浄化するための曝気槽と、該曝気槽で処理された汚水を浄化する濾過槽とを備え、該濾過槽で処理された汚水を循環させて洗浄水として再利用が可能な汚水浄化装置であって、濾過槽の前に前記循環浄化槽を備えたことを特徴とする。
ここで、循環浄化槽に備わる循環装置は、槽内の閉鎖状態にある汚水を循環させて浄化する装置となるようにその構成を大きく逸脱しない範囲で変更することができる。すなわち、濾過槽の前に、槽内の閉鎖状態にある汚水を循環させて浄化するための循環装置を有する循環浄化槽を備えることもできる。
【0019】
循環浄化槽を濾過槽の前に設けたことにより、予め循環浄化槽において汚水をある程度浄化した後に、濾過槽で処理する工程に移行させることとなる。これにより、濾過槽の処理負担を軽減することができ、確実に汚水中の未分解有機物を濾過して汚水を浄化することができる。また、濾過槽の処理負担が軽減されることから、濾過槽を長い期間に渡って使用することができ、持続性の高い汚水処理装置とすることができる。また、使用頻度が多い場合には、曝気槽で処理しきれない未分解有機物等が後工程で処理されることとなるが、このような未分解有機物等も濾過槽に移行する前段階として処理することが可能となる。ここで、濾過槽の「前」とは濾過する工程の前段階であることを意味し、濾過槽の「後」とは濾過する工程の後段階であることを意味する。
【0020】
ここで、濾過槽を複数とし、少なくとも一つの濾過槽の前に循環浄化槽を備えることが望ましい。濾過槽を複数とした場合でも、最低一つの循環浄化槽を設けることが望ましく、全ての濾過槽の前に循環浄化槽を設けることがより望ましい。濾過槽毎に循環装置を設ければ、さらに汚水の浄化を促進することができる。
【0021】
さらに、曝気槽の内部においても循環装置を設ければ、曝気槽内での未分解有機物の処理能力をさらに高めることができ、処理負荷が大きくなっても汚物や汚泥を分解することができる。
【0022】
また、濾過槽の後には、汚水を浄化して得た水を貯水するための貯水槽が設けられ、該貯水槽の内部にも循環装置を設けても良い。濾過工程後の貯水槽においても循環装置を設ければ、浄化後の水に混在している未分解有機物を除去することができるとともに、冬場においてさらに凍結しにくい状況とすることができる。
【0023】
本発明の汚水浄化装置は、濾過槽の内部には互いに間隔をおいて複数の仕切板が垂直状態に配置されて設けられ、前記複数の仕切板にはそれぞれ通水可能な通水部が形成されており、該通水部の形成位置が、隣り合う仕切板どうしで濾過槽内上下方向にみて互いに上下逆となる位置関係にあり、各仕切板間には汚水を浄化するための吸着材が設けられたことを特徴とする。
【0024】
隣り合う仕切板どうしで濾過槽内上下方向にみて互いに上下逆となる位置関係としたことにより、複数の仕切板の間を水流の方向を上下方向に順次変化させながら移動させることができる。これにより、汚水の移動距離が増加することとなり、比較的設置面積が小さい濾過槽であっても効率良く汚水中の未分解有機物を吸着して浄化することができる。
【0025】
ここで、濾過槽内上下方向にみて上方にある各通水部は、高さ位置が段階的に低くなるように前記仕切板の上端から下方に形成された切り欠きとすれば、汚水は仕切板の低い方へと流れやすくなって、隣の仕切板側へと移行させやすくなる。また、通水部を切り欠きとしたことにより、汚水が一度に流出することを防止することができる。さらに、濾過槽内の汚水を絶えず移動させて濾過させる移動手段を備えたことにより、濾過槽内において汚水を絶えずゆっくり移動させて浄化することができる。また、各槽にも循環装置を設けて絶えず水が動いているため、この絶えざる水の流れにより冬場の凍結を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の循環装置の最大の特徴は、汚水が内部に通過可能なスリットを有する筐体部と、該筐体部に空気を送気するための空気導入部と、筐体部に入り込んだ汚水に空気を混合して気泡を含有させるための空気混合部と、気泡が含まれた汚水を筐体部外へ放出するための放出部と、筐体部に設けられ汚水に含まれる未分解有機物を吸着するための吸着部と、を備え、放出部より筐体部の外部に放出した汚水を筐体部に帰還させて、閉鎖状態にある汚水を浄化することを特徴とする。このような構成とすれば、水槽などの閉鎖状態において、微生物による浄化機能と、循環による浄化機能とを併せ持った浄化が可能となる。
【0027】
さらに、前記循環装置を設けた循環浄化槽を、循環式トイレ等の汚水浄化装置に利用し濾過槽の前に設ければ、循環浄化槽で十分に浄化してから後の濾過工程で浄化することとなり、濾過槽の処理負担を軽減することができる。また、本発明の汚水浄化装置は、汚水を装置の各槽を一巡させて浄化する上で、さらに各槽内において独自に循環させることとなるため、効率の良い浄化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施形態である循環装置を備えた循環浄化槽の概要を示す側面図、図2は本発明の実施形態である循環装置を示す図であり、(a)は図1におけるA−A線での一部平面図、(b)は同(a)におけるB−B線断面図、(c)は同(a)におけるC−C線断面図であり、図3は図1における循環装置を詳細に示す断面図である。
【0029】
図1〜図3に示すように、本発明の実施形態である循環浄化槽20は、汚水を貯水可能な水槽10と、この水槽10に設けられこの水槽10内で汚水を循環させながら浄化する循環装置11とを有している。循環装置11は、汚水が内部に通過可能なスリット1aを有する筐体部1と、この筐体部1の内部に循環浄化槽20の外部から空気を送気するための空気導入部2と、筐体部1に入り込んだ汚水に空気を混合して気泡を含有させるための空気混合部3と、気泡が含まれた汚水を筐体部1外へ放出するための放出部4と、筐体部1に設けられ汚水に含まれる未分解有機物を吸着するための吸着部5と、を備えている。吸着部5は、筐体部1を被覆して後述するように層状に設けられた層状体であり、筐体部1の内部は空洞となっている。
【0030】
空気混合部3は、放出部4の先端部の径をわずかに太く形成した部分、すなわち、空気導入部2の先端であるL字状のエルボ2aと放出部4の先端とを、汚水が混入可能に隙間Sを設けて連結した部分である。空気導入部2とエルボ2aと放出部4とは連結されて繋がっているため、空気導入部2からポンプ等により空気が送気されると(矢印D)、空気は、エルボ2aを通過して放出部4へと移動する(矢印E)。このとき、放出部4の先端(空気混合部3)とエルボ2aとの間には隙間Sが設けられているため、この隙間Sが負圧となり、汚水が隙間Sに吸入されることとなる(矢印F)。これにより、汚水と空気とが空気混合部3において混合される。このように循環装置11は、空気が混合されて気泡を含んだ汚水を放出部4へ移動させ(矢印G)、筐体部1外へと放出することができる。
【0031】
以上のように、空気導入部2に空気を送気すれば、負圧が発生して汚水を空気混合部3へと吸引するため、この吸引力が、閉鎖状態である水槽10内を循環させる原動力となって、放出部4より放出した汚水を、後述するように循環装置11の吸着部5に帰還させることができる(図3における矢印I)。このように、空気導入部2へ送気し続ければ、汚水は水槽10内で循環させることができ、汚水は、後述するように、吸着部5により汚水中の有機物を吸着して浄化される。
【0032】
また、放出部4は、適宜、エルボ4a,4bを連結させており、循環浄化槽20の内部の上部から、下部へ向けて汚水を放出する(図1中の矢印H)。さらに、放出部4の先端であるエルボ4aには、内部に繊維質状のフィルタを有するトラップ6が設けられている。このフィルタの繊維に引っかかるような有機物を付着させてトラップ6の先端部である放水口6aから汚水を放出する(矢印I)。このため、汚水は、このトラップ6においても浄化されることとなる。
【0033】
以上にように、循環浄化槽20内において、汚水は、矢印F,矢印G,矢印H,矢印I,矢印J,矢印Fという流れで循環する。このように、放出部4より筐体部1の外部に放出された汚水を再度筐体部1に帰還させて、閉鎖状態にある循環浄化槽20内の汚水を何度も繰り返して浄化することができる。また、空気は、矢印D,矢印E(汚水と混合),矢印G,矢印Hという流れとなり、一部は矢印Iの流れとなる。なお、トラップ6の形態はこれに限定されるものではなく、使用状況に応じて設置を省いたり、改良したりすることもできる。
【0034】
次に、循環装置11の寸法や材質について説明する。なお各寸法は一例を示すものであり、施工条件によって設計変更可能であり、限定されるものではない。循環浄化槽20の水槽10は、横600mm×奥行き450mm×高さ450mmであり、筐体部1は約240mm×約340mm×約20〜50mmである。また、筐体部1に設けられたスリット1aは幅約3mm、長さ80mmであり、隣どうしのスリット1aの間隔を約30mmとしている。また、筐体部1の材質は、プラスチック製であるが、金属製等でも良い。空気導入部2、放出部4、エルボ2a,4a,4bは、塩化ビニル樹脂製であり、空気導入部2以外の連結部分は、空気が漏れないように連結されている。また、隙間Sは、4mm程度の幅とすることで、好適に汚水を空気混合部3に吸入することができる。なお、空気導入部2や放出部4は、エルボ2a,4a,4bにより連結したものであるが、適宜設計変更できるものであり、使用状況に合わせて更に外のエルボを組み込んだり、エルボを使用せず設計したりしても良い。
【0035】
ここで、吸着部5について詳細に説明する。吸着部5は、筐体部1を被覆した層状に形成された層状体であり、上から、吸着層5aと、第1透水層5b(図3中の黒丸)と、第2透水層5c(図3中の白抜き)と、を積層したものである。より詳しくは、吸着層5aは汚水が通過するときに未分解有機物を吸着するための活性炭を含む粒状多孔質材の層であり、吸着層5aは濾過層として機能する。この吸着層5aの下には、この吸着層5aを支持し粒状多孔質材の層である第1透水層5bが設けられている。さらに第1透水層5bの下には、の第1透水層5bを支持し粒状多孔質材の層である第2透水層5cが設けられている。
【0036】
また、各層における粒径としては、吸着層5aの粒状多孔質材の粒径に対し、第1透水層5bの粒状多孔質材の粒径を2倍以上5倍以下とすることが望ましく、本実施形態においては、吸着層5aの粒状多孔質材の粒径を約1mm、この層の厚みを約10mmとし、第1透水層5bの粒状多孔質材の粒径を約3mm、この層の厚みを約20mmとしている。吸着層5aの粒径としては、目詰まりを起こさない程度の細かいものが良く、また活性炭を含んでいるため、吸着力が高い。また、上記の粒径とすることで、第1透水層5bの上面に渡り吸着層5aが載置された状態とすることができ、第1透水層5bの隙間の中に吸着層5aの粒状多孔質材が入り込むことがほとんど無い。さらに、粒径が小さいことによる汚水の吸着層5aへの進入が一旦遅くなっても、吸着層5aの厚みが約10mmと小さいため、空気混合部3の負圧により汚水は十分に通過できる。粒状多孔質材としては、木質,ゴム質,やしガラ等の炭化物である活性炭や、軽石、素焼き、セラミック等が使用されている。
【0037】
上記の粒径比と同様に、第1透水層5bの粒状多孔質材の粒径に対し、第2透水層5cの粒状多孔質材の粒径が2倍以上5倍以下とすることが望ましく、本実施形態においては、第1透水層5bの粒状多孔質材の粒径を前述のように約3mm、厚みを約20mmとし、第2透水層5cの粒状多孔質材の粒径を約10mm、厚みを筐体部1を覆う程度の山状としている。このような粒径とすることで、第1透水層5bの上面に渡り吸着層5aが載置された状態とすることができ、第2透水層5cの隙間の中に第1透水層5bの粒状多孔質材が入り込むことがほとんど無く、第2透水層5cの上面に渡り第1透水層5bが載置された状態とすることができる。
【0038】
従って、吸着層5aに帰還した汚水は、吸着層5aを通過する際に汚水中の有機物が吸着されてきれいになり、さらにこの汚水は、第1透水層5bを通過して、第2透水層5cを通過する。第1透水層5b、第2透水層5cと通過するに連れ、粒径が大きくなることにより汚水が通過する隙間も大きいため汚水は抵抗なく流れる。このように、第1透水層5bおよび第2透水層5cは、汚水を下方へ通過させるための透水層として機能し、各層に滞留することなく下方へ移動させことができ、第2透水層5cを通過した汚水は、スリット1aから筐体部1内に入り込み(矢印I)、筐体部1内を満たして再び吸引され(矢印F)、水槽10内を循環することとなる(矢印G)。
【0039】
以上のように、空気導入部2へ送気し続ければ、汚水は水槽10内で何度も繰り返し循環させることができ、水槽10内の汚水は徐々に浄化される。また、汚水中には気泡が含まれるため、汚水中の溶存酸素濃度を高めるなどして微生物の活動を活性化させて、未分解有機物を微生物に分解させながら、さらに汚水を循環させながら浄化することができる。すなわち、閉鎖状態にある水槽10において、微生物による浄化機能と循環による浄化機能とを併せ持った浄化が可能となる。また、以上のような吸着部5を有する循環装置11とすれば、簡素な構造でありながら効率良く汚水を浄化することができる。
【0040】
なお、吸着部5は、以上のように3層が積層されたものであるが、さらに層を多く設けても良く、また、透水層(第1透水層5b、第2透水層5c)中にさらに吸着層を設ける等、汚水の目詰まりが起こらない程度で適宜設計変更できる。また、筐体部1に設けられたスリット1aは幅約3mm、長さ80mmとしているが、第2透水層5cが混入せずに汚水が抵抗無く入り込むものであれば、適宜大きさを調整しても良い。
【0041】
また、循環装置11の上面と側面を網(金網等)で囲い、下面を樹脂板で汚水が入り込まないように下方から蓋をして板状または直方体状に形成することもできる。ここで、網目の大きさとしては、吸着層5aの粒子以下とし、この粒子が網目を通過しない程度のものが望ましい。このように、循環装置11を金網と樹脂板とで囲っておけば、各槽の底面に載置するだけで循環装置11を施工できるので、施工作業を容易とすることができる。また、金網や樹脂板で囲った循環装置11は、槽の底部以外にも、例えば槽の空間部に吊り下げるなどして位置させても良く、さらに状況によっては槽の底部および空間部の両方に設けることもでき、様々な汚水を有する槽で適用可能なものである。なお、金網や樹脂板で囲った形状は、板状や直方体状で限定されるものではなく、槽の形状に応じて、設計変更できる。また、樹脂板の材質は樹脂に限定されるものではなく、ステンレスやFRP等の耐久性のある素材を使用しても良い。
【0042】
次に、図4を用いて本発明の実施形態である汚水浄化装置について説明する。図4は、本発明の実施形態である循環浄化槽を用いた汚水浄化装置を示す概略図である。
図4に示すように、本発明の実施形態である汚水浄化装置200は、便器31と、便器31から排出される汚水および汚物を貯留する汚物貯留槽32と、曝気しながら汚物または汚泥を分解して汚水を浄化するための曝気槽40と、この曝気槽40で処理された汚水を浄化する濾過槽80,100と、濾過槽80,100で濾過された水を貯水する貯水槽120とを備えている。各濾過槽80,100の前には、前述の循環浄化槽20が設けられている。
【0043】
以上のように、循環浄化槽20を濾過槽80,100の前に設けたことにより、予め循環浄化槽において汚水をある程度浄化した後に、濾過槽で処理する工程に移行させることとなる。これにより、濾過槽80,100の処理負担を軽減することができ、確実に汚水中の未分解有機物を濾過して汚水を浄化することができる。
【0044】
ここで、汚物および汚水の全体の流れについて説明する。使用者が、トイレで用を足すと、洗浄時にロータンク34から便器31へと洗浄水が流れ込み、排泄物を汚物貯留槽32へと送り込み貯留される。その後、水中ポンプ32aによりポンプアップされて曝気槽に投入され、曝気槽40により汚物が分解される。その後、未分解処理槽60で残存する未分解の汚物等を除去後、前述の循環浄化槽20により循環しながら前もって浄化し、まだ濁っている汚水を濾過槽80,100によりさらに浄化し、透明できれいになった水が貯水槽120に貯水される。この貯水された水は、ホームポンプ33により回収されて、便器31のロータンク34に洗浄水として貯水される。このように、汚水浄化装置200により、汚水を完全に循環させて再利用が可能となる。また、必要に応じて、エアーブロー36により、各槽内に空気が供給されている。
【0045】
次に、図5〜図9を用いて各槽について詳細に説明する。図5は曝気槽40を示す斜視図である。曝気槽40は、3つの部屋に仕切られ、汚物接触材装置槽43と、沈殿槽45と、汚水処理槽51とを備えており、汚物接触材装置槽43と沈殿槽45とは、仕切網44により仕切られている。また、これらの槽と汚水処理槽51とは、水を通さない仕切板48により仕切られている。汚物と汚水は、前述の汚物貯留槽32からポンプアップされると、汚水流入口42から汚物接触材装置槽43に流入される。仕切網44は網目の大きさが1〜3mmの金網であり、汚物接触材装置槽43の汚物と汚水は、仕切網44により分離されて粒子の小さい汚物を含む汚水は仕切網44の網目から沈殿槽45へと移行する。また、約1〜3mm以上の汚物は、汚物接触材装置槽43に滞留するが、曝気用エアパイプ46により送気される空気により曝気されて、仕切網44を通過可能な大きさになるまで物理的分解および微生物分解を受ける。以上のように、汚水は直ちに網目を通過して沈殿槽45へと移行するが、汚物は微生物分解後に沈殿槽45へと移行する。
【0046】
沈殿槽45に移行した汚水および小さな汚物は、曝気用エアパイプ47により送気される空気により曝気されて、微生物分解を受け、汚物は更に細かくなるか、分解される。ここで曝気処理を受けた微細な汚物と汚水は、仕切板48の中位置以上の高さ位置に設けられた汚水流入口50を通過して、汚水処理槽51へと移行する。このとき、分解が進みにくい紙等の汚物は、沈殿槽45の下方へ沈んで沈殿し、汚物を含まない宙水としての汚水が汚水処理槽51へと移行する。なお、沈殿した汚物は、汚物抜き取りドレンDRから曝気槽40の外部へと排出することができる。しかし、大抵の汚物は曝気槽40で分解されて小さな有機物となる。
【0047】
汚水処理槽51へと移行した汚水は、さらに曝気用エアパイプ53により送気された空気が下方から曝気されて残存する有機物の分解がなされる。また、このとき、使用状況によっては汚水中に汚物が残る場合があるが、次の未分解処理槽60に移行する前に、汚水処理槽51の上方に設けられた汚物遮断装置52により遮断される。そしてこれを通過した汚水が汚物遮断装置52の流出口55を通過して未分解処理槽60に移行する。この汚物遮断装置52の流出口55が無い片面側(図5における奥側)には、開放された状態で金網52aが設けられている。この金網52aの網目の大きさは約1mmであり、これにより汚物が遮断されて汚物遮断装置52内に汚水が進入する。この金網52aを通過した汚水は更にカセット式に抜き取りができるように、繊維質状のフィルタを備えたカセット52bが汚物遮断装置52内の中心位置に設けられている。この金網52aの下方には目詰まり防止用の曝気用エアパイプ54が装備されている。金網52aの目より小さい汚物と汚水が、流出口55から流出される。
【0048】
汚水処理槽51に移行したものの、分解されずに下方に沈殿した汚物は、汚物抜き取りドレンDRから曝気槽40の外部へと排出することができるようになっている。ここで、沈殿槽45と汚水処理槽51の下部には、傾斜板49が設けられている。この傾斜板49は、汚物抜き取りドレンDR付近で高さ位置が最も低くなるように形成されており、沈殿した汚物は傾斜板49上を転がるか滑るかして、汚物抜き取りドレンDR付近に集積しやすくなっている。
【0049】
ここで、曝気槽40の汚水処理槽51の内部において、前述した循環装置11を設けることができる。曝気槽40内での汚物等の未分解有機物の処理能力をさらに高めることができ、使用状況により処理負荷が大きくなっても汚物を素早く分解することができる。
なお、曝気槽40は、前述したように3つの槽に仕切られているが、場合によっては2つでも良く、また、一列になるように並列してもよい。さらに、これらの槽は段階的に処理するために4つ以上とすることもでき、個数は限定されるものではない。また、汚物接触材装置槽43や沈殿槽45にも、状況に応じて循環装置11を設けても良い。
【0050】
次に、図6を用いて未分解処理槽60について説明する。図6は未分解処理槽60を示す斜視図である。流出口55から流出された汚水は、汚水流出パイプ56を通って未分解処理槽60の上部に設けられた汚水受枠61に投入される。未分解処理槽60は、内部に多孔質の木材チップ、木質又はゴム質の炭化物、又は軽石、陶器の破砕物等、微生物が住みやすい環境となるように充填されて多孔質材充填槽62となっており、この多孔質材充填槽62の上に汚水受枠61が載置されている。
【0051】
汚水受枠61は、側面が汚水が通過しない部材により形成され、上面と底面は無く上下に開放されている。これにより、汚水受枠61に流入された汚水は、汚水受枠61の側面により枠内に蓄積され、底面からゆっくりと多孔質材充填槽62の表面を伝って内部に染み込むこととなる。また、未分解処理槽60の側面は、空気が金網63から多孔質材充填槽62に通入しやすいように金網63により形成されており、格子状の網目を有している。これにより、多孔質材充填槽62の外部への流亡を防止するのとともに、多孔質材充填槽62内の微生物の活性を保ち、曝気槽40で分解されない有機物を分解することができる。
【0052】
金網63の下部であって未分解処理槽60の底部は、一時的に大量に汚水が流入しても貯水できるように貯水タンクとして機能する汚水受皿64が設けられており、この汚水受皿64に形成された流出口65から汚水は次工程である循環浄化槽20に移送される。なお、金網63であり汚水受皿64の上端部には、多孔質材充填槽62から染み出した汚水を受けて汚水受皿64へ通水し下方へ垂れるのを防止する垂れ防止部材66が形成されている。垂れ防止部材66は、汚水受皿64の上端部から上方へ開放するように汚水受皿64の外周に渡って形成されている。
【0053】
次に、図7を用いて循環浄化槽20と濾過槽80について説明する。図7(a)は本発明の実施形態である循環浄化槽20と濾過槽80とを示す斜視図であり、図7(b)は本発明の実施形態である濾過槽80を示す平面図である。なお、図7における循環浄化槽20は図1に示す循環浄化槽20と同一であり、同一の符号を付してあるため、説明を省略する。
循環浄化槽20に流入した汚水は、汚物等の粒子がほとんど無くなっているが、まだ色がついた状態である。循環浄化槽20は、この後工程であり本格的に浄化されることとなる濾過槽80の前処理を行う槽であり、循環浄化槽20と濾過槽80とは隣接している。図1〜図3で説明したように循環浄化槽20においては、汚水が循環浄化されるが、その途中の一部が循環浄化槽20の下部に設けられた流出口81を通って、循環浄化槽20に隣接する濾過槽80へと移行する。
【0054】
濾過槽80の内部には互いに間隔をおいて8つ仕切板92〜99が垂直状態に配置されて、8つの小濾過槽82〜89が形成され、この小濾過槽82〜89は、箱状の濾過槽80内を往復するように形成されている。仕切板93,95,97,99の高さは、濾過槽80の外板と同じ高さである。仕切板92,94,96,98の高さは徐々に低くなるように形成されており、これらが仕切板93,97と並行となるように配置されている。
【0055】
また、仕切板92〜99にはそれぞれ通水可能な通水部が形成されており、この通水部を通って汚水は各小濾過槽82〜89へ順次移行する。仕切板93,95,97,99の通水部は、これらの下端を汚水が通過可能に開放して形成してあり(図示せず)、後述する図9の通水部102と同一のものである。仕切板92,94,96,98の通水部は、これらの上端から下方に形成された切り欠き92a,94a,96a,98aであり、これらの下端の高さ位置が濾過槽80内を上下方向にみて段階的に低くなるように2つずつ形成されている。すなわち、切り欠き92a,94a,96a,98aの長さは同一であるが、切り欠き92a,94a,96a,98aの上端と下端の高さ位置が段階的に低くなっている。
【0056】
以上の位置に各仕切板92〜99の通水部を形成したため、通水部の形成位置は、隣り合う仕切板どうしで濾過槽80内上下方向にみて互いに上下逆となる位置関係とすることができる。さらに、各仕切板92〜99間には汚水を浄化するための吸着材(接触材)が設けられており、より詳しくは、小濾過槽82,84,86,88には繊維質状のフィルタ(図示せず)が設けられ、小濾過槽83,85,87,89には活性炭(図示せず)が設けられている。
【0057】
従って、小濾過槽82に流入した汚水は、小濾過槽82においては下方から上方へ繊維質状のフィルタにより濾過されながら切り欠き92aを通って小濾過槽83に移行する。小濾過槽83においては、上方から下方へ活性炭により濾過されながら移行し、下端の通水部を通過して小濾過槽84へ移行する。
同様に、小濾過槽84,86,88においても、下方から上方へフィルタにより濾過されながらそれぞれ切り欠き94a,96a,98aを通過して隣の小濾過槽85,87,89に移行する(図7(a)中の濾過槽80内の矢印)。
また、小濾過槽85,87においては、上方から下方へ活性炭により濾過されながら移行し、下端の通水部を通過して小濾過槽86,88へ移行する。すなわち、汚水は、濾過槽80内では、フィルタの槽と活性炭の槽で順次濾過される。
【0058】
以上のように、8つの仕切板92〜99の間を水流の方向を上下方向に順次変化させながら移動させるため、汚水の移動距離が増加することとなり、比較的設置面積が小さい濾過槽80であっても効率良く汚水中の未分解有機物を吸着して浄化することができる。また、切り欠き92a,94a,96a,98aの高さ位置が段階的に低くなるように形成されているので低い方へ流れやすくなり、汚水を一度に流出することを防止し、少しずつゆっくりと静かに濾過槽80内を移動させることができる。
【0059】
ここで、図8に示すように、小濾過槽89の底部に循環装置11を設け、放出部4を小濾過槽89から小濾過槽82に跨るように設けて、放出部4の先端から小濾過槽82へ汚水を放出して戻すようにすると良い。これにより、循環装置11で発生する負圧が動力となって、小濾過槽89内の汚水を小濾過槽82内へ移行させて濾過槽80内を再循環させることができ、この循環装置11が濾過槽80内の汚水を絶えず移動させて濾過させる移動手段として機能する。さらに、汚水には気泡が混合されるため、濾過槽80においてさらに浄化させることができるとともに、汚水を濾過槽80内で常時移動させることとなるため、冬場の凍結対策にもなる。なお、この移動手段は一例であり、濾過槽80内で移動させて循環できるものであれば他の形態でも良い。また、放出部4の先端にトラップ6を設けることもできる。
【0060】
なお、流出口90の高さ位置は、切り欠き98aの高さ位置よりも低く形成されている。汚水の流量が多い場合には、汚水の一部は流出口90から通過して次工程に移行し、残りの汚水は循環装置11により小濾過槽82へと戻される。一方、不使用時等の流量が少ない場合には、小濾過槽89内の汚水の水位が流出口90の高さ以下となると流出口90から汚水が流出せず、循環装置11により汚水は小濾過槽82へと戻されるのみとなる。以上のように、汚水は循環装置11によって濾過槽80内を循環する。
【0061】
また、前記移動手段の他の例として、小濾過槽89内の活性炭を設けずに、循環装置11の筐体部1を取り除いて、空気導入部2と、空気混合部3と、放出部4とにより構成してシンプルな構造とすることもできる。
【0062】
また、本実施形態では、小濾過槽および仕切板をそれぞれ8つとしているが、個数に限定されることなく、適宜設計変更できるものである。また、濾過槽80は箱状であるが、例えば、円状としても良く、形状は限定されるものではない。さらに、切り欠き92a,94a,96a,98aは、各2つずつ設けているが、さらに多く設けても良く、箇所数は限定されるものではない。
【0063】
なお、循環浄化槽20を濾過槽80の前に設けたことにより、予め循環浄化槽20において汚水をある程度浄化した後に、濾過槽80で処理する工程に移行させることとなるため、濾過槽80の処理負担を軽減することができ、確実に汚水中の未分解有機物を濾過して汚水を浄化することができる。また、濾過槽80の処理負担が軽減されることから、濾過槽80を長い期間に渡って使用することができ、持続性の高い汚水浄化装置200とすることができる。また、使用頻度が多い場合には、曝気槽40で処理しきれない未分解有機物等が後工程で処理されることとなるが、このような未分解有機物等も濾過槽80に移行する前段階として処理することが可能となる。
【0064】
次工程について図9を用いて説明する。図9(a)は濾過槽100と貯水槽120を示す斜視図であり、図9(b)は(a)における手前の側壁を除いた側面図である。なお、濾過槽100の前には循環浄化槽20が設けられており、垂直状態に設けられた仕切板101により仕切られて、これらの槽が形成されている。なお、図9における循環浄化槽20は図1に示す循環浄化槽20と同一であり、同一の符号を付してあるため、説明を省略する。
【0065】
流出口90から流れ出た汚水は、再度、循環浄化槽20の循環装置11で浄化されるが、ここでの吸着部5は、仕切板101近傍で高くなるように傾斜して形成されている。なお、吸着部5は、筐体部1の付近に第1吸着層および第2吸着層が設けられているが(図3参照)、仕切板101付近においては吸着層5aを多量に使用して傾斜状に吸着部5が形成されている。ここで、吸着部5の第1透水層5bと第2透水層5cの層厚は、図3における厚みと同等であるが、吸着層5aのみが、仕切板101付近では厚みが大きく、図9において右側に行くにつれ、吸着層5aの厚みが小さくなって、吸着部5が傾斜状に形成されている。この吸着部5により、再度循環させて、わずかに残存している有機物を吸着させることができ、次工程の処理負担を軽減することができる。
【0066】
仕切板101の下端には、汚水が通過可能な通水部102が開放された状態で形成されている。従って、汚水の一部を吸着部5を通過させて仕切板101の下端の通水部102を通過させることができ(矢印K)、残りの汚水が循環浄化槽20内で循環することとなる。この時点においては、汚水はかなりきれいに脱色されるが、使用状況により脱色されていない場合がある。また、吸着部5を傾斜状に形成してあるので、汚水は厚みの大きい吸着層5aを通って、通水部102へ達することとなる。
【0067】
次に、濾過槽100について説明する。濾過槽100は、仕切板101,103により仕切られ、これらの間に吸着材(接触材)としての繊維質状のフィルタ104が敷き詰められて形成されている。仕切板103の上端には、通水部としての複数ヶ所の切り欠きが上端から下方に向かって形成されている。従って、通水部102を通過した汚水は、フィルタ104で濾過されながら上方に移動することとなり(矢印L)、色を有する有機物を吸着させて濾過することができる。上方に移動した汚水は、切り欠き103aを通過して、貯水槽120へと移動する。なお、フィルタ104の材質としては、繊維質状で有機物を吸着できるものであれば良い。
【0068】
さらに、仕切板を複数設けて、濾過槽80(図7)のように複数の小濾過槽を形成することも可能である。フィルタ104は、適度な隙間があるため負荷をかけずに汚水を移動させることができるとともに、わずかに含まれる有機物を吸着させて脱色することができる。このため、濾過槽100は脱色槽として機能し、この濾過槽100により、汚水は透明となって清水となる。ここで、濾過槽100の幅は約50mmであるが、その他の寸法も含めて使用状況を考慮して適宜設計変更可能である。また、循環浄化槽20を濾過槽100の前に設けたことにより、前述したように、濾過槽80の処理負担を軽減することができ、確実に汚水中の未分解有機物を濾過して汚水を浄化することができる。
【0069】
貯水槽120へと移動した清水は、貯水槽120に貯水される。ここで、貯水槽120においても循環装置11を設けている。循環装置11により、万が一、有機物が混入していてもこれを濾過できるようになっており、最後の工程まで脱色性能を持たせて浄化することができ、安心して使用できる。さらに常時循環させておくことができるため、冬場の凍結を防止することができる。貯水槽120内の水は、ホームポンプ33でポンプアップされてロータンクに輸送されて洗浄水として使用される(図4参照)。
【0070】
ここで循環装置11は、貯水槽120の底部に設けられ上方が開放した受皿121の内部に設けられている。受皿121の側面には周囲全体に水が移動可能なスリット(図示せず)が形成されている。このとき、ホームポンプ33によりポンプアップされる水は、受皿121の外であり且つ貯水槽120の底付近の水である。また、受皿121を備えたことにより、循環装置11の吸着層を受皿121内に留めておくことができるため(図9(b)、ポンプアップされる水中に吸着部5の粒子が混入することを防止することができる。なお、受皿121が貯水槽120内での水の循環の支障になることはない。
また、受皿121の槽は必ずしも槽の底面に設置する必要はなく、貯水槽120の大きさにより任意の位置に設けても良い。この受皿121は、貯水槽120のみならず、浄化を必要とする全ての槽の循環装置11に設けることもできる。
【0071】
なお、本発明においては、濾過槽の個数は限定されるものではなく、使用頻度が少ない場合には一つとしても良く、使用状況によっては更に増設することもできる。また、循環浄化槽を複数設けているが、使用状況によっては減らすこともでき、増設することも可能である。ただし、少なくとも一つの濾過槽の前に循環浄化槽を備えることが望ましく、最低一つの循環浄化槽を設けると良い。
【0072】
以上のように、本発明の汚水浄化装置は、汚水を装置の各槽を一巡させて浄化する上で、さらに各槽内において独自に循環させることとなるため効率の良い浄化が可能となる。従って、各槽の処理負担を軽減することができるため、省スペース且つ短時間で汚物を分解し、汚水を浄化することが可能となり、使用頻度が多い場合においては特に有効である。また、各部材のコストが低く各槽の構造が簡素であるため、製造コストを大幅に抑えることが可能である。また、エアーブローにより各槽に空気を送り込んで、常時水を移動させるため、絶えざる水の流れが形成されて、冬場においても凍結することがない。
【0073】
さらに、本発明の循環装置は、トイレの汚水を洗浄するためのものだけではなく、例えば、工事現場、畜産生産現場、その他施設等の汚泥が発生する状況において適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る循環装置および循環浄化槽並びに汚水浄化装置は、汚水を循環して再利用するトイレ、工事現場等において広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態である循環装置を備えた循環浄化槽の概要を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態である循環装置を示す図であり、(a)は図1におけるA−A線での一部平面図、(b)は同(a)におけるB−B線断面図、(c)は同(a)におけるC−C線断面図である。
【図3】図1における循環装置を詳細に示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態である循環浄化槽を用いた汚水浄化装置を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態である曝気槽を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態である未分解処理装置を示す斜視図である。
【図7】(a)は本発明の実施形態である循環浄化槽と濾過槽とを示す斜視図であり、(b)は本発明の実施形態である濾過槽を示す平面図である。
【図8】循環装置を設けた濾過槽を示す正面図である。
【図9】(a)は濾過槽と貯水槽を示す斜視図であり、(b)は(a)における手前の側壁を除いた側面図である。
【符号の説明】
【0076】
11 循環装置
20 循環浄化槽
200 汚水浄化装置
1 筐体部
1a スリット
2 空気導入部
2a エルボ
3 空気混合部
4 放出部
4a,4b エルボ
5 吸着部
5a 吸着層
5b 第1透水層
5c 第2透水層
6 トラップ
6a 放水口
10 水槽
31 便器
32 汚物貯留槽
32a 水中ポンプ
33 ホームポンプ
34 ロータンク
36 エアーブロー
40 曝気槽
42 汚水流入口
43 汚物接触材装置槽
44 仕切網
45 沈殿槽
46,47,53,54 曝気用エアパイプ
48 仕切板
49 傾斜板
50 汚水流入口
51 汚水処理槽
52 汚物遮断装置
52a 金網
52b カセット
55 流出口
56 汚水流出パイプ
60 未分解処理槽
61 汚水受枠
62 多孔質材充填槽
63 金網
64 汚水受皿
65 流出口
66 垂れ防止部材
80 濾過槽
81 流出口
82,83,84,85,86,87,88,89 小濾過槽
90 流出口
92,93,94,95,96,97,98,99 仕切板
92a,94a,96a,98a 切り欠き
100 濾過槽
101,103 仕切板
102 通水部
103a 切り欠き
104 フィルタ
120 貯水槽
121 受皿
S 隙間
DR 汚物抜き取りドレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水が内部に通過可能なスリットを有する筐体部と、該筐体部に空気を送気するための空気導入部と、前記筐体部に入り込んだ汚水に空気を混合して気泡を含有させるための空気混合部と、気泡が含まれた汚水を前記筐体部外へ放出するための放出部と、前記筐体部に設けられ汚水に含まれる未分解有機物を吸着するための吸着部と、を備え、
前記放出部より前記筐体部の外部に放出した汚水を前記筐体部に帰還させて、閉鎖状態にある汚水を浄化することを特徴とする循環装置。
【請求項2】
前記空気混合部は、前記空気導入部と前記放出部とを汚水が混入可能に隙間を設けて連結してなる請求項1記載の循環装置。
【請求項3】
前記吸着部は、前記筐体部を被覆した層状体であり、
該層状体は、汚水が通過するときに前記未分解有機物を吸着するための活性炭を含む粒状多孔質材の層である吸着層と、該吸着層の下に設けられ該吸着層を支持するとともに該吸着層を通過した汚水を通すための隙間を有する透水層と、を積層してなる請求項1または2記載の循環装置。
【請求項4】
前記透水層は、前記吸着層の下に設けられ該吸着層を支持し粒状多孔質材の層である第1透水層と、該第1透水層の下に設けられ該第1透水層を支持し粒状多孔質材の層である第2透水層と、を積層したものであり、
前記吸着層の粒状多孔質材の粒径に対し第1透水層の粒状多孔質材の粒径が2倍以上5倍以下であり、第1透水層の粒状多孔質材の粒径に対し第2透水層の粒状多孔質材の粒径が2倍以上5倍以下である請求項3記載の循環装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに項に記載の循環装置を槽内に備え、該槽内の汚水を浄化することを特徴とする循環浄化槽。
【請求項6】
請求項5記載の循環浄化槽を備えたことを特徴とする汚水浄化装置。
【請求項7】
曝気しながら汚物または汚泥を分解して汚水を浄化するための曝気槽と、該曝気槽で処理された汚水を浄化する濾過槽とを備え、該濾過槽で処理された汚水を循環させて洗浄水として再利用が可能な汚水浄化装置であって、
前記濾過槽の前に、請求項5記載の循環浄化槽を備えたことを特徴とする汚水浄化装置。
【請求項8】
前記濾過槽は複数であり、少なくとも一つの濾過槽の前に請求項5記載の循環浄化槽を備えた請求項7記載の汚水浄化装置。
【請求項9】
前記曝気槽の内部には、請求項1から4のいずれかの項に記載の循環装置が設けられた請求項7または8記載の汚水浄化装置。
【請求項10】
前記濾過槽の後には、汚水を浄化して得た水を貯水するための貯水槽が設けられ、該貯水槽の内部には、請求項1から4のいずれかの項に記載の循環装置が設けられた請求項7から9のいずれかの項に記載の汚水浄化装置。
【請求項11】
前記濾過槽の内部には互いに間隔をおいて複数の仕切板が垂直状態に配置されて設けられ、前記複数の仕切板にはそれぞれ通水可能な通水部が形成されており、該通水部の形成位置が、隣り合う仕切板どうしで濾過槽内上下方向にみて互いに上下逆となる位置関係にあり、各仕切板間には汚水を浄化するための吸着材が設けられた請求項7から10のいずれかの項に記載の汚水浄化装置。
【請求項12】
前記濾過槽内上下方向にみて上方にある各通水部は、高さ位置が段階的に低くなるように前記仕切板の上端から下方に形成された切り欠きであり、
前記濾過槽内の汚水を絶えず移動させて濾過させる移動手段を備えた請求項11記載の汚水浄化装置。
【請求項13】
曝気しながら汚物または汚泥を分解して汚水を浄化するための曝気槽と、該曝気槽で処理された汚水を浄化する濾過槽とを備え、該濾過槽で処理された汚水を循環させて洗浄水として再利用が可能な汚水浄化装置であって、
前記濾過槽の前に、槽内の閉鎖状態にある汚水を循環させて浄化するための循環装置を有する循環浄化槽を備えたことを特徴とする汚水浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−105640(P2007−105640A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299428(P2005−299428)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(504270301)東和安全産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】