説明

微多孔膜の厚みの測定方法及びそれに用いる装置

【課題】膜厚み測定のばらつきを少なくし、かつ精度の高い微多孔膜の厚み測定方法および膜厚み測定装置の提供。
【解決手段】微多孔膜上に測定端子を載せた後、該端子の動作を光学式検知器により読み取り、膜厚みに換算する微多孔膜の厚みの測定方法及びそれに用いる装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微多孔膜の厚み測定方法および膜厚み測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムにおいては膜厚みの測定を行い、物性表にて記載して出荷するのが常である。特に、ポリオレフィン製微多孔フィルムは、種々の電池用セパレータとして使用されており、セパレータの厚みが設計と異なっていると電池缶に入らないの等の不良が起こるため、精度の高い厚みの測定方法が求められている。
従来、微多孔膜の測定装置としては、例えば特許文献1の段落0022に記載のような測厚器が知られている。
【特許文献1】特開2004−99799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、膜厚み測定のばらつきを少なくし、かつ精度の高い微多孔膜の厚み測定方法および膜厚み測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、微多孔膜の膜厚を測定する場合には、無孔フィルムの膜厚を測定する場合とは異なる特有の課題がある点に気がついた。すなわち、微多孔膜は気孔を多数有するため、膜厚を測定する際、測定端子自体の重さにより膜が押しつぶされ、膜の厚みが変化する。そのため、複数の装置を用いて膜厚を測定する場合、測定端子の重さにばらつきがあると、そのばらつきがそのまま、端子の微多孔膜にかかる面圧のばらつきとなり、その結果、微多孔膜の厚みの測定を再現性良く行うことが困難となっていた。特に、このようなばらつきは、高い精度の要求される電池のセパレータ用微多孔膜にとっては、深刻である。また、近年のLIB用セパレータの用途ではセパレータの薄膜化に伴い、膜厚みを精度よく測定することが求められている。しかしながら、従来のアナログ式の膜厚み計では測定精度がミクロン単位であり、1/10ミクロンの精度を求めることが出来なかった。
そして、上記微多孔膜特有の課題を克服するために鋭意検討した結果、微多孔膜の厚みを測定する際の面圧を調整すること、端子のヘッド部の動作を読み取り、膜厚みに換算するための精度の良い光学式検知器を用いること、更にはこれらを組み合わせることにより、膜厚みを精度よく測定できることを発案し、本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)微多孔膜上に測定端子を載せた後、該端子の動作を光学式検知器により読み取り、膜厚みに換算する微多孔膜の厚みの測定方法。
(2)微多孔膜上に測定端子を載せた後、該端子の動作を光学式検知器により読み取り、膜厚みに換算し、該端子の微多孔膜にかかる面圧が所定圧に管理されている微多孔膜の厚みの測定方法。
(3)微多孔膜上に測定端子を載せて微多孔膜の厚みを測定する方法であって、該端子の微多孔膜にかかる面圧が所定圧に管理されている方法。
(4)微多孔膜の膜厚み測定が恒温室において行われる(1)〜(3)いずれかの方法。
(5)微多孔膜が平面状フィルムである(1)〜(4)いずれかの方法。
(6)微多孔膜が、0.001〜1μmの孔径を有しており、気孔率25〜75%、膜厚み3〜200μmである(1)〜(5)の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について、その好ましい形態を中心に説明する。
本発明の測定方法及び測定装置は、好適には、0.001〜1μmの孔径を有しており、気孔率25〜75%、膜厚み3〜200μmの平面状フィルムである、微多孔膜に適用できる。ここで、孔径は次に示す方法にて測定することができる。すなわち、キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
【0007】
この場合、孔径d(μm)と屈曲率τ(無次元)は、空気の透過速度定数Rgas(m/(m・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m/(m・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力P(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めることができる。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×10
τ=(d×(ε/100)×ν/(3L×P×Rgas))1/2
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求められる。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101325))
【0008】
また、Rliqは透水度(cm/(cm・sec・Pa))から次式を用いて求められる。
liq=透水度/100
なお、透水度は次のように求められる。直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめアルコールに浸しておいた微多孔膜をセットし、該膜のアルコールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10−2kg/mol)から次式を用いて求められる。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
【0009】
さらに、孔数B(個/μm2)は、次式より求められる。
B=4×(ε/100)/(π×d2×τ)
により測定される値であり、気孔率(%)は、10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm)より、次式を用いて計算される値である。なお、下記式で、膜密度はポリエチレン膜の場合、0.95と一定にして計算した。
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
まず、図1は微多孔膜の膜厚みを測定する部分についての基本構成部分の側面図を示したものである。すなわち支持台1に設置した支柱2に、端子部固定部5、光学式検知器固定部9を取り付ける。
【0010】
次に、本発明の実施例の装置を用いて、微多孔膜の厚みを測定する方法を図2、3に示す。図2は試料台3に微多孔膜を置いた状態を示す図であり、図3は測定端子ロッド4を微多孔膜上に載せた状態を示す図である。図2、3に示すように、試料台3と測定端子ロッド4の間に測定しようとする試料である微多孔膜17を、測定端子ロッド手動上下指示ロッド15を動かして、測定端子ロッド4と試料台3とではさみ、測定端子ロッド4に直結した面圧調整部固定部12の動きを光学式検知部10により読み取り、膜厚みに換算して膜厚みを読み取る。その光学式検知部の測定テクノロジーについては、例えば、キーエンス社の総合パーソナル等のカタログに紹介されているように、共焦点測定方式、三角測距方式、オートコリメート方式、光波測距方式等の方式等を使用することができる。本発明の最適な例では、三角測距方式の光学検知器を使用するのが望ましい。三角測距方式とは、投光されたレーザー光の対象物の表面での拡散反射光の一部を受光レンズで集光し、CCD上に結像させる方式で、対象物が変位すると、拡散反射光の集光する角度が変位し、CCD上の結像位置が移動し、その移動を検出し、移動量を膜厚みに対応するように換算し、膜厚みとして読み取る。
【0011】
この際に使用する光学式検知部10の分解能は1μm以下が好ましく、さらには0.1μm以下が好ましく、0.01μm以下がさらに好ましい。また、測定端子ロッド4と試料台3とで微多孔膜とを挟んだ後、所定時間経過、例えば5秒〜1分、好ましくは5〜30秒後、測定することが好ましい。本発明の実施例ではキーエンス社製LK−G15を使用した。
微多孔膜の厚みを再現性、精度良く測定するためには、試料台3と測定端子4の平行性が重要である。そのためには図1に示してあるように端子平行度調整機能7を設け微調整が可能なようにすると調整が便利である。さらには、試料台3の水平性を水準計にて出し、端子測定ロッドの平行性を調整するのがさらに好ましい。測定端子ロッドの径は特に限定されないが、1〜20mmが好ましく、更には1〜10mmのものが好ましい。本実施例では測定端子ロッドの径は5mmのものを用い、垂直度を検査したものを使用した。
【0012】
さらに、本発明では光学式検知部により、ロッドの動きを読むため、日間差が生じないように恒温室で膜厚みを測定することが望ましい。
また、微多孔膜の厚みを複数台の測定装置を使用して再現性、精度良く測定するためには、微多孔膜にあたる面圧を一定とすることが好ましい。本実施例においては、測定端子ロッド4のアナログ表示部6の上部に出ている測定端子ロッド4に面圧調整のための重りをのせる部分である面圧調整部8を設け面圧が一定になるように調整し、面圧調整部固定部12で固定する。面圧調整部8にて面圧が調整できるように、図2に示すように、アナログ表示部の内部において測定端子ロッドが一体となったものを使用した。面圧を所定圧とするための他の方法としては、例えば、複数の測定装置で用いられる測定端子ロッド自体が同じ重さとなるようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明によれば、微多孔膜の厚みをより精度良く測定できる。特に、本発明の方法を、電池のセパレータ用微多孔膜の厚みを測定する際に用いると、電池缶に入らない等の不良を低減できるので、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】微多孔膜の膜厚みを測定する部分についての基本構成部分を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例に用いた測定装置を示す模式図(正面図)である。
【図3】本発明の実施例に用いた測定装置を示す模式図(正面図)である。
【図4】測定端子ロッド部、アナログ表示部の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0015】
1 支持台
2 支柱
3 試料台
4 測定端子ロッド
5 端子部固定部
6 アナログ表示部
7 端子平行度調整機能
8 面圧調整部
9 光学式検知部固定部
10 光学式検知部
11 光学式検知部固定部高さ調整部
12 面圧調整部固定部
13 測定端子ロッド作動伝達部
14 測定端子ロッド手動上下伝達部
15 測定端子ロッド手動上下指示ロッド
16 測定端子ロッド作動拡大部
17 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微多孔膜上に測定端子を載せた後、該端子の動作を光学式検知器により読み取り、膜厚みに換算する微多孔膜の厚みの測定方法。
【請求項2】
微多孔膜上に測定端子を載せた後、該端子の動作を光学式検知器により読み取り、膜厚みに換算し、該端子の微多孔膜にかかる面圧が所定圧に管理されている微多孔膜の厚みの測定方法。
【請求項3】
微多孔膜上に測定端子を載せて微多孔膜の厚みを測定する方法であって、該端子の微多孔膜にかかる面圧が所定圧に管理されている方法。
【請求項4】
微多孔膜の膜厚み測定が恒温室において行われる請求項1〜3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
微多孔膜が平面状フィルムである請求項1〜4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
微多孔膜が、0.001〜1μmの孔径を有しており、気孔率25〜75%、膜厚み3〜200μmである請求項1〜5いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
測定端子と、微多孔膜にかかる測定端子の面圧を調整するための調整部分と、端子の動作を読み取り、膜厚みに換算するための光学式検知器を備えてなる微多孔膜の厚み測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−292374(P2008−292374A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139598(P2007−139598)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】