説明

微小デバイス

【課題】微小デバイス形成時において陽極接合が行われるときにガラス基板にアルカリ金属イオンが析出することを防止できる微小デバイスを提供すること。
【解決手段】フレーム部21とフレーム部21に対して変位自在に支持される錘部22とフレーム部21と錘部22とを接続するビーム部23とを有するセンサ基板11と、ガラス基板とを備える微小デバイスであって、センサ基板11とガラス基板とは陽極接合されており、ガラス基板の両主面には、アルカリ金属イオンの析出を防止する保護膜31が形成されている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
微小デバイスとして、加速度センサ、ジャイロセンサ、アクチュエータ、赤外線センサなどが知られている。これらの微小デバイスは、例えば、ガラス基板とシリコン基板とが陽極接合されることにより形成されている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
ところで、陽極接合とは、ガラスとシリコンや金属などとを重ね合わせたものを熱と電圧とを加えることにより密着接合することをいう。詳しくは、ガラスとシリコンや金属とを重ね合わせたものを加熱すると同時に、ガラス側を陰極、シリコン側を陽極として電圧をかけることで、ガラス中のアルカリ金属イオンを陰極側に拡散させる。そして、重ね合わされたガラスとシリコンや金属などとの間に静電引力を発生させて密着を促し、ガラスとシリコンや金属などとを化学反応させて接合する。
【0004】
このような陽極接合が行われることで、例えば、ガラス基板とシリコン基板とが陽極接合される微小デバイスを形成するとき、ガラス中のアルカリ金属イオンが陰極側に拡散させられることによりガラス中に含まれるアルカリ金属イオンがガラス表面に析出することがある。この現象により、陽極接合後の工程などによってシリコン基板表面に析出物が付着し、微小デバイスの諸特性を悪化させるという問題がある。
【0005】
従来、ガラス基板において、可動電極である質量体との対向面に相当する箇所に窒化珪素膜を形成した容量式加速度センサが提案されている(例えば、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−142247号公報
【特許文献2】特開2006−133245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2では、ガラス基板と可動電極である質量体とが付着することを防止するために、ガラス基板表面であって可動電極である質量体と対向する箇所に窒化珪素膜が形成されている。そのため、ガラス基板と可動電極である質量体とが付着することを防止することができる。また、ガラス基板において窒化珪素膜が形成されている箇所ではアルカリ金属イオンの析出を防止することもできる。しかしながら、窒化珪素膜が形成されていない箇所に関してはアルカリ金属イオンの析出を防止することは困難である。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、微小デバイス形成時において陽極接合が行われるときにガラス基板にアルカリ金属イオンが析出することを防止できる微小デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、フレーム部と、フレーム部に対して変位自在に支持される錘部と、フレーム部と錘部とを接続するビーム部とを有するセンサ基板と、ガラス基板とを備える微小デバイスであって、センサ基板とガラス基板とは陽極接合されており、ガラス基板の両主面には、アルカリ金属イオンの析出を防止する保護膜が形成されている構成とする。
【0010】
また、本発明の微小デバイスは、センサ基板とガラス基板とは金属層を介して陽極接合されることにより、センサ基板とガラス基板との間には金属層によりギャップが形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の微小デバイスは、保護膜がリンを含んだシリコン酸化膜であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の微小デバイスは、保護膜がシリコン窒化膜であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の微小デバイスは半導体加速度センサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の微小デバイスは、センサ基板とガラス基板とは陽極接合されており、ガラス基板の両主面にはアルカリ金属イオンの析出を防止する保護膜が形成されているため、センサ基板とガラス基板とを陽極接合させるときにガラス基板上にアルカリ金属イオンが析出することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る微小デバイスとしての半導体加速度センサの(a)平面図及び(b)A−A矢視断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る微小デバイスとしての半導体加速度センサに備わるセンサ基板が製造される過程を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に係る微小デバイスとしての半導体加速度センサに備わるガラス基板が製造される過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る微小デバイスとして半導体加速度センサについて図面を参照して説明する。
【0017】
なお、本発明の微小デバイスとは、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、アクチュエータ、赤外線センサなどに応用できるが、以下の実施形態では微小デバイスとして半導体加速度センサを用いて説明する。これは、微小デバイスが加速度センサに限定するということではない。
【0018】
図1(a)及び(b)は本発明の実施形態に係る半導体加速度センサ1の平面図及び断面図を示す。また、図2(a)乃至(d)は半導体加速度センサ1に備わるセンサ基板11が製造される過程を示し、図3(a)乃至(c)は半導体加速度センサに備わる第1のガラス基板12及び第2のガラス基板13が製造される過程を示す。
【0019】
半導体加速度センサ1は、シリコン基板14を加工して形成されるセンサ基板11と、センサ基板11の上方に配置される第1のガラス基板12と、センサ基板11の下方に配置される第2のガラス基板13とを備える。以下、各構成を詳細に説明する。
【0020】
センサ基板11は、矩形状に形成され、矩形枠状のフレーム部21と、フレーム部21の内側に配置された錘部22と、錘部22をフレーム部21の長手方向端部の一辺に接続する一対の薄肉状のビーム部23とを備える。また、錘部22の周囲であってビーム部23と接続されていない3辺には、センサ基板11の厚み方向に貫通する開口部24が設けられている。フレーム部21は、その外周がセンサ基板11の外周によって構成されている。錘部22は、一対のビーム部23を介して変位自在にフレーム部21に支持されている。
【0021】
センサ基板11の主面であって第1のガラス基板12と対向する面には、内部応力をコントロールするために絶縁膜25が形成されている。一対のビーム部23は、フレーム部21の幅手方向に離間して設けられており、錘部22がフレーム部21の長手方向端部の一辺に接続されている。
【0022】
一対のビーム部23には、それぞれに2個のピエゾ抵抗26が設けられている。これら4個のピエゾ抵抗26は、ホイートストンブリッジ回路が構成されるように拡散配線27によって接続されている。また、拡散配線27と接続しかつフレーム部21の主表面に現れるように、ビーム部23と接続される側のフレーム部21の一辺に、ホイートストンブリッジ回路の各端子となる6個の端子電極28が並列して設けられている。また、ビーム部23が形成されている一辺と対向するフレーム部21の一辺のそれぞれの角部にはアルミニウムからなる矩形状の金属層29が設けられている。金属層29は、陽極接合を行うときに通電媒体として働く接合用金属層であり、また、第1のガラス基板12とセンサ基板11との間にギャップ(間隔)32を形成させるために設けられている。
【0023】
第1のガラス基板12は、矩形で板状である。第1のガラス基板12の両主面には保護膜31としてのリンがドープされたシリコン酸化膜(PSG膜)が形成されている。なお、第1のガラス基板12が配置されたときに、センサ基板11の一辺の角部に形成された金属層29と対向する箇所の保護膜31は除去されている。
【0024】
第1のガラス基板12は、センサ基板11の角部に形成された2個の金属層29を介してセンサ基板11と陽極接合により接合され、センサ基板11と所定のギャップ32を有するようにセンサ基板11の上方に配置されている。所定のギャップ32とは、錘部22が変位するときに錘部22と第1のガラス基板12とが接触することがないように遊びを持たせるための間隔をいう。
【0025】
第1のガラス基板12の大きさは、幅方向はセンサ基板11と略同等であり長手方向はセンサ基板11よりやや小さく形成されている。これにより、センサ基板11に形成されたホイートストンブリッジ回路の各端子電極28が、第1のガラス基板12に覆われることがないように配置されている。
【0026】
第2のガラス基板13は、矩形で板状であり、その外形サイズがセンサ基板11と略同等に形成されている。また、第2のガラス基板13は、一方の主面では外周部を残して中程に凹部41が形成されており、センサ基板11と第2のガラス基板12において凹部41が形成された側の主面とが対向するようにセンサ基板11の下方に配置されている。そして、センサ基板11と第2のガラス基板13とは陽極接合により接合されている。凹部41によって、錘部22が変位するときに錘部22と第2のガラス基板13とが接触することを防ぐことができる。
【0027】
ここで、本実施形態に係る半導体加速度センサ1の製造方法について説明する。
【0028】
絶縁膜25が両主面に形成されているシリコン基板14をフォトリソグラフィー工程により加工することで、ピエゾ抵抗26と拡散配線27と端子電極28と金属層29とが形成され、フレーム部21と錘部22とビーム部23とを備えたセンサ基板11が形成される。
【0029】
図2(a)乃至(d)は、本実施形態に係る半導体加速度センサ1に備わるセンサ基板11が形成される過程を示す概略断面図である。
【0030】
まず、シリコン基板14の主面の表面であって端子電極28が形成される箇所の絶縁膜25をウエットエッチングにより除去する。絶縁膜25が除去された箇所からイオン注入し酸化及び拡散させることにより、ピエゾ抵抗26と拡散配線27とを形成する(図2(a))。
【0031】
そして、端子電極28が形成される箇所であって絶縁膜25が除去された箇所に拡散配線27と接続されるように端子電極28を形成する。また、ビーム部23が形成される一辺と対向するフレーム部21の一辺のそれぞれの角部には絶縁膜25上に金属層29を形成する(図2(b))。
【0032】
フレーム部21と錘部22とビーム部23を形成するために、シリコン基板14の主面の裏面であって開口部24及びビーム部23の下部に対応する箇所の絶縁膜25をウエットエッチングにより除去する。この絶縁膜25が除去された箇所に対して、主面の表面からの厚さが薄肉のビーム部23の厚さとなるまでシリコン基板14の主面の裏面側から異方性エッチングを行う。これにより、ビーム部23と錘部22の概ねの外形とが形成される(図2(c))。
【0033】
開口部24を形成するために、シリコン基板14の主面の表面であって開口部24を設ける箇所の絶縁膜25をウエットエッチングにより除去し、絶縁膜25が除去された箇所に対してシリコン基板14の主面の表面から異方性エッチングを行う。これにより、開口部24が形成され、錘部22とフレーム部21とが形成される。そして、シリコン基板14の主面の裏面側に形成されている絶縁膜25をウエットエッチングにより除去する(図2(d))。これらの工程を経ることにより、センサ基板11が形成される。
【0034】
図3(a)乃至(b)は、本実施形態に係る半導体加速度センサ1に備わる第1のガラス基板12が形成される過程を示す概略側面図であり、図3(b−2)は、図3(b−1)の下面平面図である。
【0035】
保護膜31として、ガラス板の主面の表裏両面にそれぞれCVD(Chemical Vapor Deposition)によりリンがドープされたシリコン酸化膜を形成する(図3(a))。
【0036】
センサ基板11と対向する面であってセンサ基板11において金属層29が形成された箇所に対応する箇所の保護膜31としてのリンがドープされたシリコン酸化膜を、ドライエッチングにより除去する(図3(b))。これらの工程を経ることにより、第1のガラス基板12が形成される。
【0037】
第2のガラス基板13は、外形サイズがセンサ基板11と略同等であり、一方の主面では外周部を残して中程に凹部41が形成されている(図3(c))。
【0038】
そして、上記のように形成されたセンサ基板11と第1のガラス基板12と第2のガラス基板13とを陽極接合にて接合する。このとき、第1のガラス基板12を陰極、第2のガラス基板13を陽極として陽極接合する。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る半導体加速度センサ1が得られる。
【0040】
ここで、半導体加速度センサ1における加速度の検出方法について説明する。半導体加速度センサ1に加速度が作用されると錘部22が変位する。錘部22が変位することによりビーム部23が撓み、この撓みに応じてビーム部23に設けられたピエゾ抵抗26の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化を検出することにより半導体加速度センサ1に作用する加速度を検出することができる。
【0041】
本実施形態に係る微小デバイスとしての半導体加速度センサ1は、第1のガラス基板12の両主面に保護膜31が形成されているため、センサ基板11と第1のガラス基板12とを陽極接合させるときに第1のガラス基板12上にアルカリ金属イオンが析出することを防止することができる。このため、アルカリ金属イオンの析出物によって半導体加速度センサ1の諸特性を悪化させることを防止することができ、センサ特性のよい半導体加速度センサ1を得ることができる。
【0042】
また、第1のガラス基板12とセンサ基板11との間には、金属層29によりギャップ32が形成されているため、第1のガラス基板12と錘部22とが接触することを防ぐことができる。また、金属層29によりギャップ32が形成されているため、例えばギャップ32を形成するために第1のガラス基板12を加工する場合と比べ、第1の基板12を加工するという工数が減り低コスト化が図れる。
【0043】
また、第1のガラス基板12の両主面に形成された保護膜31が、リンがドープされたシリコン酸化膜つまりリンを含んだシリコン酸化膜であるため、アルカリ金属イオンの拡散のバリア性が高く緻密な保護膜31を形成することができるため好ましい。なお、本実施形態では、第1のガラス基板12の両主面に形成された保護膜31がリンを含んだシリコン酸化膜である例を示したが、これに限られることはない。例えば、保護膜31をシリコン窒化膜とすることができる。保護膜31がシリコン窒化膜であるときは、アルカリ金属イオンの拡散のバリア性が高くなるため好ましい。
【0044】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記構成に限られることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第2のガラス基板13として両主面に保護膜が形成されたものを用いる構成とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 微小デバイス(半導体加速度センサ)
11 センサ基板
12 第1のガラス基板
13 第2のガラス基板
21 フレーム部
22 錘部
23 ビーム部
24 開口部
25 絶縁膜
26 ピエゾ抵抗
27 拡散配線
28 端子電極
29 金属層
31 保護膜
32 ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部と前記フレーム部に対して変位自在に支持される錘部と前記フレーム部と前記錘部とを接続するビーム部とを有するセンサ基板と、ガラス基板とを備える微小デバイスであって、
前記センサ基板と前記ガラス基板とは陽極接合されており、
前記ガラス基板の両主面には、アルカリ金属イオンの析出を防止する保護膜が形成されていることを特徴とする微小デバイス。
【請求項2】
前記センサ基板と前記ガラス基板とは金属層を介して陽極接合されることにより、
前記センサ基板と前記ガラス基板との間には前記金属層によりギャップが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の微小デバイス。
【請求項3】
前記保護膜は、リンを含んだシリコン酸化膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微小デバイス。
【請求項4】
前記保護膜は、シリコン窒化膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微小デバイス。
【請求項5】
微小デバイスは半導体加速度センサであることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の微小デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−69648(P2011−69648A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219153(P2009−219153)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】