説明

微細パターンを表面に有する成型体の製造方法

【課題】皺や転写不良の発生を充分に抑えることができる、微細パターンを表面に有する成型体の製造方法を提供する。
【解決手段】(a)光重合性組成物20をモールド10の表面に供給し、(b)空気に接した状態で比較的高い照度の紫外線を硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し光重合性組成物20を硬化させて半硬化物22とし、(c)光重合性組成物20を半硬化物22の表面に供給し、(d)工程(b)と同様に光重合性組成物20および半硬化物22を硬化させて半硬化積層物24とし、(e)光重合性組成物20を半硬化積層物24の表面に供給し、(f)光重合性組成物20の上に透明基板30を載置し、(g)空気に接しない状態で紫外線を硬化度合Xが95%以上となる光量にて照射し光重合性組成物20および半硬化積層物24を硬化させて硬化積層物26とする、成型体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンを表面に有する成型体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子(マイクロレンズ等)、記録メディア、半導体装置等の製造において、マイクロメートルオーダーからナノメートルオーダーの微細パターンを短時間で形成する方法としては、微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの表面に光重合性組成物を供給し、光重合性組成物に紫外線を照射して光重合性組成物を硬化させ、微細パターンを表面に有する成型体を得る方法がよく知られている。
【0003】
しかし、該方法には、下記の問題がある。
(i)モールドの表面に光重合性組成物を供給する際に巻き込まれた気泡が、成型体に残存しやすい。
(ii)光重合性組成物が硬化収縮するため、微細パターンの転写不良が発生しやすい。
【0004】
該問題を解決する製造方法としては、下記の方法が提案されている(特許文献1)。
微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの表面に光重合性組成物を供給し、光重合性組成物が空気に接した状態にて光重合性組成物に紫外線を照射して光重合性組成物を半硬化させ、この上にさらに光重合性組成物を供給し、光重合性組成物の上に透明基板を載置した後、透明基板側から紫外線を照射して光重合性組成物を完全硬化させ、微細パターンを表面に有する成型体を得る方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−293835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、光重合性組成物を半硬化させる際に、モールドの表面に接する部分における光重合性組成物があまり硬化しないため、2回目の紫外線の照射の際に、モールドの表面に接する部分にて光重合性組成物の硬化収縮が起こりやすく、成型体の微細パターン側の表面に多数の皺が発生したり、微細パターンの転写不良が発生したりすることがある。特に、透明基板側から加圧できない構造を有するモールド(たとえば、反転パターンを有する表面の周縁に堰部を有するモールド)を用いた場合、装置、プロセス等の制約から透明基板側から光重合性組成物に加圧できない場合、モールドの反転パターン(微細パターン)のアスペクト比が比較的大きい場合においては、前記問題が顕著に現れる。
【0007】
本発明は、モールドの表面に供給された光重合性組成物を硬化する際に光重合性組成物に加圧できない場合やモールドの微細パターンのアスペクト比が大きい場合であっても、皺や転写不良の発生を充分に抑えることができる、微細パターンを表面に有する成型体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法は、下記の方法(I)または下記の方法(II)である。
【0009】
方法(I):
下記の工程(a)〜(c)、工程(g’)および工程(h)を有する方法。
(a)光重合性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの表面に供給する工程。
(b)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、前記光重合性組成物に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し、前記光重合性組成物を硬化させ、半硬化物とする工程。
(c)光重合性組成物を、前記半硬化物の表面に供給する工程。
(g’)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接しない状態にて、前記光重合性組成物および半硬化物に紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量にて照射し、前記光重合性組成物および半硬化物を硬化させ、硬化積層物とする工程。
(h)前記硬化積層物からなる成型体と前記モールドとを分離して、微細パターンを表面に有する成型体を得る工程。
【0010】
方法(II)
下記の工程(a)〜(e)、工程(g)および工程(h)を有する方法。
(a)光重合性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの表面に供給する工程。
(b)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、前記光重合性組成物に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し、前記光重合性組成物を硬化させ、半硬化物とする工程。
(c)光重合性組成物を、前記半硬化物の表面に供給する工程。
(d)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、前記光重合性組成物および半硬化物に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し、前記光重合性組成物および半硬化物を硬化させ、半硬化積層物とする工程。
(e)光重合性組成物を、前記半硬化積層物の表面に供給する工程。
(g)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接しない状態にて、前記光重合性組成物および半硬化積層物に紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量にて照射し、前記光重合性組成物および半硬化積層物を硬化させ、硬化積層物とする工程。
(h)前記硬化積層物からなる成型体と前記モールドとを分離して、微細パターンを表面に有する成型体を得る工程。
【0011】
X=(S−S)/(S−S100)×100 ・・・(1)。
ただし、
は、未硬化の光重合性組成物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積Aと、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基の伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)であり、
100は、光重合性組成物に過剰の紫外線を照射して光重合性組成物を完全に硬化させた硬化物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積A100と、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基の伸縮振動のピーク面積B100との比(A100/B100)であり、
は、本工程と同じ雰囲気および照度にて、光重合性組成物に紫外線を所定の光量にて照射して光重合性組成物を硬化させた硬化物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積Aと、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基の伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)である。
【0012】
方法(I)においては、前記工程(c)と前記工程(g’)との間に、下記の工程(f)を有していてもよく、
方法(II)においては、前記工程(e)と前記工程(g)との間に、下記の工程(f)を有していてもよい。
(f)前記光重合性組成物の上に基板を載置する工程。
【0013】
方法(II)においては、前記工程(c)および前記工程(d)を2回以上繰り返してもよい。
前記光重合性組成物は、炭素−炭素不飽和二重結合を1つ以上有するモノマー(A)を含むことが好ましい。
前記モノマー(A)は、フッ素原子を有し、かつ炭素−炭素不飽和二重結合を1つ以上有するモノマー(A1)を含むことが好ましい。
前記光重合性組成物は、さらに含フッ素界面活性剤(B)を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の製造方法は、前記反転パターンのアスペクト比が0.1以上である場合、前記モールドが前記反転パターンを有する表面の周縁に堰部を有するものである場合に好適である。
本発明のマイクロレンズは、本発明の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法によれば、モールドの表面に供給された光重合性組成物を硬化する際に光重合性組成物に加圧できない場合やモールドの微細パターンのアスペクト比が大きい場合であっても、成型体の表面における皺や転写不良の発生を充分に抑えることができる。
加えて、従来のインプリントの手法では、得られる成型体にバリが発生しやすく、バリを除去する等の処理が必要であった。ところが、本発明の製造方法では、光重合性組成物の供給と硬化とを数回に分けて行い、最終的にモールドの反転パターン部分の容積を満たしてゆくため、モールドから光重合性組成物が溢れ出るおそれを低減でき、成型体におけるバリの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】赤外吸収スペクトルにおけるC=C伸縮振動のピーク面積AおよびC=O伸縮振動のピーク面積Bを説明するための図である。
【図2】赤外吸収スペクトルにおけるC=C伸縮振動のピーク面積AおよびC−H伸縮振動のピーク面積Bを説明するための図である。
【図3】C=C伸縮振動のピーク面積AとC=O伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)の経時変化のグラフである。
【図4】C=C伸縮振動のピーク面積AとC−H伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)の経時変化のグラフである。
【図5】微細パターンを表面に有する成型体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図6】微細パターンを表面に有する成型体の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図7】微細パターンを表面に有する成型体の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図8】実施例にて用いたモールドAを示す上面図である。
【図9】実施例にて用いたモールドBを示す上面図および断面図である。
【図10】実施例にて用いたモールドCを示す上面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書においては、以下のように定義する。
微細パターンないし反転パターンとは、幅、長さおよび高さ(深さ)のうち最小の寸法が1nm〜50mmである1つ以上の凸部および/または凹部からなる形状をいう。
硬化物とは、光重合性組成物に紫外線を照射して、光重合性組成物の一部または全部を硬化させたものをいう。
半硬化物とは、前記硬化物のうち、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となるような雰囲気、照度および光量にて光重合性組成物に紫外線を照射して、光重合性組成物を硬化させたものをいう。
硬化積層物とは、前記硬化物からなる層が複数積層したものをいう。
半硬化積層物とは、前記硬化積層物のうち、少なくとも最表層が前記半硬化物からなる層であるものをいう。
光重合性組成物は、紫外線の照射によってラジカル重合反応を起こすラジカル重合性の化合物を含む組成物をいう。
(メタ)アクリロイルオキシ基は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をいう。
(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートをいう。
【0018】
<微細パターンを表面に有する成型体の製造方法>
本発明の微細パターンを表面に有する成型体を製造する方法は、下記の方法(I)または下記の方法(II)である。
【0019】
方法(I):
下記の工程(a)〜(c)、工程(f)、工程(g’)および工程(h)を有する方法。
(a)光重合性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの表面に供給する工程。
(b)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、前記光重合性組成物に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し、前記光重合性組成物を硬化させ、半硬化物とする工程。
(c)光重合性組成物を、前記半硬化物の表面に供給する工程。
(f)必要に応じて、前記光重合性組成物の上に基板を載置する工程。
(g’)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接しない状態にて、前記光重合性組成物および半硬化物に紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量にて照射し、前記光重合性組成物および半硬化物を硬化させ、硬化積層物とする工程。
(h)前記硬化積層物からなる成型体と前記モールドとを分離して、微細パターンを表面に有する成型体を得る工程。
【0020】
方法(II):
下記の工程(a)〜(h)を有する方法。
(a)光重合性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの表面に供給する工程。
(b)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、前記光重合性組成物に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し、前記光重合性組成物を硬化させ、半硬化物とする工程。
(c)光重合性組成物を、前記半硬化物の表面に供給する工程。
(d)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、前記光重合性組成物および半硬化物に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し、前記光重合性組成物および半硬化物を硬化させ、半硬化積層物とする工程。
(e)光重合性組成物を、前記半硬化積層物の表面に供給する工程。
(f)必要に応じて、前記光重合性組成物の上に基板を載置する工程。
(g)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接しない状態にて、前記光重合性組成物および半硬化積層物に紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量にて照射し、前記光重合性組成物および半硬化積層物を硬化させ、硬化積層物とする工程。
(h)前記硬化積層物からなる成型体と前記モールドとを分離して、微細パターンを表面に有する成型体を得る工程。
【0021】
(硬化度合)
硬化度合Xは、光重合性組成物中に存在する、ラジカル重合反応に関係する炭素−炭素不飽和二重結合が、紫外線照射によってどれだけ減少したかによって、光重合性組成物の硬化の進行の度合いを見積もる指標であり、下式(1)にて算出される。
X=(S−S)/(S−S100)×100 ・・・(1)。
【0022】
ただし、
は、未硬化の光重合性組成物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積Aと、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基の伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)であり、
100は、光重合性組成物に過剰の紫外線を照射して光重合性組成物を完全に硬化させた硬化物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積A100と、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基の伸縮振動のピーク面積B100との比(A100/B100)であり、
は、本工程と同じ雰囲気および照度にて、光重合性組成物に紫外線を所定の光量にて照射して光重合性組成物を硬化させた硬化物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積Aと、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基の伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)である。
【0023】
ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基としては、たとえば、下記の官能基が挙げられる。
(α)ラジカル重合反応に関係する炭素−炭素不飽和二重結合が、(メタ)アクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和二重結合の場合、(メタ)アクリロイルオキシ基のカルボニル基(C=O)。
(β)ラジカル重合反応に関係する炭素−炭素不飽和二重結合が、ビニル基またはアリル基の炭素−炭素不飽和二重結合の場合、メチレン基(−CH−)。
【0024】
(α)の場合、(メタ)アクリロイルオキシ基のC=C伸縮振動のピーク面積Aは、図1に示すように、1600cm−1付近にピークを有するC=C伸縮振動の吸収曲線と、該吸収曲線が立ち上がる2箇所を結ぶ線とに囲まれた領域の面積であり、(メタ)アクリロイルオキシ基のC=O伸縮振動のピーク面積Bは、図1に示すように、1750cm−1付近にピークを有するC=O伸縮振動の吸収曲線と、該吸収曲線が立ち上がる2箇所を結ぶ線とに囲まれた領域の面積である。
【0025】
(β)の場合、ビニル基またはアリル基のC=C伸縮振動のピーク面積Aは、図2に示すように、1600cm−1付近にピークを有するC=C伸縮振動の吸収曲線と、該吸収曲線が立ち上がる2箇所を結ぶ線とに囲まれた領域の面積であり、−CH−のC−H伸縮振動のピーク面積Bは、3000〜2650cm−1付近に現れる−CH−伸縮振動の吸収曲線と、該吸収曲線が立ち上がる2箇所を結ぶ線とに囲まれた領域の面積である。
【0026】
以下、(α)の場合について、硬化度合の求め方の手順を具体的に説明する。
(i)光重合性組成物の約6mLを表面に滴下したシリコン基板を、UV硬化樹脂用リアルタイムFT−IRシステム(サーモフィッシャーサイエンスティフィック社製)にセットする。
(ii)窒素ガス雰囲気下にてシリコン基板上の光重合性組成物の赤外吸収スペクトルのリアルタイム測定を開始する。赤外吸収スペクトルの測定は、FT−IRによる反射吸収法によって行う。
(iii)測定開始から10秒後に、光重合性組成物への紫外線(波長365nmの光の照度:65mW/cm)の照射を開始する。
(iv)リアルタイム測定によって得られた経過時間ごとの赤外吸収スペクトルから、図3に示すような、C=C伸縮振動のピーク面積AとC=O伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)の経時変化のグラフを求める。
(v)該グラフにおいて、測定開始から10秒までのA/Bが、A/Bとなり、A/Bの低下が見られなくなる時間、すなわち測定開始から約53秒以降のA/Bが、A100/B100となる。図3のグラフの場合、A/Bは0.375であり、A100/B100は、0.05である。
【0027】
(vi)前記手順(i)〜(v)において用いたものと同じ光重合性組成物の約6mLをシリコン基板の表面に滴下する。
(vii)本工程と同じ装置、雰囲気、照度および光量にて、シリコン基板上の光重合性組成物に紫外線を照射する。
(viii)シリコン基板上の半硬化物ないし硬化物の赤外吸収スペクトルを測定する。赤外吸収スペクトルの測定は、FT−IRによる反射吸収法によって行う。
(ix)得られた赤外吸収スペクトルから、C=C伸縮振動のピーク面積AとC=O伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)を求める。
(x)式(1)から硬化度合Xを算出する。たとえば、A/Bが0.25の場合、X=(0.375−0.25)/(0.375−0.05)×100=38%となる。
【0028】
以下、(β)の場合について、硬化度合の求め方の手順を具体的に説明する。
(i)光重合性組成物の約6mLを表面に滴下したシリコン基板を、UV硬化樹脂用リアルタイムFT−IRシステム(サーモフィッシャーサイエンスティフィック社製)にセットする。
(ii)窒素ガス雰囲気下にてシリコン基板上の光重合性組成物の赤外吸収スペクトルのリアルタイム測定を開始する。赤外吸収スペクトルの測定は、FT−IRによる反射吸収法によって行う。
(iii)測定開始から10秒後に、光重合性組成物への紫外線(波長365nmの光の照度:65mW/cm)の照射を開始する。
(iv)リアルタイム測定によって得られた経過時間ごとの赤外吸収スペクトルから、図4に示すような、C=C伸縮振動のピーク面積AとC−H伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)の経時変化のグラフを求める。
(v)該グラフにおいて、測定開始から10秒までのA/Bが、A/Bとなり、A/Bの低下が見られなくなる時間、すなわち測定開始から約55秒以降のA/Bが、A100/B100となる。図4のグラフの場合、A/Bは0.168であり、A100/B100は、0.08である。
【0029】
(vi)前記手順(i)〜(v)において用いたものと同じ光重合性組成物の約6mLをシリコン基板の表面に滴下する。
(vii)本工程と同じ装置、雰囲気、照度および光量にて、シリコン基板上の光重合性組成物に紫外線を照射する。
(viii)シリコン基板上の半硬化物ないし硬化物の赤外吸収スペクトルを測定する。赤外吸収スペクトルの測定は、FT−IRによる反射吸収法によって行う。
(ix)得られた赤外吸収スペクトルから、C=C伸縮振動のピーク面積AとC−H伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)を求める。
(x)式(1)から硬化度合Xを算出する。たとえば、A/Bが0.132の場合、X=(0.168−0.132)/(0.168−0.08)×100=41%となる。
【0030】
(光重合性組成物)
光重合性組成物は、モノマー(A)を含むことが好ましく、さらに必要に応じて含フッ素界面活性剤(B)、光重合開始剤(C)、他の添加剤(D)を含む。
【0031】
モノマー(A):
モノマー(A)は、紫外線の照射によってラジカル重合反応を起こすラジカル重合性の化合物であり、炭素−炭素不飽和二重結合を1つ以上有するモノマーである。
モノマー(A)は、離型性の点から、フッ素原子を有し、かつ炭素−炭素不飽和二重結合を1つ以上有するモノマー(A1)を含むことが好ましい。
【0032】
モノマー(A1):
モノマー(A1)としては、フルオロ(メタ)アクリレート類、フルオロジエン類、フルオロビニルエーテル類、フルオロ環状モノマー類等が挙げられ、硬化性、相溶性の点から、フルオロジエン類またはフルオロ(メタ)アクリレート類が好ましく、フルオロ(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0033】
フルオロジエン類としては、下式(A1a)で表される化合物(以下、モノマー(A1a)と記す。)が好ましい。
CF=CR−Q−CR=CH ・・・(A1a)。
ただし、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のフルオロアルキル基であり、Qは、酸素原子、下式(2)で表される基、または官能基を有していてもよい2価有機基である。
−NR− ・・・(2)。
ただし、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルキルカルボニル基またはトシル基である。
【0034】
Qが2価有機基である場合、該Qとしては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、オキシメチレン、オキシジメチレン、オキシトリメチレン、およびジオキシメチレンからなる群から選ばれる基を主鎖とし該主鎖中の水素原子が、フッ素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された炭素数1〜6のアルキル基、および炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基で置換された基であり、かつ該基中の炭素原子−水素原子結合を形成する水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された基が好ましく、−CFC(CF)(OH)CH−、−CFC(CF)(OH)−、−CFC(CF)(OCHOCH)CH−、−CHCH(CHC(CFOH)CH−、または−CHCH(CHC(CFOH)−が特に好ましい。ただし、基の向きは左側がCF=CR−に結合することを意味する。
【0035】
モノマー(A1a)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CF=CFCHCH(C(CFOH)CHCH=CH
CF=CFCHCH(C(CFOH)CH=CH
CF=CFCHCH(C(CFOH)CHCHCH=CH
CF=CFCHCH(CHC(CFOH)CHCHCH=CH
CF=CFCHC(CH)(CHSOF)CHCH=CH
CF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH
CF=CFCFC(CF)(OH)CH=CH
CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH
CF=CFCFC(CF)(OCHOCHCF)CHCH=CH
CF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH
CF=CFOCFCF(O(CFOC)CHCH=CH
CF=CFOCFCF(OCFCFCHNH)CHCH=CH
CF=CFOCFCF(O(CFCN)CH=CH
CF=CFOCFCF(OCFCFSOF)CHCH=CH
CF=CFOCFCF(O(CFPO(OC25)CHCH=CH
CF=CFOCFCF(OCFCFSOF)CHCH=CH
【0036】
フルオロ(メタ)アクリレート類としては、下式(A1b)で表される化合物(以下、モノマー(A1b)と記す。)が好ましい。
CH=C(R11)−C(O)O−W−R ・・・(A1b)。
11は、水素原子またはメチル基である。
【0037】
Wは、単結合またはフッ素原子を含まない2価の連結基である。2価の連結基としては、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、オキシアルキレン基、2価の6員環芳香族基、2価の4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、2価の5〜6員環の複素環基、または下式(3)で表される2価の連結基が挙げられる。2価の連結基は、2種以上を組み合わせたものであってもよく、環を縮合したものであってもよく、置換基を有するものであってもよい。
−Y−Z− ・・・(3)。
ただし、Yは、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、2価の6員環芳香族基、2価の4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、2価の5〜6員環の複素環基、またはこれらが縮合した環基であり、Zは、−O−、−S−、−CO−、−C(O)O−、−C(O)S−、−N(R)−、−SO−、−PO(OR)−、−N(R)−C(O)O−、−N(R)−C(O)−、−N(R)−SO−、または−N(R)−PO(OR)−であり、Rは、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基である。
【0038】
Wとしては、単結合、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、下式(4)で表される基、またはこれらの基の組み合わせが好ましく、−(CH−(ただし、pは0〜6の整数であり、pが0の場合は単結合を表す。)が特に好ましい。
−Y−Z− ・・・(4)。
ただし、Yは、直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または2価の6員環芳香族基であり、Zは、−N(R)−、−SO−、または−N(R)−SO−であり、Rは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。
【0039】
は、主鎖の炭素数が1〜6の、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよいポリフルオロアルキル基である。WとRとの境界は、Rの炭素数が最も少なくなるように定める。
ポリフルオロアルキル基とは、主鎖の炭素数(側鎖を含まない炭素数)が1〜6のアルキル基の水素原子が2つ以上フッ素原子に置換された基を意味する。主鎖とは、直鎖状の場合は該直鎖を意味し、分岐状の場合は最も長い炭素鎖を意味する。側鎖とは、分岐状のポリフルオロアルキル基を構成する炭素鎖のうち、主鎖以外の炭素鎖を意味する。側鎖はアルキル基、モノフルオロアルキル基またはポリフルオロアルキル基からなる。
【0040】
ポリフルオロアルキル基としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)に対応する、部分フルオロ置換アルキル基、またはパーフルオロ置換アルキル基が挙げられる。
炭素原子間にエーテル性酸素原子を有するポリフルオロアルキル基としては、ポリフルオロ(アルコキシアルキルアルキル)基やポリフルオロ(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)基が好ましく、ポリフルオロ(2−エトキシエチル)基、ポリフルオロ(2−メトキシプロピル)基、ポリフルオロ(ポリオキシエチレンメチルエーテル)基、ポリフルオロ(ポリオキシプロピレンメチルエーテル)基等が挙げられる。
【0041】
としては、直鎖状のものが好ましい。Rが分岐状のものである場合、分岐部分ができるだけRの末端に近い部分に存在することが好ましい。
としては、ポリフルオロアルキル基が好ましく、全水素原子が実質的にフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基がより好ましく、直鎖状のパーフルオロアルキル基がさらに好ましく、環境残留性や生体蓄積性が低く、かつ離型性が高い点から、炭素数が4〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基が特に好ましく、炭素数が6の直鎖状のパーフルオロアルキル基が最も好ましい。
【0042】
モノマー(A1b)としては、下式(5)で表わされる化合物が好ましい。
CH=C(R11)−C(O)O−(CH−R ・・・(5)。
ただし、R11は、水素原子またはメチル基であり、pは、0〜6の整数であり、Rは、炭素数が1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基である。
【0043】
モノマー(A1b)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CH=CH−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−(CH−CF
CH=C(CH)−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−CH−CF
CH=CH−C(O)O−CHCH(OH)CH−CFCFCF(CF
CH=CH−C(O)O−CH(CF
CH=CH−C(O)O−CH−(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−CH−CFCFH、
CH=CH−C(O)O−CH−(CFCFH、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CFCFH、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−(CFCFH、
CH=CH−C(O)O−CH−CFOCFCFOCF
CH=CH−C(O)O−CH−CFO(CFCFO)CF
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CFOCFCFOCF
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CFO(CFCFO)CF
CH=CH−C(O)O−CH−CF(CF)OCFCF(CF)O(CFF、
CH=CH−C(O)O−CH−CF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CF(CF)OCFCF(CF)O(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFF。
【0044】
モノマー(A1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(A)は、さらに(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有するモノマー(A2)(ただし、モノマー(A1)を除く。)および/または(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上有するモノマー(A3)を含んでもよい。
これらのモノマーを併用する場合、硬化度合(X)の評価において基準となる、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基が複数種存在することがある。この場合は、いずれかの官能基を選択して、当該官能基を基準にして硬化度合を評価すればよい。たとえば、光重合性組成物が、モノマー(A1a)、モノマー(A2)およびモノマー(A3)を含む場合、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基として、(メタ)アクリロイルオキシ基のカルボニル基(C=O)と、モノマー(A1a)中のメチレン基(−CH−)とが存在する。この場合、カルボニル基(C=O)とメチレン基(−CH−)とのいずれかを基準として選択すればよい。
【0045】
モノマー(A2):
モノマー(A2)としては、モノヒドロキシ化合物の(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシ化合物のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、モノヒドロキシ化合物の(メタ)アクリレートが好ましく、モノヒドロキシ化合物のアクリレートが特に好ましい。モノヒドロキシ化合物としては、アルキル部分の炭素数が4〜20のアルカノール、単環、縮合多環もしくは橋かけ環を有する脂環族モノオール、ポリ(もしくはモノ)アルキレングリコールモノアルキル(もしくはアリール)エーテル等が好ましく、炭素数が6〜20のアルカノールと橋かけ環とを有する脂環族モノオールが特に好ましい。
【0046】
モノマー(A2)としては、下記の化合物が挙げられる。
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシピロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2−(tert−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等。
モノマー(A2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
モノマー(A3):
モノマー(A3)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する化合物である。モノマー(A3)は、フッ素原子を有する化合物であってもよいが、通常はフッ素原子を有しない化合物である。モノマー(A3)における(メタ)アクリロイルオキシ基の数は2〜10が適当であり、2〜6が好ましい。
【0048】
モノマー(A3)は、ポリヒドロキシ化合物のポリ(メタ)アクリレートであり、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が2個以上である限り、水酸基を有していてもよい。ポリヒドロキシ化合物としては、アルキレンオキシドが付加し得る官能基を2個以上有する化合物(アルカンポリオール、アルカンポリオールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレングリコール、多価フェノール、ポリアミン等)のアルキレンオキシド付加物、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0049】
モノマー(A3)は、ポリヒドロキシ化合物のポリ(メタ)アクリレート構造を有する化合物である、ウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリヒドロキシ化合物にイソシアネートアルキル(メタ)アクリレートを反応させて得られる化合物、ポリヒドロキシ化合物にポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られる化合物等の、ウレタン結合を有する化合物である。ウレタン(メタ)アクリレートの原料であるポリヒドロキシ化合物としては、ポリエーテルポリオール(アルカンポリオールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレングリコール、多価フェノールのアルキレンオキシド付加物等)が好ましく、ポリイソシアネート化合物としては無黄変タイプのポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0050】
モノマー(A3)としては、アルカンポリオール、アルカンポリオールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレングリコールおよび多価フェノールのアルキレンオキシド付加物からなる群から選ばれるポリヒドロキシ化合物のポリ(メタ)アクリレート、ならびに、ポリエーテルポリオールを用いて得られるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0051】
モノマー(A3)としては、下記の化合物が挙げられる。
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート(エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAグリセロレートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロポキシレートグリセロレートジ(メタ)アクリレート等)、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、フルオレンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3−ジグリセロレートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネートジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールグリセロレートジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールグリセロレートジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアリル酸、トリメチロールプロパンエトキシレートメチルエーテルジ(メタ)アクリレート、ウレタン結合を2つ以上有するジ(メタ)アクリレート(新中村化学工業社製のUA−4200、ジウレタンジ(メタ)アクリレート等)、フルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス(3−メタクリロイロキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリオールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールを用いて得られるウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリオールを用いて得られるウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルテトラオールを用いて得られるウレタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエーテルヘキサオールを用いて得られるウレタンヘキサ(メタ)アクリレート等。
モノマー(A3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
光重合性組成物に含まれる、モノマー(A1)〜(A3)の合計量は、光重合性組成物(100質量%)のうち、70〜99.89質量%が好ましく、80〜99質量%が特に好ましい。
モノマー(A1)〜(A3)の合計量に対するモノマー(A1)の割合は、モノマー(A1)〜(A3)の合計量を100質量%としたとき、5〜100質量%が好ましく、15〜70質量%が特に好ましい。
モノマー(A1)〜(A3)の合計量に対するモノマー(A2)の割合は、モノマー(A1)〜(A3)の合計量を100質量%としたとき、0〜95質量%が好ましく、5〜50質量%が特に好ましい。
モノマー(A1)〜(A3)の合計量に対するモノマー(A3)の割合は、モノマー(A1)〜(A3)の合計量を100質量%としたとき、0〜95質量%が好ましく、35〜85質量%が特に好ましい。
【0053】
なお、本発明における光重合性組成物は、実質的に溶剤を含まないことが好ましい。光重合性組成物が実質的に溶剤を含まなければ、紫外線の照射を除く特別な操作(たとえば、光重合性組成物を高温に加熱して溶媒を除去する操作等。)を行うことなく、光重合性組成物の硬化を容易に行える。
【0054】
溶剤は、モノマー(A)、含フッ素界面活性剤(B)、光重合開始剤(C)および他の添加剤(D)の少なくともいずれかを溶解させる能力を有する化合物であり、常圧における沸点が160℃以下の化合物である。
実質的に溶剤を含まないとは、溶剤を全く含まない、または、光重合性組成物(100質量%)中、好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.7質量%以下の溶剤しか含まない場合を意味する。本発明においては、光重合性組成物を調製する際に用いた溶剤を残存溶剤として含んでいてもよいが、この場合も、残存溶剤は、極力除去されていることが好ましく、光重合性組成物(100質量%)中、1質量%以下が好ましい。
【0055】
含フッ素界面活性剤(B):
光重合性組成物は、離型性の点から、さらに含フッ素界面活性剤(B)を含むことが好ましい。
含フッ素界面活性剤(B)としては、フッ素含有量が10〜70質量%の含フッ素界面活性剤が好ましく、フッ素含有量が10〜40質量%の含フッ素界面活性剤がより好ましい。含フッ素界面活性剤は、水溶性であってもよく、脂溶性であってもよい。
【0056】
含フッ素界面活性剤(B)としては、アニオン性含フッ素界面活性剤、カチオン性含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、またはノニオン性含フッ素界面活性剤が好ましく、光重合性組成物における相溶性、および硬化樹脂における分散性の点から、ノニオン性含フッ素界面活性剤がより好ましい。
【0057】
アニオン性含フッ素界面活性剤としては、ポリフルオロアルキルカルボン酸塩、ポリフルオロアルキル燐酸エステル、またはポリフルオロアルキルスルホン酸塩が好ましい。
アニオン性含フッ素界面活性剤の具体例としては、サーフロンS−111(商品名、AGCセイミケミカル社製)、フロラードFC−143(商品名、スリーエム社製)、メガファークF−120(商品名、DIC社製)等が挙げられる。
【0058】
カチオン性含フッ素界面活性剤としては、ポリフルオロアルキルカルボン酸のトリメチルアンモニウム塩、またはポリフルオロアルキルスルホン酸アミドのトリメチルアンモニウム塩が好ましい。
カチオン性含フッ素界面活性剤の具体例としては、サーフロンS−121(商品名、AGCセイミケミカル社製)、フロラードFC−134(商品名、スリーエム社製)、メガファークF−150(商品名、DIC社製)等が挙げられる。
【0059】
両性含フッ素界面活性剤としては、ポリフルオロアルキルベタインが好ましい。
両性含フッ素界面活性剤の具体例としては、サーフロンS−132(商品名、AGCセイミケミカル社製)、フロラードFX−172(商品名、スリーエム社製)、メガファークF−120(商品名、DIC社製)等が挙げられる。
【0060】
ノニオン性含フッ素界面活性剤としては、ポリフルオロアルキルアミンオキサイド、またはポリフルオロアルキル・アルキレンオキサイド付加物が好ましい。
ノニオン性含フッ素界面活性剤の具体例としては、サーフロンS−145(商品名、AGCセイミケミカル社製)、サーフロンS−393(商品名、AGCセイミケミカル社製)、サーフロンKH−20(商品名、AGCセイミケミカル社製)、サーフロンKH−40(商品名、AGCセイミケミカル社製)、フロラードFC−170(商品名、スリーエム社製)、フロラードFC−430(商品名、スリーエム社製)、メガファークF−141(商品名、DIC社製)等が挙げられる。
【0061】
含フッ素界面活性剤(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
含フッ素界面活性剤(B)の含有量は、光重合性組成物(100質量%)のうち、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
【0062】
光重合開始剤(C):
光重合性組成物は、光硬化性の点から、さらに光重合開始剤(C)を含むことが好ましい。
光重合開始剤(C)としては、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキシド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシピバレート等が挙げられ、感度および相溶性の点から、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤またはベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましい。
【0063】
光重合開始剤(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤(C)の割合は、光重合性組成物(100質量%)のうち、0.1〜12質量%が好ましく、0.5〜6質量%がより好ましい。
【0064】
他の添加剤(D):
光重合性組成物は、モノマー(A)、含フッ素界面活性剤(B)および光重合開始剤(C)を除く、光増感剤、重合禁止剤、樹脂、金属酸化物微粒子、炭素化合物、金属微粒子、他の有機化合物等の他の添加剤(D)を含んでいてもよい。
【0065】
光増感剤としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジスイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
重合禁止剤としては、ナフタレン誘導体(4−メトキシ−1−ナフトール等)、ヒドロキノン誘導体(ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル等)、ニトロソアミン誘導体等が挙げられる。
【0066】
樹脂としては、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリエステルオリゴマー、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
金属酸化物微粒子としては、チタニア、シリカ、ジルコニア等が挙げられる。
炭素化合物としては、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。
金属微粒子としては、銅、白金等が挙げられる。
他の有機化合物としては、ポルフィリン、金属内包ポリフィリン、イオン性液体(1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド等)、色素等が挙げられる。
【0067】
他の添加剤(D)の割合は、光重合性組成物(100質量%)のうち、20質量%以下が好ましい。他の添加剤(D)が20質量%以下であれば、光重合性組成物を均一に混合でき、均質な光重合性組成物が得られる。
【0068】
(モールド)
モールドとしては、非透光材料製モールドまたは透光材料製モールドが挙げられる。
非透光材料としては、シリコン、ニッケル、銅、ステンレス、チタン、SiC、マイカ等が挙げられる。
透光材料としては、石英、ガラス、ポリジメチルシロキサン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、透明フッ素樹脂等が挙げられる。
モールドおよび後述する基板のうち少なくとも一方は、光重合開始剤(C)が作用する波長の光を40%以上透過する材料とする。
【0069】
モールドは、表面に反転パターンを有する。反転パターンは、成型体の表面の微細パターンに対応した反転パターンである。
反転パターンは、微細な凸部および/または凹部を有する。
凸部としては、モールドの表面に延在する長尺の凸条、表面に点在する突起等が挙げられる。
凹部としては、モールドの表面に延在する長尺の溝、表面に点在する孔等が挙げられる。
【0070】
凸条または溝の形状としては、直線、曲線、折れ曲がり形状等が挙げられる。凸条または溝は、複数が平行に存在して縞状をなしていてもよい。
凸条または溝の、長手方向に直交する方向の断面形状としては、長方形、台形、三角形、半円形等が挙げられる。
突起または孔の形状としては、三角柱、四角柱、六角柱、円柱、三角錐、四角錐、六角錐、円錐、半球、多面体等が挙げられる。
【0071】
凸条または溝の幅は、平均で1nm〜50mmが好ましく、50nm〜5mmがより好ましく、100nm〜500μmがさらに好ましい。凸条の幅とは、長手方向に直交する方向の断面における底辺の長さを意味する。溝の幅とは、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味する。
【0072】
突起または孔の幅は、平均で1nm〜50mmが好ましく、50nm〜5mmがより好ましく、100nm〜500μmが更に好ましい。突起の幅とは、底面が細長い場合、長手方向に直交する方向の断面における底辺の長さを意味し、そうでない場合、突起の底面における最大長さを意味する。孔の幅とは、開口部が細長い場合、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味し、そうでない場合、孔の開口部における最大長さを意味する。
【0073】
凸部の高さは、平均で1nm〜50mmが好ましく、50nm〜5mmがより好ましく、100nm〜500μmが更に好ましい。
凹部の深さは、平均で1nm〜50mmが好ましく、50nm〜5mmがより好ましく、100nm〜500μmが更に好ましい。
【0074】
反転パターンが密集している領域において、隣接する凸部(または凹部)間の間隔は、平均で1nm〜50mmが好ましく、50nm〜5mmがより好ましい。隣接する凸部間の間隔とは、凸部の断面の底辺の終端から、隣接する凸部の断面の底辺の始端までの距離を意味する。隣接する凹部間の間隔とは、凹部の断面の上辺の終端から、隣接する凹部の断面の上辺の始端までの距離を意味する。
【0075】
凸部の最小寸法は、1nm〜50mmが好ましく、40nm〜5mmがより好ましく、1μm〜500μmが特に好ましい。最小寸法とは、凸部の幅、長さおよび高さのうち最小の寸法を意味する。
凹部の最小寸法は、1nm〜50mmが好ましく、40nm〜5mmがより好ましく、1μm〜500μmが特に好ましい。最小寸法とは、凹部の幅、長さおよび深さのうち最小の寸法を意味する。
【0076】
本発明の製造方法は、従来の製造方法では成型体の微細パターン側の表面に多数の皺が発生したり、微細パターンの転写不良が発生したりしやすかった、反転パターンのアスペクト比が0.1以上である場合や、モールドが反転パターンを有する表面の周縁に堰部を有するものである場合に好適である。
反転パターンのアスペクト比とは、凸部の高さまたは凹部の深さと、凸部または凹部の幅との比(高さまたは深さ/幅)である。
【0077】
(基板)
基板としては、無機材料製基板または有機材料製基板が挙げられる。
無機材料としては、シリコン、ガラス、石英ガラス、金属(アルミニウム、ニッケル、銅等)、金属酸化物(アルミナ等)、窒化珪素、窒化アルミニウム、ニオブ酸リチウム、化合物半導体等が挙げられる。
有機材料としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド、環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0078】
基板として、光重合性組成物との密着性に優れる点から、表面処理された基板を用いてもよい。表面処理としては、プライマー塗布処理、オゾン処理、プラズマエッチング処理等が挙げられる。プライマーとしては、ポリメチルメタクリレート、シランカップリング剤、シラザン等が挙げられる。
基板およびモールドのうち少なくとも一方は、光重合開始剤(C)が作用する波長の光を40%以上透過する材料とする。
【0079】
(工程(a))
光重合性組成物の塗布方法(供給方法)としては、インクジェット法、ポッティング法、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法等が挙げられ、光重合性組成物の塗布量を制御できる点から、インクジェット法、ポッティング法が好ましい。
【0080】
光重合性組成物の塗布量は、モールドの反転パターン部分の容積の50〜100%が好ましい。塗布量が50%以上であれば、後の工程において光重合性組成物を何度も塗布する必要がなく、コストが抑えられる。塗布量が100%以下であれば、光重合性組成物がモールドから溢れ出ることがない。
【0081】
光重合性組成物は、成型体の微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの全面に配置してもよく、該モールドの表面の一部に配置してもよい。光重合性組成物を該モールドの表面に配置することにより、反転パターンが凹形状であったとしても泡の欠陥を抑制できる。
【0082】
光重合性組成物の供給は、常圧下で行ってもよく、700Pa以上の減圧下で行ってもよい。また、光重合性組成物が感光しない環境(イエロールーム等)で行うことが望ましい。また、空気中で行うことが好ましいが、窒素雰囲気、二酸化酸素雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
【0083】
(工程(b))
本工程は、光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて行う。酸素を含む雰囲気としては、空気が好ましい。
光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて光重合性組成物に紫外線を照射することによって、酸素を含む雰囲気に接する表層部分におけるラジカル重合反応が阻害されるため、表層部分における光重合性組成物の硬化が抑えられ、流動性が保たれる。そのため、モールドの表面に接する部分における光重合性組成物が硬化収縮しても、表層部分の光重合性組成物が下方に流動し、光重合性組成物(半硬化物)の表面に凹みが生じることはあっても、モールドと光重合性組成物(半硬化物)との界面に、皺や転写不良の原因となる空隙が発生しにくい。一方、 真空中、窒素雰囲気等の酸素の存在しない雰囲気で光重合性組成物を硬化させると、光重合性組成物の表層部分が優先的に硬化してしまい、モールドに接する部分の光重合性組成物の半硬化物の表面に、硬化収縮による皺や転写不良が発生する。
【0084】
紫外線の光源としては、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等が挙げられ、半硬化の制御の簡便性の点から、高圧水銀灯が好ましい。
【0085】
紫外線の波長365nmの光の照度は、300mW/cm以上であり、500mW/cm以上が好ましい。波長365nmの光の照度が300mW/cm以上であれば、モールドの表面まで短時間で充分にエネルギーが到達し、モールドに接する部分における光重合性組成物の硬化が優先的にかつ充分に進行するため、2回目以降の紫外線照射においてモールドに接する部分における光重合性組成物(半硬化物)の硬化収縮が起こりにくく、皺や転写不良の抑えられた成型体が得られる。
【0086】
紫外線の波長365nmの光の光量は、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量とする。硬化度合Xが90%以下であれば、表層部分の光重合性組成物が下方に流動しやすくなり、モールドと光重合性組成物(半硬化物)との界面に、皺や転写不良の原因となる空隙が発生しにくい。硬化度合Xが30%以上であれば、2回目以降の紫外線照射においてモールドに接する部分における光重合性組成物(半硬化物)の硬化収縮が起こりにくく、皺や転写不良の抑えられた成型体が得られる。
【0087】
硬化度合Xが30〜90%となる波長365nmの光の光量は、本工程の前に、上述した硬化度合の求め方の手順にしたがってあらかじめ決定しておく。具体的には、本工程にて用いる光重合性組成物について、手順(i)〜(v)によってA/BおよびA100/B100を求め、ついで、波長365nmの光の光量を変化させながら手順(vi)〜(x)を繰り返し行い、波長365nmの光の光量に対する硬化度合Xのグラフ(検量線)を作成し、該検量線を用いて目標とする硬化度合Xに対する波長365nmの光の光量を決定する。
【0088】
(工程(c))
前工程において発生した半硬化物の表面の凹みを埋めるように、未硬化の光重合性組成物を半硬化物の表面に供給する。
本工程における光重合性組成物の塗布方法(供給方法)としては、工程(a)と同様の方法が挙げられ、好ましい態様も同様である。
光重合性組成物の塗布量は、成型体の所望の厚さに応じて適宜決定すればよい。
【0089】
(工程(d))
本工程は、工程(b)と同様にして実施でき、好ましい態様も同様である。
工程(c)および工程(d)は、成型体の厚さに応じて、2回以上繰り返し行ってもよい。
【0090】
(工程(e))
前工程において発生した半硬化積層物の表面の凹みを埋めるように、未硬化の光重合性組成物を半硬化物の表面に供給する。
本工程における光重合性組成物の塗布方法(供給方法)としては、工程(a)と同様の方法が挙げられ、好ましい態様も同様である。
光重合性組成物の塗布量は、成型体の所望の厚さに応じて適宜決定すればよい。
【0091】
(工程(f))
光重合性組成物の上に基板を載置した後、モールド側もしくは基板側、または両方から加圧することが好ましい。加圧する方法としては、機械的にプレスする方法、気体もしくは液体を媒介としてプレスする方法等が挙げられる。プレスの圧力(ゲージ圧)は、0超〜10MPa以下が好ましく、0.1〜5MPaがより好ましい。加圧する際の温度は、0〜100℃が好ましく、10〜60℃がより好ましい。
【0092】
(工程(g’)、(g))
本工程は、光重合性組成物を完全に硬化させることを目的としているため、光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接しない状態にて行う。酸素を含む雰囲気に接しない状態とは、真空中、窒素雰囲気等、酸素を含まない雰囲気に接する状態、または光重合性組成物の上に基板を載置した状態を意味する。
紫外線の光源としては、工程(b)と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0093】
紫外線の波長365nmの光の照度は、1mW/cm以上が好ましく、50mW/cm以上がより好ましい。波長365nmの光の照度が1mW/cm以上であれば、光重合性組成物が硬化するまでの時間が長くならず、生産性がよい。
【0094】
紫外線の波長365nmの光の光量は、式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量とする。硬化度合Xが95%となる波長365nmの光の光量は、本工程の前に、上述した硬化度合の求め方の手順にしたがってあらかじめ決定しておく。具体的には、工程(b)と同様に検量線を用いて目標とする硬化度合Xに対する波長365nmの光の光量を決定する。
【0095】
(工程(h))
硬化積層物からなる成型体とモールドとを分離する方法としては、真空吸着によって双方を固定して片方を離す方向で移動させる方法、機械的に双方を固定して片方を離す方向で移動させる方法等が挙げられる。
【0096】
(用途)
本発明の製造方法によって製造された微細パターンを表面に有する成型体は、たとえば、下記の物品として用いることができる。
光学素子:非球面マイクロレンズアレイ、球面マイクロレンズアレイ、光導波路素子、光スイッチング素子(グリッド偏光素子、波長板等)、フレネルゾーンプレート素子、バイナリー素子、ブレーズ素子、フォトニック結晶等。
反射防止部材:AR(Anti Reflection)コート部材等。
チップ類:バイオチップ、μ−TAS(Micro−Total Analysis Systems)用のチップ、マイクロリアクターチップ等。
その他:記録メディア、ディスプレイ材料、触媒の担持体、フィルター、センサー部材、半導体デバイス(MEMSを含む。)、電解用のレプリカ、上記物品を量産するためのレプリカモールド等。
【0097】
(作用効果)
以上説明した本発明の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法にあっては、工程(b)(必要に応じてさらに工程(d))において、光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、光重合性組成物に、波長365nmの光の照度が充分に高い紫外線を照射して光重合性組成物を硬化させているため、モールドと光重合性組成物(半硬化物)との界面に、皺や転写不良の原因となる空隙が発生しにくく、かつ2回目以降の紫外線照射においてもモールドに接する部分における光重合性組成物(半硬化物)の硬化収縮が起こりにくい。その結果、皺や転写不良の抑えられた成型体が得られる。
【0098】
<第1〜3の実施形態>
以下、本発明の製造方法の具体例を、図面を用いて説明する。
【0099】
〔第1の実施形態〕
図5は、本発明の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法の第1の実施形態を示す工程図である。
【0100】
(工程(a))
平板状のモールド基材12の表面の中央に半球状の突起14(反転パターン)を有し、かつ表面の周縁に堰部16を有するモールド10の表面に、未硬化の光重合性組成物20を、突起14と堰部16との間の空間が完全に埋まるように供給する。
【0101】
(工程(b))
光重合性組成物20が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、光重合性組成物20に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて光重合性組成物20の表面側から照射し、光重合性組成物20を硬化させ、半硬化物22とする。
【0102】
(工程(c))
工程(b)において発生した半硬化物22の表面の凹みを埋めるように、未硬化の光重合性組成物20を半硬化物22の表面に供給する。
【0103】
(工程(d))
光重合性組成物20が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、光重合性組成物20および半硬化物22に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて光重合性組成物20の表面側から照射し、光重合性組成物20および半硬化物22を硬化させ、半硬化積層物24とする。
【0104】
(工程(e))
工程(d)において発生した半硬化積層物24の表面の凹みを埋めるように、かつ得られる成型体が所望の厚さとなるように、未硬化の光重合性組成物20を半硬化積層物24の表面に供給する。
【0105】
(工程(g))
不活性ガス雰囲気下にて、光重合性組成物20および半硬化積層物24に紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量にて光重合性組成物20の表面側から照射し、光重合性組成物20および半硬化積層物24を硬化させ、硬化積層物26とする。
【0106】
(工程(h))
硬化積層物26からなる成型体とモールド10とを分離して、半円球状の凹部28(微細パターン)を表面に有する成型体1を得る。
【0107】
〔第2の実施形態〕
図6は、本発明の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法の第2の実施形態を示す工程図である。
【0108】
(工程(a))
平板状のモールド基材12の表面の中央に半球状の突起14(反転パターン)を有し、かつ表面の周縁に堰部16を有するモールド10の表面に、未硬化の光重合性組成物20を、突起14と堰部16との間の空間が完全に埋まるように供給する。
【0109】
(工程(b))
光重合性組成物20が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、光重合性組成物20に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて光重合性組成物20の表面側から照射し、光重合性組成物20を硬化させ、半硬化物22とする。
【0110】
(工程(c))
工程(b)において発生した半硬化物22の表面の凹みを埋めるように、未硬化の光重合性組成物20を半硬化物22の表面に供給する。
【0111】
(工程(d))
光重合性組成物20が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、光重合性組成物20および半硬化物22に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて光重合性組成物20の表面側から照射し、光重合性組成物20および半硬化物22を硬化させ、半硬化積層物24とする。
【0112】
(工程(e))
工程(d)において発生した半硬化積層物24の表面の凹みを埋めるように、かつ得られる成型体が所望の厚さとなるように、未硬化の光重合性組成物20を半硬化積層物24の表面に供給する。
【0113】
(工程(f))
光重合性組成物20の上に透明基板30を載置する。
【0114】
(工程(g))
光重合性組成物20および半硬化積層物24に紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量にて透明基板30側から照射し、光重合性組成物20および半硬化積層物24を硬化させ、硬化積層物26とする。
【0115】
(工程(h))
透明基板30付きの硬化積層物26からなる成型体とモールド10とを分離して、半円球状の凹部28(微細パターン)を表面に有する成型体1を得る。
【0116】
〔第3の実施形態〕
図7は、本発明の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法の第3の実施形態を示す工程図である。
【0117】
(工程(a))
平板状のモールド基材12の表面の中央に半球状の突起14(反転パターン)を有し、かつ表面の周縁に堰部16を有するモールド10の表面に、未硬化の光重合性組成物20を、突起14と堰部16との間の空間が完全に埋まるように供給する。
【0118】
(工程(b))
光重合性組成物20が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、光重合性組成物20に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて光重合性組成物20の表面側から照射し、光重合性組成物20を硬化させ、半硬化物22とする。
【0119】
(工程(c))
工程(b)において発生した半硬化物22の表面の凹みを埋めるように、かつ得られる成型体が所望の厚さとなるように、未硬化の光重合性組成物20を半硬化物22の表面に供給する。
【0120】
(工程(f))
光重合性組成物20の上に透明基板30を載置する。
【0121】
(工程(g’))
光重合性組成物20および半硬化物22に紫外線を、式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量にて透明基板30側から照射し、光重合性組成物20および半硬化物22を硬化させ、硬化積層物26とする。
【0122】
(工程(h))
(h)透明基板30付きの硬化積層物26からなる成型体とモールド10とを分離して、半円球状の凹部28(微細パターン)を表面に有する成型体1を得る。
【実施例】
【0123】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
例1〜8は調製例であり、例9〜15、例21〜33は実施例であり、例16〜20、例34は比較例である。
【0124】
(硬化収縮率)
内径0.8mmのガラスチューブに光重合性組成物の約1.5μLを注入し、光重合性組成物の両末端のメニスカス面の底部同士の幅(A)を測定した。
ついで、窒素雰囲気下にて、波長365nmの光の照度が28mW/cm、光量が420mJ/cmとなるように調整した紫外線を、ガラスチューブ内の光重合性組成物に照射し、光重合性組成物を硬化させた。硬化後の光重合性組成物の両末端のメニスカス面の底部同士の幅(B)を測定した。下式(6)から硬化収縮率(%)を算出した。
硬化収縮率=((A)−(B))/(A)×100 ・・・(6)。
【0125】
(照度および光量)
紫外線積算光量計(ウシオ電機社製、UIT―250)を用い、波長365nmの光の照度および波長365nmの光の光量を測定した。
【0126】
(硬化度合)
UV硬化樹脂用リアルタイムFT−IRシステム(サーモフィッシャーサイエンスティフィック社製)を用い、上述した手順(i)〜(x)にしたがって硬化度合Xを算出した。
【0127】
(離型性)
離型時のパターン部分を9分割し、1分割ごとに転写されずに密着した割合を5段階評価(0(密着せず)〜4(完全密着))し、その割合によって離型性が良好かどうか判断した。つまり、各分割の評価が、それぞれ0、0、1、0、3、0、2、0、1の場合は、(0+0+1+0+3+0+2+0+1)/36×100=19%と算出される。割合が10%以下の場合を離型性良好と判断した。
【0128】
(形状および外観)
モールドおよび成型体の形状を、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK−9500)にて測定し、その形状の深さの差異が3%以上を×、3〜1%を△、1%未満を○とし、1%未満の○を転写精度良好と判断した。
また、研究用システム顕微鏡(オリンパス社製、BX51)にて成型体の外観を観察し、皺や転写不良の有無を確認した。
【0129】
(密着性)
成型体をアセトンに5分間浸漬した後、研究用システム顕微鏡(オリンパス社製、BX51)にて成型体の外観を観察し、層間にアセトン由来の油滴または油滴の跡がないかを確認した。
【0130】
(モールドA)
図8に示すような、フレネルレンズ形状の凸型のモールド(ステンレス製、直径9mm内に9段の溝、溝高さ:20μm、間隔:1400〜240μm、アスペクト比:最大で0.08)を用意した。
【0131】
(モールドB)
図9に示すような、非球面レンズ形状の凸型のモールド(ニッケル製、非球面レンズの高さ:10μm、非球面レンズの直径:80μm、アスペクト比:最大で0.13)を用意した。
【0132】
(モールドC)
図10に示すような、2段のピラミッド形状の凸型のモールド(銅製、ピラミッドの高さ:80μm、ピラミッドの底部の:240μm角、アスペクト比:最大で0.44)を用意した。
【0133】
(モールドD)
ライン・アンド・スペースからなるパターンと、ピラーおよびホールからなるパターンとが混載したモールド(協同インターナショナル社製、シリコン製、サイズ:20mm角、パターン寸法:0.5μmと1μmと2μmとの混載、高さ:1μm、アスペクト比:最大で2.00)を用意した。
【0134】
(モノマー(A1))
モノマー(A1−1):C=CH−C(O)O−(CH−(CF
モノマー(A1−2):CH=C(CH)−C(O)O−(CH−(CF
【0135】
モノマー(A1−3):CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CHの合成。
2Lのガラス製反応器にCFClCFClCFC(O)CFの108gおよび脱水テトラヒドロフランの500mLを入れ、0℃に冷却した。これに、窒素雰囲気下で、2モル/LのCH=CHCHMgClのテトラヒドロフラン溶液の200mLをさらに200mLの脱水テトラヒドロフランで希釈したものを、約5.5時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃で30分間撹拌し、室温で17時間撹拌した後、2モル/Lの塩酸の200mLを滴下した。さらに、水の200mLおよびジエチルエーテルの300mLを加え、分液し、ジエチルエーテル層を有機層として得た。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過し、粗液を得た。粗液をエバポレーターで濃縮し、ついで減圧蒸留して、85gのCFClCFClCFC(CF)(OH)CHCH=CH(60〜66℃/0.7kPa)を得た。
【0136】
ついで、500mLのガラス製反応器に亜鉛の81gおよびジオキサンの170mLを入れ、ヨウ素で亜鉛の活性化を行った。その後、100℃に加熱し、前記CFClCFClCFC(CF)(OH)CHCH=CHの84gをジオキサンの50mLで希釈したものを1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で40時間撹拌した。反応液をろ過し、少量のジオキサンで洗浄した。ろ液を減圧蒸留し、30gのモノマー(A1−3)(36〜37℃/1kPa)を得た。
【0137】
以下に、H−NMRおよび19F−NMRのデータを示す。
H−NMR(399.8MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):2.74(d,J=7.3,2H),3.54(boad s,1H),5.34(m,2H),5.86(m,1H)。
19F−NMR(376.2MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−75.7(m,3F),−92.2(m,1F),−106.57(m,1F),−112.6(m,2F),−183.5(m,1F)。
【0138】
(モノマー(A2))
モノマー(A2−1):下式(A2−1)で表される化合物(出光興産社製)。
【0139】
【化1】

【0140】
(モノマー(A3))
モノマー(A3−1):CH=CHC(O)O(CHCHO)C(O)CH=CH
モノマー(A3−2):下式(A3−2)で表される化合物(ただし、nは1〜2の整数である)。
【0141】
【化2】

【0142】
モノマー(A3−3):[CH=CHC(O)O(CHCHO)CHCCHCH(ただし、nは2〜3の数値である)。
モノマー(A3−4):[CH=C(CH)C(O)OCHC(CH
【0143】
(含フッ素界面活性剤(B))
含フッ素界面活性剤(B−1):ノニオン系含フッ素界面活性剤、セイミケミカル社製、サーフロンS−393。
【0144】
(光重合開始剤(C))
光重合開始剤(C−1):チバ・ガイギー・スペシャリティー社製、イルガキュア651。
【0145】
(プライマー溶液)
バイヤル容器(内容積:13mL)に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−503)の1gを入れ、これに、キシレンの9gおよび酢酸の0.1gを加えてよく混合し、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルターにてろ過することによってプライマー溶液を得た。
【0146】
(基板)
石英ウェハ:厚さ0.7mm。
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルム:東レ社製、ルミラーU34。
【0147】
(光源)
光源1:ウシオ電機社製、SP−9。
光源2:ジャテック社製、J−Cure1500。
【0148】
(光重合性組成物の調製)
〔例1〕
バイヤル容器(内容積13mL)に、モノマー(A1−1)の0.88g、含フッ素界面活性剤(B−1)の0.02g、モノマー(A2−1)の1.42g、モノマー(A3−1)の0.76g、モノマー(A3−3)の0.76gを加え、ついで光重合開始剤(C−1)の0.16gを混合し、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルターにてろ過して、光重合性組成物1を得た。
【0149】
〔例2〜8〕
表1に示す割合にしたがい、例1と同様にして、モノマー、含フッ素界面活性剤、および光重合開始剤を混合し、ついで、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルターにてろ過して、光重合性組成物2〜8を得た。
【0150】
【表1】

【0151】
(微細パターンを表面に有する成型体の製造)
〔例9〕
工程(a):
25℃にて、モールドAの表面に、光重合性組成物1の50μLを塗布した。
【0152】
工程(b):
25℃、大気下にて、光源1から、波長365nmの光の照度が590mW/cm、波長365nmの光の光量が11800mJ/cmとなるように紫外線を、光重合性組成物1の表面側から照射し、光重合性組成物1を半硬化させた。この時の硬化度合は83%であった。
【0153】
工程(c):
25℃にて、半硬化した光重合性組成物1の上に、光重合性組成物1の8μLを塗布した。
【0154】
工程(d):
25℃、大気下にて、光源1から、波長365nmの光の照度が590mW/cm、波長365nmの光の光量が11800mJ/cmとなるように紫外線を、光重合性組成物1の表面側から照射し、光重合性組成物1を半硬化させた。この時の硬化度合は84%であった。
【0155】
工程(e):
25℃にて、半硬化した光重合性組成物1の上に、光重合性組成物1の8μLを塗布した。
【0156】
工程(g):
25℃、窒素雰囲気下にて、光源1から、波長365nmの光の照度が70mW/cm、波長365nmの光の光量が2100mJ/cmとなるように紫外線を、光重合性組成物1の表面側から照射し、光重合性組成物1を完全に硬化させた。この時の硬化度合は97%であった。
【0157】
工程(h):
モールドAから光重合性組成物1が硬化して得られた硬化物を分離し、成型体を得た。密着割合は0%で離型性がよく、形状、外観および密着性も良好であった。各工程における条件を表2に示す。評価結果を表3に示す。
【0158】
〔例10〕
各工程における条件を表2に記載されたように変更する以外は、例9と同様にして成型体を得た。評価結果を表3に示す。
【0159】
【表2】

【0160】
【表3】

【0161】
〔例11〕
工程(a):
25℃にて、モールドAの表面に、光重合性組成物1の50μLを塗布した。
【0162】
工程(b):
25℃、大気下にて、光源1から、波長365nmの光の照度が590mW/cm、波長365nmの光の光量が11800mJ/cmとなるように紫外線を、光重合性組成物1の表面側から照射し、光重合性組成物1を半硬化させた。この時の硬化度合は83%であった。
【0163】
工程(c):
25℃にて、半硬化した光重合性組成物1の上に、光重合性組成物1の8μLを塗布した。
【0164】
工程(d):
25℃、大気中にて、光源1から、波長365nmの光の照度が590mW/cm、波長365nmの光の光量が11800mJ/cmとなるように紫外線を、光重合性組成物1の表面側から照射し、光重合性組成物1を半硬化させた。この時の硬化度合は84%であった。
【0165】
工程(e):
25℃にて、半硬化した光重合性組成物1の上に、光重合性組成物1の0.6μLを塗布した。
【0166】
工程(f):
あらかじめプライマー溶液の1mLを石英ウェハの表面に垂らし、スピンコート法にて均一に塗布し、その後120℃のホットプレートの上に10分間放置して乾燥させて、プライマー処理した石英ウェハを用意した。プライマー処理した石英ウェハを光重合性組成物1の上に載置した。
【0167】
工程(g):
25℃、窒素雰囲気下にて、光源1から、波長365nmの光の照度が70mW/cm、波長365nmの光の光量が2100mJ/cmとなるように紫外線を、石英ウェハ側から照射し、光重合性組成物1を完全に硬化させた。この時の硬化度合は97%であった。
【0168】
工程(h):
モールドAから光重合性組成物1が硬化して得られた硬化物を分離し、成型体を得た。密着割合は0%で離型性がよく、形状、外観および密着性も良好であった。各工程における条件を表4に示す。評価結果を表5に示す。
【0169】
〔例12〜31〕
各工程における条件を表4に記載されたように変更する以外は、例11と同様にして成型体を得て、評価を行った。ただし、例29では、基材として石英ウェハの代わりにPETフィルムを用いた。評価結果を表5に示す。
【0170】
【表4】

【0171】
【表5】

【0172】
〔例32〕
工程(a):
25℃にて、モールドDの表面に、光重合性組成物1の0.4μLを塗布した。
【0173】
工程(b):
25℃、大気下にて、光源2から、波長365nmの光の照度が734mW/cm、波長365nmの光の光量が631mJ/cmとなるように紫外線を、光重合性組成物1の表面側から照射し、光重合性組成物1を半硬化させた。この時の硬化度合は69%であった。
【0174】
工程(c):
25℃にて、半硬化した光重合性組成物1の上に、光重合性組成物1の0.2μLを塗布した。
【0175】
工程(f):
あらかじめ例11と同様にプライマー処理した石英ウェハを用意し、光重合性組成物1の上に載せた。
【0176】
工程(g’):
25℃、窒素雰囲気下、プレス圧:0.4MPaにて石英ウェハ側から加圧し、その状態で光源1から、波長365nmの光の照度が20mW/cm、波長365nmの光の光量が600mJ/cmとなるように紫外線を、石英ウェハ側から照射し、光重合性組成物1を完全に硬化させた。この時の硬化度合は96%であった。
【0177】
工程(m):
モールドDから光重合性組成物1が硬化して得られた硬化物を分離し、成型体を得た。密着割合は0%で離型性がよく、形状、外観および密着性も良好であった。各工程における条件を表6に示す。評価結果を表7に示す。
【0178】
〔例33〕
各工程における条件を表6に記載されたように変更する以外は、例32と同様にして成型体を得た。評価結果を表7に示す。
【0179】
【表6】

【0180】
【表7】

【0181】
〔例34〕
プライマー溶液の1mLを石英ウェハの表面に垂らし、スピンコート法にて均一に塗布し、その後120℃のホットプレートの上に10分間放置して乾燥させた。25℃にて、光重合性組成物1の0.1mLを、プライマー付きの石英ウェハの表面に垂らした後に、モールドBを、石英ウェハの表面の光重合性組成物1に押しつけて、そのまま0.5MPaでプレスした。
【0182】
ついで、25℃にて、0.5MPaの圧力をかけながら、光重合性組成物1に、光源1から、波長365nmの光の照度が28mW/cm、波長365nmの光の光量が420mJ/cmとなるように紫外線を、石英ウェハ側から照射し、光重合性組成物1を硬化させて硬化樹脂とした。
【0183】
25℃にて、モールドBを、石英ウェハの表面の硬化樹脂から分離して、モールドBの凸部が反転した凹部を表面に有する硬化樹脂が石英ウェハの表面に形成された成型体を得た。密着割合は0%で離型性はよかったが、形状の深さの差異が9%であり、外観も底部が歪な形状をしていた。密着性は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の製造方法は、光学素子(マイクロレンズ等)、反射防止部材、バイオチップ、マイクロリアクターチップ、記録メディア、触媒の担持体、半導体デバイス等、微細パターンを表面に有する成型体の製造に有用である。
【符号の説明】
【0185】
10 モールド
12 モールド基材
14 突起(反転パターン)
16 堰部
20 光重合性組成物
22 半硬化物
24 半硬化積層物
26 硬化積層物
28 凹部(微細パターン)
30 透明基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)〜(c)、工程(g’)および工程(h)を有する、微細パターンを表面に有する成型体の製造方法。
(a)光重合性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの表面に供給する工程。
(b)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、前記光重合性組成物に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し、前記光重合性組成物を硬化させ、半硬化物とする工程。
(c)光重合性組成物を、前記半硬化物の表面に供給する工程。
(g’)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接しない状態にて、前記光重合性組成物および半硬化物に紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量にて照射し、前記光重合性組成物および半硬化物を硬化させ、硬化積層物とする工程。
(h)前記硬化積層物からなる成型体と前記モールドとを分離して、微細パターンを表面に有する成型体を得る工程。
X=(S−S)/(S−S100)×100 ・・・(1)。
ただし、
は、未硬化の光重合性組成物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積Aと、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基の伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)であり、
100は、光重合性組成物に過剰の紫外線を照射して光重合性組成物を完全に硬化させた硬化物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積A100と、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基の伸縮振動のピーク面積B100との比(A100/B100)であり、
は、本工程と同じ雰囲気および照度にて、光重合性組成物に紫外線を所定の光量にて照射して光重合性組成物を硬化させた硬化物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積Aと、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基の伸縮振動のピーク面積Bとの比(A/B)である。
【請求項2】
前記工程(c)と前記工程(g’)との間に、下記の工程(f)を有する、請求項1に記載の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法。
(f)前記光重合性組成物の上に基板を載置する工程。
【請求項3】
下記の工程(a)〜(e)、工程(g)および工程(h)を有する、微細パターンを表面に有する成型体の製造方法。
(a)光重合性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの表面に供給する工程。
(b)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、前記光重合性組成物に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し、前記光重合性組成物を硬化させ、半硬化物とする工程。
(c)光重合性組成物を、前記半硬化物の表面に供給する工程。
(d)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接した状態にて、前記光重合性組成物および半硬化物に、波長365nmの光の照度が300mW/cm以上の紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが30〜90%となる光量にて照射し、前記光重合性組成物および半硬化物を硬化させ、半硬化積層物とする工程。
(e)光重合性組成物を、前記半硬化積層物の表面に供給する工程。
(g)前記光重合性組成物が酸素を含む雰囲気に接しない状態にて、前記光重合性組成物および半硬化積層物に紫外線を、下式(1)にて算出される硬化度合Xが95%以上となる光量にて照射し、前記光重合性組成物および半硬化積層物を硬化させ、硬化積層物とする工程。
(h)前記硬化積層物からなる成型体と前記モールドとを分離して、微細パターンを表面に有する成型体を得る工程。
X=(S−S)/(S−S100)×100 ・・・(1)。
ただし、
は、未硬化の光重合性組成物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積Aと、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基のピーク面積Bとの比(A/B)であり、
100は、光重合性組成物に過剰の紫外線を照射して光重合性組成物を完全に硬化させた硬化物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積A100と、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基のピーク面積B100との比(A100/B100)であり、
は、本工程と同じ雰囲気および照度にて、光重合性組成物に紫外線を所定の光量にて照射して光重合性組成物を硬化させた硬化物の赤外吸収スペクトルにおける、炭素−炭素不飽和二重結合のC=C伸縮振動のピーク面積Aと、ラジカル重合反応によって影響を受けない特定の官能基のピーク面積Bとの比(A/B)である。
【請求項4】
前記工程(e)と前記工程(g)との間に、下記の工程(f)を有する、請求項3に記載の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法。
(f)前記光重合性組成物の上に基板を載置する工程。
【請求項5】
前記光重合性組成物が、炭素−炭素不飽和二重結合を1つ以上有するモノマー(A)を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法。
【請求項6】
前記モノマー(A)が、フッ素原子を有し、かつ炭素−炭素不飽和二重結合を1つ以上有するモノマー(A1)を含む、請求項5に記載の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法。
【請求項7】
前記光重合性組成物が、さらに含フッ素界面活性剤(B)を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法。
【請求項8】
前記反転パターンのアスペクト比が、0.1以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法。
【請求項9】
前記モールドが、前記反転パターンを有する表面の周縁に堰部を有するものである、請求項1〜8のいずれかに記載の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の微細パターンを表面に有する成型体の製造方法によって製造された、マイクロレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−842(P2012−842A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137530(P2010−137530)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】