説明

微細ワイヤの製造方法及び微細ワイヤ

【課題】 1ナノメートルよりも細い微細ワイヤの実現を目的とするものである。
【解決手段】 複数の所定原子から成ると共に、所定の内包原子を少なくとも1つ内包する第1クラスタを核とし、当該第1クラスタと前記複数の所定原子から成る第2クラスタとを複数連結させることで微細ワイヤを成長させる、という手段を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細ワイヤの製造方法及び微細ワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンを構成原子とするシリコンナノワイヤの半導体デバイスや光デバイスへの適用が期待されている。このシリコンナノワイヤは、直径がナノメートル(nm)オーダーで、且つ、電気導電性を有する微細ワイヤ(量子細線)であり、更なる微細化が要求されている次世代の半導体デバイスや光デバイスにおける配線材としてカーボンナノチューブと共に注目されている。
例えば、下記非特許文献1には、シリコンナノワイヤの一例として、直径が1〜7ナノメートル(nm)の製作が報告されている。また、下記特許文献1にも直径がナノメートルオーダーのシリコンナノワイヤとその作製方法とが開示されている。
【非特許文献1】Small-Diameter Silicon Nanowire Surface, D. D. D. Ma et al.Science 299 (2003) 1874
【特許文献1】特開2003−142680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、現状の報告では、非特許文献1に記載された直径が1〜7ナノメートル(nm)のシリコンナノワイヤが最も細いものである。しかしながら、半導体集積回路に関する技術展望として、この1ナノメートル程度の微細ワイヤでは2015年までが限界であり、これ以降の半導体集積回路ではさらに細線化された配線材が必要である、という見方がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであり、1ナノメートルよりも細い微細ワイヤの実現を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、微細ワイヤの製造方法に係る第1の解決手段として、複数の所定原子から成ると共に、所定の内包原子を少なくとも1つ内包する第1クラスタを核とし、当該第1クラスタと前記複数の所定原子から成る第2クラスタとを複数連結させることで微細ワイヤを成長させる、という手段を採用する。
【0006】
また、本発明では、微細ワイヤの製造方法に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記内包原子は、水素(H)、ヘリウム(He)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、フッ素(F)、ネオン(Ne)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、アルゴン(Ar)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、セレン(Se)、臭素(Br)、クリプトン(Kr)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドニウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ヨウ素(I)、キセノン(Xe)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、インジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)、鉛(Pd)、ビスマス(Bi)、ポロニウム(Po)及びアスタチン(At)の中のいずれかであることを特徴とする。
【0007】
また、本発明では、微細ワイヤの製造方法に係る第3の解決手段として、上記第1または2の解決手段において、前記所定原子は、シリコン(Si)であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、微細ワイヤの製造方法に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記第1クラスタは、少なくとも1つの内包原子と、24個のシリコン(Si)原子とから成り、前記第2クラスタは、24個のシリコン(Si)原子から成ることを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、微細ワイヤの製造方法に係る第5の解決手段として、上記第1〜4いずれかの解決手段において、前記第1クラスタと前記第2クラスタとを複数連結して構成される微細ワイヤの分子モデルについて、数値計算により結合エネルギを求め、当該結合エネルギに基づいて前記微細ワイヤの結合安定性を評価し、当該結合安定性に基づいて前記内包原子を決定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明では、微細ワイヤの製造方法に係る第6の解決手段として、上記第1〜4いずれかの解決手段において、前記第1クラスタと前記第2クラスタとを複数連結して構成される微細ワイヤの分子モデルについて、数値計算により結合エネルギ及びHOMO−LUMOギャップを求め、当該結合エネルギに基づいて前記微細ワイヤの結合安定性を評価すると共に、前記HOMO−LUMOギャップに基づいて前記微細ワイヤの成長性を評価し、当該結合安定性及び成長性に基づいて前記内包原子を決定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、微細ワイヤの製造方法に係る第7の解決手段として、上記第6の解決手段において、前記HOMO−LUMOギャップが、所定の第1閾値より小さい値であるほど、前記微細ワイヤの成長性は高いと評価し、HOMO−LUMOギャップが、前記第1閾値より小さい値となるように前記内包原子を決定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明では、微細ワイヤの製造方法に係る第8の解決手段として、上記第5〜7いずれかの解決手段において、前記結合エネルギが、所定の第2閾値より小さい値であるほど、前記微細ワイヤの結合安定性は高いと評価し、結合エネルギが前記第2閾値より小さい値となるように前記内包原子を決定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明では、微細ワイヤの製造方法に係る第9の解決手段として、上記第1〜8いずれかの解決手段において、前記第1クラスタで構成されるクラスレート化合物をスパッタリングすることで、第1クラスタを所定の基板上若しくは気相内に放出した後、前記所定原子で構成されるターゲット、若しくは前記第2クラスタで構成されるクラスレート化合物のいずれかをスパッタリングし、前記所定原子、または第2クラスタのいずれかを前記所定の基板上若しくは気相内に放出することにより、前記第1クラスタを核として前記所定原子、または第2クラスタを結合させ、微細ワイヤとして成長させることを特徴とする。
【0014】
一方、本発明では、微細ワイヤに係る第1の解決手段として、上記第1〜9いずれかの解決手段を有する微細ワイヤの製造方法によって製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の所定原子から成ると共に、所定の内包原子を少なくとも1つ内包する第1クラスタを核とし、当該第1クラスタと前記複数の所定原子から成る第2クラスタとを複数連結させることで微細ワイヤを成長させる、という微細ワイヤの製造方法を採用する。これらのクラスタは、最大幅が1nm以下であるので、これらクラスタの連結により1nmよりも細い微細ワイヤを実現することができる。
【0016】
また、内包原子を変更することにより、微細ワイヤの結合安定性や成長性を変えることができるので、任意に微細ワイヤの長さを調整することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、シリコン(Si)を構成原子とするクラスタ(つまりシリコンクラスタ)に、所定の原子(内包原子)を内包したもの(以下触媒クラスタと記載する)を核、つまり触媒として用い、当該触媒クラスタにシリコンクラスタを連結することでシリコン微細ワイヤを製造する製造方法に関するものである。なお、クラスタ(あるいは原子クラスタ)は、一般的に数個から数千個の原子からなる原子の集合体を指す用語であるが、本実施形態においてもこれと同様の意味でクラスタという用語を用いる。
【0018】
図1は、本シリコン微細ワイヤを構成するシリコンクラスタAの分子構造を示す概略図である。このシリコンクラスタAは、24個のシリコン原子1から構成されたクラスタ(Si24クラスタ)であり、各シリコン原子1が互いに隣り合う3つのシリコン原子1と結合関係を持つことにより14面体を構成している。この図から分かるように、シリコンクラスタAの各面のうち、6角形の面(6員環)mは互いに平行に対峙する平行面である。なお、この6員環m以外の面は、図示するように五角形の面(5員環)である。このようなシリコンクラスタAは、最大幅が0.8nm以下である。
【0019】
図2は、本シリコン微細ワイヤを構成する触媒クラスタA1の分子構造を示す概略図である。この図に示すように、触媒クラスタA1は、上記シリコンクラスタAに内包原子Xを1つ内包した構造となる。この内包原子Xは、他のシリコン原子1との間で最も安定した状態となる位置に結合している。なお、このような触媒クラスタA1は、シリコンクラスタAと同様に、最大幅が0.8nm以下である。
【0020】
図3は、1つの触媒クラスタA1にシリコンクラスタAを5つ連結して構成したシリコン微細ワイヤBの構造概略図である。6員環mを互いに突き合わせるように触媒クラスタA1及びシリコンクラスタAを連結することにより、このシリコン微細ワイヤBは、直線状のワイヤ形状となると共に、その直径は0.8nm以下となる。
【0021】
続いて、図4は、このようなシリコン微細ワイヤBの構造体としての結合安定性を示す特性図である。この特性図は、周知の第一原理分子動力学法に基づくコンピュータ・シミュレーションにより、シリコン微細ワイヤBの構造最適化、つまり物質として最も安定状態となる構造(図5参照)に修正し、このように最適化された構造を持つ分子モデルについて、内包原子Xとして様々な種類、具体的には、水素(H)、ヘリウム(He)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、フッ素(F)、ネオン(Ne)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、アルゴン(Ar)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、セレン(Se)、臭素(Br)、クリプトン(Kr)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドニウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ヨウ素(I)、キセノン(Xe)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、インジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)、鉛(Pd)、ビスマス(Bi)、ポロニウム(Po)及びアスタチン(At)を各々選択した場合の結合エネルギを求めたものである。なお、この図4において、横軸は内包原子Xの原子番号、縦軸は結合エネルギを示す。
【0022】
図4において、閾値L1は、シリコン微細ワイヤBを構成する触媒クラスタA1に替えてシリコンクラスタAを連結した場合、すなわち、内包原子Xを用いない場合の結合エネルギ(−4.463eV/atom)である。この閾値L1より結合エネルギが小さい程(絶対値としては大きい)、結合安定性は高い、つまりシリコン原子1が結合しやすいので、上記閾値L1より小さな結合エネルギとなる内包原子Xを選択することにより、シリコン微細ワイヤBを効率良く成長させることができる。すなわち、このような内包原子Xを内包する触媒クラスタA1を触媒として用いることで、当該触媒クラスタA1にシリコン原子1を効率良く結合させて成長させることが可能であり、構造的に安定したシリコン微細ワイヤBを製造することができる。このように結合エネルギを求めることで、結合安定性を評価することができる。
【0023】
また、このようなコンピュータ・シミュレーションから、シリコン微細ワイヤBは、6員環mを互いに突き合わせる構造が最も安定しているという結果が得られており、触媒クラスタA1は、図3及び図5に示すような直線状の構造に成るように成長していくことが計算上確認されている。
【0024】
以上のコンピュータ・シミュレーション結果から、どのような内包原子Xを内包する触媒クラスタA1を用いれば効率良く且つ構造的に安定したシリコン微細ワイヤBを製造することができるのかがわかった。では、このようなシリコン微細ワイヤBの長さを、どの程度まで成長させることができるのか、つまりシリコン微細ワイヤBの成長性の評価方法について以下説明する。
【0025】
図6は、シリコン微細ワイヤBのHOMO−LUMOギャップを示す特性図である。ここで、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)は、物質としての求電子的反応を示す指標であり、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)は、物質としての求核的反応を示す指標である。HOMO−LUMOギャップとは、上記HOMO値とLUMO値との差であり、物質としての反応性を示す指標となるものである。この特性図は、第一原理分子動力学法に基づくコンピュータ・シミュレーションにより、構造最適化後のシリコン微細ワイヤBの分子モデルについて、図4と同様に内包原子Xとして様々な種類を各々選択した場合のHOMO−LUMOギャップを求めたものである。なお、この図6において、横軸は内包原子Xの原子番号、縦軸はHOMO−LUMOギャップを示す。
【0026】
図6において、閾値L2は、シリコン微細ワイヤBを構成する触媒クラスタA1に替えてシリコンクラスタAを連結した場合、すなわち、内包原子Xを用いない場合のHOMO−LUMOギャップ(0.13eV)である。HOMO−LUMOギャップが小さい程、反応性が高いので、この閾値L2より小さいHOMO−LUMOギャップとなる内包原子Xを用いた場合、内包原子Xを用いない場合と比較して反応性が高く、その結果シリコン原子1と結合し易くなり、より長くシリコン微細ワイヤBは成長することになる。つまり、閾値L2より小さいHOMO−LUMOギャップとなる内包原子Xを内包する触媒クラスタA1を触媒として用いることで、より長くシリコン微細ワイヤBを成長させることができる。一方、閾値L2より大きいHOMO−LUMOギャップとなる内包原子Xを内包する触媒クラスタA1を触媒として用いた場合、内包原子Xを用いない場合と比較して反応性が低い、つまり成長性が低く、ある程度成長すると安定状態になるため、長く成長させることはできない。このように、図6からシリコン微細ワイヤBの成長性の評価を行うことができると共に、この成長性の評価に基づいて内包原子Xを選択することで、シリコン微細ワイヤBの長さを任意に調整することも可能となる。
【0027】
以上のように、結合安定性の評価及び成長性の評価に基づいて、シリコン微細ワイヤの用途に応じた最適な内包原子Xを決定し、当該内包原子Xを内包した触媒クラスタA1を触媒として用いることによって、所望のシリコン微細ワイヤBを製造することができる。以下では、このようなシリコン微細ワイヤBの具体的な製造方法について、図7を用いて説明する。
【0028】
図7は、シリコン微細ワイヤBを製造するためのスパッタリング装置の概略図である。まず、真空チャンバ10内に、上述した評価方法によって決定された内包原子Xを内包する触媒クラスタA1で構成されるクラスレート化合物をターゲット11として設置し、当該ターゲット11をスパッタリングすることにより、上記触媒クラスタA1をシリコン基板12上に放出する。続いて、シリコン原子で構成されるターゲット11(シリコンターゲット)に変更し、当該シリコンターゲットをスパッタリングすることにより、シリコン原子をシリコン基板12上に放出する。これにより、触媒クラスタA1にシリコン原子がシリコンクラスタAの形態で順次結合していき、シリコン微細ワイヤBとして成長する。このような製造方法により、シリコン微細ワイヤBを製造することができる。また、シリコンクラスタAで構成されるクラスレート化合物をターゲット11として設置して、スパッタリングすることによりシリコンクラスタAを触媒クラスタA1に結合・成長させても良い。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、シリコン(Si)で構成された触媒クラスタA1及びシリコンクラスタAが連結したシリコン微細ワイヤBについて説明したが、これらクラスタの構成原子はシリコンに限定されない。
【0030】
(2)上記実施形態では、シリコン微細ワイヤBを構成する全てのクラスタがシリコンを構成原子としているが、本発明はこれに限定されない。構成原子が異なるクラスタを連結して微細ワイヤを構成しても良い。スパッタリングにおけるターゲット11を交換することにより異なる構成原子を連結・成長させて微細ワイヤを製造することができる。
【0031】
(3)また、上記実施形態では、24個のシリコン原子1から構成されたSi24クラスタを用いた。これは互いに平行に対峙する6員環mが平行面であり、この平行面を突合せ面として触媒クラスタA1及びシリコンクラスタAを連結することにより直線状のシリコン微細ワイヤBを構成することができるからである。しかしながら、このような平行面を有しないシリコンクラスタ、例えば20個のシリコン原子からなるSi20クラスタや28個のシリコン原子からなるSi28クラスタを連結することによってもシリコン微細ワイヤを構成することが可能である。但し、この場合のシリコン微細ワイヤは湾曲したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係わるシリコン微細ワイヤBを構成するシリコンクラスタAの分子構造概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わるシリコン微細ワイヤBの構成する触媒クラスタA1の分子構造概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係わるシリコン微細ワイヤBの分子構造概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係わるシリコン微細ワイヤBの結合エネルギを示す特性図である。
【図5】本発明の一実施形態に係わるシリコン微細ワイヤBの構造最適化後の分子構造概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係わるシリコン微細ワイヤBのHOMO−LUMOギャップを示す特性図である。
【図7】本発明の一実施形態に係わるシリコン微細ワイヤBを製造するための製造装置(スパッタリング装置)の概略図である。
【符号の説明】
【0033】
A…シリコンクラスタ、A1…触媒クラスタ、B…シリコン微細ワイヤ、1…シリコン原子、m…6員環






【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の所定原子から成ると共に、所定の内包原子を少なくとも1つ内包する第1クラスタを核とし、当該第1クラスタと前記複数の所定原子から成る第2クラスタとを複数連結させることで微細ワイヤを成長させることを特徴とする微細ワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記内包原子は、水素(H)、ヘリウム(He)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、フッ素(F)、ネオン(Ne)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、アルゴン(Ar)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、セレン(Se)、臭素(Br)、クリプトン(Kr)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドニウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ヨウ素(I)、キセノン(Xe)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、インジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、タリウム(Tl)、鉛(Pd)、ビスマス(Bi)、ポロニウム(Po)及びアスタチン(At)の中のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の微細ワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記所定原子は、シリコン(Si)であることを特徴とする請求項1または2記載の微細ワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記第1クラスタは、少なくとも1つの内包原子と、24個のシリコン(Si)原子とから成り、前記第2クラスタは、24個のシリコン(Si)原子から成ることを特徴とする請求項3記載の微細ワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記第1クラスタと前記第2クラスタとを複数連結して構成される微細ワイヤの分子モデルについて、数値計算により結合エネルギを求め、当該結合エネルギに基づいて前記微細ワイヤの結合安定性を評価し、当該結合安定性に基づいて前記内包原子を決定することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の微細ワイヤの製造方法。
【請求項6】
前記第1クラスタと前記第2クラスタとを複数連結して構成される微細ワイヤの分子モデルについて、数値計算により結合エネルギ及びHOMO−LUMOギャップを求め、当該結合エネルギに基づいて前記微細ワイヤの結合安定性を評価すると共に、前記HOMO−LUMOギャップに基づいて前記微細ワイヤの成長性を評価し、当該結合安定性及び成長性に基づいて前記内包原子を決定することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の微細ワイヤの製造方法。
【請求項7】
前記HOMO−LUMOギャップが、所定の第1閾値より小さい値であるほど、前記微細ワイヤの成長性は高いと評価し、HOMO−LUMOギャップが、前記第1閾値より小さい値となるように前記内包原子を決定することを特徴とする請求項6記載の微細ワイヤの製造方法。
【請求項8】
前記結合エネルギが、所定の第2閾値より小さい値であるほど、前記微細ワイヤの結合安定性は高いと評価し、結合エネルギが前記第2閾値より小さい値となるように前記内包原子を決定することを特徴とする請求項5〜7いずれかに記載の微細ワイヤの製造方法。
【請求項9】
前記第1クラスタで構成されるクラスレート化合物をスパッタリングすることで、第1クラスタを所定の基板上若しくは気相内に放出した後、前記所定原子で構成されるターゲット、若しくは前記第2クラスタで構成されるクラスレート化合物のいずれかをスパッタリングし、前記所定原子、または第2クラスタのいずれかを前記所定の基板上若しくは気相内に放出することにより、前記第1クラスタを核として前記所定原子、または第2クラスタを結合させ、微細ワイヤとして成長させることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の微細ワイヤの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9いずれかに記載の微細ワイヤの製造方法によって製造された微細ワイヤ。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−81087(P2007−81087A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266485(P2005−266485)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(599109515)
【Fターム(参考)】