説明

微細伝導性構造体を表面に製造する方法

本発明は、小さいミクロな伝導性構造体を表面に製造することを可能にする方法を記述している。これは、ミクロチャネルを(ホット)スタンピングおよび/またはナノスケールのインプリンティングによって製造すること、次のこのようにして作り出されたチャネルへの毛細管現象および好適な伝導性材料の後処理を用いる伝導性材料の的を絞った導入によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小さいミクロの伝導性構造体を表面に製造することを可能にする方法を開示する。本明細書中、小さいミクロの構造体は、通常、視覚補助具を用いた裸眼によってはじめて見られる構造体と理解される。これは、ナノスケールのくぼみの(ホット)スタンピングおよび/またはインプリンティングによってミクロチャネルを製造すること、次の、このようにして作り出されるくぼみへの毛細管現象の物理的効果に補助される伝導性材料の的を絞った導入、および最後に伝導性材料の好適な後処理によって達成される。
【背景技術】
【0002】
表面、特に非導電性であるかまたは導電性の低い透明物体の表面、に導電性構造体を付け、それによってそれらの光学的または機械的および物理的特性に影響を及ぼさないことへの要求がある。更に、可能であれば表面の透明度、例えば半透明および光沢、に悪影響を及ぼさずに、裸眼で見えないような構造体を表面に付けることへの要求がある。一般的に、そのような構造体は特性寸法(characteristic measurement)が25μm以下であることがわかっている。例えば、最大幅および深さが25μmのあらゆる長さのラインである。
【0003】
小さい構造体を基材に適用する様々なプリント技術がある。これらのプリント技術の一つは、様々な態様において利用可能な、いわゆるインクジェット技術である。位置合わせ可能ノズル(positionable jet)を使用して液滴または液体ジェットを基材に適用する。ここで使用されるノズルの直径が、インクジェットによって作り出されるラインの幅に影響を及ぼす主な因子である。更に、未だ議論の余地がある法則によると、ライン幅は、少なくとも使用されるノズルの直径と同じ幅であるか、たいていの場合使用されるノズルの直径よりも広い。結果として、例えば、出口開口60μmのノズルを使用する場合、幅60μm以上のラインが生じる[J.Mater.Sci.2006,41,4153;Adv.Mater.2006,18,2101]。伝導性ラインのプリント用の伝導性キャリア材料としてのカーボンナノチューブベースのインクの例が、US 2006/124028 A1に公開されている。
【0004】
従って、この開口を単純に約15〜20μmまで小さくして25μm以下の所望のライン幅を得ることが提案されている。この解決方法は、実現可能でない。というのも、直径を小さくすることは使用されるプリント物質(ワニス、インク、導体ペースト等)のレオロジー限界が支配的になり始めることを意味するからである。このことは、しばしば、プリント物質をその用途に利用できなくする。ここで起こりうる特定の複雑化要因は、プリント物質が分散粒子を含むため、ノズルブロッキング(jet blocking)に起因する。更に、レオロジー要求(決定される粘度および表面張力、並びに接触角および基材の濡れ)は、互いに独立して調節できないので、インクは、そのようなノズルでプリント可能であっても、基材にプリントされるイメージに所望される特性を示さない。
【0005】
別の商業用プリント技術、例えばオフセット印刷またはスクリーン印刷、は、一般的に、そのような微細構造体を表面に適用することができない。
【0006】
小さいミクロの構造体を作り出す別のアプローチは、好適な方法(例えばプラズマ法)を使用して、例えば作り出される構造体のネガティブ(negative)を含むマスクを使用することによって、濡れ性の異なるエリアが形成されるように基材を処理することである。このことは、例えば、水性ポリマーを使用して5μmライン幅をもたらす[Science 2000,290,2123]。同様のアプローチを使用して、幅5μm未満の構造体を作り出すことが可能であった。しかしながら、これらの方法は、大きな労力を要するリソグラフィ段階を要求する[Nature Mater.2004,3,171]。
【0007】
US 2006/188823 A1は、追加の感光性コーティングを基材に適用するプロセスを公表している。そこでは、構造体を物理的にインプリントしている。次にもたらされる構造体を、紫外光を使用して硬化している。更に、次のエッチング段階および硬化段階を提供している。しかしながら、形成される構造体を満たすために使用される伝導性材料の正確な性質は公表されていない。このプロセスは、比較的困難であり、多くの処理段階のために大きな労力を要する。
【0008】
伝導性構造体を作り出さずに小さい構造体を、特にポリマー上に、作り出すための、機械的手段のみを使用するシンプルな方法は、(ホット)スタンピングまたはナノスケールのインプリンティングを使用する。基本的に、これは、圧力を使用して基材上にダイをプレスし、このようにして表面にダイの構造体のネガティブのキャストを達成することを伴う。特に、ポリマーのガラス転移温度よりも高いダイを用いるポリマー基材のホットスタンピングが直径25nmの構造体を作り出すためにここで既に使用されている。上記リソグラフィの方法とは対照的に、スタンピング法において使用されるステンシル(マスターともいう。)は常に完全なままで再使用可能である[Appl.Phys.Lett.1995,67,3114;Adv.Mater.2000,12,189;Appl.Phys.Lett.2002,81,1955]。
【0009】
得られる構造体から伝導性構造体のみを得るために、これらを好適な材料で満たさなければならない。このアプローチに関して、ブレード法およびワイピング法が主に好適である。そのような方法は、例えばWO 1999 45375 A1で知られている。このアレンジメントにおいて、過剰の材料であって、この構造体を満たす材料、を基材に適用し、この材料がとどまらなければならない構造体に分配し、一方、残りの基材はワイピング技術を使用してこの材料を十分に取り除く。この方法の欠点は、充填材料の潜在的な高い損失以外に、この材料が満たされない場所において基材を完全に充填材料の残留物なしにすることを確実にすることが非常に困難であることである。プロセスがUS 6911385 B1に公表されており、ここでは連続および不連続スタンピング法が使用されている。いずれの場合においても、伝導性インクを表面に均質フィルムとして適用し、次に表面が伝導性であってはならない場所から材料をスタンピングによって除去している。代わりのプロセスが公表されており、ここでは、多孔性スタンピングパターン(ダイ)の開口を通じて伝導性インクが適用され、これは基材に残る。インクを適用するときにダイが基材に直接接触する場所において、インクは適用されず、従って、所望の構造体が達成される
【0010】
微細な構造体は、基本的に毛細管現象を使用することによって満たされるが、その理に適った使用は、材料の浪費を避けるために充填材料を作り出される構造体に的を絞った方法で適用することを必要とする。毛細管現象によって満たされる小さい構造体(またはチューブ、J.Colloid Interface Sci.1995,172,278参照。)は、特に液体プレポリマー(例えば、ポリメチルアクリレート;J.Phys.Chem.B 1997,101,855)、または生体分子の水溶液、例えばマイクロ流体成分中のDNA、を用いて、既に記述されている(ChemPhysChem 2003,4,1291)。しかしながら、そのような構造体を後で伝導性にされる材料で満たすことはまだ公表されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、ヒトの裸眼の最小可知差違以下(すなわち25μm以下)であり、成分の特性に他の影響を及ぼさない伝導性構造体を表面に作り出すことである。そのようにして、上記既知のプロセスの別の欠点を避けるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的に関して、基材表面へのくぼみのスタンピングと、次の連続伝導パスを形成するためのナノ粒子の焼結を伴う伝導性ナノ粒子を含むインク配合物の使用と、の組み合わせが使用されうることがわかった。図1は、この手順を簡単に説明している。
【0013】
本発明は、2つの次元における寸法が25μmを超えない導電性構造体の、成形可能表面を有する基材上における製造方法であって、機械的および要すれば追加の熱的効果によってチャネルを基材表面に作り出し、前記チャネルは好ましくは1つの次元において寸法が25μmを超えず(例えば、チャネルの基底の幅は25μm未満である。)、インク、好ましくは伝導性粒子のサスペンジョン、をチャネルに適用し、それによって前記インク伝導性構造体を作り出し、毛細管現象を使用してチャネルをインクで満たし、かつ、エネルギーを導入することによって、特に熱処理によってインクを伝導性構造体に転化することによる方法に関する。
【0014】
本発明は、上記新規の方法によって得られる基材であって、2つの次元において25μmを超えない寸法を有する構造体を示す基材にも関する。
【0015】
最初に、ダイの構造体のネガティブを基材の表面にスタンプするために、それぞれ浮出ミクロ構造体(ポジティブ)を備えるプレスダイまたはプレスローラーを好ましくは基材、好ましくはポリマー基材、に押しつける。ポリマー基材を使用する場合、ダイまたはプレスローラーは、好ましくは少なくともここで使用されるポリマー基材のガラス転移点の温度を有する。ダイローラーまたはプレスローラー温度が少なくともガラス転移温度の20℃上であることが特に好ましい。ダイまたはプレスローラーがその表面に、1つの次元の寸法が25μm以下、好ましくは25μm〜100nm、特に好ましくは10μm〜100nm、最も特に好ましくは1μm〜100nmである小さい構造体を示すことが更に好ましい。ダイを基材にプレスする継続時間は、特に1〜60分、好ましくは2〜5分であるべきであり、特に好ましくは3〜4分間プレスする。一方、プレスローラーの使用は、より大きな圧力が使用されるので、より短いプレス時間を要求する。スタンプ構造体の作成は、このアレンジメントで連続的に行われる。
【0016】
この手順において、基材のローラーに対する相対速度は、10〜0.00001m/秒、好ましくは1〜0.0001m/秒、特に好ましくは0.1〜0.0001m/秒である。
【0017】
しかしながら、プレスの圧力、温度および継続時間のパラメータは、高い温度または高い圧力において、プレス時間が減るように相関する。結果として、本明細書中で提示する方法を用いて、相応じて短い時間および従って高いコンポネント処理量が可能である。更に、比較的低いダイまたはローラー温度であっても、高い圧力および短い継続時間を使用して所望の結果を示す方法があり得る。
【0018】
従って、ローラーを基材にプレスし、一方、基材をこのローラーの下で引っ張り、それによってローラーが回転するか、またはローラーを駆動し、そのようにして基材をプッシュし、チャネルを基材にスタンピングすることが好ましい。
【0019】
このようにして製造されるチャネルを次にインクで満たし、これによって伝導性構造体を作り出す。最もシンプルな場合、インクは、溶媒またはサスペンジョン液と導電性材料または導電性材料の前駆化合物とからなる。
【0020】
インクは、例えば、導電性ポリマー、金属もしくは金属酸化物、カーボン粒子または半導体を含みうる。溶媒、例えば水、中に分散された伝導性材料、特にカーボンナノチューブおよび/または金属粒子、のナノ粒子を含むインクが好ましく、前記ナノ粒子は、焼結によって連続的伝導性構造体をもたらす。インクが水中の銀のナノ粒子を含むことが特に好ましい。水中の銀のナノ粒子は銀粒子を焼結することによって連続的伝導性構造体をもたらす。好適な金属酸化物は、例えば、インジウム錫酸化物、フッ素錫酸化物(fluorine tin oxide)、アンチモン錫酸化物、亜鉛アルミニウム酸化物(zinc aluminum oxide)である。半導体は、例えば、亜セレン酸亜鉛、亜テルル酸亜鉛、硫化亜鉛、亜セレン酸カドミウム、亜テルル酸カドミウム、硫化カドミウム、亜セレン酸鉛、硫化鉛、亜テルル酸鉛および亜ヒ酸インジウムを包含する。更に、改良された毛細管現象の利用のために、新規の方法で好ましく使用されるインクは基材を最適に濡らさなければならない。すなわち、基材上で60°を超えない、好ましくは30°を超えないできるだけ低い接触角および20N/mを超え、好ましくは40N/mを超え、特に好ましくは50N/mを超えるできるだけ高い表面張力を形成する。インクが上記のようにナノ粒子を含む場合、これらは特に1μmよりも小さく、好ましくは100nmよりも小さいべきである。80nmよりも小さく、特に60nmよりも小さく、かつ、二峰性の粒度分布を示すナノ粒子が特に好ましい。
【0021】
次にこのインクを上記のように作り出されるチャネルに添加する。個々の液滴をチャネルに添加することが好ましい。プレッシャーノズル(pressure jet)をチャネル上に正確に配置し、個々の液滴をチャネルに噴出するプレッシャーヘッド(pressure head)を備えるインクプリンタが添加に特に好ましい。
【0022】
新規の方法を使用して好ましいバリエーションで基材のチャネルの最大長をインクで満たすために、チャネルに数回添加することが必要である。従って、インクをチャネルに沿って規則的な間隔で数回添加することが好ましい。代わりに、インクを好ましく使用されるインクジェットプリンタによってプレッシャーヘッドの下を通る基材に連続的に添加してもよい。このことは、好ましくは基材上のチャネルのタイプおよび形状に依存して好適な間隔で起こる。例えば、連続インクストリームを基材の通過方向に沿って配向した連続ラインで適用してもよい。不連続ラインの場合、例えば、途切れの間添加を停止してもよい。この場合、用語、不連続ラインは、基材の通過方向に対して平行に引かれないライン、例えば、通過方向に対して直角に引かれるライン、とも理解されうる。このために、プレッシャーノズルを互いに近接する規則的な間隔で提供して一回の通行で全てのチャネル構造体を満たしてもよい。
【0023】
好ましいバリエーションにおいて、可動プレッシャーヘッドであって、その下の基材の相対移動中にスタンプチャネル構造体をたどる可動プレッシャーヘッドが提供される。例えば、カーブした、好ましくは波形の、チャネルが基材の方向に沿ってスタンプされている場合に当てはまる。プレッシャーヘッドが基材の通過方向に対して直角に動く場合、プレッシャーヘッドの後者に対して相対的な基材に対する垂直方向の振動が波動運動をもたらす。このようにして、波形構造体が連続的にインクで満たされる。特に不連続構造体で、これは、プレッシャーヘッドが基材の通過方向を短時間たどるアセンブリに拡張されうる。このことは、2つの次元における運動を可能にするプレッシャーヘッドデバイスが提供されることを意味する。
【0024】
本発明による方法において使用される基材は、成形可能面を有する基材、例えばガラス、セラミックまたはポリマー、特に透明ポリマーである。これらの基材は電気絶縁体である。しかしながら、基材からもたらされるコンポネントが少なくともある位置において伝導性を備えることが望ましい。
【0025】
ポリマー材料は、しばしば、多くの分野の用途においてそれを好ましい材料にする特別な特性を有する。これは、例えば、比較的高い可撓性、無機材料と比較して同一かまたは類似の負荷容量と共にしばしば低い密度およびこれらの材料の容易な成形性に起因する広いデザイン自由度を含む。いくつかの材料(例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびいくつかのPVCタイプ)は同時に別の特別な特性、例えば光透過性、を示す。この新規な方法で使用される好ましいポリマーは、透明であり、かつ/または、それらはガラス転移温度が高い。ガラス転移温度が高いポリマーは、ガラス転移温度が100℃を超えるポリマーを云う。新規の方法で使用される特に好ましいポリマーは、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレートまたはポリエチレンテレフタレートから選択される。
【0026】
上記段階によると、作り出されるチャネルにおいてインクを形成し、このインクから所望の伝導性を有する構造体を好適な後処理によって作り出す。
【0027】
本発明によると、この後処理は、インクが満たされた作り出されたチャネルへのエネルギーの入力を包含する。溶媒中の伝導性ポリマーサスペンジョンを含むインクの好ましい使用の場合、溶媒中のサスペンジョンで存在するポリマー粒子は、例えばサスペンジョンを基材上で加熱することによって、溶媒が蒸発しながら、互いに融合する。後処理段階は、好ましくは、伝導性ポリマーの溶融温度において、特に好ましくは溶融温度よりも高い温度において、行われる。このことは、連続導体パスをもたらす。
【0028】
代わりの、カーボンナノチューブを含むインクの好ましい使用の場合、伝導性カーボンで作られた連続パーコレートパス(percolating path)を得るために、存在する分散カーボン粒子間の溶媒を基材表面の熱による後処理によって蒸発させる。処理段階は、インクに含まれる溶媒の蒸発温度範囲、好ましくは溶媒の蒸発温度よりも高い温度、において行われる。パーコレーション限界に達すると、本発明による導体パスが形成される。
【0029】
上記のように溶媒中の金属ナノ粒子のサスペンジョンをこの方法の別の好ましいバリエーションで使用する場合、後処理は、このコンポネント全体または導体パスだけを、金属粒子が互いに焼結し、溶媒が少なくとも部分的に蒸発する温度に加熱することからなる。このアレンジメントにおいて、焼結温度がナノスケールの粒子の粒度に比例し、小さい粒子に必要とされる焼結温度は大きい粒子に必要とされる焼結温度よりも小さいので、できるだけ粒径が小さい金属粒子が有利である。このアレンジメントにおいて、基材を熱的効果から保護するために、溶媒の沸点を、粒子の焼結温度にできるだけ近く、かつ、できるだけ低くする。使用される好ましいインク溶媒は、沸点250℃未満、特に好ましくは200℃未満、特別には100℃以下の溶媒である。ここで挙げる全ての温度は、圧力1013hPaにおける沸点をいう。特に好ましい溶媒は、炭素原子12個以下のn−アルカン、炭素原子4個以下のアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール、炭素原子5個以下のケトンおよびアルデヒド、例えばアセトンおよびプロパナール、水、並びにアセトニトリル、ジメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−ピロリドン(NMP)およびテトラヒドロフランである。焼結段階は、所定の温度において、連続導体パスが形成されるまで行われる。焼結に好ましい継続時間は、1分〜24時間、特に好ましくは5分〜8時間、より特に好ましくは2〜8時間である。
【0030】
本発明は、更に、1つの次元の寸法が25μmを超えず、好ましくは20μm〜100nm、特に好ましくは10μm〜100nm、より特に好ましくは1μm〜100nmの伝導性構造体を表面に示す基材を製造するための、伝導性構造体を作り出すインクの使用、であって、インクが好ましくは上記のような伝導性粒子のサスペンジョンであり、基材が好ましくは上記のように透明、例えばガラス、透明セラミックまたは透明ポリマー、であるものにも関する。
【0031】
本発明の別の特徴および利点が、添付の図面に示される以下の態様の説明からわかる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、A)上に配置されるプレスダイを基材にプレスする工程、B)プレスダイを上げる工程、C)基材に形成されるチャネルにインクを適用する工程、および、D)インク材料をチャネル中で焼結する工程で、プレスダイを用いる本発明による方法の工程を示す図である。
【図2】図2は、スタンプチャネルを有するポリスチレンシートの断面のマイクロ写真である。
【図3】図3は、焼結銀導体を有するポリスチレンシートの断面の拡大図である。
【実施例】
【0033】
実施例1
グリッド構造体(MASTER)をガラス転移温度Tg100℃のポリスチレン基材(N5000,Shell AG)にプレスすることによってポリマー基材上にチャネルのグリッドを製造した。この目的のために、MASTERを180℃に加熱し、小型プレス(Tribotrak,DACA Instruments,米国カリフォルニア州サンタバーバラ)を用いて基材に3kgの負荷で3分間プレスした。MASTERは、42μmのライン間隔を示し、MASTERにおけるくぼみは、断面で見ると、逆立ちしたカットオフトライアングル(cut−off triangles)のように見えた(図2)。MASTERにおける隆起は、高さ20μmを示し、更に、断面で見るとカットオフトライアングルである。MASTERにおける隆起の基底幅は32μmであり、隆起のピークの幅は約4.5μmであった。
【0034】
銀ナノインク(NanopasteTM,ハリマ化成株式会社,日本)の1つの液滴を上記のように製造したラインの1つに配置した。このインクは、テトラデカン中の平均径約5nmの銀ナノ粒子の分散体からなる。毛細管現象のために、インクのラインがチャネルに速やかに形成する。長さ約4mmの均一なラインを維持することが可能であった。インクジェットシステム(AutodropTMシステム;Microdrop Technologies,ドイツ国ノルダーシュテット)を用いてインク液滴の正確な位置合わせを達成した。このシステムは68μmのノズルヘッドを備えていた。もたらされる銀のラインの最大幅は、図3からわかるように、完全な高さで約6.3μmであった。最も狭い位置で幅約3.7μmであった(図3の基底参照。)。次に、基材を200℃において1.5時間調質し(temper)、インクを焼結銀からなる連続ラインに転化した。基底における窪みの幅(3.7μm)とMASTERプロファイルの対応する上縁の幅(4.5μm)との間のずれは、インク溶媒の影響下における基材の膨潤およびスタンピング中の基材の加熱によって説明できる。2.5Ωの抵抗が6mmの4本の平行ラインにおいて測定された。
【0035】
実施例2
ガラス転移温度Tg205℃のポリカーボネートフィルム(Bayfol(登録商標),Bayer MaterialScience AG)であって、270℃に加熱されたものにグリッドをプレスすることによってチャネルのグリッドを作り出した。他の全てのスタンピングパラメータは実施例1に相当した。実施例1と同じ方法で、伝導性ラインを作り出した。達せられたライン幅および導電性銀導体パスの長さは、実施例1において作り出されるパスのそれらと同じであった。
【0036】
実施例3
方法は実施例1と同じであったが、プレスダイを用いるスタンピング法の代わりにプレスローラーを使用した。
【0037】
小型プレス(Tribotrak,DACA Instruments,米国カリフォルニア州サンタバーバラ)上に載置されたローラーを用いて厚さ10mmのポリカーボネート基材(Makrolon,Bayer,ドイツ国,ガラス転移温度148℃)上に連続構造体を作り出した。小型プレス上に載置された特別に仕上げられたローラーは、幅10μmかつ間隔3mmの浮出ライン状構造体を有していた。このアレンジメントにおいて、基材の表面を60℃に加熱し、ローラーの温度は155℃であった。プレスの圧力を、上述のアセンブリにおいて10kgの重しを用いてセットした。セットされる温度および使用される圧力に対してローラーから基材への相対駆動速度0.25mm/秒を選択した。このアレンジメントにおいて、上記相対速度を達成するために、基材をスライドによってローラーの下に沿って引っ張った。圧力はローラーが基材上で回転するのに十分であった。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形可能面を有する特に光学的に透明な基材上に2つの次元において寸法が25μm以下の導電性構造体を製造する方法であって、
ii) 機械的および要すれば追加の熱的効果によってチャネルを基材表面に作り出す工程、
iii) 伝導性構造体が作り出されることを可能にするインクを該チャネルに適用する工程、
iv) 毛細管現象によって該チャネルにインクを満たす工程、
v) エネルギーを導入することによってインクを伝導性構造体に転化する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
該インクが溶媒中の導電性材料または導電性材料の前駆化合物の粒子のサスペンジョンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カーボンナノチューブ、導電性ポリマーまたは金属ナノ粒子からの少なくとも1種類の薬品、特に銀ナノ粒子、を導電性材料または導電性材料の前駆化合物として該インクに使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該伝導性粒子の直径が1μm未満であることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ベース上の該チャネルの幅が25μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該チャネルが要すれば加熱されているプレスダイまたはプレスローラーを用いて基材の表面にスタンプされることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該基材が透明ポリマーであり、かつ、該プレスダイまたはプレスローラーの温度が特に該ポリマーのガラス転移温度よりも高く、好ましくは該ポリマーのガラス転移温度よりも少なくとも20℃高いことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該インクをインクジェットプレッシャー法によって該チャネルに導入することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって得られる、2つの次元において寸法が25μm以下の導電性構造体を備える基材。
【請求項10】
2つの次元において寸法が25μm以下である伝導性構造体を表面に示す、特に透明の基材の製造への、伝導性構造体を作り出すインクの使用。
【請求項11】
該インクが伝導性粒子のサスペンジョンである、請求項10に記載の用途。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−533939(P2010−533939A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516400(P2010−516400)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005543
【国際公開番号】WO2009/010208
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】