説明

微細構造転写装置

【課題】樹脂フィルムをマザースタンパに押圧した後、脱型する際に生じる樹脂フィルムの破損を防止することができる微細構造転写装置を提供すること。
【解決手段】表面12aに微細な凹凸パターンが形成されたマザースタンパ12と、前記マザースタンパ12の外周を着脱可能に固定する固定枠14と、前記マザースタンパの微細な凹凸パターンを有する面12a及び前記固定枠14に対向するように樹脂フィルム18を支持する支持体と、を有する微細構造転写装置において、前記マザースタンパの微細な凹凸パターンを有する面と、前記固定枠の前記樹脂フィルムに対向する面の、前記マザースタンパと前記固定枠が当接または近接する箇所の段差が、前記樹脂フィルムの厚さ未満であることを特徴とする微細構造転写装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微細構造転写装置に関し、特に、スタンパに樹脂フィルムを押圧した後、脱型する際に生じる樹脂フィルムの破損を防止することができる微細構造転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイス、ディスプレイ、電子ペーパー、記録メディア、バイオチップ、光デバイスなどの製造工程における微細な凹凸パターンを形成するための技術として、ナノインプリント技術が知られている。ナノインプリント技術は、従来のプレス技術と比較して、より微小な構造を実現するための微細加工の技術である。この技術自体には解像度に限界がなく、解像度はスタンパ(即ち金型)の作製精度によって決定される。したがって、高い精度のスタンパさえ作製できれば、従来のフォトリソグラフィーより容易に且つはるかに安価な装置を用いて、極微細構造を形成することが可能である。
【0003】
インプリント技術には転写される材料により2種類に大別される。一方は、転写される材料を加熱し、スタンパ(金型)により塑性変形させた後、冷却して凹凸パターンを形成する熱インプリント技術である。もう一方は、基板上に室温で液状の光硬化性樹脂を塗布した後、光透過性のスタンパを樹脂に押し当て、光を照射させることで基板上の樹脂を硬化させ凹凸パターンを形成する光インプリント技術である。
【0004】
インプリント技術では、パターン成形を安価に行うことができるが、マザースタンパである金型に樹脂が付着し易く、樹脂が付着した場合、そのスタンパを補修することは極めて困難である。金型が非常に高価なため、製造全体として安価とは言えない場合が多い。
【0005】
その理由から、2工程によるインプリント法が用いられている(特許文献1)。このインプリント法は、図9(a)に示すように、第1工程でマザースタンパ(金型)80の凹凸パターンが形成された表面に、加熱した熱可塑性樹脂フィルム82を押圧した後、冷却して硬化させ、マザースタンパ80の反転凹凸パターンが形成された樹脂スタンパ82aを得、次に、図9(b)に示すように、第2工程でこの樹脂スタンパ82aを、基板84上に塗布された光硬化性樹脂86に押圧して紫外線等により硬化させ、基板84上に凹凸パターン86aを得るというものである。
【0006】
即ち、2工程によるインプリント法では、第1工程において熱インプリント法により樹脂スタンパ(中間スタンパ、IPSとも呼ばれる。)を作製し、第2工程においてこの樹脂スタンパを用いる光インプリント法により基板上に所定の凹凸パターンが形成される。
【0007】
ここで、第1工程の熱インプリントに使用する微細構造転写装置として図10に示す微細構造転写装置が従来から知られている。この微細構造転写装置60は、スタンパベース72上に載置されたマザースタンパ62と、マザースタンパ62の外周を固定する固定枠64と、マザースタンパ62の微細な凹凸パターンを有する面62aに対して垂直方向に可動な可動台66と、Oリング74を介して樹脂フィルム68を支持する枠状の支持体70とを有している。
【0008】
マザースタンパ62に形成された凹凸パターンを樹脂フィルム68に転写して樹脂スタンパを得るには、まず、樹脂フィルム68をマザースタンパ62に接するように可動台66により位置調整した後、樹脂フィルム68をそのガラス転移温度以上に加熱すると共に、マザースタンパ62に押圧する。その後、樹脂フィルム68を冷却した後、可動台66を上方にリフトアップさせて樹脂フィルム68を脱型することにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−165812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この脱型時に、樹脂スタンパとなる樹脂フィルム68が破損することがあり、樹脂スタンパを効率的に生産することが難しかった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、マザースタンパに樹脂フィルムを押圧した後、脱型する際に生じる樹脂フィルムの破損を防止することができる微細構造転写装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが検討した結果、上記破損の原因は、加熱加圧時の詳細断面図である図11に示すように、マザースタンパ62と固定枠64との段差B部分に追従する樹脂フィルム68の当該箇所に応力が生じ、脱型時における亀裂の開始点となっていることが分かった。
【0013】
即ち、上記目的は、表面に微細な凹凸パターンが形成されたマザースタンパと、前記マザースタンパの外周を着脱可能に固定する固定枠と、前記マザースタンパの微細な凹凸パターンを有する面及び前記固定枠に対向するように樹脂フィルムを支持する支持体と、を有する微細構造転写装置において、前記マザースタンパの凹凸パターンを有する面と、前記固定枠の前記樹脂フィルムに対向する面の、前記マザースタンパと前記固定枠が当接または近接する箇所の段差が、前記樹脂フィルムの厚さ未満であることを特徴とする微細構造転写装置により達成される。
【0014】
マザースタンパの凹凸パターンを有する面と固定枠の樹脂フィルムに対向する面との段差を樹脂フィルムの厚さ未満とすることにより、段差による影響を受けにくくなり、脱型時にその段差のある箇所に応力が集中することが阻止され、樹脂フィルムの破損を防止することが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記樹脂フィルムの厚さが、50〜1000μmである。
(2)前記段差が、前記樹脂フィルムの厚さに対して60%以下である。
(3)前記マザースタンパの微細な凹凸パターンを有する面と、前記固定枠の前記樹脂フィルムに対向する面が面一となるように構成されている。
(4)前記固定枠の上部は、前記マザースタンパの内方に向かって突出形成され、前記マザースタンパの周縁部は、前記固定枠の突出形状に対応するように、前記マザースタンパの外方に向かって突出形成されている。
(5)前記マザースタンパの微細な凹凸パターンを有する面と、前記固定枠の前記樹脂フィルムに対向する面との境界を覆う被覆シートが更に設けられ、前記被覆シートの厚さは、前記樹脂フィルムの厚さ未満である。
固定枠とマザースタンパの境界部に生じ得る溝を被覆シートで覆うことにより、軟化した樹脂フィルムが溝に入ることを防止でき、脱型の精度をより向上させることが可能となる。
(6)前記被覆シートの厚さが、前記樹脂フィルムの厚さに対して60%以下である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱インプリントにより樹脂スタンパを作製する際、脱型時の破損や変形を防止することができるので、樹脂スタンパの製造を高効率且つ高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る微細構造転写装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】マザースタンパと固定枠との当接部の一例を示す詳細断面図である。
【図3】マザースタンパと固定枠との当接部の他の例を示す詳細断面図である。
【図4】マザースタンパと固定枠との当接部の他の例を示す詳細断面図である。
【図5】マザースタンパと固定枠との当接部の他の例を示す詳細断面図である。
【図6】マザースタンパと固定枠との境界部に被覆シートを貼付した状態の詳細断面図である。
【図7】被覆シートを設けた状態の平面図である。
【図8】段差がある場合に被覆シートを設けた状態を示す詳細断面図である。
【図9】2工程のインプリント法を示す説明図である。
【図10】従来のインプリント装置の概略断面図である。
【図11】課題の原因を示す詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る微細構造転写装置を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る微細構造転写装置の実施の形態の一例を示す概略断面図である。この微細構造転写装置10は、表面に微細な凹凸パターンが形成されたマザースタンパ12と、マザースタンパ12の外周を着脱可能に固定する固定枠14と、マザースタンパ12の凹凸パターンを有する面12a(以下、「スタンパ面12a」とも称する。)及び固定枠14に対向するように樹脂フィルム18を支持する枠状の支持体20と、スタンパ面12aに対して垂直方向(矢印方向)に可動な可動台16とを備えている。
【0019】
樹脂フィルム18はOリング24を介して支持体20に支持されており、マザースタンパ12はスタンパベース22上に載置されている。また、樹脂フィルム18の端部は可動台16上に載置されており、可動台16を上下方向に昇降させることにより、樹脂フィルム18の位置設定が行われる。
【0020】
本発明に係る微細構造転写装置10において特徴的なことは、マザースタンパのスタンパ面12aと、固定枠14の樹脂フィルムに対向する面14a(以下、「上面」とも称する。)の、マザースタンパ12と固定枠14が当接または近接する箇所の段差を、樹脂フィルム18の厚さ未満としていることである。この厚さ未満とすることにより、上記で説明したように、脱型時に段差による応力が生じることなく、樹脂フィルムの破損を防止することが可能となる。
【0021】
この段差は、使用する樹脂フィルム18の厚さに対して60%以下であることが好ましく、特に、固定枠14の上面14aとマザースタンパ12の凹凸パターンを有する面12aが面一に形成されていること、即ち、段差が実質的にないことが好ましい。
【0022】
このような構成とするため、固定枠14の上部は、マザースタンパ12の内方(中央方向)に向かって突出形成され、マザースタンパ12の周縁部は、固定枠14の上部の突出形状に対応するように、マザースタンパ12の外方に向かって突出形成されていることが好ましい。このような形状とすることにより、マザースタンパ12を強固に固定することができ、転写及び脱型の精度が向上する。
【0023】
図2は、マザースタンパ12と固定枠14との当接部の好ましい例の部分断面図である。図示のように、固定枠14の上部は、マザースタンパ12の内方に向かって突出形成された断面矩形状の突出部14bを有している。一方、マザースタンパ12の周縁部の下部は、マザースタンパ12の外方に向かって突出形成された断面矩形状の突出部12bを有している。このように、両者を対応した形状とすることにより、固定枠14の上面14aとスタンパ12のスタンパ面12aが面一に構成されると共に、マザースタンパ12が強固に固定される。
【0024】
図3は、固定枠とマザースタンパとの当接部の他の好ましい例を示す部分断面図である。固定枠14の上部は、マザースタンパ12の内方に向かって突出形成された断面三角形状の突出部14bを有している。一方、マザースタンパ12の周縁部の下部は、マザースタンパ12の外方に向かって突出形成された断面台形状の突出部12bを有している。これにより、固定枠14の上面14aとスタンパ12のスタンパ面12aが面一に構成されている。
【0025】
固定枠14の上面14aとスタンパ12のスタンパ面12aとの段差は樹脂フィルム18の厚さ未満であればよく、図4の(a)及び(b)に示すように段差があってもよい。
【0026】
また、上述したように、本発明に係る微細構造転写装置は、スタンパ面12aと、固定枠上面14aの、少なくともマザースタンパ12と固定枠14が当接または近接する箇所の段差が、フィルム厚未満であればよい。したがって、例えば、図5の(a)及び(b)に示すように、破線円で示したマザースタンパ12と固定枠14とが当接または近接する箇所以外の領域において、スタンパ面12a及び固定枠上面14aの縁部は傾斜した形状とされていてもよい。
【0027】
固定枠14の形状及びマザースタンパ12の周縁部の形状は、上述した例に限定されることはなく、上述した段差が樹脂フィルムの厚さ未満であれば、あらゆる形状を取ることが可能である。
【0028】
ここで、マザースタンパ12としては一般に、ニッケル、石英等からなるスタンパを使用することができる。耐久性の点からニッケル製のスタンパを用いることが好ましい。マザースタンパ12に形成される微細な凹凸パターンは一般に、ナノ〜マイクロメートルオーダーの凹凸パターンである。マザースタンパ12の厚さは特に限定されないが、一般に0.1〜2.0mmである。本実施の形態においてマザースタンパ12は平板状に形成されている。平面形状は用途に応じて適宜選択され、例えば矩形や円形の平面形状を有するスタンパを用いることができる。なお、マザースタンパ12のスタンパ面12aは凹凸パターンが形成されている中央領域とその周縁に位置する凹凸パターンが形成されていない周縁領域からなり、上記段差の基準となる領域はその周縁領域である。
【0029】
固定枠14は上述したようにマザースタンパ12の外周を固定するために設けられる部材であり、マザースタンパ12の交換時等必要に応じて着脱可能である。固定枠14により、転写時にマザースタンパ12が不要に移動することが防止される。固定枠14は、剛性を有する部材(例えば、SUS)等から構成される。
【0030】
樹脂フィルム18としては、熱可塑性の樹脂であればどのようなフィルムでもよく、好ましくは離型性の高いフィルムを用いることが有利である。また、作製した樹脂スタンパを光インプリントに使用する場合には、透明性に優れる樹脂を使用することが好ましい。
【0031】
具体的には、樹脂フィルムの樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0032】
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等を使用することができる。
【0033】
樹脂フィルム18の厚さは、一般に50〜1000μm、好ましくは80〜500μm、特に好ましくは100〜200μmである。また、樹脂フィルムの平面形状は特に限定されず、マザースタンパ12の形状に対応するように選択すればよい。平面の大きさはマザースタンパ12の微細な凹凸パターンが形成された領域より少なくとも大きければよい。
【0034】
本発明に係る微細構造転写装置は、図6の部分断面図に示すように、固定枠14の上面14aとマザースタンパ12のスタンパ面12aとの境界を覆う被覆シート30が設けられていることが好ましい。これにより、固定枠14とマザースタンパ12との境界部に溝32が生じる場合、即ち、固定枠14とマザースタンパ12が近接する状態の場合に、その溝32に、軟化した樹脂フィルム18が入り込むことによって起こり得る脱型時の破損を防止することができる。
【0035】
被覆シート30としては、耐熱性を有するシート、即ち、熱インプリントでの加熱温度に対して安定なシートを用いることができる。その例としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン等からなるシートが挙げられる。この中でも、機械的特性及び耐熱性に優れる点からポリイミドシートを用いることが好ましい。また、貼付して境界部を被覆できる点で、上記シートにシリコーン系粘着剤等の粘着剤を施したテープを用いることが好ましい。
【0036】
また、被覆シート30の厚さは、使用する樹脂フィルム18の厚さよりも薄いことが必要であり、好ましくは樹脂フィルム18の厚さに対して60%以下である。具体的には、200μmの厚さの樹脂フィルムを用いる場合には、120μm以下、特に1〜50μmの被覆シートを用いることが好ましい。樹脂フィルム18の厚さより厚いと脱型時に樹脂スタンパ12の破損が生じることがある。また、被覆シート30の幅は、溝32の幅よりも少なくとも長ければよい。
【0037】
図7は、マザースタンパ12と固定枠14との境界部に被覆シートを設けた状態を示す平面図である。本図において、マザースタンパ12と固定枠14の境界部は点線で示している。その境界部を覆うように被覆シート30が設けられる。
【0038】
図8は、固定枠の上面14aとマザースタンパのスタンパ面12aが面一ではなく、樹脂フィルムの厚さ未満の段差を有する場合に、被覆シート30が設けられた例を示している。この場合、固定枠の上面14aとスタンパ面12aとの段差だけでなく、スタンパ面12aと被覆シート30の端部との段差も存在し、段差が複数点存在することになるが、別の箇所の段差であるので、脱型時にこれらの段差が樹脂フィルムに重複して影響することはない。そのため、段差のある箇所に応力が集中することはなく、樹脂フィルム18の破損を防止することができる。
【0039】
本実施の形態の微細構造転写装置10は、図示しない加熱手段を有している。加熱手段は、熱インプリント法で従来から用いられている方法であればよく、例えば、図1に示すスタンパベース22内にヒータを設置して、マザースタンパ12を介して加熱する方法や、熱風を送風して加熱する方法が挙げられる。加熱温度は、樹脂フィルム18のガラス転移温度(Tg)以上の温度であればよい。具体的には、使用する樹脂フィルムによって異なるが、一般に100〜200℃である。
【0040】
本実施の形態の微細構造転写装置10は、軟化した樹脂フィルムを硬化させるための冷却手段を備えていてもよい。自然に冷却させてもよいが、冷却手段によって冷却することにより、冷却に要する時間が短縮され、樹脂スタンパの生産性が向上する。冷却手段としては、冷風を送風して冷却する方法や、スタンパベース22内に冷却媒体を流す管を設ける方法等がある。
【0041】
本実施の形態の微細構造転写装置10は、上記加熱手段によって加熱した後又は加熱と共に、樹脂フィルム18をマザースタンパ12に押圧するための押圧手段(図示せず)を備えている。押圧手段は、従来から用いられている方法であればよく、例えば、樹脂フィルム18上の空間を密閉した後、その密閉空間に、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン等の不活性ガス等の流体を供給することによって押圧する方法や、あるいは平板を用いて機械的に押圧する方法が挙げられる。流体により押圧することが、樹脂フィルム18を均一に押圧することができる点で好ましい。押圧は、一般に、0.5〜5.0MPa、0.5〜10分で行われる。
【0042】
本実施の形態の微細構造転写装置10において、マザースタンパ12の微細な凹凸パターンを樹脂フィルム18に転写して樹脂スタンパを得るには、まず、可動台16を上下に移動させて樹脂フィルム18をマザースタンパ12のスタンパ面12aに接するように位置設定した後、樹脂フィルム18を加熱手段により加熱しつつ樹脂フィルム18をマザースタンパ12に押圧する。次いで冷却することにより樹脂フィルム18を硬化させ、可動台16をリフトアップさせることにより樹脂フィルム18をマザースタンパ12から脱型することにより行われる。
【0043】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0044】
表1に示すように設定した微細構造転写装置を用いて樹脂スタンパを作製した。
【0045】
まず、格子状の凹凸パターン(線幅20μm、高さ40μm、線幅間隔300μm)を有するニッケル製マザースタンパ(200mm×200mm×0.5mmの(パタン領域部))の凹凸パターン上に、樹脂フィルム(ポリシクロオレフィンフィルム:ZEONORZF14(日本ゼオン製):厚さ188μm)を、160℃に加熱して2.0MPaで3分加圧した後、50℃に冷却した。冷却後、マザースタンパから樹脂フィルムを脱型し、脱型による樹脂フィルムの破損の有無を確認した。なお、実施例1、実施例2及び比較例1では、被覆シート(ポリイミドテープ(商品名:カプトンテープ))を固定枠とマザースタンパとの境界に貼付して転写を行った。樹脂フィルムの厚さに対する被覆シートの厚さの百分率は、それぞれ26%、53%、106%である。
【0046】
【表1】

【0047】
<評価結果>
固定枠とスタンパの段差が0であり、使用した被覆シートの厚さが樹脂フィルムの厚さよりも薄い実施例1及び2では、脱型時の破損は認められなかった。樹脂フィルムの厚さより厚い被覆シートを使用した比較例1は、脱型時の破損が認められた。また、固定枠とスタンパの段差が樹脂フィルムの厚さよりも大きい比較例2は、脱型時の破損が認められた。
【0048】
なお、本発明は上記各実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば樹脂スタンパの生産効率を向上させることができ、この樹脂スタンパを用いてインプリントを行うことにより、電子ディスプレイ、電子ペーパー等の情報表示用パネルの隔壁や電子デバイス(リソグラフィ、トランジスタ)、光学部品(マイクロレンズアレイ、導波路、光学フィルタ、フォトニックス結晶)、バイオ関連材料(DNAチップ、マイクロリアクタ)、記録媒体(凹凸パターンドメディア、DVD)等を有利に得ることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 微細構造転写装置
12 マザースタンパ
14 固定枠
16 可動台
18 樹脂フィルム
20 支持体
22 スタンパベース
24 Oリング
30 被覆シート
32 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細な凹凸パターンが形成されたマザースタンパと、
前記マザースタンパの外周を着脱可能に固定する固定枠と、
前記マザースタンパの微細な凹凸パターンを有する面及び前記固定枠に対向するように樹脂フィルムを支持する支持体と、
を有する微細構造転写装置において、
前記マザースタンパの微細な凹凸パターンを有する面と、前記固定枠の前記樹脂フィルムに対向する面の、前記マザースタンパと前記固定枠が当接または近接する箇所の段差が、前記樹脂フィルムの厚さ未満であることを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの厚さが、50〜1000μmであることを特徴とする請求項1に記載の微細構造転写装置。
【請求項3】
前記段差が、前記樹脂フィルムの厚さに対して60%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の微細構造転写装置。
【請求項4】
前記マザースタンパの微細な凹凸パターンを有する面と、前記固定枠の前記樹脂フィルムに対向する面が面一となるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の微細構造転写装置。
【請求項5】
前記固定枠の上部は、前記マザースタンパの内方に向かって突出形成され、
前記マザースタンパの周縁部は、前記固定枠の突出形状に対応するように、前記マザースタンパの外方に向かって突出形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の微細構造転写装置。
【請求項6】
前記マザースタンパの微細な凹凸パターンを有する面と、前記固定枠の前記樹脂フィルムに対向する面との境界を覆う被覆シートが更に設けられ、
前記被覆シートの厚さは、前記樹脂フィルムの厚さ未満であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の微細構造転写装置。
【請求項7】
前記被覆シートの厚さが、前記樹脂フィルムの厚さに対して60%以下であることを特徴とする請求項6に記載の微細構造転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−22929(P2013−22929A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162724(P2011−162724)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】