説明

微細気泡含有ポリエステルフィルム、当該フィルムの製造方法および当該フィルムを基材とするビデオプリンター用受像紙

【課題】 比較的少量の蛍光増白剤の使用により、白色度に優れ、画像の被転写体として用いた場合に美麗な画質を得ることが可能な微細気泡含有ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂を2〜30重量%含有する、見掛け密度が0.60〜1.35g/cmの微細気泡含有ポリエステルフィルムであって、フィルム中の蛍光増白剤の含有量が0.3重量%以下であり、酸化防止剤と非イオン計界面活性剤とをフィルム中に含有し、かつハンター白色度が83以上であることを特徴とする微細気泡含有ポリエステルフィルム、酸化防止剤を、ポリエステルおよび非相溶性樹脂と共に押出機に直接添加することを特徴とする微細気泡含有ポリエステルフィルムの製造方法、および上記微細気泡含有ポリエステルフィルムを基材として用いることを特徴とするビデオプリンター用受像紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオプリンター用受像紙の基材等に用いられる微細気泡含有ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオプリンター用受像紙の基材に用いられるフィルムとして、従来、ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂を配合、微分散化し、これを二軸延伸して微細気泡を発生させた、白色不透明なポリエステルベースのフィルムが使用されている。かかるフィルムは、フィルム中に空隙を作ることで、プリント時のクッション性を良好にし、印字適性、走行性等を改良している。
【0003】
しかしながら、従来のベースフィルムは以下のような欠点を有している。すなわち、主に用いられているポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂は、ポリエステルに比して熱安定性に劣るため、ポリエステルの押出条件(通常260℃以上)において熱劣化を来たし、最終フィルムの白色度を低下させる。ここで、相当量の蛍光増白剤を添加することで、白色度そのものの改良は可能であるが、蛍光増白剤はコストが高く、原料コストを引き上げると言う問題が生じる。
【0004】
一般に、熱可塑性樹脂の成形時において、熱と酸素によるポリマーの酸化劣化を防止するため、酸化防止剤の練り込みを行うことができる。単独で酸化防止効果のある一次酸化防止剤、および一次酸化防止剤と併用して効果を高める二次酸化防止剤があり、所定の配合で、成型用のポリオレフィン等に練り込み、含有させる方法が実施されている。
【0005】
微細気泡含有ポリエステルフィルムの製造に当たっても、同様に酸化防止剤が練り込まれた非相溶性樹脂を配合することができるが、この方法では、非相溶性樹脂への練り込み工程が必須となり、原料コスト増の一因子となっている。そこで工程の簡略化(省力化)のために、酸化防止剤を、ポリエステル、非相溶性樹脂と共に押出機へ直接投入する方法が考えられるが、単に直接添加すると、非相溶性樹脂に作用する酸化防止剤の効果が著しく低減し、最終フィルムの白色度が低下する問題が生じる。また、むやみに酸化防止剤を増量してもその効果は改善せず、逆に押出機のサージング等の弊害を起こすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−130887号公報
【特許文献1】特開平10−77355公報
【特許文献1】特開平11−116716号公報
【特許文献1】特開平9−316221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、比較的少量の蛍光増白剤の使用により、白色度に優れ、画像の被転写体として用いた場合に美麗な画質を得ることが可能な微細気泡含有ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の微細気泡含有ポリエステルフィルムが優れた白色度等の特性を有し、極めて有用であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂を2〜30重量%含有する、見掛け密度が0.60〜1.35g/cmの微細気泡含有ポリエステルフィルムであって、フィルム中の蛍光増白剤の含有量が0.3重量%以下であり、酸化防止剤と非イオン計界面活性剤とをフィルム中に含有し、かつハンター白色度が83以上であることを特徴とする微細気泡含有ポリエステルフィルム、酸化防止剤を、ポリエステルおよび非相溶性樹脂と共に押出機に直接添加することを特徴とする微細気泡含有ポリエステルフィルムの製造方法、および上記微細気泡含有ポリエステルフィルムを基材として用いることを特徴とするビデオプリンター用受像紙に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蛍光増白剤の添加量を低減しつつ、白色度に優れ、かつ画像の被転写体として美麗な画質を得ることが可能な微細気泡含有ポリエステルフィルムを提供でき、その工業的価値は非常に高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、ベースとなるポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、代表的には、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート、構成単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0012】
上記の優位構成成分以外の共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびオキシモノカルボン酸などのエステル形成性誘導体を使用することができる。また、ポリエステルとしては、単独重合体または共重合体のほかに、他の樹脂との小割合のブレンドも使用することができる。
【0013】
本発明の微細気泡含有ポリエステルフィルムは、例えばビデオプリンター用等の受像紙の基材、特に昇華型、溶融型等の感熱転写用受像紙の基材として、十分に高濃度な画像受容性を呈するが、このことは、フィルム中の微細気泡によるクッション性と断熱性が有効に作用している。このようなフィルムを得るためには、ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂を配合して押出し、得られたシートを少なくとも一軸方向に延伸することにより、フィルムに微細な独立気泡を含有させる方法が好ましく用いられる。
【0014】
上記の非相溶な熱可塑性樹脂とは、ポリエステルと共に溶融、混練した際に、ポリエステルと相溶せず、ポリエステル中に球状、楕円状、糸引き状等の形で分散する(海島モデル)熱可塑性樹脂を指す。上記のポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂の含有量Anは、ポリエステルフィルム中、2〜30重量%であることが必要であり、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。Anが2重量%未満の場合は、フィルム中に形成される気泡の量が少なくなる傾向があり、十分に軽量化されかつクッション性を備えたフィルムを製造できない。一方、Anが30重量%を超える場合は、生成する気泡が過多となり、フィルム表面の粗度が大きくなり過ぎる。
【0015】
ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテン等のポリオレフィンのほか、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル等が挙げられるが、これらの中では、コストや生産性の観点からポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレンが好ましく、さらに好ましくはポリプロピレンである。なお、以下の説明において、ポリエステルに対して非相溶な熱可塑性樹脂をポリプロピレンで以て代表するが、本発明はポリプロピレンに限定されるものではない。
【0016】
上記のポリプロピレンとしては、通常95モル%以上、好ましくは98モル%以上がプロピレン単位を有する結晶性ポリプロピレンホモポリマーが好ましい。非晶性ポリプロピレンの場合は、フィルム製造工程において未配向ポリエステルシートの表面にポリプロピレンがブリードアウトし、冷却ドラムや延伸ロール等の表面が汚染されることがある。また、プロピレン以外の例えばエチレン単位が5モル%を超えて共重合されている場合は、微細気泡の生成が不足する傾向にある。
【0017】
ポリプロピレンのメルトフローインデックス(MFI)は通常1.0〜30g/10分、好ましくは2.0〜20g/10分の範囲から選択される。MFIが1.0g/10分未満の場合、生成する気泡が大きくなる傾向にあり、延伸時の破断が誘起されやすい。また、MFIが30g/10分を超える場合は、密度の均一コントロールが困難となり、また延伸装置であるテンターにおいてクリップ外れが起こりやすく、生産性が悪化することがある。
【0018】
本発明では、微細気泡含有ポリエステルフィルムの白色度を向上し、同時に、原料コスト増の因子である蛍光増白剤の使用量を低減するため、原料に酸化防止剤を配合することが好ましい。ここで言う酸化防止剤とは、本発明のフィルムを得るための原料押出工程(溶融、混練)等において、ラジカルキャッチや過酸化物の分解により、熱、酸素によるポリマーの酸化劣化を防止する効果を与えるものである。具体的には、単独で酸化防止効果を有するものとして、フェノール系とアミン系が挙げられるが、アミン系は著しい着色を伴うため、フェノール系が好ましい。
【0019】
フェノール系酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル等のモノフェノール類、オクチルガレート、ラウリルガレート等のポリヒドロキシベンゼン類、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール類、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のトリスフェノール類、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のテトラキスフェノール類等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤の好ましい分子量は、230以上、さらには250以上であり、好ましい融点は、100℃以上、さらには120℃以上である。高分子量、高融点である程、酸化防止剤自身の耐熱性(耐昇華性)が上昇するため好ましい。
【0020】
また、フェノール系酸化防止剤と併用して、その効果を高めるものとして、亜リン酸トリフェニル等のリン系酸化防止剤、3,3’−チオジプロピオン酸ジラウリル等の硫黄系酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤の合計量として、フィルム中の含有量Aoは、1〜10000ppmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜5000ppm、特に好ましくは10〜1000ppmである。またAoは、ポリエステルに対して非相溶な熱可塑性樹脂の含有量Anとの関係において、2・An×10−5≦Ao≦An×10−2であることが好ましく、より好ましくは、An×10−4≦Ao≦5An×10−3である。Aoが上記の値より小さい場合、酸化防止の効果が不足し、白色度が低下する傾向にある。一方、Aoが上記の値より大きい場合には、酸化防止効果が飽和するうえ、押出機内でサージング等の問題を誘起する場合がある。
【0021】
本発明において、酸化防止剤の添加方法は、使用する原料樹脂中に練り込んでも(マスターバッチ法)、ポリエステルおよび非相溶樹脂と共に押出機に投入しても(直接添加法)よいが、工程を簡略化し、原料コストを低減する利点において、直接添加法が好ましい。本発明者らは、この直接添加法において、酸化防止剤と非イオン系界面活性剤とを同時に添加した際に、驚くべきことに、酸化防止効果が著しく向上し、得られる微細気泡含有フィルムの白色度が、格段に向上することを見いだした。
【0022】
従来、押出、混練工程において、ポリエステル中に分散する例えばポリプロピレンの分散径を均一化かつ微細化し、延伸工程での気泡形成を経て、所望のフィルム密度およびクッション性を得るために、原料に非イオン系界面活性剤を配合することが知られている。これは、非イオン系界面活性剤が、原料押出工程(溶融、混練)において、ポリエステルとポリプロピレンの界面で作用し、両者の相溶性を高め、結果として気泡生成の核となるポリプロピレンの分散径をより均一かつ微細化する効果を与えるためと考えられる。
【0023】
非イオン系界面活性剤の効果はこれに留まらず、同時に添加された酸化防止剤を、より効率的にポリプロピレンに作用させる効果が認められた。非イオン系界面活性剤として、具体的にはポリアルキレングリコール型類、多価アルコール型類、シリコーン系類等の非イオン系界面活性剤が挙げられ、これらの中でもシリコーン系界面活性剤が好ましい。より具体的には、オルガノポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体やポリオキシアルキレン側鎖を有するアルケニルシロキサン等が、界面活性化作用が高く、好ましい。
【0024】
フィルム中の上記界面活性剤の含有量As(重量%)は、ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂の含有量An(重量%)との関係で、0.002・An≦As≦0.2・Anであることが好ましく、より好ましくは、0.004・An≦As≦0.1・Anである。Asが0.002・Anに満たない場合、非相溶樹脂が十分に均一かつ微細化せず、また酸化防止剤の効果が低減し、フィルムの白色度が低下する傾向がある。一方、Asが0.2・Anを超える場合、もはや非相溶樹脂の微分散化を促進する効果が向上しないうえ、非イオン系界面活性剤自身が熱劣化を受け、フィルムの白色度を低下させる等、フィルム品質上悪影響をきたす傾向がある。
【0025】
本発明の微細気泡含有ポリエステルフィルムの見掛け密度(ρ)は0.60〜1.35g/cmであることが必要であり、好ましくは0.70〜1.25g/cm、さらに好ましくは0.80〜1.15g/cmである。ρが0.6g/cm未満では、製膜時に破断が頻発し、生産性が劣るようになるので好ましくない。ρが1.35g/cmを超えると、クッション性が劣り、ビデオプリンター用等の受像紙基材として用いた際、プリント時の印字濃度が低下するとともに、単位面積当たりのコストアップとなるため好ましくない。
【0026】
本発明の微細気泡含有フィルムは、受像紙基材として使用されたときに美麗な画像を得るという観点から、高い光沢度を有することが好ましく、具体的にはJIS Z 8741−1983の方法3による60゜光沢度G60が15%以上であることが好ましい。G60が15%未満の場合、フィルムが受容する画像が精細さ(光沢感)を損なう傾向にある。より好ましいG60は20%以上であり、さらに好ましくは25%以上である。また、G60が120%を超える場合には、フィルム表面が過度に平坦となり、ロール加工の際にブロッキングする、キズが生じやすい、複数枚の受像紙が重なって搬送される等の問題が生じることがある。
【0027】
本発明の微細気泡含有フィルムの表面粗度Raは0.03〜0.35μmであることが好ましい。Raが0.03μmより小さい場合は、フィルム表面が平坦過ぎて、光沢度が上限を超えた場合と同様の問題が生じることがある。一方、Raが0.35μmを超えると、受容した画像の精細さが損なわれる傾向がある。より好ましいRaの範囲は0.05〜0.25μmであり、さらに好ましくは0.07〜0.19μmである。
【0028】
本発明の微細気泡含有ポリエステルフィルムは、例えば受像紙の基材として使用されたときに精細な画像を得るという観点から、白色で高い隠蔽度を備えていることが求められる。かかる物性を付与するため、蛍光増白剤を含有させる。本発明で用いることのできる蛍光増白剤としては、波長が400〜700nmに蛍光ピークを有するものであれば種類を問わないが、好適なものとしては、商品名ユピテックスOB(チバガイギー社)、OB−1(イーストマン社)およびミカホワイト(日本化薬−三菱化学)等の市販品が挙げられる。蛍光増白剤のポリエステルフィルム中の含有量は、0.3重量%以下であることが必要であり、好ましくは0.01〜0.25重量%である。蛍光増白剤の含有量が0.3重量%を超えると、原料コストが増加する上、増白剤による白色度改良の効果がもはや飽和する傾向がある。一方、蛍光増白剤の含有量が0.01重量%未満では、白色度の改良が不十分となる場合がある。
【0029】
さらに白色度を一層高めるため、白色無機粒子を併用することも有効である。上記の白色無機粒子としては公知の酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられるが、これらの中でも、粒径が小さく粒状である酸化チタンが画像受容性の点で好ましい。本発明においてポリエステル中に配合することのできる酸化チタン粒子の結晶形態はアナターゼ型、ルチル型のいずれでもよいが、白色度および耐候性の点からアナターゼ型酸化チタン粒子であることが好ましい。さらに酸化チタン粒子のポリエステルへの分散性および耐候性向上を目的に粒子の表面をアルミニウム、けい素、亜鉛等の酸化物および/または有機化合物で処理したものも用いることができる。
【0030】
酸化チタン粒子の平均粒径は0.20〜0.50μmの範囲が好ましい。平均粒径が0.20μm未満であったり、0.50μmを超えたりすると、フィルムとした際の隠蔽度が低下し、光線透過の防止が不十分となる傾向がある。また、酸化チタン粒子の添加量は、通常1〜20重量%である。粒子の添加量が1重量%未満では、フィルムとした際の隠蔽度が低下し、光線透過の防止が不十分となる傾向がある。粒子の添加量が20重量%を超えると、フィルム製膜時に破断が生じやすくなったり、フィルムとした際の機械的強度が劣ったりする傾向がある。
【0031】
本発明の微細気泡含有ポリエステルフィルムは、JIS P8123−1961によって定義されるハンター白色度(Wb)を、フィルムを5枚重ねて測定し、少なくともその片面の値が83以上であることが必要である。ハンター白色度が83未満の場合には、受像基材として用いた際に、画像(色調)が精細さを欠き、高級感を損なう傾向にある。好ましいハンター白色度は88以上であり、さらに好ましくは90以上である。
【0032】
また、本発明の微細気泡含有フィルムの白さについて、JIS Z8722およびZ8730により定義されるb値も一つの指標とすることができる。具体的には、フィルムを5枚重ねて測定したb値が、+1.0〜−10の範囲内にあることが好ましい。b値が+1.0を超える場合には、フィルムの黄色味が強く、受像基材として(受容画像)の高級感を損なう傾向がある。一方、b値が−10未満の場合には、フィルムが青味ががり、受容画像の色彩に変調を与える傾向がある。より好ましいフィルムb値は−1.0〜−8.0、さらに好ましくは−3.0〜−6.0の範囲内である。
【0033】
本発明の微細気泡含有ポリエステルフィルムには、塗布層を設けることができる。塗布面は、ポリエステルフィルムの片面、両面を問わないが、ビデオプリンター用受像紙のブロッキング(重送)防止の点で、両面に帯電防止能を有する塗布層を有することが好ましい。当該塗布面の表面固有抵抗は、1×1012Ω以下であることが好ましく、より好ましくは1×1011Ω未満であり、さらに好ましくは1×1010Ω未満である。
【0034】
上記塗布層の組成は、所望の表面固有抵抗(1×1012Ω以下)を満たす限り、特に限定されるものではないが、例えば以下のような組成とすることが可能である。
【0035】
(a)主鎖にピロリジウム環を有するポリマー、(b)ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタンおよび含塩素系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマー、並びに(c)メラミン系および/またはエポキシ系の架橋剤とを含有する塗布層。
【0036】
上記塗布剤成分の一つである、主鎖にピロリジウム環を有するポリマーとは、例えば下記式(I)あるいは(II)の構造を主成分とするポリマーである。
【0037】
【化1】

【0038】
【化2】

上記式(I)および(II)中、R1 、R2 は、それぞれ独立して、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、カルボ低級アルコキシ基、低級アルコキシ基、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリ−(低級アルキル)アンモニウム低級アルキル基等であり、ニトロ基はアルキル基上でのみ、また、ハロゲン基はフェニル基上でのみ置換可能である。また、R1 、R2 は化学的に結合していてもよく、例えば、(CH(m=2〜5の整数)、−CH(CH)−CH(CH)−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=N−、−CH=CH−N=CH−、(CHO(CH、(CHO(CH等が挙げられる。上記式中のX- は、Cl 、Br1/2SO2−、または1/3PO3− 等の無機酸残基、CHSO、CSOのスルホン酸残基を示す。
【0039】
本発明の塗布層を得るための塗布液中に配合される主鎖にピロリジウム環を有するポリマーの配合量は、通常5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。かかる配合量が5重量%未満では、後述する受像層塗布後の帯電防止性不十分となる傾向がある。かかる配合量が50重量%を超えると、受像層との密着性が不十分となることがある。
【0040】
本発明のフィルムの塗布層を得るための塗布液中に配合されるポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタンおよび含塩素系ポリマーから選ばれた少なくとも1種のポリマーの総配合量は通常20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%である。かかる配合量が20重量%未満では、受像層との密着性が不十分となる傾向があり、配合量が90重量%を超えると、耐ブロッキング性が不十分となることがある。
【0041】
塗布液中に配合されるメラミン系またはエポキシ系の架橋剤の総配合量は、通常5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%である。かかる配合量が5重量%未満では、帯電防止性や耐ブロッキング性の改良効果が不十分となる傾向があり、配合量が50重量%を超えると、受像層との密着性が不十分となることがある。
【0042】
本発明においては、塗布層中にさらに潤滑剤を配合することにより、滑り性と適度な離型性をフィルムに付与することができる。潤滑剤としては、ポリオレフィン系ワックス、鉱物油、動植物油、ろう、エステル類および金属石けん等が挙げられるが、ポリオレフィン系ワックスを用いれば接着性を損なわないので、通常はこれを用いる。
【0043】
さらに本発明のフィルムの塗布層は、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、無機粒子、有機系高分子粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤および染料などを含有していてもよい。本発明の塗布層を積層した二軸延伸白色ポリエステルフィルムをビデオプリンター用基材とする場合、フィルム上に昇華型染料の受像層を設けることが通常行われる。受像層成分としては、一般にポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂およびこれらの混合物あるいは共重合体等が使用できる。また、必要に応じて、各種ワックス類、シリコン類等の離型改良剤、シリカ、酸化チタン等の無機粒子を添加することもできる。
【0044】
本発明の微細気泡含有フィルムは、単一フィルムのほか、異なる原料配合からなる二つ以上の層構成とすることもできる。フィルム化には、一般に所定に配合されたポリマーを溶融、押出しした後、少なくとも一軸方向にロール延伸法、テンター法等に従って延伸を施せばよい。なお、微細気泡を良好に形成するとともにフィルム強度や寸法安定性を適度に満足させるためには、二軸延伸方法および熱処理方法を併用することが好ましい。
【0045】
ここで二軸延伸を用いた場合の一例を詳細に説明する。層構成は、単一、B/Aの2種2層、もしくはB/A/Bの2種3層が基本となるが、さらなる多層構成であっても差し支えない。まず、各層に対する配合の原料を、各層に対応する押出機に供給し、各押出機ライン毎に溶融混練した後、各層のポリマーを、通常マルチマニホールドまたはフィードブロックを経てダイへ導く。
【0046】
次に、ダイから押し出された溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性、冷却効果を向上させるためには、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法が好ましく採用される。
【0047】
次いで、得られたシートを二軸方向に延伸してフィルム化する。本発明のポリエステルフィルムに含有する微細気泡は、かかる延伸によって生成される。まず、通常70〜150℃、好ましくは75〜130℃の延伸温度、通常2.5〜6.0倍、好ましくは3.0〜5.0倍の延伸倍率の条件下、前記未延伸シートを一方向(縦方向)に延伸する。かかる延伸にはロールおよびテンター方式の延伸機を使用することができる。次いで、通常75〜150℃、好ましくは80〜140℃の延伸温度で、通常2.5〜6.0倍、好ましくは3.0〜5.0倍の延伸倍率の条件下、一段目と直交する方向(横方向)に延伸を行い、二軸配向フィルムを得る。かかる延伸には、テンター方式の延伸機を使用することができる。
【0048】
上記の一方向の延伸を2段階以上で行う方法も採用することができるが、その場合も最終的な延伸倍率が上記した範囲に入ることが好ましい。また、前記未延伸シートを面積倍率が7〜30倍になるように同時二軸延伸することも可能である。次いで、テンター内熱処理を、通常140〜250℃、好ましくは200〜240℃で、30%以内の伸長、制限収縮または定長下で1秒〜5分間行う。
【0049】
また、本発明の微細気泡含有ポリエステルフィルムに塗布層を設ける方法としては、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等を用いることができる。これらの塗布装置を用いて、通常、長手方向に一軸延伸されたフィルムに塗布し、乾燥または未乾燥の状態で、さらに先の一軸延伸方向と直角の方向に延伸した後、熱処理を施す方法が製造コストの面から好ましく採用される。
【0050】
塗布後に延伸処理をしない場合、形成される塗布層とポリエステルフィルムとの密着力が弱く、実用に適した接着性を得られない場合がある。また、塗布後に熱処理を行わない場合、塗布層の乾燥が不十分となり、フィルムが著しくブロッキングする傾向がある。塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さで通常0.01〜0.5μmの範囲であり、好ましくは0.02〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.01μm未満では、帯電防止効果等が享受されないことがある。一方、0.5μmを超えると、フィルムが相互にブロッキングしやすくなる傾向がある。
【0051】
また、本発明の微細気泡含有ポリエステルフィルムの厚さは、通常20〜300μm、好ましくは25〜250μmの範囲である。また、微細気泡を含有しない層を含む積層フィルムの場合は、微細気泡含有層の厚さが全体厚さの20%以上であることが好ましい。微細気泡含有層の厚さが20%未満の場合は、本発明の微細気泡含有ポリエステルフィルムの特徴である軽量性やクッション性が十分に満足されない。
【0052】
本発明のフィルムは、その特徴を生かし、微細気泡含有フィルム単体として、また紙、合成紙、プラスチックフィル等の他の素材との貼合わせ体として、ビデオプリンター用を始めとする各種感熱転写用受像紙、ラベル、記録紙、ポスター、シールプリント用台紙、平版印刷板、包装材料、付箋などに好適に使用される。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明における各種の物性および特性の測定方法、定義は下記のとおりである。また、実施例および比較例中、「部」および「%」とあるのは、各「重量部」および「重量%」を意味する。
(1)メルト・フロー・インデックス MFI(g/10分)
JIS K7210−1995に従って、230℃、21.2Nで測定した。この値が高いほど、ポリマーの溶融粘性が低いことを示す。
(2)添加物の平均粒径(μm)
(株)島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則に基づく沈降法によって粒子の大きさを測定した。測定により得られた粒子の等価球形分布における積算(体積基準)50%の値を用いて平均粒径とした。
(3)見掛け密度(g/cm
フィルムの任意の部分から10cm×10cmの正方形のサンプルを切出し、マイクロメーターで均等に9ヶ所の厚みを測定した。その平均値とフィルムの重量から、単位体積当りの重量を算出し、見掛け密度とした。測定数は5点とし、その平均値を用いた。
(4)ハンター白色度
日本電色工業(株)製測色計NDH−1001DP(C光源、2゜視野)を用いて、JIS P8123−1961の方法に準じて、フィルムを5枚重ねたものの白色度(Wb)を測定した。
(5)b値
日本電色工業(株)製測色計NDH−1001DP(C光源、2゜視野)を用いて、JIS Z−8722、8730の方法に準じて、フィルムを5枚重ねたもののb値を測定した。
(6)光沢度(%)
JIS Z−8741−1983の方法3(60゜光沢度)によって、フィルム表面のMD方向に光を入射して測定した。なお測定面はキャスト面(キャストロール接触面側)に相当した。測定数nは3とし、その平均値を算出した。
(7)中心線平均表面粗さRa(μm)
小坂研究所製の万能表面形状測定器SE−3Fを用いて測定した。下記の条件で7回測定し、上下2点を除いた5点の平均値をとった。
・触針先端径:2μm・測定力:0.03gf・測定長:2.5mm・カットオフ値:0.8mm
(8)表面固有抵抗(Ω)
横河ヒューレット・パッカード社の同心円型電極「16008B(商品名)」(内側電極50mm径、外側電極内径70mm、外形80mm、ガード電極80mm径)に23℃、50%RHの雰囲気下、受像層塗布後のフィルムを設置し、100Vの電圧を印加した時に内側電極から外側電極に流れる電流値を元に、同社製高抵抗計「4339B(商品名)」で表面抵抗を測定した。
(9)製膜連続性
無定形シートを縦延伸後、横延伸する際、横延伸機(テンター)において、延伸時あるいは熱固定時にフィルムが破断する状況を次に示すランクで判定し評価した。
○:ほとんどフィルム破断を起こさず生産性良好
△:時折フィルム破断を起こし生産性に劣る
×:頻繁に破断し生産性が全くない
(10)印字画像の画質
東洋紡績”バイロン600”(ポリエステル) :62重量部 UCC”VYHH”(塩酢ビ) :26重量部 信越化学”KF−393”(アミノ変性シリコン) : 6重量部 信越化学”X−22−343”(エポキシ変性シリコン): 6重量部受像層として上記の塗料をメタノール/メチルエチルケトン/ジメチルホルムアミドの混合溶媒に溶解し20重量%の溶液として用い、乾燥後の膜厚が5μmとなるように、フィルムに塗布した。
【0054】
フィルムの受像層塗布面に、松下電器(株)製ビデオプリンター”NV−MP10”にて画像をプリントし、その状態を観察した。
【0055】
○:画質が良好
△:画質の一部が若干不鮮明
×:画質が不鮮明で一部欠落部分がある
(11)受像紙の搬送性
上記(8)項のプリントテスト時に、スタックに装填したフィルムが複数枚重なって搬送される頻度について、50回送紙中、×:5回以上 △:1〜4回 〇:全くない として評価した。
【0056】
実施例1:
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートチップを主原料とし、全原料に対する割合として、メルトフローインデックス7.6g/10分の結晶性ポリプロピレンチップ:15%、さらに、平均粒径0.3μmの酸化チタン粒子:2.4%、蛍光増白剤(イーストマン社製OB−1):0.07%、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製SH193):0.12%、酸化防止剤:0.03%とする原料配合Aを、ベント付二軸押出機に直接投入した。二軸押出機中で270℃で溶融、混練し、得られた溶融体をダイに導いてスリット状に押出し、25℃の冷却ドラム上で冷却して無延伸シートを得た。次いで、当該無延伸シートを縦方向に82℃で3.4倍延伸した後、下記に示す塗布剤組成の塗布液(5重量%水分散体)を塗布厚み4.5μm(wet)となるように、フィルムの両面に塗布し、さらに横方向に123℃で4.1倍延伸し、232℃で6秒間熱処理した。最終的にフィルム厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。酸化防止剤:チバガイギー社製Irganox1222(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、分子量=356、融点120℃)を使用。
【0057】
塗布液組成:ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド(分子量=30000):20%、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メチロールアクリルアミド共重合体(モノマー比率:47.5/47.5/5モル%):40%、メトキシメチルメラミン:40%
【0058】
実施例2:
酸化防止剤を、吉富製薬製ヨシノックスBHT(ブチルヒドロキシトルエン、分子量=220、融点70℃(昇華性))とする以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
【0059】
実施例3:
実施例1において、酸化防止剤の配合量を90ppmとする以外は同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
【0060】
実施例4:
実施例1において、シリコーン系界面活性剤を配合しない以外は同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
【0061】
実施例5:
実施例1において、蛍光増白剤を配合しない以外は同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
【0062】
比較例1:
実施例1において、酸化防止剤および蛍光増白剤を配合しない以外は同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
【0063】
比較例2:
比較例1において、蛍光増白剤を0.35%配合する以外は同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
【0064】
比較例3、4:
原料配合について、ポリプロピレンの量を表1に示す通りに変える以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。なお、比較例4においては、フィルム破断が頻発し、塗布を施したフィルムを採取することができなかった。
【0065】
以上、得られた微細気泡含有フィルムの製膜性およびフィルム特性をまとめて下記表2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のフィルムは、例えば、ビデオプリンター用受像紙の基材として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂を2〜30重量%含有する、見掛け密度が0.60〜1.35g/cmの微細気泡含有ポリエステルフィルムであって、フィルム中の蛍光増白剤の含有量が0.3重量%以下であり、酸化防止剤と非イオン計界面活性剤とをフィルム中に含有し、かつハンター白色度が83以上であることを特徴とする微細気泡含有ポリエステルフィルム。
【請求項2】
酸化防止剤を1〜10000ppm含有することを特徴とする請求項1記載の微細気泡含有ポリエステルフィルム。
【請求項3】
非イオン系界面活性剤を含有することを特徴とする請求項2記載の微細気泡含有ポリエステルフィルム。
【請求項4】
酸化防止剤を、ポリエステルおよび非相溶性樹脂と共に押出機に直接添加することを特徴とする請求項2または3に記載の微細気泡含有ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の微細気泡含有ポリエステルフィルムを基材として用いることを特徴とするビデオプリンター用受像紙。

【公開番号】特開2011−12268(P2011−12268A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178616(P2010−178616)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願平11−222244の分割
【原出願日】平成11年8月5日(1999.8.5)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】