説明

微細製品の製造方法

【課題】 フォトレジストを用いて作成した型を用いて製品を製造する方法において、製品の材料は、金属、金属以外のセラミックス等いずれのものでもよく、かつ任意の厚さの任意の形状の製品を簡単に製造できる製造方法を提供すること。
【解決手段】 プラスチックフィルム12上に形成したフォトレジスト11を、フォトマスク21を用いて露光・感光し(図3(a),(b))、その感光したフォトレジスト11を現像して非感光部分11bを除去して型Mを作成し(図3(c))、その型Mにドクターブレード32を用いてスラリー31を塗布し充填して(図3(d))、グリーンシート31gを作成し(図3(e))、そのグリーンシート31gを焼結して製品31pを作成する(図3(f),(g))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、マイクロマシン部品、マイクロ電気部品、マイクロ医療器具等の微細製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来微細製品の製造方法の1つとして、フォトリソグラフィ法により感光性樹脂を露光(感光)、現像して製品の型を作成し、その型に電気鋳造法(電鋳)により製品の材料を電着させて製品を製造する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
図7は、従来のフォトリソグラフィ法により型を作成し、その型を用いて電気鋳造法により製品を製造する方法を示す。
フォトマスク52を用いて液状の感光性樹脂51を露光して、フォトマスク52の感光パターンを感光性樹脂51に転写する(図7(a))。感光性樹脂51は、感光した部分が硬化する。露光した感光性樹脂51は、現像して非感光部分を除去して型53を作成する(図7(b))。その型53に、電気鋳造法(電鋳)により金属54を電着させて(図7(c))製品54pを作成する(図7(d))。その電着は、無電解溶液中で無電解めっきにより行なう。
【0003】
【非特許文献1】山口勝美、中本剛「光造形法による形状創成」精密工学会誌,VOl.61,NO.10,1995,p.1385〜1388
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の微細製品の製造方法は、無電溶液中で無電解めっきにより、型に金属を電着させて製品を作成するから、材料は金属に限られる。また電着に長時間を要し、かつ装置が大掛かりになる。
前記従来の微細製品の製造方法は、液状の感光性樹脂を露光して型を作成するが、液状であるため扱いが面倒であり、かつ露光により液状の感光性樹脂を硬化させる際、硬化の深さ(厚さ)に限度があるから、厚い型を作成できない。その解決策として、露光により硬化した感光性樹脂層の上にさらに感光性樹脂層を形成して露光を行う、いわゆる積層法が提案されているが、各感光性樹脂層の厚さの制御や積層工程が複雑になり、装置が複雑で大掛かりになる。
【0005】
本願発明は、従来の微細製品の製造方法の前記問題点に鑑み、製品の材料は、金属に限らず、セラミックス等金属以外の材料も用いることができ、かつ製品を簡単に短時間で製造できる製造方法を提供することを目的とする。また本願発明は、型を簡単に作成でき、かつ厚い型も容易に作成できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、前記目的を達成するため、請求項1に記載の微細製品の製造方法は、フォトマスクを用いてフォトレジストを感光し、その感光したフォトレジストを現像して型を作成し、その型に製品の材料粉末からなるスラリーをドクターブレードを用いて充填して成形し、型から成形品を離してグリーンシートを作成し、そのグリーンシートを焼結して製品を作成することを特徴とする。
請求項2に記載の微細製品の製造方法は、フォトマスクを用いて複数個のフォトレジストを別々に感光し、その感光した複数個のフォトレジストを積層して現像して型を作成し、その型に製品の材料粉末からなるスラリーをドクターブレードを用いて充填して成形し、型から成形品を離してグリーンシートを作成し、そのグリーンシートを焼結して製品を作成することを特徴とする。
請求項3に記載の微細製品の製造方法は、感光パターンの異なるフォトマスクを用いて複数個のフォトレジストを別々に感光し、その感光した複数個のフォトレジストを別々に現像して複数個の型を作成し、その複数個の型に製品の材料粉末からなるスラリーをドクターブレードを用いて充填して成形し、型から成形品を離して複数個のグリーンシートを作成し、その複数個のグリーンシートを積層して焼結して製品を作成することを特徴とする。
請求項4に記載の微細製品の製造方法は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の微細製品の製造方法において、前記フォトレジストは、ドライフィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、フォトマスクを用いてフォトレジストを露光感光、現像して作成した型に、ドクターブレードを用いてスラリーを塗布・充填してグリーンシートを作成(成形)するから、製品の材料は、従来の電気鋳造法(電鋳)のように金属に限らず、セラミックス等金属以外のものであってもよい。またスラリーとドクターブレードを用いるのみであるから、グリーンシートの成形装置や成形作業が簡単になり、かつ短時間でグリーンシートを作成できる。
本願発明は、感光したフォトレジストを所望個数積層することにより、従来不可能であった厚い製品の型を作成でき、その厚さは、積層するフォトレジストの個数によって調整できるから、任意の厚さの製品を製造できる。
本願発明は、形状の異なるグリーンシートを別々に作成し、そのグリーンシートを組合わせることにより従来の型による成形では不可能であった形状の製品も容易に製造することができる。
本願発明のフォトレジストは、液状でなくフィルム状のドライフィルムを用いるから、
露光・現像作業が容易になり、型の作成が容易になる。かつ本願発明のフォトレジストは、プラスチックフィルム等の基材上に形成してあるから、強度が高く取扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本願発明の実施の形態に係る微細製品(焼結体)の製造手順を示す。
製造手順は、フォトリソグラフィにより型を作成する工程、その型を用いて製品のグリーンシートを作成する工程、そのグリーンシートを焼結する工程からなる。
型は、まずフォトマスクを用いてフォトレジストを露光し、その露光により感光したフォトレジストを現像して作成する。
グリーンシートは、ドクターブレードを用いて、型に製品の材料粉末からなるスラリーを充填して成形し、成形品を型から離して(抜いて)乾燥して作成する。そのグリーンシートを焼結して製品を作成する。製品の材料粉末は、金属、セラミックス、ガラス等の粉末、或いはそれらの粉末を2種類以上混合したものを用いる。
本実施の形態は、フォトリソグラフィにより作成した型を用い、ドクターブレードによってその型にスラリーを充填してグリーンシートを作成(成形)するから、製品の材料は、従来の電気鋳造法(電鋳)のように金属に限らず、セラミックス等金属以外のものであってもよい。またグリーンシートの成形は、ドクターブレードによりスラリーを型に充填するのみでよいから、成形装置や成形作業が簡単になり、かつ短時間でグリーンシートを作成できる。
【0009】
次に図2〜図6により本願発明の実施例を説明する。なお各図に共通の部分は、同じ符号を使用している。
【実施例1】
【0010】
図2は、微細製品(焼結体)の製造手順を示し、図2(a)〜図2(f)は、断面図、図2(g)は、斜視図である。
フォトレジスト11とフォトマスク21を用い、フォトマスク21を介してフォトレジスト11に光を照射して露光し(図2(a))、フォトレジスト11を感光する(図2(b))。感光したフォトレジスト11は、感光部分11a、非感光部分11bからなる。感光したフォトレジスト11を現像して型Mを作成する(図2(c))。型Mは、レジスト11の非感光部分11bが除去されて孔部11cが形成される。
型Mは支持部33に載せ、ドクターブレード32により、型Mに製品の材料粉末からなるスラリー31を塗布し、孔部11cに充填して成形する(図2(d))。成形品は、型Mから離して乾燥し、グリーンシート31gを作成する(図2(e))。グリーンシート31gは、焼結して製品31pを作成する(図2(f),(g))。
【0011】
実施例1は、四辺形部と円板部からなる製品について説明したが、製品は、円板部のみからなるものであってもよく、その場合には、型Mの孔部11cにのみスラリー31を充填すればよい。
また図2(d)において、支持部33を移動式に構成し、その支持部33に複数個の型Mを並べて配置すれば、連続してグリーンシート31gを作成できる。
【実施例2】
【0012】
図3は、フォトレジストにドライフィルムを用いた場合の微細製品(焼結体)の製造手順を示し、図3(a)〜図3(f)は、断面図、図3(g)は、斜視図である。
図3の場合には、基材のプラスチックフィルム12上に形成したフィルム状のフォトレジスト11からなる、いわゆるドライフィルムを用い(図3(a))、フォトレジスト11をプラスチックフィルム12上に形成したままの状態で露光・現像して型Mを作成し(図3(b),(c))、その型Mに製品の材料粉末からなるスラリー31をドクターブレード32により塗布・充填して成形し、型から成形品を離して(抜いて)グリーンシート31gを作成する(図2(d),(e))。グリーンシート31gは、焼結して製品31pを作成する(図3(f),(g))。
フォトレジスト11は、液状でなくフィルム状であるから、露光・現像作業が容易で、かつプラスチックフィルム12上に形成してあるから、強度が高く取扱いが容易である。
【0013】
実施例2は、製品の材料として、ニッケル粉末(平均粒径0.4μm)、銀粉末(平均粒径1.6μm)、チタン酸ビスマス粉末(平均粒径3μm)を用い、各材料別に3種類のスラリーを作成した。
ニッケルのスラリーの組成は、ニッケル粉末100に対し重量比で、ブチラール樹脂(バインダー)8、燐酸エステル化合物(分散剤)1、フタル酸化合物(可塑剤)5、トルエン(溶剤1)16.7、キシレン(溶剤2)16.7、エタノール(溶剤3)16.7からなる。
【0014】
銀のスラリーの組成は、銀粉末100に対し重量比で、ブチラール樹脂(バインダー)7、燐酸エステル化合物(分散剤)1、フタル酸化合物(可塑剤)5、トルエン(溶剤1)25、キシレン(溶剤2)25からなる。
チタン酸ビスマスのスラリーの組成は、チタン酸ビスマス粉末100に対し重量比で、ブチラール樹脂(バインダー)7、燐酸エステル化合物(分散剤)1、フタル酸化合物(可塑剤)5、トルエン(溶剤1)16.7、キシレン(溶剤2)16.7、エタノール(溶剤3)16.7からなる。
実施例2は、成形品を型から離すとき、型離れを容易にするため、炭酸塩(炭酸ナトリウム)1〜5%の水溶液を用いた。炭酸塩(炭酸ナトリウム)を用いると、水(純水)を用いた場合に比べて成形品の型離れが容易になる。
【0015】
図4は、銀のスラリーを用いて作成した製品(焼結体)の1部分の寸法関係を示す。図4(a)は、平面図、図4(b)は、図4(a)のX1部分の矢印方向の断面図である。
製品(焼結体)31pは、板状部に四辺形の島状部を多数形成してある。島状部の幅d1は、150μm、島状部の間隔d2は、100μm、島状部の高さ(厚さ)h1は、50μmである。なお島状部の高さ(厚さ)h1は、フォトレジスト11の厚さによって決まる。
製品31pの島状部は、きれいな四辺形になり、かつ島状部の周囲は、略垂直に形成できた。
実施例2は、プラスチックフィルム上にフォトレジストを形成したドライフィルムを用いたが、ガラス、シリコン、プラスチック等の基材上にスピンコート等によって液状のフォトレジストを塗布する等してフィルム状に形成したフォトレジストであってもよい。
【実施例3】
【0016】
図5は、厚い製品(焼結体)を製造する例を示す。
5個の感光したフォトレジスト111〜115を積層し(図5(a))、現像して型Mを作成する(図5(b))。111aは、フォトレジスト111の感光部分、111bは、フォトレジスト111の非感光部分である。型Mの厚さ(高さ)は、フォトレジスト5個分の厚さに相当する。この型Mを用いてグリーンシートを作成し、焼結して製品31p(図5(c))を作成する。感光したフォトレジスト111〜115を積層する際、図3のドライフィルムを用いる場合には、基材のプラスチックフィルムを剥がして積層する。
実施例3は、感光したフォトレジストを所望個数積層することにより、従来不可能であった厚い製品を作成でき、その厚さは、積層するフォトレジストの個数によって調整できる。
【実施例4】
【0017】
図6は、複数のグリーンシートを組合わせた製品(焼結体)を製造する例を示す。図6(a)〜(f)は、断面図、図6(g)は、斜視図である。
まず感光パターンの異なるフォトマスク(図示せず)を用いて2個のフォトレジスト116,117を別々に露光して感光し、2種類の感光パターンのフォトレジスト116,117を積層し(図6(a))、現像して非感光部分を除去して型M1を作成する(図6(b))。
次に感光パターンの同じフォトマスク(図示せず)を用いて2個のフォトレジストを別々に露光して感光し、同じ感光パターンのフォトレジスト1181,1182を積層し(図6(c))、現像して非感光部分を除去して型M2を作成する(図6(d))。
【0018】
次に型M1を用いて絶縁材料粉末からなるグリーンシート31g11,31g12を作成し、型M2を用いて導電材料粉末からなるグリーンシート31g2を作成する(図6(e))。3個のグリーンシート31g11,31g2,31g12を1体にして焼結し、製品31p1を作成する(図6(f),(g))。製品31pは、導電材料の周囲に絶縁材料層を形成した導線の例である。
実施例4の製造方法を用いると、形状の異なるグリーンシートを別々に作成し、そのグリーンシートを組合わせることにより従来の型を用いた成形方法では不可能であった形状の製品を容易に製造することができる。
なお図6は、同じ厚さのフォトレジストを用いたが、厚さの異なるフォトレジストを用い、例えばフォトレジスト1811,1812は1個のフォトレジストで構成することもできる。
【0019】
本願発明によって作成する製品は、図2〜図6の形状のものに限らず、任意の形状のものを作成することができ、またマイクロ歯車、マイクロプーリ等のマイクロマシン部品、マイクロ電極、マイクロコイル、マイクロコンデンサ等のマイクロ電気部品、マイクロ流路等の医療用や化学用のマイクロ器具等を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明の実施の形態に係る微細製品の製造手順を示す図である。
【図2】本願発明の第1実施例に係る微細製品の製造手順を示す図である。
【図3】本願発明の第2実施例に係る微細製品の製造手順を示す図である。
【図4】本願発明の第2実施例に係る銀のスラリーを用いて製造した製品(1部)の寸法関係を示す図である。
【図5】本願発明の第3実施例に係る製品の製造例を示す図である。
【図6】本願発明の第4実施例に係る複数のグリーンシートを組合せた製品の製造例を示す図である。
【図7】従来の製品の製造手順を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
11,111〜117,1181,1182 フォトレジスト
11a フォトレジストの感光部分
11b フォトレジストの非感光部分
11c 孔部
12 プラスチックフィルム
21 フォトマスク
31 スラリー
31g,31g11,31g12,32g グリーンシート
31p,31p1 製品
32 ドクターブレード
33 支持部
M,M1,M2 型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクを用いてフォトレジストを感光し、その感光したフォトレジストを現像して型を作成し、その型に製品の材料粉末からなるスラリーをドクターブレードを用いて充填して成形し、型から成形品を離してグリーンシートを作成し、そのグリーンシートを焼結して製品を作成することを特徴とする微細製品の製造方法。
【請求項2】
フォトマスクを用いて複数個のフォトレジストを別々に感光し、その感光した複数個のフォトレジストを積層して現像して型を作成し、その型に製品の材料粉末からなるスラリーをドクターブレードを用いて充填して成形し、型から成形品を離してグリーンシートを作成し、そのグリーンシートを焼結して製品を作成することを特徴とする微細製品の製造方法。
【請求項3】
感光パターンの異なるフォトマスクを用いて複数個のフォトレジストを別々に感光し、その感光した複数個のフォトレジストを別々に現像して複数個の型を作成し、その複数個の型に製品の材料粉末からなるスラリーをドクターブレードを用いて充填して成形し、型から成形品を離して複数個のグリーンシートを作成し、その複数個のグリーンシートを積層して焼結して製品を作成することを特徴とする微細製品の製造方法。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の微細製品の製造方法において、前記フォトレジストは、ドライフィルムであることを特徴とする微細製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−38304(P2007−38304A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−406146(P2003−406146)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】