説明

心臓の不整脈を治療するための拡張可能な医療デバイス

拡張可能な医療デバイス(10)は、第1の直径を有する円筒から第2の直径を有する円筒まで拡張可能な実質的に円筒状のデバイス(12)を形成するために、結合されて1つになった複数の細長いストラット(14)を有している。複数のストラットの少なくとも1つは、上記ストラットの厚さを少なくとも部分的に貫通して延びる少なくとも1つの開口部(24、26)を含む。有益な作用物質は、ストラット内の開口部に複数の層で充填されて、作用物質の所望の時間的放出特性が達成される。有益な作用物質は、心房細動を治療するために病変を形成するのに使用される化学的切除剤であることができる。ゼロ次、拍動性、増加、減少、正弦状、及び他の送出プロファイルを含む、様々な送出プロファイルを達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、組織支持医療デバイスに関し、より詳細には、器官を支持して開放性(patency)を維持するために、生きている動物又はヒトの体腔内に埋め込まれると共に、有益な作用物質を介入部位に送出することのできる、拡張可能で、取り外しできないデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連技術の概要]
これまで、身体通路の開放性を維持するために、身体通路内に埋め込まれる、永久的又は生分解性のデバイスが開発されてきた。これらのデバイスは、通常、経皮的に導入され、所望の位置に位置決めされるまで経腔的に輸送される。次いで、これらのデバイスは、デバイス内側に位置決めされたマンドレル又はバルーンの拡張のように機械的に拡張し、あるいは体内での作動時に蓄積されたエネルギーを放出することによって自ら拡張する。ステントと呼ばれるこれらのデバイスは、管腔内で一度拡張すると、体組織内に封入され、永久に埋め込まれたまま残る。
【0003】
既知のステントのデザインには、単繊維巻線ステント(米国特許第4,969,458号明細書)と、溶接された金属ケージ(米国特許第4,733,665号明細書及び米国特許第4,776,337号明細書)とが含まれ、最も有名なものには、周囲に軸方向のスロットが形成された薄肉金属円筒(米国特許第4,733,665号明細書、米国特許第4,739,762号明細書及び米国特許第4,776,337号明細書)がある。ステントに使用するための既知の構成材料には、ポリマー、有機織物、及び、ステンレス鋼、金、銀、タンタル、チタンや、ニチノールのような形状記憶合金のような生体適合性金属が含まれる。
【0004】
米国特許第4,733,665号明細書、米国特許第4,739,762号明細書及び米国特許第4,776,337号明細書は、軸方向のスロットを有し、薄肉管状部材の形態の拡張可能で変形可能な管腔内血管グラフト(interluminal vascular graft)を開示しており、軸方向のスロットによって、薄肉管状部材を半径方向の外側に拡張させて身体通路に接触させるようになっている。挿入後、薄肉管状部材は、その弾性限界を超えて機械的に拡張し、その後、体内で永久的に固定される。米国特許第5,545,210号明細書は薄肉管状ステントを開示しており、その薄肉管状ステントは、先に説明したものと幾何学的に同様であるが、ニッケル−チタン形状記憶合金(「ニチノール」)で構築され、その弾性限界を超えることなく、体内に永久的に固定することができる。これらすべてのステントは、非常に重要なデザイン特性を共有している。すなわち、各デザインにおいて、ステント拡張中に永久変形する特徴部が角柱形状(prismatic)である、すなわちこれらの特徴部の断面積が一定のままか、又はその有効長さ全体に沿って徐々に変化する。これら角柱形状の構造は、永久変形を開始する前に大きい弾性変形量を提供するのに適していることが理想的であり、その結果として、ステントの拡張力、ステントのはね返り(recoil)、ストラット要素(strut element)の安定性、送出カテーテル上でのステントの固定、及びX線不透過性(radiopacity)を含む重要な特性において準最適な(sub-optimal)デバイス性能をもたらす。
【0005】
参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第6,241,762号明細書は、それ以前のステントの上述した性能不足を救済する非角柱形状のステントのデザインを開示している。さらに、この特許の好ましい実施形態は、大きな非変形ストラットとリンク要素とを有し、ストラット又はリンク要素又はデバイスの機械的特性を全体として損なうことなく穴を含むことのできるステントを提供している。さらに、これらの穴は、種々の有益な作用物質をデバイスの埋め込み部位に送出するための大きな保護されたリザーバとして役立つ場合がある。
【0006】
ステントベースの有益な作用物質の局所送出によって対処することができる多くの問題の中で、最も重要なものの1つは、再狭窄である。再狭窄は、血管形成術及びステントの埋め込みのような血管介入後に発生することのある主要な合併症である。簡単に定義すれば、再狭窄とは、細胞外マトリクスの堆積及び血管平滑筋細胞の増殖によって血管内腔の直径を縮小させて、最終的に、管腔の最狭窄化(renarrowing)、又は、さらに再閉塞をまねくことのある、創傷治癒プロセスである。改善された外科的技術、デバイス及び医薬品製剤の導入にもかかわらず、依然として、血管形成術後6〜12か月以内に全体的な再狭窄が起こる確率は25%〜50%の範囲にあると報告されている。この問題に対処するために、追加的な血管再生術がしばしば必要となり、その結果、患者にとっての外傷及び危険が増大する。
【0007】
再狭窄の問題に対処するために開発が進められている技術のいくつかには、傷害部位への放射線照射や、外傷を負った血管壁に様々な有益な作用物質又は医薬品製剤を送出するための従来のステントの使用が含まれる。後者の場合、従来のステントは、しばしば有益な作用物質(たいていは薬物含浸ポリマー)で表面コーティングされ、血管形成部位に埋め込まれている。あるいは、外部の薬物含浸ポリマーの被覆を、ステントを覆うように取り付け、血管内で共に配置させている。
【0008】
放射線治療による短期的な成果が、最初は有望であるように見えたが、長期の有益な成果は、以前に埋め込まれたステント内で起こる再狭窄、いわゆる、「ステント内」再狭窄の低減に限定されていた。放射線治療は、新規の病変(de novo lesions)内の再狭窄を防止するのに有効ではなかった。ステントストラットにまたがるポリマー被覆もまた、分岐動脈への流れを閉塞させる危険、動脈壁に対するステントストラットの不完全な並置(apposition)、及び他の問題のために、ヒトの臨床試験において問題があることがわかっていた。許容できないほどに高いレベルのMACE(死、心臓発作、又は、血管形成術又は冠状動脈バイパス手術の繰り返しの必要性を含む主要心事故(Major Adverse Cardiac Events))によって、被覆で覆われたステントについての臨床試験が早期に打ち切られていた。
【0009】
対照的に、種々の有益な作用物質の表面コーティングを有する従来のステントは、早期に有望な結果を示していた。例えば、米国特許第5,716,981号明細書は、ポリマー担体及びパクリタキセル(癌性腫瘍の治療に一般的に用いられる公知の化合物)を含む組成物で表面コーティングされたステントを開示している。当該特許は、噴霧及び浸漬のようなステント表面のコーティング方法と、コーティング自体の所望の特徴とを詳細に説明している。当該特許は、「ステントを滑らか且つ均一にコーティングし、」「抗血管新生因子の均一且つ予測可能な長期放出を提供する」はずである。しかし、表面コーティングは、有益な作用物質の放出特性(release kinetics)を実際にはほとんど制御することができない。これらのコーティングは、必然的に非常に薄く、通常は5〜8ミクロンの深さである。これと比較して、そのステントの表面積は非常に大きいため、有益な作用物質の総容量は、周囲組織に放出するために非常に短い拡散経路を有している。
【0010】
表面コーティングの厚さを増加させることには、薬剤放出を制御する能力及び薬剤充填量を増加させる能力を含む薬剤の放出特性を改善するという有益な効果がある。しかし、コーティングの厚さを増加させることにより、ステント壁の厚さ全体が増加する。これは、埋め込み中の血管壁への外傷の増大、埋め込み後の内腔の流れ断面積の減少、及び拡張及び埋め込み中にコーティングが機械的故障又は損傷の影響をさらに受けやすくなることを含む複数の理由から望ましくない。コーティングの厚さは、有益な作用物質の放出特性に影響を及ぼす幾つかの要因のうちの1つであるため、厚さを制限することにより、達成することのできる放出速度や持続時間等の範囲が制限される。
【0011】
放出プロファイルが準最適であることに加えて、表面コーティングされたステントにはさらなる問題がある。デバイスのコーティングに用いられることが多い固定されたマトリクスポリマー担体は通常、コーティング中に有益な作用物質の約30%を永久に保持する。これらの有益な作用物質は細胞毒性が非常に高いことが多いため、慢性炎症、遅発性血栓症、及び血管壁の治癒の遅れ又は不完全性のような亜急性の又は慢性の問題が生じ得る。さらに、ポリマー担体自体は、血管壁の組織に対して高炎症性であることが多い。一方、ステント表面上で生分解性ポリマー担体を使用すると、ポリマー担体が分解した後にステントと血管壁の組織との間に「事実上の空間」すなわち空隙が生じる可能性があり、この空隙は、ステントと隣接組織との間で差動運動(differential motion)させる。その結果生じる問題としては、微小剥離(micro-abrasion)及び炎症、ステントのずれ(stent drift)、及び血管壁の再内皮化の不全が挙げられる。
【0012】
別の重大な問題は、ステントを拡張すると、その上のポリマーコーティングに応力が加わることにより、コーティングが塑性変形し、さらには断裂する可能性があり、したがってこれが薬剤の放出特性に影響を及ぼすか又は他の有害な影響を及ぼす可能性があることである。さらに、アテローム硬化症の血管においてこのようなコーティングされたステントを拡張すると、ポリマーコーティングに円周方向の剪断力が加わり、それによりコーティングがその下のステント表面から分離される可能性がある。このような分離も同様に、コーティング断片の塞栓形成を含む有害な影響を及ぼして、血管を閉塞させる可能性がある。
【発明の開示】
【0013】
[発明の概要]
従来技術の欠点に鑑みて、切除剤(ablative agent)を含む有益な作用物質を血管内の部位に送出できるステントを提供することが有利であろう。
【0014】
本発明の一態様によれば、心臓不整脈を処置する医療デバイスは、生体再吸収性の埋め込み可能デバイスと、該埋め込み可能デバイス内の複数の開口部と、該開口部内に設けられた化学的切除剤とを備え、前記開口部は、該開口部内に作用物質を永久的に捕捉することなく、円筒形状の拡張可能な前記埋め込み可能デバイスの周囲の組織に対して前記化学的切除剤を送出するように構成されている。
【0015】
本発明のさらなる態様によれば、心房細動を治療する方法は、生分解性マトリクス内に化学的切除剤を有するステントを設けることと、切除が望まれる患者の血管内における切除位置を決定することと、該切除位置に生体再吸収性のステントを埋め込むことと、化学的切除剤を血管内腔内に実質的に送出することなく、化学的切除剤を血管の壁に送出することと、組織の部分を絶縁する血管壁内に病変を作り出すこととを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、ここで、添付図面に示す好ましい実施形態を参照して、より詳細に述べられるであろう。添付図面において、同様の要素には、同様の参照符号が付されている。
【0017】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
図1及び図2を参照すると、本発明の好ましい一実施形態による組織支持デバイスは、参照符号10によって示されている。組織支持デバイス10は、S状の架橋要素14によって接続された複数の円筒管12を含んでいる。架橋要素14によって、組織支持デバイスは、血管系の蛇行した経路を通過して配置部位に至るときに、軸方向に曲がることを可能にし、組織支持デバイスは、支持される血管壁の湾曲に一致するのに必要があるときに、曲がることを可能にする。円筒管12のそれぞれは、円筒管の端部表面から、対向する端部表面に向けて延びる複数の軸方向のスロット16を有している。
【0018】
スロット16間には、軸方向のストラット18及びリンク22の網状体が形成されている。ストラット18及びリンク22には、有益な作用物質を受け取ると共に送出する開口部が設けられている。図9〜図17に関して以下に述べるように、有益な作用物質は、作用物質の時間的放出特性を制御する層内又は他の構成内の開口部内に充填される。
【0019】
それぞれの個々のストラット18は、好ましくは、応力/歪集中機能(stress/strain concentration features)としての役割を果たす、各端部に1つずつある一対の幅狭のセクション20により、構造部の残りに連結されている。ストラットの幅狭のセクション20は、円筒構造のヒンジとして機能する。応力/歪集中機能は、全体が延性の材料の塑性変形範囲内で動作するように設計されるため、延性ヒンジ20と呼ばれる。延性ヒンジ20は、参照により本明細書に援用される米国特許第6,241,762明細書号にさらに詳細に記載されている。
【0020】
図面及び説明を参照すると、どの構成要件の幅も、円筒管の円周方向の寸法として定義されている。どの構成要件の長さも、円筒管の軸方向の寸法として定義されている。どの構成要件の厚さも、円筒管の肉厚として定義されている。
【0021】
延性ヒンジ20の存在によって、組織支持デバイス内の残りの構成要件の全ては、幅を増加することが可能になり、または、それぞれの矩形の慣性モーメントの円周方向を向く成分が増加し、したがって、これらの構成要件の強度及び剛性(rigidity)を著しく増加することが可能になる。最終的に、弾性変形、次に、塑性変形が始まり、組織支持デバイスの他の構造要素が大きな弾性変形を受ける前に、延性ヒンジ20内で伝播することになる。組織支持デバイス10を拡張するのに必要とされる力は、全体として、組織支持デバイスの構造ではなく、延性ヒンジ20の幾何学形状の関数となり、ヒンジ幾何学形状を実際上任意の材料壁厚さについて変えることによって、任意に小さな拡張力を特定することができる。ストラット18及びリンク22の幅及び厚さを増加させる能力は、有益な作用物質を受け取る開口部にさらなる面積及び深さを提供する。
【0022】
図1及び図2の好適な実施形態では、延性ヒンジ20間の個々のストラット18の幅を、所定の直径及びその直径の周りに配置された所定数のストラットに対して幾何学形状的に可能な最大の幅に増大することが望ましい。ストラットの幅に関する幾何学形状的な制限だけがスロット16の実質的な幅を最小にし、レーザ加工の場合では0.0508mm(約0.002インチ)である。ストラット18の横方向の剛性(stiffness)はストラットの幅の3乗で増加するため、ストラットの幅の比較的わずかな増加によりストラットの剛性が著しく増加する。最終的に、延性ヒンジ20の挿入及びストラット幅の増加により、ストラット18はもはや可撓性板バネとしては働かず、延性ヒンジ間の本質的な剛性梁(rigid beams)として働く。円筒形状の組織支持デバイス10の半径方向の拡張又は圧縮は全て、延性ヒンジ20の機械的歪により順応され、全体的に非常にわずかな半径方向の拡張又は圧縮時にヒンジの降伏(yield)が始まる。
【0023】
図1及び図2に示される延性ヒンジ20は、応力/歪集中装置(stress/strain concentrator)として機能する例示的な好ましい構造部である。本発明における延性ヒンジとして、米国特許第6,241,762号明細書に示され記載されているような多くの他の応力/歪集中装置の構成を用いてもよい。応力/歪集中機能、すなわち、延性ヒンジ20の幾何学形状的詳細は、厳密な機械的拡張特性を特定用途に必要とされる特性に合わせるように大幅に変えることができる。
【0024】
延性ヒンジを含む組織支持デバイスの構成は図1に示されているが、有益な作用物質は、参照により本明細書に援用される、2001年8月20日に出願された米国仮特許出願第60/314,360号及び2001年9月7日に出願された米国特許出願第09/948,987号に示されるデザインを含む種々のデザインを有するステントの開口部内に含まれてもよいことが理解されるべきである。有益な作用物質の開口部を組み込む本発明は、他の既知のステントデザインと共に使用してもよい。
【0025】
図1〜図4に示されるように、少なくとも1つ以上の、好ましくは一連の開口部24は、ストラット18の中立軸に沿って間隔を空けて、レーザ穴あけ又は当業者に既知の任意の他の手段によって形成されている。同様に、少なくとも1つの、好ましくは一連の開口部26は、リンク22の選択された位置に形成されている。ストラット18及びリンク22の双方に開口部24及び26を用いることが好ましいが、当業者には、開口部をストラット及びリンクの一方のみに形成できることが明らかである。開口部はまた、架橋要素14内に形成してもよい。図1及び図2の実施形態では、開口部24、26は、実際円形であり、組織支持デバイス10の幅を貫通して延びる円筒穴を形成している。しかし、当然ながら、任意の幾何学形状又は構成の開口部が、本発明の範囲から逸脱することなく使用され得ることが、当業者に明らかである。さらに、組織支持デバイスの厚さより浅い深さを有する開口部を使用してもよい。
【0026】
曲げの際のストラット18の挙動は、I型梁(I-beam)又はトラス(truss)の挙動と類似している。図2に示されるストラット18の外縁要素32は、I型梁フランジに対応し、引張応力及び圧縮応力に耐えるが、ストラット18の内側要素34は、I型梁のウェブに対応し、せん断に耐え、表面の座屈及びしわ寄りを防止するのに役立つ。曲げ荷重の大部分は、ストラット18の外縁要素32によって耐えられるため、できる限り多くの材料の集中を中立軸から遠くに離す結果、ストラットの撓みに抵抗する最も効果的なセクションとなる。この結果、ストラットの強度及び剛性(rigidity)に悪影響を与えることなく開口部24、26を形成するように、ストラットの軸に沿って材料を適正に除去することができる。したがって、ストラット18及びリンク22は、ステント拡張中に本質的に剛性(rigid)を保って形成されるため、開口部24、26も変形しない。
【0027】
ストラット18の開口部24、26は、内皮細胞の再生を促すことによって、介入部位の治癒を促進することができる。ストラット18に開口部24、26を設けることによって、上述したように、ストラットの断面が、ストラットの強度及び完全性を低下せずに有効に小さくなる。この結果、内皮細胞の再生が起こらねばならない距離全体は、約0.0635〜0.0889mm(約0.0025〜0.0035インチ)に減少し、これは、従来のステントの厚さの約半分である。拡張可能な医療デバイスの挿入の際、内皮層からの細胞が開口部24、26によって血管の内壁から擦り取られてもよく、埋め込み後は内部に残ったままでよいことがさらに考えられる。したがって、このような内皮細胞があることが血管壁の治療基盤となる。
【0028】
開口部24、26は、作用物質、最も好ましくは、組織支持デバイス10が支持する血管壁に送出される有益な作用物質で充填される。
【0029】
本明細書で使用される用語「作用物質」及び「有益な作用物質」は、最大限に広く解釈することを意図しており、バリア層又は担体層のような不活性作用物質はもちろんのこと、任意の治療薬又は薬剤を含むように用いられる。用語「薬剤」及び「治療薬」は、生物の身体管路に送出されて、所望の、通常は有益な効果をもたらす任意の治療活性物質を指すように交換可能に用いられる。本発明は、特に、例えばパクリタキセル及びラパマイシンのような抗増殖薬(抗再狭窄薬)、及びヘパリンのような抗トロンビン薬の送出に特に適している。
【0030】
本発明で使用される有益な作用物質は、限定はしないが、抗増殖薬、抗トロンビン薬、抗血小板薬、抗脂質薬、抗炎症薬、及び抗血管形成薬、ビタミン、ACE阻害剤、血管作用物質、抗有糸分裂薬、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NOドナー、エストラジオール、抗硬化症薬によって、単独で又は組み合わせて実証された全ての種類の作用を含む薬剤と一般に呼ばれる従来の小分子量治療薬を含む。有益な作用物質はまた、いくつかの例を挙げると、限定はしないが、ペプチド、脂質、蛋白質薬剤、酵素、オリゴヌクレオチド、リボザイム、遺伝物質、プリオン、ウィルス、細菌、及び内皮細胞のような真核細胞、単核細胞/大食細胞又は血管平滑筋細胞を含む生物学的作用物質と呼ぶことのある、標的組織に薬剤に似た作用を及ぼす大分子量物質を含む。他の有益な作用物質は、限定はしないが、微粒子、マイクロバブル、リポソーム、放射性同位元素のような物理的作用物質、あるいは、光又は超音波エネルギーのような他の形態のエネルギーによって、又は、全身に投与することのできる他の循環分子によって活性化される作用物質であってもよい。
【0031】
図1及び図2に示される本発明の実施形態は、有限要素解析法及び他の技術を用いて、ストラット及びリンクの開口部内での有益な作用物質の配置を最適にするために、さらに改善することができる。基本的に、開口部24、26の形状及び位置は、空隙容積を最大限にし、一方で延性ヒンジ20に対するストラット18の強度及び剛性(rigidity)を比較的高く維持するために変更することができる。
【0032】
図3は、本発明のさらなる好適な実施形態を示しており、同様の構成部品を示すのに同様の参照符号が用いられている。組織支持デバイス100は、S状の架橋要素14によって接続された複数の円筒管12を含んでいる。円筒管12のそれぞれは、円筒管の端部表面から対向する端部表面に向けて延びる複数の軸方向のスロット16を有している。スロット16間には、軸方向のストラット18とリンク22との網状体が形成されている。個々のストラット18はそれぞれ、各端部に1つずつある一対の延性ヒンジ20により構造部の残りに連結され、この一対の延性ヒンジ20は応力/歪集中機能として働く。延性ヒンジ20のそれぞれは、弧状面28と凹状切欠面29との間に形成されている。
【0033】
ストラット18の中立軸に沿って間隔を置いて、少なくとも1つ以上の、好ましくは一連の開口部24’が、レーザ穴あけ、又は当業者に既知の任意の他の手段によって形成されている。同様に、少なくとも1つの、好ましくは一連の開口部26’が、リンク22の選択された位置に形成されている。ストラット18及びリンク22の双方に開口部24’、26’を用いることが好ましいが、当業者には、開口部をストラット及びリンクの一方のみに形成できることが明らかである。図示された実施形態では、ストラット18の開口部24’はほぼ矩形であるが、リンク22の開口部26’は多角形である。しかしながら、本発明の範囲から逸脱せずに、任意の幾何学形状又は構成の開口部を用いることができること、及び、開口部24、24’の形状を開口部26、26’の形状と同じ又は異なるものにできることは当業者に明らかである。上記に詳述したように、組織支持デバイス100が配置された血管に送出するために、開口部24’、26’に、作用物質、最も好ましくは有益な作用物質を充填してもよい。開口部24’、26’は貫通開口部であることが好ましいが、ストラット又はリンクの厚みを通って部分的にのみ延びる窪みであってもよい。
【0034】
上述した比較的大きな保護された開口部24、24'、26、26'は、本発明の拡張可能な医療デバイスを、例えば、蛋白質薬剤、酵素、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、遺伝子/ベクター構造体、及び(限定はしないが、患者自身の内皮細胞を含む)細胞のような、より深遠な高分子、又は遺伝的作用物質、又は細胞性作用物質を有する作用物質を送出するのに特に適するようにさせる。これらのタイプの作用物質の多くは、生分解性か、又は、脆く、保存期間が非常に短いか、又は、全く保存ができず、使用時に調製しなければならず、他の理由により、製造中にステントのような送出デバイス内に予め充填することができない。本発明の拡張可能な医療デバイス内の大きな貫通開口部は、使用時か、又は、使用前に、こうした作用物質の充填を容易にすると共に、送出中及び埋め込み中に、作用物質が剥離すること及び押し出されることから防護するために、保護されたエリア又はレセプターを形成する。
【0035】
貫通開口部を用いて送出することのできる有益な作用物質の容量は、同じステント/血管壁のカバー率を有するステントを覆う5ミクロンのコーティングの容量の約3〜10倍である。はるかに大きいこの有益な作用物質の容量により、幾つかの利点が得られる。より大きい容量を用いて、それぞれが個別の放出プロファイルを有する複数の薬剤の組み合わせを送出し、効果を向上させることができる。また、より大きい容量を用いて、あまり強力でない薬剤をより大量に供給すると共に、内皮層の治癒の遅れのように、より効力のある薬剤による望ましくない副作用のない臨床効果を得ることができる。
【0036】
貫通開口部はまた、血管壁面に接触する化合物を保持する有益な作用物質の表面積を減少させる。有益な作用物質の開口部を有する典型的なデバイスの場合、この接触は、表面コーティングされたステントと比較すると、約6:1〜8:1の範囲の倍率で減少する。これは、ポリマー担体及び炎症を引き起こす可能性のある他の作用物質と血管壁組織との接触を劇的に減らすと同時に、送出された有益な作用物質の量を増加させ、放出特性の制御を改善する。
【0037】
図4は、複数の開口部24’を有する一対の延性ヒンジ20間に位置する、組織支持デバイス100のストラット18のうちの1つの拡大図を示している。図5は、図4に示される開口部24’のうちの1つの断面図を示している。図6は、有益な作用物質36がストラット18の開口部24’内に充填されている場合の同じ断面図を示している。任意に、開口部24’及び/又は開口部26’を有益な作用物質36で充填した後、図7に概略的に示されるように、有益な作用物質36と同じであっても又は異なっていてもよい有益な作用物質38の薄層でステントの外表面全体をコーティングすることができる。さらになお、本発明の別の変形形態では、図8に示されるように、ステントの外表面を第1の有益な作用物質38でコーティングしながら、ステントの内表面を異なる有益な作用物質39でコーティングする。ステントの内表面は、ステントのうち少なくとも、拡張後に血管の内腔を形成する表面によって画定される。ステントの外表面は、ステントのうち少なくとも、拡張後に血管の内壁と接触すると共に直接支持する表面によって画定される。内表面上にコーティングされた有益な作用物質39は、有益な作用物質36が、血管内腔内に流れることと、血流内に押し流されることとを防止するバリア層であってもよい。
【0038】
図9は開口部24の断面図を示しており、1つ又は複数の有益な作用物質が、離散的な層50の開口部24に充填されている。このような層を形成する一つの方法は、有益な作用物質、ポリマー担体、及び溶媒を含む溶液を、開口部内に送出し、溶媒を蒸発させて、担体内に有益な作用物質の薄い固体層を形成することである。有益な作用物質を送出する他の方法を使用して、層を形成することもできる。層を形成する別の方法によれば、作用物質が構造的に担体を必要とすることなく存続可能である場合、有益な作用物質を開口部内のみに充填してもよい。その後、各開口部が、部分的に又は全体的に充填されるまで、プロセスを繰り返すことができる。
【0039】
典型的な一つの実施形態では、開口部24の全深は、約125〜約140ミクロンであり、典型的な層厚は、約2〜約50ミクロン、好ましくは約12ミクロンである。従って、典型的な各層はそれぞれ、表面コーティングされたステントに塗布される典型的なコーティングの約2倍の厚さである。1つの典型的な開口部には、このような層が少なくとも2層、好ましくは約10〜12層あり、有益な作用物質の総厚は、典型的な表面コーティングの約25〜28倍である。本発明の好ましい一つの実施形態によれば、開口部は、少なくとも3.2×10−3mm(5×10−6平方インチ)、好ましくは少なくとも4.5×10−3mm(7×10−6平方インチ)の面積を有する。
【0040】
各層は個別に形成されるため、個々の化学組成物及び薬物動態学的(pharmacokinetic)特性を各層に与えることができる。このような層の多くの有用な構成を形成することができ、その幾つかは以下で説明される。各層は、1つ又は複数の作用物質を層ごとに同じか又は異なる比率で含んでもよい。層は、密であってもよく、多孔性であってもよく、あるいは他の薬剤又は賦形剤で充填されていてもよい。
【0041】
図9は、ともに有益な作用物質の一様で均質な分布を形成する同じ層50を含む最も単純な層の配置を示している。担体ポリマーが生分解性材料から構成されていれば、担体を含む有益な作用物質の侵食が、開口部の両面で同時に起こり、有益な作用物質は、担体の侵食速度に相当するほぼ直線的な速度で徐々に放出されるであろう。この直線的な又は一定の放出速度は、ゼロ次送出プロファイルと呼ばれる。貫通開口部と組み合わせて生分解性担体を使用することは、ステントの半径方向の最も外側の表面と血管壁の組織との間に実際上の空間又は空隙を形成することなく、所望の時間内で、有益な作用物質の100%の放出を保証するのに、特に有用である。貫通開口部内の生分解性材料が除去されると、開口部は、ストラットで覆われた血管壁と血流との間の連通を提供する場合がある。こうした連通は、血管治癒を加速し、細胞、及び血管壁と接触したステントをより完全に固定する細胞外成分の内部成長を可能にする。あるいは、一部の貫通開口部を有益な作用物質で充填し、他の貫通開口部を未充填のままにしてもよい。充填された開口部が有益な作用物質を吐出する一方で、未充填の穴は、ステントを所定場所に固定するために、細胞及び細胞外成分の内部成長のための直接の巣状部(nidus)を提供することができる。
【0042】
表面コーティングされたステントの上方の貫通開口部を用いた完全侵食の利点は、ステントに基づく治療にとって新しい可能性を切り開く。持続性と発作性の両方の心房細動、持続性心室頻脈、再入性(reentrant)及び異所性を含む上室性頻脈、及び洞頻脈のような心臓不整脈の治療において、開発中のいくつかの技術は、種々のエネルギー源、例えば、無線周波数アブレーションと一般に呼ばれるように、マイクロ波を使用して肺静脈又は他の重要な位置内の組織を剥離して、望ましくない電気信号の伝播に対するバリアを瘢痕組織の形態で形成しようと試みる。焦点心房細動アブレーション技術は、無線周波数カテーテルを使用して、肺静脈内に円形瘢痕を形成することによって、肺静脈病巣を左心房の残りから絶縁する。これらの技術は、正確に制御するのが難しいことがわかっている。
【0043】
貫通開口部、生分解性担体、及び本明細書で述べる関連技術を使用したステントベースの治療は、心房細動の治療のために、特定のエリアに対して、化学的切除剤を特定の正確なパターンで送出するのに使用することができ、一方、本質的に細胞毒性のある切除剤が血管壁の組織と接触して永久的に捕捉されることが全くないことが保証される。心臓の不整脈の治療用のステントのデザインは、所望の円形病変を形成するのに十分であり得る10mm以下のような比較的短い長さを有することができる。さらに、化学的切除剤は、ステントが長くても短くても、ステントの短いセグメント上のみに設けることができる。安定性の改善のために、より長いステントを使用することができる。ステントの全長より短いセグメントが作用物質を含むとき、実施中に、ステントの作用物質保持部分の境界を明確に示すために、カテーテルの上又は中にマーカーバンドを設けることができる。マーカーバンドは、送出される作用物質の正確な位置を施術者に識別させることができる。
【0044】
化学的切除剤は、肺静脈を通る電気インパルスの伝播を妨げる無反応性瘢痕(refractory scar)又はバリアを形成することができるものである。化学的切除剤には、化学療法薬、硬化薬、及び、制御された瘢痕又は組織損傷を形成するために剥離するか、又はその他の方法で組織に損傷を与える作用物質として使用される作用物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
化学的切除剤の例には、フェノール、(o−、m−又はp−)クレゾール、レソルシノール、アルキルレソルシノール(例えば、ヘキシルレソルシノール)、ピロガロールのようなフェノール化合物と、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリン酸、カプリル酸、乳酸、グリコール(ヒドロキシ酢酸)酸、ハロアルキル酸(例えば、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸)、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、グルタル酸、安息香酸、ハロ安息香酸(例えば、クロロ安息香酸)、ニトロ安息香酸(例えば、ピクリン酸)のような有機酸化合物と、サリチル酸、没食子酸、ヒドロキシ安息香酸及びこれらの酸エステル誘導体のようなヒドロキシ安息香酸及びこれらの誘導体と、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド化合物と、ヒドロキシ尿素と、ストレプトマイシンのようなアミノサッカライドと、ゲンタマイシンのようなグアニジノサッカライドと、サポリンのようなリボソーム不活性化タンパク質と、脱水剤と、例えば、10/2/2/2の比でのホルマリン/ヨウ素/クロロヘキシジン/硝酸銀の混合物のような硬化剤とが含まれるが、これらに限定されない。化学的切除剤として使用することのできる他の作用物質は、酵素分解(ペプシン、トリプシン及び他のプロテアーゼ)又は酸化分解(過酸化物)による瘢痕を形成するものである。
【0046】
化学的切除剤を含むステントは、マッピング法によって特別に決定された位置に、円周リングの形状で病変を形成するのに使用することができる。化学的切除剤は、組織を除去するか、又は、その他の方法で組織に損傷を与えて、病変を形成することができる。
【0047】
ステント自体がまた、電気信号の伝播を妨げる瘢痕組織又は無反応性組織を形成することができる。例えば、いくつかのステント材料は、肺静脈内からの送信インパルスを阻止することができる再狭窄、ある種の瘢痕を生じさせることができる。他の生体再吸収性ステントは、分解するときに、カルシウム及び/又は他の材料の沈積物に似た瘢痕を形成することができる。ステントが再吸収された後に残るこの沈積物は、電気信号の伝播を妨げることができる。
【0048】
肺静脈のようなエリアの治療において、完全に生体再吸収性のステントを、構造的なステントを形成する第1生体再吸収性材料と、化学的切除剤を開口部内に含むマトリクスを形成する別の生体再吸収性材料と共に使用することができる。完全に生体再吸収性のステントを使用することによって、肺静脈又は他の血管内に金属又は他の材料が長期に存在することに関する、考えられる任意の問題に対処する。抗不整脈ステントの生体再吸収性構造は、生体再吸収性金属合金又は生体再吸収性ポリマーで形成することができる。ステントにとって有用な生体再吸収性金属合金には、亜鉛−チタン合金と、リチウム−マグネシウム合金、ナトリウム−マグネシウム合金、及び希土類金属を含有するマグネシウム合金のようなマグネシウム合金とが含まれる。生体再吸収性金属合金のいくつかの例は、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第6,287,332号明細書に記載されている。生体再吸収性金属合金ステントは、レーザ切断によって、本明細書に示された構成で形成することができる。これらの合金からステントを切断するときに、切断中に合金の酸化を最小にするため、不活性雰囲気が所望される場合があり、その場合、ヘリウムガス流又は他の不活性雰囲気を、切断中に適用することができる。マグネシウム合金は航空産業で使用され、航空産業用に使用される処理システムを、ステントの形成にも使用することができる。
【0049】
生体再吸収性金属合金は、ステントについて要求される必要な構造上の強度を提供するが、生体再吸収性金属合金内に薬剤を組み込むことが難しく、たとえ組み込むことができたとしても、薬剤を放出させることが難しい。さらに重要なことには、生体再吸収性金属合金表面上での薬剤コーティングの使用は、ステントの生分解性に障害となる可能性がある。したがって、化学的切除剤を含む生体再吸収性マトリクスを充填した生体再吸収性ステント内の開口部の組み合わせは、電気的に無反応な瘢痕を形成し、その後、血管から消失することのできるステントを提供する。
【0050】
生体再吸収性抗不整脈ステントは、ステントのストラット用の第1生体再吸収性ポリマーを選択するとともに、ステント内に有益な作用物質マトリクスを含む開口部を設けることによって、生体再吸収性ステントをコーティングする問題に対する解決策を提供する。開口部内のポリマー又は他のマトリクス材料は、ステントの構造上の特性を全く必要とせず、また、コーティングを必要とする柔軟性又は接着性もほとんど必要としない。従って、マトリクス材料の選択は、所望の放出プロファイルで薬剤を放出する当該材料の能力に基づいて行ってもよい。コーティング、含浸、又は他の方法を用いては容易に達成することができない、1つ又は複数の薬剤の指向性送出(directional delivery)もまた、リザーバを用いて達成することができる。
【0051】
組織指示デバイス10の構造的ストラットに使用することのできる生体再吸収性ポリマーの例には、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、PLAとPGAとのコポリマー、ポリ−L−ラクチド(PLLA)、ポリ−D,L−ラクチド(PDLA)、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第4,889,119号明細書は、本発明で有用な生体再吸収性ポリマーのいくつかを記載している。
【0052】
リザーバ内のポリマー/薬剤マトリクスに使用することのできる生体再吸収性ポリマーの例には、ポリ乳酸(PLA)と、ポリグリコール酸(PGA)と、PLA及びPGAのコポリマーと、乳酸・グルコール酸共重合体(PLGA)と、ポリ−L−ラクチド(PLLA)と、ポリ−D,L−ラクチド(PDLA)と、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)と、ポリエチレングリコール及び酸化ポリエチレン、ポリ(ブロック−酸化エチレン−ブロック−酸化プロピレン−ブロック−酸化エチレン)と、ポリビニルピロリドンと、ポリオルトエステルと、ポリヒアルロン酸、ポリ(グルコース)、ポリアルギニン酸、キチン、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及び、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテルのようなシクロデキストリン及び置換シクロデキストリンのようなポリサッカライド及びポリサッカライド誘導体と、ポリリシン、ポリグルタミン酸、アルブミンのようなポリペプチド及びタンパク質と、これらの組み合わせとが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、リザーバ内のポリマーは、ステント自体の分解と実質的に同時に又はステント自体の分解前に、マトリクスを分解させる速度で分解される。
【0053】
生体再吸収性ポリマーステントは、成形、押し出し加工、他の熱成形法、レーザ切断、マイクロ放電加工を含む半導体作製法、又は、これらのプロセスの組み合わせを含む既知の方法によって形成することができる。これらの方法は、参照によりその全体が本明細書に援用される2004年4月8日に出願された米国特許出願第10/822,063号にさらに記載されている。本明細書に示されるステントは、作ることのできるステント構造のタイプの1つの例に過ぎない。織ったステント、コイル状ステント、蛇状パターンステント、ダイヤモンドパターンステント、山形紋状(chevron)ステント又は他のパターン、あるいは、爪車状(racheting)ステント又は施錠(locking)ステントを含む、多くの他のステントの構成を使用することもできる。
【0054】
抗不整脈ステントは、効力のある化学的切除剤の短期送出を提供する。化学的切除剤は、30日未満のような短期間にわたって送出される一方、ステントは、6ヶ月、3ヶ月、又はそれより短期間のような短期間で生体再吸収可能であることができる。
【0055】
一方、特定の治療の目標が、長期的効果を提供することである場合、開口部内に位置する有益な作用物質は、表面コーティングされたデバイスと比べて同様に著しく大きな利点を提供する。この場合、有益な作用物質及び非生分解性担体を含む組成物は、好ましくは、以下で述べる拡散バリア層と組み合わされて、貫通開口部内に充填されるであろう。心臓の不整脈の例を続けると、肺静脈口又は他のいくつかの重要な位置の近くに長期的抗不整脈薬剤を導入することが望ましいであろう。
【0056】
この代替的な抗不整脈ステントにおいて、抗不整脈薬剤は、不規則な電気インパルスが伝播する肺静脈又は他の位置に、直接、長期にわたって送出される。一般に、「抗不整脈」(抗不規則性心調律)薬剤は、薬剤がどのように働くかによって「クラス」にグループ分けされる。クラスIは、心筋内の電気伝導速度を低減させるナトリウムチャンネル遮断薬である。クラスIIは、心臓を通る伝導を減速させ、AV結節を不規則なインパルスに対して敏感でなくするベータアドレナリン遮断薬又はベータ遮断薬である。クラスIIIは、心臓内の神経インパルスを減速させるカリウムチャンネル遮断薬である。クラスIVは、心臓のような平滑筋細胞内へのカルシウムイオンの流れを妨げるか、又は減速させるカルシウムチャンネル遮断薬である。これは、筋細胞収縮を妨害して、血管が拡張すると共により多くの血液及び酸素を組織に運ぶことが可能になる。抗不整脈薬剤の例には、プロカインアミド、キニジン、ジソピラミド、フレカイニド、ソタロール、ドフェチリド、アミオダロン、及びイブチリドが含まれる。
【0057】
長期間にわたって制御された方法で抗不整脈薬剤のような有益な作用物質を送出する貫通開口部の能力は、表面コーティングに比べて著しい利点を提供する。非生分解性担体マトリクスによる有益な作用物質の一時的な拡散挙動は、一般に、次式のフィックの第2法則によって記載することができる。
【0058】
【数1】

【0059】
ここで、Cは断面xにおける有益な作用物質の濃度であり、xは表面コーティングの厚さ、又は貫通開口部の深さであり、Dは拡散係数であり、tは時間である。バリア層を有する貫通開口部についてのこの偏微分方程式の解は、正規確率整関数(normalized probability integral function)又はガウス誤差関数の形態をとることになり、その引数(argment)は、以下の項を含むことになる。
【0060】
【数2】

【0061】
所与のレベルの治療を持続することができる、表面コーティングについての時間間隔と、貫通開口部についての時間間隔とを比較するために、フィックの第2法則を使用して、コーティング及び開口部それぞれの最も内側の表面において等しい濃度を達成するのに必要とされる時間、すなわち、x及びtの値を比較することができ、その値について、以下の誤差関数の引数が等しい。
【0062】
【数3】

【0063】
従って、匹敵する濃度を達成するための拡散時間の比は、深さの比の二乗で変化する。典型的な開口部の深さは約140ミクロンであるが、典型的なコーティングの厚さは約5ミクロンであり、この比の二乗は、784であり、貫通開口部についての有効な治療持続時間は、同じ組成物の表面コーティングに比べて、貫通開口部についておそらくほぼ3桁大きいことを意味する。こうした放出プロファイルの固有の非線形性は、以下で述べるように、貫通開口部の場合には、貫通開口部内の層の有益な作用物質濃度を変えることによって部分的に補償することができるが、薄い表面コーティングでは補償できない。有益な作用物質の送出持続時間のこの大きな利点に加えて、貫通開口部は、有益な作用物質の3〜10倍多い量を送出することができ、持続性治療において全体として決定的な利点を提供することが思い出されるであろう。上記拡散例は、固体状態搬送機構(solid state transport mechanisms)のより広いクラスに特徴的な、深さと拡散時間との間の一般的な関係を示す。
【0064】
拡張したデバイスの内腔に面する表面として知られる、半径方向の最も内側又は内側に向く表面に対して放出された有益な作用物質は、例えば、血流によって、標的エリアから急速に運び去られ、したがって、失われる場合がある。こうした状況で充填された全体の作用物質のうち半分までの作用物質は、血流によって運び去られるため、治療効果がない場合がある。これは、全ての表面コーティングされたステント並びに図9の貫通開口部についておそらく当てはまる。
【0065】
図10は、第1層52の内表面が円筒状のデバイスの内側に向く表面54と実質的に同一平面上にあるように、第1層52が貫通開口部24内に充填されるデバイスを示している。第1層52は、バリア材料と呼ばれる材料から成り、バリア材料は、血管内腔に対して内側に向く方向への後続の層の生分解性を阻止するか、又は抑制し、及び/又は、その方向への有益な作用物質の拡散を阻止するか、又は抑制する。その後、他の層の生分解性又は有益な作用物質の拡散は、血管壁の標的組織に直接接触する、デバイスの外側に向く表面56の方向にだけ進行することができる。バリア層52はまた、有益な作用物質の内部層の水和作用を防止するように機能して、こうした層が吸湿性材料で形成されるときに、内部層の増大を防止してもよい。バリア層52は、さらに、開口部が最終的に完全になくなるように、他の層内の生分解性材料よりずっとゆっくり分解する生分解性材料から成ってもよい。貫通開口部の最も内側に向く表面内にバリア層52を設けることによって、有益な作用物質の全充填量が、血管壁の標的エリアに送出されることが保証される。開口部の無い状態で、表面コーティングされたステントの内側に向く表面上にバリア層を設けることによって、同じ効果が得られないことに留意すべきである。こうしたコーティング内の有益な作用物質は、金属ステントを通して外部表面上の標的エリアまで移動することができないため、デバイスの内径上に捕捉されたままになるだけであり、やはり治療効果がない。
【0066】
バリア層は、有益な作用物質の放出特性をより複雑な方法で制御するのに使用することができる。所定の分解時間を有するバリア層52は、下地層をより急速な生分解性に両面からさらすことによって、有益な作用物質の治療を所定時間で故意に打ち切るのに使用することができるであろう。バリア層はまた、個別の系統的に適用された作用物質によって活性化されるように調合することもできる。系統的に適用されたこうした作用物質は、バリア層の多孔性を変え、及び/又は、バリア層又は大量の有益な作用物質担体の生分解速度を変えることができるであろう。いずれの場合も、有益な作用物質の放出は、系統的に適用された作用物質の送出によって、医師によって活性化することができるであろう。医師の活性化による治療のさらなる実施形態では、マイクロバブル内に封入されると共にデバイスの開口部内に充填された有益な作用物質を利用する。体の外からの超音波エネルギーの印加を使用して、所望の時刻にマイクロバブルを崩壊させ、リザーバの外側に向く表面に拡散するように有益な作用物質を放出させることができる。これらの活性化技術は、本明細書に記載された放出特性を制御する技術と共に使用されて、選択された時点で活性化し及び/又は打ち切ることができる所望の薬剤放出プロファイルが達成される。
【0067】
図11Aは、貫通開口部内に設けられた層の構成を示しており、生分解性担体材料内の有益な作用物質の層50は、活性作用物質が充填されていない、生分解性担体材料のみの層58と交互に配置され、バリア層52は、内側に向く表面に設けられている。図11Bの放出特性プロットに示されるように、こうした構成により、階段的又は拍動的送出プロファイルを達成する3つのプログラム可能なバースト又は波で、有益な作用物質を放出する。活性作用物質の無い状態で担体材料層を使用することによって、薬剤放出が細胞生物化学的プロセスと同期して、効率が上がる可能性を生じる。
【0068】
あるいは、図12に示されるように、異なる層が全く異なる有益な作用物質から成り、異なる時点で異なる有益な作用物質を放出する能力を生じさせることができる。例えば、図12では、抗トロンビン薬の層60は、ステントの内側に向く表面に堆積され、それにバリア層52と、抗増殖薬62及び抗炎症薬64の交互の層とが続く。この構成は、抗トロンビン薬を血流内へ最初に放出することができ、これと同時に、抗炎症薬のプログラムされたバーストを散在させた抗増殖薬を血管壁に徐々に放出する。これらの層の構成は、体の種々の自然治癒プロセスと協調して、特定の時点での作用物質の送出バーストを達成するように設計することができる。
【0069】
さらなる代替が図13に示されている。ここでは、同じ有益な作用物質の濃度が層ごとに変わり、任意の形状の放出プロファイルを生成する能力が生じている。例えば、外側に向く表面56からの距離が増すにつれて層66内の作用物質の濃度を漸進的に増加させることによって、薄い表面コーティングで作ることが不可能な、漸進的に増加する放出速度を有する放出プロファイルが生成される。
【0070】
有益な作用物質の放出特性を制御する別の一般的な方法は、薬剤溶出源の表面積を時間の関数として変えることによって、有益な作用物質の流束を変えることである。これは、フィックの第1法則に従う。フィックの第1法則は、瞬間的な分子流束は、複数の因子の中でもとりわけ、表面積に比例することを次式のように述べている。
【0071】
【数4】

【0072】
ここで、∂N/∂tは単位時間当たりの分子数であり、Aは瞬間的な薬剤溶出表面積であり、Dは拡散係数であり、Cは濃度である。表面コーティングされたステントの薬剤溶出表面積は、ステント自体の表面積に過ぎない。この面積が一定であるため、放出特性を制御するこの方法は、表面コーティングされたデバイスには利用できない。しかし、貫通開口部は、表面積を時間の関数として変えるためのいくつかの可能性を提示する。
【0073】
図14の実施形態では、有益な作用物質は、微粒子または粒子等の形態で、開口部24内に設けられている。そして、これらの粒子を含む個々の層70を形成することができる。さらに、粒子サイズは、層ごとに変えることができる。所与の層容積について、より小さな粒子サイズは、その層の全体の粒子表面積を増加させ、それが、有益な作用物質の全表面積を層ごとに変える効果がある。薬剤分子の流束は表面積に比例するため、全薬剤流束は、粒子サイズを変えることによって、層ごとに調整することができ、正味の効果は、層内で粒子サイズを変えることにより放出特性を制御することである。
【0074】
薬剤溶出表面積を時間の関数として変える第2の一般的な方法は、薬剤保持要素の形状又は断面積を開口部軸に沿って変えることである。図15Aは、ステント自体の材料内に切り取られた円錐形状を有する開口部70を示している。その後、開口部70は、上述したように、又は、別の方法で、層内に有益な作用物質72を充填してもよい。この実施形態では、バリア層74を開口部70の内側に向く面上に設けて、作用物質72が血流内に流れることを防止してもよい。この例では、薬剤溶出表面積Aは、生分解性担体材料が侵食されるにつれて、(図15Aから図15Bまで)連続して減少し、図15Cの溶出パターンが生じる。
【0075】
図16Aは、単純な円筒形の貫通開口部80を示しており、予め形成された、有益な作用物質の倒立円錐82が貫通開口部80内に挿入されている。その後、貫通開口部80の残りは、ずっと遅い分解速度を有する生分解性物質84又は非生分解性物質で埋め戻され、貫通開口部の内側に向いた開口は、バリア層86で密閉されている。この技術は、前の例に対して反対の挙動を生じる。薬剤溶出表面積Aは、図16Aと図16Bとの間で時間と共に連続して増加し、図16Cの溶出パターンを生じる。
【0076】
図15Aの断面が変わる開口部70及び図16Aの非生分解性埋め戻し技術は、所望の放出プロファイルを達成するために、図9〜図14の積層された作用物質の任意の実施形態と組み合わせてもよい。例えば、図15Aの実施形態は、図13の作用物質の濃度が変動する層を使用して、放出曲線を所望のプロファイルに、より正確に調節してもよい。
【0077】
有益な作用物質プラグ82を特別な形状に予め形成し、貫通開口部内に挿入し、第2材料で埋め戻すプロセスは、より複雑な放出特性も生じることができる。図17Aは、球状の有益な作用物質プラグ92が挿入された貫通開口部90を示している。断面の表面積が深さの正弦関数として変わる、結果として得られた球の生分解性は、ほぼ時間の正弦関数である流束密度を生成する(図17B)。他の結果はもちろん、他のプロファイルを伴うが、これらのより複雑な挙動は、薄い一定面積の表面コーティングでは全く生成することができない。
【0078】
図18A〜図18Cの代替的な実施形態は、図16Cの作用物質の放出プロファイルの増加を達成するために、開口部96を有するバリア層52'を使用している。図18Aに示されるように、開口部24は、図10の実施形態と同様に、内部バリア層52及び複数の有益な作用物質の層50を備えている。付加的な外側バリア層52'は、作用物質を血管壁に送出するための小さな穴96を備えている。図18B及び図18Cに示されるように、有益な作用物質を含む層50は、半球パターンで分解し、作用物質を徐々に送出するための表面積の増加、したがって、作用物質放出プロファイルの増加をもたらす。
【0079】
図19は、組織支持デバイス内の開口部に、有益な作用物質の円筒状の層が充填された代替的な実施形態を示している。図19のデバイスを形成する一つの方法によれば、デバイス全体は、有益な作用物質の連続した層100、102、104、106でコーティングされている。その後、デバイスの内部表面54及び外部表面56は剥離されて、これらの表面上の有益な作用物質が除去され、開口部内の有益な作用物質の円筒状の層が残る。この実施形態では、中央の開口部は、コーティング層が堆積した後に残り、組織支持デバイスの外部表面56と内部表面54との連通が可能になる。
【0080】
図19の実施形態では、円筒状の層は順次侵食される。これは、異なる有益な作用物質の拍動的な送出、異なる濃度の有益な作用物質の送出、又は同じ作用物質の送出に使用することができる。図19に示されるように、円筒状の層100、102、104、106の端部は露出している。これにより、露出した層の侵食中に、下地層の低レベルの侵食がもたらされる。あるいは、円筒状の層の端部がバリア層によって覆われて、この低レベルの連続侵食を防止してもよい。円筒層の侵食速度は、層の表面に輪郭を持たせることによって、さらに制御してもよい。例えば、リブ付き、又は星形パターンを、半径方向内側の層上に設けて、半径方向内側層と半径方向外側層との間で、一様な表面積又は一様な侵食速度を提供してもよい。層の表面に輪郭を持たせることはまた、他の実施形態で使用して、侵食速度を制御するためのさらなる変数を提供してもよい。
【0081】
本発明を、本発明の好ましい実施形態を参照して詳細に述べてきたが、本発明から逸脱することなく、種々の変更及び修正を行うことができ、且つ均等物を採用できることは、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態による組織支持デバイスの斜視図である。
【図2】図1のデバイスの一部分の拡大側面図である。
【図3】本発明のさらなる好ましい実施形態による組織支持デバイスの拡大側面図である。
【図4】図3に示されたステントの一部分の拡大側面図である。
【図5】開口部の拡大断面図である。
【図6】開口部内に充填された有益な作用物質を示す開口部の拡大断面図である。
【図7】開口部内に充填された有益な作用物質及び有益な作用物質の薄いコーティングを示す開口部の拡大断面図である。
【図8】開口部内に充填された有益な作用物質及びデバイスの異なる表面上の異なる有益な作用物質の薄いコーティングを示す開口部の拡大断面図である。
【図9】複数の層内に設けられた有益な作用物質を示す開口部の拡大断面図である。
【図10】有益な作用物質及び層内の開口部に充填されたバリア層を示す開口部の拡大断面図である。
【図11A】層内の開口部に充填された、有益な作用物質、生分解性担体、及びバリア層を示す開口部の拡大断面図である。
【図11B】図11Aのデバイスの放出特性のグラフである。
【図12】開口部に充填された、異なる有益な作用物質層、担体層、及びバリア層を示す開口部の拡大断面図である。
【図13】異なる濃度の層内の開口部に充填された有益な作用物質を示す開口部の拡大断面図である。
【図14】異なるサイズの微粒子の層内の開口部に充填された有益な作用物質を示す開口部の拡大断面図である。
【図15A】開口部に充填された有益な作用物質を示すテーパ付き開口部の拡大断面図である。
【図15B】有益な作用物質が部分的に分解した状態の、図15Aのテーパ付き開口部の拡大断面図である。
【図15C】図15A及び図15Bのデバイスの放出特性のグラフである。
【図16A】所望の作用物質送出プロファイルを達成するように構成された形状の開口部に充填された有益な作用物質を示す開口部の拡大断面図である。
【図16B】有益な作用物質が部分的に分解した状態の、図16Aの開口部の拡大断面図である。
【図16C】図16A及び図16Bのデバイスの放出特性のグラフである。
【図17A】球形状の開口部に充填された有益な作用物質を示す開口部の拡大断面図である。
【図17B】図17Aのデバイスの放出特性のグラフである。
【図18A】所望の作用物質送出プロファイルを達成するための開口部を有する複数の有益な作用物質層及びバリア層を示す開口部の拡大断面図である。
【図18B】作用物質層が分解し始めた状態の、図18Aの開口部の拡大断面図である。
【図18C】作用物質層がさらに分解した状態の、図18Aの開口部の拡大断面図である。
【図19】複数の円筒状の有益な作用物質の層を示す開口部の拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体再吸収性の埋め込み可能デバイスと、
該埋め込み可能デバイス内の複数の開口部と、
該開口部内に設けられた化学的切除剤と
を備え、
前記開口部は、該開口部内に作用物質を永久的に捕捉することなく、円筒形状の拡張可能な前記埋め込み可能デバイスの周囲の組織に対して前記化学的切除剤を送出するように構成されている、心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項2】
前記埋め込み可能デバイスの最も内側の表面に実質的に隣接して、前記開口部内に設けられた生分解性バリア層をさらに備える、請求項1に記載の心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項3】
前記バリア層は、前記化学的切除剤が前記開口部から血管内腔内に流れることを防止する、請求項2に記載の心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項4】
前記化学的切除剤は、生分解性マトリクス内の前記開口部内に設けられる、請求項1に記載の心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項5】
前記開口部は貫通開口部である、請求項1に記載の心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項6】
前記埋め込み可能デバイスの生体侵食可能材料は、前記生分解性マトリクスの侵食速度より遅い速度で侵食する、請求項4に記載の心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項7】
前記化学的切除剤は細胞毒性剤である、請求項1に記載の心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項8】
前記化学的切除剤は、複数の層内の前記開口部内に設けられ、
前記複数の層は、前記化学的切除剤を、プログラムされた放出速度で、且つ、所望の投与期間にわたって放出するように構成されている、請求項1に記載の心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項9】
前記医療デバイスを埋め込み位置へ送出する間、前記化学的切除剤の放出を防止するために、前記埋め込み可能デバイスの最も外側の表面に実質的に隣接して、前記開口部内に設けられた生分解性キャップ層をさらに備える、請求項1に記載の心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項10】
前記埋め込み可能デバイスはステントである、請求項1に記載の心臓の不整脈を治療する医療デバイス。
【請求項11】
心房細動を治療する方法であって、
切除が望まれる患者の血管内における切除位置を決定することと、
該切除位置に生体再吸収性のステントを埋め込むことと、
組織の部分を絶縁する前記ステントで、血管壁内に病変を作り出すことと、
前記ステントが、徐々に完全に吸収されることを可能にすることと
を含む方法。
【請求項12】
前記ステントは化学的切除剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化学的切除剤は、前記ステントの開口部内に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学的切除剤が血管内腔内に送出されるのを実質的に防止するために、生分解性バリア層が、前記埋め込み可能デバイスの最も内側の表面に実質的に隣接して、前記開口部内に設けられている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記開口部は貫通開口部である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ステントは、前記開口部内の生分解性マトリクスの侵食速度より遅い速度で侵食する生体再吸収性材料で形成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化学的切除剤は細胞毒性剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記化学的切除剤は、複数の層内の前記開口部内に設けられ、
前記複数の層は、前記化学的切除剤を、プログラムされた放出速度で、且つ、所望の投与期間にわたって放出するように構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記デバイスを埋め込み位置へ送出する間、前記化学的切除剤の放出を防止するために、前記ステントは、前記埋め込み可能デバイスの最も外側の表面に実質的に隣接して、前記開口部内に設けられた生分解性キャップ層を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記切除位置は、電気マッピング法によって決定される、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−504926(P2008−504926A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520333(P2007−520333)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/022243
【国際公開番号】WO2006/007473
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(500449400)コナー メドシステムズ, インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】CONOR MEDSYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】1360 Hamilton Court,Menlo Park,CA 94025 U.S.A.
【Fターム(参考)】