説明

心臓病を抑制、遅延、および/または予防するための手段および方法

本発明は、分子生物学および医学の分野に関し、より具体的には、心臓病の治療および予防に関する。本発明は、心臓病を抑制、軽減、治療、遅延、および予防するための代替方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学および医学の分野、より具体的には、心臓病の治療、遅延、および予防に関する。
【0002】
心血管疾患とも呼ばれる心臓病は、心臓および/または血管に影響を与える広い範囲の疾病を表すために使用される広義の用語である。状態には、冠動脈疾患、心臓発作、高血圧、脳卒中、および心不全が含まれる。心血管疾患は、男性および女性の世界一の死因であり、たとえば、米国では全死因の40%に関与し、がんの全種類を組み合わせたよりも多い。
【0003】
心血管疾患の一般的な形式は、心筋に血液を供給する動脈に影響を与える冠動脈疾患である。場合によってはCADとして知られている冠動脈疾患は、心臓発作の主要な原因である。これは、一般的に、冠状動脈を通る血流が妨げられ、心筋への血流が減少することを意味する。このような妨害の最も一般的な原因は、アテローム性動脈硬化症と呼ばれる状態であり、ほとんどが予防可能である血管疾患である。冠動脈疾患と、結果として生じる心筋への血流の減少とは、胸の痛み(狭心症)、心臓発作(心筋梗塞)などの他の心臓の問題につながり得る。
【0004】
心臓発作は、血液供給の損失による心筋の損傷である。心臓発作のための医学用語は「心筋梗塞」であり、しばしばMIと略される。通常、心臓発作は、血の塊が冠状動脈(心筋の一部に血液を供給する血管)を通る血流をブロックした場合に起こる。妨害された心臓への血流は、心筋の一部を損傷または破壊する。
【0005】
心筋自体に影響を与える心臓病は心筋症と呼ばれる。数種の心筋症は遺伝的であるが、他の種類の心筋症が発生する理由はあまりよく理解されていない。心筋症の種類には、減少した冠血流から心筋の損失によって引き起こされる虚血、心腔が拡大することを意味する拡張、心筋が厚くなることを意味する肥大、およびその原因が不明であることを意味する特発性を含む。心筋症の最も一般的な種類の1つは、既知の原因なしに心臓が拡大する特発性拡張型心筋症である。
【0006】
心臓病は、生まれた後に、または先天的にもたらされ得る。先天性心臓病は、出生前に発達する(先天性)心臓病の種類を表す。先天性心臓病は広義の用語であり、病気および状態の広い範囲が含まれる。これらの病気は、心筋またはその心腔(chamber)もしくは弁の形成に影響を与え得る。それらは、大動脈(大動脈縮窄症)または心臓の穴部(心房または心室中隔欠損症)の部分の狭小化などの状態を含む。数種の先天性心欠陥は出生時に明らかにすることが可能であるが、他は人生の後半まで検出されないことがある。
【0007】
心筋自体の次に、心臓病は、心臓弁などの他の構造にも影響を与えることが可能である。心臓内の4つの弁は、正しい方向への血琉を維持する。弁は、狭小化(狭窄)、漏れ(逆流または不全)、または不適切な閉塞(逸脱症)につながる様々な状態によって損傷し得る。弁膜疾患は、先天的、またはリウマチ熱、感染症(感染性心内膜炎)、結合組織疾患、および特定の薬、もしくはがんの放射線治療などの状態のどちらによっても損傷し得る。
【0008】
心臓のリズムの問題(不整脈)は、心臓の鼓動を制御する心臓における電気的な刺激が、前記心臓の鼓動が速すぎたり、遅すぎたり、不規則であったりすることにより適正に機能しない場合に起こる。心血管疾患の他の種類は、間接的に不整脈を引き起こす可能性がある。
【0009】
米国人の約4人に1人が影響され、西洋の世界において最も一般的な種類の心血管疾患は、血液が血管を通って過剰な力で押し出されることを意味する、高血圧(高血圧症)である。潜在的に生命を脅かすが、最も予防可能であり、治療可能な種類の心血管疾患の1種である。また、高血圧は、脳卒中および心不全のような心血管疾患の他の多くの種類を引き起こす。
【0010】
心臓血管系の弱体化により起こる心臓に損傷を与える進行性の疾患である心不全は、前述した構造的または機能的な心臓障害のいずれからも生じ得る。それは、うっ血、または全身を満たすもしくは十分な量の血液を押し出すための心臓の機能低下の結果として生じる不適切な血流によって顕在化する。
【0011】
影響を受ける心臓の側に応じて、症状は多種多様であり、症状のみに基づいて診断することは不可能である。左側心不全は、肺静脈のうっ血を生じ、これを反映した症状として、全身の血行不良を生じるが、右側心不全は、たとえば末梢浮腫、および夜間頻尿を呈する。
【0012】
心不全は、1つまたは多くの原因が合わさって生じる可能性がある。虚血性心疾患、慢性不整脈、心筋症、心臓性線維症、慢性貧血、および甲状腺疾患など、多くが両側に影響を及ぼすが、一方、高血圧、大動脈弁および僧帽弁疾患、大動脈縮窄症などは、主に左側心不全を起こし、肺高血圧症、肺または三尖弁疾患は、しばしば右側心不全を生じる。
【0013】
心不全のこれらの原因は、全て損傷または過負荷により、心筋層または心筋の能率を減少させることが共通している。時間が経つにつれて、作業負荷の増加は、たとえば、収縮の減少、ストローク量の減少、容量の減少、心拍数の増加、心筋の肥大、および/または心室の拡大のような心臓自体の変化を生じるだろう。これらの心臓の変化は、心停止のリスクを増加させ、体の他の部分への血液供給を減少させる、心拍出量の減少および心臓への負担の増加をもたらす。
【0014】
心不全の最新の治療は、症状および徴候を治療すること、および病気の進行を防ぐことに焦点を当てている。治療には、運動、健康食品を食べること、塩辛い食べ物を減らすこと、ならびに禁煙および禁酒を含む。さらに、薬理学的管理は、症状の軽減、血液量の正常な状態の維持、および心不全の進行の遅延に焦点当てて適用することが可能である。薬剤の使用には、利尿剤、血管拡張剤、陽性変力作用薬(positive inotropes)、ACE阻害薬、β遮断薬、およびアルドステロン拮抗薬が含まれる。
【0015】
心不全は、平均寿命の低下をもたらす重篤な疾患である。心不全の多くの種類は、投薬、ライフスタイルの変化、および任意の基礎疾患の是正により制御することが可能である。しかし、心不全は、通常、慢性疾患であり、それは感染症または他の物理的なストレスで悪化し得る。心不全のための実際の治療法はない。
【0016】
したがって、一般的に、心不全および心臓病の代替治療が依然として必要とされている。
【0017】
本発明の目的は、心臓病の治療、および/または少なくとも部分的な心臓病の予防のための代替治療を提供することである。
したがって、本発明は、心臓病を抑制、軽減、治療、遅延、および/または予防するための代替的な手段および方法を提供する。
【0018】
一実施形態において、本発明は、細胞におけるマイクロRNAの発現、量、および/または活性を抑制することを含む、心臓病を軽減、抑制、治療、遅延、および/または予防するための方法を提供する。
【0019】
マイクロRNA(miRNA)は、植物および動物のゲノム中にコードされた小さなRNA分子である。これらは高度に保存され、通常、〜21個のRNAが特定のmRNAの3’−非翻訳領域(3’−UTRs)に結合することにより遺伝子の発現を制御している。各miRNAは、複数の遺伝子を調節すると考えられており、数百のmiRNA遺伝子が高等真核生物において存在すると予測されているので、miRNAによって提供される潜在的な制御回路は膨大である。いくつかの研究グループは、miRNAが、初期発生、細胞増殖および細胞死、アポトーシスおよび脂肪の代謝、ならびに細胞の分化などの多様なプロセスの重要な調節因子として作用し得るという証拠を提供した。miRNA発現の最近の研究は、miRNAは、脳の発達、慢性リンパ性白血病、大腸癌、バーキットリンパ腫、およびウイルス感染に関与し、ウイルス性疾患、神経発生、およびがんと、miRNAとの間に関係があることを示唆する。高等真核生物において、遺伝子発現を調節するmiRNAの役割は、転写因子として重要かもしれないという推測がある。
【0020】
過小または過剰発現としてのmiRNAの異常発現は、多種の疾患をもたらし得る。最近、多くの異なるmiRNAが特定の疾患に関連していることが確認された。しかし、多くのmiRNAが数百の遺伝子を制御するので、今までに知られていない大部分のmiRNA関連疾患では、同定されたmiRNAにより遺伝子が制御され、最終的に疾患に関連する。たとえば、Sayedら(Circ Res 2007; 100: 416-424)は、いくつかのmiRNAが心臓肥大の間に増加または減少することを示した。最も顕著に上方制御されたmiRNAは、miR−199a、miR−199a*、miR−199b、miR−21、およびmiR214である。しかし、本発明までは、どの遺伝子がこれらのmiRNAの異常な発現により調節解除され得るのか知られておらず、また、これらの任意のmiRNAの上方制御または下方制御のどちらが心臓病の原因であるのか、またはたとえば心臓病の結果でしかないのか知られていなかった。
【0021】
本発明は、miR−199bのようなマイクロRNAの増加した発現は心臓病の原因となる、および前記マイクロRNAの阻害は心肥大を阻害するという知見を初めて提供する。さらに、本発明は、二重特異性チロシンリン酸化調節キナーゼ1A(Dyrk1a)が、miR−199bの直接の標的とされているという知見を提供する。このことは、たとえば、miR−199bの発現増加はDyrk1aの下方制御の原因となること、および他のものの間において、このDyrk1aの下方制御は最終的に心不全を誘導する心筋細胞の肥大の原因となることを示す。Dyrk1a遺伝子は、ヒト21番染色体上に局在し、その機能は完全に理解されていないが、神経系の(発生学的な)発生に関連付けられている。その過剰発現は、ダウン症候群、アルツハイマー病の発症、およびいくつかの他の稀な神経疾患(ピック病など)の学習および記憶障害に関連付けられている。現在Dyrk1a異常発現に関連付けられた全ての病気は神経学的起源のものである。本発明まで、Dyrk1aは、心不全はもちろん、心臓病に関連付けられていない。しかし、本発明は、Dyrk1aの増加が心筋肥大、そしてこのために心不全を予防、軽減、または遅延することが可能であるという知見を提供する。Dyrk1a発現の増加は、たとえば、miR−199bの阻害によって、直接または間接的に達成することが可能である。
【0022】
ここで、本発明は、Dyrk1aの阻害が心臓肥大を誘導するという知見と、Dyrk1aの発現、量、および/もしくは活性を増加することが可能である、ならびに/またはDyrk1aを阻害することが可能であるマイクロRNAの阻害が前記心臓肥大を減少することが可能であるという知見とを提供し、第1の実施形態において、本発明は、心臓病を治療、軽減、抑制、遅延、および/または予防する方法であって、マイクロRNA阻害剤の薬学的に有効な量をそれが必要な個体に投与することを含み、前記マイクロRNAがDyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能である方法を提供する。したがって、Dyrk1a発現を阻害または減少させることが可能であるマイクロRNA阻害剤は、特に医薬としての使用に適している。したがって、さらに提供されるのは、心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防における使用のためのマイクロRNA阻害剤であり、前記マイクロRNAはDyrk1a発現を阻害または減少させることが可能である。
また、薬剤の製造のためのこのような阻害剤の使用が提供される。したがって、一実施形態は、心臓病を治療、軽減、遅延、および/または予防についての薬剤の製造のためのマイクロRNA阻害剤の使用を提供し、前記マイクロRNAはDyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能である。
【0023】
本明細書において使用されるように、用語「マイクロRNA阻害剤」は、マイクロRNAの発現、量、および/または活性を、阻害または少なくとも一部を阻害することが可能である化合物を含む。マイクロRNAの発現が、病気の状態を悪化させる、および/または維持する原因である場合、前記マイクロRNAの発現の阻害、または部分的な阻害は、少なくとも部分的に前記病気の状態を抑制、軽減、遅延、または予防するであろう。個体におけるマイクロRNAの発現が、通常の健康な状況と比較して増加すれば、前記マイクロRNAの発現は、正常値に、好ましくはそのような増加が起こる前の前記個体における発現レベルに、好ましくは回復される。
【0024】
マイクロRNAの阻害は、いくつかの方法によって達成される。たとえば、前記マイクロRNAの少なくとも機能的部分に相補的な核酸分子が使用される。前記機能的部分は、少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチドを含む。細胞への投与後、前記核酸分子は、続いて前記マイクロRNAに結合し、それにより標的遺伝子への前記マイクロRNAの結合を抑制、遅延、および少なくとも部分的に阻害し、それにより前記マイクロRNAの機能、すなわち遺伝子制御を抑制する。当業者はマイクロRNAを阻害または部分的に阻害する様々な方法を認識する。非限定的な例は、たとえば、2'および4'炭素を接続する余分な架橋が存在し、架橋が3’−末端構造の立体構造におけるリボースを「ロック」するロックド核酸オリゴ(LNA)の使用である。さらに、非限定的な例は、標的RNA分子を分解しない修飾されたアンチセンス分子であるモルホリノオリゴ、および2'−O−メチルRNAオリゴを含む。
【0025】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の阻害剤、使用、および/または方法が提供され、前記阻害剤は、前記マイクロRNAに相補的である、少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの長さの核酸配列を含む。
【0026】
数百の異なるマイクロRNA分子が存在し、それらの前駆体はゲノム内においてそれらの相対的な距離に基づいて共にクラスタ化される。一般的には、前駆体は、それらがお互いに50kb以下離れている場合には、同一のクラスタ内に配置される。本発明は、Dyrk1aが、miR−199bの直接の標的であることの知見を提供するので、好ましい実施形態において、本発明は、心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防における使用のためのマイクロRNA阻害剤を提供し、前記阻害剤は、マイクロRNAであるmiR−199bの発現、量、および/または活性を抑制することが可能である。したがって、マイクロRNAであるmiR−199bの発現、量、および/または活性を抑制することが可能である、本発明の阻害剤、使用、および/または方法が提供される。
【0027】
マイクロRNA阻害剤は、阻害しようとするマイクロRNAに有効量が到達することが可能であるときに特に有用である。前記マイクロRNAは、通常、細胞内に存在しているので、前記阻害剤は、好ましくは前記細胞の内部の前記マイクロRNAを阻害することが可能である。前記マイクロRNA阻害剤は、特に心臓病の治療または予防に有用であり、前記阻害剤は、さらに好ましいくは、心筋細胞内の前記マイクロRNAの発現、量、および/または活性を阻害することが可能である。一実施形態では、前記阻害剤を前記細胞、好ましくは心筋細胞に導入することが可能である。一実施形態では、前記マイクロRNA阻害剤は、それ自体が細胞膜を貫通して、細胞、好ましくは心筋細胞に侵入することが可能である。しかし、その後に細胞、好ましくは心筋細胞に侵入することが可能であるように、前記阻害剤を修飾することも可能である。しかし、細胞内に化合物を導入することが可能である多くの輸送システムが知られているので、このことは必須ではない。
【0028】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の阻害剤、使用、および/または方法が提供され、前記阻害剤は、細胞、より好ましくは心筋細胞内の前記マイクロRNAの発現、量、および/または活性を抑制、阻害、および/または軽減することが可能である。また、心筋細胞(cardiac muscle cell)または心筋細胞(cardiomyocyte)と呼ばれる心筋細胞(heart muscle cell)は、筋細胞を起源とする細胞または筋細胞に由来する細胞と同様であり、天然の状況において脊椎動物の心臓内に存在する。前記細胞は、in vitroにおいて培養および/または保存することも可能であるので、心臓組織から直接に取得する必要はない。
【0029】
細胞にマイクロRNA阻害剤を導入するための方法は当該技術分野で知られている。阻害剤を導入するための方法は、好ましくはアンチセンス核酸であり、たとえば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、またはリポソーム媒介トランスフェクションを含む。代替的に阻害剤の直接注入が用いられる。しかし、好ましくは、阻害剤である核酸、および/または阻害剤をコードする核酸は、ベクター、好ましくはウイルスベクターによって細胞内に導入される。ベクターにより細胞に核酸を導入することを表す様々な用語が当技術分野で知られている。そのような用語の例は、「トランスダクション」、「トランスフェクション」、および「トランスフォーメーション」である。核酸配列を有するベクターを生成し、前記ベクターを細胞に導入するための技術は当該技術分野で知られている。たとえば、抗生物耐性または感受性遺伝子および/または細胞表面抗原または緑色蛍光タンパク質のような蛍光タンパク質のようなマーカーをコードする遺伝子のようなマーカー遺伝子は、好ましくは、導入された核酸を含む細胞を識別するために使用され、当技術分野で公知である。
【0030】
好ましくは、本発明の阻害剤が提供され、in vivoにおいて哺乳動物細胞に導入することが可能である。本発明の方法の非限定的な例は、前記阻害剤を細胞貫通ペプチドと組み合わせた、または前記阻害剤を含むリポソームの使用である。好ましくは、前記阻害剤は、心筋細胞を標的とし、たとえば、前記阻害剤に結合した人工HDL様粒子を使用することにより、心筋への配送を促進する。
【0031】
細胞内におけるマイクロRNAの阻害は、前記マイクロRNAがDyrk1aの発現を阻害または減少させることができ、前記細胞内におけるDyrk1aの増加または保存を導く。したがって、好ましい実施形態において、前記マイクロRNA阻害剤が細胞内のDyrk1aの発現を増加および/または保存することが可能である、本発明の阻害剤、使用、および/または方法が提供される。細胞内のマイクロRNAの機能を抑制可能であるようにするために、前記阻害剤は、好ましくは核を貫通することが可能である。小さな核酸分子、好ましくは上述したLNA、モルホリノ、または2’−O−メチルRNAのオリゴのようなアンチセンス分子は、自由に細胞質と核との間を移動することが一般的に受け入れられている。しかし、一実施形態では、細胞質と核との間を自由に移動することはできない阻害剤は、核膜を標的とし、貫通するなどの修飾をされる。核を標的とする方法は当技術分野で知られており、たとえば、アデノウイルスベクターなどのような核を標的とするベクターの使用を含む。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明のマイクロRNA阻害剤、使用、および/または方法が提供され、前記阻害剤はアンチセンス核酸分子を含む。好ましくは、Dyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能であるマイクロRNAに対するアンチセンス核酸分子が使用される。前記アンチセンス分子は、好ましくは少なくとも15ヌクレオチドを含む。さらに好ましくは、前記アンチセンス分子は少なくとも18ヌクレオチドを含む。最も好ましくは、前記アンチセンス分子は少なくとも20ヌクレオチドを含む。
【0033】
前述したように、本発明は、miR−199bが、心臓病に関する、および/または心臓病を促進するDyrk1aの発現を減少させるという知見を提供する。したがって、本発明の阻害剤は、好ましくはmiR−199bを阻害する。また、本発明の阻害剤、使用、および/または方法であって、前記マイクロRNAが、miR−199bである阻害剤、使用、および/または方法が提供される。好ましくは、前記miR−199bの阻害剤は、生理的条件下において、miR−199bに結合することが可能である核酸配列を提供する。図6Aは、miR−199bに結合することが可能である配列の非限定的な例を含む。アンチセンス核酸は、マイクロRNAに結合し、機能を阻害するために、わずかな(好ましくは1または2)ミスマッチを有することが可能であると一般的に考えられている。このようにして、たとえば、図6Aに示す配列の場合には、少なくとも20ヌクレオチドが、好ましくはmiR−199bの相補的配列と同一である。さらに、アンチセンス核酸は多少その標的配列よりも短くてもよい。miR−199bに対するアンチセンスは、好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの長さである。したがって、好ましい実施形態では、本発明の阻害剤、使用、および/または方法が提供され、前記阻害剤は、少なくとも18の長さの配列、好ましくは少なくとも18の長さの配列に対して少なくとも90%の配列相同性を有する少なくとも20の核酸、好ましくは、miR−199bの少なくとも20の核酸、またはそれらの相補配列を含む。一実施形態では、前記核酸分子は、図6Aに示す配列の少なくとも一部に対して少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する配列を含み、前記部分は、少なくとも20ヌクレオチドを有する。前記核酸配列は、好ましくは配列GAACAGGUAGUCUAAACACUに対して少なくとも90%同一である。
【0034】
特に好ましい実施形態は、本発明の阻害剤、使用、および/または方法であって、前記阻害剤は、配列CCCAGUGUUUAGACUAUCUGUUC(hsa−miR−199b−5p)またはその相補配列(complement)の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さの核酸配列であって、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有する核酸配列、および/または配列ACAGUAGUCUGCACAUUGGUUA(hsa−miR−199b−3p)またはその相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する核酸配列であって、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有する核酸配列を含む阻害剤、使用、および/または方法を提供する。少なくとも20ヌクレオチドの長さを有するそのような核酸配列は、特にmiR−199bを抑制するために適しており、そのため細胞内におけるDyrk1a発現の増加および/または保存に適している。したがって、その結果として、このような核酸配列は、特に心臓病を抑制および/または予防するための医薬の製造に適している。用語「配列相同性%」は、現配列と最大の同一性を達成するために必要であれば、配列の整列(aligning)および任意に空所(gap)を導入した後、目的の核酸配列における核酸と同一である、核酸配列中の核酸の割合として本明細書において定義される。整列のための方法およびコンピュータプログラムは当技術分野でよく知られている。本明細書において使用される、用語「核酸配列」および「ヌクレオチド」は、たとえば、人工的に修飾された核酸配列、ペプチド核酸だけではなく、たとえばイノシンのような少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドおよび/または非天然のヌクレオチドのような核酸配列に基づくおよび/または由来する非天然分子も包含する。
【0035】
このように上述したような阻害剤は、心臓病、好ましくは心不全の治療、軽減、遅延、および/または予防のための薬剤の製造に特に適している。したがって、一実施形態では、本発明は、マイクロRNA阻害剤の使用であって、前記マイクロRNAがDyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能である心臓病、好ましくは心不全を治療、軽減、遅延、および/または予防するための薬剤の製造のための使用を提供する。好ましい実施形態では、本発明の使用が提供され、前記阻害剤は、少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの前記マイクロRNAに相補的である核酸分子を含む。さらに、本発明の使用が提供され、前記阻害剤は、マイクロRNAであるmiR−199bの発現、量、および/または活性を抑制することが可能である。好ましい実施形態では、前記阻害剤は、細胞内の前記マイクロRNAの発現を阻害または減少させることができ、好ましくはそれにより前記細胞内のDyrk1aの発現を増加または回復することが可能である。前記細胞は、好ましくは心筋細胞である。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の使用が提供され、前記阻害剤は、少なくとも20ヌクレオチドの長さのアンチセンス核酸分子を含み、好ましくは図6Aに示す配列に少なくとも90%の配列相同性を有し、またはそれらの相補配列である。特に好ましいアンチセンス核酸配列は、配列CCCAGUGUUUAGACUAUCUGUUC(hsa−miR−199b−5p)もしくはACAGUAGUCUGCACAUUGGUUA(hsa−miR−199b−3p)、またはこれらの配列の任意の相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する配列であり、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有する。したがって、ある好ましい実施形態では、本発明は、配列CCCAGUGUUUAGACUAUCUGUUC(hsa−miR−199b−5p)またはその相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する少なくとも20ヌクレオチドの長さの核酸配列の使用であって、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有する、心臓病、好ましくは心不全の治療、減少、遅延、および/または予防についての薬剤の製造のため使用を提供する。別の好ましい実施形態は、本発明は、配列ACAGUAGUCUGCACAUUGGUUA(hsa−miR−199b−3p)またはその相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する少なくとも20ヌクレオチドの長さの核酸配列の使用であって、前記一部が少なくとも20ヌクレオチドを有する、心臓病、好ましくは心不全の治療、減少、遅延、および/または予防についての薬剤の製造のため使用を提供する。
【0036】
本発明の使用により、心臓病を治療、軽減、遅延、または少なくとも部分的に予防することが可能である。一実施形態において、本発明は、心臓病を治療、軽減、抑制、遅延、および/または予防するための方法であって、マイクロRNA阻害剤の薬学的に有効な量をそれが必要な個体に投与することを含み、前記マイクロRNAがDyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能である方法を提供する。一実施形態では、前記個体は、治療前に心臓病と診断される。したがって、対象が心臓病を患っているか否か、および前記対象が明らかに心臓病を患っていることが明らかであれば、本発明の方法で前記患者を治療するか否かを決定することを含む方法も提供される。
【0037】
好ましくは、本発明の方法であって、前記阻害剤が前記マイクロRNAに少なくとも90%相補的であり、少なくとも15、好ましくは少なくとも18、好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの長さの核酸配列を含み、核酸配列は、好ましくはマイクロRNAであるmiR−199bの発現、量、および/または活性を抑制することが可能である方法が提供される。前記核酸配列は、好ましくはmiR−199bに少なくとも90%相補的である。さらにより好ましくは、前記阻害剤が、細胞内、さらにより好ましくは心筋細胞内において前記マイクロRNAの発現を阻害または減少させることが可能である、本発明の方法が提供される。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の方法であって、前記阻害剤が図6Aに示す配列またはその相補的配列に対して少なくとも90%の配列相同性を有する、好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの長さを有するアンチセンス核酸分子を含む方法が提供される。
【0038】
本発明の別の実施形態では、マイクロRNAの発現を抑制するための方法が提供され、本発明の阻害剤が標的細胞において発現される。一実施形態では、本発明の前記阻害剤を含む、および/またはコードする核酸配列を含むベクターが使用される。このように、本発明は、マイクロRNA発現の阻害剤を含む、またはコードする核酸配列を含むベクターであって、前記マイクロRNAがDyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能であるベクターも提供する。前記ベクターは、好ましくはレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはレンチウイルスベクターを含む。
【0039】
すでに上述したように、心臓病を抑制、遅延、および/または部分的に予防するために、Dyrk1aの発現、量、および/または活性が増加することが好ましい。このことは、たとえば、miR−199bの発現、量、および/または活性を減少させることにより間接的に、またはDyrk1aの発現、量、および/または活性を増加させることにより直接的に達成することが可能である。好ましくは、miR−199bの発現、量、および/または活性は、少なくとも18、好ましくは少なくとも20ヌクレオチドのmiR−199bに少なくとも90%相補的である核酸配列により抑制される。したがって、さらに提供されるのは、本発明のベクターであって、マイクロRNAであるmiR−199bの少なくとも18ヌクレオチドに少なくとも90%相補的である、少なくとも18ヌクレオチドの長さを有する核酸分子を含むベクターである。前記ベクターは、好ましくは、
配列CCCAGUGUUUAGACUAUCUGUUC(hsa−miR−199b−5p)またはその相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する核酸配列であって、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有する核酸配列、および/または
配列ACAGUAGUCUGCACAUUGGUUA(hsa−miR−199b−3p)またはその相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する核酸配列であって、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有する核酸配列を含む。
【0040】
上述したように、直接的にDyrk1aの発現、量、および/または活性を増加させることも可能である。このことは、たとえば、Dyrk1aを増加させる化合物を含む、またはコードするベクターの使用によって達成することが可能である。
【0041】
一実施形態では、哺乳動物細胞における発現に適したプロモーターを含む、本発明のベクターを提供する。一実施形態では、前記プロモーターは、Dyrk1aの発現、量、および/または活性を増加させることが可能である核酸分子に機能的に連結している。別の実施形態では、前記プロモーターは、マイクロRNAであるmiR−199bの発現、量、および/または活性を抑制することが可能である核酸分子に関連している。特に好ましい実施態様において、本発明のベクターは、心筋細胞における発現に適している。その場合、前記ベクターは、好ましくは心筋細胞における発現に適したプロモーターを含む。一実施形態では、本発明のベクターは、遍在性プロモーターまたは器官特異的プロモーター、好ましくは心筋細胞特異的プロモーターを含む。このようなベクターは、特に心臓病を治療、軽減、遅延、および/または予防するために有用である。したがって、一実施形態において、本発明は、心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防についての薬剤の調製のための本発明のベクターの使用を提供する。
【0042】
また、本発明は、本発明のベクターおよび/または阻害剤を含む単離された細胞を提供する。前記細胞は、好ましくは哺乳動物細胞を含む。特に好ましい実施形態では、前記細胞は心筋細胞を含む。本発明のベクターおよび/または阻害剤を含む単離された細胞などは、心臓病の治療、軽減、遅延、および/または少なくとも部分的な予防のために有用である。したがって、一実施形態では、心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防における使用のための本発明のベクターおよび/または阻害剤を含む単離された細胞が提供される。
【0043】
好ましくは、前記分離された細胞は心筋細胞、心筋前駆細胞、または幹細胞を含む。一実施形態では、このような心筋、前駆体、または幹細胞は、心筋、好ましくは心臓の損傷部位に注入され、前記細胞は、損傷部位を拡張および修復することが可能である。別の実施形態では、本発明の細胞は、個体の血行中に注入され、前記個体の心臓、好ましくは心臓の損傷部位に生着し、(少なくとも部分的に)損傷部位を修復する。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明の単離された細胞であって、本発明の阻害剤を含む、またはコードする核酸配列が存在する、単離された細胞が提供される。前記核酸配列は、好ましくは心筋細胞に特異的な外因性調節因子に機能的に連結される。前記外因性調節因子は、心筋細胞内のアンチセンス核酸の発現を促進するために、たとえば、アンチセンス核酸が、miR−199bの少なくとも18ヌクレオチド、好ましくは少なくとも20ヌクレオチドに少なくとも90%同一である、miR−199bのアンチセンス核酸に機能的に連結する。心筋細胞に特異的な外因性調節因子の使用は様々な利点を提供する。たとえば、幹細胞および/または前駆細胞のトランスダクション後に、本発明の阻害剤は、分化した細胞の全ての種類において発現されないが、主に心筋細胞においては、心筋細胞の濃縮および/または分離を促進する。
【0045】
ベクターおよび/または阻害剤を含む本発明の単離された細胞は、好ましくは心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防するための医薬品の調製に特に有用である。このように、本発明は、本発明のベクターおよび/または阻害剤を含む単離された細胞の使用、好ましくは心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防のための使用を提供する。
【0046】
さらに、心臓病を治療、軽減、遅延、および/または予防するための方法であって、本発明のベクターおよび/または細胞の薬学的に有効な量をそれが必要な個人に投与することを含む方法が提供される。さらに、本発明は、マイクロRNA阻害剤を含む医薬組成物であって、前記マイクロRNAは、Dyrk1aの発現を阻害または減少させることができ、前記医薬組成物が薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む、医薬組成物を提供する。好ましくは、前記阻害剤は、miR−199bの阻害剤を、好ましくは、miR−199bまたはその相補配列の少なくとも18、好ましくは少なくとも20ヌクレオチドに少なくとも90%同一である、少なくとも18、好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する核酸配列を含む。本発明のベクターおよび/または単離された細胞を含む医薬組成物であって、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む、医薬組成物が提供される。適当な担体、希釈剤、賦形剤などが一般的に医薬製剤の分野で知られており、当業者によって容易に見出され、適用され得る。たとえば、Remmington’s Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia PA, 17th ed. 1985を参照のこと。
【0047】
本発明の医薬組成物は、たとえば、錠剤として、注射液として、または、注入液としてなど、任意の形態で存在する。さらに、本発明の前記阻害剤、ベクター、および/または細胞は、たとえば、静脈内、気管支内、または経口内のような異なる経路を介して投与することが可能である。しかし、他の適切な投与経路は局所注入であり、好ましくは心筋内への注入である。
【0048】
好ましい実施形態では、使用される投与経路は静脈内である。好ましくは、本発明の阻害剤、ベクター、および/または細胞の治療における有効量が送達されることが当業者にとって明らかである。本明細書に記載されたような治療用途に使用するための本発明の阻害剤、ベクター、細胞、および/または他の分子の用量範囲は、厳格なプロトコル要件が存在する臨床試験における用量上昇試験(rising dose studies)に基づいて設計される。出発点として、0.01〜100mg/kg/日の間の用量が使用される。
【0049】
本発明は、Dyrk1aの阻害が、Dyrk1aの発現、量、および/もしくは活性の増加により、ならびに/またはDyrk1aを阻害することが可能であるマイクロRNAの阻害により抑制、軽減、遅延、および/もしくは予防することが可能である心臓病を誘導するという知見を提供する。したがって、本発明は、本発明の使用、方法、ベクター、阻害剤、単離された細胞、および/または医薬組成物であって、前記心臓病がマイクロRNA発現に関連付けられている、および/またはDyrk1aの発現が減少もしくは阻害されている、使用、方法、ベクター、阻害剤、単離された細胞、および/または医薬組成物をさらに提供する。好ましくは、前記マイクロRNAはmiR−199bである。
【0050】
miR−199bの発現、量、および/もしくは活性の減少、ならびに/またはDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性は、肥大型心臓病ならびに/または心不全ならびに/または心臓虚血、糖尿病、高血圧、および/もしくは早発性もしくは遅発性先天性心臓病の任意の種類を引き起こす少なくとも1つの遺伝性の遺伝子変異に関連する心臓病を抑制、軽減、遅延、または少なくとも一部を予防するために特に有用である。
【0051】
したがって、本発明の使用、方法、ベクター、阻害剤、単離された細胞、および/または医薬組成物であって、前記心臓病が肥大型心臓病、好ましくは心不全である、使用、方法、ベクター、阻害剤、単離された細胞、および/または医薬組成物がさらに提供される。好ましい実施形態では、前記心臓病は、心臓虚血、糖尿病、および/もしくは高血圧の後の状態に関連付けられ、ならびに/または早発性もしくは遅発性先天性心疾患を引き起こす少なくとも1つの遺伝性の遺伝子変異に関連付けられる。好ましい実施形態では、本発明は、心臓虚血、糖尿病、および/もしくは高血圧後の状態に関連付けられる、ならびに/または早発性もしくは遅発性先天性心疾患を引き起こす少なくとも1つの遺伝性の遺伝子変異に関連付けられる心臓病を抑制、軽減、治療、遅延、もしくは予防するための方法であって、本発明のベクター、阻害剤、単離された細胞、および/もしくは医薬組成物の薬学的に有効な量をそれが必要な対象に、好ましくは前記対象が前記心臓病と診断された後に投与することを含む、方法を提供する。
【0052】
さらに別の実施形態において、本発明は、マイクロRNA阻害剤を与えられた非ヒト試験動物であって、前記マイクロRNAがDyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能である、非ヒト試験動物を提供する。前記阻害剤は、好ましくはmiR−199b阻害剤を含む。本発明のベクター、単離された細胞、および/または医薬組成物を与えられた非ヒト試験動物も提供される。このような非ヒト試験動物は、スクリーニング、検出、ならびに/またはmiR−199bの発現、量、および/もしくは活性を阻害または減少させることが可能である候補化合物を同定するために特に有用である。このような非ヒト試験動物は、スクリーニング、検出、ならびに/またはDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性を増加および/もしくは回復することが可能である候補化合物の同定のために特に有用である。したがって、本発明の非ヒト試験動物は、スクリーニング、検出、および/または心臓病を抑制、減少、遅延、もしくは予防することが可能である候補化合物の同定に特に有用である。
【0053】
候補化合物のスクリーニング方法は、特に新しい阻害剤を同定するために有用であり、したがってここで提供される。たとえば、スクリーニング方法は、候補化合物を単離された細胞に接触させること、miR−199bおよび/またはDyrk1aの発現、量、および/または活性を測定することを含む。miR−199bおよび/またはDyrk1aの前記発現、量、および/または活性は、好ましくは前記候補化合物を有さない同種の細胞または動物における、miR−199bおよび/またはDyrk1aの発現、量、および/または活性と比較される。前記候補化合物を有さない前記細胞または動物に比較して減少したmiR−199bおよび/または増加したDyrk1aの発現、量、および/または活性は、前記候補化合物が心臓病を抑制および/または予防することが可能であることを示す。したがって、候補化合物が、心臓病を抑制および/または予防することが可能であるか否か決定する方法であって、前記候補化合物を、単離された細胞および/または非ヒト試験動物に接触させることと、前記細胞および/または前記動物におけるmiR−199bおよび/またはDyrk1aの発現、量、および/または活性を測定することとを含み、前記測定された発現、量、および/または活性を、前記候補化合物を有しない同種の細胞または動物におけるmiR−199bおよび/またはDyrk1aの発現、量、および/または活性と比較することをさらに含み、前記候補化合物を有さない前記細胞または動物に比較して減少したmiR−199bおよび/または増加したDyrk1aの発現、量、および/または活性は、前記候補化合物が心臓病を抑制および/または予防することが可能であることを示す、方法がさらに提供される。好ましくは、前記候補化合物は細胞に接触させられ、健康な細胞または動物に比較して増加したmiR−199bおよび/または減少したDyrk1aの発現、量、および/または活性を示す。前記増加したmiR−199bおよび/または減少したDyrk1aの発現、量、および/または活性は、好ましくは細胞の肥大をもたらす。前記肥大細胞の候補化合物への接触と、miR−199bおよび/もしくはDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性の測定、ならびに/または前記細胞の形状および大きさの測定と、前記測定値を基準値、たとえば、前記細胞を前記候補化合物に接触させる前の前記細胞の基準値もしくは前記候補化合物に接触させない単離された細胞の基準値との比較とは、化合物がmiR−199bを阻害すること、Dyrk1aの発現、量、および/もしくは活性を増加させること、および/または前記細胞の肥大化を減少もしくは阻害することが可能であることを同定する。
【0054】
一実施形態では、非ヒト試験動物に候補化合物を投与することと、miR−199bおよび/またはDyrk1aの発現、量、および/または活性を測定することと、上述したように前記測定値を基準値と比較することとを含む、スクリーニング方法が提供される。好ましくは、前記非ヒト試験動物は、前記細胞または前記動物を前記化合物に接触させる前に、増加したmiR−199bおよび/または減少したDyrk1aの発現、量、および/または活性を示す。本発明は、このような非ヒト試験動物は、特に心不全において、心臓病が発達するリスクが高いという知見を提供する。前記動物と本発明の阻害剤との接触は、前記心臓病を抑制、予防、遅延、または減少させる。したがって、このような動物は、心臓病を予防、治療、遅延、および/または軽減するその能力についての候補化合物のスクリーニングのために特に有用である。追加的に、または、代替的に、本発明の細胞が使用される。したがって、一実施形態では、本発明は、候補化合物をスクリーニングするための方法であって、前記候補化合物を単離された細胞および/または非ヒト試験動物に接触させることと、前記細胞および/または前記動物におけるmiR−199bおよび/またはDyrk1aの発現、量、および/または活性を測定することと、前記測定値を基準値、たとえば、前記細胞もしくは前記動物に前記候補化合物を接触させる前に前記細胞もしくは前記動物、または前記候補化合物に接触させられていない別の細胞もしくは動物から得られた基準値と比較することとを含む、方法を提供する。発現、量、および/または活性についてのmiR−199bの減少および/またはDyrk1aの増加は、前記候補化合物が心臓病、特に心不全を抑制および/または予防することが可能であることを示す。
【0055】
好ましい実施形態では、同種の通常の健常細胞または動物に比較して、増加したmiR−199bおよび/または減少したDyrk1aの発現、量、および/または活性を示す前記候補化合物は、単離された細胞または非ヒト試験動物に接触させられる。増加したmiR−199bおよび/または減少したDyrk1aの発現、量、および/または活性を示す単離された細胞は、その形状および大きさを変える、すなわち細胞が肥大するので特に有用である。前記miR−199bの増加および/またはDyrk1aの減少の抑制は、形状および大きさにおける前記変化を抑制する。このため、前記スクリーニングの読み出しは、たとえば顕微鏡を用いて容易に実行されるので、このような細胞はスクリーニング目的のために特に有用である。また、増加したmiR−199bおよび/または減少したDyrk1aの発現、量、および/または活性を示す非ヒト試験動物は、スクリーニング目的のために特に有用である。なぜなら、そのような動物は心臓病が発達する、または心臓病が発達するリスクがあるためである。このように、心臓病を抑制および/または予防することが可能である候補化合物は、前記動物において容易に同定される。
【0056】
このように、本発明は、スクリーニング方法であって、候補化合物を、好ましくは増加したmiR−199bまたは減少したDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性を示す、単離された細胞もしくは非ヒト試験動物に接触させることを含み、前記単離された細胞の形状および/もしくは大きさ、ならびに/または前記非ヒト試験動物における心臓病、好ましくは心不全の重症度および/もしくはリスクを評価することと、前記細胞の前記大きさおよび/もしくは形状、ならびに/または前記非ヒト試験動物における前記心臓病の重症度および/もしくはリスクを基準値と比較することとをさらに含む、スクリーニング方法を提供する。前記基準値は、たとえば、前記細胞または動物に前記候補化合物を接触する前に、同種の細胞もしくは同種の動物から得ることが可能である。前記基準値は、たとえば、前記候補化合物に接触されていない別の細胞または動物から得ることも可能である。値の変更、好ましくは細胞の大きさの減少、ならびに/または心臓病のリスクおよび/もしくは重症度の減少は、前記候補化合物が心臓病を抑制することが可能であるか否かを示す。
【0057】
したがって、好ましい一実施形態では、候補化合物が、心臓病を抑制および/もしくは予防することが可能であるか否か決定する方法であって、前記候補化合物を、単離された細胞および/もしくは非ヒト試験動物に接触させることを含み、前記単離された細胞および/もしくは前記非ヒト試験動物は、好ましくは、増加したmiR−199bもしくは減少したDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性を示し、前記非ヒト試験動物において前記単離された細胞の形状および大きさ、ならびに/または心臓病、好ましくは心不全の重症度および/もしくは発症リスクが測定され、前記測定された、発現、量、および/もしくは活性、前記形状および/もしくは大きさ、ならびに/または前記リスクおよび/もしくは重症度を、前記候補化合物を有さない細胞もしくは非ヒト動物の対応する値と比較することをさらに含み、前記候補化合物を有さない前記細胞もしくは非ヒト動物と比較して、減少したmiR−199bおよび/もしくは増加したDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性、大きさおよび形状の変化、好ましくは大きさの減少、ならびに/または心臓病のリスクおよび/もしくは重症度の減少は、前記候補化合物が、心臓病を抑制および/または予防することが可能であることを示す、方法が提供される。
【0058】
本発明の方法で同定される候補化合物は、たとえば、miR−199bの阻害を通じて、心臓病、好ましくは心不全の治療を含む、miR−199b関連疾患および/またはDyrk1a関連疾患の治療のために特に有用である。したがって、このような化合物は、心臓病に対するそれらの使用だけでなく、心臓病に対する薬剤の調製のためのそれらの使用も提供される。
【0059】
本発明は、心臓病、たとえば心不全は、Dyrk1aの発現減少に関連しており、その上、miR−199bはまさにこのことを達成することが可能であるという知見を提供する。しかし、前に概説したように、既に数百のマイクロRNAが知られており、数千の異なるマイクロRNAが哺乳動物に存在すると予測されており、それらの一つ一つは、一般的に数百の遺伝子を調節すると考えられている。したがって、miR−199bは別にして、Dyrk1aの発現を調節することが可能である他のマイクロRNAが存在する。これらのマイクロRNAのいずれかが、Dyrk1aの発現を増加または回復する場合に有用である。また、たとえば、miR−199bを調節する転写因子の操作によって、miR−199bの発現を間接的に阻害または減少させることも可能であり、このことによりDyrk1aの発現を間接的に増加させる。当技術分野における現在の見解は、miRNAの発現は、主に転写レベルで制御されていることを示唆する。
【0060】
したがって、一実施形態では、本発明は、心臓病を患う、または患うリスクのある対象において、miR−199bの発現、量、および/もしくは活性を減少または阻害すること、ならびに/またはDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性を増加もしくは回復する、心臓病を治療、減少、遅延、もしくは予防するための方法をさらに提供する。
【0061】
たとえば、miR−199bの使用をせずに、Dyrk1aに直接影響を与えることも当然に可能である。Dyrk1aの量および/または(全体)活性を増加させるために、たとえば、内因性Dyrk1aの発現、量、および/または活性を増加させること、または外因性Dyrk1aおよび/またはDyrk1aをコードする核酸を投与することが可能である。
【0062】
さらに別の態様において、このように、本発明は、Dyrk1aの発現、量、および/または活性を増加または回復することが可能である、医薬として使用するための化合物を提供する。Dyrk1aの発現、量、および/または活性を増加または回復することが可能である化合物は、好ましくは心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防において使用され、または心臓病に対する薬剤の製造に使用される。好ましい一実施形態では、前記化合物は、Dyrk1aをコードする配列、またはその機能的等価物を含む核酸配列を含む。
【0063】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明される。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、単に発明を明確にするために提供する。
【実施例】
【0064】
材料および方法
マウス。動物実験モデルとして、我々は、5.5kbのマウス心臓ミオシン重鎖(Myh6)プロモーター1,2の制御下において、活性化されたカルシニューリン変異体を発現する2月齢の野生型B6CBAおよびMHC−CNAのトランスジェニックマウスを使用した。全てのプロトコルは、施設のガイドラインに従って行い、実験動物委員会によって承認された。
【0065】
大動脈ボンディング。以前に詳細に記載したように、規定された27ゲージ狭窄を第1および第2大動脈弓の幹の間の大動脈に行うことにより、横大動脈ボンディング(TAC)または偽手術(sham)を2月齢の野生型B6CBAにおいて行った。ドップラー推定ベルヌーイの式を使用して、横行大動脈狭窄の近位部位と遠位部位との間の圧力勾配を計算するためにドップラー心エコーを用いた。>20mmHgの圧力勾配を有するマウスのみを含めた。
【0066】
マウス組織または安定した哺乳動物細胞株からのRNAの分離。我々は、異なるマウス組織から、または哺乳動物の培養細胞から全RNAを単離した。野生型およびMHC−CNAトランスジェニックマウスは、イソフルラン麻酔下において頸椎脱臼により屠殺した。心臓全体ならびに脳、胸腺、腎臓、小腸、大腸、および精巣の少量のサンプルを取り除き、PBS中で洗浄し、1mlのトリゾール試薬(Invitrogen)を含むラベルを付されたチューブに入れ、直ちに液体窒素に入れた。(過熱を防ぐために)約1分ごとに最高速度で数回、組織が完全に破壊されるまでホモジナイズした。6ウェルプレートで100%の密集度まで培養した細胞をウェル毎に1mlのトリゾールを添加する前にPBSで2回洗浄し、RNaseフリーのチューブに細胞ライセートを集めた。4℃で10分間ホモジネート後(核タンパク質複合体を完全に解離させるため)、1mlのトリゾールあたり0.3mlのクロロホルムを各サンプルに添加した。4℃で15分間、12,000gで遠心し、DNAおよびタンパク質(有機下相および中間層)からRNA(上部水相)を分離した。水相(サンプル量の60%)を新しいRNaseフリーのチューブに集め、RNAを−20℃で少なくとも1時間インキュベートし、4℃で30分間、12,000gで遠心することにより0.5mlのイソプロパノールを用いて沈殿させた。RNAを含むペレットを4℃で5分間、12,000gで1mlの70%エタノールを用いて2回洗浄した。エタノールのデカンテーション後、エバポレーションにより全て除去し、サンプルをRNaseフリーの水20〜30μlに溶解した。個々の組織からのRNA量は、NanoDrop(登録商標)ND−1000紫外−可視分光光度計(Wilmington)を用いて測定し、RNAの品質は、Agilent 2100バイオアナライザを用いて観察した。
【0067】
ExiqonのマイクロRNA発現プロファイリングおよびデータ解析。483miRNAの発現解析を、miRCURY LNAアレイを使用したmiRNAのプロファイリングサービス(Exiqon, Denmark)で行った。簡潔には、3つのサンプル(3つのMHC−CNAのトランスジェニック心臓)から集めた2μgの全RNAと、対照収集物(3つの野生型の心臓)とをmiRCURY(商標)LNAアレイ標識キットを用いてHy3(商標)およびHy5(商標)蛍光ラベルでそれぞれ標識した。Hy3(商標)標識されたサンプルおよびHy5(商標)標識された対照収集物を対で混合し、Sanger InstituteのmiRBASEバージョン8.1に保存された全ての種の全てのRNAを標的とする捕獲プローブを含むmiRCURY(商標)LNAアレイ バージョン8.1にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションをTecan HS4800ハイブリダイゼーションステーション(Tecan, Austria)を用いるmiRCURY(商標) LNAアレイマニュアルに従って行った。ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイスライドをスキャンし、蛍光色素の潜在的な漂白を防止するためにオゾンフリー環境(2.0ppb以下のオゾンレベル)において保存した。LNAアレイスライドは、Agilent G2505Bマイクロアレイスキャナーシステム(Agilent Technologies, Inc., USA)を用いてスキャンし、ImaGene 7.0ソフトウェアを(BioDiscovery, Inc., USA)を用いて画像解析を実施した。各プローブの生のシグナルは、フォアグラウンドシグナルから局所のバックグラウンドおよび陰性コントロールシグナルの最大値を減算することによって得た。データは、質の悪い点を除去するために前処理され、システマティックバイアスを取り除くために標準化を行った。定量化シグナルを全体的にLowess(Locally Weight Scatterplot Smoothing)回帰アルゴリズム(Exiqon)を用いてノーマライズした。
【0068】
ノザンブロッティング。心臓または他の異なる組織からの全RNAの3マイクログラムを、8Mの尿素を含む変性12%ポリアクリルアミドゲル上で分画し、キャピラリー法によりNytran N膜(Schleicher & Schuell, Germany)に転写し、メーカーの説明書に従ってUVクロスリンクにより固定した。膜をmiR−199bまたはU6(ローディングコントロール)について特定の5'−ジゴキシゲニン(Dig)標識されたLNA検出プローブ(Exiqon)とハイブリダイズさせた。Digに対する抗体(Roche)を用いて検出を行った。
【0069】
リコンビナントアデノウイルス、LNAオリゴヌクレオチド、およびmiRNA前駆体分子。活性化されたカルシニューリン変異体(AdCnA)を発現するアデノウイルスは以前に記載した。AdLacZは以前に記載した。アンチセンスオリゴヌクレオチドを標的とするmiR−199bをExi qonから得(miRCURY LNAノックダウンオリゴmmu−miR−199b、LNA−miR−199b)、miR−199b前駆体分子をAmbionから得た(Pre−miR(商標)mmu−miR−199b miRNA前駆体、pre−miR−199b)。
【0070】
プライマリ新生仔ラット心筋細胞培養。新生仔ラット心室筋細胞を以前に記載したように1〜2日齢のラットの新生仔の心室の酵素分解によって得た。心室を0.7mg/mlのコラゲナーゼタイプ2(Invitrogen)および1mg/mlのパンクレアチン(Sigma)を補ったDMEM栄養素混合物F−12 Ham base(Sigma)による複数回の酵素消化の前にDMEM緩衝されたHEPES(pH7.4)中において保存した。細胞を61×gで10分間遠心することにより集め、新生仔ウシ血清(Invitrogen)に再懸濁し、37℃のインキュベーターで保存した。全ての細胞懸濁液を集め、10分間、61×gで遠心分離し、10%ウマ血清(Invitrogen)および5%ウシ胎児血清(Invitrogen)を添加したDMEM培地(Invitrogen)に再懸濁した。続いて、細胞をコーティングされていない細胞培養プレートにおいて、非心筋細胞の混入を除去するために3時間差動的(differentially)に播いた。次に、心筋細胞(5%未満の非心筋細胞を含む)をフィブロネクチン(Sigma)コートされた6ウェル培養プレート上に播いた。約24時間後、播いた培地をDMEM:M199(4:1)培地(血清フリー培地)に交換した。
【0071】
プライマリ新生仔心筋細胞の一過的なトランスフェクション。トランスフェクションのために、新生仔ラット心筋細胞をウェルあたり2×10個の細胞密度で6ウェルフィブロネクチンコートされたプレート中のニュートリドーマ(Roche)を添加したDMEMに播種した。翌日、細胞を30nMのLNA−miR−199b、pre−miR−199b、またはそれぞれを組み合せたコントロールをメーカーの推奨に従ってオリゴフェクタミン試薬(Invitrogen)とともに一過的にトランスフェクトした。細胞は、翌日洗浄し、未処置で放置、10μMのフェニレフリン(PE)により刺激、または細胞の固定もしくはRNA分離の24時間前にAdLacZまたはAdCnAに感染させた。
【0072】
免疫細胞化学と共焦点顕微鏡。心筋細胞の大きさおよびサルコメア組織を可視化するために、培養心筋細胞を4%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、0.2%トライトンX−100を含むPBSで5分間浸透した。一次および二次抗体を1%BSA含むTBSを用いて希釈し、1時間室温でインキュベーションを行った。細胞をPBSで5分間3回洗浄し、Vectashield蛍光封入剤(Vector Laboratories)を用いてカバーガラスにマウントし、Zeiss LSM 510 META顕微鏡を用いた共焦点顕微鏡で分析した。抗体の使用は、マウスモノクローナル抗α-アクチニン(Sigma、1:500)、ウサギポリクローナル抗ANF(Peninsula Laboratories)Cy5ヤギ抗ウサギおよびCy3ヤギ抗マウス(Jackson Immuno Research、それぞれ、1:100および1:500)、TOPRO−3(1:100、Invitrogen)が含まれる。細胞表面領域は、3つの独立した実験において、10〜20のフィールド中の80〜100の心筋細胞についてSPOT−imaging software(Diagnostic Instruments)を用いて決定した。
【0073】
ターゲット予測、プライマー設計、およびリアルタイムPCR。特定のマイクロRNAの標的遺伝子を見出すために、我々は、予測可能なバイオインフォマティクスアルゴリズム(PicTar, miRanda, miRBase)に基づいて複数のWebサーバを利用した。これらは、処理アルゴリズム、およびUCSCゲノムブラウザから最も保存された3’UTR配列に対するmiRNA標的を検索するための強力なmiRNAの標的検索ツールを組み込んだ直感的なインターフェイスである。各アルゴリズムにもたらされる標的遺伝子リストを比較することにより、我々は、使用されるアルゴリズムに共通する32遺伝子のリストに対する潜在的な標的遺伝子の数百の初期リストを絞り込んだ。
我々は、予測された遺伝子およびL7の20の転写産物を標的とするプライマーを設計した。プライマーは、マウス配列(www.ensembl.org)であると特定され、以下の条件に基づいてBeacon Designer software(Invitrogen)を使用して選択した。i)〜60℃のプライマー溶解温度、ii)〜55%のGC含有量、iii)好ましくは5’末端にGを含まない、iv)3つ以上の同一ヌクレオチドが続くことを回避、v)〜100ヌクレオチドのアンプリコンの長さ。特異性は、Basic Local Alignment Search Tool (BLASTを用いて確認した。また、アンプリコンの特定の融点は、Biorad Dissociation curve software(iCycler, Biorad)を用いて分析した。全てのプライマーセットは、PCR効率について試験し、それらが5%の効率範囲(3.14<スロープ<3.47)外であった場合に代替プライマーを設計した。指定された心臓からの3μgのRNAについて逆転写酵素(Invitrogen)を使用して逆転写した。全反応容量を25μlとして、40ngのcDNAについて400nMのフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いたシングルプレックス反応としてPCR増幅を行った(二重測定)。PCRは、95℃3分間の初期変性ステップに続いて、95℃/30sおよび60℃/30sおよび60℃/30sを40サイクル行った。リアルタイムPCRの結果は、1.2%アガロースゲルにおいて逆転写材料の電気泳動により確認し、エチジウムブロマイド染色後、UV照射下で可視化した。転写量を内在性コントロール(L7)の量と比較した。
【0074】
安定した心臓細胞株の生成。我々は、予測される標的遺伝子のいくつかを検証するために細胞モデルを開発した。ダブルステイブルmiR−199bに誘導される細胞は、修飾されたT−REXシステム(Invitrogen)を使用して生成された。簡潔には、細胞をβ-アクチンプロモーターの制御下でTet−repressor(TR)を発現するベクター(Hans Clevers, The Hubrecht Instituteから快く提供された)pCAgβTrs−hygroの8μgとともにFUGENE6試薬(Roche)を用いてトランスフェクトし、安定したクローンを250μg/μlのハイグロマイシンを用いて選択した。選択されたコロニーについてFUGENE6試薬(Roche)を使用して、それらのドキシサイクリン(doxycyclin)(Dox)への応答をデュアルルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を用いて検査するために、0.2μgのpcDNA4/TO−ルシフェラーゼ(Invitrogen)で一過的にトランスフェクトした。その後、高いルシフェラーゼ活性および低いバックグラウンドを示す2つの異なるTet−repressorクローン(TR1およびTR4)を、8.5μgのpcDNA4/TO−miR−199bでトランスフェクトし、ダブルステイブル細胞株を生成するためにハイグロマイシンおよび750μg/μlのゼオシンの存在下において培養した。ゼオシン/ハイグロマイシン耐性クローンを、ラットANF遺伝子(エクソン1の先頭に対して塩基対−3003〜+1)の近位プロモーター領域の制御下において、それらのDOX誘導性のmiR−199b転写活性化プロファイルを試験するために、ホタルルシフェラーゼをコードするレポーターコンストラクトとともに一過的にトランスフェクトした。我々は、培養培地中におけるドキシサイクリン存在下のmiR−199b発現の顕著な誘導を示した2つのクローン(TR1−2およびTR4−7)を選択した。このように、我々は、miR−199bの誘導性活性化および内因性miR−199b標的遺伝子の随伴性翻訳抑制の細胞システムを確立した(図4参照)。
【0075】
ウエスタンブロット分析。タンパク質を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Complete Mini, Roche)を添加した細胞溶解バッファ(pH8.0の20mMトリス、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのEGTA、1%のトリトンX−100)を用いて、クローンTR1−2およびTR4−7から抽出し、未処置のまま、またはDoxで処置した。SDS−PAGE電気泳動およびブロッティングを詳細に記載したように行った。Dyrk1Aに対するウサギポリクローナル抗体およびGAPDHに対するマウスモノクローナル抗体を含む抗体を使用した。続いて、対応するワサビペルオキシダーゼ(HRP)共役化二次抗体(DAKO)およびECL検出を行った。
【0076】
標的遺伝子の検証。3’UTRの調節配列は、mRNAの安定性、翻訳、および輸送のために重要であることが示された。我々は、マウスの配列(www.ensembl.org)に対して特異的なプライマーを設計し、Dyrk1aの3’UTR上のmiR−199bの特異的結合部位(ヌクレオチド1536−1365、http://cbio.mskcc.org/cgi-bin/mirnaviewer/)を標的とした。この特定の配列のPCR増幅後、予期される大きさ(286bp)のPCR産物を可視化し、1.2アガロースゲルから単離した。精製後、3’UTRフラグメントをpMIR−REPORT(商標)のmiRNA発現レポーターベクター(Ambion)にクローニングした。このベクターは、ルシフェラーゼ翻訳配列の下流のmiRNAターゲット領域を有するCMV哺乳類プロモーターの制御下にホタルルシフェラーゼが含まれる。このベクターはmiRNA標的のクローニングおよびmiRNAの評価のために最適化されており、したがって、miRNAの標的を特定するためのスクリーニングツールとして使用することが可能である。プラスミド単離およびシークエンス後、ダブルステイブルTR−miR199bクローンをトランスフェクトするためにプラスミドを使用した。細胞を96ウェルプレートで培養し、pmiR−レポーター3’UTR Dyrk1aプラスミドまたは空のベクターでトランスフェクトし、37℃で24時間インキュベートした。PBSで1回洗浄後、細胞を未処置のまま、またはルシフェラーゼ活性を測定する前に48時間Doxで処置した。
【0077】
統計解析。結果を平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表す。統計解析は、Prism5ソフトウェア(GraphPad Software Inc.)を用いて行い、群の相違を5%の有意水準で検出する場合は、Turkey’s post test後のANOVA、または2群の実験群を比較する場合はStudent’s t−testで構成した。
【0078】
結果
カルシニューリントランスジェニックマウスにおけるマイクロRNAの発現差異。我々は、カルシニューリントランスジェニックマウスにおける心臓のmiRNAの発現レベルについてプロファイリングを行った。2月齢の野生型マウスおよびMHC−CNAトランスジェニックマウスの心臓からRNAを単離し、我々はこれらのサンプルについてmiRNAのプロファイリングを行った。Hy3標識化サンプルおよびHy5標識化対照収集RNAサンプルを対で混合し、Sanger InstituteのmiRBASEバージョン8.1に登録された全てのmiRNAs(345miRNAs)を標的とする捕獲プローブ、およびmiRBaseにおいて未だ注釈を付されていないライセンスされたヒト配列を標的とするプローブを含むmiRCURY LNAアレイにハイブリダイズした。我々は、市販のオリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いてカルシニューリン誘導性心不全の発達と共同して制御されるマイクロRNAを検出した。また、我々は、ある特定のマイクロRNAであるmmu−miR−199bおよびヒトのオーソログであるhsa−miR−199b(図1b)のゲノム局在解析を行った。ヒトmiR−199bは、エクソン14および15の間の逆ストランドにおけるダイナミン1(Dnm1)遺伝子(図1b)にコードされた遺伝子内のマイクロRNAである。病理学的な心肥大の2つのよく確立されたモデルであるMHC−CnAトランスジェニックマウスおよび横行大動脈狭窄(TAC)手術され血圧の過負荷がかけられたマウスから単離した心臓組織のノザンブロット分析は、miR−199b−5pが疾患のある心臓において実際に強く上方制御されることを確かなものとした(図2a、c)。次に、我々は心臓、脳、胸腺、腎臓、小腸、大腸、および精巣を含むさまざまなマウス組織における発現パターンをノザンブロッティングにより分析した(図2b)。心臓に特異的ではないが、miR−199b−5pは心臓組織に非常に豊富なものであることが明らかとなった。さらに、miR−199b−5pは、コントロールであるヒトの健康な心臓組織(図2d)と比較して、ヒト心不全患者の心臓組織の生検で豊富に発現される。最後に、NFATc2のヌル対立遺伝子を保持するマウスの心臓は、ベースライン条件下と同様にそれに続くカルシニューリンシグナリングの慢性的な活性化の両者において、より少ないmiR−199b発現を示すので、miR−199bはカルシニューリン/NFAT経路の中間標的遺伝子である(図2e)。
【0079】
心筋細胞におけるmiR−199bの発現増加は肥大を誘導する。心筋細胞のリモデリングにおけるmiR−199bの役割に取り組むために、我々は、miR−199bを過剰発現させるために新生仔ラット心筋細胞にmiR−199b前駆体分子をトランスフェクトし、それらとLacZ遺伝子発現アデノウイルスおよびカルシニューリン活性化型を発現しているアデノウイルス(AdCnA)に感染した、または10mMのフェニレフリンに暴露した(PE;図3a)心筋細胞培養とを比較した。さまざまな治療法による細胞の大きさまたはサルコメア組織の変化を観察するために、心筋細胞にサルコメアα-アクチニン染色を行った(図3b)。予想されたように、AdCnAまたはPE治療は、細胞の大きさ、およびANFの核周囲における存在の顕著な増加を示すように、強力な肥大応答をもたらした。驚くべきことに、細胞の大きさ、およびANF発現における同様の増加がmiR−199bを過剰発現している心筋細胞で観察された(図3b)。
【0080】
miR−199bの阻害は心筋細胞肥大を軽減する。心筋肥大(カルシニューリン媒介)のmiR−199b下流の条件を評価することを開始するために、我々は、内因性のmiR−199b(LNA−miR−199b)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用し、これらのオリゴヌクレオチドをプライマリ心筋細胞培養にトランスフェクトした。また、コントロールとして心筋細胞を非特異的コントロールオリゴヌクレオチドとともにトランスフェクトした(図3c、d、e)。次に、我々は、心筋細胞培養をカルシニューリンの活性化型を発現するアデノウイルス(AdCnA)に感染させるか、または10mMのフェニレフリン(PE)に暴露した。細胞の大きさまたはサルコメア組織の変化を観察するために、心筋細胞をサルコメアα-アクチニン染色を行った。細胞をコントロールのオリゴヌクレオチドで処置した場合、AdCnAまたはPEの治療は強力な肥大応答をもたらした。対照的に、LNA−miR−199bによる前処置は、AdCnA感染またはPE処置に反応する古典的な肥大の表現型を完全に抑制する(図3d)。データの定量化は、コントロールオリゴヌクレオチドを用いて前処置したAdCnA感染またはPE処置細胞内の細胞表面積の2倍の増加を示した。AdCnAおよびPEのこれらの肥大効果は、miR−199bのその標的mRNAへの結合をブロックすることにより抑制された(図3e)。
【0081】
miR−199bは、カルシニューリン−NFATシグナル経路の下流の異なる遺伝子を標的としていると予測される。いくつかの疾患の状況において非常に多くのmiRNAが同定されたにもかかわらず、miRNAのほんの一握りしか機能的に特徴付けられていない。複雑な発現パターンおよび多数の予測される標的遺伝子は、それらの正確な生物学的機能の直接の分析を妨げる。カルシニューリン誘導心不全におけるmiR−199bの役割を理解するために、我々は、いくつかの研究8−17に基づいて開発された数種の公開データベースに挙げられ、予想されるmmu−miR−199bのmRNA標的の発現解析を行った。RT−PCR法によって、我々は、miR−199bのための全ての予測された標的mRNAは、野生型の心臓と比較して、MHC−CnAトランスジェニックの心臓において異なる発現をしていることを見出した(図4a)。しかし、Mylb6、M11S1、Grpc5A、および特にDyrk1aのような遺伝子は、MHC−CnAトランスジェニックの心臓において強く下方制御された。しかし、Dyrk1aを除いて、これらの遺伝子のいずれもカルシニューリン/NFATのシグナル伝達経路に関連するように記載されていない。
【0082】
miR−199b過剰発現は、二重特異性チロシンリン酸化制御キナーゼDyrk1aの下方制御をもたらす。MHC−CnAトランスジェニックの心臓において転写レベルで下方制御された遺伝子から、Dyrk1aのみがこの経路に直接結び付くことが示された。最近では、2つの独立したグループが、ダウン症においてNFATシグナルの調節異常に関する証拠を得た18−20。発生に重要である転写因子のNFATファミリーは、高リン酸化型の形態で細胞質に存在する。それらは、カルシウム流入に反応してカルシニューリンにより脱リン酸化され、標的遺伝子を活性化するために核に移行する。様々なNfatc遺伝子を欠損したマウスは、ダウン症の人々と同様の異常を示した。ダウン症の表現型の原因となる遺伝子を含むと考えられるヒト21番染色体の実験は、NFATシグナリングの2つの潜在的な制御因子を明らかにした。DSCR1(カルシニューリン阻害剤をコードする)および核セリン/スレオニンキナーゼをコードするDYRK1A(二重特異性チロシンリン酸化制御キナーゼ)である。DYRK1AおよびDSCR1は、培養神経細胞におけるNFAT依存性の転写を相乗的に抑制した。また、DYRK1Aは、NFATのリン酸化を示し、さらにグリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)によってリン酸化され、したがって核からの輸送を促進する。Dyrk1aおよびDscr1を過剰発現したトランスジェニックマウスは、心臓血管の異常がほとんどの場合、心内膜NFATの細胞質局在化に関連することを示す。これらの知見に基づいて、我々は、miR−199bのカルシニューリン/NFAT依存性活性化がDyrk1a発現の直接の下方制御をもたらすと仮説を立てた。実際に、このことは、核NFATのリン酸化の減少と、細胞質へのリン酸化NFATの転移の減少、ならびにそれに続く心臓リモデリングおよび肥大応答とをもたらす。この仮説を試験するために、我々は、理論的には、内因性miR−199b標的遺伝子の同時翻訳抑制である、miR−199bの活性化を誘導する細胞システムを作り出した(図4b)。加えて、Doxを用いたこれらの細胞の治療は、ノザンブロッティング解析によって、miRの発現レベルが非常に低い未処置の細胞とは対照的にmiR−199b発現の増加を示した(図4c、NB)。miR−199b発現の増加に伴って、我々は、Dyrk1aが実際にmiR−199bの直接の標的であることを示すタンパク質レベルでのDyrk1aの同時減少を観察した(図4c、WB)。
【0083】
Dyrk1aは、miR−199bの直接的な標的遺伝子である。Dyrk1aが、miR−199bの直接の標的遺伝子であるかどうかを分析するために、我々は、Dyrk1aの3’UTR配列、より具体的にはmiR−199bのシード領域をより慎重に調べた。図5aは、この領域がヒトとマウスとの間で非常に保存されていることを示し、miR−199bの標的配列そのものであることを示唆する。このことを確認するために、我々はmiRNAの発現レポーターベクター(pMiRレポーター、Ambion)を利用した。このベクターは、CMV哺乳動物プロモーターの制御下にホタルルシフェラーゼを含む。ルシフェラーゼ遺伝子の3’UTRは、予想されるmiRNA結合標的または他の塩基配列の挿入のためのマルチプルクローニングサイトを含む。miR199bが結合すると予測されるDyrk1aの3’UTRの配列をpMiR−REPORTベクターにクローニングすることにより、ルシフェラーゼレポーターは、miRNA標的の制御を模倣する制御を行うであろう(この場合は、Dyrk1a、図5a)。miR−199bの過剰発現がルシフェラーゼ活性の低下をもたらせば、このことは、Dyrk1aの3’UTR配列は、このmiRの直接の標的となることを示すであろう。これが実際に我々の観察したものである(図5b)。また、我々は、コントロールとして、我々がDyrk1aの3’UTR配列内のmiR−199bシード領域に2つのポイントミューテーションを導入したベクターを作製した(図5a)。p−MIR−レポーター−3’UTRDyrk1aは、DOX添加後のmiR−199bの発現による、およびmiR−199bを発現するベクターの一過性の共発現による容量依存的様式(図5c)におけるmiR−199b発現に感受性であり、一方、無関係のマイクロRNAであるmiR−216aの共発現の間には感受性は観察されなかった。また、miR−199bに誘導される、48時間のDox処置されたクローンまたは48時間のDox処置されていないクローンをp−MiR−レポーター−3’UTRDyrk1aでプレトランスフェクトした。miR−199bを過剰発現する細胞において、ルシフェラーゼ活性は、未処置のままの細胞または空のベクターでトランスフェクトした細胞と比較して強く抑制された。これらのデータの組合せは、Dyrk1aの3’UTRにおいて、機能的および進化的に保存されたmiR−199bシード領域の存在を示す。
【0084】
アンタゴmir−199bは、Dyrk1a発現レベルを回復することにより、カルシニューリン誘導性心不全を修復(rescue)する。最後に、我々は、in vivoにおける内因性のmiR−199b発現をブロックするために設計したアンタゴmirアプローチを利用した(図6a)。この目的のために、我々は、生後14日齢(p14)の野生型およびカルシニューリン遺伝子導入マウスに3日間連続のIP注射によって、miR−199bに特異的である化学的に修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(アンタゴmiR−199b)を送達する実験を行った(図6b)。マウスは、病気または不快感のいずれかの明らかな兆候もなく良好にアンタゴmiR−199b処置された。最後の注入の4日後、我々は、心臓全体の形態を分析し、我々は、アンタゴmiR−199bで処置されたカルシニューリントランスジェニックマウスは、ベヒクル処置した同腹子に比較して、正規に近い心臓の大きさを有することを見出した(図6c、d)。心臓組織のノザンブロッティングは、アンタゴmiR−199b設計の有効性(図6e)を示す、野生型およびカルシニューリントランスジェニックマウスの両者におけるmiR−199b発現のほぼ完全な終了を明らかにした。興味深いことに、Dyrk1a発現レベルは、ベヒクル処置された野生型マウスに比較して、ベヒクル処置されたカルシニューリントランスジェニックマウスでは約50%下方制御された(図6f)。対照的に、アンタゴmiR−199b処置された動物は、Dyrk1aタンパク質レベルの回復を示した。このことは、RCAN1.4転写量(図6g)の相対的発現レベルによって測定されるように、正常化されたNFAT活性化レベルによって達成される。
【0085】
逆に、我々は、α-ミオシン重鎖プロモーターを使用して生後心筋においてmiR−199bを過剰発現したトランスジェニックマウス系統を生成した(図7a)。我々は、ノザンブロッティングによって評価したように(図7a)、それぞれmiR−199b過剰発現の異なる3系統のトランスジェニック系統を生成することができた。3週齢における、miR−199b過剰発現は、明確な心臓の表現型を示さなかった。しかし、我々は、miR−199bトランスジェニックマウスとカルシニューリントランスジェニックマウスを交配した場合、我々は、カルシニューリン遺伝子のみを内包するマウスよりもより悪化した心臓の表現型を観察した(図7b)。心臓表現型は、相対的なmiR−199bの発現レベル(図7b)と同様に、相対的な心臓の重量によって反映されていた。最後に、我々は、miR−199bの発現に逆に相関する、虚血性心不全を有する患者の生検におけるDyrk1aタンパク質の発現レベルの低下を観察した(図7d)。
【0086】
まとめると、我々のデータは、miR−199bがカルシニューリン誘導性心肥大に重要な役割を果たしていることを初めて示す。さらに重要なことは、我々は、その直接的な標的遺伝子Dyrk1aの積極的な下方制御により、miR−199bがカルシニューリン/NFATに誘導される心筋肥大と、そのために病理学的心肥大とを促進するメカニズムを明らかにした。
【0087】
参考文献


【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】マイクロRNA−119bのゲノム局在。(a)マイクロRNAのプロファイリングは、2月齢のアルファMHC−CnA(αMHC−CnA)トランスジェニックマウスの心臓組織内に差動的に発現させたマイクロRNAのセットを明らかにする。(b)Dnm1遺伝子における逆ストランドの9番染色体上に局在する、遺伝子内のマイクロRNAであるmiR−199bのゲノム局在。
【図2】マイクロRNA−199bは、カルシニューリン誘導性心肥大において上方制御される。(a)αMHC−CnAトランスジェニックマウスおよびTACを行ったマウス(バー:5mm)の心臓組織におけるmiR−199b発現のノザンブロット解析によるプロファイリングアレイの検証。(b)ノザンブロッティングにより解析した異なるマウス組織におけるmiR−199bの発現パターン。(c)αMHC−CnAトランスジェニックマウス、およびTACを行ったマウスのいくつかの心臓におけるmiR−199b発現のノザンブロット解析。(d)コントロールおよび心不全のヒト生検におけるmiR−199bのノザンブロット解析。(e)miR−199bは、αMHC−CnAのトランスジェニックマウスの心臓において上方制御され、NFATc2を欠損したノックアウトマウスの心臓において減少し、miR−199bは、直接的なカルシニューリン/NFAT標的遺伝子であることが示唆される。
【図3】心筋肥大の発達は、miR−199b発現の増加または阻害によって調整することが可能である。(a)カルシニューリンの恒常的活性化型を発現するアデノウイルス(AdCnA)により感染させた、フェニレフリン(PE)を用いて刺激した、またはmiR−199bの前駆体分子をトランスフェクションした新生仔ラット心筋細胞におけるmiR−199b過剰発現のノザンブロット検証。(b)コントロールアデノウイルス(AdLacZ)もしくは活性化CnA(AdCnA)に感染させた、またはPEもしくはmiR−199b前駆体分子を用いて処置した新生仔ラット心筋細胞の代表的な共焦点画像である。細胞をαアクチニン、ANF、および核対比染色(TO−PRO−3)した。データは、活性型カルシニューリンおよびPEのような既知の肥大刺激と同様にmiR−199bの過剰発現下で核周囲のANFの誘導とともに心筋細胞の大幅な拡大を示す。(c)スクランブルLNAプローブまたはmiR−199bLNAプローブを用いて前処置された、およびAdLacZもしくはAdCnAを用いて感染させた、またはPEを用いて処置した新生仔ラット心筋細胞におけるmiR−199b発現のノザンブロット解析。(d)コントロール、またはmiR−199bのLNAプローブで前処置された、およびAdLacZもしくはAdCnAに感染させた、またはPEで処置した新生仔ラット心筋細胞の代表的な共焦点画像。細胞をα−アクチニン核対比染色(TO−PRO−3)した。(e)示された条件下における細胞表面面積の定量化により、心筋細胞におけるmiR−199bの阻害下において肥大表現型の修復を確認した(バー:20μm)。
【図4】miR−199bは、Dyrk1aを標的にすると予測される。(a)野生型(非トランスジェニック)およびMHC−CnAトランスジェニックマウスのRNAを、予想される標的遺伝子に対して設計したプライマーを用いたRT−PCR法により解析した。データは、予測された全ての遺伝子が、MHC−CnAトランスジェニック心臓において発現を変化させるわけではないが、Mylb6、M11S1、Grpc5A、およびDyrk1aのような遺伝子の発現は、明らかに減少したことを示している。(b)ダブルステイブルmiR−199b誘導細胞におけるDoxによるmiR−199b発現操作の模式図。(c)Doxを用いて処置した、または処置していない2つのmiR−199bを誘導可能である細胞クローン(TR4−7およびTR1−2)におけるmiR−199b発現のノザンブロット解析は、Dox処置によるmiR−199bの上方制御を明らかに示す。また、(miR−199bの予測対象としての)Dyrk1aのタンパク質レベルは、ウエスタンブロット分析によって両者のクローンにおいて決定された。データは、miR−199bがDox処置によって一度上方制御されれば、Dyrk1aのタンパク質レベルは大幅に減少することを明らかに示す。
【図5】Dyrk1aは、miR−199bの直接的な標的遺伝子である。(a)miR−199bのシード領域が結合すると予測される配列を示す、Dyrk1aの3’UTRの模式図。pMiR−レポーター− 3’UTRDyrk1aの模式図。(b)miR−199bを誘導可能であるクローンをpMiR−レポーター−3’UTRのDyrk1aプラスミドを用いてトランスフェクトした。Dox刺激の後にルシフェラーゼ活性が低下する。(c)HEK293細胞をmiR−199bの前駆体を有する発現ベクターの量の増加とともに同時導入すると、ルシフェラーゼ活性における用量依存性の減少をもたらす。対照的に、無関係のマイクロRNAの前駆体(miR−216a)を有する発現ベクターはルシフェラーゼ活性に影響を与えない。(d)TR4−7細胞をルシフェラーゼ活性の測定前に、未処置のまま、または(miR−199bの発現を誘導するために)Doxを用いて48時間処置した。グラフは、miR−199bの過剰発現(+Dox)下においてpMiR−レポーター−3’UTRのDyrk1aプラスミドを用いてトランスフェクトした細胞のルシフェラーゼ活性は、miR−199bが直接Dyrk1aの3’UTRに結合することを示す強い減少を示す。対照的に、変異したpMiR−レポーター−3’UTRのDyrk1aはDox処置には反応せず、Dyrk1aの3’UTRにおけるシード領域は、miR−199bの誘導する感受性に必要であることを示す。
【図6】アンタゴmiR−199b処置は、in vivoにおいてカルシニューリンに誘導される心臓肥大をDyrk1a発現の正常化により修復する。(a)mir−199bを阻害可能な塩基配列の非限定的な例。オリゴの説明(アンタゴmir):20〜23塩基長、全ての2’−Ome、1型の3’−コレステロールの修飾、5〜7のPS結合、PAGEまたはHPLC精製。(b)3日間連続で、毎日腹腔内(IP)注入によってmiR−199bに対するアンタゴマー(アンタゴmir−199b)を注入された2週齢のマウス(カルシニューリントランスジェニックマウスおよび野生型同腹子)の処置計画の模式図。(c)ベヒクルまたはアンタゴmiR−199b処置した動物から単離された心臓の全体の形態は、アンタゴmiR−199b処置によりカルシニューリントランスジェニックマウスにおける心臓肥大の大幅な修復を示す。(d)心臓重量対体重比は、カルシニューリントランスジェニックマウスにおけるアンタゴmiR−199b処置による心臓の大きさの修復を確認する。(e)示した処置およびジェノタイプの心臓組織における減少したmiR−199b発現のアンタゴmiR−199b処置の有効性のノザンブロット検証。(f)ベヒクル処置されたカルシニューリントランスジェニックマウスにおける下方制御、およびアンタゴmir−199b処置による野生型レベルへのDyrk1a発現の正常化を示す、Dyrk1aのウエスタンブロット分析。(g)直接的なカルシニューリン/NFATの標的遺伝子RCAN1のエクソン4のスプライスアイソフォームのリアルタイムPCR法による心臓組織におけるNFAT活性の正常化。
【図7】トランスジェニック心臓におけるmiR−199bの過剰発現は、心不全シグナルに対する感受性を増加する。(a)アルファ-ミオシン重鎖プロモーター(MHC;上記)の制御下にある生後心筋におけるmiR-199bを過剰発現したトランスジェニックマウスの作製、および異なる3系統のトランスジェニック系統におけるmiR−199b発現のノザンブロット解析。(b)MHC−miR−199bの最も多量の過剰発現系統は、カルシニューリントランスジェニックマウスと交配され、カルシニューリントランスジェニックマウス単独に比較してダブルトランスジェニックマウスにおいて、より大幅な心肥大をもたらす。(c)指定された群の心臓組織における相対的なmiR−199bの発現レベル。(d)miR−199bの発現レベル(ノザンブロット、上部)は、コントロール心臓および心不全患者のヒト心臓組織における、Dyrk1aタンパク質発現(ウエスタンブロット、下部)と逆相関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防に使用するためのマイクロRNA阻害剤であって、前記マイクロRNAは、Dyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能である、阻害剤。
【請求項2】
マイクロRNA阻害剤の使用であって、前記マイクロRNAは、Dyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能である、心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防についての薬剤の製造のための使用。
【請求項3】
心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防のための方法であって、マイクロRNA阻害剤の薬学的に有効な量をそれが必要な個体に投与することを含み、前記マイクロRNAが、Dyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能である、方法。
【請求項4】
前記阻害剤が、前記マイクロRNAに対して相補的である核酸分子を含む、請求項1または2または3に記載の阻害剤、方法、または使用。
【請求項5】
前記阻害剤が、マイクロRNAであるmiR−199bの発現を抑制することが可能である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の阻害剤、使用、または方法。
【請求項6】
前記阻害剤が、細胞内の前記マイクロRNAの発現を阻害または減少させることが可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の阻害剤、使用、または方法。
【請求項7】
前記マイクロRNA阻害剤が、Dyrk1aの発現を増加または回復することが可能である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の阻害剤、使用、または方法。
【請求項8】
前記マイクロRNAが、miR−199bを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の阻害剤、使用、または方法。
【請求項9】
前記阻害剤は、アンチセンス核酸分子を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の阻害剤、使用、または方法。
【請求項10】
阻害剤、使用、または方法であって、前記阻害剤は、
配列CCCAGUGUUUAGACUAUCUGUUC(hsa−miR−199b−5p)またはその相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する核酸配列であって、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有し、および/または
配列ACAGUAGUCUGCACAUUGGUUA(hsa−miR−199b−3p)またはその相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する核酸配列であって、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
マイクロRNA発現の阻害剤を含む、またはコードする核酸配列を含むベクターであって、前記マイクロRNAは、Dyrk1aの発現を阻害または減少させることが可能である、ベクター。
【請求項12】
請求項1または請求項4〜10のいずれか1項に記載の阻害剤を含む、またはコードする核酸配列を含む、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
マイクロRNAであるmiR−199bの、少なくとも18ヌクレオチド、好ましくは少なくとも20ヌクレオチドに少なくとも90%相補的である、少なくとも18ヌクレオチドの長さを有する核酸分子を含む、請求項11または12に記載のベクター。
【請求項14】
配列CCCAGUGUUUAGACUAUCUGUUC(hsa−miR−199b−5p)またはその相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する核酸配列であって、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有し、および/または
配列ACAGUAGUCUGCACAUUGGUUA(hsa−miR−199b−3p)またはその相補配列の少なくとも一部に少なくとも90%の配列相同性を有する、少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する核酸配列であって、前記一部は少なくとも20ヌクレオチドを有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項15】
前記ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはレンチウイルスベクターである、請求項11〜14のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項16】
前記ベクターは、哺乳動物細胞における発現に適したプロモーターを含み、前記プロモーターは、Dyrk1aの発現、量、および/または活性を増加することが可能である核酸配列に機能的に連結されている、請求項11〜15のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項17】
前記ベクターは、哺乳動物細胞における発現に適したプロモーターを含み、前記プロモーターは、マイクロRNAであるmiR−199bの発現、量、および/または活性を抑制することが可能である核酸配列に機能的に連結されている、請求項11〜16のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項18】
心筋細胞における発現に適したプロモーターを含む、請求項11〜17のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれか1項に記載のベクター、および/または請求項1もしくは請求項4〜10のいずれか1項に記載の阻害剤を含む、単離された細胞、好ましくは哺乳動物細胞、さらに好ましくは心筋細胞。
【請求項20】
心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防についての薬剤の調製のための、請求項19に記載の単離された細胞の使用。
【請求項21】
心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防のための、請求項19に記載の単離された細胞。
【請求項22】
心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防についての薬剤の調製のための、請求項11〜18のいずれか1項に記載のベクターの使用。
【請求項23】
請求項11〜18のいずれか1項に記載のベクター、および/または請求項19に記載の細胞の薬学的に有効な量をそれが必要な個体に投与することを含む、心臓病の治療、軽減、遅延、または予防のための方法。
【請求項24】
請求項1もしくは請求項4〜10のいずれか1項に記載の阻害剤、および/または請求項11〜18のいずれか1項に記載のベクター、および/または請求項19に記載の細胞を含み、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項25】
前記心臓病がマイクロRNA発現に関連付けられる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用、方法、ベクター、阻害剤、単離された細胞、および/または医薬組成物。
【請求項26】
前記心臓病が、Dyrk1aの発現を減少または阻害することに関連付けられる、請求項1〜25のいずれか1項に記載の使用、方法、ベクター、阻害剤、単離された細胞、および/または医薬組成物。
【請求項27】
前記マイクロRNAが、miR−199bである、請求項1〜26のいずれか1項に記載の使用、方法、ベクター、阻害剤、単離された細胞、および/または医薬組成物。
【請求項28】
前記心臓病が、肥大型心臓病および/または心不全を含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の使用、方法、ベクター、阻害剤、単離された細胞、および/または医薬組成物。
【請求項29】
前記心臓病が、心臓虚血、糖尿病、および/もしくは高血圧後の状態に関連付けられる、ならびに/または、早発性もしくは遅発性先天性心臓病を引き起こす少なくとも1つの遺伝性の遺伝子変異に関連付けられる、請求項1〜28のいずれか1項に記載の使用、方法、ベクター、阻害剤、単離された細胞、および/もしくは医薬組成物。
【請求項30】
請求項11〜18のいずれか1項に記載のベクター、請求項1もしくは請求項4〜10のいずれか1項に記載の阻害剤、請求項19に記載の単離された細胞、および/または請求項24に記載の医薬組成物を供給された、非ヒト試験動物。
【請求項31】
候補化合物が、心臓病を抑制、遅延、および/または予防することが可能であるか否か決定する方法であって、
前記候補化合物を、単離された細胞および/または非ヒト試験動物に接触させることと、前記細胞および/または前記動物におけるmiR−199bおよび/またはDyrk1aの発現、量、および/または活性を測定することとを含み、
前記測定された発現、量、および/または活性を、前記候補化合物を有しない同種の細胞または動物におけるmiR−199bおよび/またはDyrk1aの発現、量、および/または活性と比較することをさらに含み、
前記候補化合物を有さない前記細胞または動物に比較して減少したmiR−199bおよび/または増加したDyrk1aの発現、量、および/または活性が、前記候補化合物が心臓病を抑制および/または予防することが可能であることを示す、方法。
【請求項32】
前記候補化合物が、健康な細胞または動物に比較して、増加したmiR−199bもしくは減少したDyrk1aの発現、量、および/または活性を示す、単離された細胞または非ヒト試験動物に接触させられる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
候補化合物が、心臓病を抑制、遅延、および/もしくは予防することが可能であるか否か決定する方法であって、
前記候補化合物を、単離された細胞および/もしくは非ヒト試験動物に接触させることを含み、前記単離された細胞および/もしくは前記非ヒト試験動物は、好ましくは、増加したmiR−199bもしくは減少したDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性を示し、前記非ヒト試験動物において前記単離された細胞の形状および大きさ、ならびに/または心臓病、好ましくは心不全の重症度および/もしくは発症リスクが測定され、
前記測定された、発現、量、および/もしくは活性、前記形状および/もしくは大きさ、ならびに/または前記リスクおよび/もしくは重症度を、前記候補化合物を有さない細胞もしくは非ヒト動物の対応する値と比較することをさらに含み、
前記候補化合物を有さない前記細胞または非ヒト動物と比較して、減少したmiR−199bおよび/もしくは増加したDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性、大きさおよび形状の変化、好ましくは大きさの減少、ならびに/または心臓病のリスクおよび/もしくは重症度の減少は、前記候補化合物が、心臓病を抑制および/または予防することが可能であることを示す、方法。
【請求項34】
前記心臓病を患う、または患うリスクのある対象において、miR−199bの発現、量、および/もしくは活性を減少または阻害すること、ならびに/またはDyrk1aの発現、量、および/もしくは活性を増加もしくは回復する、心臓病を治療、減少、遅延、および/もしくは予防するための方法。
【請求項35】
Dyrk1aの発現、量、および/または活性を増加または回復することが可能である、医薬として使用するための化合物。
【請求項36】
Dyrk1aの発現、量、および/または活性を増加または回復することが可能である、心臓病の治療、軽減、遅延、および/または予防における使用のための化合物。
【請求項37】
Dyrk1aの発現、量、および/または活性を増加または回復することが可能である化合物の、心臓病に対する薬剤の調製のための使用。
【請求項38】
前記化合物が、Dyrk1aまたはその機能等価物をコードする核酸配列を含む、請求項35〜37のいずれか1項に記載の化合物または使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−525110(P2011−525110A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514514(P2011−514514)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050345
【国際公開番号】WO2010/005295
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510330954)
【氏名又は名称原語表記】BIOMEDBOOSTER B.V.
【住所又は居所原語表記】Oxfordlaan 70 Maastricht The Netherlands
【Fターム(参考)】