説明

患者中の対象領域の画像作成システム及び方法

【課題】患者の伝達関数、或いは薬剤の注入に対する患者の反応のモデル(又はモデルのパラメータ)の決定/生成又は調節を容易にする略改善された装置、システム及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、医療的手順にて、インジェクタを用いて、患者に薬剤流体を注入することを制御する方法であって、流体の注入から生じる患者反応カーブに対応したデータを収集する工程と、データを記載する少なくとも1つの数学的モデルを決定する工程と、医療的手順中にインジェクタを制御して、患者への流体の注入を制御し、一部は少なくとも数学的モデルに基づいた患者反応を生成する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本願は、2004年11月16日に出願された米国仮特許出願第60/628,201号の利益を要求し、その内容は引用することを持って本願への記載加入とする。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般に、患者内での薬剤伝搬のモデリングに関し、特に画像手順に用いられる患者内での造影剤伝搬のモデリングに関する。
【0003】
ここで示す参考文献により、本発明又は本発明の背景が容易に理解される。しかし、ここでの参考文献を含めることは、参考文献が本発明に対して、先行技術として有用であることを意図したものではなく、容認したものでもない。
【0004】
X線手順(例えば血管造影法、静脈造影法及び尿路造影を含む)、コンピューター断層撮影(CT)、核磁気共鳴映像法(MRI)、超音波イメージング、イメージングに基づく光、及び陽電子放射断層撮影(PET)のような多くの診断上及び治療上の画像手順の為に、種々の造影剤が患者内に注入される。例えば、CTスキャナは現代では不可欠のイメージング診断ツールになった。CTスキャナにより、解剖学的構造の正確な測定ができ、及びいくつかの実例では2、3及び4次元で生理学のプロセスの正確な測定ができる。
軟組織、血管及び他の構造のイメージングはCTスキャナでは容易に達成されない。なぜならこれらの構造は、区別される(differentially)適切な程度までX線を減衰しないからである。これらの制限を克服すべく、放射線吸収性又は放射線不透過性の薬剤、即ち造影剤が、一般に末梢静脈の循環系に注入される。
CTイメージングに使用される造影剤は、一般に水溶性の塩であり、ベンゼン構造内に3又はそれより多くのヨウ素原子を結合している。ヨウ素は、医療イメージング手順で使用されるエネルギー範囲のX線を減衰する。コンピュータ制御されたポンプ、即ちインジェクタは、走査される前に、患者の静脈系の中へ一般に0.5から6ml/s(300psiまで高められた圧力)の範囲の流速で正確な量の造影剤を注入する。
CT手順で一般に使用されるフロントローディングシリンジインジェクタの例は、例えば米国特許第5,300,031号、5,383,858号及び6,652,489号に示されており、その開示は引用することによって本願への記載加入とする。
【0005】
マルチデテクタCTスキャナ(MDCT)によって、臨床医はこれまでにない、患者の解剖学的及び生理学的な診断の走査を行なうことができる。
しかし、そのような新技術でさえ、日々の実施に適用することについて、挑戦すべき新たな問題が生じる。カバーされるボリュームと解像度についてブレークスルーがあったが、次世代のCTスキャナですら、最高の画像及び診断を達成するのに、依然としてヨードが加えられた造影剤を投与することを必要としている。
更に、最適な造影剤濃度に合致する走査タイミングは、MDCTの場合には重要性が増す。
【0006】
注入システムには、薬が生理機能と作用して制御スキームに影響することについての知識又は予想は備えていないから、その意味に於いて、造影剤の配送は一般に開ループである。注入システムは、所定速度で、プログラムされた正確な量の造影剤を配送する。
初期の薬物動態が診断の走査の質に影響を及ぼさないように、走査に相当な時間をかける場合、この方法論は良好に作用する。
走査の対象が例えば血流評価、即ち、柔組織又は癌の疑いのある組織への薬剤の摂取であるときは、この方法論はさらに良好に働く。走査技術の進歩により、非常に短い期間(秒)で画像を得ることができる。
この傾向は、解剖学的構造(心臓、その冠状動脈の血管、及び心臓に繋がり、心臓からの大動脈)の容積表現を提供する要望の増加と結び付いて、造影剤の初期の薬物動態及び薬力学が考慮されることを必要とする。
大動脈内の造影剤の存在によって生成される減衰カーブは、容積表現及び正確な診断を容易にするために、一定(平坦)で患者の複数領域に亘って十分に同様であること、そして対象とする領域内の造影剤が最適濃度のときに一致するようにタイミングが合わされた画像走査であることが理想的である。
【0007】
イメージング及び他の手順中に、別々の患者へは、必要とされる投与が違うことが認識されてきた。
例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,840,026号は、注入前又は注入時に生成された患者の固有のデータを用いて、患者への注入を患者に合わせた器具及び方法を開示し、その内容は引用することを持って本願への記載加入とする。
患者の違いにより、医療イメージング手順の投与要求が異なることが認識されてきたが、従来の医療イメージング手順は、医療イメージング手順時に造影剤注入に予め設定された服用量か標準配送プロトコルを使用し続けている。
MDCTスキャナを含む最近、入手可能なCTスキャナの速い走査速度を考えると、単相注入は、そのような速いスキャナが使用される業界領域にて、二相注入よりも優性である。
配送に固定プロトコル(単相、二相、又は多相であっても)を使用することは、手順を単純化するが、同じプロトコルの下で、異なる患者に同じ量の造影剤を供給することは、画像の明暗及び質が非常に異なる結果となる。更に、最新のMDCTスキャナの導入で、臨床実践及びCT文献での未決問題は、単一のスライス及び螺旋形のスキャナに使用される標準的な造影剤プロトコルが、MDCT機械を使用する手順に良好にコード変換(translate)するかどうかである。Cademartiri、F.及びLuccichenti(G)他(2004)、「16列多重スライス・コンピュータ断層撮影:基本概念、プロトコル及び改善された臨床応用」SeminUltrasound CT MR 25(1):2-16頁参照。
【0008】
動脈増強(enhancement)を改善し予測するために、少数の研究が、CT血管造影法(CTA)時の注入プロセスの定量分析を試みた。
例えば、Baeと同僚は、造影剤の反応の薬物動態(PK)及び動態モデルを開発し、最も均一な動脈の増強を引き起こす駆動機能を見つける目的での連立微分方程式システムを解いた。K. T.Bae、J.P.Heiken及びJ.A.Brink、「CTに於ける大動脈・肝臓の造影剤増強。パートI.コンピューターモデルを用いた予測。」放射線学(207 vol.)、647-55頁、1998年; K. T.Bae「CT及びMR血管造影法に於ける明暗のピークの増強:何時何故生じるのか。豚のモデル中の薬物動態の研究。」放射線学(227 vol.)、809-16頁、2003年、K.T.Bae他「CT血管造影法の均一に延長された血管増強のための多面的な注入方法:薬物動態の分析及び豚の実験の方法。」放射線学(216 vol.)、872-880頁、2000年、米国特許第5,583,902号、第5,687,208号、第6,055,985号、第6,470,889号及び第6,635,030号、これらの開示は引用することを持って本願への記載加入とする。
Baeらによって述べられた、単純化された仕切りモデルの1セットの微分方程式の逆解法は、造影剤の流速を指数関数的に減少させることにより、CTイメージング手順で最適な/一定の増強をもたらすことを示す。
【0009】
均一画像の増強を引き出すBaeのPKアプローチは、中心血液量、拡散速度、心臓出力のような臨床医にとって容易に用いることのできない多くの生理学的パラメータに依存している。患者の年齢、体重、身長に基づく値に近づける試みにも関わらず、心臓出力の明確な測定が無いことは、Baeのアプローチに実質的な不利な点である。更に、コントローラの枠組みにて、PKモデルを実行することを考慮していない。PKモデルの逆解法により演算される注入プロフィールは、大がかりな修正無しでは、CT電動インジェクタによって容易には実現されない。更に、BaeのPKモデルは、パルス流れ、血管の進展性、及び局所的な血液/造影剤パラメータ(即ち、粘性)の効果を考慮していない。
【0010】
Fleischmannと同僚は、心臓血管生理学及び造影剤動態を“ブラックボックス”として取り扱い、システムに造影剤のショートボーラスを課すことにより、そのインパルス反応を決定する(ユニットインパルスに近づける)。この方法に於いて、インパルス反応にフーリエ変換を実行し、この伝達関数評価を操作して最適な注入軌跡を見出す。D.Fleischmann及びK.Hittmairによる“分散型フーリエ変換を用いた動脈強化の数学的分析及びCT血管造影用のボーラス幾何学の最適化”を参照し、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。
【0011】
造影剤の投与は、一般に単一位相性で、100から150mlの造影剤を単一の流速(flow rate)で行い、非均一な増強カーブとなる。例えば、上記のD.Fleischmann及びK.Hittmair、及びK.T.Baeによる“CT及びMR血管造影に於けるピーク造影剤増強:何時生じ、何故生じるのか。豚モデルに於ける薬物動態研究”放射線医学 227巻、809−816頁、2003年度を参照し、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。
Fleischmann及びHittmairは、大動脈の画像を最適にする目的から、造影剤投与を個々の患者に合わせた二相注入で試みるスキームを提案する。CT造影剤の提供を制御することの根本的な難しさは、高浸透圧薬剤は中央血管区画から素早く拡散することである。更に、造影剤は造影剤を含まない血液と混合し、且つ希釈される。造影剤の混合と希釈は、図1に例示されるように、先が尖り、歪められたカーブによって反映される。
【0012】
Fleischmannは、診断の走査に先立つ、造影剤(4ml/sにて16mlの造影剤)の小規模のボーラス注入、テスト注入を禁止する。動的な増強走査は、対象である血管を横切って成される。処理されて生じた走査データは、患者/造影剤システムのインパルス反応として解釈される。Fleischmannは、テスト注入のフーリエ変換でテスト走査のフーリエ変換を除することにより、患者の伝達関数のフーリエ変換を引き出す。
システムは線形で時間的に不変(LTI)のシステムであり、且つ所望の出力時間領域信号が既知であると仮定すれば(所定の増強レベルでの診断の水平走査)、Fleischmannは、所望の出力の周波数領域表現を患者の伝達関数の周波数領域表現で割ることにより、入力時間信号を引き出す。
【0013】
Fleischmannのアプローチは、それが既知のテスト注入に基づく患者の発現を引き出すという事実において有望かもしれない。Fleischmann他の方法は、注入システムの制限(例えば、流速の制限)の結果として、実際には実現可能でない入力信号を計算するから、計算された連続時間信号を小数点以下を切り捨て(truncate)、概算しなければならない。その工程で開始された不正確のために、計算され理想化された入力軌道は最適ではない。
更に、線形であるとの仮定が、全ての患者及び病態生理学に当てはまるかどうかは不明である。最後に、Fleischmannの方法によって生成された増強カーブが、1回の二相注入によって生成されたものよりも、幾分か均一であるかどうかは不明である。
【0014】
造影剤以外の調合薬のためにも、様々なモデルが開発されてきた。例えば、Fisher及びTeoの“動態性血糖の数学モデルに起因する最適なインシュリン注入”、IEEE Trans Biomed Eng,36(4)巻、479−486頁、1989年は、最適なインシュリン注入パラメータを生成する目的で、モデル化されたグルコース及びインシュリンの動態性を開示し、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。
それらは、二次の性能基準を適用し、且つ代数のRicatti方程式を解くことより、古典的な最適化問題としてその問題を扱う。
それらは、インパルス制御が、インスリン注入の持続的な注入、準最適な制御及び無規則な注入と比較して、優れたアプローチであることを発見した。
【0015】
Jacobsの“薬物動態のモデルに駆動される薬剤配送へ適用される最適な線形モデルに基づいた制御用アルゴリズム”、IEEE Trans Biomed Eng,37(1)巻、107−109頁、1990年は、実際の薬剤処理と平行に薬物動態のモデルを置く、麻酔薬の規則用の制御アルゴリズムを示し、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。臨床医は目標血漿濃度を決定する。
【0016】
Wada及びWardの“混合型:コンピュータ制御された注入ポンプのための新しい薬物動態のモデル”IEEE Trans Biomed Eng,41(2)巻、134−142頁、1994年は、Baeによって得られたアプローチに似ている3つの部門別の薬物動態のモデルを引き出し、麻酔薬の血漿濃度(アップロード疎外)(the upload alienating)を規制しようとして、ハイブリッド混合型制御計画でこれを使用し、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。
彼らは、血液流れによって造影剤の再循環の影響を同様にモデル化することを試みており、彼らはシミュレーションに輸送遅れを挿入することによりモデル化した。それらは、5%未満の予測誤差を備えたシミュレーションを生成することができた。
【0017】
Wada及びWardの“麻酔中の多くの薬物効果の開ループコントロール”IEEE Trans Biomed Eng,42(7)巻、666−677頁、1995年は、また麻酔薬の多くの影響を制御する薬物動態(PK)の混合型モデルを適用し、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。それらの制御スキームは、許容可能な副作用レベル(血漿濃度として表現された)を設定することを麻酔専門医に要求する。
【0018】
Neatpisarnvanit及びBostonの“血漿グルコースからの血漿インシュリンの評価”IEEE Trans Biomed Eng,49(11)巻、1253−1259頁、2002年は、グルコースとインシュリンの血漿濃度を予測するために帰納的な最小二乗パラメータ評価アプローチを適用し、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。
彼らのアプローチは、7人の患者(静脈内のブドウ糖負荷試験によって集められた実験データ)のうちの6人のグルコースとインシュリンの血漿レベルと一致した予測となり、順調に一致した。
Gentilini他の“ヒトに無痛の閉ループ手術中投与についての新たな実例”IEEE Tran Biomed Eng,49(4)巻、289−299頁、2002年は、コンピュータで制御されたポンプを用いて、麻酔剤アルフェンタニルの血漿濃度を制御するモデル化した予測制御(MPC)アプローチを提案し、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。薬物動態モデルは、ヒト内の麻酔薬の分布を記載する3つに仕切られたモデルであった。
コントローラは、平均動脈圧及び平行に駆動するPKモデルの測定に基づく薬剤の血漿濃度を評価する観察者に頼った。
Gentilini他は、過剰服用を防ぐために最大濃度に制約を設けた。更に、彼らは、平均動脈圧測定での外乱を取り除き、またコントローラが患者の状態(即ち、低血圧患者対高血圧患者)に基づいてより速く或いはより遅く作動することを可能にした。
【発明の概要】
【0019】
発明の要約
本発明は、患者の伝達関数、或いは薬剤の注入に対する患者の反応のモデル(又はモデルのパラメータ)の決定/生成又は調節を容易にする略改善された装置、システム及び方法を提供する。例えば、患者の伝達関数又はモデルは、手順の開始前に、テスト注入から及び/又は手順中のフィードバックから既知又は測定された情報に基づいて、薬剤の配送を改善し、又は最適化する(例えば、対象となる1又は2以上の領域の造影剤濃度について)。
【0020】
1つの態様では、本発明は、インジェクタシステムを用いて、患者に造影増強流体を配送する方法を提供し、以下の工程を含む:患者に特有のデータに基づいた患者の少なくとも1つの患者伝達関数を決定する工程であって、該少なくとも1つの患者伝達関数は所定の入力について時間増強出力を提供する工程;所望の時間増強出力を決定する工程;注入手順入力を決定するために少なくとも1つの患者伝達関数を使用する工程;及び決定された注入手順入力に基づいてインジェクタシステムの少なくとも一部を制御する工程を含む。注入手順入力は、インジェクタシステムの少なくとも1つの動作限定又は制約を考慮して決定される。
【0021】
少なくとも1つの患者伝達関数は、例えば、患者の生理学のパラメータと関係するパラメータを含むシステム識別モデルを使用して、決定することができる。システム識別モデルは離散化可能であるのが好ましい。
【0022】
方法は、更に以下の工程を含み得る。患者の少なくとも1つの生理学のパラメータの評価を使用して、最初の患者伝達関数を開発する工程;注入を実行する工程;及び注入の少なくとも1回の増強出力に基づいた患者の伝達関数を改訂する工程。
少なくとも1つの患者の生理学のパラメータは、少なくとも1回の増強出力から測定することができる。その注入は、画像診断手順に先だって実行されるテスト注入、又はイメージング手順中に行なわれる注入であり得る。
【0023】
テスト注入に起因する時間増強出力は、少なくとも2つの異なる対象領域について測定することができる。時間増強出力間の少なくとも1つの違いは例えば、患者の生理学上の少なくとも1つのパラメータをある程度提供することができる。患者の生理学上の少なくとも1つのパラメータは、心肺のシステムのパラメータである。患者の生理学上の少なくとも1つのパラメータは、心拍出量、局所の血液量、速度伝達期間即ち配送遅れである。一実施例では、第1の時間増強出力は、上行大動脈又は下行大動脈の中で測定され、第2の時間増強出力は肺動脈の中で測定される。
【0024】
少なくとも1つの患者の伝達関数も以下の工程によって決定することができる:
流体の注入に起因する時間反応カーブに対応したデータを集める工程;データを記述する少なくとも1つの数学モデルを決定する工程。
【0025】
一実施例中に於いて、数学モデルは、データの連続的又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては、決定されない。モデルはパラメ−ターのモデルになりえる。例えば、モデルは移動平均あるいは自己回帰型の移動平均である。数学モデルは線形性及び時間不変性であると仮定することができる。
【0026】
モデルは更に、スペクトル評価技術によって決定される非パラメータモデルであり得る。
例えば、スペクトル評価技術は、Welchの方法、Bartlettの方法、複合信号の分類法(MUSIC)、或いはピリオドグラム方法であり得る。
データはイメージング注入に先立って、少なくとも1回のテスト注入中に集めることができる。
【0027】
本発明の少なくとも1つの患者の伝達関数は、イメージング注入中に集められたデータで更新することができる。
【0028】
上記の如く、少なくとも1つの患者の伝達関数は、少なくとも1回の注入に基づいて少なくとも一部を決定することができる。少なくとも1回の注入は画像診断手順に先立って実行されるテスト注入であり得る。一実施例では、テスト注入は、造影剤の注入、その後の非造影剤の注入を含む。非造影剤は、該非造影剤の注入前の、造影剤の流速と略同じ流速で注入され得る。非造影剤は生理食塩水であり得る。
【0029】
1回以上のテスト注入が実行される。例えば、1回目のテスト注入は、造影剤のみの注入であり、2回目のテスト注入は、造影剤の注入に続く非造影剤の注入を含むことができる。
【0030】
本発明の注入手順の入力は、分析解法又は数的制約条件付き最適化技術(numerical constrained optimization technique)を使用して決定することができる。一実施例では、数的制約条件付き最適化技術は、重み付け最小二乗法最適化である。
【0031】
例えば、注入手順の入力は1又は2以上の考察に関して最適化することができる。
例えば、注入手順の入力は、患者に配送される造影増強流体内の造影増強薬剤の量を最小にするように最適化される。
【0032】
本発明に関して使用されるのにふさわしい造影増強薬剤の例は、ヨウ素、キセノンとガドリニウムを含むが、これらに限定されない。例えば、造影増強流体は、CT造影増強流体、MRI造影増強流体、超音波増強イメージング流体、又は放射性造影増強流体であり得る。
【0033】
本発明の一実施例では、少なくとも2つの患者伝達関数が決定され、注入手順入力は患者伝達関数のうちの1つに基づいて決定される。
例えば、第1の患者伝達関数は、患者の生理学のパラメータと関係するパラメータを含むシステム識別モデルを使用して、決定することができ、第2の患者伝達関数は、注入に起因する時間増強カーブに対応するデータを集めることにより決定された数学的モデルを使用して決定することができ、数学的モデルはデータを記述する。
例えば、決定はどの患者伝達関数が、与えられた入力と生じる出力の間の最良の相関性を提供するかに関して成される。
【0034】
別の態様では、本発明は、イメージング手順からの患者の生理学上の少なくとも1つのパラメータを決定する方法を提供し、以下の工程を含む:少なくとも2つの異なる対象領域の測定時間増強出力を測定し、時間増強出力間の少なくとも1つの違いを決定して、少なくとも1つの患者の生理学のパラメータを測定する工程。
例えば、少なくとも1つの患者の生理学のパラメータは心肺システムのパラメータであり得る。少なくとも1つの患者の生理学のパラメータは、心拍出量、局所的な血液量、速度伝達期間即ち配送遅れである。一実施例では、第1の時間増強出力は、上行大動脈または下行大動脈の中で測定され、第2の時間増強出力は肺動脈の中で測定される。
【0035】
更なる態様では、本発明は、患者へ流体を配送するインジェクタシステムを提供し、インジェクタ及び該インジェクタに通信可能に接続したコントローラを具える。コントローラは、患者に特有のデータに基づいて患者について決定された少なくとも1つの患者伝達関数を含む(例えば、コントローラに作動可能に接続したメモリに格納された)。
少なくとも1つの患者伝達関数は、所定の入力について、時間増強出力を提供する。
コントローラは、少なくとも1つの患者伝達関数を使用して、所望の時間増強出力について注入手順入力を決定するプロセッサ(例えばデジタルマイクロプロセッサ)を含む。
【0036】
注入手順入力は、インジェクタの少なくとも1つの物理的な限界又は制約を考慮して決定され得る。注入手順入力は、例えば、分析解法又は数的制約条件付き最適化技術を使用して決定することができる。例えば、数的制約条件付き最適化技術は、重み付け最小二乗法最適化である。例えば、注入手順の入力は、患者に配送される造影増強流体内の造影増強薬剤の量を最小にするように最適化される。
【0037】
例えば、造影増強薬剤は、ヨウ素、キセノンとガドリニウムであり得る。例えば、造影増強流体は、CT造影増強流体、MRI造影増強流体、超音波増強イメージング流体、又は放射性造影増強流体であり得る。
【0038】
他の態様に於いて、本発明は、患者の対象領域の画像を作成するイメージ生成器、造影剤を注入するのに適したインジェクタ、インジェクタと通信可能でインジェクタを制御するコントローラを含む画像システムを提供する。コントローラは、患者に特有のデータに基づき患者用に決定された少なくとも1つの患者伝達関数を含む。少なくとも1つの患者伝達関数は、所定の入力のために時間増強出力を提供する。コントローラはまた、上記の如く、少なくとも1つの患者伝達関数を使用して、所望の時間増強出力について注入手順入力を決定するプロセッサを含む。
【0039】
本発明の幾つかの実施例に於いて、造影剤の短時間の注入中に得られた患者の反応/走査データのスペクトル解析及びパラメータ評価は、造影剤投与の閉ループを制御することができる制御パラダイムの開発に使用される。
【0040】
1つの態様では、本発明は、以下の工程を含む患者の薬剤の伝搬をモデル化する方法を提供する:流体注入に起因する時間反応カーブに対応するデータを収集する工程;データを記述する少なくとも1つの数学モデルを決定する工程。例えば、数学モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないモデルであり得る。
【0041】
モデルは、移動平均モデル又は自己回帰移動平均モデルのようなパラメトリックモデルでありえる。モデルはまた、測定データに適したパラメータを含むパラメトリックモデルでありえる。例えば、数学モデル中の線形性及び時間不変性を仮定することができる。
モデルはまた、スペクトルの評価技術によって決定された非パラメトリックモデルであり得る。適切なスペクトルの評価技術は、Welchの方法、Bartlettの方法、複合信号の分類法(MUSIC)、或いはピリオドグラム方法であり得るが、これらに限定されない。
【0042】
注入された流体は、例えば、イメージング手順時に使用される造影剤でありえる。また、収集されたデータは、造影剤の注入に起因する時間増強カーブに相当する場合がある。
【0043】
時間反応カーブ(time response)又は時間増強カーブについて収集されたデータは、イメージング注入に先立って少なくとも1つのテスト注入の間に収集されることができる。モデルはまた、イメージング注入時(又は他の手順時)に収集されたデータで、決定され及び/又は更新される。一実施例では、テスト注入は、造影剤の注入を含み、非造影流体の注入が後続する。
非造影流体は、該非造影流体の注入前の、造影剤の流速と略同じ流速で注入され得る。非造影剤は例えば、生理食塩水であり得る。1回以上のテスト注入が実行され得る。
そのような一実施例では、あるテスト注入では、造影剤のみの注入を含み、別のテスト注入では、造影剤の注入と、それに続いて非造影流体の注入を含む。
【0044】
別の態様では、医療的手順の中でインジェクタを使用して、患者への薬剤の注入を制御する方法を提供し、以下の工程を含む:液体注入に起因する患者の反応曲線に対応するデータを収集する工程:データを記述する少なくとも1つの数学モデルを決定する工程:医療的手順中にインジェクタを制御して、患者への流体の注入を制御し、少なくとも一部が数学的モデルに基づいて患者反応を生成する工程。例えば、数学的モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないモデルであり得る。
【0045】
例えば、医療的手順は、イメージングスキャナを使用する医療的イメージング手順であり、収集されたデータは造影剤の注入に起因する時間増強カーブに相当し得る。インジェクタは患者への造影剤の注入を制御するように制御されて、少なくとも一部が数学的モデルに基づいて、対象領域のイメージを生成することができる。
【0046】
インジェクタはまた、イメージング手順時に、少なくとも一部が患者反応に関する情報に基づいて、制御され得る。更に、インジェクタは、少なくとも1つの測定された患者の生理学的な変数についての情報に基づいて、少なくとも一部が制御されることができる。測定された生理学的変数は、数学モデルの出力を変更するために使用されることができる。
【0047】
一実施例では、インジェクタを制御する工程は、1番目に造影剤の注入を始めて、2番目に数学モデルに基づいて少なくとも一部が決定された対象領域の画像スキャンを開始する工程を含んでいる。2番目は、数学モデルによって決定されるような所定の増強レベルに達する時間を予測することに基づいて決定される。
【0048】
他の態様に於いて、本発明はインジェクタ、及び該インジェクタに通信可能に繋がってインジェクタを制御するインジェクタコントローラを有する注入システムを提供する。インジェクタコントローラは、上記の如く、少なくとも1つの数学的モデルに基づいて、流体の注入を制御する。この点に於いて、数学モデルは造影剤の注入に起因する時間増強カーブに対応するデータを収集することにより決定することができる。
例えば、数学モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないモデルであり得る。例えば、コントローラは、少なくとも1つの処理ユニット及び少なくとも1つのメモリを有するコンピュータを有する。メモリは、その中に数学的モデルを決定するコンピュータプログラムを格納している。
【0049】
更なる態様では、本発明は、イメージングスキャナを使用する医療的イメージング手順に於いて、インジェクタを用いて患者への造影剤の注入を制御する方法を提供し、以下の造影剤の注入に起因する時間増強反応を予測するために少なくとも1つの数学モデルを決定する工程:数学モデルへの抑制された入力解の決定により、患者の所定時間の増強反応に接近する注入プロトコルを決定する工程:及び注入プロトコルを使用して、医療的イメージング手順時に、インジェクタを制御して、患者への造影剤の注入を制御して、対象領域のイメージを生成する工程を含む。
【0050】
方法は更に、イメージング手順中に時間増強反応に関するフィードバックの結果、注入プロトコルを変更する工程を含み得る。方法は更に、イメージング手順時に、患者の少なくとも1つの生理学的なパラメータに関するデータの結果、注入プロトコルを変更する工程を含み得る。
【0051】
一実施例に於いて、患者の所定時間の増強反応に接近する注入プロトコルを決定する工程は、数値解析器又は数値最適化装置を用いて達成される。例えば、数学モデルの抑制された入力解は、インジェクタの少なくとも1つの作動上の制限によって抑制され得る。
数学モデルの抑制された入力解は更に、或いは代わりに、患者の安全性又は心地よさに関する、少なくとも1つの作動上の制限によって抑制することができる。
【0052】
例えば、1番目に造影剤の注入を始め、2番目に数学モデルに基づいて少なくとも一部が決定された対象領域の画像スキャンを開始することができる。例えば、2番目は、数学モデルによって決定されるような所定の増強レベルに達する時間を予測することに基づいて決定される。
【0053】
少なくとも1つの数学モデルは、患者に特有のデータに基づいた患者の伝達関数であり得る。患者の伝達関数は、所定の入力に時間増強出力を提供する。
例えば、第1の患者伝達関数は、患者の生理学上のパラメータと関係したパラメータを含むシステム識別モデルを用いるか、又は患者の注入に起因する時間増強カーブに対応するデータを集めることにより決定された数学的な識別モデルを用いて決定され、数学的な識別モデルはデータを記述する。
別の態様では、本発明は医療手順を有効にするシステムを提供し、該システムは、患者の反応を検知する感知システム;薬剤を注入するのに適したインジェクタ;インジェクタに通信可能に繋がってインジェクタを制御するコントローラを含む。
インジェクタコントローラは、少なくとも1つの数学モデルに基づいて流体の注入を制御する。数学モデルは、流体の注入に起因する時間反応カーブに対応する感知システムからデータを収集することにより決定される。
例えば、数学モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないモデルであり得る。
【0054】
別の態様に於いて、本発明は、患者の対象領域の画像を生成するイメージ生成器;造影剤を注入するのに適したインジェクタ;インジェクタに通信可能に繋がってインジェクタを制御するコントローラを含むイメージングシステムを提供する:
インジェクタコントローラは、少なくとも1つの数学モデルに基づいて流体の注入を制御する。数学モデルは、流体の注入に起因する時間反応カーブに対応する感知システムからデータを収集することにより決定される。
例えば、数学モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないモデルであり得る。
【0055】
別の態様に於いて、本発明は、医療手順に於いて、コンピュータメモリと通信可能に繋がったコントローラを有するインジェクタを用いて患者内への薬剤流体の注入を制御する方法を提供し、該方法は、流体の注入に起因する患者の反応曲線に対応するデータを収集する工程;コンピュータメモリに格納された複数の数学モデルから少なくとも1つの数学モデルを選択して、データを記述する工程;収集したデータにモデルを適応させる工程;及び医療手順時に、コントローラによってインジェクタを制御して、患者への流体の注入を制御して、数学モデルに基づいて、患者の反応の少なくとも一部を作成する工程を有する。
【0056】
更なる態様に於いて、本発明は対象領域の画像を作成するためにシステムを提供し、該システムは対象領域に亘って患者の特性を測定するイメージング装置;患者に薬剤を注入するインジェクタ;イメージング装置によって測定される少なくとも1つの標準(或いは参照)領域;及び標準領域の測定に基づいて患者の対象領域に亘って特性の測定を調節するか修正する計算アルゴリズムを具える。適切な標準領域は患者の外部である場合がある。
適切な標準領域はまた、患者の領域であり得る。
【0057】
更なる態様に於いて、本発明は患者の対象領域の画像を生成する方法であって、イメージング装置を用いて対象領域に亘って患者の特性を測定する工程;患者に薬剤を注入する工程;イメージング装置にて少なくとも1つの標準領域を測定する工程;及び標準領域の測定に基づいて患者の対象領域に亘って特性の測定を調節するか修正する工程を有する。
【0058】
本発明の種々の実施例によって提供される利点は、以下を含むが、これらに限定されない。それらは、後の画像処理に備えた堅実な増強、或る患者にとっては、造影剤、即ち流体の引き込みが減少すること、必要なときは、十分な画像造影を得るための造影剤投与量が増加すること、管外溢出の機会の減少、作為的な画像の減少、取り直し(retake)の数の減少、全てのスライスが最適な画像造影を含んでいること、時間に亘る疾病又は治療の進行の観察するスキャン間の一貫性の増加、及び随意的に撮像時間をより速くできることである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
添付の図面に関連して、以下の詳細な記載を読めば、以下の詳細な記載から、本発明の他の態様及び利点が判るだろう。
【0060】
【図1A】図1(a)は、造影剤が増強された血管のCTスキャンについて、単一相の注入プロフィールで得られた一般的な時間増強カーブを示す。
【0061】
【図1B】図1(b)は、造影剤が増強された血管のCTスキャンについて、二相注入プロフィールで得られた一般的な時間増強カーブを示す。
【0062】
【図2A】図2(a)は、テスト注入に反応する患者の例を示す。
【0063】
【図2B】図2(b)は、、造影剤入力機能によって、上記のFleischmann及びHittmarからのデータを用いる造影剤入力機能によって分けられたスキャナ出力の離散時間型フーリエ逆重畳によって派生した時間領域の患者/造影剤システムの評価されたインパルス反応を示す。
【0064】
【図2C】図2(c)は、ヒトの下行大動脈の対象領域からの経験的なダイナミックCTデータからの患者のインパルス反応h(n)を示す。
【0065】
【図3】図3は、造影剤インジェクタを用いたCT画像の増強を改善するための、本発明のMPCコントローラアーキテクチャの一実施例を示す。
【0066】
【図4】図4は、Bae、Heiken他によって1998年に公表されたX線造影剤の減衰されたPKモデルを示す。
【0067】
【図5】図5は、方程式(2)の数値解を示し、25秒後の動態性は真の再循環現象に近似する。
【0068】
【図6】図6は、心臓血管システム及び肺毛細管ベッド拡散を通る薬剤の配送を記述する生理学の“ハイブリッドの”モデルの図を示す。
【0069】
【図7】図7は、Qcoが心拍出量を表わす図6のモデルに基づいた縮小されたオーダーのモデルを示す。
【0070】
【図8】図8は、肺動脈のレベルに於いて、軸上のダイナミックCTイメージを示し、時間増強カーブが抽出される2つの対象領域(ROI)が包囲される。
【0071】
【図9】図9は、64歳の女性に生理食塩水の押し込みとともに、及び押し込み無しで20mlの造影剤ボーラス投与の後のダイナミックCT、時間増強カーブを示し、第1のカーブは、肺動脈の増強価値を示し、第2のカーブは、上行大動脈からの増強価値を示す。
【0072】
【図10】図10は、Pronyの方法の分子と分母の係数を生成する為に用いられた信号モデルを示す。
【0073】
【図11】図11は、方程式1(fs=0.5Hz)のh(n)にて得られた64ポイントの高速フーリエ変換FFTを示す。
【0074】
【図12】図12は、入力としてh(n)を使用するスペクトル評価のWelchの方法を示す。
【0075】
【図13】図13は、オーダー評価を増加させるためにシステムのステイグリッツ-マクブライド評価(10進法に従う)に由来したhtest(n)とインパルス反応の間の平均二乗誤差のプロットを示す。
【0076】
【図14】図14は、伝達関数の種々のオーダーのために、htest(n)のステイグリッツ-マクブライド評価のプロットを示す。
【0077】
【図15A】図15Aは、腕の静脈、及び心臓に繋がる静脈の一般的な形を示す。
【0078】
【図15B】図15Bは、腕静脈解剖の幾つかの変形例を示す。
【0079】
【図16A】図16Aは、肺動脈の第1の患者の比較増強テストを示す。
【0080】
【図16B】図16Bは、上行大動脈の第1の患者の比較増強テストを示す。
【0081】
【図17A】図17Aは、肺動脈の第2の患者の比較増強テストを示す。
【0082】
【図17B】図17Bは、上行大動脈の第2の患者の比較増強テストを示す。
【0083】
【図18A】図18Aは、1人の患者について、生理食塩水のフラッシュのないテスト注入の有効な注入プロフィールを示す。
【0084】
【図18B】図18Bは、異なる患者について、生理食塩水のフラッシュのないテスト注入の有効な注入プロフィールを示す。
【0085】
【図19A】図19Aは、本発明の一般化された方法のフローチャートを例証する。
【0086】
【図19B】図19Bは、本発明を組込む方法、例えば図7のモデルの実施例のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
発明の詳細な記載
図1Aは、血管について、造影が増強された単一相のCTスキャンで得られた一般的な時間−増強カーブを示す。単位のHUはハウスフィールドユニットであり、画像内で信号濃度に変換されたX線吸収濃度の測定である。図1Aは、約45秒で増強のピークを示す。多くの画像手順に於いて、時間−増強カーブは特定レベルのあたりで一定であることが好ましい(図1Aに太い黒線で示すように)。カーブが一定、即ち平坦でないときは、最適な画像に達しない画像は、そのような画像手順にて誤診となる。走査技術の進化により、短い時間で画像を得ることができ、長時間に亘って増強が一定であることは、幾分か重要ではなくなった、しかし、造影剤の注入に対する走査の適切なタイミング及び多すぎる又は少なすぎる造影剤を避けることは、尚、重要である。
【0088】
図1Bは、血管の造影が増強された二相のCTスキャンで得られた一般的な時間−増強カーブを示す。増強されたカーブは、幾分か平坦、又は、より均一である。しかし、平坦度の量は、患者毎に変わり、このようにして尚、最適に達しない画像が生成される。
【0089】
図2Aは、テスト注入に対する一般的な患者反応を示す。図2B及び図2Cは、一般的な患者のインパルス反応を示す。図2Bは、時間領域に於ける反応であり、図2Cは上記のD.Fleischmann及びK.Hittmairが発表したように、周波数領域での反応h(n)である。
例えば、患者のインパルス反応は、周波数領域又は時間領域に於けるフーリエ逆重畳によって、テスト注入に対する患者の反応から引き出される。図2Cの注入プロットに於いて、データはスキャナで2秒毎に採取された。
【0090】
本発明の一実施例に於いて、造影を増強するモデル予測型制御(MPC)コントローラ構成が示される。図3に示す実施例に於いて、制御工程はテスト注入から生成された増強カーブを使って、例えばLTIシステムを仮定する場合には患者システムの多極/ゼロモデルのパラメータを評価し、または時間不変の仮定を弛める場合は適切な核機能(kernel function)を引き出す。また、線形性との仮定は、容易に緩めることができる。時間変動システムの類似例は、時間及び潜在的な他の独立変数によって、その値が変わる抵抗器及びキャパシタを備えた電気回路である。一般には、回路分析では、時間に関係なく1つの値に固定した、抵抗とキャパシタを考える。
【0091】
テスト注入工程で識別されたパラメータは、PK/PD(ファーモダイナミック)モデルによって用いられ、該PK/PDモデルは例えば目標終点が所定の一定の増強値となるように、全注入工程中に、コントローラを更新するのに用いられる。
図3に示すように、コントローラはまた、スキャナ(即ち、増強価値(EV))からのフィードバック信号、またはコントローラのエラーを減らすのを手助けする観察者から測定のパラメータ(即ち:心拍数(HR)、血圧(BP)、呼吸速度&深さ、患者の体重)を受け入れることができる。
インジェクタを制御するためのスキャナからのフィードバックは、例えば本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,397,098号に記載され、その内容は引用を持って本願への記載加入とする。
例えば、モデル予測型制御アルゴリズムは、スキャナから一度に収集される瞬間の増強データに基づいて、造影剤の投与の入力軌跡を調節するように実行され得る。実際の増強価値が識別工程で生成されたモデルによって予測されたもの(例えば、最小二乗法の)と異なる場合、制御アルゴリズムは、後の時間工程にて、モデルによって予測されたのに近い瞬間の増強価値をもたらそうとして、入力流速を調節することができる。
心拍数モニター(ECG)、脈波型酸素飽和度計、或いは血圧監視装置から獲得した患者の心拍数についての知識を用いて、造影剤伝搬のより忠実度の高いモデルを引き出すことができる。
【0092】
図3の一実施例では、本発明のモデルは、極−ゼロモデリング(ARMA技法)によって患者の伝達関数H(z)の評価を生成し、制約された数値の最適化を行なって、所望の出力反応を生成する入力信号(即ち、注入プロトコル)を決定する(例えば水平走査の増強-図1を参照)。或いは、極−設置アルゴリズム、所定のH(z)の評価を用いて、出力反応をより良く制御する。
【0093】
臨床試験中に集められた患者のインパルス反応h(n)を分析して、患者の伝達関数の構造を決定することができる。患者の伝達関数の根本的なスペクトル内容を分析した刊行物はないように見える。例えば、ARMAモデリング技法は、以下の形式の合理的な伝達関数用の係数を生成するために使用することができる:
【数1】

【0094】
幾つかの実施例では、本発明は、ヨードが加えられた造影剤を投与するためにパラダイムを提供し、走査されるべき個々の患者及び対象領域への造影プロトコルの調整を可能にする。
造影剤の投与側と対象領域の増強間の患者伝達関数を決定する手法(avenue)は、モデル依存性のアプローチ、及びモデルから独立したアプローチを含む。両アプローチ、即ちスキームはシステム識別の形式であり、システムは薬剤及び患者(例えば、走査設定、対象領域又は区域、及び病態生理学を含む共同因子)を含む。両方のアプローチの結果は造影剤の動態性の評価に帰着する。
例えば、システムの動態性についての知識は、信号対雑音比(SNR)を最大限にする一方、患者へのヨウ素導入/服用量(例えば、正の流速、造影剤の粘性及び付属のカテーテルの標準寸法が付与される最大の流量、及び造影剤の量を含む注入システムの所定の制約)を最小化する注入プロトコルを決定する最適化ステップで使用することができる。
先験的なモデル依存識別
【0095】
Bae他は縮小されたオーダー、即ち造影剤伝搬のハイブリッド、PKモデルを考案した。
Bae、K.T.,J.P.Heiken他(1998)“CT.PartIでの大動脈・肝臓の造影剤増強、コンピューターモデルを用いた予測」Radiology 207(3):647-55頁及びBae、K.T、H.Q.Tran他(2000)、
“CT血管造影法に於ける一様に延びた血管増強用の多面的な注入法:薬物動態的分析及び豚の実験モデル”Radiology 216(3):872-80頁の開示は、引用することを持って本願への記載加入とする。
その作品でのモデル化アプローチでは、上記Bae、Heiken他、1998年の中で開示された全身の生理学上の薬物動態モデルは大きすぎ、患者毎に計算可能な未知の部分が多く含まれていたことが判った。
従って、Baeと同僚は、生体組織の大部分を1つの区画で近似し、最初に通過する増強動態性が対象であるから、毛細血管の配送区画を除去した。その結果の縮小されたオーダーのモデルは、図4に示される。図4に於いて、Vは夫々の“区画”の流体量であり、Cは各“区画”の予測濃度であり、Qは身体全体の血液の流速である。QとVは生体組織のデータから評価される。
【0096】
このモデルについて記述する一次の連立微分方程式システムは、連続時間プロセスを仮定して公式化される。
【数2】

微分方程式システムを状態空間形式に変換すると、生じる状態マトリックス(A)(式(3)を参照)のランクはシステムのオーダー未満である。マトリックスを逆変換することを試みる場合、このランク欠乏は特異性として現われる。
パラメータ評価、極設定又は制御に用いるために(離散化の後に)、システムの伝達関数(式4を参照)を生成したい場合、この特異性は問題である。
CT測定が固有のサンプリング処理で、生じる信号の増強カーブが離散時間型処理を反映するので、システムは離散化されるに違いない。
【数3】

【数4】

【0097】
オーダーを減じたBaeモデルの他の問題は、それが高度の忠実性を備えた再循環動態性を捕らえないことである。我々がたとえ、CT血管造影法(CTA)適用について、第1の通過動態性に興味を持っていても、全身循環及び心筋を通る再循環から生じる造影剤の再循環ピークを捕らえることは有用だろう。
図5と図2C間の差から立証されるように、Baeシステムの出力と実験データを比較すると、システム時間定数と再循環動態性の差が判る。
【0098】
Baeモデルのアプローチに固有の数学的な障害を克服すべく、Wada及びWardによって公表されたものから適用されるモデルが、本発明内で開発された。
Wada、D.R及びD.S.Ward(1994)“混合型:コンピュータ制御の輸液ポンプのための新しい薬物動態のモデル”IEEE Trans Biomed Eng,41(2)巻、134−42頁を参照して、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。Wada及びWardのモデルは、患者内(図6参照)のアルフェンタニル(強力な鎮痛剤)の伝搬を記述し制御するために開発された。
Wada及びWardのモデルにより、離散時間型領域内への形質転換が可能になる。
そのアプローチモデルは、Bae他の方法論と対照的に、輸送遅れを明示することによって、薬剤動態性を遅延し(例えば、肺の血管を通る造影剤の伝搬時間)、位相ズレは更なる区画を追加することによって、導入される。図6のモデルの各区画は、区画の入出力にマスバランスを適用することにより公式化される。外因性の薬剤が、注入入力を介して、システムへ導入される。注入の多量流出は右心房区画へ加えられる。
区画についての一般マスバランス方程式は次のように与えられる:
【数5】

ここで、添字Bは血液区画を指し、Tは2つのコンパートメントの組織区画、器官モデル指す。1つの区画について、血管及び心臓室のように、式(5)は1つの式を減じる、なぜなら配送速度の項κTB及びκBTはゼロに等しいからである。項κ(即ち、配送速度項、又は係数)は、毛細血管の薄膜を通る種の拡散を記述する。用語Clは、区画からの種のクリアランスを記述する。腎臓中の糸球体のろ過によって排泄される、X線造影剤の場合には、用語Clが、腎臓をモデル化する区画に関係している。
QinとQoutは、区画内への、及びその区画からの血液の流速を記述する。及びCxは、対象となる区画内の種の濃度についての変数である。
造影剤の濃度が血管又は器官中の造影剤の増強と直線的に関係があるので、この変数は本来重要(interest)である。
【0099】
一実施例に於いて、本発明のアルゴリズムの構造は血液量を仮定し、例えば図6の区画の心拍出量は、中心の血液量及び心拍出量にBMI、性別及び年齢を関連づける参照テーブルによって近似させることができる。血管内の区画からの造影剤の拡散について記述する前記のパラメータκを評価するのは難しい。CTAイメージング適用について造影剤の伝搬の記述を試みる場合、我々は主として造影剤の“最初の通過”動態性力学に関心があり、肺システムの転移速度定数は、最も関心がある。
従って、図6に於いて、唯2つの区画要素は肺循環用の区画要素である。例えば、公表されたデータ、コンピュータ・シミュレーション及び/又は個体群の運動データに基づいて、これらのパラメータの評価を開始することができる。
アルゴリズムの意図は、モデルへの個々の実験に基づいた増強カーブをモデルに適合させることによって、肺の拡散パラメータの評価を引き出すことである。
パラメータκを適合させることは、Nelder-Meadアルゴリズムのような単信技術又はシステム識別技術(Steiglitz-McBrideアプローチのような)を使用してなされ得る。
一旦、識別段階が完了すれば、例えば、反復した数値の最適化プロセスは、入力プロトコル(例えば、注入システムの所定の制約、負の流速がない、例えば最大流速6ml/s他)を決定するのに用いられ得て、該プロトコルは、画像のSNRを最大化する一方、患者へのヨウ素導入を最小にする。
【0100】
図6の単純化モデルは、心肺以外の循環要素を系統の血液ブロックに組みあわせる。CTAの適用について、造影剤の最初の通過動態性を考慮すれば、この単純化は保証される、なぜなら走査の獲得は、造影剤の投与後の数秒間に生じるからである。
【0101】
図7は、本発明の縮小されたオーダモデルの実施例を図示している。各区画についての物質移動関係は式(5)によって記述される。図7では、Qcoは心臓の出力を表わす。
図7のモデルは、個々の患者内の造影剤の伝搬について記述するのに使用される。
患者の背丈、体重及び性別を知っているとすると、次の式によって血液量(CBV)の合計及び中心を評価することができる:
【数6】

Guytan、A.C.、“循環生理学:心拍出量及び規則”Saunders, Philadelphia 173頁ISBN:07216436004を参照。式(6)では、背丈はインチで、体重はポンドである。
更に同様の公式を使用して、心拍出量を評価することができる。しかし、それは、造影剤の少量のボーラスでシステムを“テスト”すると仮定する必要はない。全体を循環するパラメータの一定の(static)評価は、生来、検査を受けた患者の実際の流体特性を高次元に忠実に記載するものではおそらくない(例えば病態生理学のために)。
【0102】
患者毎の評価が本来的に変わり易いから、テストボーラス増強の特徴は、図7のモデル内の患者の血液量及び心拍出量をより良く評価するために使用することができる。この方法論は、パラメータ評価によって得られる未知の変数の数を減らす。
Mahnken他は、少量の造影剤のテストボーラス投与から生成された増強カーブの分析により、MDCT検査を受ける個人から、心拍出量評価を計算した。
Mahnken、A.H、D.Henzler他(2004)。“多重スライス・スパイラル・コンピュータ断層撮影を用いた心拍出量の決定:妥当性確認研究”Invest Radiol 39(8):451-8頁、及びMahnken、A.H、E.クロッツ他(2003)。“多重スライス・コンピュータ断層撮影に於けるテストボーラス注入からの心拍出量の測定。”Eur Radiol 13(11):2498-504頁を参照し、これらの開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。
Mahnken他によって得られたアプローチは、Garret他によって以前に提案された。Garret,J.S.,P.Lanzer他(1985)。“シネコンピュータ断層撮影による心拍出量の測定”Am J Cardiol 56(10):657-61頁であり、その開示は、引用することを持って、本願への記載加入とする。
表示薬が循環系に導入される場合、Stewart−Hamilton関係は流れ回路の血流量が次のように計算されると述べる:
【数7】

ここで、M1は回路に注入される表示薬(即ち、追跡薬)の総量であり、c(t)は表示薬の濃度の度合いである。X線の造影剤については、値は、患者に注入されたヨウ素の全重量、及びmgl/ml単位に於ける造影剤の濃度である。
ハンスフィールドユニット(CT減衰数)と、造影剤の血液濃度が線形関係であることが知られているから(〜25HU/(1 mgl/ml)(例えば、上記のBae, Heiken他(1998)及び上記のMahnken, Klotz他(2003))、CTスキャナからの時間減衰カーブを積分して、式(7)の分母の項にたどり着く(arrive)。
【0103】
Blomley、M.J.K.及びDawson,P.,“ボーラス動態性:理論的・実験の態様”The Brit.J.of Radiology, 70(1997), 351-359頁は、以下の関係を用いて注入側から測定側への血液量を推定する(estimate)ことができる幾何学的な主張を提案する。
【数8】

再び、Mass1即ちM1は、患者に注入されるヨウ素の質量である。PeakEnhは、濃度(任意のユニット、しかしCT研究のためにHUにある)のピーク値であり、BloodVolumeは、注入側と記録側の間の血液量である。ユニットを正確にしておくために、スケーリング因子25[HU/(mgI/ml)]でPeakEnhを除することにより、mgI/mlにHUユニットを変換しなければならない。
式(8)の計算により、図7の心肺循環中の血液量を推定することができる。式(6)及び式(8)の間の差は、体循環区画の血液の値を与える。
心肺の循環中(心臓、肺及び周辺の注入区画)中の血液量は解剖のデータに基づいて、計られるか、又は下記のように推定した。
【0104】
下行大動脈上に亘って軸方向に置かれた1つのROIから記録された時間増強カーブ、ダイナミックCTスキャンを用いるFleischmann及びHittmairのアプローチと異なり、本発明の幾つかの実施例に於いて、時間増強カーブは下行大動脈と肺動脈から生成される。2つのカーブは、肺循環及び/又は他の心肺のパラメータによって配送時間を推定するために使用することができる。
更に、造影剤の末梢血管(peripheral)の注入に関連した問題は(側面の枝静脈内への逆流及び以下に記載した及び他の問題のような)、後のパラメータ推定の計算に影響しないだろう。
【0105】
図8は、図9の時間増強カーブを生成するのに連続して走査されるレベルでの、一般的な軸のCTイメージを示す。この点に於いて、図9は、64歳の女性に、239lbの生理食塩水の押し込み及び押し込み無しで、20mlの造影剤をボーラス投与した後のダイナミックCT、時間増強カーブを示す。図9の第1のカーブは、肺動脈の増強値を示し、第2のカーブは、上行大動脈からの増強値を示す。
肺動脈の増強は、ほぼ右室中である(この点では、造影剤はRVからPAまで薄められない)。造影剤が再循環するので、図9の信号は基線に返らないが、血液流れ内の残余の造影剤に比例した量によってむしろ相殺される。再循環した造影剤は、式(8)の心拍出量及び血液推定量の過大評価に帰着する場合がある。再循環する造影剤を説明するために、テストボーラスからの造影剤増強カーブを、以下の形式のガンマ関数に適用させることができる:
【数9】

k、a及びbは、適用パラメータである。適用は最小二乗技術によって成され得る。その後、生じた関数は心肺のシステムのパラメータ評価を引き出すために使用することができる。評価すべきパラメータは、配送係数KBT、及びKTB、VRH、VLH、VLung及び配送遅れτである。これらのパラメータはベクトルθ(θ=[KBT、KTB、VRH、VLH、VLung τ])でひとまとめにすることができる。ROIにて測定された増強プロフィールはypA(n)及びyDA(n)である。yDA(n)での増強は、肺動脈(ypA(n))及びパラメータベクトル、θ -yDA(θ,ypA(n),n)の増強の関数である。
パラメータ評価の最終目標は、患者データを最適に記載するθの評価を生成することである。パラメータの評価に変数とノイズの源が多くあるので、評価エラーがガウスになると仮定することは合理的である。
従って、最尤推定法(MLE)は、費用関数を備えたパラメータ評価を引き出すために使用することができる:
【数10】

ここで、θは評価されたパラメータベクトルである。パラメータベクトルの最良の評価は、以下に定義される。
【数11】

パラメータ評価ベクトルの変数は、以下である。
【数12】

ここでFは、Vの軸に比例し、パラメータ評価の根本的な不確実性を反映する固有値を有するフィッシャー情報行列である。
【0106】
式(11)の最小化がLevenberg-Marquardtアルゴリズム、又は他の数値最適化技術によってなされ得る。その後、生じるパラメータ評価は、図7のモデル中の予測的な増強を生成するのに使用される。造影剤を最小にしつつ、信号増強を最大にする(注入システムの制約を考慮しつつ)入力関数を決定すべく、数的制約条件付き最適化が成されて、図5の最適な造影剤の注入を決定する。
B.モデル独立した識別
【0107】
一般に、モデル独立したアルゴリズムは主としてデータ駆動され、上記のシステムのパラメータのモデルを要求しない。非母数のスペクトルの評価を使用するモデル独立した識別、及びパラメータのモデリングが以下に記載される。
非母数のスペクトル評価
【0108】
図10及び図11は、患者のインパルス反応関数htest(n)に、フーリエ解析(64次の高速フーリエ変換(FFT)による)及びWelchのピリオドグラムを直接に適用した結果を夫々示す。長方形のウィンドウが使用された図10のピリオドグラムは、DCに近い極があることを明らかにする。また、0.22、0.16、0.12及び0.03Hzで支配極があるように見える。図10では、実際のデータベクトルは、僅か45ポイントしかなかった。
表示された両方の信号は、零詰めされ、一方は64ポイント、他方は128ポイントの零詰めであった。128の零詰め量を備えた解の明白な改良はなかった。上記されるように、プロットに明らかな4つの“極”がある。
大きなDC要素は、0Hz近くの他の極を目立たなくしている。0.075Hzのまわりの衝突が極かどうかは不明である。信号の主要なピークの一時的な時間遅れは、生理学上の情報の重要な断片であり、モデルの零をモデル化する理由である。
【0109】
Welchのピリオドグラムは、より良い解を有する傾向があり、より良い変化特性を持っており、ピリオドグラムよりも、略良好なスペクトルの漏出特性を持っているので、様々なWelchピリオドグラム評価はピークが0.075Hzの辺りで存在したかどうか判断し、かつ他の極の解(“ピーク”)を改善した。3つの結果が、図11に以下のように示される。
(i) 50%のオーバーラップを備えたデータ・ベクトルのBartlettのウィンドウ(長さ=64);
(ii) 50%のオーバーラップを備えたHanningウィンドウ(長さ=64);
及び(iii)50%のオーバーラップを備えた長方形のウィンドウ(長さ=64)である。
Bartlett及びHanningのウィンドウ評価がより詳細を明らかにすることは明白である。
これは驚くべきことではない、何故ならこれらのウィンドウが信号に隠れた真の情報が含まれるスペクトルの漏出を減じるからである。
256次のFFTが図11のスペクトルに使用されて、より多くのデータポイント及びよりスムーズな評価を生成した。256次以上のFFTは、解を有意義に改善しなかった。
【0110】
図11に示されたBartlettのウィンドウ及び50%のオーバーラップを備えたWelchのピリオドグラムは、0.075Hzの近く(またその左側のより小さなピーク)の極を明らかにする。この評価に7つの識別可能な極がある。Bartlettのウィンドウは、十分な解を提供しており、より小さな極(Hanningウィンドウを持ったWelchの評価と比較して)を減衰するようには見えない。Welchの方法が、根本的なプロセスのスペクトルの構造をより明らかにすることは明白である。
パラメータモデリング
【0111】
適切でデータに基づいた合理的なモデルを評価する方法は、薬物動態と薬力学に関して作るべき適切な仮定を理解するのに役立つ。更に、ARMAモデルは、造影剤を最適に配送する制御パラダイムを構築するのに有用であり得る。図10及び図11は、ピークと谷を表示して、信号のより正確なモデルが極とゼロを含むかもしれないことを示す。
【0112】
Pronyの方法は、有限のデータ記録のARMAモデル係数の評価へのアプローチである。
M.Heyes、統計デジタル信号処理及びモデリング.ニューヨーク、ニューヨーク Wiley及びSons,1996年,154-177頁を参照し、その開示は引用することを持って本願への記載加入とする。
Pronyの方法は、モデル化したい信号は、図12に図示されたようなシステムのインパルス反応に近似していると仮定する。
J.H.McClellan“パラメータ信号のモデリング”、信号処理の高度なトピックの第1章、P
entice-Hall, Englewood Cliffs, NJ、1988年を参照し、その開示は引用することを持って本願への記載加入とする。
アルゴリズムは最良の分子と分母を求めて、反復して、式(14)の係数ap及びbqを解き(レビンソン=ダービン回帰を使用して)、係数は最小二乗法にて、式(13)の入力信号について新たに生成されたモデルの出力(インパルス反応評価)を最小化する。
【数13】

【数14】

【0113】
未知のシステムの極-ゼロモデリングへの別のアプローチは、Steiglitz-McBride法であり、反復する予備フィルタ法として知られている。式(1)の中の分母係数の最初の見当はPronyの方法を使用して作られる。
対象の信号と以前に評価されたモデルの信号と間の最小二乗法による最小化が次に実行され、反復回数だけ反復して繰り返した(エラーがゼロに接近するとともに)。
Steiglitz-McBride法について、一般的な収束特性は見付かっていないが、該技術は、10回の反復内に収束することが注目された。例えば、J.H.McClellan“パラメータの信号モデリング”、信号処理の高度なトピックの第1章、Pentice-Hall, Englewood Cliffs, NJ、1988年を参照されたい。
Steiglitz-McBride法の更なる詳細な記載は、Heyes、統計デジタル信号処理及びモデリング.ニューヨーク、ニューヨーク Wiley及びSons,1996年,154-177頁を参照し、その開示は引用することを持って本願への記載加入とする。
【0114】
図13は、元の信号と比較した種々の次数について、Steiglitz-McBride法の(10回の反復で)スペクトルモデル評価のプロットを示す。
2つの信号間の平均二乗誤差(MSE)は10次以上について25以下に落ち、式(6)の10又は11以上の項を有するARMAモデルが、根本的な動態性を十分に表わすことを示す。図14は、図2cのインパルス反応データと比較して、htest(n)のSteiglitz-McBride評価の次数を変える時系列を示す。
上記の結果から、ヨードが加えられた造影剤のボーラスの動態性は、スペクトル解析技術によって記載され、ARMA信号のモデル化方法でモデル化されることが明白である。
【0115】
再び、上記の1又は2以上の生理学的なモデル(即ち、例えばBae他によって提案されるものの何れか)、又はPHYSBE(マサチューセッツ州、ナティックのMathWorks,Incから市販されているヒトの循環系の古典的モデルであり、例えばMathWorks,Incから市販されているSIMULINKに関するインターネット上のwww.mathworks.com/products/demos/simulink/physbeに記載されている)が本発明で用いられる数学モデルである。
例えば、研究を開始する前に、1又は2以上の既知の外部患者変数(例えば、背丈、体重又は血圧)がモデルに入力されて、患者のインパルス反応の最初の評価及びそこからイメージング注入に対する反応の最初の評価を提供する。
例えば、そのような最初の評価はテスト注入を行なう前に反応カーブを描くのに用いられるパラメトリックモデルか非母数のモデルの構造を識別するか改善するために使用され得る。
【0116】
別の実施例に於いて、流路、即ち患者の血管、例えば腕静脈のセグメントは、MathWorks,Incから市販されているMATLAB(登録商標)、ペンシルバニア州、キャノンバーグのANSYS, Incから市販されているASYS、ペンシルバニア州、ピッツバーグのALGOR, Incから市販されているrALGOR、又はその他の適用可能なプログラムを用いてモデル化される。
【0117】
患者には随意的にテスト注入がなされ、テスト注入に対して測定された反応は、測定された患者のインパルス反応を引き出すのに使用される。
その後、予測された患者インパルス反応が、測定されたものとより緊密に一致するように、生理学上のモデルは調節される。
この方法論により、カスタマイズされたイメージング注入が、時間に亘って所望の増強レベルコースを生成するとの更なる確信を得る。既知の外部変数を提供することは、患者にモデルを調節することを抑制するのに役立ち、それにより、モデルの適合性を改善する。
【0118】
本発明のモデルによって決定された患者のインパルス評価中のテスト注入情報から改良することは、イメージング注入時にモデル修正が不要で、イメージング注入が注入の開始から終了まで演算されたように進むのに十分である。
また、テスト注入修正に加え、或いはイメージング注入時のテスト注入に代えて、1又は2以上の対象領域の測定された増強データ及び/又は、例えば心拍数のような他の患者データが、イメージング注入中にモデルの予測を修正するために使用されてもよい。
この修正は、注入がされている間に、イメージング注入プロトコル/パラメータの変更を決定するのに用いられて、1又は2以上の対象領域にて時間に亘って所望の増強コースをより良く達成する。
【0119】
患者の不安又は不快が増加した結果、スキャン手順の間に、例えば心拍数又は呼吸速度のような患者のパラメータが変更し得る。スキャナ又は独立したモニタから心拍数又は他の情報を取り出し、注入を計るためにそのような情報を使用することは、このように有益である。
【0120】
幾つかの医学的手順では、身体の2又は3以上の部分に異なる増強レベルを有することが望ましい。その例は、冠状動脈が造影が高く、同時に右心房が中程度の造影であること(及び左心房の可能なあらゆる範囲で)が好ましい冠状動脈の視覚化であり、1回の走査内で、右心房への濃縮された造影剤流れからの所作が無い状態で、壁運動及び動脈ルーメン径の両方を視覚化することができる。
更に、癌転移を探す肝臓の走査では、造影剤の血中レベルは、造影剤が同じレベルであるより容易に増加するのが好ましく、ハイパー血管即ちハイポである腫物は、通常の肝臓組織と比較して、コントラストレベルが増強され又は低められたものとして見ることができる。所望の傾斜は予想される癌のタイプに基づいて、選択することができる。
更に、肝臓をイメージングする幾つかの研究について、造影剤の動脈血レベルが肝臓の後入口時に下がることは望ましい。この結果は、短いイメージング注入を有することにより、今のところ達成される。
しかし、患者の違いのために、造影剤増強レベル及び造影剤到着のタイミングの両方は十分には制御されず、最適に達しない画像が生成される。
【0121】
多数の対象領域に於いて、所望の一定増強レベル又は経時変化する増強レベルに達するべく、十分な分離が間に合う場合、様々な分析手法を使用することができる。
しかし、所望の増強レベルを越えるレベルがシステムを制約すると、フーリエ変換又はここのどこかで述べられたような分析的なアプローチは、困難となる。
そのような場合、数学的分野及びコンピュータの分野で知られているようなオプティマイザーかソルバを使用することが望ましい。その例は、選択された期間に亘って、所望の増強から予想された増強の平均二乗誤差を見ることである。
この方法には、増強レベルはイメージングの時間中だけ定義される必要があるとの利益があるが、幾つかの人工的なアプローチは、増強レベルは上昇時と下降時を含む全研究時間について定義されることを要求する。
【0122】
使用されるソルバの例は、オースティンのテキサス大学のLeon Lasdon及びクレバランドステート大学のAllan Warenによって開発された非線形最適化コードGeneralized Reduced Gradient(GRG2)である。該ソルバは、マイクロソフトエクセル及びMATLABの両方で有用である。他の言語についても同様にプログラムされ、購入することができる。
【0123】
ソルバは、例えば最低流速、最大流速、流速変曲点の有限数、安定流速の有限数及び流速の最大変化量のような他の制約を備える。制約は、インジェクタの動作制限、患者の安全の制限、又は他の実際的か便利な制限に由来する場合がある。ソルバは、他の制約の範囲内で所望の造影剤レベルを満たす注入プロフィールを決定する。ソルバは、特に時間領域に於ける逆重畳及び重畳について用いるのに適している。それは、例えばテスト注入から患者のインパルス反応を見付け、該患者のインパルス反応及び所望の増強レベルを用いて最適な注入プロフィールを見付けるのに用いられる。
【0124】
ここで記載された装置、方法及びシステムは、コンピュータで容易に実現される。本発明の装置、方法及びシステムのモデルへのデータは、人間のオペレータから、病院情報システムから、スキャナ即ちイメージング装置から、インジェクタから、及び/又は1又は2以上のモニタ装置から入力される。
データは付随的に、(i)テスト注入の前に(ii)テスト注入中及び/又はテスト注入後に(iii)イメージング注入中及び/又はイメージング注入後に供給される。データは、コンピュータに自動的に供給されるか、又は人間のオペレータによって入力される。出力の例は、イメージング装置即ちスキャナ、及び造影剤インジェクタ用のタイミング及び作動パラメータを含む。
これらの出力は、自動的に夫々の装置間を通信するか、自動的に通信し人間のオペレータによって確認され修正されるか、適切な装置に入力するために、人間のオペレータによって読まれ確認され又は修正され伝送される。自動的な通信路は、多くの習慣的又は業界基準の通信プロトコルのうちの何かを含むことができる。
手動の通信路は正確さ、及び/又は記録維持の為に、注入又はスキャナのパラメータ或いはプロトコルを印刷することを含む。インジェクタ、スキャナ及び/又は他の装置間の通信は、例えば本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,397,098号に記載され、その開示は引用することを持って本願への記載加入とする。
本発明に用いられるのに適したプロトコルの例は、例えばISO11898に記載されたコントローラ・オートメーション・ネットワーク(CAN)プロトコルである。イメージング装置(スキャナ)及びインジェクタのイメージングシステムは、さらにオペレータを介して通信することができる。
この点に於いて、例えばイメージング装置はモデルを構築し、ディスプレイ装置上の注入プロフィールを出力することができる。オペレータはインジェクタ内に注入プロフィールを入力することができる。
【0125】
本発明の装置、システム及び方法のアルゴリズム及びモデルは、例えば1台又は2台以上のコンピュータで実行される1又は2以上のコンピュータプログラムで具体化することができる。
本発明で使用するに相応しいコンピュータ言語又は環境の例は、Excel、Visual Basic、Matlab、C++、及びアラバマ州、ハンツヴィルの技術保護グループによって作られたACSLを含むが、これらに限定されない。
本発明のプログラムを実行するコンピュータは、例えばイメージング装置の一部、インジェクタの一部、イメージングシステムの追加要素である。或いは、動作は、2つ又は3つ以上の装置に繋がるコンピュータに分配され得る。
【0126】
図15Aは、腕の静脈及び心臓に結びつく静脈の一般的な図を示す。図15Bは、腕静脈解剖構造におけるいくつかの変形を示す。分岐点の下方に注入された液体が心臓へ1以上の経路を取ることができることは明白である。これらの経路は、長さ及び抵抗が非常に異なり、配送時間が異なることに帰着する。
図16A及び図17Aは、4.5ml/sで20mlのテスト注入の後、4.5ml/sで少なくとも60mlの生理食塩水を注入した後の、2人の異なる患者の肺動脈(PA)増強を示す。
図16Aの患者1の増強カーブは、1つのピークを示し、これは造影剤が1つの経路を取ったか、同様の配送時間で多数の経路を取ったことを示す。図17Aの患者2の増強カーブは、造影剤が異なる配送時間の経路を取った結果として、2つの識別可能なピークを示す。これを説明するために、区画モデルの実施例は(例えば、図7に示すように)、異なる量及び異なる流速を有する2つの並列の部屋を含み、図17Aのカーブのより正確なモデリングを可能にする。図16B及び図17Bは、同じ2人の患者の上行大動脈(AA)増強カーブを示す。患者2の2つのピークは肺を通って平らにされた。
このように、もしAA測定のみが取られたならば、正確に腕の流れをモデル化することはできないだろう。
【0127】
上記の如く、ここで記載された多くの装置、システム、及び/又は方法は、テスト注入を用いて、薬剤の注入に対する患者の反応についての情報を確認する。多くのモデルについて、もしそのプロフィールが知られていれば、テスト注入にはあらゆる任意のプロフィールがありえる。幾つかの薬剤については、流速と流量は、テスト注入が静脈中の血液の流速を乱さず、又は修正しないように十分に低い。これは、薬剤が血流の流速にまで直ぐに遅くなり、血流の速度で中央の血管に運ばれることを意味する。
イメージングのX線造影については、流速及び流量は、毎秒数ミリリッターと十分に高く顕著な乱れが生じる。この場合、一旦造影剤の注入が遅くなるか止められれば、末梢血管によって造影剤の配送はその勢いを消し、その後、速度を落とす、なぜなら造影剤は単に血液に押されているだけであり、造影剤流れを減じるからである。
これを解決するために、造影剤のテスト注入は一定の流速であり、その後に例えば生理食塩水である非造影増強流体の数秒の注入が同じ速度で続き、末梢血管から造影剤を配送する。
図18A及び図18Bは、フラッシュ用流体を含むことなく生じる、2人の患者について流れ及び全有効量が減じる例を示す。プログラムされた注入流れは、本質的に生理食塩水のフラッシュで達成される、なぜなら全ての造影剤は生理食塩水のフラッシュによって末梢血管から押されるからである。
患者Aについては、生理食塩水のフラッシュのない注入については、中央の血管に達する有効量は、注入された17mlからわずか13.5mlだった。さらに、その注入は、たった3秒後に少なくなり始め、13秒まで長引いた。
患者Bについては、生理食塩水のフラッシュのない注入については、有効量は17mlから15mlであったが、実際の流速には達しなかった。
このように、最適のテストボーラスは一定の造影剤量の流速を具えたものとして定義することができ、薬剤又は有効成分の濃度は、プログラムされたように変化し(例えば正方形のパルス、ガウス形状、又は任意の波形)、それは有効成分の濃度がゼロである後の数秒の流れを含む。
【0128】
幾つかの実例では、2又は3以上のテスト注入を行うことが有用であり、1つはフラッシュ用流体が無く、1つはフラッシュ用流体がある。1回以上のテスト注入を用いれば、注入パラメータの最適なイメージングを決定するのに参考となる末端静脈の排水に関する表示が付与される。
【0129】
幾人かの患者は、注入可能な中央静脈カテーテル、即ちPICCライン(中央カテーテルの周辺に挿入され)を有し、造影剤は枝分かれした末端血管を通って流れる必要はない。これにより、モデリングがある程度簡潔になり、幾つかの例に於いて造影剤の配送が速くなる。
これらの場合では、カテーテルの動作が判っているので、カテーテルは明示的にモデル化することができる。本発明の全実施例は様々な注入側で作動するのに適しており、幾つかは、1つの側でテスト注入を受け入れ、次に異なる側からのイメージング注入を受け入れることができる。
【0130】
イメージング注入中に、造影剤分子(ミリグラム/秒)の流速は3つの変化をする(affect)ことができる。第1は、一定の濃度の造影剤の体積流速(ml/秒)を変えることができる。第2は、毎秒ミリリッターの体積流速を一定に保つ一方、造影剤中の活性成分(造影剤分子の数、mg/ml)の濃度を変更することができる。第3は、体積流速と濃度の両方を変更することができる。第1のオプションは、1つの流体を使用する簡単な注入システムによって達成可能である。
これは、入って来る造影剤流れが減少し又は増加するにつれて、既に患者の腕の中にある造影剤の流れが減少し又は増加するという上記の困難性を有する。
一定流れの造影剤の稀釈は、流速、即ち速度を変えるのに好ましい、なぜならモデル又はアルゴリズムに存在した、即ち捉えられた“駆動流れ”を維持するからである。この性能は、例えば米国特許第5,840,026号、第6,385,483号及び第5,494,036号の薬剤インジェクタで可能であり、それらの開示は、引用することによって本願への記載加入とする。
ペンシルバニア州、ピッツバーグのメドラッド社から入手可能なSTELLANT(登録商標)は、生理食塩水と造影剤の両方の高圧、高い流速を達成するのに使用することができる。第3のオプションは実際上好ましい、なぜなら必要であれば、生理食塩水と造影剤に共通の3−5ml/秒を超える例えば6−10ml/秒のような高い流速が可能となるからである。第3のオプションはまた、より適切且つ幾分か安全な流速に流速を下げることができる。しかし、造影剤流れがより低い限界、例えば3ml/秒以下の必要があるとき、この結果は稀釈によって達成することができ、末梢の静脈循環からの造影剤の変わらない流れを維持する。
【0131】
最初に速い流速を時間に亘って減じることによって、管外溢出に気付かない機会は減る。例えば、看護婦は、最初の数秒の間、注入側を触診することができる。管外溢出が最初の速い流れで生じない場合、それはより低い流量では生じないだろう。或いは、高速流れでは、あらゆる管外溢出検知器が、管外溢出からのより速い信号上昇に、敏感であり、管外溢出の発生が注入を停止させる可能性がある。
【0132】
更なる実施例は、内側即ち中央ルーメン及び外側ルーメンを有する同心のカテーテルを利用することができ、そのようなカテーテルは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/821,210号(米国出願公開第2004/025452号)の図11A乃至図11Cに開示され、米国特許出願第10/821,210号の内容は引用することを持って、本願への記載加入とする。
カテーテルの2つのルーメンは、外側のルーメンからの流れが、内側ルーメンからの流れを略囲むように配列される。イメージング造影剤が血液又は生理食塩水より粘着性の時に、イメージング造影剤は、中心ルーメンを通って配送され、生理食塩水又は非増強流体は外側ルーメン内を配送する。
これは、末梢静脈を通って中央の静脈系へ造影剤を押すために必要とされる圧力を下げるのに役立つ。ここで述べられるように、もし造影剤分子配送の速度が変わるとともに、周辺の血管を通る流量を一定にすることを維持すると望まれれば、造影剤及び非造影剤の流れは調節され得る。
この同心のカテーテルはまた、ルアアダプタを介して、PICCライン又は中央のカテーテルラインに有益に接続することができ、生理食塩水の流れの内側に造影剤が流れ、PICCライン又は中央のカテーテルライン内の圧力降下を減じる。
【0133】
テスト注入がその終了時にて、非増強剤の注入を含む場合、インジェクタはあらゆる適用可能なコネクタチューブ及び中央のカテーテルが非造影増強剤にて充填されるであろうとの事実を“思い出し”、報告しなければならない。
同様に、最初にインジェクタが患者のために準備されている場合、インジェクタと患者の間のコネクタチューブは造影剤又は生理食塩水で満たされであろうし、インジェクタはこれを報告する必要がある。
そうでなければ、造影剤の到着は不意に速くなるか遅くなり、生じるインパルス反応又はモデル適応は不正確になるだろう。これを報告しないことは、イメージング注入中に適切に反応するアルゴリズムに於いて、特に問題となるだろう。
【0134】
イメージ強度データが、可成り正確で反復可能であることは望ましい。しかし、多くのものが、ハウンズフィールドユニットで2Dイメージを生産する画像再構成アルゴリズム及び方法の絶対的な精度に影響を及ぼす場合がある。
例えば、kV(チューブ上のキロボルテージ)、FOV(視野)、テーブル高さ及び再構成アルゴリズムは、CTの精度に影響する既知の変数である。このように、一貫した再構成アルゴリズム及び変数の他のセットが使用されることは好ましい。しかし、現行のスキャナで、走査中にイメージング変数を変化させる多くの自動的な投与量減少アプローチがある。
更に、ECGゲーティングについて、再構成アルゴリズムは、スライスからスライスへ変化する場合がある。この変動性を解決するアプローチは、量的CT(QCT)から改作され得る。骨ミネラル標準又はキャリブレーションファントム(calibration phantom)は、2001年の著作物であるGE Lunar社のパンフレットSL172E 7/01で示されるように、患者とともにスキャナに設置され、この開示は引用することを持って、本願への記載加入とする。このアプローチにより、改造されたハウンズフィールドユニットを完全なハウンズフィールドユニットへ形を変える(translate)ことができる。
第2のアプローチは、キャリブレーション標準中の外部対象領域ではなく、脂肪、骨及び/又は患者の筋組織を使用することである。このアプローチは幾つかの実例のみで作動するであろう、なぜなら造影剤が組織に達する直前まで、組織は一定のハウンズフィールドユニットであるからである。例えば、イメージング目標又は対象領域が肺、心臓、或いは背骨と食道が用いられるような大きな血管及び組織である場合、それは作動するであろう。キャリブレーションに、患者の組織を使用することは、イメージング注入の中間部又は後半部よりも、テスト注入又はイメージング注入の開始時により適用可能である。
【0135】
例えば、QCT標準は、患者支持テーブル、テーブル上のクッション、スキャナ構台の部品内に構築され、又はその一部となり得る。QCT標準は、例えばアルミニウム、カーボンエポキシのような特定の仮想構造である必要はなく、患者の長椅子を構成するのにしばしば用いられる発泡体は、一貫してX線を減衰すれば、十分である。標準が常にイメージ上の特定の場所にあるこれらの場合に於いて、再構成アルゴリズムは自動的に標準値にアクセスし、患者の画像を修正することができる。QCT標準はまた、患者の画像に示されない領域にある場合がある。
【0136】
上記の如く、精度が改善されても、X線の統計吸収によりハウンズフィールドユニットの演算に尚、雑音となる。できるだけ大きな対象領域を用いて、この効果を弱めるか最小化する。高周波変化即ち雑音は、平均化される傾向がある。より精巧な領域演算アプローチが同様に適用され得る。他のアプローチは、ハウンズフィールドユニットの測定値対時間にカーブを適合させることである。一般に使用される1本のカーブはガンマ変量カーブである。多項式カーブがまた使用され得る。これは雑音を平らにし、実測間で時々拡張値の推定を提供する。図16A乃至図17Bの測定されたカーブは、血管内のROI(対象領域)の平均、1つの正の標準偏差、及び1つの負の標準偏差を示す。
【0137】
精度を改善する他のアプローチは、モデルを連続した対象領域に適合させることである。1つのCTスライスに於いて、例えば左心房、肺組織、右心房及び下行大動脈である幾つかの明確な領域をイメージすることは可能である。造影剤が種々の領域を流れる時に、モデルがハウンズフィールドユニット増強に適していれば、図16A乃至図17Bについて、上記したように、より正確な適合を達成することができる。
これは潜在的に生理学に基づいたモデルに最も有効に適用される可能性がある、なぜならモデルが一般に、容易に分離可能で、生理学上識別可能な対象領域について予測された増強にアクセスすることができるからである。
【0138】
ここに記載された本発明の実施例の幾つかは、本来的にハウンズフィールド・ユニットに於いて、患者反応の所望のイメージ造影を得ることに関する。患者反応の所望のイメージ造影の例は、血管画像イメージングに時々所望される比較的一定か水平な増強、肝臓転移癌検知に役立つ連続的に増加する血液造影剤レベル、ポータル静脈相肝臓画像イメージングを可能にする上昇し下降する造影剤レベルである。しかし、本発明は、機能イメージング又は散布写像のように、診断のために医者によって要求されるあらゆる任意の増強プロフィールを略達成することを容易にする。
【0139】
更に、増強は特定範囲の時間に亘り、生じる。分析が行なわれる方法のために、時間のゼロは任意である。一実施例に於いて、所望の増強は、ゼロから十分遠くに一度に決定され、注入はゼロ時間から十分経つ間で開始する必要がないだろう。例えば、その増強は100秒で所望の水平域に達するように、選択することができる。
次に、一旦モデルが患者について最適化されるか構築されれば、モデルはイメージング注入、例えば70秒についての開始時刻を予測する。使用に際し、走査遅れを決定するのに用いられるのは、注入の開始と所望の増強の開始の差であり、この例に於いては30秒である。
一旦、全てが準備できていれば、インジェクタは開始し(インジェクタ、スキャナ又は装置の3番目の部品から)、次に、スキャナは30秒後に、プログラムされた一連の走査の実行を開始する(再びインジェクタ、スキャナ又は装置の3番目の部品が引き金となって起きた)。
【0140】
本発明の多くの実施例が、テスト注入イメージング、またはイメージ注入イメージングに基づいてされる患者のモデルの調節、修正又は更新に関して述べられる(例えば、図19A及び図19Bを参照)。更に、一般的即ち多数の患者のモデルは、他の患者に用いる1又は2人以上の血管に基づいて、調節され、修正され又は更新される。
実施される実施例が、テスト注入、又は注入パラメータの実時間調節を用いなければ、これは特に適用可能である。
この場合、使用された患者の特定のパラメータの全ては、イメージング開始前に既知であり、例えば疾病状態、身長、体重、大凡の心拍出量(正常、乏しい、悪化)及び他の一般に認識可能なパラメータを含む。
【0141】
本発明の代表的な実施例が、本来的にCTイメージングの種々の実施例に関して述べられてきた。しかし、当業者ならば、本発明の装置、システム、方法は、例えば核磁気共鳴映像法、超音波診断、X線間接撮影、陽電子放射断層撮影及び様々な光イメージング装置を含む他の全てのイメージング装置及び方法にて、改善された最適な投薬を可能にするのに容易に用いられる(修正有り、又は修正無しで)ことが判るだろう。
CT画像イメージング以外のイメージング手順で使用される本発明のあらゆる修正も、当業者の範囲内である。
【0142】
様々な薬剤が本発明の適用から利益を得る。これらは、イオン造影剤、非イオン造影剤、二量体の造影剤及び血液プール造影剤を含むが、これらに限定されない。さらに、生理学の劇薬、特に半減期の短いものが含まれる。
2又は3以上の異なる又は同様のモデルは、同じ診断手順の間にCT、MR又は心臓のストレスイメージング用ドブタミンと組合わさるCT、MR又は超音波用イメージング造影剤のような2つ以上の異なる薬と共に使用することができる。
【0143】
イメージング及びイメージ増強レベルは、“センサ”からの出力の例である。本発明で使用するに相応しい他のセンサは、米国特許第5,840,026号及び第6,385,483号に、挙げられ、これらの開示は、引用することによって本願への記載加入とする。また、他のセンサは、薬剤の血液レベル、化学療法、又は血糖或いは溶解した凝血分子のような薬剤の結果の血中濃度のような他の生理学上のパラメータと関係がある。
本発明で使用するに相応しいセンサの他の例は、EEG(脳波図)センサ、筋肉反応センサ、又は特定の神経束活性化レベルセンサを含むが、これらに限定されない。
【0144】
幾つかのイメージング装置に於いては、目標は数秒より長い一定の造影増強レベルを維持することである。その一例は、超音波診断である。これらの造影薬剤は、通常は血液プール薬剤であり、それらが血管の中にとどまり脈管外又は細胞内のスペースへ拡散しないことを意味する。このように、導出された数学モデルは、CTで使用するために導出された数学モデルより詳細において異なるであろう、しかし、ここに開示された装置、システム及び方法は同様に有用で、適用可能である。
【0145】
モデルが患者のために開発されている場合、それは後のモデルの基礎となり得るように、記録され保存され得る。これにより、後のテスト用の時間を減じることができ、例えば、テスト注入の必要をなくす。更に、モデルの正確性を増加させることができる。更に、テスト走査測定又はイメージを記録し保存することは、将来の走査のためのモデルを形成するのに役立つ。
【0146】
モデル/患者伝達関数が識別されるとすれば(例えば、式(1)の形式を有して)、所望の出力(即ち、解剖の対象領域の造影増強術の所望レベル)を生成する入力信号を解くことを試みる。線形の時不変システムを仮定すると(また、因果関係があり安定している)、離散時間型(即ちサンプリングされた)システムの入出力関係は以下のようになる。
【数15】

ここで、演算子
【数15A】

は逆の離散型フーリエ変換である。システムが線形で、時間不変で、因果関係があると仮定しているから、右手側の総和内の項は、入出力関係が以下に書かれるように交換される。
【数16】

項H(z)は上記のように、患者/薬剤システムの前記モデルから演算され、薬剤の短い注入を用いるシステムの簡単な問診注に収集されたデータ上で作動するシステム識別技術によって演算され、又は両方のアプローチを組みあわせて演算される。ノイズが無い測定を仮定すると、式(15)は線形代数公式化へ書き直すことができる。
【数17】

ここでyはMx1長さ列ベクトルであり、xは長さN(M=Nと仮定する)の識別されたモデルのシステム応答への入力を記載する列ベクトルの値である。マトリックスHは、下三角のToeplitzマトリックスであり、以下の構成を有する。
【数18】

【0147】
所望の出力(yベクトル)が与えられたベクトルx(入力)についての式(17)及び式(18)の形式で表されるToeplitzマトリックスHを解く1つのアプローチは、コスト関数(線形最小二乗問題として知られる)を最小にするベクトルxを見出すことである。
【数19】

式(19)内のコスト関数は、その傾きがゼロに等しいとき、全体として最小になる。周知の結果は、ベクトルxが式(20)として解かれ得る。
【数20】

ここでH+はムーアペンローズ擬似逆(Moore-Penrose pseudo-inverse)である。式(20)はHの行階数が列階数を越えるとき、重複決定の場合に対する一般解である。Hの行階数及び列階数が等しければ(従って、正方行列)、式(19)の解は、以下になる。
【数21】

ここでHの逆は、多くの技術によって計算される(ピボット、特異値分解を有するガウス消去法等)。明らかに、モデルのインパルス反応の行列Hが、逆行可能でなければ(特異性により、又はノイズのせいで悪条件により)、所望の出力に達し得る信頼できる入力信号を決定することができない。これは、直観的に満足できる条件である、なぜなら式1のシステムが逆行可能でなければ、線形条件、時間不変性、因果関係は強化されないからである(または、真の工程がそれらの仮定とともに概算され得ない)。重大なノイズ及び/又はモデルの不確実さは、式(21)の数値解に大きな減衰を生じることは注目に値する。
【0148】
最小化すべき表現の形式である制約された逆重畳解(制約された最適化問題として規則化逆重畳公式化され)は(DeNicolao G.1997)は、以下の式(21)がまた用いられる。
【数22】

式(22)が閉形式の解を有さないので、反復技術によって解かなければならない。行列Hは、より低次の対角線、インパルス係数のToeplitz行列であり、システム識別法、又はテスト注入からイメージされる時間増強カーブの値を単に入力することにより、決定され得る。項yは、所望の出力を表し、uは制御である。式(22)の第2項は、ノイズ改悪及び測定の不正確さに取り組む手段を示す。行列Fは、ノイズの“忘れる”要素を示し、それはその対角線上にノイズの共分散評価を有する。例えば、式(22)は、重み付け最小二乗数値最適化及び/又は多目的最適化技術を用いて解くことができる。
【0149】
本発明が実施例及び/又は例に関連して詳細に述べられてきたが、そのような詳細な記載は例示であって、当業者ならば発明から離れることなく、変更を成すことができることが判るだろう。前記の記載によるよりも以下の請求の範囲により、発明の範囲が示される。請求の範囲に均等な意味及び範囲内にある全ての変更及び変形は、請求の範囲内に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジェクタシステムを用いて、患者に造影を増強する流体を配送する方法であって、
患者に特有のデータに基づいて、患者についての少なくとも1つの患者伝達関数を決定し、該少なくとも1つの患者伝達関数は所定の入力について時間増強出力を付与する工程と、
所望の時間増強出力を決定する工程と、
少なくとも1つの患者伝達関数を用いて、注入手順入力を決定する工程と、
決定した注入手順入力に基づいて、インジェクタシステムの少なくとも一部を制御する工程を有する方法。
【請求項2】
注入手順入力は、インジェクタシステムの少なくとも1つの動作上の制限又は制約を考慮して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの患者伝達関数は、患者の生理学的なパラメータに関するパラメータを具えたシステム識別モデルを用いて決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
システム識別モデルは、切り捨て可能である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
更に、
患者の少なくとも1つの生理学的なパラメータの評価を用いて、最初の患者伝達関数を構築する工程と、
注入を実行する工程と、
注入の少なくとも1つの時間増強出力に基づいて、患者伝達関数を修正する工程を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータは、少なくとも1つの時間増強出力から測定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
注入は、診断上のイメージング手順に先立って実行されるテスト注入である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
テスト注入から生じる時間増強出力は、少なくとも2つの対象領域について測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
時間増強出力間の差は、少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータの尺度を付与する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータは、心肺システムのパラメータである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータは、心拍出量、領域の血液量、送り時間の割合、又は配送遅れである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の時間増強出力は、上行大動脈又は下行大動脈にて測定され、第2の時間増強出力は、肺動脈にて測定される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
第1の時間増強出力は、上行大動脈又は下行大動脈にて測定され、第2の時間増強出力は、肺動脈にて測定される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータは、心拍出量、領域の血液量、送り時間の割合、又は配送遅れである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの患者伝達関数は、
流体の注入から生じる時間増強カーブに対応したデータを収集する工程と、
データを記載する少なくとも1つの数学的モデルを決定する工程とを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
数学的モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されない、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
モデルは、パラメトリックモデルである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
モデルは、移動平均又は自己回帰性移動平均である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
数学的モデルは、線形性と時間不変性を仮定する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
モデルは、スペクトル評価技術によって決定される非母数モデルである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
スペクトル評価技術は、Welchの方法、Bartlettの方法、複合信号の分類法(MUSIC)、或いはピリオドグラム方法である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
データは、少なくとも1のテスト注入中に、イメージング手順に先立って収集される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの患者伝達関数は、イメージング手順中に収集されたデータで更新される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの患者伝達関数は、イメージング手順中に収集されたデータで更新される、請求項3に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの患者伝達関数は、少なくとも一部が、少なくとも1の注入に基づいて決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの注入は、診断上のイメージング手順に先立って実行されるテスト注入である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
テスト注入は、造影剤の注入であり、非造影剤の注入が続く、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
非造影剤は、非造影剤の注入に先立つ造影剤の流速と略同じ流速で注入される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
非造影剤流体は、生理食塩水である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
1回以上のテスト注入が実行される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
1回目のテスト注入は造影剤のみの注入であり、2回目のテスト注入は造影剤の注入に続く非造影剤の注入である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
注入手順入力は、分析解法又は数的制約条件付き最適化技術(numerical constrained optimization technique)を用いて決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項33】
数的制約条件付き最適化技術は、重み付けされた最小二乗数値最適化である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
注入手順入力は、患者に配送される造影増強流体内の造影増強薬剤の量を最小にするように最適化される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
造影増強流体は、ヨウ素、キセノン、又はガドリニウムである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
造影を増強する流体は、CT造影増強流体、MRI造影増強流体、超音波増強イメージング流体、又は放射性造影増強流体である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも2つの患者伝達関数が決定されて、注入手順入力は患者伝達関数の1つに基づいて、決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
第1の患者伝達関数は、患者の生理学的パラメータに関するパラメータを含むシステム識別モデルを用いて決定され、第2の患者伝達関数は、注入から生じる時間増強カーブに対応したデータを収集することにより決定される数学的モデルを用いて決定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
どの患者伝達関数が所定の入力と生じた出力の間に最良の相関性を付与するかを決定する工程がある、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
イメージング手順から少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータを決定する方法であって、
少なくとも2つの異なる対象領域から時間増強出力を測定する工程と、時間増強出力間の少なくとも1つの差異を決定して、少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータを測定する工程を有する方法。
【請求項41】
少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータは、心肺システムのパラメータである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータは、心拍出量、領域の血液量、送り時間の割合、又は配送遅れである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
第1の時間増強出力は、上行大動脈又は下行大動脈にて測定され、第2の時間増強出力は、肺動脈にて測定される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの患者の生理学的なパラメータは、心拍出量、領域の血液量、送り時間の割合、又は配送遅れである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
患者に流体を配送するインジェクタシステムであって、
インジェクタと、該インジェクタと通信可能に繋がったコントローラを具え、該コントローラは患者に特有のデータに基づいて、患者について決定される少なくとも1つの患者伝達関数を有し、少なくとも1つの患者伝達関数は、所定の入力に時間増強出力を付与し、コントローラは少なくとも1つの患者伝達関数を用いて所望の時間増強出力についての注入手順入力を決定するプロセッサを具えるインジェクタシステム。
【請求項46】
注入手順入力は、インジェクタの制約の少なくとも1つの動作限定を考慮して決定される、請求項45に記載のインジェクタシステム。
【請求項47】
注入手順入力は、分析解法又は数的制約条件付き最適化技術を用いて決定される、請求項45に記載のインジェクタシステム。
【請求項48】
数的制約条件付き最適化技術は、重み付けされた最小二乗数値最適化である、請求項47に記載のインジェクタシステム。
【請求項49】
注入手順入力は、患者に配送される造影増強流体内の造影増強薬剤の量を最小にするように最適化される、請求項47に記載のインジェクタシステム。
【請求項50】
造影増強流体は、ヨウ素、キセノン、又はガドリニウムである、請求項45に記載のインジェクタシステム。
【請求項51】
造影を増強する流体は、CT造影増強流体、MRI造影増強流体、超音波増強イメージング流体、又は放射性造影増強流体である、請求項45に記載のインジェクタシステム。
【請求項52】
患者内の薬剤流体の伝搬をモデル化する方法であって、
流体の注入から生じる患者反応カーブに対応したデータを収集する工程と、
数学的モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないことを条件として、データを記載する少なくとも1つの数学的モデルを決定する工程を有する方法。
【請求項53】
流体は、イメージング手順に用いられる造影剤であり、収集されたデータは造影剤の注入から生じる時間増強出力に対応する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
モデルは、パラメトリックモデルである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
モデルは、移動平均又は自己回帰性移動平均である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
数学的モデルは、線形性と時間不変性を仮定する、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
モデルは、スペクトル評価技術によって決定される非母数モデルである、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
スペクトル評価技術は、Welchの方法、Bartlettの方法、複合信号の分類法(MUSIC)、或いはピリオドグラム方法である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
データはイメージング注入に先立つ、少なくとも1回のテスト注入中に収集される、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
モデルは、イメージング手順中、収集されたデータを用いて更新される、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
テスト注入は、造影剤の注入であり、非造影剤の注入が続く、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
非造影剤は、非造影剤の注入に先立つ造影剤の流速と略同じ流速で注入される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
非造影剤流体は、生理食塩水である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
1回以上のテスト注入が実行される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
1回目のテスト注入は造影剤のみの注入であり、2回目のテスト注入は造影剤の注入に続く非造影剤の注入である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
医療的手順にて、インジェクタを用いて、患者に薬剤流体を注入することを制御する方法であって、
流体の注入から生じる患者反応カーブに対応したデータを収集する工程と、
数学的モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないことを条件として、データを記載する少なくとも1つの数学的モデルを決定する工程と、
医療的手順中に、インジェクタを制御して、患者への流体の注入を制御し、数学的モデルに少なくとも一部が基づいて、患者反応を生成する工程を有する方法。
【請求項67】
医療的手順は、イメージングスキャナを用いる医療的イメージング手順であり、収集されたデータは造影剤の注入から生じた時間増強カーブに対応し、インジェクタは患者への造影剤の注入を制御するように制御されて、数学的モデルに少なくとも一部が基づいて対象領域の画像を生成する、請求項66に記載の制御方法。
【請求項68】
モデルは、パラメトリックモデルである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
モデルは、移動平均又は自己回帰性移動平均である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
数学的モデルは、線形性と時間不変性を仮定する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
モデルは、スペクトル評価技術によって決定される非母数モデルである、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
スペクトル評価技術は、Welchの方法、Bartlettの方法、複合信号の分類法(MUSIC)、或いはピリオドグラム方法である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
データはイメージング注入に先立つ、少なくとも1回のテスト注入中に収集される、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
モデルは、イメージング手順中、収集されたデータを用いて更新される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
テスト注入は、造影剤の注入であり、非造影剤の注入が続く、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
非造影剤は、非造影剤の注入に先立つ造影剤の流速と略同じ流速で注入される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
非造影剤は生理食塩水である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
1回以上のテスト注入が実行される、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
1回目のテスト注入は造影剤のみの注入であり、2回目のテスト注入は造影剤の注入に続く非造影剤の注入である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
インジェクタはまた、イメージング手順中、患者の反応に関する情報に基づいて、少なくとも一部が制御される、請求項67に記載の方法。
【請求項81】
インジェクタはまた、患者の測定された生理学的変数の少なくとも一部の情報に基づいて、少なくとも一部が制御される、請求項67に記載の方法。
【請求項82】
測定された生理学的変数は、数学的モデルの出力を変えるのに用いられる、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
インジェクタを制御する工程は、造影剤の注入を1度目に開始し、少なくとも一部が数学的モデルに基づいて決定される2度目に、対象領域の画像走査を開始する工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項84】
2度目は、数学的モデルによって決定されたように、所定の増強レベルに達する時間を予測することに基づいて決定される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
注入システムであって、
インジェクタと、
インジェクタに作動的に繋がってインジェクタを制御するインジェクタコントローラであって、少なくとも1つの数学的モデルに基づいて流体の注入を制御し、該数学的モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないことを条件として、造影剤の注入から生じる時間増強カーブに対応したデータを収集することによって決定される注入システム。
【請求項86】
コントローラは、少なくとも1つの処理ユニットと少なくとも1つのメモリを有するコンピュータを具え、メモリはその中に数学的モデルを決定するコンピュータプログラムを格納した、請求項85に記載の注入システム。
【請求項87】
イメージングスキャナを用いて、医療的イメージング手順にインジェクタを用いて患者に造影剤を注入することを制御する方法であって、
少なくとも1つの数学的モデルを決定して、造影剤の注入の結果から生じる時間増強反応を予測する工程と、
注入プロトコルを決定して、数学的モデルに対する制約された入力解を決定することにより、患者の時間増強反応を概算する工程と、
注入プロトコルを用いて、医療的イメージング手順中に、インジェクタを制御して、患者への造影剤の注入を制御して、対象領域の画像を生成する工程を有する方法。
【請求項88】
更に、イメージング手順中に、時間増強反応に関するフィードバックの結果として注入プロトコルを変更する工程を有する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
更に、イメージング手順中に、少なくとも1つの患者の生理学的パラメータに関するデータの結果として、注入プロトコルを変更する工程を有する、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
注入プロトコルを決定して、所定の時間増強反応を概算する工程は、数値的ソルバ、即ち数値的オプティマイザによって達成される、請求項87に記載の方法。
【請求項91】
数学的モデルに対して制約された入力解は、インジェクタの少なくとも1つの動作的制約によって制約される、請求項87に記載の方法。
【請求項92】
数学的モデルに対して制約された入力解は、患者の安全又は心地よさに関する少なくとも1つの動作上の制限によって制約される、請求項87に記載の方法。
【請求項93】
造影剤の注入は、一度に開始し、対象領域のイメージ走査は少なくとも一部は数学的モデルに基づいて決定される2度目に開始する、請求項87に記載の方法。
【請求項94】
2度目は、数学的モデルによって決定されたように、所定の増強レベルに達する時間を予測することに基づいて決定される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
少なくとも1つの数学的モデルは、患者に特有のデータに基づく患者伝達関数であり、少なくとも1つの患者伝達関数は所定の入力に時間増強出力を付与する、請求項87に記載の方法。
【請求項96】
患者伝達関数は、患者の生理学的なパラメータに関するパラメータを具えるシステム識別モデルを用いて決定され、又は患者の注入から生じる時間増強カーブに対応したデータを収集することによって決定される数学的識別モデルを用いて決定され、数学的識別モデルはデータを記載する、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
医療的手順を達成するシステムであって、
患者の反応を検出する感知システムと、
患者に薬剤を注入するのに適したインジェクタと、
インジェクタと作動的に繋がって、インジェクタを制御するコントローラであって、少なくとも1つの数学的モデルに基づいて造影剤の注入を制御し、
数学的モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないことを条件として、造影剤の注入から生じる時間増強カーブに対応したデータを感知システムから収集することによって決定されるシステム。
【請求項98】
イメージングシステムであって、
患者の対象領域の画像を生成するイメージ生成器と、
造影剤を注入するのに適したインジェクタと、
インジェクタと作動的に繋がって、インジェクタを制御するコントローラであって、少なくとも1つの数学的モデルに基づいて造影剤の注入を制御し、
数学的モデルは、データの連続型又は時間離散型フーリエ逆重畳によっては決定されないことを条件として、造影剤の注入から生じる時間増強カーブに対応したデータをイメージ生成器から収集することによって決定されるイメージングシステム。
【請求項99】
医療的手順に於いて、コンピュータメモリに通信可能に接続するコントローラを有するインジェクタを用いて、患者への薬剤流体の注入を制御する方法であって、
流体の注入から生じる患者の反応カーブに対応したデータを収集する工程と、
コンピュータメモリに格納された複数の数学モデルから少なくとも1つの数学モデルを選択して、データを記載する工程と、
収集されたデータにモデルを適用する工程と、
医療的手順中にコントローラを介してインジェクタを制御し、患者への流体の注入を制御して、少なくとも一部は数学的モデルに基づいて患者の反応を生成する工程を有する方法。
【請求項100】
患者の対象領域の画像を生成するシステムであって、
対象領域に亘って患者の特性を測定するイメージング装置と、
患者に薬剤を注入するインジェクタと、
イメージング装置によって測定された少なくとも1つの標準領域と、
標準領域の測定に基づいて、患者の対象領域に亘って特性の測定を訂正する演算アルゴリズムを具えるシステム。
【請求項101】
標準領域は、患者の外側にある、請求項100に記載のシステム。
【請求項102】
標準領域は、患者領域である、請求項100に記載のシステム。
【請求項103】
患者の対象領域の画像を生成する方法であって、
イメージング装置を用いて対象領域に亘って患者の特性を測定する工程と、
イメージング装置で少なくとも1つの標準領域を測定する工程と、
標準領域の測定に基づいて、患者の対象領域に亘って特性の測定を訂正する工程を有する方法。
【請求項104】
標準領域は、患者の外側にある、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
標準領域は、患者領域である、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
イメージングシステムであって、
患者の対象領域の画像を生成するイメージ生成器と、
造影剤を注入するのに適したインジェクタと、
インジェクタと作動的に繋がって、インジェクタを制御するコントローラであって、患者に特有のデータに基づいて患者について決定される少なくとも1つの患者伝達関数を具え、少なくとも1つの患者伝達関数は、所定の入力に時間増強出力を付与し、
コントローラは少なくとも1つの患者伝達関数を用いて、所望の時間増強出力について、注入手順入力を決定するプロセッサを具えるイメージングシステム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate


【公開番号】特開2011−235113(P2011−235113A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−132494(P2011−132494)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【分割の表示】特願2007−541498(P2007−541498)の分割
【原出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(500483817)メドラッド インコーポレーテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】Medrad,Inc.
【Fターム(参考)】