説明

情報処理システム

【課題】通信レスポンスの低下を防止することができる情報処理システムを提供する。
【解決手段】情報処理システム1は、車両2に搭載されたECU3及び車載通信機4と、センタ装置5とを具備している。ECU3には、ACC(アクセサリ)スイッチ7が接続されている。ECU3は、前回の共通鍵の変更から一定期間以上経過した場合に、ACCスイッチ7がONからOFFに切り換わってから所定時間が経過しているかどうかを判断し、所定時間が経過しているときは、車載通信機4のみの電源をONにし、乱数を使って新しい共通鍵を生成し、その新しい共通鍵を公開鍵暗号方式により車載通信機4を介してセンタ装置5に送付する。すると、センタ装置5は、受け取った新しい共通鍵を共通鍵データベース9に更新登録する。その後、車載通信機4とセンタ装置5との間で、新しい共通鍵を用いた共通鍵暗号方式による通信を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通鍵暗号方式により通信を行う情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の情報処理システムとしては、例えば特許文献1に記載されているように、所定の時間ごとに制御用共有秘密鍵により通信用共有秘密鍵を更新するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−236490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のように単に所定の時間ごとに共有秘密鍵(共通鍵)を更新する場合には、時間(周期)の設定の仕方によっては通信レスポンスの低下が生じる等、通信レスポンスに影響を与える可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、通信レスポンスの低下を防止することができる情報処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、共通鍵を用いた共通鍵暗号方式により通信を行う情報処理システムにおいて、車両のアクセサリまたはイグニッションがオフ状態となっているかどうかを検知するオフ状態検知手段と、オフ状態検知手段によってアクセサリまたはイグニッションがオフ状態となっていることが検知されたときに、共通鍵を更新する共通鍵更新手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の情報処理システムにおいては、アクセサリまたはイグニッションがオフ状態となっていることが検知されたときに、共通鍵を更新することにより、アクセサリまたはイグニッションをオンにした状態で共通鍵を用いて通信を行う際に、共通鍵の更新頻度を低減することができる。従って、共通鍵の更新が効率的に行えるため、通信レスポンスの低下を防止することができる。
【0008】
好ましくは、共通鍵更新手段は、共通鍵を公開鍵暗号方式により送付する手段を有する。この場合には、共通鍵暗号方式及び公開鍵暗号方式を組み合わせたハイブリッド暗号方式を利用して通信を行う情報処理システムを効果的に実現することができる。
【0009】
また、好ましくは、共通鍵更新手段による前回の共通鍵の更新から所定期間経過しているかどうかを検知する期間経過検知手段を更に備え、共通鍵更新手段は、期間経過検知手段によって前回の共通鍵の更新から所定期間経過していることが検知されると共に、オフ状態検知手段によってアクセサリまたはイグニッションがオフ状態となっていることが検知されたときに、共通鍵を更新する。この場合には、共通鍵の更新が必要以上に頻繁に行われることを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信レスポンスの低下を防止できるので、効率的な情報通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わる情報処理システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示したECUにより実行される共通鍵更新処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図3】図1に示した車両とセンタ装置との間の動作シーケンスを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係わる情報処理システムの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係わる情報処理システムの一実施形態を示す概略構成図である。同図において、本実施形態の情報処理システム1は、共通鍵暗号方式及び公開鍵暗号方式を組み合わせたハイブリッド暗号方式を利用して通信を行うシステムである。共通鍵暗号方式では、暗号化処理が軽くなるが、鍵がばれると全ての通信が盗聴可能となる。公開鍵暗号方式では、鍵がばれることは無いが、暗号化処理が重くなる(共通鍵暗号方式の数百〜数千倍の時間がかかる)。
【0014】
情報処理システム1は、車両2に搭載されたECU(Electronic Control Unit)3及び車載通信機4と、センタ装置5とを具備している。ECU3と車載通信機4とは、CAN6を介して接続されている。
【0015】
ECU3には、ACC(アクセサリ)スイッチ7が接続されている。また、ECU3には、時間を計測するタイマ(図示せず)が内蔵されている。ECU3は、ACCスイッチ7の操作信号及びタイマの計測値を入力し、共通鍵更新処理及び通信処理等を実行する。車載通信機4は、携帯電話網等の通信回線8を介してセンタ装置5と無線通信を行う。センタ装置5には、ユーザ毎の共通鍵を管理する共通鍵データベース9が設けられている。
【0016】
図2は、ECU3により実行される共通鍵更新処理手順の詳細を示すフローチャートである。なお、普段ユーザが行う通信には、処理の軽い共通鍵暗号方式が利用される。また、ACCスイッチ7はOFF状態となっており、車載通信機4の電源はOFFされているものとする。
【0017】
図2において、まずタイマの計測値に基づいて、前回の共通鍵の変更(更新)から一定期間(例えば数時間)以上経過したかどうかを判断する(手順S11)。前回の共通鍵の変更から一定期間以上経過していないときは、共通鍵の更新を実施しないものとし(手順S12)、本処理を終了する。
【0018】
前回の共通鍵の変更から一定期間以上経過したときは、ACCスイッチ7の操作信号及びタイマの計測値に基づいて、ACCスイッチ7がONからOFFに切り換わってから所定時間(例えば数十分)が経過しているかどうかを判断する(手順S13)。ACCスイッチ7がONからOFFに切り換わってから所定時間が経過しているときは、車載通信機4のみの電源をONにする(手順S14)。続いて、乱数を使って新しい共通鍵を生成する(手順S15)。そして、その新しい共通鍵を公開鍵暗号方式により車載通信機4を介してセンタ装置5に送付する(手順S16)。
【0019】
その後、センタ装置5から新しい共通鍵の更新登録成功の通知を車載通信機4を介して受信したかどうかを判断し(手順S17)、新しい共通鍵の更新登録成功の通知を受信していないときは、手順S14に戻る。新しい共通鍵の更新登録成功の通知を受信したときは、車載通信機4の電源をOFFにし(手順S18)、本処理を終了する。これにより、以後ACCスイッチ7をOFFからONに切り換えたときに、新しい共通鍵を使ってセンタ装置5と通信を行うことが可能となる。
【0020】
次に、情報処理システム1の動作を図3により説明する。図3において、車両2のECU3は、一定期間同じ共通鍵を使っている場合に、ACCスイッチ7のOFF状態が一定時間継続しているとき(処理S21)は、車載通信機4のみの電源をONにし(処理S22)、乱数を使って新しい共通鍵を生成する(処理S23)。そして、車載通信機4は、その共通鍵を公開鍵暗号方式によりセンタ装置5に送付する(処理S24)。
【0021】
すると、センタ装置5は、受け取った新しい共通鍵を今後利用可能となるように共通鍵データベース9に更新登録する(処理S25)。そして、センタ装置5は、新しい共通鍵を受信して更新登録した旨の通知をECU3に対して行う(処理S26)。すると、ECU3は、車載通信機4の電源をOFFにする(処理S27)。
【0022】
以降、ACCスイッチ7がON状態になると、車載通信機4とセンタ装置5との間で、新しい共通鍵を用いた共通鍵暗号方式による通信が行われる(処理S28)。
【0023】
なお、上記の処理では、ACCスイッチ7がONからOFFに切り換わってから所定時間が経過したときに、新しい共通鍵を生成するようにしたが、IG(イグニッション)スイッチがONからOFFに切り換わってから所定時間が経過したときに、新しい共通鍵を生成しても良い。
【0024】
以上において、ACCスイッチ7とECU3における上記図2に示す手順S13及び上記図3に示す処理S21とは、車両のアクセサリまたはイグニッションがオフ状態となっているかどうかを検知するオフ状態検知手段を構成する。ECU3における上記図2に示す手順S14〜S16及び上記図3に示す処理S22〜S25と車載通信機4とセンタ装置5と共通鍵データベース9とは、オフ状態検知手段によってアクセサリまたはイグニッションがオフ状態となっていることが検知されたときに、共通鍵を更新する共通鍵更新手段を構成する。
【0025】
また、ECU3における上記図2に示す手順S11は、共通鍵更新手段による前回の共通鍵の更新から所定期間経過しているかどうかを検知する期間経過検知手段を構成する。
【0026】
以上のように本実施形態にあっては、ACCスイッチ7がONからOFFに切り換わってから所定時間が経過したときに、新しい共通鍵を生成し、その共通鍵を公開鍵暗号方式によりセンタ装置5に送り、当該共通鍵を共通鍵データベース9に更新登録するようにしたので、公開鍵暗号方式の処理速度の遅さをユーザに感じさせないように共通鍵が効率的に更新されるようになる。これにより、通信レスポンスの低下を防止することができる。
【0027】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ACCスイッチまたはIGスイッチがONからOFFに切り換わってから所定時間が経過しているときに、共通鍵を更新するようにしたが、特にその手法には限られず、単にACCスイッチまたはIGスイッチがOFF状態となっているときに、共通鍵を更新しても良い。
【符号の説明】
【0028】
1…情報処理システム、2…車両、3…ECU(オフ状態検知手段、共通鍵更新手段、期間経過検知手段)、4…車載通信機(共通鍵更新手段)、5…センタ装置(共通鍵更新手段)、7…アクセサリスイッチ(オフ状態検知手段)、9…共通鍵データベース(共通鍵更新手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通鍵を用いた共通鍵暗号方式により通信を行う情報処理システムにおいて、
車両のアクセサリまたはイグニッションがオフ状態となっているかどうかを検知するオフ状態検知手段と、
前記オフ状態検知手段によって前記アクセサリまたは前記イグニッションがオフ状態となっていることが検知されたときに、前記共通鍵を更新する共通鍵更新手段とを備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記共通鍵更新手段は、前記共通鍵を公開鍵暗号方式により送付する手段を有することを特徴とする請求項1記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記共通鍵更新手段による前回の前記共通鍵の更新から所定期間経過しているかどうかを検知する期間経過検知手段を更に備え、
前記共通鍵更新手段は、前記期間経過検知手段によって前記前回の共通鍵の更新から所定期間経過していることが検知されると共に、前記オフ状態検知手段によって前記アクセサリまたは前記イグニッションがオフ状態となっていることが検知されたときに、前記共通鍵を更新することを特徴とする請求項1または2記載の情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−147189(P2012−147189A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3220(P2011−3220)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】