説明

情報提供装置、コンピュータプログラム及び情報提供方法

【課題】後続車両が存在する場合でも交差点で安全に停止させるための情報を提供することができる情報提供装置、コンピュータプログラム及び情報提供方法を提供する。
【解決手段】情報提供装置は、車両の速度及び停止線までの距離並びに信号情報などに基づいて、車両が黄信号開始後に停止しようとして交差点の手前に停止する停止条件及び黄信号の終了時点までに交差点に進入する進入条件により決定される危険走行状態(停止線までの距離と速度により決定される危険走行領域)にあるか否かを判定する。情報提供装置は、車両が危険走行状態にあると判定した場合において、車両を交差点の手前で停止させると判定したとき、その旨を示す停止情報を生成して、車両の後方を走行する後続車両に対して、生成した停止情報を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点で安全に車両を停止させ又は通過させるための情報を提供する情報提供装置、該情報提供装置を実現するコンピュータプログラム及び情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全運転支援には、走行中の車両を減速させて停止させる停止制御に関する技術、信号の切り替え時間を考慮したジレンマ制御に関する技術など多くの技術が適用されている。
【0003】
例えば、交差点手前の停止線で車両を停止させるために、カメラから得られた画像に基づいて停止線を検出し、車両の速度又は加減速度の情報により車両の走行制御を行って停止線で車両を停止させる技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
また、交差点の上流に設置した通信装置から、その交差点の信号の切り替えタイミング情報及び交差点の停止線までの距離(あるいは停止線の位置情報)を車載装置で取得し、車両がジレンマゾーンに入ると予想される場合に、ジレンマゾーンから脱出させるための限界走行速度を提供する安全速度提供方法が開示されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−190100号公報
【特許文献2】特開2006−151014号公報
【特許文献3】特開2006−139707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術では、車両が停止線に接近しない限り停止線を検出することができないため、停止線を検出できた時点では、車両は停止線付近に到達しており、車両を停止線で停止させるための時間的余裕が十分でない。車両を停止線で停止させるためには、大きな減速度で減速させる必要があり、後続車が存在する場合には、安全上問題がある。
【0006】
また、特許文献3では交差点の十分手前からジレンマ領域又はオプション領域を回避する走行制御又は情報提供を行う方法が開示されているものの、自車両の後方を走行する後続車両が存在する場合については考慮されていない。例えば、自車両がジレンマ領域近辺にある場合には、後続車両の運転者は、「自分が追従接近して走行しているので、前方車両(自車両)は速度を上げて交差点を通過するであろう。」と考えて、速度をぎりぎりまで落とさない場合が良くある。従って、後続車両の運転者は黄信号になっても直ぐにはブレーキを踏まず、いよいよ前方車両(自車両)が停止すると分かって、ようやく急ブレーキを踏むということになり、結局、後続車両は前方車両(自車両)に追突してしまうという事態が生じる。一方、自車両がオプション領域近辺にある場合でも、後続車両の運転者から見ると、前方車両(自車両)が信号待ちで停止するか否かを、ぎりぎりまで判定することができず、仮に前方車両(自車両)が黄信号で急ブレーキを踏まずに通常の減速度で減速したとしても、後続車両の減速操作が遅れてしまい、前方車両に追突してしまうという事態が生じる。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、後続車両が存在する場合でも交差点で安全に停止させるための情報を提供することができる情報提供装置、該情報提供装置を実現するためのコンピュータプログラム及び情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る情報提供装置は、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報に基づいて、車両の運転支援に関する運転支援情報を提供する情報提供装置であって、車両の速度情報を取得する速度情報取得手段と、車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、前記車両の交差点までの距離、該車両の速度及び前記信号情報に基づいて、前記車両を交差点の手前に停止させるか否かを判定する停止判定手段と、該停止判定手段で前記車両を停止させると判定した場合、その旨を示す停止情報を該車両の後続車両へ通知する通知手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る情報提供装置は、第1発明において、前記停止判定手段で判定した結果に基づいて、車両を減速させるための制御手段を備え、前記通知手段は、前記制御手段で前記車両を減速させる場合、停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る情報提供装置は、第1発明において、前記停止判定手段で車両を停止させると判定した場合、その旨の情報を運転者に報知する報知手段と、運転者の減速操作を受け付ける受付手段とを備え、前記通知手段は、前記受付手段で前記車両の減速操作を受け付けた場合、停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る情報提供装置は、第1発明乃至第3発明のいずれか1つにおいて、車両の交差点までの距離、該車両の速度及び前記信号情報に基づいて、該車両が交差点の手前に停止する停止条件及び交差点に進入する進入条件により決定される特定の状態にあるか否かを判定する状態判定手段を備え、前記通知手段は、前記状態判定手段で前記車両が前記特定の状態にあると判定した場合、停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る情報提供装置は、第1発明乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記通知手段は、黄信号開始時点前の所定の時点で停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る情報提供装置は、第1発明乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記通知手段は、後続車両との車々間通信を用いて停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
第7発明に係る情報提供装置は、第1発明乃至第6発明のいずれか1つにおいて、後続車両との車間距離及び相対速度の少なくとも1つに応じて、前記通知手段で停止情報を通知するか否かを決定する決定手段を備えることを特徴とする。
【0015】
第8発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報に基づいて、車両の運転支援に関する運転支援情報を提供させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、車両の交差点までの距離、該車両の速度及び前記信号情報に基づいて、前記車両を交差点の手前に停止させるか否かを判定する停止判定手段と、前記車両を停止させると判定した場合、その旨を示す停止情報を生成する生成手段として機能させることを特徴とする。
【0016】
第9発明に係る情報提供方法は、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報に基づいて、車両の運転支援に関する運転支援情報を提供する情報提供方法であって、車両の速度情報を取得し、車両と交差点との距離に関する情報を取得し、前記車両の交差点までの距離、該車両の速度及び前記信号情報に基づいて、前記車両を交差点の手前に停止させるか否かを判定し、前記車両を停止させると判定した場合、その旨を示す停止情報を該車両の後続車両へ通知することを特徴とする。
【0017】
第1発明、第8発明及び第9発明にあっては、情報提供装置は、車両の速度情報(速度)及び車両と交差点との距離に関する情報を取得する。車両と交差点との距離に関する情報は、例えば、車両と交差点との距離でもよく、あるいは、車両及び交差点の位置であってもよい。情報提供装置は、車両の速度及び交差点までの距離並びに交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報に基づいて、車両を交差点で停止させるか否かを判定する。交差点で停止させるか否かの判定は、所定の時点(例えば、黄信号開始時点よりも十分前の時点)で、車両が、例えば、黄信号開始後に停止しようとして交差点の手前に停止する停止条件及び、例えば、黄信号の終了時点までに交差点に進入する進入条件により決定される危険走行領域(ジレンマ領域又はオプション領域)にあるか否かを判定した上で、車両が危険走行領域内にある場合には、車両を減速して交差点で停止させることで危険走行領域から回避できるか否かにより行うことができる。情報提供装置は、車両を停止させると判定した場合、その旨を示す停止情報を後続車両へ通知する。これにより、後続車両の運転者に対して、黄信号開始時点より十分前に車両が交差点で停止するかどうかを通知することができ、仮に後続車両との車間距離が短い場合であっても黄信号で停止した際に後続車両に追突されるという事態を防止することができる。
【0018】
第2発明にあっては、情報提供装置は、車両を停止させると判定した場合に、車両を減速させるときに停止情報を後続車両へ通知する。危険走行領域から回避させるべく減速制御を行う場合に、停止する旨を通知することができるため、後続車両の運転者から見れば、前方の車両が交差点で確実に停止する場合にのみ停止するよう促されるので、後続車両の運転者が減速すべきかどうか迷うことを防止し、後続車両に対して確実に追突防止を促すことができる。
【0019】
第3発明にあっては、情報提供装置は、車両を停止させると判定した場合に、その旨の情報を運転者に報知する。情報提供装置は、運転者の減速操作(例えば、ブレーキを踏む、アクセルを離すなど)を受け付けた場合、停止情報を後続車両へ通知する。危険走行領域から回避させるべく運転者が減速操作を行う場合に、停止する旨を通知することができるため、後続車両の運転者から見れば、前方の車両が交差点で確実に停止する場合にのみ停止するよう促されるので、後続車両の運転者が減速すべきかどうか迷うことを防止し、後続車両に対して確実に追突防止を促すことができる。
【0020】
第4発明にあっては、情報提供装置は、車両の速度及び交差点までの距離並びに信号情報に基づいて、車両が交差点の手前に停止する停止条件及び交差点に進入する進入条件により決定される特定の状態(例えば、ジレンマ領域若しくはオプション領域又はそれらの領域の近傍であって交差点停止領域内にある状態)にあるか否かを判定する。情報提供装置は、特定の状態にあると判定した場合、停止情報を通知する。これにより、ジレンマ領域若しくはオプション領域などの危険走行領域又は危険走行領域の近傍領域に突入する可能性がある場合には、車両が交差点で停止する可能性が高いため、後続車両に対して停止する旨を通知することで一層の安全を確保することができる。
【0021】
第5発明にあっては、情報提供装置は、黄信号開始時点前の所定の時点で停止情報を通知する。これにより、後続車両の運転者に対して、黄信号開始時点より十分前に車両が交差点で停止するかどうかを通知することができ、後続車両による追突を確実に防止することができる。
【0022】
第6発明にあっては、情報提供装置は、後続車両との車々間通信を用いて停止情報を通知する。例えば、停止情報を車々間通信で後続車両へ送信し、後続車両は受信した停止情報を音声で出力又は表示装置に表示等することができる。これにより、車両が停止する旨を確実に後続車両へ通知することができる。
【0023】
第7発明にあっては、情報提供装置は、後続車両との車間距離及び相対速度の少なくとも1つに応じて、停止情報を通知するか否かを決定する。これにより、むやみに後続車両に停止情報を通知することを防止し、追突の危険性がある場合に停止情報を通知することができ、一層の追突防止を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にあっては、危険走行状態を回避すべく交差点で停止させるような場合に、後続車両が存在するときでも、後続車両による追突を確実に防止して車両を交差点で安全に停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る情報提供装置30による情報提供の概要を示す模式図であり、図2は本発明に係る情報提供装置30の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、信号機が設置された交差点手前に停止線を設けてあり、停止線から道路に沿って適長の離隔距離(例えば、200m)を有して路上装置21、22を設置してある。また、路上装置21の上流側(例えば、路上装置21から上流300m程度)に、光ビーコン10を設置している。
【0026】
路上装置21、22は、例えば、超音波感知器、ICタグ、磁気ネール、光センサ等であり、電波、音波、光、磁気などをセンシングすることにより交信地点を特定することができるものである。路上装置21、22は、車両に搭載された情報提供装置30との交信領域を道路上に有する。車両が交信領域を通過する際に、情報提供装置30は、路上装置21、22から交信領域を通過することを示す信号を受信する。なお、路上装置21、22は、情報提供装置30との間で一方向通信を行うものでも双方向通信を行うものでもよい。また、路上装置21、22は、通信を目的としたものでなく、単に計測のための信号を発するだけでもよい。
【0027】
光ビーコン10は、情報提供装置30との間で道路上に通信領域を有する。車両が通信領域を通過する際に、情報提供装置30は、光ビーコン10から所定の情報を受信する。所定の情報は、例えば、通信地点の位置情報、停止線の位置情報(例えば、停止線までの距離、停止線の絶対位置など)、路上装置21、22の位置情報(例えば、停止線から交信領域までの距離、交信領域の絶対位置など)、信号機の信号情報(例えば、黄信号開始時点及び黄信号時間など)などである。なお、光ビーコン10に代えて、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)などを用いることもできる。
【0028】
車両が交差点に向かって道路を走行する場合、情報提供装置30は、光ビーコン10との通信により、所定の情報を取得する。例えば、情報提供装置30は、この時点で停止線までの距離が、例えば、700mであることを確認することができる。また、情報提供装置30は、車両が交差点に向かって道路をさらに走行し、情報提供装置30が路上装置21と交信することにより、情報提供装置30は、車両の位置が停止線から400mの地点にあることを確認することができる。すなわち、情報提供装置30は、停止線までの距離を補正することができる。また、情報提供装置30が路上装置22と交信した場合も同様である。これにより、情報提供装置30は、交差点の上流地点で、予め停止線までの距離を精度良く把握しておくことができる。
【0029】
黄信号開始時刻の十分前の時刻(例えば、10秒前など)で、情報提供装置30は、車両の速度、停止線(交差点)までの距離、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間及び所定の標準減速度などに基づいて、車両が黄信号開始後に停止しようとして交差点の手前に停止する停止条件及び黄信号の終了時点までに交差点に進入する進入条件により決定される危険走行状態(停止線までの距離と速度により決定される危険走行領域)にあるか否かを判定する。標準減速度は、あくまで車両の速度変化を示すものであり、制動操作の操作内容又は操作のタイミングとは無関係である。標準減速度は、例えば、黄信号に変わって車両の制動を開始する場合など、停止判断時点から反射反応(0.5秒)より十分長い時間(例えば、2秒以上)を経過してから減速操作を行うときにみられる減速度を意味している。つまり、急ブレーキをかけずに余裕のある停止を目的とするときにみられる減速度を意味している。なお、情報提供装置30が標準減速度での速度制御を実施するタイミングは、反射反応より十分長い時間、あるいは反射反応の時間に限らない。一般的には、標準減速度は、平地乾燥路面で、およそ2〜3m/s2 である。
【0030】
情報提供装置30は、車両が危険走行状態にあると判定した場合において、車両を交差点の手前で停止させると判定したとき、その旨を示す停止情報を生成して、車両の後方を走行する後続車両に対して、生成した停止情報を通知する。
【0031】
図2に示すように、情報提供装置30は、車両に搭載されたビデオカメラ40を接続してある。ビデオカメラ40は、例えば、車両のフロントグリル、前部バンパなどに配置され、前方の路面を撮像できるようにしてある。また、情報提供装置30には、車両の走行状態を制御する車両制御部50を接続してある。情報提供装置30が出力する制御信号に応じて、車両制御部50は、所要の加減速度で車両を加減速させる。また、情報提供装置30には、車両の前方又は後方に他の車両が存在するか否かを検出するとともに、後方車両との車間距離、相対速度などを計測するための超音波センサ60を接続してある。なお、超音波センサ60に代えて、ミリ波レーダ等他の車載センサを用いることもできる。
【0032】
情報提供装置30には、車両のリアウインド内側などに設置した表示装置70を接続してある。表示装置70は、車両が交差点手前で停止する場合、後続車両に対して、その旨を文字情報などで通知する。表示装置70は、情報提供装置30に含めることもできる。また、情報提供装置30には、車両操作部80を接続してある。車両操作部80は、運転者がブレーキを踏んだ場合、あるいは、踏んでいたアクセルを離した場合などの減速操作を受け付けて、その結果を情報提供装置30へ出力する。
【0033】
情報提供装置30は、各種の演算処理を行うCPUからなり、後述する制御周期を計時するための時計を内蔵する制御部31を備える。なお、制御部31は、専用のハードウエア回路で構成してもよく、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成であってもよい。制御部31には、内部バスを介して通信部32、測位部33、地図データベース34、表示部35、画像処理部36、操作部37、記憶部38、報知部39などが接続されている。測位部33は、GPS(Global Positioning System)331、車速センサ332、ジャイロセンサ333、走行距離を計測する距離計334などを備えている。また、情報提供装置30は、必ずしも車両の固定的に設置された専用装置のみならず、パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話など、取り外して屋外又は机上で別の目的などに利用できる装置に上述の各部の機能を備えるようにして構成することもできる。
【0034】
通信部32は、光ビーコン10との間で路車間通信を行う通信機能を有する。なお、通信部32は、光ビーコン、電波ビーコン、DSRCなどの狭域通信に限定されるものではなく、例えば、中域通信としてUHF帯又はVHF帯等の無線LAN機能を備えるものでもよく、あるいは、広域通信として携帯電話、PHS、多重FM放送、インターネット通信などの通信機能を備えるものでもよい。また、通信部32は、路上装置21、22が送信する信号を受信する受信機能を備えている。さらに、通信部32は、後続車両との間で車々間通信を行うための通信機能を備えている。
【0035】
測位部33は、複数のGPS衛星からの電波をGPS331で受け取り、車両の位置を測位する。また、測位部33は、GPS衛星からの電波が届かない場所、あるいはGPS331により測位される位置の誤差を小さくするため、車速センサ332、ジャイロセンサ333から出力される信号に基づいて車両位置を推定し、地図データベース34の道路データと照合することにより車両の位置をさらに精度良く測位する。なお、GPS331に加えて、DGPS(ディファレンシャルGPS)を搭載することもできる。DGPSは、予め位置が分かっている基準局から発信されるFM放送又は中波を受信し、GPSで算出した位置のずれを補正することができ、車両の位置の精度を向上させることができる。
【0036】
表示部35は、フロントガラスディスプレイ又はヘッドアップディスプレイ、あるいは、カーナビゲーションシステム又は後方監視モニタなどの液晶表示パネルであって、例えば、情報提供装置30が車両を交差点手前で停止させると判定した場合、運転者に所要の情報を表示する。
【0037】
画像処理部36は、制御部31から画像処理開始の信号を受け付けた場合、ビデオカメラ40で道路を撮像して得られた撮像画像に基づいて、停止線を検出するための処理を行う。以下、撮像画像に基づいて停止線の位置を検出する方法について説明する。
【0038】
ビデオカメラ40のレンズ中心を原点として、道路座標系を(X、Y、Z)、カメラ座標系を(X’、Y’、Z’)とし、道路座標系は、道路の進行方向をY軸(前方向を正)、道路方向と垂直な道路面上の方向をX軸(前方に向かって右方向を正)、路面と垂直な方向をZ(上方を正)とする。また、カメラ座標系は、カメラレンズの光軸をY’軸、光軸に垂直であって水平方向の軸をX’軸、カメラの上方向をZ’軸とする。さらに、カメラ座標系の各軸の道路座標系の各軸に対する回転角を、それぞれθ(ピッチ角)、φ(ロール角)、ψ(ヨー角)とし、全て右ねじの進む方向を正(θ:水平面より上向きが正、φ:右回りが正、ψ:左回りが正)とする。この場合、道路座標系からカメラ座標系の変換式は、式(1)で表すことができる。
【0039】
【数1】

【0040】
変換行列の係数P11〜P33それぞれは、式(2)で表すことができる。また、撮像画像上の座標(x、y)は、レンズの焦点距離をFとすると、式(3)で表すことができる。
【0041】
停止線の有無の判定は、撮像画像の各画素の画素値に基づいて、エッジ点を抽出し、抽出したエッジ点より得られるエッジ画像と停止線の形状とのパターンマッチングを行うことにより判定することができる。切り出された停止線が撮像画像のy軸と交わる点のy座標を求め(この場合x=0)、求めたy座標を式(3)に代入すれば、停止線までの距離を精度良く算出することができる。
【0042】
操作部37は、各種操作パネルを備え、運転者と情報提供装置30とのユーザインタフェースとして機能する。例えば、操作部37は、運転者の操作により情報提供装置30の動作の開始又は停止の操作を受け付ける。
【0043】
報知部39は、スピーカを備え、制御部31の制御のもと、運転者に対して報知の内容を音声で出力する。例えば、危険走行状態を回避して停止線の手前で停止するための情報を運転者に対して提供する。運転者は提供された情報に基づいて、減速操作などを行って安全に停止線手前で車両を停止させることができる。また、危険走行領域を回避すべく自動速度制御を行う(減速制御モード又は加速制御モードに入る)旨を出力する。また、車両を所定地点又は交差点に停止させるために減速させる場合、あるいは交差点に進入(通過)させるため加速させる場合、その旨を出力する。
【0044】
記憶部38は、通信部32を通じて受信された所定の情報を記憶する。
【0045】
図3は危険走行領域の概念を示す説明図である。図において、横軸は停止線からの位置(距離)を示し、縦軸は車両の速度を示す。危険走行領域は、車両が危険走行状態であることを車両の速度と停止線までの距離とにより表すことができる領域である。危険走行領域は、ジレンマ領域とオプション領域とを含む。ジレンマ領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとしても停止線(交差点)の手前に停止できず、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できない状態であり安全に停止又は進入できない状態である。また、オプション領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとして停止線の手前に停止でき、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できる状態であり、運転者の特性により車両が停止するのか又は進入するのかが異なる不安定な状態である。すなわち、黄信号表示中に(例えば、黄信号開始時点で)車両が危険領域にある状態であると判定した場合、その車両は危険走行状態にあると判定する。
【0046】
図3において、停止線を基準とした車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(4)で求められる。式(4)は、現在の車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
【0047】
【数2】

【0048】
一方、車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(5)で求められる。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。すなわち、停止条件Cは、黄信号開始時に車両が標準減速度で減速したならば、車両が停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
【0049】
車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちにならない進入条件Lは、式(6)で求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。すなわち、進入条件Lは、車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。
【0050】
ジレンマ領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足しない領域であり、オプション領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足する領域である。なお、図3において、危険走行領域の下側の領域は交差点停止領域であり、停止線手前に安全に停止することができる領域である。また、危険走行領域の上側の領域は交差点通過領域であり、安全に停止線に進入(通過)することができる領域である。
【0051】
情報提供装置30は、車両が黄信号開始時点で危険走行領域(ジレンマ領域及びオプション領域)に突入する可能性がある場合、危険走行領域に陥らないように回避すべく、車両を加速して交差点を通過させるか又は車両を減速して交差点の停止線手前で停止させるかを判定する。
【0052】
危険走行領域を回避すべく車両を停止線で停止させるか又は交差点を通過させるかの判定は、いくつかの条件に基づいて行うことができる。例えば、判定条件Eにより求められた黄信号開始時点の車両の状態(Xy、Vy)が停止条件Cに近い場合には、現時点の速度が点Pで特定される停止限界速度になるように緩やかな減速度による減速制御を行うか、あるいは、運転者に車両の減速操作を行うように情報を提供する。また、判定条件Eにより求められた黄信号開始時点の車両の状態(Xy、Vy)が進入条件Lに近い場合には、現時点の速度が点Qで特定される進入限界速度になるように緩やかな加速度による加速制御を行うか、あるいは、運転者に車両の減速操作を行うように情報を提供する。
【0053】
また、別の条件として以下のようにすることもできる。例えば、交差点を通過させるための条件を予め設定しておき、設定した条件の1つでも満たさない場合には、停止線手前で車両を停止させると判定することができる。設定する条件としては、例えば、条件1:車両の速度を加速した場合、車両の速度が所定の基準速度(規制速度又は規制速度に若干の余裕を加味した速度など)を上回らないこと、条件2:車両の前方に走行車両が存在しないこと、条件3:車両の直後に車両に追従する後続車両が存在すること、条件4:交差点の交差道路が閑散であること、である。なお、交差点の交差道路に関する情報は、光ビーコン10から取得するようにしてもよく、あるいは、信号制御装置又は交通管制装置(不図示)などから取得するようにしてもよい。
【0054】
例えば、条件3を満たしていても、他の条件1、条件2、条件4のいずれかを満たしていない場合には、車両を停止線手前で停止させると判定する。特に、車両を加速した場合に、車両の速度が規制速度を超えるときには、後続車両の運転者から見ると、「前方の車両はスピードを上げて交差点を通過するだろう」と思うこともあり、この観点から黄信号開始時刻の十分前の時点で後続車両に交差点で停止する旨を通知することは、後続車両による追突を防止するためには効果的であるといえる。
【0055】
情報提供装置30は、車両を停止線(交差点)手前で停止させると判定した場合、後続車両に対してその旨を通知する。例えば、車両を自動的に減速制御して停止させる場合には、減速制御を行うとき(減速制御の開始直前又は開始直後を含む)に通知を行う。また、自動的に減速制御を行わずに運転者の減速操作により減速させる場合には、車両を危険走行領域から回避すべく車両を停止させるための情報を提供した後、運転者が減速操作(例えば、ブレーキを踏む、踏んでいたアクセルを離す)を行ったとき通知を行う。後続車両の運転者から見れば、前方の車両が交差点で確実に停止する場合にのみ停止するよう促されるので、後続車両の運転者が減速すべきかどうか迷うことを防止し、後続車両に対して確実に追突防止を促すことができる。
【0056】
車両を停止させると判定した場合に、自動減速制御を行うか、あるいは、運転者に減速のための情報を提供するかは、予め運転者の要求に応じて設定しておくことができ、あるいは、車両の走行状態に応じて情報提供装置30が選択してもよい。
【0057】
後続車両に対して車両を停止させる旨の停止情報は、例えば、「次の交差点で信号停止します。」などの文字情報を用いることができる。情報提供装置30は、停止情報を表示装置70で表示してもよく、通信部32を通じて車々間通信を行い、後続車両のスピーカに音声出力又はディスプレイに表示させてもよい。これにより、車両が停止する旨を確実に後続車両へ通知することができる。
【0058】
また、後続車両へ停止情報を通知する場合、後続車両との車間距離又は相対速度などに応じて停止情報を通知するか否かを決定することもできる。例えば、車両と後続車両との間の車間距離を測定し、測定した車間距離が所定の閾値より短い場合に停止情報を通知することができる。所定の閾値は、例えば、20mと設定してもよく、あるいは、車両又は後続車両の速度の関数として定義して、速度に応じて変化させることもできる。
【0059】
速度の関数としては、一例として速度の1次式(例えば、αV+β、ここで、αはブレーキの時間遅れ、βは安全係数で、例えば、Vの単位はm/sでα=1、β=5m)としてもよく、他の例として2次式(例えば、a・V2 で、例えば、Vの単位はm/sでa=10)としても良い。
【0060】
また、別の条件として、車両と後続車両との車間距離が、所定の閾値(例えば50m)以内で、かつ後続車両の速度が車両の速度よりも所定の閾値(例えば5m/s)より大きい場合に表示することもできる。このような条件を加味することにより、むやみに後続車両に停止情報を通知することを防止し、追突の危険性がある場合に停止情報を通知することができ、一層の追突防止を図ることが可能となる。
【0061】
次に情報提供装置30の動作について説明する。図4及び図5は情報提供装置30の処理手順を示すフローチャートである。制御部31は、光ビーコン10との通信の有無を判定し(S11)、通信がない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続け、光ビーコン10との通信があるまで待機する。
【0062】
光ビーコン10との通信があった場合(S11でYES)、制御部31は、光ビーコン10から通信地点、停止線及び路上装置21,22の位置情報、信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報を受信する(S12)。
【0063】
制御部31は、停止線までの距離を算出し(S13)、路上装置21、22から信号を受信したか否かを判定し(S14)、信号を受信した場合(S14でYES)、停止線までの距離を修正する(S15)。例えば、停止線から路上装置21、22との交信地点までの距離をLとすると、車両の位置を、停止線から距離Lにあると修正する。これにより、自車両が停止線に向かって走行するにつれて累積する距離誤差をリセットし、停止線までの距離の精度を向上させることができる。信号を受信していない場合(S14でNO)、制御部31は、ステップS15の処理を行うことなく、後述のステップS16の処理を行う。
【0064】
制御部31は、情報提供又は自動速度制御の開始タイミングであるか否かを判定する(S16)。情報提供又は自動速度制御の開始タイミングは、例えば、車両が停止線から所定の距離(例えば、200m)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点、最後の路上装置22との交信時点、あるいは光ビーコン10との通信時点など適宜設定できる。また、情報提供又は自動速度制御の開始タイミングは、車両の速度に応じて変化させることもできる。
【0065】
情報提供又は自動速度制御の開始タイミングである場合(S16でYES)、制御部31は、車両の危険走行領域を算出し(S17)、車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する(S18)。車両が危険走行領域内に突入する場合(S18でYES)、制御部31は、車両を交差点(停止線)の手前で停止すべきか否かを判定する(S19)。情報提供又は自動速度制御の開始タイミングでない場合(S16でNO)、制御部31は、ステップS11以降の処理を行う。
【0066】
車両を交差点の手前で停止すべきであると判定した場合(S19でYES)、制御部31は、危険回避の自動制御を利用するか否かを判定し(S20)、自動制御を利用する場合(S20でYES)、後続車両に対して交差点で停止する旨通知する(S21)。制御部31は、減速制御処理を行い(S22)、処理を終了する。なお、減速制御処理の詳細は後述する。
【0067】
自動制御を利用しない場合(S20でNO)、制御部31は、車両の運転者に対して交差点で停止するための情報を提供する(S23)。交差点で停止するための情報は、例えば、「交差点で停止するため速度を落として走行してください」、「xxkm/h程度速度を落として走行して交差点で停止してください」などの情報提供を行うことができる。
【0068】
制御部31は、運転者による減速操作の有無を判定し(S24)、減速操作があった場合(S24でYES)、後続車両に対して交差点で停止する旨通知し(S25)、処理を終了する。減速操作がない場合(S24でNO)、制御部31は、車両が交差点を通過したか否かを判定し(S26)、交差点を通過していない場合(S26でNO)、ステップS24の処理を行い、交差点を通過した場合(S26でYES)、処理を終了する。なお、交差点を通過したか否かは、測位結果と停止線位置とを照合することで判定することができる。
【0069】
車両を交差点の手前で停止すべきでないと判定した場合(S19でNO)、制御部31は、危険回避の自動制御を利用するか否かを判定し(S27)、自動制御を利用する場合(S27でYES)、加速制御処理を行って(S28)、処理を終了する。
【0070】
自動制御を利用しない場合(S27でNO)、制御部31は、車両の運転者に対して交差点を通過するための情報を提供し(S29)、処理を終了する。交差点を通過するための情報は、例えば、「交差点を通過するため速度を上げて走行してください」、「xxkm/h程度速度を上げて走行して交差点を通過してください」などの情報提供を行うことができる。
【0071】
一方、車両が危険走行領域内に突入しない場合(S18でNO)、制御部31は、危険走行領域に近い交差点停止領域に突入するか否かを判定する(S30)。これは、危険走行領域に突入しない場合であっても、危険走行領域の近傍領域(危険走行近傍領域)に突入するときには、車両が交差点で停止する可能性があり、このような場合でも後続車両に対して停止情報を通知する方が好ましいからである。
【0072】
図6は危険走行近傍領域の概念を示す説明図である。図中、横軸は停止線からの位置(距離)を示し、縦軸は車両の速度を示す。危険走行領域は、図3の場合と同様である。危険走行近傍領域は、交差点停止領域であって危険走行領域に近い領域である。
【0073】
すなわち、危険走行近傍領域にあるか否かの判定は、例えば、黄信号開始時点における交差点までの距離及び速度で特定される車両の状態と停止条件C又は進入条件Lとの近さ度合いにより判定することができる。これにより、危険走行領域に突入する可能性がある場合(危険走行近傍領域に突入する場合)には、車両が交差点で停止する可能性が高いため、後続車両に対して停止する旨を通知することで一層の安全を確保することができる。
【0074】
危険走行領域に近い交差点停止領域に突入する場合(S30でYES)、制御部31は、ステップS23以降の処理を続け、危険走行領域に近い交差点停止領域に突入しない場合(S30でNO)、処理を終了する。
【0075】
図7及び図8は減速制御処理の手順を示すフローチャートである。制御部31は、減速制御モードに入る旨を報知する(S221)。制御部31は、目標速度、段階的目標速度を算出する(S222)。目標速度は、車両を緩やかな減速度で減速させて危険走行領域から回避(脱出)させるために到達させる速度である。目標速度Vsは、以下のとおり算出することができる。車両が危険走行領域に突入する可能性があると判定された場合、式(4)、式(5)において、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsを目標速度とする。式(4)が式(5)よりも小さい場合、目標速度Vsは、式(7)で表され、図3の点Pにおける速度として求められる。
【0076】
【数3】

【0077】
また、車両が式(5)の下限値が式(4)よりも小さくなる範囲のところで、危険走行領域に突入する可能性があると判定された場合、上述の式(4)及び式(6)で、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsの下限値を目標速度とする。目標速度Vsは式(8)で表される。
【0078】
段階的目標速度Vrは、車両の現時点の速度と目標速度Vsとの差が大きい場合、速度変化が大きいため、緩やかな減速を行うことができなくなる事態を防ぐため、車両の現時点の速度Vと目標速度Vsとの間の暫定目標値であり、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過の都度、算出する。
【0079】
段階的目標速度Vrの算出は、減速を行う場合に、制御周期の間における速度変化を小さくするように求めることができる。例えば、現時点の速度Vが、目標速度Vsに比べて大きい場合、その差分をn分割した値ΔV=(V−Vs)/nだけ減速させ、速度変化が微小になるように目標速度Vsに追従させることができる。この場合、段階的目標速度Vrは、Vr=V−Δv=V−(V−Vs)/nとなる。このようにして、Δvを調整することにより、車両は、後続車両に対して減速を感じさせないように緩やかな減速度で減速することができるので、後続車両は、急ブレーキを踏み込むような事態を防止でき、安全性が向上する。
【0080】
また、段階的目標速度Vrの算出方法として、所定の閾値b(例えば、b=1km/h)を用いて、V−Vs≧bの場合、Vr=V−bとし、V−Vs<bの場合、Vr=Vsのように求めることもできる。
【0081】
制御部31は、現時点の速度Vを、算出した目標速度Vs又は段階的目標速度Vrに近づけるべく緩やかな減速度で減速制御を行い(S223)、制御周期を経過したか否かを判定し(S224)、制御周期を経過していない場合(S224でNO)、ステップS224の処理を続け、制御周期が経過するまで減速制御を続ける。これにより、後続車両に対し、車両の減速を感じさせないようにすることができる。なお、制御周期を経過したか否かを判定する代わりに車両が所定距離を移動したか否かを判定することもできる。
【0082】
制御周期を経過した場合(S224でYES)、制御部31は、車両が危険走行領域の境界に到達したか否かを判定する(S225)。例えば、車両の速度が停止条件Cで示される停止限界速度に到達したか否かにより判定する。危険走行領域の境界に到達していない場合(S225でNO)、制御部31は、ステップS222以降の処理を続ける。これにより、減速制御の処理は、制御周期の経過の都度行われるため、目標速度Vs、段階的目標速度Vrは徐々に変化し、滑らかな減速制御を実現することができる。
【0083】
危険走行領域の境界に到達した場合(S225でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達した時点の速度、すなわち、停止限界速度で速度維持を行う(S226)。これにより、危険走行領域の境界に到達した後は速度を一定にすることにより、車両の状態を危険走行領域の境界に維持させる走行が可能となる。
【0084】
制御部31は、黄信号開始時点から所定時間経過したか否かを判定する(S227)。この場合、所定時間は、通常、運転者が黄信号に切り替わったのを見てブレーキを踏むまでの時間遅れに合わせればよく、例えば、0.5秒程度の値である。所定時間経過していない場合(S227でNO)、制御部31は、ステップS226以降の処理を続け、所定時間経過まで一定の速度で走行を続ける。
【0085】
所定時間経過した場合(S227でYES)、制御部31は、標準減速度で減速制御する(S228)。標準減速度gは、例えば、3m/s2 とすることができる。これにより、停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線上を推移して、車両の速度を減速させることができる。
【0086】
制御部31は、撮像画像に基づいて停止線を検出したか否かを判定し(S229)、停止線を検出していない場合(S229でNO)、ステップS228以降の処理を続ける。停止線を検出した場合(S229でYES)、制御部31は、停止線までの距離を算出し、停止線までの距離を補正して微調整制御で速度を制御し(S230)、車両を停止させ(S231)、減速制御モードを解除するとともに、その旨報知し(S232)、処理を終了する。微調整制御は、時々刻々停止線の位置を検出して停止線までの距離を算出し、停止線までの距離に基づいて速度を徐々に変更するものである。これにより、車両の速度を微調整することができ、車両を停止線に確実に停止させることができる。
【0087】
なお、交差点を通過させるべく加速制御処理を行う場合にも、減速制御処理と同様に目標速度又は段階的目標速度を算出し、標準減速度で緩やかな加速制御することができる。
【0088】
図9は本発明に係る情報提供装置30による情報提供の概要の他の例を示す模式図である。図9に示すように、路上装置21、22を設置せずに、光ビーコン10のみを設置することもできる。この場合には、光ビーコン10を、停止線の上流側200m〜1000m程度の位置に設けることができる。また、この場合も、光ビーコン10に代えて、電波ビーコン、DSRCなどを用いることもできる。
【0089】
図10は本発明に係る情報提供装置30による情報提供の概要の他の例を示す模式図である。図10に示すように、光ビーコン10、路上装置21、22に加えて、通信装置90を設ける。通信装置90は、例えば、無線LANなどの中域通信機能を備え、信号情報を広い範囲に送信する。なお、通信装置90は、信号制御、交通情報収集、交通情報提供などの処理を行う装置などを利用することも可能である。また、通信装置90は、中域通信に限らず、FM放送、携帯電話、インターネット通信等の広域通信機能を備えた装置でもよい。
【0090】
以上説明したように、本発明にあっては、後続車両の運転者に対して、黄信号開始時点より十分前に車両が交差点で停止するかどうかを通知することができ、仮に後続車両との車間距離が短い場合であっても黄信号で停止した際に後続車両に追突されるという事態を確実に防止して車両を交差点で安全に停止させることができる。
【0091】
上述の実施の形態において、危険走行領域を回避するため停止条件C、進入条件Lを用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、余裕をもって危険走行領域の回避を行えるように、危険走行領域を予め広めに設定しておくこともできる。また、目標速度として、危険走行領域の停止限界速度又は進入限界速度(境界線の速度)そのものを使用する代わりに、これらを基準として、例えば、限界速度に所定の定数を乗じる等して算出した数値を用いることもできる。
【0092】
上述の実施の形態では、黄開始時刻を基準とした危険走行領域の回避を示した。しかし、ぎりぎり黄信号で通過せず余裕を持たせる目的で、例えば黄信号時間Tyを意図的に小さくしたり、黄信号開始時刻の黄信号時間だけ手前の時刻を基準として停止線を青信号で通過させるようにしたり、危険走行領域を広くするために式(4)〜式(6)を補正したりする等、本願の概念を損なわない範囲内で、種々、数式、定数等を追加又は変更して用いても良い。また、対象とする危険走行領域は、ジレンマ領域のみとしても良く、あるいは、オプション領域のみとしても良い。また、対象とする車両の速度を、例えば、20km/h以上100km/h以下というように限定しても良い。
【0093】
上述の実施の形態において、危険走行領域から脱出するための回避制御は、上述の例に限定されるものではなく、種々の方法を取り得る。例えば、現在速度から一定の減速度で減速し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにすることもできる。また、この場合、黄信号開始時刻までの時間tのうち、最初の時間t1(t1<t)だけ、所定の減速度で減速し、残りの時間(t−t1)は、一定速度で制御し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにすることもできる。また、黄信号開始時刻までの時間tのうち、最初の時間t1だけ速度を変えず一定速度で走行させ、その後、所定の減速度で減速し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにすることもできる。
【0094】
上述の実施の形態では、車両がジレンマ領域又はオプション領域に突入するか否かを判定した上で、ジレンマ領域又はオプション領域に突入する場合、車両を交差点で停止させるか否かを判定し、停止させると判定したときに停止情報を通知する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、車両がジレンマ領域又はオプション領域に突入するか否かを判定することなく、直接的に交差点で停止させるか否かを判定するように構成してもよい。この場合には、例えば、ジレンマ領域とオプション領域とが交差する点(図3の点S)での速度(臨界速度Vcと称する)と車両の速度Vとを比較し、車両の速度Vが臨界速度Vcより大きい場合には、車両の状態(速度、停止線までの距離)が停止条件Cの近傍にあるか否かを判定し、停止条件Cの近傍にある場合には、車両を停止させると判定する。また、車両の速度Vが臨界速度Vcより小さい場合には、車両の状態(速度、停止線までの距離)が進入条件Lの近傍にあるか否かを判定し、進入条件Lの近傍にある場合には、車両を停止させると判定する。この場合、判定のための近傍の程度は適宜決定することができる。これらの判定結果と上述の判定結果の両者を併用することにより、より安全に交差点に停止させるための情報提供を行うことができる。
【0095】
なお、上述の実施の形態において、追突を回避することを目的とするものではないが、車両を交差点手前で停止させると判定しない場合、すなわち、交差点を通過させると判定した場合に、交差点を通過する旨を後続車両に通知することは同様な方法により実現可能である。
【0096】
上述の実施の形態において、運転者に車両を交差点手前で停止すべく情報を提供して運転者がブレーキ操作等を行ったときに後続車両に停止する旨を通知する構成であったが、これに限定されるものではなく、運転者がブレーキ操作等を行う前、すなわち、運転者に情報提供を行ったときに後続車両に停止する旨を通知するようにしてもよい。この場合、例えば、「交差点で停止する予定です。」、「交差点で停止する可能性が高いです。」などの停止情報を後続車両に対して通知することができる。
【0097】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る情報提供装置による情報提供の概要を示す模式図である。
【図2】本発明に係る情報提供装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】危険走行領域の概念を示す説明図である。
【図4】情報提供装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】情報提供装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】危険走行近傍領域の概念を示す説明図である。
【図7】減速制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】減速制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る情報提供装置による情報提供の概要の他の例を示す模式図である。
【図10】本発明に係る情報提供装置による情報提供の概要の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0099】
10 光ビーコン
21、22 路上装置
30 情報提供装置
31 制御部
32 通信部
33 測位部
34 地図データベース
35 表示部
36 画像処理部
37 操作部
38 記憶部
39 報知部
40 ビデオカメラ
50 車両制御部
60 超音波センサ
70 表示装置
80 車両操作部
90 通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報に基づいて、車両の運転支援に関する運転支援情報を提供する情報提供装置であって、
車両の速度情報を取得する速度情報取得手段と、
車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、
前記車両の交差点までの距離、該車両の速度及び前記信号情報に基づいて、前記車両を交差点の手前に停止させるか否かを判定する停止判定手段と、
該停止判定手段で前記車両を停止させると判定した場合、その旨を示す停止情報を該車両の後続車両へ通知する通知手段と
を備えることを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記停止判定手段で判定した結果に基づいて、車両を減速させるための制御手段を備え、
前記通知手段は、
前記制御手段で前記車両を減速させる場合、停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記停止判定手段で車両を停止させると判定した場合、その旨の情報を運転者に報知する報知手段と、
運転者の減速操作を受け付ける受付手段と
を備え、
前記通知手段は、
前記受付手段で前記車両の減速操作を受け付けた場合、停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項4】
車両の交差点までの距離、該車両の速度及び前記信号情報に基づいて、該車両が交差点の手前に停止する停止条件及び交差点に進入する進入条件により決定される特定の状態にあるか否かを判定する状態判定手段を備え、
前記通知手段は、
前記状態判定手段で前記車両が前記特定の状態にあると判定した場合、停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記通知手段は、
黄信号開始時点前の所定の時点で停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記通知手段は、
後続車両との車々間通信を用いて停止情報を通知するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の情報提供装置。
【請求項7】
後続車両との車間距離及び相対速度の少なくとも1つに応じて、前記通知手段で停止情報を通知するか否かを決定する決定手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の情報提供装置。
【請求項8】
コンピュータに、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報に基づいて、車両の運転支援に関する運転支援情報を提供させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、車両の交差点までの距離、該車両の速度及び前記信号情報に基づいて、前記車両を交差点の手前に停止させるか否かを判定する停止判定手段と、
前記車両を停止させると判定した場合、その旨を示す停止情報を生成する生成手段と
して機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報に基づいて、車両の運転支援に関する運転支援情報を提供する情報提供方法であって、
車両の速度情報を取得し、
車両と交差点との距離に関する情報を取得し、
前記車両の交差点までの距離、該車両の速度及び前記信号情報に基づいて、前記車両を交差点の手前に停止させるか否かを判定し、
前記車両を停止させると判定した場合、その旨を示す停止情報を該車両の後続車両へ通知することを特徴とする情報提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−93562(P2009−93562A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265829(P2007−265829)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】