説明

情報表示パネル

【課題】車両用スピードメータの文字盤に使用される基材を半透過性基材にすることで、白インキ層を形成する必要がなくなり、半透過性基材の不透明度および膜厚を制御することで、光透過性および拡散性の制御を高い精度で行うことができる情報表示パネルを提供する事を課題とする。
【解決手段】不透明度が50%以上95%以下で、膜厚が300μm以上500μm以下である半透過性基材と、前記半透過性基材の一方の面上に、印刷法によりインキで所定の模様を形成した加飾層と、前記半透過性基材の他方の面の一部に遮光性を有するインキにより形成された絵柄層と、を備え、前記加飾層の前記模様は、二種類以上の印刷版により印刷されたものであることを特徴とする情報表示パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透過性基材を備える情報表示パネルに関し、特に半透過性基材に発泡ポリプロピレンを用い、発泡ポリプロピレンの一方の面上に加飾層を形成することで美観性を有する情報表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用スピードメータなどの文字盤の文字や数字や図形などは、基材上に印刷によって形成されることが多く、特に、スクリーン印刷が多用されている。ところが、近年、高級指向や商品の多様化が進むにつれて、これらの文字および数字などの画像に高級感を付与し、装飾性や視認性を向上させる検討が進められている。(特許文献1参照)
【0003】
車両用スピードメータなどの文字盤に使用される基材は、光透過性および光拡散性の両方を兼ね備えているのが好ましい。基材が光透過性を有していると、バックライトの光を十分に透過させることができるので、基材上に施されたスクリーン印刷による遮光性を利用して、形成された文字や図形などを明るく表示することができる。また基材が拡散性を有していると光源からの光は拡散されるので、観察者は、直射光としてではなく拡散光として目視することになる。従って、文字や図形などを美しく観察することができる。
【0004】
従来から使用されている車両用スピードメータの文字盤の基材は、バックライトの光を十分に透過させることを考慮して透明基材が主に用いられている。光拡散性は、樹脂成型物からなる拡散パーツで制御されている。また透明基材上のほぼ全面に色を有したインキからなる隠蔽性の高いインキ層が形成されており、このインキ層は、インキ層上に模様等を施す印刷を行うために必要であり、また光透過性を制御する役割がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願平4−236878
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インキ層によって光透過性を正確に制御するのは困難である。また、拡散パーツを車両用スピードメータに組み込むことで、光拡散性は向上するが、車両用スピードメータとして高価になってしまうという問題点がある。本発明は、車両用スピードメータの文字盤に使用される基材を半透過性基材にすることで、基材が透明基材の場合には必要であった色インキ層を形成する必要がなくなり、半透過性基材の不透明度および膜厚を制御することで、光透過性および拡散性の制御を高い精度で行うことができる優れた視認性と美観性を備える情報表示パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために次のような構成を備えている。
請求項1に記載の発明は、不透明度が50%以上95%以下で、膜厚が300μm以上500μm以下である半透過性基材と、
前記半透過性基材の一方の面上に、印刷法によりインキで所定の模様を形成した加飾層と、
前記半透過性基材の他方の面の一部に遮光性を有するインキにより形成された絵柄層と、
を備え、
前記加飾層の前記模様は、二種類以上の印刷版により印刷されたものであることを特徴とする情報表示パネル、である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、バックライトの光が十分に透過して、基材上に形成した文字や図形等が明るく美しく表示することができる効果が生じる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記印刷法がスクリーン印刷で行われることを特徴とする請求項1に記載の情報表示パネル、である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、印刷法がスクリーン印刷で行われるためインキ層の層厚を大きくすることが出来るため立体感が得られる効果が生じる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記加飾層において、二種類以上の印刷版により印刷された模様がいずれも同心円形のパターンからなり、前記同心円形のパターンの線幅が、前記二種類以上の印刷版でそれぞれ異なることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の情報表示パネル、である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、同心円形のパターンの線幅を、印刷版ごとに異なる線幅にすることができるので、部分的にパターンが重なって擬似的な立体感が得られる効果が生じる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記半透過性基材は発泡ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の情報表示パネルである。
【0014】
請求項4記載の解決手段によれば、発泡ポリプロピレンを用いることで、インキ層上に印刷するより、発泡ポリプロピレン上に印刷した方が印刷適正を向上することができるので、文字や図形等を美しく印刷することができ、破棄燃焼時の環境負荷が小さい効果が生じる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、車両用スピードメータに使用される基材を半透過性基材にすることで、基材が透明基材の場合には必要であった色インキ層を形成する必要がなくなり、半透過性基材の不透明度および膜厚を制御することで、光透過性および拡散性の制御を高い精度で行うことができる優れた視認性と美観性を備える情報表示パネルを提供できる効果が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の情報表示パネルの、一実施形態の断面図である。
【図2】本発明の情報表示パネルにおいて、(a)インキ層2−1のパターンの一例、(b)インキ層2−2のパターンの一例、(c)2−1と2−2のパターンを重ね合わせたもの。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、本発明に係る情報表示パネルの好適な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の情報表示パネルの、断面図を示したものである。
本発明の情報表示パネルは、半透過性基材1の一方の面上に加飾層2を形成し、半透過基材1の他方の面上に絵柄層3を形成したものである。加飾層2はインキ層2−1とインキ層2−2から構成されている。
半透過性基材1については特に限定することはなく、一般的な半透過性基材1を使用することができる。
【0018】
本実施形態において、半透過性基材1は板厚400μmの発泡ポリプロピレン(商品名RMM400;株式会社ユポ・コーポレーション)を用いた。この発泡ポリプロピレンは、不透明度が77%、白色度が90%である。
【0019】
不透明度とは、半透過性基材1の他方の面側に形成した絵柄層3が見えない程度を表す数値である。数値が高いほど光を透過させないことになる。JISP8138規格で定められた物性測定方法に則って、不透明度として算出される。
膜厚400μmの半透過性基材1で、不透明度を0%〜100%とした場合の絵柄層3の透け具合を、表1に示している。透けにくいほうが、観察者から絵柄層3をより見えなくすることができるので、好ましい。
【0020】
【表1】

【0021】
表1より、本発明に用いる半透過性基材1の不透明度は50%以上、95%以下が好ましいことがわかった。不透明度が50%未満になると、透明度が高くなりすぎて絵柄層3が透けてしまい、意図した模様または色あい等が表現できなくなる。また、不透明度が95%より大きくなると、透明度が低くなりすぎて光源からの光を透過しにくくなり、文字または図形等を明るく表示することができなくなる。
【0022】
白色度とは、パルプおよび紙などの表面色の白さの程度を示す指標である。白色度の測定は、JISP8148規格で定められた物性測定方法に則って、白色度として算出される。100%で真っ白になり、数値が大きくなるほど白くなる。本発明に用いる半透過性基材1の白色度は80%以上が好ましい。白色度80%未満だと、従来技術の文字盤の透明基材上に設けていた白インキと同じ役割を果たさなくなってしまう。
【0023】
また、半透過性基材1の膜厚が薄すぎると絵柄層3が透けて見えてしまい、また膜厚が厚すぎると光の透過性が弱くなってしまうことになる。絵柄層3については後述するが、遮光性を有するインクの層の有無で所定のパターンを形成した層である。インクの層を形成した部分は光が透過せず、インクの層を形成していない部分を光が透過することによって、数字および文字等の絵柄を表現することが可能となる。
【0024】
ここで、半透過性基材1の板厚を400μmに採用したのは、表1から得た半透過性基材1の他方の面側に形成されている絵柄層3の絵柄となる部分の光の透過程度および半透過性基材1の光透過程度を考慮したためである。
【0025】
【表2】

【0026】
表2は、1,000cd/mのLED光源4から3cmの距離に置いた拡散板の上に、絵柄層3が拡散板と接するように半透過性基材1を置きLED光源4を点灯させ、見栄えを確認した結果をまとめたものである。
【0027】
ここで、絵柄となる部分の光の透過程度について説明する。
絵柄となる部分の光の透過程度とは、光源が点灯時に、半透過性基材1の一方の側から目視をした場合に、絵柄層3の絵柄となる部分の光の透過程度を表したものである。絵柄層3のインキの層が形成されている部分は、光が透過しないほうが好ましい。
【0028】
次に、半透過性基材1の光透過程度について説明する。
光透過程度とは、光源が点灯時に、半透過性基材1の一方の側から目視をした場合に、インキが存在していない、数字や文字等の箇所から光が透過する程度を表したものである。光が透過したほうが数字や文字等が明るく表示することができる。
本発明に用いる半透過性基材1の膜厚は300μm以上かつ500μm以下が好ましい。
【0029】
加飾層2について説明する。
加飾層2とは、模様等を形成しているインキ層のことである。インキ層のインキとしては、印刷に用いられる一般的なインキを使用することができる。
インキ層を形成する方法として、凸版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット等が利用できるが、インキ層の層厚によって美観性に与える影響が変わってくるため、最も層厚を大きくできるスクリーン印刷がより好ましい。
インキ層により形成される模様としては、スピン模様、葉脈模様、エンボス模様、マット模様およびグロス模様等が挙げられる。
【0030】
本発明では、加飾層2は、複数のインキ層による複数の模様から構成されている。それぞれのインキ層の模様は互いに異なったパターンであってもよく、それぞれ所定のパターンを有する印刷版により印刷されるものである。また、先に印刷されるインキ層の上に、その後に印刷されるインキ層が重なる箇所があるようなパターンであってもよいし、それぞれのインキ層が重なる箇所が全くないようなパターンであってもよい。
【0031】
スピン模様とは同心円状の研磨模様を数多く付けたものであり、一本一本の円曲線を描くパターンの線を細線と呼ぶ。加飾層2の模様としてスピン模様を形成する場合に、1層だけのインキ層で形成しようとすると、1つの印刷版におけるパターンの線幅の範囲はあまり大きくすることができないという制限があるため、インキ層の模様の細線の線幅には大きな変化をつけることができず、美観性に乏しいものとなってしまう。擬似的な立体感を得るためにはスピン模様の細線の線幅が1μmから1mmの範囲の間で、20μm以上変化する必要があるため、二種類以上の印刷版を用いて、二層以上のインキ層によりスピン模様を形成することが好ましい。
【0032】
本実施形態では、半透過性基材1である発泡ポリプロピレンの一方の面上に、スクリーン印刷でインキ層2−1、インキ層2−2の順に形成した。
インキ層2−1は半透過性基材1の上にスクリーン印刷用インキ(RL-A厚盛メジウム;十条ケミカル株式会社製)を用いてスクリーン印刷で形成した。印刷膜厚を0.02mm以上にすることでパターン印刷したインキに立体感を得ることが出来る。
【0033】
インキ層2−2は上記半透過性基材1およびインキ層2−1上にスクリーン印刷用インキ(RL-A厚盛メジウム;十条ケミカル株式会社製)を用いてスクリーン印刷で形成した。印刷膜厚を0.02mm以上にすることでパターン印刷したインキに立体感を得ることが出来る。
【0034】
図2(a)(b)に示した一例のように、インキ層2−1およびインキ層2−2は細線の太さが異なったものとしてもよい。例えば、インキ層2−1は線幅0.03mm以上、かつ0.3mm未満で構成されており、インキ層2−2は線幅0.3mm以上で構成されている。インキ層2−1およびインキ層2−2は線幅の範囲が変動してもかまわず、2層に分けることで、細い線から太い線まで表現することが出来るため、スクリーン印刷での表現の幅を広げることが出来る。図2(a)(b)のパターンを重ねて印刷したものを図2(c)に示す。
【0035】
インキ層2−1およびインキ層2−2は透明性のあるインキを使用しているため、線幅の違う加飾層を重ねてあることにより、より立体感のある意匠性の高い情報表示パネルを作製することが出来る。
【0036】
インキ層2−1の上にインキ層2−2を積層することで、細線が重なる部分と重ならない部分が存在し、インキ層2−1、インキ層2−2ともに葉脈模様を使うことによって皮革のような表現を得ることができる。
インキ層を二層積層することで、美しい表現ができる例として、透明マット層の上に透明グロス層を積層することで立体感のある表現をすることができる。また、色インキ層の上にラメ模様のインキ層を積層することで、ラメ模様に色がついたような美しい表現をすることができる。
【0037】
絵柄層3は、上述の加飾層2と同様のインキ、形成方法を用いることができる。
絵柄層3は、半透過性基材1の他方の面上に形成され、インキ層が形成されている箇所と形成されていない箇所が存在している。形成されている箇所は、LED光源4の光を遮光することができる。形成されていない箇所は光を透過することになる。形成されていない箇所の形状を文字および図形等にすることで、光が透過する文字および図形等を表現することができる。
【0038】
本発明では、絵柄層3は、半透過性基材1である発泡ポリプロピレンの他方の面上に、スクリーン印刷用インキ(レイキュアーPP 4900;十条ケミカル株式会社製)を用いてスクリーン印刷で形成した。
【0039】
半透過性基材1の他方側にLED光源4を配置してある。
LED光源4が非点灯の場合、発泡ポリプロピレン上に美しい加飾層2を表現することができるので、美しい模様等が観察することができた。
LED光源4が点灯の場合、光透過性および光拡散性が正確に制御され、文字および図形等が明るく表示されているのが確認できた。
【符号の説明】
【0040】
1・・・半透過性基材
2・・・加飾層
2−1・・・第一のインキ層
2−2・・・第二のインキ層
3・・・絵柄層
4・・・LED光源
5・・・目視方向
6・・・情報表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明度が50%以上95%以下で、膜厚が300μm以上500μm以下である半透過性基材と、
前記半透過性基材の一方の面上に、印刷法によりインキで所定の模様を形成した加飾層と、
前記半透過性基材の他方の面の一部に遮光性を有するインキにより形成された絵柄層と、
を備え、
前記加飾層の前記模様は、二種類以上の印刷版により印刷されたものであることを特徴とする情報表示パネル。
【請求項2】
前記印刷法がスクリーン印刷で行われることを特徴とする請求項1に記載の情報表示パネル。
【請求項3】
前記加飾層において、二種類以上の印刷版により印刷された模様がいずれも同心円形のパターンからなり、前記同心円形のパターンの線幅が、前記二種類以上の印刷版でそれぞれ異なることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の情報表示パネル。
【請求項4】
前記半透過性基材は発泡ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の情報表示パネル。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−250312(P2010−250312A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73201(P2010−73201)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】