説明

情報記憶装置およびナビゲーション装置

【課題】 路面の状態に応じて衝撃防御機能を可変にすることで、高パフォーマンスを維持しながら衝撃耐力も兼ね備えた情報記憶装置、およびこの情報記憶装置を用いたナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】 ナビゲーション装置において、情報記憶手段16が衝撃に対して防御機能が働いた時の位置を現在位置特定手段18で特定して情報記憶手段16へ記憶し、次に同一位置を走行する時には、事前に書き込み中断を行うスレッショルドレベルと磁気ヘッドを磁気ディスク上から外へ退避するスレッショルドレベルを通常よりも低く設定し、情報記憶手段16の衝撃防御機能を強化してデータ破壊を防いだり、防御機能を強化しながら継続してアクセスができ、かつデータ破壊を未然に防止できるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶装置に関し、特に、衝撃防御機能を有する情報記憶装置、およびこの情報記憶装置を用いたナビゲーション装置などに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ナビゲーション装置は、道路データを記録した情報記憶手段を有し、この道路データから現在位置付近の道路データを注出して表示する機能を有する。また、目的地を入力すると現在地から目的地までの経路を検索し、検索された経路に沿って道案内をする機能を有する。これまで、道路データを記憶する情報記憶手段としてはCD−ROMやDVDが主流であったが、近年では大容量、高パフォーマンス、書換可能を特徴とする磁気ディスク装置を用いる製品も製品化されている。近年まで磁気ディスク装置が用いられなかった理由は、車載という環境における衝撃対策が十分でなかったことが挙げられる。
【0003】
磁気ディスク装置では、高記録密度を達成するために、磁気ヘッドは回転する磁気ディスクの表面上を、20〜50nmという極めて磁気ディスク表面と近接した間隔をもって浮上しており、さらにこの浮上量は低下する傾向にある。このような低浮上量で磁気ヘッドが浮上している装置に外部からデータ書き込み中に許容範囲を超える振動が加わると、磁気ヘッドが隣接する記録データに移動してしまい、上書きしてしまうことでデータ破壊をしてしまう。また、許容範囲を超える衝撃が外部から加わると磁気ヘッドと磁気ディスクが衝突し、磁気ディスク面を大きく傷つけ、記録データを破壊することになる。さらに衝撃が強いと磁気ヘッドそのものを損傷させることもある。
【0004】
このような課題を解決するために、ディスク装置では、衝撃検出手段を備えているのが一般的である。データ書き込み中に衝撃検出手段で衝撃が検出された場合には書き込みを中断することで書き込みによる隣接トラック等のデータ破壊を防止し、磁気ヘッドと磁気ディスクが衝突するような大きな衝撃が検出されると磁気ヘッドを磁気ディスク上から外へ退避させることで衝撃による接触を防止している。例えば、特許文献1では振動の激しいことが予想される未舗装道路をナビゲーションで情報を入手し、未舗装道路では磁気ヘッドを磁気ディスク上から外へ退避し、その区間内では予めデータ転送しておいたメモリなどの一時記憶手段からアクセスすることを提案している。
【特許文献1】特開2003−35543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ナビゲーション装置で、路面情報を入手できる機能がない場合には未舗装道路かどうかは判断できない。また、ナビゲーション装置で入手できる場合でも、書き込み中断や磁気ヘッドを磁気ディスク上から外へ退避が必要な悪環境であるとは限らないし、入手した情報が古く、既に舗装されている場合や未舗装道路であっても程度が軽い路面であれば悪環境ではない。また、未舗装道路だけが磁気ディスク装置にとって悪環境ではない。また、メモリなどの一時記憶手段は、未舗装道路区域の長い場合にはユーザの利便性を考えると大きな容量を必要とし、コストが高くなってしまうという課題がある。
【0006】
また、従来の衝撃検出手段による回避方法では、いざ衝撃が加えられたことを検出してから書き込み中断を行っても間に合わずに、書き込みによる隣接トラックなどのデータを破壊したり、磁気ヘッドの退避が遅れ、磁気ヘッドと磁気ディスク面が衝突することで磁気ディスクが傷つき、傷ついた箇所に記録されたデータの破壊や、さらに衝撃が強いものであると磁気ヘッド自身が損傷し、その後に当該磁気ヘッドによるアクセスができなくなってしまう。上記を克服するために、比較的小さな衝撃に対しても書き込み中断や磁気ヘッド退避を行うようにした場合、許容範囲の衝撃に対しても過敏に反応してしまうためパフォーマンスが終始、著しく低下してしまうという課題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、路面の状態に応じて衝撃防御機能を可変にすることで、高パフォーマンスを維持しながら衝撃耐力も兼ね備えた情報記憶装置、およびこの情報記憶装置を用いたナビゲーション装置を提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
本発明は、衝撃を検出する衝撃検出手段、情報を記憶する情報記憶手段、衝撃検出手段で検出された衝撃に基づいて情報記憶手段に記憶された情報を防御する衝撃防御手段を必要に応じて有する情報記憶装置に適用され、以下のような特徴を有するものである。
【0011】
(11)衝撃検出手段で検出された衝撃データを情報記憶手段に学習情報として記憶していき、現時点以降に衝撃が加えられることを学習情報に基づいて予測し、この予測の結果に基づいて衝撃防御手段を制御する制御手段を備えている。
【0012】
(12)衝撃検出手段で所定のスレッショルドレベルを超える衝撃が所定の頻度よりも多く発生した時には衝撃防御手段が働くスレッショルドレベルを下げて、情報記憶手段の防御を強化しながら情報記憶手段へのアクセスを行う制御手段を備えている。
【0013】
(13)許容範囲を超える衝撃が加えられると予想される場合に、使用者の入力に基づいて前記衝撃防御手段を前もって働かせる制御手段を備えている。
【0014】
また、本発明は、衝撃を検出する衝撃検出手段、衝撃情報と道路データならびにユーザデータを記憶する情報記憶手段、現在位置している道路を特定する現在位置特定手段、情報記憶手段からデータを読み出して記憶しておく一時記憶手段、衝撃検出手段で検出された衝撃に基づいて情報記憶手段に記憶された情報を防御する衝撃防御手段を必要に応じて有するナビゲーション装置に適用され、以下のような特徴を有するものである。
【0015】
(21)衝撃検出手段で検出された衝撃が所定のスレッショルドレベルを超えた時の位置データを現在位置特定手段で特定し、当該位置データに対応する位置を次に走行する場合には情報記憶手段へのアクセスを禁止する制御手段を備えている。
【0016】
(22)衝撃検出手段で検出された衝撃が所定のスレッショルドレベルを超えた時の位置データを現在位置特定手段で特定し、当該位置データに対応する位置を次に走行する場合には当該位置に到達する前に必要なデータを前もって一時記憶手段へ転送し、当該位置を走行する場合には情報記憶手段からアクセスせずに一時記憶手段からデータを読み出す制御手段を備えている。
【0017】
(23)衝撃検出手段で検出された衝撃が所定のスレッショルドレベルを超えた時の位置データを現在位置特定手段で特定し、当該位置データに対応する位置を次に走行する場合には衝撃防御手段が働くスレッショルドレベルを下げて、情報記憶手段の防御を強化しながら情報記憶手段へのアクセスを行う制御手段を備えている。
【0018】
(24)情報記憶手段の道路データに含まれている舗装/未舗装を示す道路状態データに基づいて、現在位置特定手段で特定された現在位置が未舗装道路であると判断された場合に、衝撃防御手段が働くスレッショルドレベルを下げて、情報記憶手段の防御を強化しながら情報記憶手段へのアクセスを行う制御手段を備えている。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
本発明によれば、路面の状態に応じて衝撃防御機能を可変にすることで、高パフォーマンスを維持しながら衝撃耐力も兼ね備えた情報記憶装置、およびこの情報記憶装置を用いたナビゲーション装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
(本発明の概念)
本発明の情報記憶装置を用いたナビゲーション装置は、磁気ディスク装置に備わっている衝撃検出手段で検出された衝撃レベルが連続的に書き込み中断となるような衝撃レベルであったり、磁気ディスク面と磁気ヘッドが衝突するような大きな衝撃レベルであった場合には、この衝撃が発生した時の位置データを現在位置特定手段から取り込んで該当位置を道路データベースに記憶する。次に、この衝撃が発生した同一位置を通る時には、書き込み中断を行うスレッショルドレベルと磁気ヘッドを磁気ディスク上から外へ退避するスレッショルドレベルを通常よりも低く設定することで、過去に衝撃が加わった区間では上記の防御機能を強化し、データ破壊を防ぐ。
【0023】
また、過去に衝撃が発生した区間では書き込み中断して磁気ヘッドを退避させ、前もって本区間内を走行するのに必要なデータを一時記憶手段へ転送しておき、該当位置に到達したら、一時記憶手段からアクセスすることで完全にアクセスできない状況を回避する。さらに、ナビゲーションで入手できる未舗装道路に対しても同様に、それぞれの防御手段を行うスレッショルドレベルを下げた状態で走行することで、防御機能を強化しながら継続してアクセスができ、かつデータ破壊を未然に防ぐ。
【0024】
このように、予期している衝撃に対して防御機能を強化しながら継続してアクセスできるようにし、かつデータ破壊を未然に防ぐことができる。これにより、路面の状態に応じて防御機能を可変にすることで、高パフォーマンスを維持しながら衝撃耐力もあるナビゲーション装置を実現できる。
【0025】
(実施の形態)
まず、図1により、本発明の一実施の形態による情報記憶装置を用いたナビゲーション装置の構成および動作の一例を説明する。図1は、本実施の形態による情報記憶装置を用いたナビゲーション装置を示す構成図である。
【0026】
本実施の形態による情報記憶装置を用いたナビゲーション装置1は、CPU2、プログラムメモリ3、ワークメモリ8、道路データベース9、GPS(グローバルポジショニングシステム)11、速度センサ12、入力装置13、ディスプレイ14、ユーザデータベース15などから構成される。プログラムメモリ3には、位置特定プログラム4、道路状態管理プログラム5、アクセス制御プログラム6、表示プログラム7などの各種プログラムが格納されている。道路データベース9およびユーザデータベース15は情報記憶手段16としての機能を有し、また速度センサ12は速度特定手段17としての機能を有する。GPS11は、ナビゲーション装置1の外部の人工衛星10とともに現在位置特定手段18としての機能を有する。
【0027】
本実施の形態のナビゲーション装置1には、ナビゲーションの動作を行うCPU2が搭載されている。このCPU2が実際に行う処理は、プログラムの形でプログラムメモリ3に記憶されている。車両の位置を道路データ上で特定する位置特定プログラム4がある。この位置特定プログラム4は、人工衛星10からの電波をアンテナで受信して位置を計測するGPS11によって車両の絶対位置を検出し、検出された位置が道路データ上のどの位置なのかどうかを特定する。
【0028】
道路データベース9は、物理的には磁気ディスク装置などの情報記憶手段16に記憶されている。この道路データベース9には、実際の道路網を、各道路を短く区切った道路片が連結した形でデータ化され、それぞれの道路片に対して特徴付ける属性データとして、両端の東経北緯座標、道路の名称、道路幅、規制情報、トンネルや橋などの物理的な状況などとともに、実際の道路舗装状態も記憶されている。
【0029】
道路状態管理プログラム5は、位置特定プログラム4により特定された現在位置付近の道路の道路データベース9を参照し、舗装道路であるか未舗装道路であるか、または後述する情報記憶手段16で使用される磁気ディスク装置内の衝撃検出手段31、または外部に備えられた衝撃検出手段でその道路において過去に衝撃が加わった履歴がないかどうかを判断する。
【0030】
アクセス制御プログラム6は、道路状態管理プログラム5により得られた情報を元に情報記憶手段16へCPU2がアクセスする方法について制御する。この時、速度特定手段17である速度センサ12から得られた速度も考慮に入れて制御する。速度が0m/s(停止時)の場合や低速時である時には、道路状態管理プログラム5で未舗装道路であったり、過去に衝撃が検出されたと判断してもCPU2が情報記憶手段16へのアクセスを許可する。アクセス制御プログラム6の動作については図2を元に後述する。
【0031】
その他、CPU2が行う処理は道路データベース9から読み出した道路データを元にユーザに現在位置付近の地図をディスプレイ14に表示するための表示プログラム7がある。また、情報記憶手段16にはユーザデータベース15があり、走行中に聞く音楽データなどのユーザデータが記憶されている。ナビゲーション装置1には上記のプログラムの他にCPU2が処理を行う際にデータの一時記憶場所として用いるワークメモリ8があり、また、ナビゲーション装置1にユーザから指示を入力する入力装置14が接続されている。
【0032】
次に、図2により、本実施の形態のナビゲーション装置において、情報記憶手段として用いられる磁気ディスク装置の構成および動作の一例を説明する。図2は、情報記憶手段として用いられる磁気ディスク装置を示す構成図である。
【0033】
本実施の形態のナビゲーション装置において、情報記憶手段として用いられる磁気ディスク装置は、磁気ディスク20、磁気ヘッド21、アクチュエータ22、SPM(スピンドルモータ)ドライバ23、VCM(ボイスコイルモータ)ドライバ24、マイクロコントローラ25、バッファメモリ26、HDC(ハードディスクコントローラ)27、R/W(リード/ライト)回路28、ヘッドアンプ回路29、サーボ処理回路30、ショックセンサ32、増幅回路33、可変コンパレータ34、SPM35などから構成される。
【0034】
マイクロコントローラ25は制御手段としての機能を持ち、このマイクロコントローラ25には、メモリ上に制御プログラム313などの各種プログラムが格納され、また書き込み中断フラグ311、磁気ヘッド退避フラグ312などの格納領域も設けられている。書き込み中断フラグ311および磁気ヘッド退避フラグ312などは、衝撃防御手段としての機能を有する。ショックセンサ32と増幅回路33と可変コンパレータ34は、衝撃検出手段31としての機能を有する。
【0035】
本実施の形態の磁気ディスク装置において、磁気ディスク20はデータが磁気記録され、この磁気ディスク20へのデータ書き込みおよび磁気ディスク20からのデータ読み出しは磁気ヘッド21により行われる。磁気ディスク20は、表面と裏面の各記録面に対応してそれぞれ設けられている。磁気ディスク20が2枚あれば、磁気ヘッド21は4個設けることが可能である。
【0036】
磁気ディスク20の記録面には、同心円状の多数のトラックが形成されている。各トラックには、磁気ヘッド21の位置決めなどに用いられるサーボ情報が磁気ディスク20の中心から各トラックを渡って放射状に等間隔に配置されており、この情報を位置決めする際に磁気ヘッド21で読み取ることで特定のトラックへシークし、さらにトラックの中心へ磁気ヘッド21を導くことができる。このサーボ情報とサーボ情報の間にはユーザデータを記録する領域がある。
【0037】
磁気ディスク20は、SPM35により高速回転する。このSPM35は、SPMドライバ23から供給される電流により駆動される。アクチュエータ22は、駆動源となるVCM36により駆動されている。このVCM36は、VCMドライバ24から供給される電流により駆動される。これらのSPMドライバ23やVCMドライバ24にそれぞれ供給される電流値はマイクロコントローラ25により決定される。
【0038】
磁気ディスク20の外には、磁気ディスク20が回転していない時に磁気ヘッド21を退避させておくための領域が確保されている。これは、磁気ヘッド21は磁気ディスク20の回転によって生じる風圧により浮上しているため、磁気ディスク20が回転しない時には磁気ヘッド21は磁気ディスク20と接触してしまうのを防ぐためである。
【0039】
磁気ヘッド21は、ヘッドアンプ回路29と接続されている。このヘッドアンプ回路29は、磁気ヘッド21の切り替え、磁気ヘッド21との間の読み出し/書き込み信号の入出力などを行う。ヘッドアンプ回路29は、磁気ヘッド21で読み出したアナログ信号を増幅し、R/W回路28から送られるライトデータを所定の信号へ変換してこれを磁気ヘッド21に送る。
【0040】
R/W回路28は、磁気ヘッド21により磁気ディスク20から読み出されて、ヘッドアンプ回路29で増幅されたアナログ信号を一定の電圧に増幅するAGC(自動利得制御)機能と、このAGC機能により増幅されたリード信号を復号するのに必要な信号処理を行うデコード機能と、磁気ディスク20へのデータ記録に必要な信号処理を行うエンコード機能とを持ち、上記のリード信号からサーボ情報を読み出すことができる。
【0041】
サーボ処理回路30は、R/W回路28から出力されるサーボ情報を取得し、サーボ情報中のシリンダコードをマイクロコントローラ25に送ることで磁気ヘッド21を目的のトラックへシークでき、さらにサーボ情報からバーストデータを抽出し、マイクロコントローラ25へ送ることでトラックの中心に位置決めできる。
【0042】
HDC27は、磁気ディスク装置を利用するCPU2と接続されており、CPU2との間のインターフェース制御機能と、磁気ディスク20との間の内部データ転送を制御する磁気ディスク制御機能と、バッファメモリ26を制御するバッファ制御機能を持つ。バッファメモリ26は、主にCPU2から転送されるライトデータを一時的に格納するためのライトキャッシュと、磁気ディスク20から読み出されてCPU2へ転送するデータを一時的に格納するためのリードキャッシュとして用いられる。
【0043】
衝撃検出手段31は、磁気ディスク装置に加えられる衝撃を検出してマイクロコントローラ25に通知するもので、ショックセンサ32と増幅回路33とスレッショルドレベルを可変にできる可変コンパレータ34を備えている。ショックセンサ32は、圧電素子などが用いられ、磁気ディスク装置に加えられる衝撃を検出してアナログ信号へ変換する。増幅回路33は、ショックセンサ32の出力を増幅する。可変コンパレータ34は、増幅回路33の出力をスレッショルド+Vおよび−Vと比較し、増幅回路33の出力が+Vおよび−Vの範囲を超えている場合(+V以上または−V以下)にはマイクロコントローラ25に通知する。
【0044】
マイクロコントローラ25は、制御プログラム313と当該マイクロコントローラ25のワーク領域などを提供するワークメモリとを内蔵している。ワークメモリには、可変コンパレータ34による衝撃検出に応じて一定期間セットされる書き込み中断フラグ311と磁気ヘッド退避フラグ312がある。書き込み中断フラグ311は書き込み中断を示すフラグであり、磁気ヘッド退避フラグ312は磁気ヘッド21を磁気ディスク20の外へ退避することを示すフラグである。
【0045】
ここで、可変コンパレータ34は2つのスレッショルドレベルを持っており、書き込み中断を実施するレベルと磁気ヘッド21を磁気ディスク20の外へ退避するレベルがあり、それぞれのスレッショルドレベルを超えた時点で可変コンパレータ34は相当するフラグを“1”にする。ここで、それぞれのフラグは1度立てると、解除されても問題ないと推定する時間の間(衝撃が収まる時間)保持される。そして、マイクロコントローラ25は、可変コンパレータ34の衝撃検出結果を常に監視することによって書き込み中断や磁気ヘッド21を磁気ディスク20の外へ退避させることができる。
【0046】
さらに、マイクロコントローラ25は、HDC27を経由してCPU2へ書き込み中断や磁気ヘッド21を磁気ディスク20から退避したことを通知する。ここで、マイクロコントローラ25は、磁気ヘッド21が退避するぐらいの大きな衝撃を検出した場合には即通知するが、書き込み中断の場合にはある時間内で連続して検出された場合にのみ通知するようにした方が良い。
【0047】
CPU2は、位置特定プログラム4で現在位置を特定し、道路データベース9の該当する道路データに書き込み中断やヘッド退避したことを記憶できる。これにより、次に当該位置を走行する時には、アクセス制御プログラム6は道路状態管理プログラム5が過去に衝撃を受けた位置であると判断した場合にはCPU2に対して、ナビゲーションとして案内に必要な当該道路データ、ならびにユーザデータを前もって一時記憶場所のワークメモリ8へ転送しておき、当該位置を走行する時にはワークメモリ8からアクセスするようにし、情報記憶手段16へのアクセスについては書き込み中断し、ヘッド退避を行うようにする。これにより、情報記憶手段16のデータ損傷を未然に防ぐことが可能である。
【0048】
上記では、CPU2が完全に情報記憶手段16へのアクセスを禁止する制御を行う場合を説明したが、当該位置を走行する時も情報記憶手段16へアクセスできるようにするには、CPU2がHDC27を経由してマイクロコントローラ25に対して衝撃検出手段31である可変コンパレータ34の各スレッショルドレベルを通常よりも低く設定するように通知するように制御する。これにより、通常よりも衝撃に対して敏感に書き込み中断やヘッド退避が行われるため、継続的に情報記憶手段16へアクセスを許可しながらも衝撃に対しては防御を強化できる。
【0049】
上記においては、過去に衝撃検出手段31が衝撃を検出した場合の制御方法について説明したが、道路状態管理プログラム5が未舗装道路と判断した場合にも同様に可変コンパレータ34の各スレッショルドレベルを低く設定するように制御する。また、過去に衝撃が加わった位置を次の走行時、ならびに未舗装道路と判断している道路を実際に走行した時に許容範囲内の衝撃であった場合には道路データベース9を良好道路と修正する。これは、道路データベース9に舗装道路と未舗装道路の識別ができる機能がないナビゲーションや道路データベース9が頻繁に更新されない場合には有効である。
【0050】
ここでは、情報記憶手段16として磁気ディスク装置で説明をしたが、衝撃防御を有するすべての情報記憶手段において、道路状態管理プログラム5で過去に衝撃が加わった履歴がある場合や、未舗装道路であると判断した場合に衝撃防御機能を前もって働かせるという本発明は非常に有効である。
【0051】
また、上記のようにナビゲーション機能がある場合には過去に衝撃が加わった位置や未舗装道路であるという位置情報により、前もって該当する場所を通過する時に衝撃防御機能を働かせることができるが、位置情報がない場合には前もって衝撃防御機能を働かせることはできない。その場合には、一定時間内に可変コンパレータ34の各スレショルドレベルを超えた衝撃の回数をカウントすることで衝撃が加えられる頻度を測定し、一定の頻度よりも多く発生した場合には自動的に各スレッショルドレベルを低く設定する。これにより、位置情報がない場合でも前もって衝撃防御機能を働かせることができる。その後に衝撃発生頻度が低下した場合には初期のスレッショルドレベルに戻すことでパフォーマンスがいつまでも低下することを防ぐ。
【0052】
また、前もって衝撃が加えられることをユーザ自身が予想した場合には、入力装置13を使用してCPU2を経由して情報記憶手段16の各スレッショルドレベルを変えても良い。上記同様に、衝撃が加えられる危険性がない使用環境の場合には、入力装置13を使用してCPU2を経由して情報記憶手段16の各スレッショルドレベルを初期値に戻せばよい。
【0053】
以上により、ナビゲーション機能がない場合でも、衝撃防御を有するすべての情報記憶手段に対して使用される環境に応じてユーザが衝撃防御機能が働くように情報記憶手段16を制御したり、情報記憶手段自身が学習機能を備えることで衝撃から身を守ることが可能となる。このようなナビゲーション機能がない情報記憶装置には、例えば磁気ディスク装置を内蔵したノート型パーソナルコンピュータなどがあり、本発明はこのような装置にも広く適用可能である。
【0054】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、衝撃防御機能を有する情報記憶装置、およびこの情報記憶装置を用いたナビゲーション装置、ノート型パーソナルコンピュータなどに適用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態による情報記憶装置を用いたナビゲーション装置を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態のナビゲーション装置において、情報記憶手段として用いられる磁気ディスク装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1…ナビゲーション装置、2…CPU、3…プログラムメモリ、4…位置特定プログラム、5…道路状態管理プログラム、6…アクセス制御プログラム、7…表示プログラム、8…ワークメモリ、9…道路データベース、10…人工衛星、11…GPS、12…速度センサ、13…入力装置、14…ディスプレイ、15…ユーザデータベース、16…情報記憶手段、17…速度特定手段、18…現在位置特定手段、20…磁気ディスク、21…磁気ヘッド、22…アクチュエータ、23…SPMドライバ、24…VCMドライバ、25…マイクロコントローラ、26…バッファメモリ、27…HDC、28…R/W回路、29…ヘッドアンプ回路、30…サーボ処理回路、31…衝撃検出手段、32…ショックセンサ、33…増幅回路、34…可変コンパレータ、35…SPM、36…増幅回路、311…書き込み中断フラグ、312…磁気ヘッド退避フラグ、313…制御プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃を検出する衝撃検出手段と、情報を記憶する情報記憶手段と、前記衝撃検出手段で検出された衝撃に基づいて前記情報記憶手段に記憶された情報を防御する衝撃防御手段とを有し、
前記衝撃検出手段で検出された衝撃データを前記情報記憶手段に学習情報として記憶していき、現時点以降に衝撃が加えられることを前記学習情報に基づいて予測し、この予測の結果に基づいて前記衝撃防御手段を制御する制御手段を備えていることを特徴とする情報記憶装置。
【請求項2】
衝撃を検出する衝撃検出手段と、情報を記憶する情報記憶手段と、前記衝撃検出手段で検出された衝撃に基づいて前記情報記憶手段に記憶された情報を防御する衝撃防御手段とを有し、
前記衝撃検出手段で所定のスレッショルドレベルを超える衝撃が所定の頻度よりも多く発生した時には前記衝撃防御手段が働くスレッショルドレベルを下げて、前記情報記憶手段の防御を強化しながら前記情報記憶手段へのアクセスを行う制御手段を備えていることを特徴とする情報記憶装置。
【請求項3】
情報を記憶する情報記憶手段と、前記情報記憶手段に記憶された情報を防御する衝撃防御手段とを有し、
許容範囲を超える衝撃が加えられると予想される場合に、ユーザの入力に基づいて前記衝撃防御手段を前もって働かせる制御手段を備えていることを特徴とする情報記憶装置。
【請求項4】
衝撃を検出する衝撃検出手段と、衝撃情報と道路データならびにユーザデータを記憶する情報記憶手段と、現在位置している道路を特定する現在位置特定手段とを有し、
前記衝撃検出手段で検出された衝撃が所定のスレッショルドレベルを超えた時の位置データを前記現在位置特定手段で特定し、当該位置データに対応する位置を次に走行する場合には前記情報記憶手段へのアクセスを禁止する制御手段を備えていることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
衝撃を検出する衝撃検出手段と、衝撃情報と道路データならびにユーザデータを記憶する情報記憶手段と、現在位置している道路を特定する現在位置特定手段と、前記情報記憶手段からデータを読み出して記憶しておく一時記憶手段とを有し、
前記衝撃検出手段で検出された衝撃が所定のスレッショルドレベルを超えた時の位置データを前記現在位置特定手段で特定し、当該位置データに対応する位置を次に走行する場合には当該位置に到達する前に必要なデータを前もって前記一時記憶手段へ転送し、当該位置を走行する場合には前記情報記憶手段からアクセスせずに前記一時記憶手段からデータを読み出す制御手段を備えていることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
衝撃を検出する衝撃検出手段と、衝撃情報と道路データならびにユーザデータを記憶する情報記憶手段と、現在位置している道路を特定する現在位置特定手段と、前記衝撃検出手段で検出された衝撃に基づいて前記情報記憶手段に記憶された情報を防御する衝撃防御手段とを有し、
前記衝撃検出手段で検出された衝撃が所定のスレッショルドレベルを超えた時の位置データを前記現在位置特定手段で特定し、当該位置データに対応する位置を次に走行する場合には前記衝撃防御手段が働くスレッショルドレベルを下げて、前記情報記憶手段の防御を強化しながら前記情報記憶手段へのアクセスを行う制御手段を備えていることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
道路データを記憶する情報記憶手段と、現在位置している道路を特定する現在位置特定手段と、前記衝撃検出手段で検出された衝撃に基づいて前記情報記憶手段に記憶された情報を防御する衝撃防御手段とを有し、
前記情報記憶手段の前記道路データに含まれている舗装/未舗装を示す道路状態データに基づいて、前記現在位置特定手段で特定された現在位置が未舗装道路であると判断された場合に、前記衝撃防御手段が働くスレッショルドレベルを下げて、前記情報記憶手段の防御を強化しながら前記情報記憶手段へのアクセスを行う制御手段を備えていることを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−190390(P2006−190390A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1319(P2005−1319)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】