説明

情報記録媒体およびその記録装置、記録方法、記録プログラム

【課題】 Discに記録したデータを恒久的に確実に保存する方法が存在せず、ユーザや機器の不慮の操作によって本来は恒久的にDiscに記録しておきたかったデータが削除される危険性がある。
【解決手段】 上記の課題を解決するため、本発明では特定のデータをファイナライズやDiscの初期化に依らず、また機器やOSによらず修正不可能な状態で光Discにデータを記録可能であることを特徴とし、例えば、前記削除や更新ができないデータはファイルシステム情報として設定されたり、前記削除や更新ができないデータは通常のファイル操作、装置では書込不能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画や音声などのAV(Audio Visual)コンテンツやプログラムなどのデータを記録可能な情報記録媒体、その記録装置及び記録方法に関し、特に書込可能な情報記録媒体において修正不能な状態でデータを記録可能な情報記録媒体およびその記録装置、記録方法、記録プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
映像データを記録した情報記録媒体の代表格は、DVD(Digital Versatile Disc。以下、単にDVDと称する)である。
【0003】
図1は、DVDの構造を示した図である。図1の下段に示すように、DVDディスク上にはリードインからリードアウトまでの間に論理アドレス空間が設けられ、論理アドレス空間の先頭からファイルシステムのボリューム情報が記録され、続いて映像音声などのアプリケーションデータが記録されている。
【0004】
ファイルシステムとは、ISO9660やUDF(Universal Disc Format)のことであり、ディスク上のデータをディレクトリまたはファイルと呼ばれる単位で表現する仕組みである。日常使っているPC(パーソナルコンピュータ)の場合でも、FATまたはNTFSと呼ばれるファイルシステムを通すことにより、ディレクトリやファイルという構造でハードディスクに記録されたデータがコンピュータ上で表現され、ユーザビリティを高めている。 DVDの場合、UDF及びISO9660両方を使用しており(両方を合わせて「UDFブリッジ」と呼ぶ事がある)、UDFまたはISO9660どちらのファイルシステムドライバによってもデータの読み出し(ここで取り扱うDVDはパッケージメディア用のROMディスクであり、物理的に書き込みが不可能である)ができるようになっている。
【0005】
DVD上に記録されたデータは、UDFを通して、図1左上に示すようなディレクトリまたはファイルとして見ることができる。ルートディレクトリ(図中「ROOT」)の直下に「VIDEO_TS」と呼ばれるディレクトリが置かれ、ここにDVDのアプリケーションデータが記録されている。アプリケーションデータは、複数のファイルとして記録され、主なファイルとして以下のものがある。
【0006】
VIDEO_TS.IFO ディスク再生制御情報ファイル
VTS_01_0.IFO ビデオタイトルセット#1再生制御情報ファイル
VTS_01_0.VOB ビデオタイトルセット#1ストリームファイル
【0007】
拡張子として2つの種類が存在する。「IFO」は再生制御情報が記録されたファイルであって、「VOB」はAVデータであるMPEGストリームが記録されたファイルである。再生制御情報とは、DVDで採用されたインタラクティビティ(ユーザの操作に応じて再生を動的に変化させる技術)を実現するための情報や、メタデータのようなタイトルやAVストリームに付属する情報などのことである。また、DVDでは一般的に再生制御情報のことをナビゲーション情報と呼ぶことがある。
【0008】
再生制御情報ファイルは、ディスク全体を管理する「VIDEO_TS.IFO」と、個々のビデオタイトルセット(DVDでは複数のタイトル、言い換えれば異なる映画や異なるバージョンの映画を1枚のディスクに記録することが可能である。)毎の再生制御情報である「VTS_01_0.IFO」がある。ここで、ファイル名ボディにある「01」はビデオタイトルセットの番号を示しており、例えば、ビデオタイトルセット#2の場合は、「VTS_02_0.IFO」となる。
【0009】
図1の右上部は、DVDのアプリケーション層でのDVDナビゲーション空間であり、前述した再生制御情報が展開された論理構造空間である。「VIDEO_TS.IFO」内の情報は、VMGI(VIDEO Manager Information)として、「VTS_01_0.IFO」または、他のビデオタイトルセット毎に存在する再生制御情報はVTSI(Video Title Set Information)としてDVDナビゲーション空間に展開される。
【0010】
VTSIの中にはPGC(Program Chain)と呼ばれる再生シーケンスの情報であるPGCI(Program Chain Information)が記述されている。PGCIは、Cellの集合とコマンドと呼ばれる一種のプログラミング情報によって構成されている。Cell自身はVOB(Video Objectの略であり、MPEGストリームを指す)の一部区間または全部区間の集合であり、Cellの再生は、当該VOBのCellによって指定された区間を再生することを意味している。
【0011】
コマンドは、DVDの仮想マシンによって処理されるものであり、ブラウザ上で実行されるJava(登録商標)スクリプトなどに近いものである。しかしながらJava(登録商標)スクリプトが論理演算の他にウィンドウやブラウザの制御(例えば、新しいブラウザのウィンドを開くなど)を行うのに対して、DVDのコマンドは、論理演算の他にAVタイトルの再生制御、例えば、再生するチャプタの指定などを実行するだけのものである点で異なっている。
【0012】
Cellはディスク上に記録されているVOBの開始及び終了アドレス(論理アドレス)をその内部情報として有しており、プレーヤは、Cellに記述されたVOBの開始及び終了アドレス情報を使ってデータの読み出し、再生を実行する。
【0013】
図1はAVストリーム中に埋め込まれているナビゲーション情報を説明する概略図である。DVDの特長であるインタラクティビティは前述した「VIDEO_TS.IFO」や「VTS_01_0.IFO」などに記録されているナビゲーション情報だけによって実現されているのではなく、幾つかの重要な情報はナビゲーション・パック(ナビパックまたは、NV_PCKと称する)と呼ばれる専用キャリアを使いVOB内に映像、音声データと一緒に多重化されている。
【0014】
以上DVDの構造としてファイルシステムを用いて記録されたアプリケーションデータの構成と各々のアプリケーションデータによるDVDアプリケーションの概要について説明したが、かかるDVDの構成は、以下の特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特許第2813245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところでDVD-R/RW/RAMやDVD+R/RW,BD-R/REなどの書込可能な光Discもファイルシステムとして前述したUDF(Universal Disc Format)を用いているが、Discへの新規データ(ファイル)書込や削除や更新などの既存データの修正操作を自由に行える状態で、特定のデータのみどの機器に挿入しても一切修正操作を行えない状態に設定することは出来なかった。例えばDVD-R/RWやDVD+R/RWなどでファイナライズを行った場合であっても、特定のデータのみではなく全てのデータが修正不可能で、新規データの書込も不可能な状態となり、またファイナライズの解除により再度どのファイルも修正可能になったり、Disc初期化(イニシャライズ)により全てのデータが削除される。
【0016】
上記の理由により、恒久的に確実にデータを保存する方法が存在せず、ユーザや機器の不慮の操作によって本来は恒久的にDiscに記録しておきたかったデータが削除される危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するため、本発明では特定のデータをファイナライズやDiscの初期化に依らず、また機器やOSによらず修正不可能な状態で光Discにデータを記録可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ユーザには恒久的に確実にデータを保存する方法が提供され、また書き換え可能なDiscにキャラクタのおまけデータなど特殊なプログラムを恒久的に使える状態で記録して販売するといった新たなビジネスを展開することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態1)
まず、図2、図3を用いてUDFなどの既存のファイルシステムを用いてDVD-R/RW/RAM、DVD+R/RWにデータを書き込んだ場合のDisc上のデータ配置と、データの状況について説明する。
【0020】
まず、ファイナライズが行われていない状態におけるDVD-+R/RW及びDVD-RAMにおけるデータ配置について図2を用いて説明する。
【0021】
図2に示すように、例えばDiscの内周などに存在するファイルシステム情報領域には、Disc上に記録された各々のデータのエントリが存在し、各エントリ毎に当該データのファイル名と、当該データが存在する領域のセクタアドレス、当該データのディレクトリツリー情報とが記録される。
【0022】
例えば図2で示すDiscには、例としてファイルシステム上にXXXXX.jarとYYYYY.m2tsの二つのファイルが存在する。XXXXX.jarはDisc上には0x0002番目のセクタから0x0050番目のセクタに記録されているが、ファイルシステムが管理するディレクトリツリー上ではDisc上の記録位置とは関係なく/BDMV/JAR/ディレクトリ以下に配置される。YYYYY.m2tsはDisc上には0x0200番目のセクタから0x0300番目のセクタに記録されているが、ファイルシステムが管理するディレクトリツリー上ではDisc上の記録位置とは関係なく/BDMV/STREAM/ディレクトリ以下に配置される。
【0023】
ファイルシステムに記録されるのは主に上記の情報であり、それぞれのファイルシステムの用途に応じて追加の情報が記録される。例えばPCで用いられるWindows(登録商標) NT系用のファイルシステムであるNTFSではさらに、ユーザアカウント毎のアクセス権限情報や、ファイルレベルでの暗号化情報などを持つ。しかしながら各ファイル毎の修正禁止情報はなく、例えばDisc情報ファイルを修正した場合は、修正によって生じたDisc上の記録位置の変化を前記ファイルシステム情報領域のセクタアドレスに反映させる。またファイルを削除する場合は、前記ファイルシステム情報領域上の該当するエントリを削除する。また、Discに新規データを書き込んだ場合は、前記ファイルシステム情報領域に当該データのエントリを新規追加する。
【0024】
一方、ファイナライズ状態のDVD-+R/RWにおけるデータ配置を図3に示すが、基本的にファイルシステム情報領域の持つ情報は図2に説明した内容と同じである。
【0025】
しかしながらファイナライズが行われているため、Disc上の全てのファイルについて修正や削除は行えず、新規データの書込も行えない。このようにユーザが修正を禁止したい一部のファイルのみ修正を禁止することは既存のファイルシステムでは行うことが出来ない。
【0026】
従って本発明におけるファイルシステムではこの点を改良し、ファイルシステムにファイルの修正可否を制御するためのフラグを新たに設ける。
【0027】
詳細について図4を用いて説明する。
図4に示すように、本発明におけるファイルシステムでは、Disc上に記録されたデータの各エントリについて、従来と同様の情報であるファイル名、セクタアドレス、ディレクトリツリー情報に加え、新たに当該ファイルが修正可能状態か、禁止状態かが設定されるファイル状態フラグを持つ。図4では、ファイルYYYYY.m2tsには修正可能状態フラグ(前記ファイル状態フラグに修正可能状態が設定された状態)が設定されているため、YYYYY.m2tsの更新や削除は従来通り実施することができる。一方、ファイルXXXXX.jarには修正禁止状態フラグ(前記ファイル状態フラグに修正禁止状態が設定された状態)が設定されているため、XXXXX.jarに大して更新や削除を行うことはできない。
【0028】
以上のように本発明に従ってUDFなどの既存のファイルシステムを拡張することで、削除や更新を禁止したい大切なデータに対して本フラグとして修正禁止状態を設定することにより、ユーザや機器の不慮の操作による当該ファイルの削除や更新を防ぐことが出来る。本フラグは各ファイル単位で設定可能であり、Discへの新規データの書込は従来通り可能であり、修正可能状態フラグの設定されたDisc上のデータに対する削除や更新も従来通り行うことが出来る。また修正禁止状態フラグが設定されたファイルはDiscの初期化(イニシャライズ)を行ったとしてもデータ削除されないものとする。
【0029】
なお、本実施の形態では、前記ファイル状態フラグをファイルシステムに持たせたが、OSやファイルシステムが参照可能な状態で、前述したリードイン領域や、リードイン領域よりもさらにDiscの内側に存在するDisc Information領域に削除を禁止したいデータに関する情報を持たせても良い。
【0030】
また、前記ファイル状態フラグは、通常のファイル操作や装置では設定できず常に修正可能状態として設定され、修正禁止状態への設定はメディア製造会社などのみが専用のOSや装置を用いて設定出来るものとしても良い。これにより、例えばメディア製造会社が、書き換え可能なDiscにキャラクタのおまけデータなど特殊なプログラムを恒久的に使える状態で記録して販売するといった新たなビジネスを展開することも可能となる。なお、既存ファイルシステムの拡張が困難で有れば、例えばROM DiscとR/RW DiscのハイブリッドDiscを用い、ROM領域に修正を禁止したいデータを記録した上で、Discを販売する方法でも良い。また、ユーザアカウント毎のアクセス権限情報を設定可能なファイルシステムにおいて、修正を禁止したいデータの所有権を通常のOSでは設定出来ないユーザアカウントに設定し、全ユーザに対してファイルの読み出しと実行は許可するが、書込を禁止するという権限情報を設定する方法でも良い。
【0031】
(実施の形態2)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0032】
本実施の形態は、本発明の第1の実施の形態で説明した修正を禁止する設定を行ったデータの記録方法に関する。基本的には第1の実施の形態に基づく内容であり、拡張または異なる部分を中心に説明する。
【0033】
図5(A)に示す修正禁止ファイルBのように、修正禁止状態のデータがDiscの任意の場所に固定的に点在する場合、Discにデータサイズの大きいデータを新規書込する場合に、フラグメントが発生し、修正可能ファイルAのように、修正禁止ファイルBを跨って前半部分と後半部分の二つに分離して書き込む必要が生じる。この場合、新規書込を行う際に空き領域をサーチする時間が余分に掛かり、またDiscから読み出す際も、ファイルAの前半部分を読み込んだ後、別の位置に記録されたファイルAの後半部分をサーチして読み込むためヘッドシークが発生してしまう。
【0034】
従って、本発明における修正禁止状態フラグを設定したデータはDiscの特定の部分にまとめて配置するものとする。例えば図5の(B)に示すように、Discの内周部分に固定的に配置しても良い。
【0035】
なお、述べるまでも無いことだが、内周以外に配置してもよい。
【0036】
DVD-RW/RAM、BD-REなどの複数回書き換え可能なDiscは同一セクタへの書き換え可能上限回数が決まっている。一方、前述した修正禁止状態フラグが立てられたデータは一度記録されるとそのままそのセクタを占有する。したがって、ユーザが新規に修正禁止状態フラグを設定してデータを書き込んむ際は、書き換え可能上限回数に迫ったセクタに優先的に記録するようにしても良い。
【0037】
また、前記修正禁止状態フラグを設定したデータの記録位置を固定せず、通常のデータと同じくDiscの各セクタの書き換え回数を均一に保つためにループ記録を行っても良い。例えばDiscの内周から順次書込を行っていき、最外周まで記録した場合は再び内周から記録しても良い。
【0038】
また、既に記録されているファイルにユーザが修正禁止状態フラグを設定する場合、ファイルを書き換え可能上限回数に迫ったセクタに移動させた上で前記ファイル状態フラグを修正禁止状態に設定しても良い。またOS操作やユーザ指示に応じて、修正禁止状態フラグが設定されたファイルを自動的に書き換え可能上限回数に迫っているセクタにファイル移動させても良い
【0039】
(実施の形態3)
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0040】
本実施の形態は、本発明の第1の実施の形態で説明した修正を禁止する設定を行ったデータの内容に関する。基本的には第1の実施の形態及び第2の実施の形態に基づく内容であり、拡張または異なる部分を中心に説明する。
【0041】
本発明の具体的な内容を説明する前に、BD-ROMにおける映像コンテンツの記録方法の概要について説明する。
【0042】
図6は、上述したBD-ROM Discに記録されている論理データを示した図である。BD-ROM Discは、他の光ディスク、例えばDVDやCDなどと同様にその内周から外周に向けてらせん状に記録領域を持ち、内周のリード・インと外周のリード・アウトの間に論理データを記録できる論理アドレス空間を有している。また、リード・インの内側にはBCA(Burst Cutting Area。前述のDVDにおけるDisc Information領域と同様の領域)と呼ばれるドライブでしか読み出せない特別な領域がある。この領域はアプリケーションから読み出せないため、例えば著作権保護技術などに利用されることがよくある。
【0043】
論理アドレス空間には、ファイルシステム情報(ボリューム)を先頭に映像データなどのアプリケーションデータが記録されている。ファイルシステムとは従来技術で説明した通り、UDFやISO9660などのことであり、通常のPCと同じように記録されている論理データをディレクトリ、ファイル構造を使って読み出しする事が可能になっている。
【0044】
本実施の形態の場合、BDディスク上のディレクトリ、ファイル構造は、ルートディレクトリ(ROOT)直下にBDMVディレクトリが置かれている。このディレクトリはBD-ROMで扱うAVコンテンツや管理情報などのデータが記録されているディレクトリである。
【0045】
BDMVディレクトリの下には、例として次の6種類のファイルが記録されている。
【0046】
BD.INFO(ファイル名固定)
「BD管理情報」の一つであり、BDディスク全体に関する情報を記録したファイルである。BDプレーヤは最初にこのファイルを読み出す。
BD.PROG(ファイル名固定)
「BD再生プログラム」の一つであり、DVD-Videoと同様にストリーム埋め込み型のナビゲーションデータと共に、BDディスクの再生制御を行うプログラムを記録したファイルである。
XXX.PL(「XXX」は可変、拡張子「PL」は固定)
「BD管理情報」の一つであり、シナリオを記録するプレイリスト(Play List)情報を記録したファイルである。プレイリスト毎に1つのファイルを持っている。
YYY.m2ts(「YYY」は可変、拡張子「m2ts」は固定)
「AVデータ」の一つであり、Mpeg TS形式のAVストリームを記録したファイルである。
YYY.CI(「YYY」は可変、拡張子「CI」は固定)
「BD管理情報」の一つであり、AVデータであるm2tsに関わる管理情報を記録したファイルである。m2tsとの対応はファイルボディ名(「YYY」が一致する)によって識別される。
ZZZ.jar(「ZZZ」は可変、拡張子「jar」は固定)
Java(登録商標)によって記述されたBD再生制御プログラム。
【0047】
ここで、Java(登録商標)によるBD再生制御プログラムとBD.PROGとストリーム埋め込み型のナビゲーションデータとによるBD再生制御プログラムとの違いについて述べる。
【0048】
Java(登録商標)によるBD再生制御プログラムは高度なアプリケーションを提供可能であるが、組込機器が動的に生成したりユーザが任意に作成するのは難しい。一方、BD.PROGとストリーム埋め込み型のナビゲーションデータとによるBD再生制御プログラムはJava(登録商標)によるBD再生制御プログラムに比べアプリケーションが実施出来る範囲は限定されるが、組込機器でも容易に作成出来るという利点がある。なお、プレイリストに記録されたシナリオ(タイトル)がどちらのBD再生制御プログラムを用いるかについては、BD.INFOにて設定される。
【0049】
以上、BD-ROMにおける映像コンテンツの記録方法の概要について説明したが、本発明では修正禁止状態フラグを設定するデータの内容としては、メディアに予め記憶しておくプログラムであるとする。特にDVDやBDにおける再生ナビゲーションを提供する再生制御プログラムである場合、放送映像を記録可能なレコーダなどの機器において録画した映像を、前記プログラムにて再生制御することも可能であり、レコーダなどの機器では記録が難しいインタラクティブ性に富んだ再生メニューから録画コンテンツを楽しむことも可能である。BD再生制御プログラムによる再生メニューの例を図7に示す。図7に示した再生メニュー700は録画したAVコンテンツを2行3列の6カラムで一覧表示するメニューであるが、例えばBD.PROGとストリーム埋め込み型のナビゲーションデータとによるBD再生制御プログラムであれば、各タイトルのサムネイル701が各々静止画にて表示されるが、Java(登録商標)によるBD再生制御プログラムであれば選択されたタイトルのサムネイルのみ動画とすることも可能である。
【0050】
BD-ROM形式で記録するBDレコーダにおいて、通常のDiscに放送を録画した場合、前述した様にBD.PROGとストリーム埋め込み型のナビゲーションデータとによるBD再生制御プログラムであればBDレコーダでもDiscに記録可能である。
【0051】
しかし、予めDiscにJava(登録商標)によるBD再生制御プログラムを修正禁止状態フラグを設定した上で記録し、それを販売することでユーザはよりインタラクティブ性に富んだ再生メニューから録画コンテンツを楽しむことが出来る。特に映画などのキャラクタを用いたメニューを記録しておくことで、Discにより付加価値を持たせることが出来る。
【0052】
また、前記Java(登録商標)によるBD再生制御プログラムは修正禁止状態であるため、ユーザが操作を誤って削除してしまうことが無く、また録画データを一括削除するためにDiscのイニシャライズを行ったとしても当該BD再生制御プログラムは削除されず、再度録画した場合でも同様の再生メニューが表示される。
【0053】
(実施の形態4)
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0054】
本実施の形態は、本発明の第3の実施の形態で説明した再生制御プログラムが信頼出来る正規のプログラムであるのか否かを判別する方法に関する。基本的には第1の実施の形態及び第2の実施の形態及び第3の実施の形態に基づく内容であり、拡張または異なる部分を中心に説明する。
【0055】
第3の実施の形態で、書き換え可能なDisc メディアに予め再生プログラムを記録しておく手法について説明したが、第1の実施の形態で説明したファイルシステムでは、前記再生プログラムがメディア製造会社が記録した正規のものであるのか、またレコーダが対応しているプログラムなのかどうかを判別することが出来ない。
【0056】
従って本発明では、ファイルシステム情報に、前述したファイル名、セクタアドレス、ファイル状態フラグ、ディレクトリツリー情報に加え、図8に示すように、新規に認証情報を持たせる。この認証情報は、単にメディア製造会社が作成したことを示すフラグであっても良いし、当該データの署名情報であっても良い。なお、署名情報である場合、当該署名を検証するための公開鍵は前述したBCAやDisc Information領域などに記録されるものとする。
【0057】
また、映像を録画するレコーダーやムービーなどの録画機器は、Discに再生制御プログラムがあることを確認すると、前記認証情報を検証し当該プログラムが正規のもので有れば前記修正禁止フラグを設定され予めDiscに記録された再生制御プログラムを再生メニューとして使用するよう前述したBD.INFOを設定するものとする。一方でDiscに再生制御プログラムが存在しなかったり、前記認証情報の検証に失敗した場合は、れーコーダーやムービーなどの録画機器が独自に作成する再生制御プログラムを使用するようBD.INFOを設定する。
【0058】
なお、本発明では前記Java(登録商標)による再生制御プログラムは予めDiscに記録されることを例としてあげたが、例えばSDカードなどのメモリカード経由やネットワーク経由で録画機器に取り込み、前記修正禁止状態フラグを設定してDiscに書き込む方法でも良い。
【0059】
また、前記再生制御プログラムは複数存在し、ユーザの嗜好に応じて複数の再生メニューから選択可能としても良い。
【0060】
また、前記再生制御プログラムは録画機器の自動判別、またはユーザの指定により録画した映像の録画日時に応じて、その季節に応じたメニューを採用しても良い。
【0061】
以上、本発明に基づく、第一から第四の実施の形態について説明したが、本発明は、Disc初期化やファイル操作によって更新や削除されないように設定してデータを書込可能な情報記録媒体と、それを記録する記録装置、記録方法、記録プログラム、並びに本発明の方法を実現する半導体に適用される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、再生メニューを容易に追加、編集可能な映像記録用のフォーマットを次世代記録媒体に記録可能であり、特に、映像コンテンツの制作に携わる映画産業・民生機器産業において利用される可能性をもつ。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】DVDの構成図である。
【図2】ファイナライズされていないDVD-+R/RW及びDVD-RAMにおける既存ファイルシステムによるデータ配置を示した図である。
【図3】ファイナライズされたDVD-+R/RWにおける既存ファイルシステムによるデータ配置を示した図である。
【図4】ファイナライズされていないDVD-+R/RW及びDVD-RAMにおける本発明のファイルシステムによるデータ配置を示した図である。
【図5】修正禁止状態フラグが設定されたデータの配置例を示した図である。
【図6】BD−ROM上の論理空間の構成図である。
【図7】再生メニューの例を示した図である。
【図8】図5に加え、当該データの認証情報を設定した場合の配置例を示した図である。
【符号の説明】
【0064】
700 再生メニュー
701 各タイトルのサムネイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記録可能な情報記録媒体であって、
情報記録媒体の初期化やユーザ操作では削除や更新ができない状態でデータを書込可能である
ことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記削除や更新ができないデータはファイルシステム情報として設定される
ことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記削除や更新ができないデータは通常のファイル操作、装置では書込不能である
ことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記削除や更新ができないデータはDiscの特定の位置にまとめて配置される
ことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記情報記録媒体は書込可能上限回数が決まっており、
前記削除や更新ができないデータは前記書込可能上限回数に近い領域に優先的に書き込まれる
ことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記削除や更新ができないデータは動画再生用のメニュープログラムである
ことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記情報記録媒体にはさらに
前記削除や更新ができないデータが信頼できるものであることを示す認証情報がファイルシステム情報領域または情報記録媒体の内周に存在するDisc情報領域に記録される
ことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項8】
情報記録媒体にデータを記録する記録装置であって、
情報記録媒体の初期化やユーザ操作では削除や更新ができない状態でデータを書き込む修正不能データ書込部
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
前記修正不能データ書込部は、書き込むデータが信頼できるものであることを示す認証情報をファイルシステム情報領域または情報記録媒体の内周に存在するDisc情報領域に記録する認証情報記録部を内部的に有することを特徴とする請求項8記載の記録装置。
【請求項10】
情報記録媒体に映像を記録する映像記録装置であって、
映像をタイトルとしてデジタルストリームに記録する映像記録部と、
前記情報記録媒体に前記タイトルを再生するための再生メニュープログラムが存在するか否かを判別する再生メニュー有無確認部と、
前記再生メニュー有無確認部にて前記情報記録媒体に再生メニューが存在しない場合、前記情報記録媒体に記録されているタイトルを再生するための再生メニューを作成する再生メニュー作成部と、
前記再生メニュー有無確認部にて前記情報記録媒体に再生メニューが存在した場合は当該再生メニューにてタイトルを再生するように設定し、前記情報記録媒体に再生メニューが存在しなかった場合は前記再生メニュー作成部にて作成した再生メニューにてタイトルを再生するようにDiscに設定する再生メニュー設定部と
を備えることを特徴とする映像記録装置。
【請求項11】
前記再生メニュー有無確認部で存在を判定する再生メニューは、
情報記録媒体の初期化やユーザ操作では削除や更新ができない状態で当該情報記録媒体に記録されている
ことを特徴とする請求項10記載の映像記録装置。
【請求項12】
前記情報記録媒体には、
前記削除や更新ができない状態で記録された再生メニューは信頼できるものであることを示す認証情報がさらに記録され、
前記再生メニュー有無確認部は再生メニューの有無に加え、
前記認証情報の妥当性を検証した上で前記再生メニュープログラムが存在すると判断する
ことを特徴とする請求項10記載の映像記録装置。
【請求項13】
情報記録媒体にデータを記録する記録方法であって、
情報記録媒体の初期化やユーザ操作では削除や更新ができない状態でデータを書き込む修正不能データ書込ステップと
を含むことを特徴とする記録方法。
【請求項14】
前記修正不能データ書込ステップは、書き込むデータが信頼できるものであることを示す認証情報をファイルシステム情報領域または情報記録媒体の内周に存在するDisc情報領域に記録する認証情報記録ステップを内部的に実行する
ことを特徴とする請求項13記載の記録方法。
【請求項15】
情報記録媒体に映像を記録する映像記録方法であって、
映像をタイトルとしてデジタルストリームに記録する映像記録ステップと、
前記情報記録媒体に前記タイトルを再生するための再生メニュープログラムが存在するか否かを判別する再生メニュー有無確認ステップと、
前記再生メニュー有無確認ステップにて前記情報記録媒体に再生メニューが存在しない場合、前記情報記録媒体に記録されているタイトルを再生するための再生メニューを作成する再生メニュー作成ステップと、
前記再生メニュー有無確認ステップにて前記情報記録媒体に再生メニューが存在した場合は当該再生メニューにてタイトルを再生するように設定し、前記情報記録媒体に再生メニューが存在しなかった場合は前記再生メニュー作成ステップにて作成した再生メニューにてタイトルを再生するようにDiscに設定する再生メニュー設定ステップと
を含むことを特徴とする映像記録方法。
【請求項16】
前記再生メニュー有無確認ステップで存在を判定する再生メニューは、
情報記録媒体の初期化やユーザ操作では削除や更新ができない状態で当該情報記録媒体に記録されている
ことを特徴とする請求項15記載の映像記録方法。
【請求項17】
前記情報記録媒体には、
前記削除や更新ができない状態で記録された再生メニューは信頼できるものであることを示す認証情報がさらに記録され、
前記再生メニュー有無確認ステップは再生メニューの有無に加え、
前記認証情報の妥当性を検証した上で前記再生メニュープログラムが存在すると判断する
ことを特徴とする請求項15記載の映像記録方法。
【請求項18】
情報記録媒体にデータを記録する記録プログラムであって、
情報記録媒体の初期化やユーザ操作では削除や更新ができない状態でデータを書き込む修正不能データ書込ステップ
をコンピュータに実行させることを特徴とする記録プログラム。
【請求項19】
前記修正不能データ書込ステップは、書き込むデータが信頼できるものであることを示す認証情報をファイルシステム情報領域または情報記録媒体の内周に存在するDisc情報領域に記録する認証情報記録ステップを内部的に実行する
ことを特徴とする請求項18記載の記録プログラム。
【請求項20】
情報記録媒体に映像を記録する映像記録プログラムであって、
映像をタイトルとしてデジタルストリームに記録する映像記録ステップと、
前記情報記録媒体に前記タイトルを再生するための再生メニュープログラムが存在するか否かを判別する再生メニュー有無確認ステップと、
前記再生メニュー有無確認ステップにて前記情報記録媒体に再生メニューが存在しない場合、前記情報記録媒体に記録されているタイトルを再生するための再生メニューを作成する再生メニュー作成ステップと、
前記再生メニュー有無確認ステップにて前記情報記録媒体に再生メニューが存在した場合は当該再生メニューにてタイトルを再生するように設定し、前記情報記録媒体に再生メニューが存在しなかった場合は前記再生メニュー作成ステップにて作成した再生メニューにてタイトルを再生するようにDiscに設定する再生メニュー設定ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする映像記録方法。
【請求項21】
前記再生メニュー有無確認ステップで存在を判定する再生メニューは、
情報記録媒体の初期化やユーザ操作では削除や更新ができない状態で当該情報記録媒体に記録されている
ことを特徴とする請求項20記載の映像記録プログラム。
【請求項22】
前記情報記録媒体には、
前記削除や更新ができない状態で記録された再生メニューは信頼できるものであることを示す認証情報がさらに記録され、
前記再生メニュー有無確認ステップは再生メニューの有無に加え、
前記認証情報の妥当性を検証した上で前記再生メニュープログラムが存在すると判断する
ことを特徴とする請求項20記載の映像記録プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−73155(P2007−73155A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261118(P2005−261118)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】