説明

情報記録媒体及び信号再生時の再生パワー決定方法

【課題】 再生レーザ照射によって、媒体内に発生する熱を利用して光学分解能以下のサイズのピットを読み出す超解像光ディスクにおいて、照射するレーザのスポット内の低温領域からの反射光の変動が再生信号を劣化させ、実用に適したエラー率bER≦10-5を達成できない。
【解決手段】 光ディスク媒体のbER又は/及び所定の信号パターンの再生信号振幅に基づいて超解像の起こる再生パワーを決定し、超解像が起こる状態で再生した場合の高温領域から得られる信号をSR、超解像が起こらない状態で再生した場合の信号の振幅をNRとしたときに、NR/SRが少なくとも1以下となる光ディスク媒体を用いる。
【発明の効果】
本発明によれば、サイズが光学分解能以下のピットを再生することが可能で、実用に適したエラー率を与える光ディスク媒体、及びその光ディスク媒体の再生パワーの決定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体、特に光ディスク媒体及び信号再生時の再生パワー決定方法に関し、特に、超解像技術を適用した場合の再生信号のエラー率が、実用の範囲内となる光ディスク媒体及び信号再生時の再生パワー決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記録媒体として、光ディスクが広く普及している。光ディスクに関する技術では、レーザ光をレンズで集光し、ディスクに記録されたデータの再生及びディスクへのデータの記録を行っている。光ディスクに関する技術では、現在までに光ディスクの大容量化が進められ、直径12cmのディスクにCDでは650MB、DVDでは4.7GB、HD-DVDでは20GB、Blu-rayディスクでは25GBの面密度を実現し、商品化されている。この大容量化は、主にレーザの光源波長λを780nmから405nmへと短くし、レンズの開口数NAを0.5から0.85へと大きくすることで実現してきた。
【0003】
更なる大容量化のためには、光源波長をさらに短くし、レンズ開口数を大きくする方法が考えられる。しかし、波長をさらに短くする場合、その波長は紫外光となるためディスク基板や保護膜が光を吸収するようになり、良好な記録再生品質を確保することが困難となることが予想される。レンズ開口数を大きくする場合でも、記録再生に用いられるレーザ光は近接場光となる。この近接場光は非常に短い距離しか伝播しないことから、レンズと媒体間の距離が非常に近いことが必要となる。この構成は、ハードディスクに酷似した構成であるため、光ディスクの特徴である媒体可換が困難と予想される。
【0004】
これらとは異なる方法で高密度化を実現する方法の一つとして、超解像技術が提案されている。超解像技術では、光ディスクの媒体に何らかの機構を設けることで、サイズが光学分解能以下のピットの再生を可能とする。
【0005】
例えば非特許文献1には、相変化膜を用いた超解像技術が報告されている。通常、相変化膜はCD−RW, DVD−RAM, DVD±RW, Blu−ray Discなどの記録型光ディスクの記録膜として用いられる膜であり、照射するレーザの熱により結晶/融解/非晶質と変化する材料である。非特許文献1に開示された方法では、再生専用(ROM)型基板に相変化膜を製膜し、再生層として使用する。この相変化膜は再生時に照射レーザの熱によってスポット内の一部分を融解する。融解した部分の反射率が非融解部分に比べて高い場合、再生信号は融解した部分からの信号を大きく反映した信号となる。このとき、融解領域はスポットよりも小さいため、再生信号は光学分解能以下のピットの信号が得られることとなる。このように、光学分解能以下のピットを再生するために用いる、温度によって光学特性が変化する物質を超解像物質と呼ぶ。
【0006】
また、非特許文献2にも、超解像物質として相変化膜を用いた超解像技術が報告されている。非特許文献2に開示された方法では、酸化白金と相変化記録膜の両方を有するディスクに、通常の記録可能な光ディスクにマークを記録するのと同様の方法でレーザパルスを照射してマークを記録し、超解像再生をすることによって記録密度を向上させる。この方法では、記録レーザパワーを入射することにより、酸化白金が局所的に膨張し、相変化膜の膜厚がマークに対応して変調される。再生時には、相変化膜の膜厚の薄い部分のみを融解することにより、超解像効果を得る。このことにより、一度だけ書き込みが可能な追記型超解像光ディスクが実現される。
【0007】
さらに、非特許文献3にも、超解像物質として相変化膜を用いた超解像技術が提案されている。非特許文献3に開示された方法では、ピットのみが相変化材料を含み、それぞれのピットはスペースを間に挟むことで孤立した構造のディスクを用いる。このディスクを再生するとき、照射レーザによってピット内の相変化膜が融解し、そのピットの反射率は変化する。この変化の方向が、信号が増大する方向への変化であるとき、スポット内の融解領域に入ったピットからの信号が大きく得られる。これにより、超解像が実現される。この方法では、ピットが孤立しているため、相変化膜をディスク全面に用いる場合よりも融解領域を制限することができ、また、隣接ピットへの熱伝導を小さくすることが可能である。従って、この方法では非常に小さいピットを再生できる可能性がある。
【0008】
これらの非特許文献に開示された技術とは異なる高密度化の方法として、多層化技術が提案されている。多層化技術では、1枚のディスク内にある程度の距離を離したデータ層を用いる。記録/再生は各層にレーザの焦点を合わせ、独立に行われる。従って、多層化技術は光ディスクを体積方向に大容量化する方法である。
【0009】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics 32, 5210
【非特許文献2】Japanese Journal of Applied Physics 43, 4921
【非特許文献3】Japanese Journal of Applied Physics 45, 2593
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のとおり、超解像技術は、様々な方式で実現される。超解像技術の一般的な再生原理を図1に示す。図1(a)にはピット101とスペース103上をスポット105が走査していく場合の模式図を示し、図1(b)にはスポット105が図1(a)の位置にある場合の光強度分布107の模式図を示している。スポット105が図1(a)のように走査していくとき、図1(b)の光強度分布107によってスポット105内の光ディスク媒体には温度分布が生じる。このとき、光ディスク媒体に用いている超解像物質の光学定数が変化する温度以上の領域を高温領域109と呼び、この高温領域109から得られる信号を超解像(SR: Super resolution)信号とする。また、スポット105内の高温領域109以外の領域は低温領域111と呼び、この低温領域111から得られる信号は常解像(NR: Normal resolution)信号とする。超解像技術を適用した場合の理想的な再生信号はSR信号のみであり、このSR信号はスポット105よりもサイズが小さい高温領域109から得られる信号であるため、サイズが光学分解能以下のピットが検出可能となる。
【0011】
しかし、実際の再生では低温領域111にも光が照射されているため、再生信号はSR信号とNR信号とを合わせた信号となる。ここで、実際のビデオデータであるランダムに並んだピットパターン(ランダムパターン)を再生する場合を考えると、SR信号とNR信号とは異なる信号となるため、NR信号は再生信号を劣化させるノイズとして働く。
【0012】
NR信号の量と再生信号のアイパターン及びビットエラー率(bER; bit Error Rate)の関係を計算した結果が図2である。計算では、波長405nm、レンズ開口数0.85のBD光学系を使用し、変調符号17PP、最短信号長75nm、ピット幅100nm、スポットサイズを波長/レンズ開口数≒476nm、スポット内高温領域の直径を75nmとした。NR信号の量は、NR信号とSR信号との信号振幅比で定義し、NR信号は直径約476nmのスポットから得られる信号、SR信号は直径75nmのスポットから得られる信号とした。このとき、光ディスク媒体に用いられる変調符号のラン長をLsr, Lnr (sr, nr= min, min+1, …, max; Lmin< Lmin+1< …< Lmax)とすると、NR信号は共に長さがLnrのピットとスペースの繰り返しパターン(ピュアトーンパターン)から得られる信号、SR信号は長さがLsrのピュアトーンパターンから得られる信号であり、NR信号とSR信号の振幅比はNR(Lnr)/SR(Lsr)と表記した。ここでは、SR(Lmin)は有限値であるとし、NR(Lnr)/SR(Lsr)が最大となるように、Lnr= Lmax、Lsr= Lminとした。図2の計算結果から、NR(Lmax)/SR(Lmin)が増加していくにつれて再生信号品質が劣化し、NR(Lmax)/SR(Lmin)=2ではbER>10-2と大きく、実用化の指標であるbER≦10-5を達成できないことがわかる。
【0013】
このNR信号による再生信号品質の劣化は、高密度化を進めるとさらに増加する。例えば、線密度を上げるために最短ピット長を短くした場合、再生はスポット内の高温領域を最短ピット長程度のサイズにして行う必要がある。そのため、線密度の増加に伴ってNR(Lmax)/SR(Lmin)は増加する。また、狭トラック化の場合も、低温領域に隣接トラックが入ることでNR(Lmax)/SR(Lmin)は増大する。従って、高密度化によってNR(Lmax)/SR(Lmin)は増加し、再生信号品質は劣化する。
【0014】
以上から、超解像では面密度が上がるにつれてNR信号が大きくなり、NR信号が再生信号を劣化させるため、実用化に適したbERを達成することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、光ディスク媒体に用いられる変調符号のラン長をLnr, Lsr (nr, sr= min, min+1, …, max; Lmin< Lmin+1< …< Lmax)とするとき、所定のLnr及びLsrにおけるNR(Lnr)/SR(Lsr)が少なくとも1以下である光ディスク媒体を用いることで解決される。
【0016】
上記光ディスク媒体は、サイズが光学分解能以下のピットからの再生信号の振幅が有限の値となる所定の再生パワーをPhとし、再生パワーPhによって光ディスク媒体の所定の長さLsrのピットとスペースから得られる再生信号の振幅をRF(Ph,Lsr)とし、再生パワーPhよりも低く、サイズが光学分解能以下であるマークからの再生信号の振幅が略ゼロである所定の再生パワーをPlとし、再生パワーPlによって光ディスク媒体の所定の長さLsrのピットとスペースから得られる再生信号の振幅をRF(Pl,Lsr)とし、再生パワーPlによって光ディスク媒体の所定の長さLnrのピットとスペースから得られる再生信号の振幅をRF(Pl,Lnr)とし、再生パワーPh、Plと再生信号振幅RF(Ph,Lsr)、RF(Pl,Lsr)、RF(Pl,Lnr)を用いてRF’(Lsr)=RF(Ph,Lsr)/Ph、NR(Lsr)=RF(Pl,Lsr)/Pl、NR(Lnr)=RF(Pl,Lnr)/Pl、SR(Lsr)=RF’(Lsr)-NR(Lsr)を算出し、求めたNR(Lnr)とSR(Lsr)を用いてNR(Lnr)/SR(Lsr)を算出し、求めたNR(Lnr)/SR(Lsr)が少なくとも1以下となる光ディスク媒体である。
【0017】
上記解決方法の詳細を以下に述べる。
【0018】
超解像技術を用いた場合の再生信号品質はNR信号によって劣化するため、実用に適したbERを達成するためにはNR信号の量を低減する必要がある。そこで、bER≦ 10-5を満たすNR信号の量を見積もるために、bERとNR(Lnr)/SR(Lsr)の関係を計算した結果を図3に示す。計算は図2と同じ条件で行い、Lnr及びLsrはNR(Lnr)/SR(Lsr)が最大となるように、Lnr= Lmax、Lsr= Lminとした。図3の横軸はSR信号で規格化されているため、最短ピット長に依らない結果である。図3より、NR(Lmax)/SR(Lmin)が0.5以下ではbERは10-6以下と非常に小さく、NR(Lmax)/SR(Lmin)が1以上では急激にbERが増加することがわかる。ここから、実用化に適したbER≦10-5を達成するためには、NR(Lmax)/SR(Lmin)は少なくとも1以下の必要があることがわかる。この結果はNR信号ノイズのみ考慮しているが、実際には媒体ノイズやシステムノイズを考慮する必要がある。そこで、媒体ノイズとシステムノイズを考慮して、bERとNR(Lmax)/SR(Lmin)の関係を計算した結果を図4に示す。この計算も図2と同じ条件で行い、光ディスク媒体のSNR(Signal to Noise Ratio)は標準値20dBを用いた。図4の場合では、bER≦10-5を達成するためのNR(Lmax)/SR(Lmin)は0.7以下であることがわかる。以上から、bER≦ 10-5を達成するためには、NR(Lmax)/SR(Lmin)が少なくとも1以下である必要があり、この値はNR信号以外のノイズが加わることで減少することがわかる。
【0019】
次に、実際の光ディスク媒体におけるNR(Lnr)/SR(Lsr)の評価方法を以下に説明する。光ディスク媒体を再生する際に、光学分解能以下のピットからの再生信号の振幅が有限となる所定の再生パワーPhを設定する。この再生パワーPhは、例えば、光ディスク媒体のランダムに並んだピット列を再生した場合の再生信号のエラー率bERが最小となる再生パワーと決定する。この再生パワーPhによって、共にラン長Lsrのピットとスペースから得られる再生信号の振幅をRF(Ph,Lsr)とする。この信号はNR信号とSR信号の和に相当し、再生パワーPhで規格化するとRF(Ph,Lsr)/Ph= SR(Lsr)+NR(Lsr)= RF’(Lsr)となる。次に、再生パワーPhよりも小さく、光学分解能以下のピットからの再生信号の振幅が略ゼロとなる所定の再生パワーをPlとする。この再生パワーPlによって、共にラン長Lnrのピットとスペースから得られる再生信号をRF(Pl,Lnr)とする。この信号はNR信号のみに相当するため、再生パワーPlで規格化するとRF(Pl,Lnr)/Pl= NR(Lnr)となる。ここで、SR(Lsr)= RF’(Lsr)-NR(Lnr)と算出される。以上の結果を用いて、光ディスク媒体のNR(Lnr)/SR(Lsr)は決定される。
【0020】
上記再生パワーPhの決定方法は上記方法に限ったものではなく、例えば、光ディスク媒体に用いられる変調符号の所定のラン長のピュアトーンパターンから得られる再生信号の振幅が最大となる再生パワーを再生パワーPhとしてもよい。前記ラン長は、例えば、Lminと設定する。
【0021】
上記再生パワーPh又はPlによって再生する信号パターンは、ピュアトーンパターン又はランダムに並んだピットパターンでもよい。
【0022】
ここで、NR(Lnr)/SR(Lsr)の決定に用いられるLnr及びLsrは次のように決定される。例えば、スポット内の高温領域が最短ラン長Lminよりも小さく、光ディスク媒体の超解像物質の光学定数が変化する領域が高温領域内のみである光ディスク媒体を考えるとき、再生するピットのラン長Lnr, LsrとNR(Lnr), SR(Lsr)は図5に示される関係となる。図5からNR(Lnr)は、Lnr= Lmaxにおいて最大となり、Lnrの減少に伴って減少し、Lminを含む光学分解能以下のLnrにおいて略ゼロとなる。また、SR(Lsr)はLsrに依らず一定である。ここから、NR(Lnr)/SR(Lsr)が最大となるようにLnr及びLsrを選ぶと、Lnr= Lmax、Lnr= 任意となる。
【0023】
上記NR(Lnr)/SR(Lsr)の決定に用いられるLnr及びLsrの決定方法は上記方法に限ったものではない。上記光ディスク媒体において、例えば、スポット内の高温領域のサイズが最短ラン長Lminのピットよりも大きい場合を考える。再生するピットのラン長Lnr, LsrとNR(Lnr), SR(Lsr)は図6に示される関係となる。図6からNR(Lnr)は、Lnr= Lmaxにおいて最大となり、Lnrの減少に伴って減少し、Lminを含む光学分解能以下のLnrにおいて略ゼロとなる。また、SR(Lsr)は、高温領域とサイズが等しくなるピットのラン長をLsr’としたとき、Lsr’≦ Lsr ≦Lmaxにおいて最大となり、LsrがLsr’より小さくなるに伴って減少し、Lminで最小となる。ここから、NR(Lnr)/SR(Lsr)が最大となるようにLnr及びLsrを選ぶと、Lnr= Lmax、Lnr= Lminとなる。
【0024】
上記NR(Lnr)/SR(Lsr)の決定に用いられるLnr及びLsrの決定方法は上記方法に限ったものではない。上記光ディスク媒体とは異なる媒体特性を持つ光ディスク媒体において、例えば、光ディスク媒体の超解像物質の光学定数が変化する領域が高温領域のみでなく、ピットのサイズに依存する場合を考える。再生するピットのラン長Lnr, LsrとNR(Lnr), SR(Lsr)は図7に示される関係となる。図7からNR(Lnr)は、Lnr= Lmaxにおいて最大となり、Lnrの減少に伴って減少し、Lminを含む光学分解能以下のLnrにおいて略ゼロとなる。また、SR(Lsr)は、Lsr= Lmaxにおいて最大となり、Lnrの減少に伴って減少し、Lminで最小となる。ここから、NR(Lnr)/SR(Lsr)が最大となるようにLnr及びLsrを選ぶと、Lnr= Lmax、Lnr= Lminとなる。
【0025】
上記NR(Lnr)/SR(Lsr)の決定に用いられるLnr及びLsrの決定方法は上記方法に限ったものではない。上記光ディスク媒体とは異なる媒体特性を持つ光ディスク媒体において、例えば、NR(Lmin)が略ゼロであり、且つNR(Lmin+1)が有限である光ディスク媒体を考える。この光ディスク媒体では、ビタビ複合等の信号処理によって、NR(Lmin)が略ゼロとなる再生パワーPhで最もbERが低くなる。このとき、再生するピットのラン長Lnr, LsrとNR(Lnr), SR(Lsr)は図8に示される関係となる。図8からNR(Lnr)は、Lnr= Lmaxにおいて最大となり、Lnrの減少に伴って減少し、Lminを含む光学分解能以下のLnrにおいて略ゼロとなる。また、SR(Lsr)は、Lsr= Lmaxにおいて最大となり、Lnrの減少に伴って減少し、Lmin+1では有限であるが、Lminで略ゼロとなる。ここで、NR(Lnr)/SR(Lmin)= NR(Lnr)/0は計算できない。従って、Lsr= Lminを除き、NR(Lnr)/SR(Lsr)が最大となるようにLnr及びLsrを選ぶと、Lnr= Lmax、Lnr= Lmin+1となる。
【0026】
以上から、上記測定評価方法を用いて得られるNR(Lnr)/SR(Lsr)が少なくとも1以下である光ディスク媒体を用いることで、実用化に適したbER≦10-5の再生信号品質を得られることがわかった。光ディスク媒体のNR(Lnr)/SR(Lsr)を1以下にする方法として、NR信号を抑制する方法が考えられる。NR信号はスポット内の低温領域からの反射光が変動することで発生する信号であり、この反射光の変動はピットとスペースの反射率差及び位相差に起因する。従って、NR信号を抑制するためには、ピットとスペースの反射率差と位相差がゼロとなる光ディスク媒体が必要である。この光ディスク媒体は、例えば、ピットのみが超解像物質を含む構造の光ディスク媒体である。その構造の作製方法は、例えば、International Symposium on Optical Memory 2006, Mo-B-07で報告された化学機械研磨(CMP: Chemical Mechanical Polishing)プロセスを用いた方法がある。
【0027】
CMPプロセスを用いて作製される光ディスク媒体のピットは、例えば、少なくとも超解像物質であるGeSbTe、保護層であるAl2O3、反射層であるCr酸化物で構成される。また、スペースは、例えば、少なくとも保護層であるAl2O3、反射層であるCr酸化物される。
【0028】
上記CMPプロセスで作製される光ディスク媒体に用いられる保護層はAl2O3に限ったものではなく、ZnSやZnOなどの、再生に用いられるレーザ光が透過する物質であればよい。
【0029】
上記CMPプロセスで作製される光ディスク媒体に用いられる反射膜はCr酸化物に限ったものではなく、AgPdCuや金属酸化物などの、再生に用いられるレーザ光に対して有限の反射光量が得られる物質であればよい。
【0030】
上記CMPプロセスで作製される光ディスク媒体に用いられる超解像物質はGeSbTeに限ったものではなく、Bi等の不純物がドーピングされたGeSbTeなどの、再生に用いられるレーザ光の熱によって光学定数が変化する物質であればよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、サイズが光学分解能以下のピットを再生することが可能で、実用に適したエラー率bERを持つ光ディスク媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明の実施例として、超解像に用いる光ディスク媒体であって、実用に適した再生信号品質を与える光ディスク媒体を、図面を参照しながら説明する。
【0033】
ピットのみが相変化材料で構成され、CMPプロセスによって作製される光ディスク媒体を用いて、上記課題を解決する方法について、以下の実施例1で述べる。
【0034】
図9は光ディスク媒体の作製方法を示しており、CMPプロセスの各状態における光ディスク媒体の断面図が示してある。図9(a)では、ピット901が凹形状、スペース903が凸形状である、ポリカーボネートから成るROM(Read Only Memory)基板905に任意の膜数の上部層907、相変化膜909、任意の膜数のCMP保護層911を矢印913の方向から順にスパッタリングで製膜した。ROM基板905は0.6tのポリカーボネート製(0.6t PC)、ピットの深さは68nmである。ROM基板905に記録されている信号パターンは、1Twを25nmとして、2Tw(Lmin)から8Tw(Lmax)のピュアトーンパターン、及びランダムパターンである。相変化膜909には超解像物質であるGeSbTeを用いている。図9(b-1),(b-2)では、図9(a)の光ディスク媒体にCMP処理を行い、光ディスク媒体の凸部の積層膜915を除去した。このとき、スペース901の上部層907まで除去した場合は図9(b-1)が作製され、相変化膜909まで除去した場合は図9(b-2)が作製される。図9(b-1)及び(b-2)に任意の膜数の下部層917を矢印919の方向からスパッタリングで製膜することで、図9(c-1)及び(c-2)を作製した。図9(c-1)及び(c-2)にUV樹脂を用いて0.1tのポリカーボネート(0.1t PC)基板921を張り合わせることで、図9(d-1)及び(d-2)に示される光ディスク媒体を作製した。
【0035】
作製したピットのみが相変化材料で構成される光ディスク媒体で超解像効果が得られる理由は以下の通りである。レーザスポットがピット列上を走査していくとき、スポット高温領域内のピットの相変化材料は融解し、結晶状態とは異なる光学定数となる。これにより、高温領域内にピットが入った場合のみ反射光量が大きく変化するので、その再生信号は光学分解能以下のサイズのピットを分解できる高分解能な信号となる。また、作製した光ディスク媒体はピットとスペースの膜構造の違いを利用して、ピットとスペースの反射率と位相をそれぞれ独立に調整することが可能である。
【0036】
作製した光ディスク媒体の一例として、媒体Aを作製した。作製した媒体Aの構造を図10に示し、媒体の上部層907、CMP保護層911、下部層917の材料と膜構成及び各膜厚を以下に示す。材料名の隣には図10における部位番号を併記してあり、各膜はスパッタリングで製膜した順番で並べてある。
媒体A (図9(d-1)構造の媒体)
上部層 Al2O3(1001): 30nm
相変化膜 GeSbTe(1003): 10nm
CMP保護層 Cr酸化物(1005): 25nm
下部層 Cr酸化物(1007): 30nm
Al2O3(1009): 50nm
ここで、相変化膜が結晶状態における、媒体Aのピットとスペースの位相差及びそれぞれの反射率を多層膜計算で計算した結果が以下である。
ピット反射率 15.5%
スペース反射率 16.1%
ピットとスペースの位相差 0.05λ
各計算は、ピットの中心部分における膜構造とスペースの中心部分における膜構造を用いて行った。計算結果から、媒体Aはピットとスペースの位相差及び反射率差が非常に小さいことがわかる。従って、媒体AではNR信号が非常に小さいと考えられる。
【0037】
作製した媒体Aは以下の光ディスク装置で評価した。まず、測定に使用した光ディスク装置の構成について説明し、その後作製した媒体の測定結果を述べる。
【0038】
上記光ディスク装置の要部構成のブロック図の一例を図11に示す。光ディスク媒体1101はスピンドルモータ1103によりCLV (Constant liner velocity)制御、あるいはCAV (Constant liner velocity)制御されている。光ディスク媒体1101に対向して光ピックアップ部1105が設けられ、レーザダイオード(LD)から再生パワーのレーザ光1107を射出することにより光ディスク媒体1101の信号を再生する。また、LDから結晶化パワーのレーザ光1107を射出することにより、光ディスク媒体の相変化膜を結晶化する。LDから射出されるレーザ光1107の再生パワーや結晶化パワーは、LD駆動部1109からの駆動信号を光ピックアップ部1105に供給することで決定される。また、LDから射出されるレーザ光1107の再生パワーは、制御部1111からの制御信号により制御される。光ピックアップ部1105から出力された再生信号は図示しない光ディスク装置外のオシロスコープへ出力され、信号評価用に使用される。また、光ピックアップ部1105から出力された再生信号は再生信号処理部1113に供給される。再生信号処理部1113は、RFアンプやイコライザ、二値化部、PLL部等を有し、再生信号をこれらで処理してデコーダ1115に供給する。デコーダ1115では、二値化された再生信号とPLL部にて再生された同期クロックに基づき信号をデコードし、再生データとして出力する。同時に、再生信号処理部1113は、信号評価用として制御部1111に増幅した再生信号を供給する。Henv, Lenv取得部1117は光ピックアップ部1105から出力された再生信号を増幅した後、再生信号の上部エンベロープ(Henv)と下部エンベロープ(Lenv)を算出し、信号品質評価用として制御部1111に供給する。
【0039】
上記光ディスク装置を用いて、作製した光ディスク媒体Aの再生信号を評価した。媒体の再生は光源波長405nmの半導体レーザ、開口数0.85の対物レンズの光学系を用い、4.92m/sの線速度で行い、トラッキングにはpush-pull方式を使用した。
【0040】
まず、作製直後の媒体Aの相変化材料は非晶質状態であるため、4mWの結晶化パワーを照射することで結晶化した。これは、スパッタリングで製膜された相変化材料は非晶質状態であり、この光ディスク媒体で超解像効果を得るためには、予めすべてのピットの相変化材料を結晶状態にしておく必要があるためである。
【0041】
この媒体Aについて、再生パワーP対するbER及びラン長Lminのピュアトーンパターンから得られる再生信号の振幅RF(P,Lmin)の関係を測定した結果を図12に示す。図12より、媒体AではbERの最小値が10-5以下と、実用に適した再生信号品質を持つことがわかる。
【0042】
そこで、この媒体AのNR信号の量(NR(Lnr)/SR(Lsr)の最大値)を以下の方法で求めた。図12より、再生パワーP= 5.5mWでbERが最小となることから、NR信号とSR信号の和信号を得るための再生パワーPhは 5.5mWとした。また、図12より、RF(P,Lmin)は再生パワーP= 0.5〜2mWでほぼゼロであることから、NR信号のみを得るための再生パワーPlは 1.0mWとした。これら再生パワーPh, Plを用いて、各ラン長Lsr, Lnr(Lsr,Lnr= Lmin, Lmin+1, …, Lmax)のピュアトーンパターンから得られる再生信号の振幅RF(Ph,Lsr)及びRF(Pl,Lnr)を測定し、次の演算を行うことでSR(Lsr)及びNR(Lnr)を算出した。

RF(Pl,Lnr)/Pl= NR(Lnr)
RF(Ph,Lsr)/Ph-NR(Lsr)= SR(Lsr)
測定値RF(Ph,Lsr), RF(Pl,Lnr)を表1に示し、ラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係を図13に示す。図13は図6と同様なSR(Lsr)の傾向を示すことから、NR(Lnr)/SR(Lsr)はLnr= Lmax、Lsr= Lminで最大であり、NR(Lmax)/SR(Lmin)は0.4と、1以下を満足していることがわかった。
【0043】
実施例1に記載の光ディスク媒体を用いて、RF(P,Lmin)が最大となる再生パワーをPhとした実施例2を考える。この場合、図12より、Ph= 5.5mWとなる。これは、実施例1と同じPhであるため、このPhを用いても実施例1を同様な結果が得られた。
【0044】
実施例1に記載の光ディスク媒体Aと同様な構造で、媒体Aとは相変化膜(GeSbTe)の膜厚が異なる以下の光ディスク媒体を作製した例として実施例3を以下に説明する。
媒体A-1 相変化膜 : 5.0nnm
媒体A-2 相変化膜 : 7.5nnm
(媒体A 相変化膜 : 10.0nnm)
媒体A-3 相変化膜 : 12.5nnm
媒体A-4 相変化膜 : 15.0nnm
媒体A-5 相変化膜 : 17.5nnm
媒体A-6 相変化膜 : 20.0nnm
媒体A-7 相変化膜 : 22.5nnm
媒体A-8 相変化膜 : 25.0nnm
媒体A-9 相変化膜 : 27.0nnm
媒体A-10相変化膜 : 30.0nnm
これらの光ディスク媒体に対して、実施例1と同様に、bERが最小となる再生パワーPh及びRF(P,Lmin)がゼロとなる再生パワーPlを決定し、それぞれの再生パワーPh, Plを用いてRF(Ph,Lmin), RF(Ph,Lmax), RF(Pl,Lmin), RF(Pl,Lmax)を測定し、SR(Lmin), SR(Lmax), NR(Lmax)を算出した。その結果を表2に示す。表2より、すべての媒体はSR(Lmin)< SR(Lmax)であるため、ラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係は図6又は図7と同じ関係であることがわかる。ここから、すべての媒体でNR(Lnr)/SR(Lsr)はLnr= Lmax, Lsr= Lminで最大値となる。そこで、各媒体の相変化膜の膜厚dとNR(Lmax)/SR(Lmin)の関係を図14に示す。図14から、d= 5〜20nmの媒体においてNR(Lmax)/SR(Lmin)≦ 1を満足し、表2に示されるbERから、NR(Lmax)/SR(Lmin)≦ 0.7を満足するd= 7.5〜15nmの媒体においてbER≦ 10-5を達成することがわかった。このようにNR(Lmax)/SR(Lmin)が1以下ではなく0.7以下でしかbER≦ 10-5が得られない理由は、実際の測定では媒体ノイズとシステムノイズがあるためである。従って、これらのノイズを小さくすることで、NR(Lmax)/SR(Lmin)≦1でもbER≦ 10-5を得られると考えられる。
【0045】
実施例1に記載の光ディスク媒体Aと同様な構造で、相変化膜に媒体Aとは組成の異なるGeSbTeを用いた光ディスク媒体を作製した例を実施例4として以下に説明する。この媒体に対して、実施例1と同様に、bERが最小となる再生パワーPh及びRF(P,Lmin)がゼロとなる再生パワーPlを決定し、それぞれの再生パワーPh, Plを用いてRF(Ph,Lmin), RF(Ph,Lmax), RF(Pl,Lmin), RF(Pl,Lmax)を測定し、SR(Lmin), SR(Lmax), NR(Lmax)を算出した。その結果、この媒体においてはSR(Lmin)= SR(Lmax)であったため、ラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係は図5と同じ関係であることがわかった。ここから、この媒体におけるNR(Lnr)/SR(Lsr)の最大値は、Lnr= Lmax, Lsr= Lmaxとして、NR(Lmax)/SR(Lmax)で与えることができる。NR(Lmax)/SR(Lmax)を算出したところ0.6であり、そのbERは8*10-6であった。従って、この媒体においても、NR(Lmax)/SR(Lmax)≦1を満足し、bER≦10-5を達成できることがわかった。
【0046】
実施例1に記載の光ディスク媒体Aと同様な構造で、相変化膜に媒体A及び実施例4の媒体とは組成の異なるGeSbTeを用いた光ディスク媒体を作製した例を実施例5として以下に説明する。この媒体に対して、実施例1と同様に、bERが最小となる再生パワーPh及びRF(P,Lmin)がゼロとなる再生パワーPlを決定し、それぞれの再生パワーPh, Plを用いてRF(Ph,Lmin), RF(Ph,Lmin+1), RF(Ph,Lmax), RF(Pl,Lmin), RF(Pl,Lmin+1), RF(Pl,Lmax)を測定し、SR(Lmin), SR(Lmin+1), SR(Lmax), NR(Lmax)を算出した。その結果、この媒体においてはSR(Lmin)= 0, SR(Lmin+1)< SR(Lmax)であったため、ラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係は図8と同じ関係であることがわかった。ここから、この媒体におけるNR(Lnr)/SR(Lsr)の最大値は、Lnr= Lmax, Lsr= Lmin+1として、NR(Lmax)/SR(Lmin+1)で与えることができる。NR(Lmax)/SR(Lmin+1)を算出したところ0.2であり、そのbERは1*10-5であった。従って、この媒体においても、NR(Lmax)/SR(Lmin+1)≦1を満足し、bER≦10-5を達成できることがわかった。
【0047】
実施例1に記載の光ディスク媒体の作製方法と同様な方法で作製でき、媒体Aと異なる構造の光ディスク媒体Bを作製した例を比較例1として以下に説明する。作製した媒体Bの構造を図15に示し、各媒体の上部層(図9中907)、CMP保護層(図9中911)、下部層(図9中917)の材料と膜構成及び各膜厚を以下に示す。材料名の隣には図15における部位番号を併記してあり、各膜はスパッタリングで製膜した順番で並べてある。
媒体B (図9(d-2)構造の媒体)
上部層 Al2O3(1501): 60nm
AgPdCu(1503): 10nm
Al2O3(1505): 40nm
相変化膜 GeSbTe(1507): 5〜30nm
CMP保護層 Al2O3(1509): 60nm
下部層 Al2O3(1511): 50nm
ここで、相変化膜が5, 10, 15, 20, 25, 30nmである媒体を作製し、それぞれを媒体B-1, B-2, B-3, B-4, B-5, B-6とした。作製したすべての媒体について、実施例1と同様に、bERが最小となる再生パワーPh及びRF(P,Lmin)がゼロとなる再生パワーPlを決定し、それぞれの再生パワーPh, Plを用いてRF(Ph,Lmin), RF(Ph,Lmax), RF(Pl,Lmin), RF(Pl,Lmax)を測定し、SR(Lmin), SR(Lmax), NR(Lmax)を算出した。その結果を表3に示す。表3より、すべての媒体はSR(Lmin)< SR(Lmax)であるため、ラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係は図6又は図7と同じ関係であることがわかる。ここから、すべての媒体でNR(Lnr)/SR(Lsr)はLnr= Lmax, Lsr= Lminで最大値となる。そこで、各媒体の相変化膜の膜厚dとNR(Lmax)/SR(Lmin)の関係を図16に示す。図16から、すべての媒体においてNR(Lmax)/SR(Lmin)> 1であり、表3よりbER> 10-5であることがわかる。従って、これらの媒体では、実用に適した再生信号が得られないことがわかる。
【0048】
これらの媒体でNR(Lmax)/SR(Lmin)が常に1以上と大きい理由を以下に説明する。これらの媒体は図15の構造であり、そのピットとスペースの境界部分には、ピットやスペースの中心部分とは異なる構造が存在する。その構造は、AgPdCuとGeSbTeに挟まれた上部層のAl2O3が、光ディスク媒体の面に対して垂直に立っている構造である。この構造にレーザ光が入射するとき、入射光はAl2O3膜の中でAgPdCuとGeSbTeによって多重干渉するため、その反射光はピットやスペースの中心部分からの反射光とは異なる位相、反射率を持つ。そのため、再生時にこの境界の構造に由来するNR信号が発生する。このように、図15の構造では常にNR信号が発生するため、NR(Lmax)/SR(Lmin)≦ 1を満足できないと考えられる。
【0049】
一方、実施例1に代表される媒体Aの構造(図10)も、図15と同様にピットとスペースの境界部分にピットやスペースの中心部分と異なる構造が存在する。しかし、この構造は上部層のAl2O3が相変化膜と反射膜に挟まれておらず、Al2O3は0.6tPC基板と隣接しているため、この構造に入射した光はAl2O3膜の中で多重干渉を起こすことなく、0.6tPC基板へ透過する。これにより、ピットとスペースの境界部分からはスペースと同じ位相の反射光が得られるため、この境界の構造に由来するNR信号が発生することはない。従って、図10ではNR(Lmax)/SR(Lmin)≦ 1を達成できたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】超解像の再生原理を示す、一例の図である。
【図2】NR(Lmax)/SR(Lmin)が変化する時の、再生信号のアイパターンの変化を示す、一例の図である。
【図3】再生信号のbERとNR(Lmax)/SR(Lmin)の関係を示す、一例の図である。
【図4】再生信号のbERとNR(Lmax)/SR(Lmin)の関係を示す、一例の図である。
【図5】ピットのラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係を示す、一例の図である。
【図6】ピットのラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係を示す、一例の図である。
【図7】ピットのラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係を示す、一例の図である。
【図8】ピットのラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係を示す、一例の図である。
【図9】CMPプロセスを用いた光ディスク媒体の作製方法を示す、一例の図である。
【図10】光ディスク媒体Aの断面を示す図である。
【図11】光ディスク装置の要部構成のブロック図の一例である。
【図12】光ディスク媒体Aにおける、再生信号のbERと再生パワーPの関係を示す、一例の図である。
【図13】光ディスク媒体Aにおける、ピットのラン長Lsr, LnrとSR(Lsr), NR(Lnr)の関係を測定した結果の図である。
【図14】光ディスク媒体Aと同様な構造で、相変化膜の膜厚が異なる媒体A-1〜A-10における、NR(Lmax)/SR(Lmin)と相変化膜の膜厚の関係を測定した結果を示す図である。
【図15】光ディスク媒体Bの断面を示す図である。
【図16】光ディスク媒体Bの構造で、相変化膜の膜厚がそれぞれで異なる媒体B-1〜B-6における、NR(Lmax)/SR(Lmin)と相変化膜の膜厚の関係を測定した結果を示す図である。
【0051】
【表1】

【0052】
光ディスク媒体Aの各ラン長Lsr, Lnrにおける再生信号振幅RF(Ph,Lsr), RF(Pl,Lnr)の測定値を示す表である。
【0053】
【表2】

【0054】

光ディスク媒体Aと同様な構造で、相変化膜の膜厚が異なる媒体A-1〜A-10における、最小bER、再生パワーPh, Pl、SR(Lmin)、SR(Lmax)、NR(Lmax)の測定値を示す表である。
【0055】
【表3】

【0056】
光ディスク媒体Bの構造で、相変化膜の膜厚がそれぞれで異なる媒体B-1〜B-6における、最小bER、再生パワーPh, Pl、SR(Lmin)、SR(Lmax)、NR(Lmax)の測定値を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパワーのレーザを照射したときに、再生信号の振幅が有限の値となる、光学分解能以下のサイズであるピットを有する情報記録媒体であって、
前記所定のパワーをPhとし、
前記Phのパワーによって、長さが共にLsrのピットとスペースとから得られる再生信号の振幅をRF(Ph,Lsr)とし、
前記Phのパワーよりも小さく、且つ前記サイズであるピットからの再生信号の振幅が略ゼロであるパワーをPlとし、
前記Plのパワーによって、長さが共にLnrのピットとスペースとから得られる再生信号の振幅をRF(Pl,Lnr)とし、
RF’(Lsr)=RF(Ph,Lsr)/Ph、
NR(Lsr)=RF(Pl,Lsr)/Pl、
NR(Lnr)=RF(Pl,Lnr)/Pl、
SR(Lsr)=RF’(Lsr)-NR(Lsr)、
且つ前記長さLnrが前記光学分解能よりも大きなサイズであるときに、
NR(Lnr)/SR(Lsr)が1以下であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
ランダムに並んだ前記ピットからの再生信号のエラー率は、照射するレーザのパワーが前記所定のパワーPhにおいて最小となることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
変調符号が所定のラン長である前記ピットからの再生信号の信号とノイズとの比率S/Nが、照射するレーザのパワーが前記所定のパワーPhにおいて最大となることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項4】
変調符号の最長ラン長をLmax、最短ラン長をLminとし、
Lmaxが光学分解能よりも大きなサイズで、Lminが光学分解能よりも小さなサイズであるとき、
前記長さLsr及び前記長さLnrがLsr=Lnr=Lmaxであることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項5】
変調符号の最長ラン長をLmax、最短ラン長をLminとし、
Lmaxが光学分解能よりも大きなサイズで、Lminが光学分解能よりも小さなサイズであるとき、
前記長さLsrがLmin、前記長さLnrがLmaxであることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項6】
変調符号の最長ラン長をLmax、最短ラン長をLminとし、
Lmaxが光学分解能よりも大きなサイズで、Lminが光学分解能よりも小さなサイズであり、
Lminの次に短いラン長をLmin+1とするとき、
前記長さLsrがLmin+1、前記長さLnrがLmaxであることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項7】
所定のパワーのレーザを照射したときに、再生信号の振幅が有限の値となる、光学分解能以下のサイズであるピットを有する情報記録媒体から信号を再生する際の、再生パワー決定方法であって、
ランダムに並んだ前記ピットからの再生信号のエラー率が最小となるように、前記所定のパワーを決定することを特徴とする再生パワー決定方法。
【請求項8】
所定のパワーのレーザを照射したときに、再生信号の振幅が有限の値となる、光学分解能以下のサイズであるピットを有する情報記録媒体から信号を再生する際の、再生パワー決定方法であって、
変調符号が所定のラン長である前記ピットからの再生信号の信号とノイズとの比率S/Nが最大となるように、前記所定のパワーを決定することを特徴とする再生パワー決定方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−269748(P2008−269748A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115006(P2007−115006)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】