情報読取用撮像装置
【課題】情報読取用撮像装置における画像処理の処理時間を短縮し、かつ所望のフィルタ処理を実現できるようにすることである。
【解決手段】撮影対象物25の各点の広がり持った光は、濃度フィルタ22の絞り部22aで光路が制限される。濃度フィルタ部22bは、所望の透過率特性を有しているので、濃度フィルタ部22を通過した光は、光束の中心から周辺に向かって光量が連続的に変化する光となる。この光束は、結像面26で結像した後、イメージセンサ24の受光面に向かって広がり、受光面において所定範囲に広がる画像となる。
【解決手段】撮影対象物25の各点の広がり持った光は、濃度フィルタ22の絞り部22aで光路が制限される。濃度フィルタ部22bは、所望の透過率特性を有しているので、濃度フィルタ部22を通過した光は、光束の中心から周辺に向かって光量が連続的に変化する光となる。この光束は、結像面26で結像した後、イメージセンサ24の受光面に向かって広がり、受光面において所定範囲に広がる画像となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物から情報を読み取るための情報読取用撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の媒体に印刷された情報を読み取るために撮像装置が用いられる。図1及び図2は、紙などの媒体に印刷されたバーコード等の情報を読み取る撮像装置11の光学系の構成を示す図である。
【0003】
図1及び図2に示すように撮像装置11は、絞り12と、レンズ13(またはレンズモジュール16)と、イメージセンサ14とを有する。
撮影対象物15で反射された光は、絞り12により光路が制限され、レンズ13を通りイメージセンサ14で受光される。
【0004】
媒体に印刷された情報を撮像装置11により読み取る場合には、レンズ13とイメージセンサ14との距離を調整し、結像面をイメージセンサ14の表面に合致させることで鮮明な画像を取得するようにしている。
【0005】
しかしながら、鮮明な画像は情報量が多い反面、媒体の表面の凹凸などによる信号の変化が、本来の画像信号に対してノイズとして重畳されるという問題点がある。
図3(A)、(B)は、撮影対象物15の一例を示す図である。図3(A)に示すような紙などに印刷された画像を撮像装置11で読み取る場合には、紙面の細かい凹凸による信号の変化が、本来の画像信号にノイズとして乗ってしまう。
【0006】
図3(B)に示すような、手のひら内部の静脈を読み取る場合にも、静脈の周囲の体組織からの散乱光がノイズとして本来の画像信号に乗ってしまう、そのため、ローパスフィルタ(LPF)処理等の演算を施してノイズを除去する必要があった。
【0007】
図4(A)は、撮影対象物の任意のライン(例えば、図3(A)のラインA)のノイズが重畳された画像信号を示し、図4(B)は、ローパスフィルタ(LPF)処理によりそのノイズを除去した後の画像信号を示している。
【0008】
図5は、従来の撮像装置のイメージセンサ14の出力を示す図である。図5は、撮影対象物体上の任意の1点に対するイメージセンサ14の任意の画素の出力信号のレベルの分布(点像分布)を示しており、鮮明な画像が得られるよう結像面がセンサ面に合致しているため、出力信号のレベルの分布は、実質的に1画素に集中した波形となる。
【0009】
上述したように、撮像装置11で取得される画像を鮮明にすればするほど、媒体表面の凹凸などにより画像信号に高周波のノイズが乗ってしまう。
そこで、従来は、イメージセンサ14から出力される画像信号に対してローパスフィルタ処理の演算を施し高周波のノイズを除去していた。
【0010】
図6(A)、(B)は、ローパスフィルタ処理で用いられるガウスフィルタと移動平均フィルタの演算行列を示す図である。
図6(A)の3×3の演算行列の場合について説明すると、注目画素Q(a,b)は、左上の取得画素P(a−1,b+1)に「0.063」を乗算した値と、1つ上の取得画素P(a,b+1)に「0.125」を乗算した値と、右上の取得画素P(a+1,b+1)に「0.063」を乗算した値と、左隣の取得画素P(a−1,b)に「0.125
」を乗算した値と、取得画素P(a,b)に「0.25」を乗算した値と、右隣の取得画素P(a+1,b)に「0.125」を乗算した値と、左下の取得画P(a−1,b−1)に「0.063」を乗算した値と、1つ下の取得画素P(a,b−1)に「0.125」を乗算した値と、右下の取得画素P(a+1,b−1)に「0.063」を乗算した値の総和として算出される。
【0011】
上記の演算を各画素について行うことでガウスフィルタ処理を施した画像信号を得ることができる。
図6(B)の演算行列も同様であり、注目画素とその周辺の画素に対して、図6(B)に示す演算行列の値を乗算することで、移動平均フィルタ処理を施した画像信号を得ることができる。
【0012】
しかしながら、上記の演算行列を用いたローパスフィルタ処理は、撮像装置で読み取った全画素に対して演算行列の要素数分(例えば、3×3の行列であれば、9回)の演算を行う必要があり、画素数が多い場合には、画像処理の処理時間が長くなるという問題点があった。
【0013】
特許文献1には、指紋画像読取装置において、レンズとCCD撮像素子との距離を縮めて、レンズの焦点位置からずれた位置にCCD撮像素子を配置することで、指紋画像のノイズ成分を除去することが記載されている。
【0014】
特許文献1の発明は、CCD撮像素子で読み取る指紋画像のピントをぼかすことで高周波ノイズを目立たなくするものである。
【特許文献1】2003−50991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、情報読取用撮像装置において、画像処理の処理時間を短縮し、画像に対して所望のフィルタ処理を施すことである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の情報読取用撮像装置は、撮影対象物からの光の受光範囲を制限する絞りと、前記絞りの開口部または前記開口部の近傍に配置され、位置により異なる透過率を有するフィルタと、レンズと、イメージセンサとを有し、前記レンズの結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるように前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整し、前記フィルタにおいて前記所望の透過率特性が与えられた光が前記受光面において所定範囲に広がるようにした。
【0017】
この情報読取用撮像装置によれば、画像処理の処理時間を短縮できると共に、画像に対して光学的に所望のローパスフィルタ処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、情報読取用撮像装置における画像処理の処理時間を短縮できると共に、画像に対して光学的に所望のローパスフィルタ処理を施すことができる。また、画像処理の処理時間を短縮することで、例えば、リアルタイム処理が要求される情報読取用撮像装置に対して、比較的処理速度の遅いCPU等を使用することが可能となるので、処理速度の遅い安価なCPU等を使用して情報読取用撮像装置のコストを低減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。図7は、第1の実施の形態の情報読取用撮像装置21の構成を示す図である。情報読取用撮像装置21は、1次元または2次元バーコードを読み取るバーコードリーダ、指紋、静脈等を読み取る生体認証装置等に用いることができる。
【0020】
情報読取用撮像装置21は、絞り兼用の濃度フィルタ(フィルタ)22とレンズ23とイメージセンサ24とを有する。濃度フィルタ22は、レンズ23と撮影対象物25との間に配置されている。
【0021】
濃度フィルタ22は、外周部が光の受光角を制限する絞り部22aとして機能し、中心部が、絞り部22aにより光路が制限された光の透過率が位置により異なる濃度フィルタ部22bとして機能する光学フィルタ素子である。なお、フィルタの中心軸と直交する方向で位置により透過率が変化し、任意の透過率特性(ガウス分布など)を有する濃度フィルタ22としては、光の吸収率が変化する吸収型フィルタ、光の反射率が変化する反射型フィルタ等を用いることができる。
【0022】
図7において、撮影対象物25からの光は広がりながら濃度フィルタ22に入射する。撮影対象物25の各点の広がり持った光(これを光束と呼ぶ)は、濃度フィルタ22の絞り部22aによりレンズ23に入射する光の範囲が制限される。そして、絞り部22aにより光路が制限された光が、濃度フィルタ部22bを通過する際に、光束の中心から外に向かって光量が連続的に変化する光となる。この光束は、結像面(結像位置)26で結像した後、イメージセンサ24の受光面に向かって広がり、受光面において所定範囲の広がりを持った像となる。これは、結像面26がイメージセンサ24の受光面の手前側または奥側になるように、レンズ23とイメージセンサ24の距離が調整されているからである。
【0023】
イメージセンサ24の受光面における像の広がりは、注目画素と近傍の画素にかけて必要なため、光束の中心に対して直径3画素以上の円形の範囲である。
注目画素とその近傍画素の濃度値に対し、注目画素の新しい濃度値を得るために、例えば上記光量分布が直径3画素の場合には、図6(A)に示す3×3ガウスフィルタの演算を代替えできる。逆に7×7、9×9の強度の大きいLPF演算を代替えするためには、上記光量分布は、それぞれ直径7画素、9画素とすればよい。
【0024】
上述した第1の実施の形態によれば、濃度フィルタ22で所望の透過率特性を与え、受光面において所定範囲に広がる光をイメージセンサ24に入射することで、撮影対象物25の画像に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。従って、イメージセンサ24の出力信号に対してローパスフィルタ処理の演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。また。濃度フィルタ22の透過率特性を変更することで任意のローパスフィル処理を施すことができる。さらに、画像の処理時間を短縮することができるので、リアルタイム処理が必要なバーコードリーダや生体認証装置に処理速度の遅い安価なCPU等を使用できる。これにより、装置のコストを低減できる。
【0025】
図8は、第2の実施の形態の情報読取用撮像装置41の構成を示す図である。この第2の実施の形態は、レンズからイメージセンサ24に向かう光が光軸と平行となる像側テレセントリック光学系において、結像面26をイメージセンサ24の奥側(レンズから見て)に設定した場合の例である。
【0026】
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置41の光学系は、レンズ42、43、44、45と濃度フィルタ22からなるレンズモジュール46を有する。
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置41も、イメージセンサ24に入射する光が光
軸と平行である点、結像面26がイメージセンサ24の奥側である点を除けば、第1の実施の形態と同様である。
【0027】
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置41においても、撮影対象物25の各点の反射光はイメージセンサ24の受光面で一定範囲に広がり、イメージセンサ24の各画素の入射光量は濃度フィルタ22の透過率特性により制限されたものとなる。
【0028】
この第2の実施の形態によれば、撮影対象物25から入射する光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。これにより、イメージセンサ24の画像信号に対してローパスフィルタの演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。また、濃度フィルタ22の透過率特性を変更することで任意のローパスフィルタ処理を光学的に実現できる。
【0029】
図9は、第3の実施の形態の情報読取用撮像装置51の構成を示す図である。
第3の実施の形態は、第2の実施の形態と基本的には同じであり、異なる点は、結像面26がイメージセンサ24の手前側にくるように設定した点である。
【0030】
図10は、濃度フィルタ22の透過率特性を示す図である。濃度フィルタ22は、図10に示すように円板状で、中心が最も透過率が高く、外周に向かって徐々に透過率が小さくなる透過率特性(例えば、ガウス分布)を有する。そして、濃度フィルタ22の外周部は、透過率が0となっており絞りとして機能する。
【0031】
図11及び図12は、濃度フィルタの他の例を示す図である。図11は、金属等の不透明部材の中心部に開口部32aを設けた絞り32に、別部品の濃度フィルタ31を挿入または接着する構造の例を示している。
【0032】
濃度フィルタ31は、例えば、ガラス基板に金属膜(例えば、クロム膜など)コーティングして作成する。金属膜をコーティングする際に、中央の膜厚を薄くし、周辺に向かって金属膜の厚みを増加させて光透過率を低下させることにより、ガウス分布等の任意の透過率特性を有する濃度フィルタ31を作成することができる。
【0033】
なお、絞り32と濃度フィルタ31を別部品にする場合、濃度フィルタ31を絞り32の開口部32aに挿入しても良いし、絞り32の下側で開口部32aの近傍に配置しても良い。
【0034】
図12は、絞りを兼用した濃度フィルタ33の例を示す図である。濃度フィルタ33の外周部の透過率を0にすることで絞りの機能を実現できる。例えば、金属膜をコーティングして作成する場合には、外周部の金属膜の膜厚を厚くして光の透過率を0にすることで、外周部を絞り部として機能させることができる。
【0035】
ここで、上述した濃度フィルタ22を用いた場合のイメージセンサ24の各点における光量分布について説明する。
図13は、注目画素aとその周囲の画素の光量分布を示す図である。図7の例では、イメージセンサ24の受光面の手前側で結像するように、レンズ23とイメージセンサ24の距離を調整してあるので、撮影対象物25のA点の光束は結像面26で結像した後、イメージセンサ24の受光面で一定範囲に広がって入射する。
【0036】
例えば、撮影対象物25のA点からの光束の中心を通る光は、イメージセンサ24のA’点(図7参照)に入射する。撮影対象物25のA点で反射され、濃度フィルタ22の右側(図7の正面から見て)の位置を通過した光は、イメージセンサ24のA’点の左側(図7の正面から見て)の点A’1点に入射する。また、濃度フィルタ22の左側の位置を通過した光は、イメージセンサ24のA’点の右側のA’2点に入射する。
【0037】
濃度フィルタ22は、図10に示すようなガウス分布の透過率特性を持っている。従って、撮影対象物25のA点で反射されて濃度フィルタ22を通過し、イメージセンサ24に入射する光の光量分布は、図13に示すように、注目画素aとその周囲の画素a+1、a−1、a+2、a−2の入射光量は、ガウス分布となる。これは、撮影対象物25のA点の反射光に対して光学的にガウス分布の特性を持つローパスフィルタ処理を施したことになる。
【0038】
ここで、上述した第1、第2及び第3の実施の形態の動作を、図14及び図15を参照して説明する。以下、複数枚のレンズを有する光学系において、レンズの間に濃度フィルタ22を配置し、かつイメージセンサ24の手前側で結像させた場合を例にとり説明する。
【0039】
図14(A)に示すように、撮影対象物25のA点で反射した光は広がりながらレンズ42、43に入射し、濃度フィルタ22の絞り部22aで光路が制限される。濃度フィルタ22は、図10に示すような透過率特性を有しているので、A点で反射され、濃度フィルタ22を通過した光は、光束の中心の光の透過率が最も高く、周辺に行くほど透過率が低くなる。濃度フィルタ22を通過した光は、レンズ44、45により光軸と平行な光に変換され、結像面26で結像した後、イメージセンサ24の受光面で所定範囲(例えば、直径3画素以上の範囲)に広がる。
【0040】
図14(B)は、イメージセンサ24の各画素の入射光量の分布を示している。例えば、撮影対象物25のA点の反射光は、イメージセンサ24の対応する画素とその周囲の画素に入射する。A点の反射光については、図14(B)に示すように、光束の中心の光が入射する中心画素(図13の注目画素a)の入射光量が最も多く、中心画素から離れるほど入射光量が減少するガウス分布を示す。
【0041】
撮影対象物25のA点の隣の点の反射光については、イメージセンサ24の隣の中心画素(図13の画素a+1)の入射光量が最も多く、中心画素から離れるほど入射光量が減少するガウス分布を示す。以下、同様に他のイメージセンサ24の各画素の入射光量は、図14(B)に示すようなガウス分布を持つ。
【0042】
撮影対象物25のA点からの光は、イメージセンサ24の対応する画素aと隣接する複数の画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・に、濃度フィルタ22の透過率特性で決まる光量分布で入射する。同時に、隣接する画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・を中心画素として入射する光の一部が画素aにも入射する。これにより、光学的な畳み込みが行われることになる。これは、イメージセンサ24の出力信号に対する畳み込み演算により行っていたローパスフィルタ演算処理を光学的に代替したことを意味する。
【0043】
図15は、イメージセンサ24の任意の画素列における入射光量を示す図である。
上述したように撮影対象物25のA点からの光(光束)は広がりながら濃度フィルタ22に入射するが、絞り部22aにより入射光が制限され、濃度フィルタ部22bを通る光束は、濃度フィルタ22の透過率特性に従って光束の中心から周辺に向かって透過率が連続して低下していく。この光束は、結像面26で一旦結像するが、イメージセンサ24に入射する際に、所定範囲(例えば、光束の中心に対して直径径3画素以上の範囲)に広がる。
【0044】
従って、撮影対象物25の各点で反射され、濃度フィルタ22を通過してイメージセン
サ24に入射する光束は、図15に示すように、光束の中心の光が入射する注目画素を中心として一定の光量分布を持つ。例えば、撮影対象物25のA点で反射された光は、画素aを中心として、図10のガウス分布を持った入射光量となる。また、隣接する画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・を中心とする光も画素aに入射し、光学的に畳み込みが行われる。
【0045】
上記のように撮影対象物25の各点の反射光は、濃度フィルタ22の持つ透過率特性により光量が制限されてイメージセンサ24に入射するので、例えば、濃度フィルタ22をガウス分布の特性とした場合、イメージセンサ24に入射する光に対してガウス分布を持つローパスフィルタ処理を施すことができる。
【0046】
なお、イメージセンサ24に入射する光が広がる所定範囲は、直径3画素の範囲に限らない。
上述した情報読取撮像装置21、41、51によれば、撮影対象物25から入射する光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。これにより、イメージセンサ24の画像信号に対してローパスフィルタの演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。
【0047】
ここまでの説明では,簡単のために濃度フィルタ22の透過率分布をガウス分布とし、また結果として得られるイメージセンサ24上の点像の光量分布もガウス分布としてきた。しかし一般的にはベースとなる光学系そのものが固有の光量分布を有しているため、この2つの分布は必ずしも一致しない。したがってイメージセンサ24上の光量分布を正確にガウス分布とするためには、ベースとなる光学系固有の分布を相殺するように濃度フィルタ22の透過率分布を予め調整しておく必要がある。以下図16によって詳細に説明する。
【0048】
図16(A)、(B)は濃度フィルタ22の透過率特性と、絞りの開口部に濃度フィルタが有る場合と無い場合のイメージセンサ24の受光光量との関係を示す図である。
図16(A)は濃度フィルタ22の径方向を示し、図16(B)は、濃度フィルタ22の中心から径方向の距離rと透過率の関係と、イメージセンサ24の注目画素(図7のA’点)の中心からの距離と光量との関係を示す図である。図16(B)の横軸は、濃度フィルタ22の中心からの距離と、注目画素の中心からの距離を示し、縦軸は、透過率と光量を示す。
【0049】
図16(B)の実線のグラフは、濃度フィルタ22の透過率を示し、点線のグラフは、濃度フィルタが有る場合と無い場合のイメージセンサ24の光量分布を示す。
図16(B)に点線で示すA’点光量分布(濃度フィルタ無し)は、レンズ23の結像面26を、イメージセンサ24の受光面の手前側または奥側にずらしてピントをぼかした状態で、濃度フィルタ22を使用しない場合のイメージセンサ24の光量分布を示している。この場合、濃度フィルタ22を使用していないので、注目画素(A’点の画素)を中心とする所定範囲の画素の光量分布は台形状となるが、一般的にはレンズ中心部より周辺部の方が集光量が少ない(暗い)ため完全な台形状とはならず、点線で示すようにrが大きくなるにつれ光量が低下するような分布となる。(なお、このままでもローパスフィルタ効果は得られるが特定の特性のローパスフィルタに限定される。)
図16(B)に点線で示すA’点光量分布(濃度フィルタ有り)は、レンズ23の結像面26を、イメージセンサ24の表面の手前側または奥側にずらしてピントをぼかした状態で、かつ濃度フィルタ22を使用した場合のイメージセンサ24の光量分布を示している。この場合、注目画素(A’点の画素)を中心とする所定範囲の画素の光量分布は、実線で示す濃度フィルタ22の透過率特性と前述した濃度フィルタ無しの光量分布を合成したものとなる。
【0050】
従って結果として得られるイメージセンサ上の光量分布を正確にガウス分布とするためには、実線の濃度フィルタの透過率分布をガウス分布そのものとはせず、濃度フィルタ無しの光量分布、すなわちベースの光学系固有の光量分布を相殺するように設計すればよい。
【0051】
また濃度フィルタ22の透過率特性を変化させることで、ガウス分布に限らず,イメージセンサ24に入射する光に対して光学的に任意のローパスフィルタ処理を施すことができる。
【0052】
上述した実施の形態は、濃度フィルタ22によって画像にガウス分布特性のローパスフィルタを施す場合について説明したが、本発明はガウス分布以外のローパスフィルタ特性を施す場合にも適用できる。
【0053】
本発明は、像側テレセントリック光学系以外の複数のレンズからなる光学系にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】撮像光学系の構成を示す図である。
【図2】撮像光学系の他の構成を示す図である。
【図3】撮影対象物の一例を示す図である。
【図4】ノイズが重畳された画像信号とLPF処理後の画像信号を示す図である。
【図5】従来の撮像装置のイメージセンサの出力を示す図である。
【図6】ガウスフィルタと移動平均フィルタの演算行列を示す図である。
【図7】第1の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図8】第2の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図9】第3の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図10】濃度フィルタの透過率特性を示す図である。
【図11】濃度フィルタと絞りを別部品にした場合の例を示す図である。
【図12】濃度フィルタと絞りを兼用した場合の例を示す図である。
【図13】注目画素のその周辺の画素の入射光量を示す図である。
【図14】実施の形態の動作説明図である。
【図15】イメージセンサの任意の画素列の入射光量を示す図である。
【図16】濃度フィルタの透過率特性とイメージセンサの光量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
21 情報読取用撮像装置
22、31、33 濃度フィルタ
23 レンズ
24 イメージセンサ
25 撮影対象物
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物から情報を読み取るための情報読取用撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の媒体に印刷された情報を読み取るために撮像装置が用いられる。図1及び図2は、紙などの媒体に印刷されたバーコード等の情報を読み取る撮像装置11の光学系の構成を示す図である。
【0003】
図1及び図2に示すように撮像装置11は、絞り12と、レンズ13(またはレンズモジュール16)と、イメージセンサ14とを有する。
撮影対象物15で反射された光は、絞り12により光路が制限され、レンズ13を通りイメージセンサ14で受光される。
【0004】
媒体に印刷された情報を撮像装置11により読み取る場合には、レンズ13とイメージセンサ14との距離を調整し、結像面をイメージセンサ14の表面に合致させることで鮮明な画像を取得するようにしている。
【0005】
しかしながら、鮮明な画像は情報量が多い反面、媒体の表面の凹凸などによる信号の変化が、本来の画像信号に対してノイズとして重畳されるという問題点がある。
図3(A)、(B)は、撮影対象物15の一例を示す図である。図3(A)に示すような紙などに印刷された画像を撮像装置11で読み取る場合には、紙面の細かい凹凸による信号の変化が、本来の画像信号にノイズとして乗ってしまう。
【0006】
図3(B)に示すような、手のひら内部の静脈を読み取る場合にも、静脈の周囲の体組織からの散乱光がノイズとして本来の画像信号に乗ってしまう、そのため、ローパスフィルタ(LPF)処理等の演算を施してノイズを除去する必要があった。
【0007】
図4(A)は、撮影対象物の任意のライン(例えば、図3(A)のラインA)のノイズが重畳された画像信号を示し、図4(B)は、ローパスフィルタ(LPF)処理によりそのノイズを除去した後の画像信号を示している。
【0008】
図5は、従来の撮像装置のイメージセンサ14の出力を示す図である。図5は、撮影対象物体上の任意の1点に対するイメージセンサ14の任意の画素の出力信号のレベルの分布(点像分布)を示しており、鮮明な画像が得られるよう結像面がセンサ面に合致しているため、出力信号のレベルの分布は、実質的に1画素に集中した波形となる。
【0009】
上述したように、撮像装置11で取得される画像を鮮明にすればするほど、媒体表面の凹凸などにより画像信号に高周波のノイズが乗ってしまう。
そこで、従来は、イメージセンサ14から出力される画像信号に対してローパスフィルタ処理の演算を施し高周波のノイズを除去していた。
【0010】
図6(A)、(B)は、ローパスフィルタ処理で用いられるガウスフィルタと移動平均フィルタの演算行列を示す図である。
図6(A)の3×3の演算行列の場合について説明すると、注目画素Q(a,b)は、左上の取得画素P(a−1,b+1)に「0.063」を乗算した値と、1つ上の取得画素P(a,b+1)に「0.125」を乗算した値と、右上の取得画素P(a+1,b+1)に「0.063」を乗算した値と、左隣の取得画素P(a−1,b)に「0.125
」を乗算した値と、取得画素P(a,b)に「0.25」を乗算した値と、右隣の取得画素P(a+1,b)に「0.125」を乗算した値と、左下の取得画P(a−1,b−1)に「0.063」を乗算した値と、1つ下の取得画素P(a,b−1)に「0.125」を乗算した値と、右下の取得画素P(a+1,b−1)に「0.063」を乗算した値の総和として算出される。
【0011】
上記の演算を各画素について行うことでガウスフィルタ処理を施した画像信号を得ることができる。
図6(B)の演算行列も同様であり、注目画素とその周辺の画素に対して、図6(B)に示す演算行列の値を乗算することで、移動平均フィルタ処理を施した画像信号を得ることができる。
【0012】
しかしながら、上記の演算行列を用いたローパスフィルタ処理は、撮像装置で読み取った全画素に対して演算行列の要素数分(例えば、3×3の行列であれば、9回)の演算を行う必要があり、画素数が多い場合には、画像処理の処理時間が長くなるという問題点があった。
【0013】
特許文献1には、指紋画像読取装置において、レンズとCCD撮像素子との距離を縮めて、レンズの焦点位置からずれた位置にCCD撮像素子を配置することで、指紋画像のノイズ成分を除去することが記載されている。
【0014】
特許文献1の発明は、CCD撮像素子で読み取る指紋画像のピントをぼかすことで高周波ノイズを目立たなくするものである。
【特許文献1】2003−50991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、情報読取用撮像装置において、画像処理の処理時間を短縮し、画像に対して所望のフィルタ処理を施すことである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の情報読取用撮像装置は、撮影対象物からの光の受光範囲を制限する絞りと、前記絞りの開口部または前記開口部の近傍に配置され、位置により異なる透過率を有するフィルタと、レンズと、イメージセンサとを有し、前記レンズの結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるように前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整し、前記フィルタにおいて前記所望の透過率特性が与えられた光が前記受光面において所定範囲に広がるようにした。
【0017】
この情報読取用撮像装置によれば、画像処理の処理時間を短縮できると共に、画像に対して光学的に所望のローパスフィルタ処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、情報読取用撮像装置における画像処理の処理時間を短縮できると共に、画像に対して光学的に所望のローパスフィルタ処理を施すことができる。また、画像処理の処理時間を短縮することで、例えば、リアルタイム処理が要求される情報読取用撮像装置に対して、比較的処理速度の遅いCPU等を使用することが可能となるので、処理速度の遅い安価なCPU等を使用して情報読取用撮像装置のコストを低減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。図7は、第1の実施の形態の情報読取用撮像装置21の構成を示す図である。情報読取用撮像装置21は、1次元または2次元バーコードを読み取るバーコードリーダ、指紋、静脈等を読み取る生体認証装置等に用いることができる。
【0020】
情報読取用撮像装置21は、絞り兼用の濃度フィルタ(フィルタ)22とレンズ23とイメージセンサ24とを有する。濃度フィルタ22は、レンズ23と撮影対象物25との間に配置されている。
【0021】
濃度フィルタ22は、外周部が光の受光角を制限する絞り部22aとして機能し、中心部が、絞り部22aにより光路が制限された光の透過率が位置により異なる濃度フィルタ部22bとして機能する光学フィルタ素子である。なお、フィルタの中心軸と直交する方向で位置により透過率が変化し、任意の透過率特性(ガウス分布など)を有する濃度フィルタ22としては、光の吸収率が変化する吸収型フィルタ、光の反射率が変化する反射型フィルタ等を用いることができる。
【0022】
図7において、撮影対象物25からの光は広がりながら濃度フィルタ22に入射する。撮影対象物25の各点の広がり持った光(これを光束と呼ぶ)は、濃度フィルタ22の絞り部22aによりレンズ23に入射する光の範囲が制限される。そして、絞り部22aにより光路が制限された光が、濃度フィルタ部22bを通過する際に、光束の中心から外に向かって光量が連続的に変化する光となる。この光束は、結像面(結像位置)26で結像した後、イメージセンサ24の受光面に向かって広がり、受光面において所定範囲の広がりを持った像となる。これは、結像面26がイメージセンサ24の受光面の手前側または奥側になるように、レンズ23とイメージセンサ24の距離が調整されているからである。
【0023】
イメージセンサ24の受光面における像の広がりは、注目画素と近傍の画素にかけて必要なため、光束の中心に対して直径3画素以上の円形の範囲である。
注目画素とその近傍画素の濃度値に対し、注目画素の新しい濃度値を得るために、例えば上記光量分布が直径3画素の場合には、図6(A)に示す3×3ガウスフィルタの演算を代替えできる。逆に7×7、9×9の強度の大きいLPF演算を代替えするためには、上記光量分布は、それぞれ直径7画素、9画素とすればよい。
【0024】
上述した第1の実施の形態によれば、濃度フィルタ22で所望の透過率特性を与え、受光面において所定範囲に広がる光をイメージセンサ24に入射することで、撮影対象物25の画像に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。従って、イメージセンサ24の出力信号に対してローパスフィルタ処理の演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。また。濃度フィルタ22の透過率特性を変更することで任意のローパスフィル処理を施すことができる。さらに、画像の処理時間を短縮することができるので、リアルタイム処理が必要なバーコードリーダや生体認証装置に処理速度の遅い安価なCPU等を使用できる。これにより、装置のコストを低減できる。
【0025】
図8は、第2の実施の形態の情報読取用撮像装置41の構成を示す図である。この第2の実施の形態は、レンズからイメージセンサ24に向かう光が光軸と平行となる像側テレセントリック光学系において、結像面26をイメージセンサ24の奥側(レンズから見て)に設定した場合の例である。
【0026】
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置41の光学系は、レンズ42、43、44、45と濃度フィルタ22からなるレンズモジュール46を有する。
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置41も、イメージセンサ24に入射する光が光
軸と平行である点、結像面26がイメージセンサ24の奥側である点を除けば、第1の実施の形態と同様である。
【0027】
第2の実施の形態の情報読取用撮像装置41においても、撮影対象物25の各点の反射光はイメージセンサ24の受光面で一定範囲に広がり、イメージセンサ24の各画素の入射光量は濃度フィルタ22の透過率特性により制限されたものとなる。
【0028】
この第2の実施の形態によれば、撮影対象物25から入射する光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。これにより、イメージセンサ24の画像信号に対してローパスフィルタの演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。また、濃度フィルタ22の透過率特性を変更することで任意のローパスフィルタ処理を光学的に実現できる。
【0029】
図9は、第3の実施の形態の情報読取用撮像装置51の構成を示す図である。
第3の実施の形態は、第2の実施の形態と基本的には同じであり、異なる点は、結像面26がイメージセンサ24の手前側にくるように設定した点である。
【0030】
図10は、濃度フィルタ22の透過率特性を示す図である。濃度フィルタ22は、図10に示すように円板状で、中心が最も透過率が高く、外周に向かって徐々に透過率が小さくなる透過率特性(例えば、ガウス分布)を有する。そして、濃度フィルタ22の外周部は、透過率が0となっており絞りとして機能する。
【0031】
図11及び図12は、濃度フィルタの他の例を示す図である。図11は、金属等の不透明部材の中心部に開口部32aを設けた絞り32に、別部品の濃度フィルタ31を挿入または接着する構造の例を示している。
【0032】
濃度フィルタ31は、例えば、ガラス基板に金属膜(例えば、クロム膜など)コーティングして作成する。金属膜をコーティングする際に、中央の膜厚を薄くし、周辺に向かって金属膜の厚みを増加させて光透過率を低下させることにより、ガウス分布等の任意の透過率特性を有する濃度フィルタ31を作成することができる。
【0033】
なお、絞り32と濃度フィルタ31を別部品にする場合、濃度フィルタ31を絞り32の開口部32aに挿入しても良いし、絞り32の下側で開口部32aの近傍に配置しても良い。
【0034】
図12は、絞りを兼用した濃度フィルタ33の例を示す図である。濃度フィルタ33の外周部の透過率を0にすることで絞りの機能を実現できる。例えば、金属膜をコーティングして作成する場合には、外周部の金属膜の膜厚を厚くして光の透過率を0にすることで、外周部を絞り部として機能させることができる。
【0035】
ここで、上述した濃度フィルタ22を用いた場合のイメージセンサ24の各点における光量分布について説明する。
図13は、注目画素aとその周囲の画素の光量分布を示す図である。図7の例では、イメージセンサ24の受光面の手前側で結像するように、レンズ23とイメージセンサ24の距離を調整してあるので、撮影対象物25のA点の光束は結像面26で結像した後、イメージセンサ24の受光面で一定範囲に広がって入射する。
【0036】
例えば、撮影対象物25のA点からの光束の中心を通る光は、イメージセンサ24のA’点(図7参照)に入射する。撮影対象物25のA点で反射され、濃度フィルタ22の右側(図7の正面から見て)の位置を通過した光は、イメージセンサ24のA’点の左側(図7の正面から見て)の点A’1点に入射する。また、濃度フィルタ22の左側の位置を通過した光は、イメージセンサ24のA’点の右側のA’2点に入射する。
【0037】
濃度フィルタ22は、図10に示すようなガウス分布の透過率特性を持っている。従って、撮影対象物25のA点で反射されて濃度フィルタ22を通過し、イメージセンサ24に入射する光の光量分布は、図13に示すように、注目画素aとその周囲の画素a+1、a−1、a+2、a−2の入射光量は、ガウス分布となる。これは、撮影対象物25のA点の反射光に対して光学的にガウス分布の特性を持つローパスフィルタ処理を施したことになる。
【0038】
ここで、上述した第1、第2及び第3の実施の形態の動作を、図14及び図15を参照して説明する。以下、複数枚のレンズを有する光学系において、レンズの間に濃度フィルタ22を配置し、かつイメージセンサ24の手前側で結像させた場合を例にとり説明する。
【0039】
図14(A)に示すように、撮影対象物25のA点で反射した光は広がりながらレンズ42、43に入射し、濃度フィルタ22の絞り部22aで光路が制限される。濃度フィルタ22は、図10に示すような透過率特性を有しているので、A点で反射され、濃度フィルタ22を通過した光は、光束の中心の光の透過率が最も高く、周辺に行くほど透過率が低くなる。濃度フィルタ22を通過した光は、レンズ44、45により光軸と平行な光に変換され、結像面26で結像した後、イメージセンサ24の受光面で所定範囲(例えば、直径3画素以上の範囲)に広がる。
【0040】
図14(B)は、イメージセンサ24の各画素の入射光量の分布を示している。例えば、撮影対象物25のA点の反射光は、イメージセンサ24の対応する画素とその周囲の画素に入射する。A点の反射光については、図14(B)に示すように、光束の中心の光が入射する中心画素(図13の注目画素a)の入射光量が最も多く、中心画素から離れるほど入射光量が減少するガウス分布を示す。
【0041】
撮影対象物25のA点の隣の点の反射光については、イメージセンサ24の隣の中心画素(図13の画素a+1)の入射光量が最も多く、中心画素から離れるほど入射光量が減少するガウス分布を示す。以下、同様に他のイメージセンサ24の各画素の入射光量は、図14(B)に示すようなガウス分布を持つ。
【0042】
撮影対象物25のA点からの光は、イメージセンサ24の対応する画素aと隣接する複数の画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・に、濃度フィルタ22の透過率特性で決まる光量分布で入射する。同時に、隣接する画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・を中心画素として入射する光の一部が画素aにも入射する。これにより、光学的な畳み込みが行われることになる。これは、イメージセンサ24の出力信号に対する畳み込み演算により行っていたローパスフィルタ演算処理を光学的に代替したことを意味する。
【0043】
図15は、イメージセンサ24の任意の画素列における入射光量を示す図である。
上述したように撮影対象物25のA点からの光(光束)は広がりながら濃度フィルタ22に入射するが、絞り部22aにより入射光が制限され、濃度フィルタ部22bを通る光束は、濃度フィルタ22の透過率特性に従って光束の中心から周辺に向かって透過率が連続して低下していく。この光束は、結像面26で一旦結像するが、イメージセンサ24に入射する際に、所定範囲(例えば、光束の中心に対して直径径3画素以上の範囲)に広がる。
【0044】
従って、撮影対象物25の各点で反射され、濃度フィルタ22を通過してイメージセン
サ24に入射する光束は、図15に示すように、光束の中心の光が入射する注目画素を中心として一定の光量分布を持つ。例えば、撮影対象物25のA点で反射された光は、画素aを中心として、図10のガウス分布を持った入射光量となる。また、隣接する画素a+1、a−1、a+2、a−2・・・を中心とする光も画素aに入射し、光学的に畳み込みが行われる。
【0045】
上記のように撮影対象物25の各点の反射光は、濃度フィルタ22の持つ透過率特性により光量が制限されてイメージセンサ24に入射するので、例えば、濃度フィルタ22をガウス分布の特性とした場合、イメージセンサ24に入射する光に対してガウス分布を持つローパスフィルタ処理を施すことができる。
【0046】
なお、イメージセンサ24に入射する光が広がる所定範囲は、直径3画素の範囲に限らない。
上述した情報読取撮像装置21、41、51によれば、撮影対象物25から入射する光に対して光学的にローパスフィルタ処理を施すことができる。これにより、イメージセンサ24の画像信号に対してローパスフィルタの演算を行う必要が無くなるので、画像処理の処理時間を短縮できる。
【0047】
ここまでの説明では,簡単のために濃度フィルタ22の透過率分布をガウス分布とし、また結果として得られるイメージセンサ24上の点像の光量分布もガウス分布としてきた。しかし一般的にはベースとなる光学系そのものが固有の光量分布を有しているため、この2つの分布は必ずしも一致しない。したがってイメージセンサ24上の光量分布を正確にガウス分布とするためには、ベースとなる光学系固有の分布を相殺するように濃度フィルタ22の透過率分布を予め調整しておく必要がある。以下図16によって詳細に説明する。
【0048】
図16(A)、(B)は濃度フィルタ22の透過率特性と、絞りの開口部に濃度フィルタが有る場合と無い場合のイメージセンサ24の受光光量との関係を示す図である。
図16(A)は濃度フィルタ22の径方向を示し、図16(B)は、濃度フィルタ22の中心から径方向の距離rと透過率の関係と、イメージセンサ24の注目画素(図7のA’点)の中心からの距離と光量との関係を示す図である。図16(B)の横軸は、濃度フィルタ22の中心からの距離と、注目画素の中心からの距離を示し、縦軸は、透過率と光量を示す。
【0049】
図16(B)の実線のグラフは、濃度フィルタ22の透過率を示し、点線のグラフは、濃度フィルタが有る場合と無い場合のイメージセンサ24の光量分布を示す。
図16(B)に点線で示すA’点光量分布(濃度フィルタ無し)は、レンズ23の結像面26を、イメージセンサ24の受光面の手前側または奥側にずらしてピントをぼかした状態で、濃度フィルタ22を使用しない場合のイメージセンサ24の光量分布を示している。この場合、濃度フィルタ22を使用していないので、注目画素(A’点の画素)を中心とする所定範囲の画素の光量分布は台形状となるが、一般的にはレンズ中心部より周辺部の方が集光量が少ない(暗い)ため完全な台形状とはならず、点線で示すようにrが大きくなるにつれ光量が低下するような分布となる。(なお、このままでもローパスフィルタ効果は得られるが特定の特性のローパスフィルタに限定される。)
図16(B)に点線で示すA’点光量分布(濃度フィルタ有り)は、レンズ23の結像面26を、イメージセンサ24の表面の手前側または奥側にずらしてピントをぼかした状態で、かつ濃度フィルタ22を使用した場合のイメージセンサ24の光量分布を示している。この場合、注目画素(A’点の画素)を中心とする所定範囲の画素の光量分布は、実線で示す濃度フィルタ22の透過率特性と前述した濃度フィルタ無しの光量分布を合成したものとなる。
【0050】
従って結果として得られるイメージセンサ上の光量分布を正確にガウス分布とするためには、実線の濃度フィルタの透過率分布をガウス分布そのものとはせず、濃度フィルタ無しの光量分布、すなわちベースの光学系固有の光量分布を相殺するように設計すればよい。
【0051】
また濃度フィルタ22の透過率特性を変化させることで、ガウス分布に限らず,イメージセンサ24に入射する光に対して光学的に任意のローパスフィルタ処理を施すことができる。
【0052】
上述した実施の形態は、濃度フィルタ22によって画像にガウス分布特性のローパスフィルタを施す場合について説明したが、本発明はガウス分布以外のローパスフィルタ特性を施す場合にも適用できる。
【0053】
本発明は、像側テレセントリック光学系以外の複数のレンズからなる光学系にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】撮像光学系の構成を示す図である。
【図2】撮像光学系の他の構成を示す図である。
【図3】撮影対象物の一例を示す図である。
【図4】ノイズが重畳された画像信号とLPF処理後の画像信号を示す図である。
【図5】従来の撮像装置のイメージセンサの出力を示す図である。
【図6】ガウスフィルタと移動平均フィルタの演算行列を示す図である。
【図7】第1の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図8】第2の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図9】第3の実施の形態の撮像装置の構成を示す図である。
【図10】濃度フィルタの透過率特性を示す図である。
【図11】濃度フィルタと絞りを別部品にした場合の例を示す図である。
【図12】濃度フィルタと絞りを兼用した場合の例を示す図である。
【図13】注目画素のその周辺の画素の入射光量を示す図である。
【図14】実施の形態の動作説明図である。
【図15】イメージセンサの任意の画素列の入射光量を示す図である。
【図16】濃度フィルタの透過率特性とイメージセンサの光量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
21 情報読取用撮像装置
22、31、33 濃度フィルタ
23 レンズ
24 イメージセンサ
25 撮影対象物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象物からの光の受光範囲を制限する絞りと、
前記絞りの開口部または前記開口部の近傍に配置され、位置により異なる透過率を有するフィルタと、
レンズと、
イメージセンサとを有し、
前記レンズの結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるように前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整し、前記フィルタにおいて前記所望の透過率特性が与えられた光が前記受光面において所定範囲に広がるようにした情報読取用撮像装置。
【請求項2】
前記結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるようにしたときの前記イメージセンサの受光面における像の広がりが、直径3画素以上となるように、前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整した請求項1記載の情報読取用撮像装置。
【請求項3】
前記フィルタの透過率特性はガウス分布を有する請求項1または2記載の情報読取用撮像装置。
【請求項4】
前記フィルタは、前記撮影対象物とレンズとの間に配置されている請求項1,2または3記載の情報読取用撮像装置。
【請求項5】
前記フィルタは前記絞りと一体に形成されている請求項1、2、3または4記載の情報読取用撮像装置。
【請求項6】
前記レンズは、複数のレンズからなる光学系であり、前記フィルタは前記複数のレンズの間に配置されている請求項1,2、3、4または5記載の情報読取用撮像装置。
【請求項1】
撮影対象物からの光の受光範囲を制限する絞りと、
前記絞りの開口部または前記開口部の近傍に配置され、位置により異なる透過率を有するフィルタと、
レンズと、
イメージセンサとを有し、
前記レンズの結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるように前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整し、前記フィルタにおいて前記所望の透過率特性が与えられた光が前記受光面において所定範囲に広がるようにした情報読取用撮像装置。
【請求項2】
前記結像位置が前記イメージセンサの受光面の手前または奥側になるようにしたときの前記イメージセンサの受光面における像の広がりが、直径3画素以上となるように、前記レンズと前記イメージセンサの距離を調整した請求項1記載の情報読取用撮像装置。
【請求項3】
前記フィルタの透過率特性はガウス分布を有する請求項1または2記載の情報読取用撮像装置。
【請求項4】
前記フィルタは、前記撮影対象物とレンズとの間に配置されている請求項1,2または3記載の情報読取用撮像装置。
【請求項5】
前記フィルタは前記絞りと一体に形成されている請求項1、2、3または4記載の情報読取用撮像装置。
【請求項6】
前記レンズは、複数のレンズからなる光学系であり、前記フィルタは前記複数のレンズの間に配置されている請求項1,2、3、4または5記載の情報読取用撮像装置。
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図3】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図3】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−87849(P2010−87849A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254848(P2008−254848)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】
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