説明

感光性樹脂分散剤および感光性顔料分散体組成物

【課題】アルカリ現像性に有効な酸性基を有し、レジスト材料に使用することができる、顔料分散性、耐熱性、耐久性などに優れる光硬化性をもつ感光性樹脂分散剤を提供する。
【解決手段】1分子中に平均で2〜10個のイソシアネート基を含有し、前記イソシアネート基1個あたりの数平均分子量が100〜1000である多官能ポリイソシアネート化合物(a)中のイソシアネート基と、 末端に水酸基を有し、さらにエチレン性不飽和基を有するアクリル重合体(b)中の水酸基とを反応させてなる感光性樹脂分散剤。
【効果】得られた感光性樹脂分散剤は、オフセットインキ、グラビアインキ、着色コーティング剤、インクジェットインキ、集積回路用レジスト、プリント配線板用レジスト、カラーフィルター用着色ペースト、ブラックマトリックス用ペースト等に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規にして有用なる顔料粒子の感光性樹脂分散剤および該分散剤を用いた感光性顔料分散体組成物に関する。さらに詳しくは、光硬化性の着色コーティング剤や印刷インキなどの広範囲な用途に利用でき、それら用途への使用適性を向上させ得る感光性樹脂分散剤、およびそれを含有する感光性顔料分散体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に各種着色コーティング剤または印刷インキ組成物中において、鮮明な色調と高い着色力を発揮する実用上有用な顔料は微細な粒子からなっている。しかしながら、顔料の微細な粒子をオフセットインキ、グラビアインキおよび着色コーティング剤のようなビヒクルに分散する場合、安定な分散体を得ることが難しく、製造作業上および得られる製品の価値に種々の問題を引き起こすことが知られている。例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出しや輸送が困難となるばかりでなく、更に悪い場合は貯蔵中にゲル化を起こし使用困難となることがある。さらに展色物の塗膜表面に関しては光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生じることがある。また異種の顔料を混合して使用する場合、凝集による色別れや、沈降などの現象により展色物に色むらや著しい着色力の低下が現れることがある。
【0003】
以上のような種々の問題点を解決するために、これまでも数多くの提案がされている。例えば、1.分散剤や分散助剤としてノニオン性、カチオン性もしくはアニオン性界面活性剤、または多価カルボン酸などの湿潤剤を用いる方法、2.特許文献1、特許文献2に見られるように、有機顔料を母体骨格として側鎖に酸性基や塩基性基を置換基として有する顔料誘導体を分散剤として混合する方法、3.特許文献3、特許文献4に見られるように、有機色素とポリマーを結合させたポリマー分散剤を用いる方法、4.特許文献5、特許文献6に代表されるようなポリマー分散剤を混合する方法が提案されている。
【0004】
一方、紫外線、電子線などによる光硬化性を有する樹脂は、様々な分野で利用されている。特に近年、電子材料関連においては、従来には達成し得なかった高いレベルの光学特性、耐熱性、耐薬品性、電気特性、低吸水性、難燃性、機械特性などが求められている。例えば、カラーフィルターやブラックマトリックスなどを始めとする表示材料部品の製造工程では、フォトリソグラフィー技術を用いて微細パターンが形成されている。再現性に優れたパターンを形成するには、高感度の光硬化性と優れたアルカリ現像性が必要となる。さらに、ポストベークでの耐熱性や、硬化後の光学特性、電気特性、耐久性などが必要となる。さらに、フィラーや顔料を含む組成物に使用する場合は、分散安定性も重要な機能となる。
【0005】
前述した分散剤も光硬化性の顔料組成物に使用されているが、分散剤自身に硬化性を有していないため、満足いく硬化塗膜を得ることができず、耐熱性や耐久性に問題が発生することがしばしばみられる。さらに、前述した分散剤をレジスト材料として使用する場合、再現性に優れたパターンを形成するための、高感度な光硬化性と優れたアルカリ現像性が十分ではない。
【特許文献1】特公昭41−2466号公報
【特許文献2】USP2855403号明細書
【特許文献3】特開昭63−175080号公報
【特許文献4】特開平4−139262号公報
【特許文献5】特開平9−169821号公報
【特許文献6】特表2002−513669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、顔料分散性、耐熱性、耐久性などに優れる光硬化性をもつ感光性樹脂分散剤を提供することにある。さらに詳しくは、アルカリ現像性に有効な酸性基を有し、レジスト材料に使用することができる感光性樹脂分散剤を提供することにある。また、本発明の感光性樹脂分散剤は、オフセットインキ、グラビアインキ、着色コーティング剤、インクジェットインキ、集積回路用レジスト、プリント配線板用レジスト、カラーフィルター用着色ペースト、ブラックマトリックス用ペースト等に適する、非集合性、流動性に優れた安定な感光性顔料分散体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、1分子中に平均で2〜10個のイソシアネート基を含有し、前記イソシアネート基1個あたりの数平均分子量が100〜1000である多官能ポリイソシアネート化合物(a)中のイソシアネート基と、
末端に水酸基を有し、さらにエチレン性不飽和基を有するアクリル重合体(b)中の水酸基とを反応させてなる感光性樹脂分散剤に関する。
【0009】
さらに本発明は、同一分子内に活性水素、および3級アミノ基もしくは窒素含有ヘテロ環構造を有する化合物(c)を反応させてなる上記感光性樹脂分散剤に関する。
【0010】
さらに本発明は、アクリル重合体(b)が、カルボキシル基を有することを特徴とする上記感光性樹脂分散剤に関する。
【0011】
さらに本発明は、アクリル重合体(b)が、
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(d)とそれ以外のエチレン性不飽和単量体(e)とを共重合してなるカルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)中のカルボキシル基と、
カルボキシル基と反応しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体(f)中のカルボキシル基と反応しうる官能基と、を反応してなるものである上記感光性樹脂分散剤に関する。
【0012】
さらに本発明は、カルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)が、分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物(g)を連鎖移動剤として使用して、エチレン性不飽和単量体を重合してなるものである上記感光性樹脂分散剤に関する。
【0013】
さらに本発明は、カルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)が、リビングラジカル重合により重合してなるものである上記感光性樹脂分散剤に関する。
【0014】
さらに本発明は、上記感光性樹脂分散剤および顔料を含む感光性顔料分散体組成物に関する。
【0015】
さらに本発明は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(d)とそれ以外のエチレン性不飽和単量体(e)とを共重合してなるカルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)と、
カルボキシル基と反応しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体(f)とを反応して、末端に水酸基を有し、さらにエチレン性不飽和基を有するアクリル重合体(b)を製造する工程、および、
1分子中に平均で2〜10個のイソシアネート基を含有し、前記イソシアネート基1個あたりの数平均分子量が100〜1000である多官能ポリイソシアネート化合物(a)と、前記アクリル重合体(b)とを反応する工程を含む感光性樹脂分散剤の製造方法に関する。
【0016】
さらに本発明は、カルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)が、分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物(g)を連鎖移動剤として使用して、エチレン性不飽和単量体を重合することを特徴とする上記感光性樹脂分散剤の製造方法に関する。
【0017】
さらに本発明は、カルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)が、リビングラジカル重合により重合することを特徴とする上記感光性樹脂分散剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、顔料分散性、耐熱性、耐久性などに優れる光硬化性をもつ感光性樹脂分散剤を提供することができた。さらに詳しくは、アルカリ現像性に有効な酸性基を有し、レジスト材料に使用することができる感光性樹脂分散剤を提供することができた。また、本発明の感光性樹脂分散剤は、オフセットインキ、グラビアインキ、着色コーティング剤、インクジェットインキ、集積回路用レジスト、プリント配線板用レジスト、カラーフィルター用着色ペースト、ブラックマトリックス用ペースト等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、1分子中に平均で2〜10個のイソシアネート基を含有し、前記イソシアネート基1個あたりの数平均分子量が100〜1000である多官能ポリイソシアネート化合物(a)中のイソシアネート基と、末端に水酸基を含有するアクリル重合体(b)中の水酸基とを反応させてなる、樹脂分散剤であって、前記アクリル重合体(b)が、さらにエチレン性不飽和基を有することを特徴とする感光性樹脂分散剤である。
【0021】
1分子中に平均で2〜10個のイソシアネート基を含有し、前記イソシアネート基1個あたりの数平均分子量が100〜1000である多官能ポリイソシアネート化合物(a)としては、例えば、トリメチロールプロパンに代表されるようなポリオールとジイソシアネートの反応物であるアダクト体(例えばスミジュールL75、住友バイエル社製)、または、ジイソシアネートからビュレット反応によって得られるビュレット体(例えばスミジュールN3200、住友バイエル社製)、または、ジイソシアネートの環形成によって生成されるイソシアヌレート体(例えばデスモジュールIL、スミジュールN3300、デスモジュールHL、デスモジュールZ4470、住友バイエル社製)、または、ジフェニルメタンジイソシアネートのポリメリック体(例えばスミジュール44V70、住友バイエル社製)などがあげられる。
【0022】
上記に例示した多官能ポリイソシアネート化合物(a)におけるイソシアネート基1個あたりの数平均分子量と、イソシアネート基の平均個数とを以下に示す。スミジュールL75(243,2.7個)、スミジュールN3200(183,2.6個)、デスモジュールIL(268,3.3個)、スミジュールN3300(193,2.6個)、デスモジュールHL(240,3.6個)、デスモジュールZ4470(249,2.7個)、スミジュール44V70(135,2.8個)である。ちなみに、イソシアネート基1個あたりの数平均分子量はイソシアネート基当量ともいう。
【0023】
上記した多官能ポリイソシアネート(a)は、ジイソシアネートの重合体あるいは、ジイソシアネートとポリオールの付加体からなり、1分子中に平均で2個以上のイソシアネート基を含有し、分子量に分布を持った化合物である。これらの多官能ポリイソシアネート(a)を作成するに当たって使用するジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環式のジイソシアネートなどがあげられる。芳香族のジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等があげられる。また、脂肪族のジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等があげられる。また、脂環式のジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート等があげられる。これらのポリイソシアネートは、単独で、または2種以上を混合で用いることができる。
【0024】
また、これらのジイソシアネートは、本発明の感光性樹脂分散剤を作成する際に、イソシアネート基1個あたりの数平均分子量が100〜1000であり、1分子中に平均で2〜10個のイソシアネート基を含有する多官能ポリイソシアネート化合物(a)と併用して使用することもできる。
【0025】
一方、多官能ポリイソシアネート化合物(a)と反応させる末端に水酸基を含有するアクリル重合体(b)は、さらにエチレン性不飽和基を有しており、このことにより樹脂分散剤へ容易に感光性を付与することができる。また、前記アクリル重合体(b)は、樹脂分散剤の溶媒親和部にあたり、様々な顔料分散体組成物に用いられる多くの溶媒に適応させるために組成を調整する必要がある。アクリル重合体の場合、様々な溶解性を持つ多数のモノマーが存在し、それらを溶媒にあわせて適宜使用することで樹脂分散剤として最適な溶媒親和部を調整することができる。また、必要に応じて、カルボキシル基を比較的簡単に導入することもできる。後述するように、カルボキシル基を導入することで容易にエチレン性不飽和基をアクリル重合体に導入できると共に、樹脂分散剤自身にアルカリ現像性を付与することができる。
【0026】
次に、アクリル重合体(b)について説明する。アクリル重合体(b)は、重合体末端に水酸基を有し、かつ、重合体中にエチレン性不飽和基を有している。アクリル重合体(b)は、例えば、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(d)と、それ以外のエチレン性不飽和単量体(e)とを共重合してカルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)とした後、さらに、カルボキシル基と反応しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体(f)を反応させることで得ることができる。
【0027】
まず、アクリル重合体(b)にエチレン性不飽和基を導入する方法について説明する。
【0028】
最初に、重合体末端に水酸基を有し、かつ、重合体中にカルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)を重合した後に、アクリル重合体(b1)中のカルボキシル基と、カルボキシル基と反応しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体(f)中のカルボキシル基と反応しうる官能基とを反応させることで得られる。また、アクリル重合体(b1)をまず多官能ポリイソシアネート化合物(a)と反応させた後にエチレン性不飽和単量体(f)を反応させてもかまわない。
【0029】
単量体(f)としては、カルボキシル基と反応しうる官能基と、エチレン性不飽和基とを有する化合物であれば特に制限されるものではない。カルボキシル基と反応しうる官能基としては、例えば、例えば、エポキシ基、オキセタン基、ビニル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、スルトン基、アジリジン基、アミノ基、テトラヒドロフラン誘導体基などが挙げられ、中でも反応性に有利なエポキシ基が特に有用である。
【0030】
以下に単量体(f)の一部を例示する。
【0031】
エポキシ基とエチレン性不飽和基とを有する化合物としては、公知のものを使用することができる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、グリシジルアリルエーテル、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ビニル−1−シクロヘキセン−1,2−エポキシド、グリシジルシンナメート、1,3−ブタジエンモノエポキサイド、セロキサイド2000(ダイセル化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0032】
その他、例を挙げると、オキセタン基とエチレン性不飽和基とを有する化合物としては、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート等、ビニル基とエチレン性不飽和基とを有する化合物としては、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート等を使用することができる。
【0033】
前記単量体(f)は、前記アクリル重合体(b1)の重合に使用したカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(d)中のカルボキシル基1モルに対して、前記単量体(f)中のカルボキシル基に反応しうる官能基を0.1〜2モルの割合で反応させるのが好ましい。この範囲の中で特に、1モル未満を反応させた場合、アクリル重合体(b)には、カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを存在させることができるためより好ましい。カルボキシル基を存在させることでアルカリ現像性や熱硬化性を付与でき、また、エチレン性不飽和基を存在させることで感光性を付与できる。
【0034】
これらの反応を進行させるときには、必要に応じて、アミン類等の触媒を添加して行っても良い。使用される触媒としては公知の触媒を使用することができる。触媒は、以下の化合物が挙げられる。触媒の好ましい具体例を以下に示すが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
(1)3級アミン類及び/又はその塩類トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−メチルピペラジン等
(2)イミダゾール類及び/又はその塩類2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−1]−エチル−S−トリアジン等
(3)ジアザビシクロ化合物類
1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデカン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、1,4−ジアビシクロ[2,2,2,]オクタン等
(4)ホスフィン類
トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィン等
(5)ホスホニウム塩類
テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレート等、が挙げられる。
【0035】
上記触媒の配合割合は、カルボキシル基と反応しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体(f)100重量部に対し、触媒が0.01〜10重量部である。触媒が0.01重量部未満であると反応が遅くなり、10重量部を越えると硬化物の耐水性が低下する場合がある。
【0036】
カルボキシル基と、カルボキシル基と反応しうる官能基との反応を進行させるときには、用いるカルボキシル基と反応しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体(f)の軟化温度が反応温度範囲よりも低い場合には無溶剤にて行うことができる。また、用いる単量体(f)の軟化温度に関わらず適当な溶剤を用いて行うこともできる。この時用いる溶剤としては、単量体(f)の有する官能基と反応しないものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、アセトン、ベンゼン等の公知の溶剤を使用できる。
【0037】
次に、アクリル重合体(b)における、重合体末端に水酸基を導入する方法について説明する。本発明では、アクリル重合体(b)を多官能ポリイソシアネート化合物(a)に反応させる場合、アクリル重合体(b)の末端水酸基は、片末端に存在する方が好ましい。両末端に存在した場合、どちらも多官能ポリイソシアネート化合物(a)中のイソシアネート基と反応する可能性があり、溶媒親和部として十分に機能できないことがある。
【0038】
アクリル重合体(b)は、重合体末端に水酸基を有し、かつ、重合体中にカルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)を重合した後に、アクリル重合体(b1)と、カルボキシル基と反応しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体(f)とを反応させることで得られる。アクリル重合体(b1)は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(d)と、それ以外のエチレン性不飽和単量体(e)とを共重合することで得ることができるが、末端、特に片末端に水酸基を導入する方法は、例えば、以下のような2つの方法がある。
【0039】
第一の製造方法は、分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物(g)を連鎖移動剤として使用してラジカル重合することで製造できる。この方法で製造することにより、効率的に片末端に水酸基を有するアクリル重合体(b1)を得ることができる。分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物(g)としては、例えば、メルカプトメタノール、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、1−メルカプト−2− ブタノール、2−メルカプト−3−ブタノールなどがあげられる。
【0040】
上記化合物(g)を、目的とする分子量にあわせてエチレン性不飽和単量体と混合して加熱することで片末端アクリル樹脂(b1)を合成することができる。好ましくは、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、1〜30重量部の化合物(g)を用い、塊状重合または溶液重合を行う。反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃、反応時間は3〜30時間、好ましくは5〜20時間である。
【0041】
重合の際、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、アゾ系化合物および有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等があげられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等があげられる。これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。
【0043】
第二の製造方法は、リビングラジカル重合により製造することができる。リビングラジカル重合は、一般的なラジカル重合に起こる副反応が抑制され、さらには重合の成長が均一に起こる為、容易にブロックポリマーや分子量の揃った樹脂が合成できる事が知られている。なかでも、有機ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法は、広範囲の単量体に適応できる点、既存の設備に適応可能な重合温度を採用できるなどの点で注目を集めている。
【0044】
リビングラジカル重合により製造する場合、以下(P)、(Q)に示すに二つの方法を用いることができる。
【0045】
(P)溶媒親和部に相当する部分をまず重合した後、水酸基を含有するエチレン性不飽和単量体を1分子重合することで片末端に水酸基を有するアクリル樹脂を得ることができる。この場合、水酸基を含有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0046】
本発明に使用する原子移動ラジカル重合では、一般的なラジカル重合中に発生する副反応が抑制される為に、重合の際に添加する原子移動ラジカル重合の開始剤とラジカル重合性モノマーとの仕込み比によって、分散樹脂の分子量を自由にコントロールできる。
【0047】
原子移動ラジカル重合法にはレドックス触媒として銅、ルテニウム、鉄、ニッケルなどの遷移金属錯体を用いて行われ、使用される遷移金属錯体の具体的な例としては、塩化銅(I)、臭化銅(I)などの低原子価のハロゲン化遷移金属が挙げられるが、重合速度をコントロールするために、周知の方法に従って塩化銅(II)や臭化銅(II)などの高原子価の遷移金属を重合系に添加してもよい。
【0048】
原子移動ラジカル重合法に使用される開始剤としては公知のものを使用できるが、主に反応性の高い炭素ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられる。具体的に例示すると、ブロモイソ酪酸エチル、ブロモ酪酸エチル、クロロイソ酪酸エチル、クロロ酪酸エチル、2−ブロモメチルパラトルエンスルホン酸クロライド、ブロモエチルベンゼン、クロロエチルベンゼンなどがあげられる。
【0049】
上記金属錯体には有機配位子が使用される。有機配位子は、重合溶媒への可溶性およびレドックス触媒の可逆的な変化を可能にするために使用される。金属の配位原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子などが挙げられるが、好ましくは窒素原子またはリン原子である。有機配位子の具体例としては、スパルテイン、2,2'-ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等があげられる。
【0050】
前記の遷移金属と有機配位子とは、別々に添加して重合体中で金属錯体を生成させてもよいし、予め金属錯体を合成して重合系へ添加しても良い。特に、銅の場合前者の方法が好ましく、ルテニウム、鉄、ニッケルは後者の方法が好ましい。
【0051】
予め合成されるルテニウム、鉄、ニッケル錯体の具体例としては、トリストリフェニルホスフィノニ塩化ルテニウム(RuCl2(PPh33)、ビストリスフェニルホスフィノニ塩化鉄(FeCl2(PPh32)、ビストリスフェニルホスフィノニ塩化ニッケル(NiCl2(PPh32)、ビストリブチルホスフィノニ臭化ニッケル(NiBr2(PBu3)2)等があげられる。
【0052】
上記原子移動ラジカル重合において、原子移動ラジカル重合の開始剤は、エチレン性不飽和単量体全体に対し、通常合わせて0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜2モル%の割合で用いられる。また、遷移金属の使用量は、ハロゲン化物などの形態として、開始剤1モルに対して、通常0.03〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの割合で用いられる。さらに、その配位子は、上記の遷移金属(ハロゲン化物などの形態)1モルに対して、通常1〜5モル、好ましくは2〜3モルの割合で用いられる。上記原子移動ラジカル重合の開始基を有する芳香環、複素環、縮合芳香環と遷移金属および配位子とをこのような使用割合にすると、リビングラジカル重合の反応性、生成ポリマーの分子量などに好結果が得られる。
【0053】
このような原子移動ラジカル重合は無溶剤でも進行させることができるし、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどの溶剤の存在下で進行させてもよい。溶剤を用いる場合、重合速度の低下を防ぐため、重合終了後の溶剤濃度が50重量%以下となる少量の使用量とするのがよい。無溶剤または少量の溶剤量でも、重合熱の制御などに関する安全性の問題は特に無く、むしろ溶剤削減によって経済性や環境対策などの面で好結果が得られる。
【0054】
重合条件としては、重合速度や触媒の失活の点より、60〜130℃の重合温度で、最終的な分子量や重合温度にも依存するが、約1〜100時間の重合時間とすればよい。また、重合反応に際しては、酸素による重合触媒の失活を防ぐ為、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われるのが望ましい。
【0055】
重合反応終了後、例えば重合反応系を0℃以下、好ましくは−78℃程度に冷却して反応を停止させ、周知の方法に従って、残存単量体および/または溶剤の除去、適当な溶媒中での再沈殿、沈殿した重合体の濾過または遠心分離、重合体の洗浄および乾燥を行う事ができる。必要に応じ、THF、トルエン等の有機溶媒で反応混合液を希釈し、希塩酸やアミン水溶液などで洗浄、またはアルミナ・シリカまたはクレーのカラム若しくはパッドに通す、還元剤やハイドロサルタイト類などの吸着剤を加えた後に濾過・遠心分離するなど、周知の方法により重合系に含まれる遷移金属などを除去した後、揮発分を蒸発させることによって本発明に使用する末端に水酸基を含有するアクリル樹脂を得ることができる。
【0056】
(Q)原子移動ラジカル重合の開始剤として、水酸基を有する化合物を使用することで、片末端に水酸基を有するアクリル樹脂を得ることができる。開始剤としては、水酸基を含有するハロゲン化物や水酸基を含有するハロゲン化スルホニル化合物であれば特に制限なく使用することができる。
【0057】
アクリル重合体(b1)の重合に使用できるカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(d)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などから1種または2種以上を選択することができる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(d)を使用することで、本発明の樹脂分散剤にアルカリによる溶解性を付与することができ、前述したように容易に変性してエチレン性不飽和基を導入できる。さらに、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する硬化剤を用いることで熱硬化性を持った樹脂分散剤としての使用が可能となる。樹脂分散剤としての分散性に関しても、溶媒親和部の溶解性を容易に調整することができ、アクリル重合体部分の組成を大きく変えることなく分散剤としての機能を最適化できる。
【0058】
それ以外のエチレン性不飽和単量体(e)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類があげられる。
【0059】
また、上記アクリル単量体と併用できる単量体として、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類があげられる。
【0060】
重合体末端に水酸基を有し、かつ重合体中にエチレン性不飽和基を有するアクリル重合体(b)の数平均分子量としては、通常500〜30000が好ましい。上記数平均分子量が500未満であると、溶媒親和部による立体反発の効果、溶剤溶解性または樹脂との相溶効果が少なく、顔料の凝集を防ぐことが困難となり、分散体の粘度が上昇してしまうことがある。また数平均分子量が30000以上であると、溶媒親和部の絶対量が増えてしまい、分散性の効果自体が少なくなることがある。
【0061】
本発明の感光性樹脂分散剤は、前記多官能ポリイソシアネート化合物(a)と、前記末端に水酸基を有するアクリル重合体(b)とを反応させて製造する。多官能ポリイソシアネート化合物(a)中のイソシアネート基1モルに対して、アクリル重合体(b)中の水酸基を0.1〜1.5モルの範囲で使用するのが好ましい。
【0062】
上記反応に用いられる触媒としては、公知の触媒を使用することができる。例えば3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0063】
3級アミン系化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0064】
有機金属系化合物としては錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。錫系化合物としては、例えばジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジアセテ−ト、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテ−ト、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテ−ト、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネ−ト、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネ−トなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。これらは単独使用、もしくは併用することもできる。
【0065】
さらに、多官能ポリイソシアネート化合物と反応させる化合物として、同一分子内に、活性水素、および、3級アミノ基もしくは窒素原子含有ヘテロ環構造を有する化合物(c)を、分散しようとする顔料粒子の分散性に適応するように使用することができる。
【0066】
活性水素を含有する官能基として、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、チオール基などがあげられる。
【0067】
また、窒素原子含有ヘテロ環構造を有する官能基として、トリアゾール基、ピリミジン基、ピラゾール基、テトラゾール基、インドール基、カルバゾール基、インダゾール基、イミダゾール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、アクリジン基、モルホリン基、ピロリジン基、ピペラジン基、ベンゾトリアゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾチアジアゾール基、ベンゾオキサゾール基、トリアジン基などがあげられる。
【0068】
同一分子内に活性水素、および、3級アミノ基もしくは窒素含有ヘテロ環構造を有する化合物(c)としては、2 − ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジプロピルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジプロピル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスチジン、2−アミノイミダゾール、1−(2−アミノエチル)イミダゾール、1 − ( 2 − ヒドロキシエチル) − イミダゾール、1 − ( 2 − アミノエチル) − ピペラジン、1 − ( 2 − ヒドロキシエチル) − ピペラジン、2 − ( 1 − ピロリジル) − エチルアミン、4 − アミノ− 2 − メトキシピリミジン、4 − ( 2 − ヒドロキシエチル) − モルホリン、4 − ( アミノメチル) − ピリジン、4 − ( 2 − アミノエチル) − ピリジン、4 − ( 2 − ヒドロキシエチル) −ピリジン、2 −メルカプトピリジン、2 − メルカプトベンゾイミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−3−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−4H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジオール、3−アミノ−5−フェニル−1H−1,3,4−トリアゾール、5−アミノ−1,4−ジフェニル−1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1−ベンジル−1H−2,4−トリアゾール、3 − メルカプト− 1, 2 , 4 − トリアゾール、2 − アミノ− 6 − メトキシベンゾチアゾール、N , N − ジアリルメラミン等があげられる。
【0069】
これらの化合物(c)は、ポリイソシアネート化合物(a)と反応させるが、アクリル重合体(b)を使用する前後、または同時に反応させることができる。使用量としては特に制限はないが、樹脂のアミン価として100mgKOH/g以下が好ましい。顔料粒子の種類によっては使用しない場合もあり得る。
【0070】
本発明の感光性樹脂分散剤は、場合によっては鎖延長剤を用いて分子量を伸ばすことができる。鎖延長剤としては、水酸基を2個以上含有する化合物、または、アミノ基を2個以上含有する化合物を用いる。
【0071】
水酸基を2個以上含有する化合物としては、まず低分子量ポリオールがある。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3' −ジメチロールヘプタン、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2,2,8,10−テトラオキソスピロ〔5. 5〕ウンデカン等のジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等があげられる。
【0072】
さらに、高分子量ポリオールも使用でき、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール等がある。ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール等がある。ポリエステルポリオールは、二塩基酸とポリオールの重縮合より得られる。二塩基酸成分として、例えばテレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸等があげられ、ポリオール成分としては、例えば前記低分子量ポリオールとして列挙した化合物があげられる。その他、ポリカプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等もあげられる。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオール類またはビスフェノール類と炭酸エステルとの公知の反応で製造される。このとき用いられる炭酸エステルとして例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどがあげられる。また、ポリオール類としては、例えば前記低分子量ポリオールとして列挙した化合物があげられる。ビスフェノール類としては、ビスフェノールAやビスフェノールF、また前記ビスフェノールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させた化合物があげられる。アクリルポリオールとしては、例えば水酸基を有するモノマーの共重合体が挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ジヒドロキシアクリレート、グリセロールメタクリレート等があげられ、これらと他のα、β―エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を公知の方法で重合することで得られる。エポキシポリオールとしては、アミン変性エポキシ樹脂等がある。その他、ポリブタジエンジオール、ひまし油等があげられる。
【0073】
場合によっては、カルボキシル基含有ポリオールを鎖延長剤として使用することができる。カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸等があげられる。
【0074】
アミノ基を2個以上含有する化合物としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、キシリレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、ポリアミドアミン、ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミンなどのジアミン類、トリアミノプロパンなどのトリアミン類、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジドなどのヒドラジン化合物類があげられる。
【0075】
本発明の感光性樹脂分散剤は、これまで挙げた原料のみで製造することも可能であるが、高粘度になり反応が不均一になるなどの問題から溶剤を用いるのが好ましい。使用される溶剤としては、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0076】
本発明の感光性樹脂分散剤を得る反応の温度は40〜120℃が好ましい。更に好ましくは50〜100℃である。
【0077】
本発明は、感光性樹脂分散剤および顔料を含ませて感光性顔料分散体組成物とすることができる。
【0078】
本発明に使用する顔料は、インキ等に使用される種々の顔料が使用できる。このような顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、ジケトピロロピロール顔料等があり、更に具体的な例をカラーインデックスのジェネリックネームで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー6,15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,144,146,149,166,168,177,178,179,185,206,207,209,220,221,238,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185,ピグメントオレンジ13,36,37、38,43,51,55,59,61,64,71,74等が挙げられる。
【0079】
また、二酸化チタン、酸化鉄、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料も使用することができる。カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。
【0080】
本発明の顔料組成物は、上記顔料に限らず、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、コバルト、ニッケル、および/またはこれらの合金などの金属微粒子を含む固体微粒子を使用することができる。
【0081】
本発明の感光性顔料分散体組成物において、感光性樹脂分散剤の配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは40重量部以下、更に好ましくは5〜30重量部である。また、必要に応じて顔料誘導体を併用でき、その配合量は、顔料100重量部に対し好ましくは1〜30重量部である。
【0082】
本発明の顔料分散組成物には、必要に応じて、バインダー樹脂、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤などを添加して使用する。バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、エチレン性不飽和二重結合が導入されていてもよい。エチレン性不飽和二重結合の導入方法はどのようなものであっても構わない。これらの樹脂を単独で添加しても良いし、他の樹脂を含む、複数の樹脂を混合して添加しても良い。またこれらの樹脂は用途の必要に応じ熱硬化させて架橋させてもよく、その場合には必要に応じ従来既知の熱硬化触媒を添加して用いても良い。また、本発明の感光性材料の骨格中に存在するカルボキシル基と反応しうる官能基を有するバインダー樹脂を添加して、バインダー樹脂と本発明の感光性材料間で硬化させて架橋して使用することも可能である。
【0083】
本発明の感光性顔料分散体組成物は、必要により各種溶剤、樹脂、添加剤、市販分散剤等を混合して、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより製造することができる。アクリル変性ウレタン樹脂分散体、顔料誘導体、顔料、その他の樹脂、添加剤は、すべての成分を混合してから分散してもよいが、初めにアクリル変性ウレタン樹脂分散体と顔料誘導体等と顔料のみを分散し、次いで、順次他の成分を添加して再度分散を行ってもよい。また、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、3本ロールミル、2本ロールミル等の練肉混合機を使用して前分散、または、顔料へのリン酸基を有する樹脂と塩基性基を有する顔料誘導体等の処理を行ってもよい。また、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が本発明の分散体を製造するために利用できる。
【0084】
本発明の顔料分散組成物は、公知のラジエーション硬化方法により硬化させ硬化物とすることができ、活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、400〜500nmの可視光を使用することができる。
【0085】
照射する電子線の線源には熱電子放射銃、電界放射銃等が使用できる。また、紫外線および400〜500nmの可視光の線源(光源)には、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。具体的には、点光源であること、輝度の安定性から、超高圧水銀ランプ、キセノン水銀ランプが用いられることが多い。照射する活性エネルギー線量は、5〜2000mJ/cm2の範囲で適時設定できるが、工程上管理しやすい50〜1000mJ/cm2の範囲であることが好ましい。
【0086】
また、これら紫外線または電子線と、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0087】
本発明の顔料分散組成物は、基材に塗工後、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化を行っても良いし、塗工に続いてラジエーション硬化させた後に自然または強制乾燥しても構わないが、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化した方が好ましい。電子線で硬化させる場合は、水による硬化阻害又は有機溶剤の残留による塗膜の強度低下を防ぐため、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化を行うのが好ましい。ラジエーション硬化のタイミングは塗工と同時でも構わないし、塗工後でも構わない。
【0088】
本発明の感光性樹脂分散剤は、顔料、熱硬化性バインダー、光硬化性樹脂バインダーやモノマーに添加して使用することができ、塗料、集積回路用レジスト、プリント配線板用レジスト、着色コーティング剤、カラーフィルター用着色ペースト、ブラックマトリックス用ペースト等に好適に用いられる。
【実施例】
【0089】
以下に製造例、実施例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の製造例、実施例において、特に断らない限り「部」は重量部を意味し、「%」は重量%を意味する。
(製造例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、n−ブチルメタクリレート180部、メタクリル酸20部を仕込んだ。フラスコ内を80℃に加熱して、2−メルカプトエタノール20部に2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、12時間重合後、重合溶液をサンプリングし、固形分から重合率が95%以上であることを確認した。冷却しながら、シクロヘキサノン94.2部で希釈した。次にグリシジルメタクリレート16.5部、ベンジルジメチルアミン0.8部を加え90℃で8時間反応を行った。冷却しながら、シクロヘキサノンを添加して固形分を50%に調整した。数平均分子量1200、分子量分布:Mw/Mn=1.6、酸価27.6のエチレン性不飽和基およびカルボキシル基を有し、末端に水酸基を有するアクリル樹脂が得られた。
(製造例2)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、n−ブチルメタクリレート90部、ベンジルメタクリレート90部、メタクリル酸20部を仕込んだ。フラスコ内を80℃に加熱して、2−メルカプトエタノール20部に2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、12時間重合後、重合溶液をサンプリングし、固形分から重合率が95%以上であることを確認した。冷却しながら、シクロヘキサノン94.2部で希釈した。次にグリシジルメタクリレート16.5部、ベンジルジメチルアミン0.8部を加え90℃で8時間反応を行った。冷却しながら、シクロヘキサノンを添加して固形分を50%に調整した。数平均分子量1270、分子量分布:Mw/Mn=1.6、酸価27.6のエチレン性不飽和基およびカルボキシル基を有し、末端に水酸基を有するアクリル樹脂が得られた。
(製造例3)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、n−ブチルメタクリレート90部、ベンジルメタクリレート90部、メタクリル酸20部を仕込んだ。フラスコ内を80℃に加熱して、2−メルカプトエタノール30部に2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、12時間重合後、重合溶液をサンプリングし、固形分から重合率が95%以上であることを確認した。冷却しながら、シクロヘキサノン98.5部で希釈した。次にグリシジルメタクリレート16.5部、ベンジルジメチルアミン0.8部を加え90℃で8時間反応を行った。冷却しながら、シクロヘキサノンを添加して固形分を50%に調整した。数平均分子量910、分子量分布:Mw/Mn=1.6、酸価26.5のエチレン性不飽和基およびカルボキシル基を有し、末端に水酸基を有するアクリル樹脂が得られた。
(製造例4)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、n−ブチルメタクリレート85部、ベンジルメタクリレート85部、メタクリル酸30部を仕込んだ。フラスコ内を80℃に加熱して、2−メルカプトエタノール30部に2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、12時間重合後、重合溶液をサンプリングし、固形分から重合率が95%以上であることを確認した。冷却しながら、シクロヘキサノン98.5部で希釈した。次にグリシジルメタクリレート24.8部、ベンジルジメチルアミン1.2部を加え90℃で8時間反応を行った。冷却しながら、シクロヘキサノンを添加して固形分を50%に調整した。数平均分子量990、分子量分布:Mw/Mn=1.7、酸価38.4のエチレン性不飽和基およびカルボキシル基を有し、末端に水酸基を有するアクリル樹脂が得られた。
(製造例5)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、n−ブチルメタクリレート85部、ベンジルメタクリレート85部、メタクリル酸30部を仕込んだ。フラスコ内を80℃に加熱して、2−メルカプトエタノール30部に2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶解した溶液を添加して、12時間重合後、重合溶液をサンプリングし、固形分から重合率が95%以上であることを確認した。冷却しながら、シクロヘキサノン98.5部で希釈した。次に4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル34.9部、ベンジルジメチルアミン1.7部を加え90℃で8時間反応を行った。冷却しながら、シクロヘキサノンを添加して固形分を50%に調整した。数平均分子量1060、分子量分布:Mw/Mn=1.7、酸価36.9のエチレン性不飽和基およびカルボキシル基を有し、末端に水酸基を有するアクリル樹脂が得られた。
(製造例6)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、シクロヘキサノン82.2部、n−ブチルメタクリレート190部、メタクリル酸10部、ブロモイソ酪酸エチル13.8部、テトラメチルエチレンジアミン16.4部を仕込み、30分窒素を導入した。塩化第一銅7部を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温して重合を開始した。2時間重合後、重合溶液をサンプリングし、固形分から重合率が95%以上であることを確認した。次にグリシジルメタクリレート8.3部、ベンジルジメチルアミン0.4部を加え90℃で8時間反応を行った。冷却しながら、シクロヘキサノンを添加して固形分を50%に調整した。数平均分子量3600、分子量分布:Mw/Mn=1.8、酸価13.7のエチレン性不飽和基を有し、エチレン性不飽和基およびカルボキシル基を有し、末端に水酸基を有するアクリル樹脂が得られた。
(製造例7)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、シクロヘキサノン78.3部、n−ブチルメタクリレート190部、メタクリル酸10部、ヒドロキシエチル−2−ブロモプロピオネート13.9部、テトラメチルエチレンジアミン16.4部を仕込み、30分窒素を導入した。塩化第一銅7部を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温して重合を開始した。5時間重合後、重合溶液をサンプリングし、固形分から重合率が95%以上であることを確認した。次にグリシジルメタクリレート8.3部、ベンジルジメチルアミン0.4部を加え90℃で8時間反応を行った。冷却しながら、シクロヘキサノンを添加して固形分を50%に調整した。数平均分子量3800、分子量分布:Mw/Mn=1.8、酸価14.2のエチレン性不飽和基およびカルボキシル基を有し、末端に水酸基を有するアクリル樹脂が得られた。
(製造例8)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、n−デカノール17.4部、ε−カプロラクトン157.1部、ジブチル錫ジラウリレート0.005部を仕込み、30分窒素を導入した。窒素気流下で160℃まで昇温して重合を開始した。10時間重合後、重合溶液をサンプリングし、重合の固形分から重合収率が98%である事を確認した。キシレン25.4部で希釈して重合を終了した。さらにシクロヘキサノンで固形分を50%に調整した。数平均分子量は2200、分子量分布:Mw/Mn=1.6の末端に水酸基を有するポリエステル樹脂が得られた。
(製造例9)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、12−ヒドロキシステアリン酸10部、ε−カプロラクトン190部、ジブチル錫ジラウリレート0.005部を仕込み、30分窒素を導入した。窒素気流下で160℃まで昇温して重合を開始した。10時間重合後、重合溶液をサンプリングし、重合の固形分から重合収率が98%である事を確認した。キシレン50部で希釈して重合を終了した。さらにシクロヘキサノンで固形分を50%に調整した。数平均分子量は2600であり、分子量分布:Mw/Mn=1.6のカルボキシル基を有し、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂が得られた。
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、デスモジュールHL(住友バイエル社製、固形分60%、NCO当量240、NCO基数3.6個)40.7部と製造例1のアクリル樹脂112部、キシレン62.6部、N−メチルピロリドン31.3部、ジブチル錫ジラウリレート0.02部を仕込んだ。フラスコ内を60℃に加熱、3時間反応後、重合溶液をサンプリングし、イソシアネート基を滴定により定量して、反応率が98%以上であることを確認した。次に、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン3.3部を添加した。50℃で30分間反応後、IRにより残存しているイソシアネート基の吸収ピークを確認した。ジブチルアミンを適宜添加しながら、イソシアネート基の吸収ピークがなくなることを確認した。数平均分子量は3200、分子量分布:Mw/Mn=1.7、固形分33.2%の感光性樹脂分散剤が得られた。
(実施例2〜7)
製造例1のアクリル樹脂を製造例2〜7のアクリル樹脂に変えた以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂分散剤を得た。得られた分散剤の数平均分子量、分子量分布、固形分を表1に示す。
【0090】
【表1】

(比較例1)
製造例1のアクリル樹脂を製造例8のアクリル樹脂に変えた以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂分散剤を得た。数平均分子量は5500、分子量分布:Mw/Mn=1.9、固形分33.2%の樹脂分散剤が得られた。
(比較例2)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、キシレン25部、ポリアリルアミン水溶液(PAA−1LV、日東紡績社製、固形分10%)70部を仕込んだ。フラスコ内を160℃に加熱して水を溜去しながらキシレンをフラスコに内に戻した。この中に製造例9のカルボキシル基を有し、末端に水酸基を有するポリエステル樹脂14.2部、キシレン31.8部を加え、160℃で3時間反応を行った。数平均分子量は8800、分子量分布:Mw/Mn=2.1、固形分24.9%の樹脂分散剤が得られた。
(評価)
実施例1〜7、比較例1〜2の分散剤を用いて顔料粒子の分散を行った。顔料粒子としては、カーボンブラック(Cabot社製、REGAL250R)を用い、製造例1〜3または比較製造例4〜5にて合成した樹脂分散剤、UV硬化性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、酸性基を有する顔料誘導体、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、および溶剤としてシクロヘキサノンを配合し、2mmφジルコニアビーズ100部を加えペイントコンディショナーで3時間分散した。配合比は表2に示す。
【0091】
【表2】

<分散安定性、保存安定性>
得られた顔料分散組成物について、E型粘度計を用いてその初期粘度を測定した。(25℃、100rpm)
さらに、40℃1週間放置後の粘度を測定して、顔料分散組成物の安定性を確認した。
<光沢>
得られた顔料分散組成物をPETフィルム上にバーコーターで塗工し、80℃で10分間乾燥後、120W/cmメタルハライドランプを用いて100mJ/cm2の紫外線を照射した。得られた塗膜の光沢は、デジタル変角光沢計により60°グロスを測定した。
<アルカリ現像性>
上記で得られた顔料分散組成物を、ガラス板にスピンコート法にて5〜10μmの膜厚で全面に塗布した。これを80℃で10分間乾燥した後、パターン形成用フォトマスクを当て、120W/cmメタルハライドランプによりUV照射量100mJ/cm2照射し、光硬化を行った。次いで1重量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用い、塗膜の未硬化部分を除去してパターンを形成させた。
【0092】
アルカリ現像液として1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、ベルトコンベア搬送型(現像液をスプレー噴霧する方式のもの)の現像装置を用いて、現像液温30℃、現像液噴霧圧2kg/cm2の条件下にて、評価用試験片の塗膜の未硬化部分の現像性を、下記の基準でそれぞれ目視評価した。
【0093】
◎:未硬化部分の現像残り無し
○:未硬化部分の現像残りがわずか
×:未硬化部分の現像残り多い
<パターン形成性>
現像性と同様の試験片を作成した。アルカリ現像液として1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、ベルトコンベア搬送型(現像液をスプレー噴霧する方式のもの)の現像装置を用いて、現像液温30℃、現像液噴霧圧2kg/cm2の条件下にて、前記評価用試験片の未露光部分を除去し、下記の基準で現像後の外観を目視により評価した。
【0094】
◎:露光部と未露光部との境界で現像されており、直線性に優れていた。
【0095】
○:露光部と未露光部との境界で現像されており、凸凹状がわずか。
【0096】
△:露光部と未露光部との境界が不明確であり、凸凹状がわずか。
【0097】
×:露光部と未露光部との境界が不明確であり、凸凹状が激しい。
【0098】
以上、評価結果を下記表3に示した。
【0099】
【表3】

以上より、実施例1〜7において作製した感光性樹脂分散剤を使用した感光性顔料分散体組成物は、低粘度であり、かつ、経時安定性に優れていた。また、塗工物の光沢も高く、アルカリ現像性に優れていることがわかった。比較例1〜2の場合、顔料分散性が低く、特にアルカリ現像性に劣ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の感光性樹脂分散剤は、優れた顔料分散性、光硬化性を有し、光硬化性樹脂バインダーやモノマーを添加して感光性顔料分散体組成物として使用することができる。さらにレジストとして使用した場合、優れたアルカリ現像性やパターン形成性を示す。本発明の感光性樹脂分散剤は、塗料、集積回路用レジスト、プリント配線板用レジスト、着色コーティング剤、カラーフィルター用着色ペースト、ブラックマトリックス用ペースト等に好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に平均で2〜10個のイソシアネート基を含有し、前記イソシアネート基1個あたりの数平均分子量が100〜1000である多官能ポリイソシアネート化合物(a)中のイソシアネート基と、
末端に水酸基を有し、さらにエチレン性不飽和基を有するアクリル重合体(b)中の水酸基とを反応させてなる感光性樹脂分散剤。
【請求項2】
さらに、同一分子内に活性水素、および3級アミノ基もしくは窒素含有ヘテロ環構造を有する化合物(c)を反応させてなる請求項1記載の感光性樹脂分散剤。
【請求項3】
アクリル重合体(b)が、カルボキシル基を有することを特徴とする請求項1または2記載の感光性樹脂分散剤。
【請求項4】
アクリル重合体(b)が、
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(d)とそれ以外のエチレン性不飽和単量体(e)とを共重合してなるカルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)中のカルボキシル基と、
カルボキシル基と反応しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体(f)中のカルボキシル基と反応しうる官能基と、を反応してなるものである請求項1〜3いずれか記載の感光性樹脂分散剤。
【請求項5】
カルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)が、分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物(g)を連鎖移動剤として使用して、エチレン性不飽和単量体を重合してなるものである請求項4記載の感光性樹脂分散剤。
【請求項6】
カルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)が、リビングラジカル重合により重合してなるものである請求項4記載の感光性樹脂分散剤。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の感光性樹脂分散剤および顔料を含む感光性顔料分散体組成物。
【請求項8】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(d)とそれ以外のエチレン性不飽和単量体(e)とを共重合してなるカルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)と、
カルボキシル基と反応しうる官能基を有するエチレン性不飽和単量体(f)とを反応して、末端に水酸基を有し、さらにエチレン性不飽和基を有するアクリル重合体(b)を製造する工程、および、
1分子中に平均で2〜10個のイソシアネート基を含有し、前記イソシアネート基1個あたりの数平均分子量が100〜1000である多官能ポリイソシアネート化合物(a)と、前記アクリル重合体(b)とを反応する工程を含む感光性樹脂分散剤の製造方法。
【請求項9】
カルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)が、分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物(g)を連鎖移動剤として使用して、エチレン性不飽和単量体を重合することを特徴とする請求項8記載の感光性樹脂分散剤の製造方法。
【請求項10】
カルボキシル基を有するアクリル重合体(b1)が、リビングラジカル重合により重合することを特徴とする請求項8記載の感光性樹脂分散剤の製造方法。



【公開番号】特開2007−254694(P2007−254694A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84802(P2006−84802)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】