説明

感光性樹脂組成物及び感光性フィルム

【課題】 光硬化後も実用上充分な可とう性を示すのみならず、優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性をも発揮して、FPC用の永久マスクレジストとして適用可能な感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)カルボキシル基を有する樹脂と、(B)ベンゾオキサジン骨格を有する化合物と、(C)光重合性化合物と、(D)光重合開始剤と、を含む感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及び感光性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の一種として、フレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit;以下、「FPC」という。)と呼ばれるフィルム状のプリント配線板が、特にカメラ、磁気ヘッド、携帯電話などの小型機器に用いられるようになってきている。
【0003】
これは、FPCがそれ自体を折り曲げてもその機能を維持することができるものであり、上述のような小型機器に収容するプリント配線板として最適であるためである。近年、各種電子機器の更なる小型化及び軽量化の要請が更に増えてきており、FRCの採用によって、小型機器の更なる小型化、軽量化、製品コストの低減及び設計の単純化等が進められてきている。
【0004】
FPCに用いられるソルダーレジストは、通常のプリント配線板に用いられるソルダーレジストに要求される、耐薬品性、高解像性、電気絶縁性、耐めっき性及びはんだ耐熱性等に加えて、FPCを折り曲げた際に破壊されないという、いわゆる可とう性が要求される。
【0005】
また、FPCを部分的に厚くしたり硬くしたりするために補強板をFPCに貼り付ける場合があるが、その補強板は高圧、高温条件下で熱プレス機を用いて貼り付けられるため、FRC用のソルダーレジストには熱プレス耐性も要求される。
【0006】
現在のところ、ポリイミドフィルムが上記各種特性をある程度備えていることから、FRC用のソルダーレジストとして、接着剤付きのポリイミドフィルムを打ち抜いて形成されるカバーレイが広く採用されている。
【0007】
しかしながら、上述のカバーレイは、型抜きのために用いられる金型が非常に高価である上に、型抜きしたカバーレイの人手による位置合わせ作業及び貼り合わせ作業が必要となることから製造コストが高くなってしまうという問題点がある。
【0008】
更には、FPCが電子機器の小型化の要請に応えるべく採用されているにも関わらず、そのFPCに型抜きされたカバーレイを設けようとすると、微細パターンの形成が困難になってしまうという問題点もある。
【0009】
これらの問題点を改善するために、フォトレジスト法によりレジストを形成する方法が採用されつつある。フォトレジスト法は、基板上に感光性樹脂膜を形成した後、この感光性樹脂膜を部分露光により硬化した後、未露光部を現像工程により除去するものであり、これにより微細パターンを形成することができる。
【0010】
このようなフォトレジスト法の採用に伴い、種々の感光性樹脂組成物が開発されている。例えば、特定のエポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸との付加生成物と無水コハク酸等との反応性生物である不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を含有するFPC用感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開平7−207211号公報
【特許文献2】特開平8−134390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたようなFPC用感光性樹脂組成物を用いた場合でも、可とう性(耐折性)、はんだ耐熱性及び耐めっき性の全てを実用上充分に満足するには至っていなかった。
【0012】
本発明は、光硬化後も実用上充分な可とう性を示すのみならず、優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性をも発揮して、FPC用の永久マスクレジストとして適用可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、更に、この感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、(A)カルボキシル基を有する樹脂(以下、場合により「A成分」と略称する。)と、(B)ベンゾオキサジン骨格を有する化合物(以下、場合により「B成分」と略称する。)と、(C)光重合性化合物(以下、場合により「C成分」と略称する。)と、(D)光重合開始剤(以下場合により「D成分」と略称する。)と、を含む感光性樹脂組成物を提供する。
【0014】
このように、本発明の感光性樹脂組成物は、ベンゾオキサジン骨格を有する化合物を含むことをその特徴の一つとしている。このような構成を有することにより、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を含有する特許文献1及び2に記載の感光性樹脂組成物や、その他、従来公知の感光性樹脂組成物に比較して、はんだ耐熱性及び耐めっき性が顕著に向上し、可とう性、耐薬品性及び解像性においても実用上充分な性能を発揮するようになる。
【0015】
(B)ベンゾオキサジン骨格を有する化合物は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
ここで、式(1)中、Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−又は下記式(a)、(b)若しくは(c)で表される基を示し、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。
【0018】
【化2】

【0019】
このような構造の化合物を用いることにより、はんだ耐熱性及び耐めっき性がより一層優れた永久マスクレジストを形成することができる。
【0020】
(A)カルボキシル基を有する樹脂は、(A1)(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸の反応生成物に、(a3)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を有する不飽和樹脂(以下、場合により「A1成分」と略称する。)を含むことが好ましい。このような(A1)カルボキシル基を有する不飽和樹脂を含有することにより、現像性及び解像性が優れる永久マスクレジストを形成することができる。
【0021】
(a1)エポキシ樹脂は、多官能エポキシ樹脂であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂を用いることにより、解像性、難燃性、耐熱性及び耐薬品性等が一層優れる永久マスクレジストを形成することができる。
【0022】
更に、上記多官能エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂を用いることにより、解像性、難燃性、耐熱性及び耐薬品性等がより一層優れる永久マスクレジストを形成することができる。
【0023】
(A)カルボキシル基を有する樹脂は、(A2)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含むアクリル樹脂(以下、場合により「A2成分」と略称する。)を更に含むことが好ましい。
【0024】
このような(A2)アクリル系樹脂を用いることにより、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を回路が形成されたプリント配線板上にラミネートする際に、回路間への空気などの巻き込み(エアーボイド)を抑制できるので、硬化させて得られる永久マスクレジストの耐めっき性、可とう性に一層優れた上、追従性にも特に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
エアーボイドを抑制できる理由を、本発明者らは以下の通り推察する。A1成分のエポキシアクリレート化合物は、通常、軟化温度が低く(常温程度)、高い粘着性を有する。粘着性が高い場合、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を基材上にラミネートする際に空気等の巻き込み(エアーボイド)等の問題が生じやすくなる。しかし、このA1成分と、A2成分のアクリル樹脂とを併用することによって、感光性樹脂組成物の軟化温度を充分に高くすることができ、ラミネートする際の空気等の巻き込みを充分に低減することが可能となる。
【0026】
更に、本発明は、支持体上に感光性樹脂組成物層を有する感光性フィルムであって、上記感光性樹脂組成物層は、本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性フィルムを提供する。
【0027】
この感光性フィルムには、本発明の感光性樹脂組成物を含む層が形成されていることから、追従性に優れており、更に難燃性、可とう性、解像性、耐薬品性、はんだ耐熱性及び耐めっき性に優れる永久マスクレジストを形成することができる。また、本発明の感光性フィルムを用いて形成した永久マスクレジストは上述の効果を有することにより、フレキシブル配線板上に設けられるカバーレイ等に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0028】
光硬化後も実用上充分な可とう性を示すのみならず、優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性をも発揮して、FPC用の永久マスクレジストとして適用可能な感光性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を意味し、その他化合物においても同様である。
【0030】
図1は、本発明の感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。感光性フィルム1は、支持体10と、支持体10上に設けられる感光性樹脂組成物層20と、感光性樹脂組成物層20上に設けられる保護フィルム30とを備える。
【0031】
感光性樹脂組成物層20は感光性樹脂組成物からなる。感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基を有する樹脂と、(B)ベンゾオキサジン骨格を有する化合物と、(C)光重合性化合物と、(D)光重合開始剤と、を含有するものである。まず、これらの成分について詳細に説明する。
【0032】
(A成分)
本発明の感光性樹脂組成物に用いられるA成分は、B〜D成分と共に用いて液状又は固形状の感光性樹脂組成物とするための必須成分であり、感光性フィルムとして用いる際にはフィルム形成能を発揮する。A成分は、分子内にカルボキシル基を有する樹脂であり、このような構造を有している限りにおいて任意の樹脂が採用できる。A成分は、B成分及びC成分と相溶し、更に、D成分を保持可能であればより好ましい。
【0033】
A成分は、可とう性、はんだ耐熱性、耐めっき性の観点から、(A1)(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸の反応生成物に、(a3)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を有する不飽和樹脂を含むことが好ましい。上述の反応により得られる(A1)カルボキシル基を有する不飽和樹脂、すなわちA1成分は、単独で又は二種類以上併用して用いることができる。
【0034】
A1成分は、例えば、次の二段階の反応によって得ることができる。最初の反応(以下、「第一の反応」という。)では、(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸とが反応する。次の反応(以下、「第二の反応」という。)では、第一の反応で生成した反応性生物と、(a3)多塩基酸無水物とが反応する。
【0035】
第一の反応では、(a1)エポキシ樹脂のエポキシ基と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸のカルボキシル基との付加反応により水酸基が生成する。
【0036】
(a1)エポキシ樹脂としては、多官能エポキシ樹脂が好ましい。多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。(a1)これらのエポキシ樹脂は、単独で又は二種類以上併用して用いることができる。
【0037】
(a2)ビニル基含有モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸及びソルビン酸等を用いることができる。また、水酸基含有アクリレートと飽和又は不飽和基含有二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物、ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと飽和又は不飽和基含有二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物を用いることができる。ここで、半エステル化合物とは、例えば、2個のカルボキシル基のうち、一方だけがエステル化された化合物をいう。これらの(a2)ビニル基含有モノカルボン酸は、単独で又は二種類以上併用して用いることができる。
【0038】
半エステル化合物は、水酸基含有アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと、飽和又は不飽和基含有二塩基酸無水物とを等モル比で反応させることによって得ることができる。
【0039】
水酸基含有アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレート等を用いることができる。
【0040】
ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0041】
飽和又は不飽和基含有二塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸及び無水イタコン酸等を用いることができる。
【0042】
第一の反応における、(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸との比率は、(a1)エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、(a2)ビニル基含有モノカルボン酸が0.7〜1.05当量となる比率であることが好ましく、0.8〜1.0当量となる比率であることがより好ましい。
【0043】
(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸とは有機溶剤に溶解させて反応させることができる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等を用いることができる。
【0044】
第一の反応では、反応を促進させるために触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド及びトリフェニルホスフィン等を用いることができる。触媒の使用量は、(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。
【0045】
第一の反応において、(a1)エポキシ樹脂同士又は(a2)ビニル基含有モノカルボン酸同士、あるいは(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸との重合を防止するため、重合防止剤を使用することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール及びピロガロール等を用いることができる。重合防止剤の使用量は、(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸の合計100質量部に対して、0.01〜1質量部とすることが好ましい。第一の反応の反応温度は、60〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
【0046】
第一の反応では、必要に応じて(a2)ビニル基含有モノカルボン酸と、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物とを併用することができる。
【0047】
第二の反応では、第一の反応で生成した水酸基及び(a1)エポキシ樹脂中に元来ある水酸基が、(a3)多塩基酸無水物の酸無水物基と半エステル反応すると推察される。(a3)多塩基酸無水物は、飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物である。飽和又は不飽和基含有多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び無水イタコン酸等を用いることができる。
【0048】
第二の反応では、第一の反応によって得られる樹脂中の水酸基1当量に対して、0.1〜1.0当量の(a3)多塩基酸無水物を反応させることができる。(a3)多塩基酸無水物の量をこの範囲内で調製することによって、A1成分の酸価を調整することができる。
【0049】
A1成分の酸価は30〜180mgKOH/gであることが好ましく、50〜150mgKOH/gであることがより好ましく、60〜120mgKOH/gであることが更に好ましい。酸価が30mgKOH/g未満では感光性樹脂組成物の希アルカリ溶液への溶解性が低下する傾向があり、酸価が180mgKOH/gを超えると硬化後において基材等への密着性が低下する傾向がある。第二の反応の反応温度は、60〜120℃であることが好ましい。
【0050】
また、A1成分としては、CCR−1218H、CCR−1159H、CCR−1171H、CCR−1222H、TCR−1335H、ZAR−2001H、及びZCR−1569H等(以上、日本化薬(株)製、商品名)などの市販品が入手可能である。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物における、A1成分の固形分(不揮発分)の含有割合は、A成分の固形分の合計量の50〜95質量%であることが好ましく、55〜90質量%であることがより好ましく、60〜80質量%であることが更に好ましい。
【0052】
含有割合が50質量%未満の場合、形成されるカバーレイ等の永久マスクレジストの難燃性が低下する傾向がある。一方、含有割合が95質量%を越える場合、形成される永久マスクレジストの可とう性及び感光性樹脂組成物のラミネート性が低下する傾向がある。
【0053】
また、A成分は、基材上に形成される永久マスクレジストの耐めっき性、可とう性及び現像性を一層向上させる観点から、(A2)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含むアクリル樹脂を更に含むことが好ましい。
【0054】
A2成分であるアクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む重合性モノマーをラジカル重合させることにより製造できる。
【0055】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、下記一般式(2)で表される化合物、及び下記一般式(2)のアルキル基がヒドロキシル基、エポキシ基、ハロゲン等によって置換されたものが挙げられる。
【0056】
【化3】

【0057】
ここで、式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。
【0058】
上記一般式(2)のRで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0059】
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル及び(メタ)アクリル酸ドデシルエステルが挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
上記一般式(2)で表される化合物は、耐めっき性の観点から、Rが炭素数4〜12
のアルキル基であることが好ましい。
【0061】
また、現像性や永久マスクレジストのパターン形成の見地から、A2成分は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他の重合性モノマーをモノマー単位として更に含むことが好ましい。かかる他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のα−位又は芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸及びプロピオール酸などが挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0062】
A2成分の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、硬化後の永久マスクレジストの良好な機械強度と感光性樹脂組成物のアルカリ現像性とのバランスを図る観点から、20,000〜300,000であることが好ましく、30,000〜150,000であることがより好ましく、40,000〜100,000であることが更に好ましい。重量平均分子量が20,000未満では感光性樹脂組成物のフィルム形成性が低下する傾向があり、300,000を超えると現像時間が長くなる傾向がある。
【0063】
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値である。
【0064】
A2成分中のカルボキシル基を含有する重合性モノマーの比率は、A2成分を構成する全ての重合性モノマーの15〜50モル%であることが好ましい。カルボキシル基含有率が15モル%未満の場合、感光性樹脂組成物の現像性が低下する傾向があり、50モル%を超えると、永久マスクレジストのパターン形成が困難となる傾向がある。なお、A2成分は、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を良好にする観点から、アルカリ水溶液に可溶又は膨潤可能であることが好ましい。
【0065】
A2成分の酸価は、50〜200mgKOH/gであることが好ましく、60〜100mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が50mgKOH/g未満であると、感光性樹脂組成物の現像性が悪化するため解像度が不充分となる傾向がある。一方、酸価が100mgKOH/gを超えると形成される永久マスクレジストの耐電食性が不充分となる傾向がある。
【0066】
A2成分のTgは、30〜100℃であることが好ましく、40〜70℃であることがより好ましい。Tgが30℃未満であると感光性フィルム形成時の塗膜形成後のタックが大きくなり、ラミネートの際に不具合が発生する傾向がある。一方、Tgが100℃を超えると、形成した永久マスクレジストの充分な柔軟性が得られない傾向がある。
【0067】
本発明の感光性樹脂組成物にA2成分を併用する場合、A2成分の固形分の含有割合は、A成分の固形分の合計量の5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることが更に好ましい。
【0068】
含有割合が5質量%未満の場合、形成される永久マスクレジストの可とう性及び感光性樹脂組成物のラミネート性が低下する傾向がある。一方、含有割合が50質量%を超えると、形成されるカバーレイ等の永久マスクレジストの難燃性が低下する傾向がある。
【0069】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、A成分の固形分の含有割合が、A成分の固形分と後述のC成分との合計量の30〜90質量%であることが好ましく、50〜85質量%であることがより好ましく、60〜80質量%であることが更に好ましい。
【0070】
含有割合が、30質量%未満では、アルカリ現像性の低下や感光性フィルムとした場合に感光性樹脂組成物層が柔らかくなってフィルム端面からのしみ出しが発生する傾向がある。一方、該配合割合が90質量%を超えると、光照射によって硬化する際の感光性樹脂組成物の感度の低下や形成される永久マスクレジストのはんだ耐熱性が低下する傾向がある。
【0071】
(B成分)
本発明の感光性樹脂組成物に用いられるB成分は、耐薬品性、耐金めっき性、はんだ耐熱性の向上に特に寄与する成分であり、分子内にベンゾオキサジン骨格を有する化合物である。このような構造を有する化合物は、A1成分及び/又はA2成分と併用した場合において、特に優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性を発揮する。B成分は、ベンゾオキサジン骨格を有している限りにおいて、任意の化合物が採用できる。また、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
B成分は、はんだ耐熱性及び耐めっき性の観点から、一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」という。)を含むことが好ましい。
【0073】
化合物1において、Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−又は上記式(a)、(b)若しくは(c)で表される基を示し、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。
【0074】
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0075】
化合物1としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールS骨格を有するベンゾオキサジン化合物が好ましい。これらの骨格を持つベンゾオキサジン化合物は、A1成分及び/又はA2成分と組み合わせた場合において、更に優れたはんだ耐熱性及び耐めっき性を発揮する。
【0076】
また、B成分としては、F−a型ベンゾオキサジン(四国化成工業製、商品名)、BS−BXZ、BA−BXZ(いずれも小西化学工業製、商品名)などの市販品が入手可能であり。
【0077】
本発明におけるB成分の含有量の総計としては、A成分及び後述のC成分の合計量の、2〜50質量%とすることが好ましく、5〜40質量%とすることがより好ましく、10〜30質量%とすることが特に好ましい。この含有量が、2質量%未満では、耐薬品性、はんだ耐熱性、耐金めっき性が低下する傾向があり、50質量%を超えると、光照射によって硬化する際の感光性樹脂組成物の感度が低下する傾向がある。
【0078】
(C成分)
本発明の感光性樹脂組成物に用いられるC成分は、光重合可能なモノマーであれば、特に限定されないが、分子内に重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。
【0079】
C成分としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14であり、プロピレン基の数が2〜14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0081】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0082】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能である。
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート及びノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレート等が挙げられる。
【0085】
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、または(メタ)アクリルモノマーと、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物や、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0086】
EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、市販のUA−11(新中村化学工業(株)製、商品名)等を用いることができる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、市販のUA−13(新中村化学工業(株)製、商品名)等を用いることができる。なお、EOとはエチレンオキサイドを示しており、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。また、POとはプロピレンオキサイドを示しており、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。
【0087】
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物は、耐めっき性及びA成分との相溶性をより向上できる観点から、重量平均分子量が2000〜100000であることが好ましく、3000〜50000であることがより好ましく、3500〜20000であることが特に好ましい。また、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物は、耐めっき性及び可とう性をより向上できる観点から、ガラス転移温度(Tg)が−20℃〜40℃であることが好ましく、−15℃〜30℃であることがより好ましく、−10℃〜25℃であることが特に好ましい。
【0088】
また、重量平均分子量が2000〜100000であり、Tgが−20℃〜40℃である、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、ポリカーボネート化合物及び/又はポリエステル化合物の末端のヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合を有し且つ複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物と、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と、を縮合反応させて得られる化合物を用いることが好ましい。
【0089】
重量平均分子量が2000〜100000であり、Tgが−20℃〜40℃である、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能なウレタン化合物としては、例えば、UF−8001、UF−8003M、UF−TCB−50、UF−TC4−55(以上商品名、共栄社化学株式会社製)、ヒタロイド9082−95(商品名、日立化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0090】
フタル酸系化合物としては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β´−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β´−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等が挙げられる。
【0091】
C成分としては、密着性や解像性向上の観点から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、柔軟性や密着性向上の観点から、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0092】
また、C成分は、形成される永久マスクレジストの耐めっき性の観点から、分子内にエチレン性不飽和基を3つ以上有する光重合性化合物を含むことが好ましく、形成される永久マスクレジストの可とう性の観点から、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0093】
感光性樹脂組成物のおけるC成分の含有割合は、A成分の固形分とC成分との合計量100質量部に対して10〜70質量部とすることが好ましく、15〜50質量部とすることがより好ましく、20〜40質量部とすることが更に好ましい。
【0094】
(D成分)
本発明の感光性樹脂組成物に用いられるD成分は、活性光線の照射によりラジカル等の活性種を生じ、重合反応を開始する成分であり、置換又は非置換の多核キノン類、α−ケタルドニルアルコール類、エーテル類、α−炭化水素置換芳香族アシロイン類、芳香族ケトン類、チオキサントン類、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モノホリノ−プロパノン−1等が挙げられる。また、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
置換又は非置換の多核キノン類としては、例えば、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等が挙げられる。
【0096】
α−ケタルドニルアルコール類としては、例えば、ベンゾイン、ピバロン等が挙げられる。また、α−炭化水素置換芳香族アシロイン類としては、α−フェニル−ベンゾイン及びα,α−ジエトキシアセトフェノン等が挙げられ、芳香族ケトン類としては、ベンゾフェノン及び4,4’−ビスジアルキルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0097】
更に、チオキサントン類としては、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−エチルチオキサントン等が挙げられる。
【0098】
感光性樹脂組成物のおけるD成分の含有割合は、A成分の固形分とC成分との合計量100質量部に対して0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが更に好ましい。含有割合が、0.01質量部未満の場合は、光照射によって硬化する際の感光性樹脂組成物の感度が低下する傾向があり、20質量部を超える場合は、形成される永久マスクレジストのはんだ耐熱性が低下する傾向がある。
【0099】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した(A)、(B)、(C)及び(D)、すなわちA〜D成分を必須成分とすることによって、FPCのカバーレイのようなフィルム状の基材上に形成される永久マスクレジストに要求される種々の特性(特に、難燃性、可とう性、解像性、良好な現像性、耐溶剤性、はんだ耐熱性及び耐金めっき性)を実用上充分に満足することができる。
【0100】
また、本発明の感光性樹脂組成物はアルカリ水溶液で現像可能であるため、良好な現像性を有する。また、A〜D成分を必須成分として含有する感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を備えた感光性フィルムを用いることによって、かかる種々の特性を向上することが可能となり、高解像、高密度の配線板、特にプリント配線板の効率的な生産が可能となる。
【0101】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述のA〜D成分に加えて、熱硬化剤(E成分)を含有することが好ましい。E成分を含有することによって、形成される永久マスクレジストの耐熱性及び耐薬品性を向上することができる。
【0102】
E成分としては、例えば、加熱によりそれ自体が架橋する熱硬化剤、すなわち、熱を加えることにより高分子網目を形成する硬化剤や、加熱によりA成分のカルボキシル基と反応して3次元構造を形成する硬化剤等が挙げられる。
【0103】
加熱によりそれ自体が架橋する熱硬化剤としては、ビスマレイミド化合物が挙げられる。ビスマレイミド化合物としては、m−ジ−N−マレイミジルベンゼン、ビス(4−N−マレイミジルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−N−マレイミジルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−N−マレイミジル−2,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス〔(4−N−マレイミジルフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔(4−N−マレイミジル−2−メチル−5−エチルフェニル)プロパン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ビスマレイミド化合物は単体として、又は各種樹脂との変性物として用いることができる。
【0104】
加熱によりA成分のカルボキシル基と反応して3次元構造を形成する硬化剤としては、ブロックイソシアネート化合物が挙げられる。ブロックイソシアネート化合物としては、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0105】
ブロック化されたポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。このうち、形成される永久マスクレジストの耐熱性の観点から芳香族ポリイソシアネートが好ましく、着色防止の観点から脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0106】
E成分の固形分の含有割合は、A成分とC成分との合計量100質量部に対して5〜30質量部とすることが好ましい。該配合割合が上記範囲内であることにより、形成される永久マスクレジストの耐熱性及び耐薬品性を更に向上することができる。
【0107】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、難燃性をより向上させる観点から、リン含有化合物(F成分)を含んでもよい。F成分としては、リン酸エステル化合物が好ましく、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、1,3−ジヒドロキシベンゼン・トリクロロホスフィン重縮合物のフェノール縮合物、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン・トリクロロホスフィンオキシド重縮合物のフェノール縮合物等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0108】
F成分は、例えば、TPP、TCP、TXP、CDP、XDP、CR−733S、CR−741、CR−747(いずれも大八化学社製、商品名)、PFR、FP−600及びFP−700(いずれも旭電化工業社製、商品名)等の市販品が入手可能である。
【0109】
F成分は、形成される永久マスクレジストの難燃性をより向上する観点から、縮合型リン酸エステル化合物を含むものが好ましい。
【0110】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、上述したA〜F成分に加えて、必要に応じて染料、顔料、可塑剤及び安定剤などを添加することができる。
【0111】
(感光性フィルム)
感光性フィルム1に備えられる支持体10及び保護フィルム30としては、耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等からなるフィルムを用いることができ、このうち、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、支持体10及び保護フィルム30に用いられるフィルムは多層構造を有していても良い。更に片面もしくは両面にエンボスなどの処理を施してあっても良い。
【0112】
なお、支持体10又は保護フィルム30である重合性フィルムは、所定の工程後に感光性樹脂組成物層20の表面、又は感光性樹脂組成物を硬化させて得られる永久マスクレジストの表面から除去されるものであるため、除去不可能となるような材質のものや表面処理が施されたものを用いることはできない。
【0113】
支持体10又は保護フィルム30の厚さは、5〜100μmとすることが好ましく、10〜30μmとすることがより好ましい。該厚さが、5μm未満の場合は、回路被覆性が低下する傾向があり、該厚さが100μmを超える場合は、永久マスクレジストパターン形成が困難となる傾向がある。
【0114】
感光性フィルム1は、支持体10の上に、本発明の感光性樹脂組成物の層を積層することにより製造することができる。感光性フィルム1の製造方法の一例を以下に詳細に説明する。
【0115】
まず、A〜D成分を必須成分として含有する感光性樹脂組成物を、溶剤に均一に溶解する。この時に使用する溶剤としては、感光性樹脂組成物を溶解する溶剤であればよく、例えば、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル系溶剤(メチルソロソルブ、エチルセロソルブ等)、塩素化炭化水素系溶剤(ジクロルメタン、クロロホルム等)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール等)などを用いることができる。これらの溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
次いで、感光性樹脂組成物を含有する溶液を、支持体10である重合体フィルム上に、均一に塗布した後、加熱及び熱風吹き付けの一方又は双方によって溶剤を除去して乾燥皮膜とすることができる。乾燥皮膜の厚さは、特に制限はなく、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。
【0117】
このようにして得られた感光性樹脂組成物層20と支持体10との2層からなる感光性フィルムは、そのままロール状に巻き取って貯蔵することができる。
【0118】
また、感光性樹脂組成物層20と支持体10との2層からなる感光性フィルムの感光性樹脂組成物層20の主面(支持体10と接している側とは反対側の面)上に保護フィルム30を更に積層して、感光樹脂組成物層20が支持体10と保護フィルム30に挟まれた構造を有する感光性フィルム1を製造することができる。感光性フィルム1も、ロール状に巻き取って貯蔵することができる。
【0119】
(永久マスクレジストの製造方法)
本実施形態に係る感光性フィルム1を用いて基材上にフォトレジスト画像を形成することにより永久マスクレジストを製造する方法の一実施形態を説明する。永久マスクレジストの製造方法は、基材上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層20を積層する積層工程と、活性光線を感光性樹脂組成物層20の所定部分に照射して感光性樹脂組成物層20に光硬化部を形成させる露光工程と、感光性樹脂組成物層20の光硬化部以外の部分を除去する現像工程とを含む。
【0120】
基材としては特に制限はなく、回路形成用基板やプリント配線板などのほか、フィルム状の基材、エッチング等により配線が形成されたフレキシブルプリント配線板を好適に用いることができる。フィルム状の基材やフレキシブルプリント配線板は公知の物であってよく、フレキシブルプリント配線板は、例えば公知のフレキシブル基板上に銅等の導電体を公知の方法で形成することによって得ることができる。
【0121】
積層工程では、感光性フィルム1の保護フィルム30を感光樹脂組成物層20から除去した後、感光性樹脂組成物層20の主面と基材とを接触させ加熱しながら圧着することによって、基材上に感光性樹脂組成物層20と支持体10とを積層する。この積層は、減圧下で行うことが好ましい。感光樹脂組成物層20が積層される基材の面としては、特に制限はないが、エッチング等により配線が形成されるフレキシブルプリント配線板の導電体層の面であることが好ましい。
【0122】
積層時の感光性樹脂組成物層20の加熱温度は、特に制限はなく、90〜130℃とすることが好ましい。圧着時の圧着圧力は、特に制限はなく、0.2〜0.4MPaとすることが好ましく、圧着時の周囲の圧力は、4000Pa(30mmHg)以下の減圧状態とすることが好ましい。
【0123】
なお、本実施形態においては、感光性樹脂組成物層20を上記のように加熱するため、予め基材を予熱処理することは必要ではないが、感光性樹脂組成物層20と基材との密着性を更に向上させるために、基材の予熱処理を行ってもよい。
【0124】
露光工程では、基材上に積層された感光性樹脂組成物層20に、ネガフィルム又はポジフィルムを用いて活性光線を光照射して画像的に露光し、光硬化部を形成する。この時、感光性樹脂組成物層20上に存在する支持体10が透明の場合には、そのまま露光することができるが、支持体10が不透明の場合には、支持体10を露光前に除去する必要がある。感光性樹脂組成物層20の保護の観点から、透明の支持体10を用いることによって、露光時に支持体10を残存させたまま、露光することが好ましい。
【0125】
活性光源としては、例えば、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、キセノンアーク、その他から発生する光等、公知の活性光源を使用することができる。感光性樹脂組成物層20に含まれる光重合開始剤の感受性は、通常、紫外線領域において最大であるため、活性光源は紫外線を有効に放射するものが好ましい。
【0126】
現像工程では、露光工程後、アルカリ水溶液を用いて、例えばスプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により未露光部を除去して現像することができる。なお、感光性樹脂組成物層20上に支持体10が存在している場合には、これを現像前に感光性樹脂組成物層20上から除去する。
【0127】
アルカリ水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが挙げられる。これらの中で、炭酸ナトリウムの水溶液が好ましい。現像に用いるアルカリ水溶液のpHとしては、9〜11とすることが好ましい。現像温度は、感光性樹脂組成物層20の現像性に合わせて調整することができる。なお、アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させることができる。
【0128】
更に、現像後、FPCのカバーレイとしてのはんだ耐熱性、耐薬品性等をより一層向上させる目的で、形成された永久マスクレジストに高圧水銀ランプによる紫外線の照射や加熱を施すことができる。紫外線の照射量としては、0.2〜10J/cmとすることが好ましく、この照射の時に、60〜150℃の熱を伴うことが好ましい。また、加熱温度は、100〜170℃とすることが好ましく、加熱時間は15〜90分間とすることが好ましい。なお、紫外線の照射と加熱は、どちらを先に行ってもよい。
【0129】
このようにして所望の性能を有するカバーレイが形成されたフレキシブルプリント配線板は、LSI等の部品が実装(はんだ付け)された後、カメラ等機器へ装着される。
【0130】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定
されるものではない。
【実施例】
【0131】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0132】
(実施例1〜4及び比較例1)
実施例1〜4及び比較例1の感光性樹脂組成物層を形成するために、表1及び表2に示す材料を配合し、感光性樹脂組成物溶液を調製した。
【0133】
【表1】

【0134】
【化4】

【0135】
【化5】

【0136】
【表2】

【0137】
ここで、UF−8001(共栄社化学(株)製、商品名)は、2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量:4500、Tg:22℃)であり、IRGANOX1010(チバガイギー(株)製、商品名)は、ヒンダートフェノール化合物であり、C11Z−CN(四国化成工業(株)製、商品名)は、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールである。また、F−a型ベンゾオキサジン(四国化成工業(株)製、商品名)は、ビスフェノールF型ベンゾオキサジンであり、BF−BXZ(小西化学工業(株)製、商品名)は、ビスフェノールF型ベンゾオキサジンであり、BS−BXZ(小西化学工業(株)製、商品名)は、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンである。
【0138】
調製した感光性樹脂組成物溶液を、支持体となる、25μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布した。塗布した感光性樹脂組成物溶液を、100℃の熱風循環式乾燥器で5分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。なお、乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚さは40μmであった。続いて、得られた感光性樹脂組成物層の上に、ポリエチレンフィルムを保護フィルムとして積層し、感光性樹脂組成物積層体を得た。
【0139】
また、35μm厚銅箔をポリイミド基材に積層したFPC用基板(ニッカン工業(株)製、商品名、F30VC125RC11)の銅表面を砥粒ブラシで研磨、水洗し、乾燥した。続いて、作製した感光性樹脂組成物積層体から保護フィルムであるポリエチレンフィルムをはく離した後、真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製型式MVLP−500)を用いて、感光性樹脂組成物積層体をFPC用基板にラミネートを行い、試験片を得た。
【0140】
この際、感光性樹脂組成物層はFPC用基板側に向けてラミネートを行った。また、ラミネータの成形温度は70℃、成形圧力は0.4MPa(4kgf/cm)、真空時間及び加圧時間はそれぞれ30秒とした。
【0141】
(はんだ耐熱性、可とう性、耐薬品性、耐めっき性の評価)
ラミネート終了後の試験片を、23℃まで冷却して1時間以上放置した後、ストーファーの21段ステップタブレットを使用して露光した。露光は、(株)オーク製作所製、HMW−201B型露光機を用い150mJ/cmで行った。
【0142】
露光後の試験片を、常温で30分間放置した後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で50秒間スプレー現像した。次いで、200℃で60分間の加熱処理し、東芝電材(株)製、東芝紫外線照射装置(定格電圧200V、定格消費電力7.2kW、H5600L/2xランプ1本)によって紫外線照射し、ネガフィルムに相当する永久マスクレジスト(カバーレイ)を、試験評価用サンプルとして得た。ここで、紫外線照射は、1J/cmで行った。
【0143】
[はんだ耐熱性の評価]
試験評価用サンプルの永久マスクレジストが形成された面に、ロジン系フラックスMH−820V(タムラ化研(株)製)を塗布した後、260℃のはんだ浴中に10秒間浸漬した。260℃のはんだ浴中に10秒間浸漬する操作を更に2回(合計3回)行った後、レジスト剥れの発生状況を目視で観察した。評価結果を表3に示す。
【0144】
[可とう性の評価]
試験評価用サンプルの永久マスクレジストが形成された面に、ロジン系フラックスMH−820V(タムラ化研(株)製)に塗布した後、80℃で5分間乾燥した。その後260℃のはんだ浴中に10秒間浸漬してはんだ処理を行った後、ハゼ折りで180°折り曲げて、折り曲げた際の永久マスクレジスト層のクラックの発生状況を目視で観察することで可とう性の評価を行った。クラックの発生の無いものを「良好」、クラックが発生したものを「不良」と評価した。評価結果を表3に示す。
【0145】
[耐薬品性の評価]
試験評価用サンプルを常温の2N−塩酸水溶液及び2N−水酸化ナトリウム水溶液にそれぞれ30分間浸漬後、基材から永久レジストパターン開口部の染み込み及び浮きの発生状況を目視で観察し、耐薬品性の評価を行った。染み込み及び浮きの発生の無いものを「良好」、染み込み及び浮きが発生したものを「不良」と評価した。評価結果を表3に示す。
【0146】
[耐めっき性の評価]
試験評価用サンプルの永久マスクレジストが形成された面に、無電解ニッケル/金めっきを施した。無電解ニッケル/金めっきは、脱脂工程(5分間浸漬)、水洗工程、ソフトエッチング工程(2分間浸漬)、水洗工程、酸洗工程(3分間浸漬)、水洗工程、プレディップ工程(90秒間浸漬)、無電解ニッケルめっき工程(23分間処理)、水洗工程、無電解金めっき工程(15分間処理)、水洗工程、乾燥工程の順番で行った。なお、無電解ニッケル/金めっきの各工程に用いた材料は以下の通りである。
脱脂工程:PC−455(メルテックス社製、商品名)25質量%の水溶液
ソフトエッチング工程:過硫酸アンモニウム150g/Lの水溶液
酸洗工程:5体積%硫酸水溶液
無電解ニッケルめっき工程:ニムデンNPF−2(上村工業株式会社製、商品名)
無電解金めっき工程:ゴブライトTIG−10(上村工業株式会社製、商品名)
【0147】
乾燥工程後、直ちにセロテープ(登録商標)を貼り、これを垂直方向に引き剥がして(90°ピールオフ試験)、レジストの剥れの有無を目視観察することで、耐めっき性(剥れ)を評価した。評価結果を表3に示す。
【0148】
なお、FPC用基板と永久マスクレジスト層の間に、金めっきのもぐりを生じた場合、その界面に析出した金めっきが観察される。無電解ニッケル/金めっき後、透明な永久マスクレジストを介して、界面を目視で観察することで、耐めっき性(もぐり)を評価した。評価結果を表3に示す。
【0149】
(解像性の評価)
ストーファーの21段ステップタブレットを有するフォトツールと解像性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールを、試験片に密着させ、露光した。露光は、(株)オーク製作所製、HMW−201B型露光機を用い、ストーファーの21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で行った。そして、現像処理によって未露光部をきれいに除去することができたライン幅間のスペース幅の最も小さい値を解像性の評価指標とした。解像性の評価は、数値が小さいほど良好な値であることを示す。評価結果を表3に示す。
【0150】
【表3】

【0151】
表3から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合には、はんだ耐熱性、可とう性、耐薬品性、耐めっき性及び解像性に優れた永久マスクレジスト(カバーレイ)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0153】
1…感光性フィルム、10…支持体、20…感光性樹脂組成物層、30…保護フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基を有する樹脂と、
(B)ベンゾオキサジン骨格を有する化合物と、
(C)光重合性化合物と、
(D)光重合開始剤と、
を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(B)ベンゾオキサジン骨格を有する化合物が、下記一般式(1)で表される化合物を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

[式中、Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−又は下記式(a)、(b)若しくは(c)で表される基を示し、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。]
【化2】

【請求項3】
(A)カルボキシル基を有する樹脂が、
(A1)(a1)エポキシ樹脂と(a2)ビニル基含有モノカルボン酸の反応生成物に、(a3)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を有する不飽和樹脂
を含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(a1)エポキシ樹脂が、多官能エポキシ樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記多官能エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)カルボキシル基を有する樹脂が、
(A2)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含むアクリル樹脂
を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
支持体上に感光性樹脂組成物層を有する感光性フィルムであって、
前記感光性樹脂組成物層は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−20191(P2009−20191A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181166(P2007−181166)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】