説明

感光性樹脂組成物

【課題】高感度で、露光から露光後ベークまでの放置時間に関わらず現像時の膜厚減少が小さく、現像時における基板との密着性に優れ、かつ硬化後の耐薬品性に優れた感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよび/またはアルカリ可溶性ポリイミド前駆体、(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物、(c)光重合開始剤、および(d)熱架橋剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、露光前はアルカリ水溶液に容易に溶解し、露光するとアルカリ水溶液に不溶となるネガ型の感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路やプリント基板上の回路パターン形成は、基材表面へのレジスト材の造膜、所定箇所への露光、エッチングなどによる不要箇所の除去、基板表面の洗浄作業などの煩雑で多岐にわたる工程を経て行われる。このため、露光、現像によるパターン形成後も必要な部分のレジストを絶縁材料としてそのまま残して用いることができる耐熱感光材料が使用されてきている。これらの材料として、例えば、感光性ポリイミド、感光性ポリベンゾオキサゾールなどの耐熱感光材料が開発実用化されている。これら耐熱感光材料において、近年環境に対する配慮から、従来の有機溶剤による現像からアルカリ水溶液による現像可能な感光性樹脂組成物が開発されている。
【0003】
また、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)のパッケージの実装面積を小型化するために、従来のQFP(Quad Flat Package)などのパッケージ外にピンを出し、これを基板と接合する方式から、パッケージにバンプを形成し、直接基板にパッケージを接合する方式が用いられるようになってきた。このため、パッケージを形成する時に半田バンプなどを形成する必要が生じ、LSIチップを保護するために使用されるポリイミドなどの絶縁材料に、耐熱性や耐薬品性が求められている。特に、半田バンプ形成ではフラックス処理と呼ばれる有機酸を用いた高温処理を行うため、従来以上の耐薬品性が求められている。
【0004】
アルカリ水溶液で現像可能なネガ型の感光性ポリイミドにおいて、耐薬品性向上のために、これまでアルカリ可溶性ポリイミドまたはその前駆体、重合性化合物、重合開始剤に加え、熱架橋剤として有機基で置換されたメチロール基を有する化合物を含む感光性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、熱架橋剤としてブロックイソシアネート化合物を含む感光性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。このような熱架橋剤を含む樹脂組成物により耐薬品性は向上するものの、熱架橋剤として有機基で置換されたメチロール基を有する化合物を含む組成物の場合、硬化温度が280℃以下の低温条件ではなお不十分で、さらなる耐薬品性向上が望まれている。さらにこれらの方法では、露光から露光後ベークまでの放置時間が延びるにつれ、現像時の膜減りが大きくなる課題があった。
【0005】
この現像時の膜減りが大きくなる課題に対し、アルカリ可溶性ポリイミドまたはその前駆体の酸性基に対し、光反応性基を導入したアルカリ現像ネガ型感光性樹脂が提案されている(例えば、特許文献3〜5参照)。しかし、これらの方法では、アルカリ水溶液による現像時における膜と基板との密着性が悪く、パターンが基板から剥がれやすくなる課題があった。
【特許文献1】国際公開第04/109403号パンフレット
【特許文献2】特開平11−223946号公報(第1−2頁)
【特許文献3】特開平10−95848号公報(第1−9頁)
【特許文献4】特開平3−220558号公報(第1−3頁)
【特許文献5】特開2000−147761公報(第1−7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高感度で、露光から露光後ベークまでの放置時間に関わらず現像時の膜厚減少が小さく、現像時における基板との密着性に優れ、かつ硬化後の耐薬品性に優れた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の感光性樹脂組成物は下記の構成からなる。すなわち、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよび/またはアルカリ可溶性ポリイミド前駆体、(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物、(c)光重合開始剤、および(d)熱架橋剤を含有する感光性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高感度で、露光から露光後ベークまでの放置時間に関わらず、現像時の膜厚減少が小さく、現像時における基板との密着性に優れ、かつ硬化後の耐薬品性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。本発明の感光性樹脂組成物は、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層、回路基板の配線保護絶縁膜など好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよび/またはアルカリ可溶性ポリイミド前駆体、(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物、(c)光重合開始剤、および(d)熱架橋剤を含有することを特徴とする。このような感光性樹脂組成物は、ブロックイソシアネート構造が(a)成分などのポリマー間に水素結合を形成し、感度を向上させるとともに、露光から露光後ベークまでの放置時間に関わらず、現像時の膜厚減少を抑制し、さらに基板との密着性を向上させることができる。また、熱処理によりブロック剤が解離して反応性のイソシアネート基となり、(a)成分中の酸性基と反応するため、(d)熱架橋剤とともにポリマー間の架橋構造形成に寄与し、硬化後の耐薬品性に優れたネガ型パターンを形成できると考えられる。
【0010】
本発明に用いられる(a)アルカリ可溶性ポリイミドは、ポリマーの構造単位中および/またはその主鎖末端に酸性基を有する。ここで、末端とは、樹脂の端部から最初のイミド基が現れるまでの部分のことをいう。構造単位中および/またはその主鎖末端に酸性基を有することで、硬化前はアルカリ水溶液によく溶解するため、アルカリ水溶液による現像が可能となる。酸性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基などが挙げられる。このようなアルカリ可溶性ポリイミドは、特に限定されるものではないが、一般式(3)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式(3)中、Rは4〜10価の有機基、Rは2〜8価の有機基を表す。RおよびRはフェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。αおよびβは0〜6の整数を表す。
【0013】
また、本発明に用いられる(a)アルカリ可溶性ポリイミド前駆体は、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環を有するポリマーとなり得るものであり、好ましくはポリイミド前駆体のポリアミド酸、ポリアミド酸エステルが挙げられる。またこれらのポリイミド前駆体は、その構造単位中および/またはその主鎖末端に酸性基を有する。ここで、末端とは、樹脂の端部から最初のCONH基が現れるまでの部分のことをいう。酸性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基が挙げられる。構造単位中および/またはその主鎖末端に酸性基を有することで、硬化前はアルカリ水溶液に良く溶解するため、アルカリ水溶液による現像が可能となる。このようなポリイミド前駆体は、特に限定されるものではないが、一般式(4)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(4)中、R10は2〜10価の有機基、Rは2〜8価の有機基を表す。RおよびRはフェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基、R11は水素原子または炭素数1〜20の有機基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。αおよびβは0〜6の整数を表し、γは0〜2の整数を表す。
【0016】
また、一般式(3)または(4)で表される構造単位中にフッ素原子を有すると、アルカリ水溶液で現像する際に、膜の界面に撥水性が付与され、界面のしみこみなどが抑えられるため好ましい。一般式(3)で表される構造単位を有するポリイミドおよび一般式(4)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体それぞれに対するフッ素原子含有量は、界面のしみこみ防止効果を十分得るために10重量%以上が好ましく、また、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20重量%以下が好ましい。
【0017】
上記一般式(3)中、Rは酸二無水物の残基を表しており、4価〜10価の有機基である。なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5〜40の有機基が好ましい。
【0018】
酸二無水物としては、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物や、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族のテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物および下記に示した構造の酸二無水物などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0019】
【化3】

【0020】
12は酸素原子、C(CF、C(CHまたはSOを、R13およびR14は水素原子、水酸基またはチオール基を表す。
【0021】
これらのうち、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物および下記に示した構造の酸二無水物が好ましい。
【0022】
【化4】

【0023】
12は酸素原子、C(CF、C(CHまたはSOを、R13およびR14は水素原子、水酸基またはチオール基を表す。
【0024】
上記一般式(4)のR10は酸の構造成分を表しており、2価〜10価の有機基である。なかでも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5〜40の有機基が好ましい。
【0025】
酸としては、上に例示したテトラカルボン酸二無水物のほか、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸などを挙げることができる。また、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシトリメリット酸などの水酸基を有する酸も用いることができる。これら酸成分は単独でも2種以上用いても構わないが、テトラカルボン酸を1〜40モル%用いることが好ましい。
【0026】
上記一般式(3)および一般式(4)において、Rはジアミンの残基を表しており、2〜8価の有機基である。中でも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5〜40の有機基が好ましい。
【0027】
ジアミンの具体的な例としては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジ(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンあるいはこれらの芳香族環にアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンおよび下記に示した構造のジアミンなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0028】
【化5】

【0029】
12は酸素原子、C(CF、C(CHまたはSOを、R13〜R16は水素原子、水酸基またはチオール基を表す。
【0030】
これらのうち、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンおよび下記に示した構造のジアミンなどが好ましい。
【0031】
【化6】

【0032】
12は酸素原子、C(CF、C(CHまたはSOを、R13〜R16は水素原子、水酸基またはチオール基を表す。
【0033】
特に好ましくは3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、下記に示した構造のジアミンなどである。
【0034】
【化7】

【0035】
12は酸素原子、C(CF、C(CHまたはSOを、R13およびR14は水素原子、水酸基またはチオール基を表す。
【0036】
一般式(3)および(4)において、RおよびRはフェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基を表し、α、βはそれぞれR、Rの数を表す。得られる感光性樹脂組成物溶液の安定性の面でαおよびβは4以下が好ましい。
【0037】
一般式(4)において、R11は水素または炭素数1〜20の有機基を表している。得られる感光性樹脂組成物溶液の安定性からは、R11は炭化水素基が好ましいが、アルカリ水溶液の溶解性より水素が好ましい。本発明においては、水素原子と炭化水素基を混在させることができる。このR11の水素と有機基の量を調整することで、アルカリ水溶液に対する溶解速度が変化するので、この調整により適度な溶解速度を有した感光性樹脂組成物を得ることができる。好ましい範囲は、R11の各々10%〜90%が水素原子である。また、R11の炭素数が20以下であれば十分なアルカリ可溶性が得られる。以上よりR11は、炭素数1〜20の炭化水素基を少なくとも1つ含有し、その他は水素原子であることが好ましい。R11が炭化水素基である場合の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
【0038】
また一般式(4)において、γは0〜2の整数を表している。より好ましくは1または2である。
【0039】
また、一般式(3)で表される構造単位を有するポリイミドおよび一般式(4)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体は、主鎖末端に酸性基を有することが好ましい。このようなポリイミドまたはその前駆体は、主鎖末端にこれら酸性基が存在するため、高いアルカリ可溶性を有する。酸性基の具体例としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基などが挙げられる。このような主鎖末端への酸性基の導入は、末端封止剤にアルカリ可溶性基を持たせることにより行うことができる。末端封止剤は、モノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などを用いることができる。
【0040】
末端封止剤として用いられるモノアミンは、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノールなどが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0041】
末端封止剤として用いられる酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物は、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物などの酸無水物、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸などのモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物およびテレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレンなどのジカルボン酸類のモノカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN−ヒドロキシベンゾトリアゾールやN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0042】
末端封止剤に用いられるモノアミンの導入割合は、全アミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは60モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。末端封止剤として用いられる酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物の導入割合は、ジアミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは90モル%以下である。複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入しても良い。
【0043】
一般式(3)で表される構造単位を有するポリイミドにおいて、構造単位の繰り返し数は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、また200以下が好ましく、100以下がより好ましい。また、一般式(4)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体において、構造単位の繰り返し数は10以上が好ましく、200以下が好ましい。この範囲であれば本発明の感光性樹脂組成物の厚膜での使用が可能になり、かつアルカリ現像液に対する十分な溶解性を付与できる。
【0044】
さらに、基板との接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲で、R、R、R10にシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを1〜10モル%共重合したものなどが挙げられる。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる(a)成分のアルカリ可溶性ポリイミドは、一般式(3)で表される構造単位のみからなるものであってもよいし、他の構造単位との共重合体あるいは混合体であってもよい。その際、一般式(3)で表される構造単位をポリイミド全体の10重量%以上含有することが好ましく、20重量%以上含有することがより好ましい。10重量%以上であれば、熱硬化時の収縮を抑えることができ、厚膜作製に好適である。共重合あるいは混合に用いられる構造単位の種類および量は、最終加熱処理によって得られるポリイミドの耐熱性を損なわない範囲で選択することが好ましい。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる(a)成分のアルカリ可溶性ポリイミド前駆体は、一般式(4)で表される構造単位のみからなるものであってもよいし、他の構造単位との共重合体あるいは混合体であってもよい。その際、一般式(4)で表される構造単位をポリイミド前駆体全体の50重量%以上含有することが好ましく、70重量%以上、さらには90重量%以上含有することがより好ましい。共重合あるいは混合に用いられる構造単位の種類および量は、最終加熱処理によって得られるポリイミドの耐熱性を損なわない範囲で選択することが好ましい。
【0047】
また、アルカリ可溶性ポリイミドとアルカリ可溶性ポリイミド前駆体を併用してもよい。熱処理時の収縮の観点からは、アルカリ可溶性ポリイミドが好ましい。
【0048】
本発明に用いられる(a)成分のアルカリ可溶性ポリイミド前駆体は、例えば、ジアミンの一部を末端封止剤であるモノアミン置き換えて、または、酸二無水物を、末端封止剤であるモノカルボン酸、酸無水物、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物に置き換えて、公知の方法を利用して合成される。例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物(一部をモノアミンに置換)を反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物(一部を酸無水物、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物に置換)とジアミン化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン(一部をモノアミンに置換)と縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミン(一部をモノアミンに置換)と反応させる方法などの方法がある。
【0049】
また、本発明に用いられる(a)成分のアルカリ可溶性ポリイミドは、例えば、前記ポリイミド前駆体を合成する方法を利用して、ポリイミド前駆体を得、これを、公知のイミド化反応法を用いて完全イミド化させる方法、または、途中でイミド化反応を停止し、一部イミド構造を導入する方法、さらには、完全イミド化したポリマーと、前記ポリイミド前駆体を混合することによって、一部イミド構造を導入する方法を利用して合成することができる。
【0050】
また、(a)成分のアルカリ可溶性ポリイミドのイミド化率は、例えば、以下の方法で容易に求めることができる。まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm−1付近、1377cm−1付近)の存在を確認する。次に、そのポリマーを350℃で1時間熱処理し、赤外吸収スペクトルを測定し、1377cm−1付近のピーク強度を比較することによって、熱処理前ポリマー中のイミド基の含量を算出し、イミド化率を求める。
【0051】
また、(a)成分のアルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体に導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入されたポリイミドを、酸性溶液に溶解し、ポリイミドの構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、本発明に使用の末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入されたポリマー成分を直接、熱分解ガスクロクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C−NMRスペクトル測定でも、容易に検出可能である。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物を含有することにより、高感度で、露光から露光後ベークまでの放置時間に関わらず、現像時の膜厚減少が小さく、現像時における基板との密着性に優れ、かつ硬化後の耐薬品性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0053】
(b)成分の重合性化合物は、分子内に不飽和結合を有するため、露光により光重合して得られるポリマー側鎖にブロックイソシアネート構造が導入される。ブロックイソシアネート基は、例えば以下のような極性構造を有するため、光重合して得られるポリマー鎖間、あるいは光重合して得られるポリマーとポリイミドおよび/またはポリイミド前駆体との間に水素結合を形成するため、露光部のアルカリ不溶化が促進される。このため、感度を向上させるとともに、露光から露光後ベークまでの放置時間に関わらず、現像時の膜厚減少を抑制することができる。
【0054】
【化8】

【0055】
また、従来公知のアルカリ可溶性ポリイミドまたはその前駆体の酸性基に対し光反応性基を導入した場合、光反応性基導入により極性基である酸性基が減少するため、現像時の基板との密着性が低下するのに対し、本発明ではこのような酸性基の減少がないため、現像時に基板と十分な密着性を得ることができる。
【0056】
さらに、熱処理(キュア)によりブロックイソシアネート構造のブロック剤が解離して反応性のイソシアネート基となり、(a)成分のアルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体の酸性基と反応する。これにより光重合して得られるポリマーとポリイミドおよび/またはポリイミド前駆体との間に架橋構造を形成する。この架橋構造形成により、後述の(d)熱架橋剤とともに耐薬品性が向上すると考えられる。
【0057】
(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物は、分子内にイソシアネート基および不飽和結合を有する化合物と、活性水素基含有化合物(ブロック剤)とを反応させることで得られる。不飽和結合とは、ラジカルやカチオンなどの活性種の存在で連鎖重合可能な基を指し、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の不飽和二重結合およびプロパルギル基等の不飽和三重結合が挙げられ、これらの中でも共役型のビニル基やアクリロイル基、メタクリロイル基が重合性の面で好ましい。分子内にイソシアネート基および不飽和結合を有する化合物としては、特に制限はないが、例えば、一般式(5)または一般式(6)で表される構造であることが好ましい。このようなブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物と、活性水素基含有化合物(ブロック剤)を反応させることで、前記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物が得られる。
【0058】
【化9】

【0059】
上記一般式(5)〜(6)中、RおよびRは各々独立に水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基の水素原子はN、O、F、SおよびPからなる群より選ばれる一種以上の原子を有する基で置換されていてもよい。Rは、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、フェニレン基またはこれらの基の水素原子の一部がメチル基またはエチル基で置換された基である。aは1〜3の整数を表し、活性水素基含有化合物(ブロック剤)との反応性の面から、特に1であることが好ましい。
【0060】
一般式(5)で表される化合物の具体例としては、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、3−イソシアナトプロピルアクリレート、3−イソシアナトプロピルメタクリレート、2−イソシアナト−1−メチルエチルアクリレート、2−イソシアナト−1−メチルエチルメタクリレート、3−アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、3−メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート、3−イソシアナト−2−メチルブチルアクリレート、3−イソシアナト−2−メチルブチルメタクリレート、4−アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、4−メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート、3−アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、3−メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート、2−アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート、3,5−ビス(メタクリロイルオキシエチル)フェニルイソシアネート、2,4−ビス(アクリロイルオキシ)フェニルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、1,1−ビス(メタクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどが挙げられる。また、一般式(6)で表される化合物の具体例としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネートが挙げられる。
【0061】
ブロック剤としては活性水素を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、チオール類、フェノール類、オキシム類、アミン類、イミン類、カルバゾール類、アミド類、イミド類、ウレア類、アセト酢酸アルキルエステル類、マロン酸アルキルエステル類、ピラゾール類、イミダゾール類、トリアゾール類などが挙げられる。これらのブロック剤は解離温度が概ね200℃以下と低いため、低温の熱処理(キュア)によってもり効果的に解離が進行して耐薬品性がより向上するので好ましい。
【0062】
ブロック剤の具体例としては、チオール類として、メタンチオール、エタンチオール、ベンゼンチオール、フェノール類として、フェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、クレゾール、1−ナフトール、2−ナフトール、オキシム類として、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アミン類としてジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、イミン類として、エチレンイミン、プロピレンイミン、カルバゾール類として、無置換カルバゾール、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、3,6−ジブロモカルバゾール、アミド類として、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム、イミド類として、コハク酸イミド、N−ヒドロキシコハク酸イミド、マレイン酸イミド、ウレア類として尿素、エチレン尿素、チオ尿素、アセト酢酸アルキルエステル類として、アセト酢酸エチルエステル、マロン酸アルキルエステル類として、マロン酸ジエチルエステル、ピラゾール類として、無置換ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−アセチルアミノピラゾール、ピラゾール−3,5−ジカルボン酸ジエチルエステル、イミダゾール類として、無置換イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、トリアゾール類として、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが好ましい。
【0063】
一般式(5)または一般式(6)で表される、分子内にイソシアネート基および重合性不飽和官能基を有する化合物と、活性水素基含有化合物(ブロック剤)を反応させることで、下記に示すような一般式(1)または(2)で表される化合物を得ることができる。
【0064】
【化10】

【0065】
上記一般式(1)〜(2)中、RおよびRは各々独立に水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基の水素原子はN、O、F、SおよびPからなる群より選ばれる一種以上の原子を有する基で置換されていてもよい。RおよびRはアルコール類を除く活性水素化合物残基を表す。aは1〜3の整数を表す。立体障害が小さく熱処理(キュア)時のイソシアネート基の反応性がより高くなる点でaは1が好ましい。
【0066】
(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用される。前記一般式(1)で表される化合物および/または一般式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0067】
(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合不飽和結合を有する重合性化合物の含有量は、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体の総量100重量部に対して、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、特に好ましくは15重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは80重量部以下である。(b)成分の含有量を3重量部以上とすることで、現像時の露光部の溶出を防ぎ、現像後の膜厚減少がより小さく、かつ硬化後の耐薬品性に優れた樹脂組成物を得ることができ、100重量部以下とすることで、膜形成時の膜の白化を抑えることができる。
【0068】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物に加えて、他の不飽和結合を有する重合性化合物を含有してもよい。不飽和結合としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の不飽和二重結合および/またはプロパルギル基等の不飽和三重結合が挙げられ、これらの中でも共役型のビニル基やアクリロイル基、メタクリロイル基が重合性の面で好ましい。また、その官能基が含有される数は、安定性の点から1〜6が好ましく、それぞれは同一の基でなくとも構わない。また、ここで言う重合性化合物は、分子量30〜800のものが好ましい。分子量が30〜800の範囲であれば、ポリイミドまたはポリイミド前駆体との相溶性がよく、感光性樹脂組成物溶液の安定性がよい。
【0069】
このような重合性化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−ジアクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,3−ジメタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、AH−600(商品名、共栄社化学(株)製)、AT−600(商品名、共栄社化学(株)製)、UA−306H(商品名、共栄社化学(株)製)、UA−306T(商品名、共栄社化学(株)製)、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用される。
【0070】
これらのうち、特に好ましくは、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0071】
本発明において、(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物に加えて、他の不飽和結合を有する重合性化合物を含有する場合、他の重合性化合物の含有量は、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体の総量100重量部に対して、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下である。含有量を3重量部以上とすることで、現像時の露光部の溶出を防ぎ、200重量部以下とすることで、膜形成時の膜の白化を抑えることができる。
【0072】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(c)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4,−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3,4,4,−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類や3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−エチル−4−ピペリドンなどのベンジリデン類、7−ジエチルアミノ−3−テノニルクマリン、4,6−ジメチル−3−エチルアミノクマリン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、7−ジエチルアミノ−3−(1−メチルメチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリンなどのクマリン類、2−t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノンなどのアントラキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン類、エチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾキサゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールなどのメルカプト類、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−(p−クロロフェニル)グリシン、N−(4−シアノフェニル)グリシンなどのグリシン類、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ビス(α−イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(o−ベンゾイルオキシム)、OXE02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)などのオキシム類、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オンなどのα−アミノアルキルフェノン類、2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,4´,5,5´−テトラフェニルビイミダゾールなどが挙げられる。これらのうち上記オキシム類が好ましく、特に好ましくは、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ビス(α−イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(o−ベンゾイルオキシム)、OXE02である。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用される。
【0073】
これらの中で、上記のベンゾフェノン類、グリシン類、メルカプト類、オキシム類、α−アミノアルキルフェノン類、2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,4´,5,5´−テトラフェニルビイミダゾールから選択される組み合わせが光反応の点から好適である。
【0074】
(c)光重合開始剤含有量は、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体の総量100重量部に対して、通常、1種類につき0.1〜40重量部が好ましく、2種以上を組み合わせる場合は総量で0.2〜60重量部とすることが好ましい。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物は、(d)熱架橋剤を含有する。熱処理により(d)熱架橋剤が(a)成分のポリマー間に架橋構造を形成するため、(b)成分の重合性化合物とともに、硬化後の耐薬品性を向上させることができる。また、収縮率を低減することができる。(d)熱架橋剤としては、一般式(7)で表される熱架橋性基を有する化合物、およびベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
【0076】
【化11】

【0077】
一般式(7)中、R17は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基またはR18CO基を表す。また、R18は、炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0078】
(d)熱架橋剤としては、例えば、熱架橋性基を1つ有するものとしてML−26X、ML−24X、ML−236TMP、4−メチロール3M6C、ML−MC、ML−TBC(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、P−a型ベンゾオキサジン(商品名、四国化成工業(株)製)など、2つ有するものとしてDM−BI25X−F、46DMOC、46DMOIPP、46DMOEP(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PC、DML−PCHP、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP、DML−POP、DML−OC、ジメチロール−Bis−C、ジメチロール−BisOC−P、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MB25、DML−MTrisPC、DML−Bis25X−34XL、DML−Bis25X−PCHP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、”ニカラック(登録商標)”MX−290(商品名、(株)三和ケミカル製)、B−a型ベンゾオキサジン、B−m型ベンゾオキサジン(以上、商品名、四国化成工業(株)製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾールなど、3つ有するものとしてTriML−P、TriML−35XL、TriML−TrisCR−HAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)など、4つ有するものとしてTM−BIP−A(商品名、旭有機材工業(株)製)、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、”ニカラック(登録商標)”MX−280、”ニカラック(登録商標)”MX−270(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)など、6つ有するものとしてHML−TPPHBA、HML−TPHAP、HMOM−TPPHBA、HMOM−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、”ニカラック(登録商標)”MW−390、“ニカラック(登録商標)”MW−100LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0079】
これらのうち、硬化膜の架橋密度が高くなり、耐薬品性がより向上する点で熱架橋性基を2つ以上有するものが好ましく、4つ以上含有するものがより好ましく、6つ以上含有するものがより好ましい。
【0080】
これら(d)熱架橋剤のうち、例えば、メチロール基またはアルコール性水酸基の水素原子を置換したメチロール基を有する化合物は、以下のように、ベンゼン環に直接付加する反応機構によって架橋する。
【0081】
【化12】

【0082】
下記に本発明の感光性樹脂組成物に特に好ましく用いられる代表的な(d)熱架橋剤の構造を示す。
【0083】
【化13】

【0084】
【化14】

【0085】
これらの(d)熱架橋剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用される。(d)熱架橋剤の含有量は、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体の総量100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは150重量部以下、特に好ましくは130重量部以下である。(a)成分100重量部に対する(d)熱架橋剤の含有量を150重量部以下にすることで、感光性樹脂組成物被膜の熱処理により得られる耐熱性樹脂組成物被膜の耐熱性を低下させることがない。一方、0.5重量部以上とすることで、十分な架橋による分子量増大効果により、耐熱性樹脂組成物被膜の耐熱性が向上する。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに増感剤を含有することができる。中でも(e)チオキサントン化合物を用いることにより(c)光重合開始剤が効率的に増感され、感度がより向上する。
【0087】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−プロピルチオキサントン、4−メチルチオキサントン、4−エチルチオキサントン、4−プロピルチオキサントン、2−メチル−4−エチルチオキサントン、2−エチル−4−プロピルチオキサントン、2−エチル−4−メチルチオキサントン、2−エチル−4−プロピルチオキサントン、2−プロピル−4−メチルチオキサントン、2−プロピル−4−エチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジプロピルチオキサントンなどが好ましい。
【0088】
(e)チオキサントン化合物の含有量は、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体の総量100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.05重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、特に好ましくは5重量部以下である。
【0089】
その他、本発明の感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を調整する目的で、フェノール性水酸基を有する化合物を含有することができる。
【0090】
本発明で使用することができるフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis−Z、BisOC−Z、BisOPP−Z、BisP−CP、Bis26X−Z、BisOTBP−Z、BisOCHP−Z、BisOCR−CP、BisP−MZ、BisP−EZ、Bis26X−CP、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisCR−IPZ、BisOCP−IPZ、BisOIPP−CP、Bis26X−IPZ、BisOTBP−CP、TekP−4HBPA(テトラキスP−DO−BPA)、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisOFP−Z、BisRS−2P、BisPG−26X、BisRS−3P、BisOC−OCHP、BisPC−OCHP、Bis25X−OCHP、Bis26X−OCHP、BisOCHP−OC、Bis236T−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、BisRS−OCHP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)が挙げられる。
【0091】
これらのうち、好ましいフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis−Z、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisRS−2P、BisRS−3P、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−Fである。このフェノール性水酸基を有する化合物を含有することで、得られる樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液に容易に溶解し、露光するとアルカリ現像液に難溶になりかつ、現像による膜減りが少なく、短時間で現像が容易になる。
【0092】
このようなフェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体の総量100重量部に対して、好ましくは1〜60重量部であり、さらに好ましくは3〜50重量部の範囲である。
【0093】
さらに、必要に応じて、感光性樹脂組成物と基板との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を含有してもよい。また、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを含有することもできる。
【0094】
また、シリコンウエハーなどの下地基板との接着性を高めるために、メチルメタクリロキシジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤などを、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体の総量100重量部に対して0.5〜10重量部含有してもよい。
【0095】
本発明において、(a)〜(d)成分およびフェノール性水酸基を有する化合物は、有機溶剤に溶解および/または分散した状態で用いられる。有機溶剤は、大気圧下沸点が80℃〜250℃であるものが好ましく用いられる。
【0096】
本発明に好ましく用いられる有機溶剤としては具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノンなどのケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上用いてもかまわない。
【0097】
これらのうち、(a)成分を溶解しかつ、大気圧下沸点が100℃〜180℃であるものが特に好ましい。沸点がこの範囲であれば、組成物塗布時に溶剤が揮発しすぎて塗布できなくなることがなく、かつ組成物の熱処理温度を高くしなくてもよいため、下地基板の材質に制約が生じることがない。また、(a)成分を溶解する溶剤を用いることによって、下地基板に均一性の良い塗膜を形成することができる。
【0098】
このような沸点を有する特に好ましい有機溶剤として、具体的には、シクロペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジアセトンアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノールが挙げられる。
【0099】
また、本発明の感光性樹脂組成物に使用される有機溶剤は、(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよびアルカリ可溶性ポリイミド前駆体の総量100重量部に対して、好ましくは20重量部以上、特に好ましくは30重量部以上であり、好ましくは800重量部以下、特に好ましくは500重量部以下である。
【0100】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いて耐熱性樹脂パターンを形成する方法について説明する。
【0101】
感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板としてはシリコンウエハー、セラミックス類、ガリウムヒ素などが用いられるが、これらに限定されない。シランカップリング剤、チタンキレート剤などの薬液で基板を前処理してもよい。例えば、前述のカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5〜20重量%溶解させた溶液をスピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などで表面処理をする。場合によっては、その後50℃〜300℃までの温度をかけることで、基板と上記カップリング剤との反応を進行させることもできる。
【0102】
感光性樹脂組成物の塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティングなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが通常、乾燥後の膜厚が、1〜150μmになるように塗布する。
【0103】
次に感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性樹脂組成物被膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50〜150℃の範囲で1分から数時間行うことが好ましい。
【0104】
次に、この感光性樹脂組成物被膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0105】
次に露光後のベーク処理を行う。この温度としては50〜180℃の範囲が好ましく、特に60〜150℃の範囲がより好ましい。時間は特に制限はないが、その後の現像性の観点からは10秒〜数時間が好ましい。
【0106】
感光性樹脂組成物のパターンを形成するには、露光後、現像液を用いて未露光部を除去する。
【0107】
現像液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを単独あるいはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、トルエン、キシレン、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、酢酸エチルなどの有機溶剤と組み合わせて使用したり、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液を使用することができる。特に、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をする。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0108】
現像後、120〜400℃で加熱して耐熱性樹脂組成物被膜にする。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分から5時間実施する。一例としては、130℃、200℃、300℃で各30分ずつ熱処理する、あるいは室温より300℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。本発明において加熱温度は150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。加熱温度を150℃以上とすることで、(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物のブロック剤の解離が進行して硬化後の耐薬品性がより向上する。
【0109】
本発明の感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、回路基板の配線保護絶縁膜などの用途に用いることができる。また、基板上に形成された第一電極と、前記第一電極に対向して設けられた第二電極とを含む表示装置、具体的には例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、有機電界発光素子を用いた表示装置(有機電界発光装置)などの絶縁層に用いることができる。
【実施例】
【0110】
以下実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の感光性樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。
【0111】
合成したポリイミドのイミド化率
各実施例に記載の方法で合成したポリイミドについて、まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm−1付近、1377cm−1付近)の存在を確認した。次に、そのポリイミドを350℃で1時間窒素雰囲気で熱処理した後、赤外吸収スペクトルを測定し、1377cm−1付近のピーク強度を比較することによって、熱処理前ポリマー中のイミド基の含量を算出して、ポリイミドのイミド化率を求めた。
【0112】
感光性樹脂組成物被膜の作製
6インチシリコンウエハ上に、感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)をプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(東京エレクトロン(株)製Mark−7)を用いて、100℃で3分プリベークすることにより、感光性樹脂組成物被膜を得た。
【0113】
膜厚の測定方法
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を使用し、屈折率1.63で測定を行った。
【0114】
露光
露光機(ウルトラテック(株)社製全波長ステッパーSpectrum 3e)にパターンの切られたレチクルをセットし、プリベークした感光性樹脂被膜に対して、露光量300mJ/cm(i線換算)で全波長露光を行った。
【0115】
露光後ベーク
露光した感光性樹脂被膜に対して、ホットプレート(東京エレクトロン(株)製Mark−7)を用いて、100℃で1分熱処理を行った。
【0116】
現像
露光後ベークした感光性樹脂被膜に対して、東京エレクトロン(株)製Mark−7の現像装置を用い、50回転で水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38%水溶液を10秒間噴霧した。この後、0回転で40秒間静置した後400回転で水にてリンス処理し、3000回転で10秒振り切り乾燥し、現像後被膜を得た。
【0117】
熱処理(キュア)
現像後被膜を、イナートオーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)社製)を用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、各実施例に記載された温度で60分熱処理してキュア膜を得た。
【0118】
残膜率、収縮残膜率の測定
残膜率、収縮残膜率は以下の式に従って算出した。
残膜率(%)=現像後の膜厚÷プリベーク後の膜厚×100
収縮残膜率(%)=熱処理後の膜厚÷現像後の膜厚×100。
【0119】
現像後のパターン剥離の評価
各実施例および比較例に記載のワニスについて、露光量500mJ/cmで露光を行い、露光から露光後ベークまでの放置時間を60分として、現像後、光学顕微鏡を用いて10μmパターンの剥離の有無を観察した。
【0120】
露光から露光後ベーク間の放置時間の影響に関する評価
各実施例および比較例に記載のワニスについて、前記の方法で感光性樹脂組成物被膜を3サンプル作製し、露光量300mJ/cmで露光を行った後、それぞれ0分、15分、60分放置後に露光後ベーク、現像を行い、残膜率を測定した。放置時間60分の残膜率の値が85%以上の条件を満たすときに合格、満たさないときに不合格とした。
【0121】
感度の評価
露光から露光後ベークまでの放置時間を60分として、露光量を50−800mJ/cmの範囲で50mJ/cmきざみで露光を行い現像後の残膜率を算出し、残膜率が一定となるときの露光量を最小露光量とした。
【0122】
耐薬品性の評価
露光量500mJ/cm、露光から露光後ベークまでの放置時間0分、その他条件は上記方法により作製したキュア膜を、東京応化工業(株)製剥離液106を用いて40℃10分間浸漬処理を行い、処理前後の膜厚を測定し、膜厚減少量を求めた。
【0123】
合成例1 ヒドロキシル基含有酸無水物(I)の合成
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、BAHF)18.3g(0.05モル)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3モル)をガンマブチロラクトン(GBL)100gに溶解させ、−15℃に冷却した。ここにGBL50gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11モル)を反応液の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で4時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1Lに投入して下記式で表されるヒドロキシル基含有酸無水物(I)を得た。
【0124】
【化15】

【0125】
合成例2 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(II)の合成
BAHF18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに4−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色粉体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0126】
粉体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(II)を得た。
【0127】
【化16】

【0128】
合成例3 ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物(III)の合成
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却管を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、フェノール57.6g(0.612モル)、フェノチアジン0.12g(0.6ミリモル)、ジブチルスズジラウラート0.38g(0.6ミリモル)を仕込み15℃の水浴で冷却した。ついで、滴下ロートから、2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工(株)製)93.1g(0.6モル)を60分かけて滴下した。滴下終了後80℃で5時間反応させた。赤外吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して反応を終了した。室温まで冷却し、下記式で表されるブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物(III)を得た。
【0129】
【化17】

【0130】
合成例4 ブロックイソシアネート構造を有する化合物(IV)の合成
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却管を備えた500ml四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、トルエン200ml中に2,4−トリレンジイソシアネート17.4g(0.1モル)、メチルエチルケトオキシム17.4g(0.2モル)、トリエチルアミン20.2mg(0.2ミリモル)を仕込み80℃で3時間反応させた。赤外吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して反応を終了した。室温まで冷却し、下記式で表されるブロックイソシアネート構造を有する化合物(IV)を得た。
【0131】
【化18】

【0132】
各実施例、比較例に使用した不飽和結合を有する重合性化合物、ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物を下記に示した。
【0133】
【化19】

【0134】
実施例1
乾燥窒素気流下、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、BAHF)29.3g(0.08モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、3−アミノフェノール(東京化成工業(株)製)3.27g(0.03モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)150gに溶解した。ここにビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(マナック(株)製、ODPA)31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌した。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間攪拌した。攪拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。得られたポリマー粉体を、赤外吸収スペクトルで測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。このようにして得られたポリマー粉体のイミド化率は100%であった。
【0135】
次に、このポリマー粉体10gに光重合開始剤のOXE−02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)1.0g、増感剤の2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製)0.10g、熱架橋剤の“ニカラック”(NIKALAC)MX−280(商品名、(株)三和ケミカル製)2.0g、不飽和結合を有する重合性化合物のトリメチロールプロパントリアクリレート4.0g、ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ(登録商標)”MOI−BP(商品名、昭和電工(株)製)1.0gをジアセトンアルコール15gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスAを得た。得られたワニスAを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度の評価、耐薬品性の評価を行った。
【0136】
実施例2
実施例1で得たポリマー粉体10gに光重合開始剤のOXE−01(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)1.0g、増感剤の2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製)0.10g、熱架橋剤の“ニカラック”(NIKALAC)MW−100LM(商品名、(株)三和ケミカル製)2.0g、不飽和結合を有する重合性化合物のペンタエリスリトールトリアクリレート4.0g、ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BM(商品名、昭和電工(株)製)1.5gをγ−ブチロラクトン15gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスBを得た。得られたワニスBを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度の評価、耐薬品性の評価を行った。
【0137】
実施例3
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BMの添加量を1.0gとする以外は実施例2と同様にして感光性樹脂組成物のワニスCを得た。得られたワニスCを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0138】
実施例4
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BMの添加量を0.5gとする以外は実施例2と同様にして感光性樹脂組成物のワニスDを得た。得られたワニスDを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0139】
実施例5
乾燥窒素気流下、BAHF29.3g(0.08モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、3−アミノフェノール(東京化成工業(株)製)3.27g(0.03モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)150gに溶解した。ここにODPA31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、40℃で3時間攪拌した。その後、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール5.19g(0.127モル)をNMP4gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、ポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体を、赤外吸収スペクトルで測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。このようにして得られたポリマー粉体のイミド化率は8%であった。
【0140】
次に、このポリマー粉体10gを用いること以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスEを得た。得られたワニスEを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、230℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0141】
実施例6
実施例1で得られたポリマー粉体2.0gと実施例5で得られたポリマー粉体8.0gに光重合開始剤のOXE−02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)1.0g、増感剤の2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製)0.10g、熱架橋剤の“ニカラック”(NIKALAC)MX−100LM(商品名、(株)三和ケミカル製)1.0g、不飽和結合を有する重合性化合物のペンタエリスリトールトリアクリレート4.0g、ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BP(商品名、昭和電工(株)製)1.2gをジアセトンアルコール15gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスFを得た。得られたワニスFを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、230℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0142】
実施例7
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたヒドロキシル基含有酸無水物(I)49.57g(0.082モル)、末端封止剤として、3−ヒドロキシフタル酸無水物(東京化成工業(株)製)5.7g(0.035モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)150gに溶解させた。ここにビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物31.02g(0.1モル)をNMP30gとともに加えて、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌した。その後、180℃で5時間攪拌した。攪拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。得られたポリマー粉体を、赤外吸収スペクトルで測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。このようにして得られたポリマー粉体のイミド化率は100%であった。
【0143】
次に、このポリマー粉体10gに光重合開始剤のOXE−01(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)1.0g、増感剤の2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製)0.10g、熱架橋剤の“ニカラック”(NIKALAC)MX−270(商品名、(株)三和ケミカル製)1.0g、不飽和結合を有する重合性化合物のPDBE−250(商品名、(株)日本油脂製)6.0g、ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BM(商品名、昭和電工(株)製)0.8gをジエチレングリコールジエチルエーテル15gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスGを得た。得られたワニスGを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0144】
実施例8
乾燥窒素気流下、合成例2で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(II)40.5g(0.067モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)をNMP130gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で2時間攪拌した。ここに4−アミノチオフェノール(東京化成工業(株)製)6.89g(0.055モル)を加え、50℃で2時間攪拌後、180℃で5時間攪拌した。攪拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥した。得られたポリマー粉体を、赤外吸収スペクトルで測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。このようにして得られたポリマー粉体のイミド化率は100%であった。
【0145】
次に、このポリマー粉体10gに光重合開始剤のOXE−02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)1.0g、増感剤の2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製)0.10g、熱架橋剤の“ニカラック”(NIKALAC)MX−270(商品名、(株)三和ケミカル製)1.0g、不飽和結合を有する重合性化合物のPDBE−250(商品名、(株)日本油脂製)4.5g、ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BM(商品名、昭和電工(株)製)1.0gをγ−ブチロラクトン15gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスHを得た。得られたワニスHを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0146】
実施例9
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物として、“カレンズ”MOI−BPの代わりに合成例3で得られた化合物(III)を用いる以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスIを得た。得られたワニスIを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0147】
実施例10
増感剤の2,4−ジエチルチオキサントンを添加しない以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスJを得た。得られたワニスJを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0148】
比較例1
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BPを添加しない以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスKを得た。得られたワニスKを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0149】
比較例2
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BMを添加しない以外は、実施例2と同様にして感光性樹脂組成物のワニスLを得た。得られたワニスLを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0150】
比較例3
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BPを添加しない以外は、実施例5と同様にして感光性樹脂組成物のワニスMを得た。得られたワニスMを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、230℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0151】
比較例4
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BPの代わりに不飽和結合を有する重合性化合物のベンジルメタクリレートを添加する以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスNを得た。得られたワニスNを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0152】
比較例5
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BMの代わりに不飽和結合を有する重合性化合物のN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを添加する以外は、実施例2と同様にして感光性樹脂組成物のワニスOを得た。得られたワニスOを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0153】
比較例6
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BMの代わりに不飽和結合を有する重合性化合物のシクロヘキシルメタクリレートを添加する以外は、実施例7と同様にして感光性樹脂組成物のワニスPを得た。得られたワニスPを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0154】
比較例7
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BPの代わりに不飽和結合を有する重合性化合物のN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを添加する以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスQを得た。得られたワニスQを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0155】
比較例8
ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物の“カレンズ”MOI−BPの代わりに不飽和結合を有する重合性化合物(ウレタンアクリレート)のAT−600(商品名、共栄社化学(株)製)を添加する以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスRを得た。得られたワニスRを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0156】
比較例9
乾燥窒素気流下、BAHF29.3g(0.08モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、3−アミノフェノール(東京化成工業(株)製)3.27g(0.03モル)をNMP150gに溶解した。ここにマナック(株)製、ODPA31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌した。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間攪拌した。
【0157】
この溶液を室温まで冷却した後、フェノチアジン0.40g(2.0ミリモル)、イソシアネートエチルメタクリレート7.44g(0.048モル)を加え、70℃で6時間反応させた。攪拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で60時間乾燥した。得られたポリマー粉体を、赤外吸収スペクトルで測定したところ、1780cm−1付近、1377cm−1付近にポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピークが検出された。このようにして得られたポリマー粉体のイミド化率は100%であった。
【0158】
次に、このポリマー粉体10gを用いること以外は、比較例1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスSを得た。得られたワニスSを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0159】
比較例10
熱架橋剤として合成例4で得られた化合物(IV)2.0gをさらに添加する以外は比較例2と同様にして感光性樹脂組成物のワニスTを得た。得られたワニスTを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0160】
比較例11
熱架橋剤の“ニカラック”(NIKALAC)MX−280を添加しない以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスUを得た。得られたワニスUを用いて前記のように、シリコンウエハー上に感光性樹脂組成物被膜を作製し、露光、露光後ベーク、アルカリ現像、200℃で60分熱処理し、現像後のパターン剥離の有無、残膜率、収縮残膜率、感度、耐薬品性の評価を行った。
【0161】
実施例1〜10および比較例1〜11の組成および評価結果を以下の表1〜3に示した。
【0162】
【表1】

【0163】
【表2】

【0164】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよび/またはアルカリ可溶性ポリイミド前駆体、(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物、(c)光重合開始剤、および(d)熱架橋剤を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物が、一般式(1)で表される化合物および/または一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(上記式中、RおよびRは各々独立に水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基の水素原子はN、O、F、SおよびPからなる群より選ばれる一種以上の原子を有する基で置換されていてもよい。RおよびRはアルコール類を除く活性水素化合物残基を表す。aは1〜3の整数を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)におけるaが1であることを特徴とする請求項2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b)ブロックイソシアネート構造および不飽和結合を有する重合性化合物が、チオール類、フェノール類、オキシム類、アミン類、イミン類、カルバゾール類、アミド類、イミド類、ウレア類、アセト酢酸アルキルエステル類、マロン酸アルキルエステル類、ピラゾール類、イミダゾール類またはトリアゾール類をブロック剤として用いて得られた化合物であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(a)アルカリ可溶性ポリイミドおよび/またはアルカリ可溶性ポリイミド前駆体が、その主鎖末端に酸性基を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(d)チオキサントン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−9107(P2009−9107A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125568(P2008−125568)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】