説明

感圧センサ装置

【課題】広いダイナミックレンジをもってセンシング動作できる感圧センサ装置を提供するものである。
【解決手段】感圧センサ装置は、荷重に応じて抵抗が変化するセンサセル単位体2を有し被感圧センス範囲の長軸方向に沿うほぼ長方形に形成されたフレキシブルフィルム状の感圧センサ1と、セル単位体2に荷重を伝達するためにセル単位体に対向配置される弾性部材11とを備え、セル単位体2及び弾性部材11はいずれも平面パターン形状が長軸及び短軸を有する形状とされこれらの各長軸が前記感圧センサ1の長手方向に沿うように配置され、前記弾性部材11は前記セル単位体に対向する凸状部12を有し、前記凸状部の荷重中心部が前記センサセル単位体の面中央部にほぼ重なり、前記凸状部は前記センサセル面の初期荷重エリアからそのセル面の長軸方向に沿って遠ざかる方向へ荷重圧力を伝達させる構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感圧センサ装置に係り、特に印加圧力に応じて回路抵抗値を連続的に変化させ、広いダイナミックレンジをもってセンシング動作できる感圧センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧或いは荷重センサには、広範に分布させた複数のセンサセルを有するフレキシブルフィルム状のセンサが既に広く利用されている。一例(従来技術1)としては、多数のセル孔を有するフィルム状の絶縁スペーサの両面にフレキシブルな絶縁フィルムを張り合わせ、前記各セル孔毎にセル電極対を構成するように、前記両絶縁フィルム内面にセル電極がそれぞれ形成され、荷重或いは圧力の有無により電極対のオン/オフを行うメンブレンスイッチと称する荷重(感圧)センサがある。他の一例としては、前記セル電極に加えて或いはその代わりに高抵抗材料の感圧インクからなる感圧抵抗層を備えた感圧センサがある。
【0003】
前記他の一例の具体的一例(従来技術2)としては、例えば電子楽器に適用可能なものとして、広い面積を有する一枚板状の抵抗体層及びその抵抗体層の2次元方向に配置された固定電極対が被着された絶縁フィルムからなる位置検出層と、3次元方向の押圧力に応じて抵抗変化する感圧インク層による圧力検出層とを積層したセンサがある(例えば、特許文献1参照)。この従来技術2の感圧インク層はその面に直角な方向の薄肉な層厚方向で抵抗変化を起こすものであり、ダイナミックレンジを広くとり難い。
【0004】
そこで、例えば電子楽器の鍵盤と組み合わされ、打鍵毎の圧力変化に応じて感圧抵抗層の面方向の拡がりによる抵抗変化を感知する従来の感圧センサ装置(従来技術3)を図4を参照して説明する。長尺状の感圧センサ41は、その長尺方向に所定のピッチで配列された複数のセンサセル(単位体)42、各セルを連結する回路配線層43及び外部引き出し端子44、45を有する。
【0005】
前記セル単位体42は、図4(b)、(c)にその構造を拡大して示すように、正方形状のセル孔46を有するスペーサ47の両面に粘着されたフレキシブルフィルム状の上部、下部絶縁フィルム48、49、セル孔46内で前記各フィルム内面にそれぞれ被着された上部、下部感圧抵抗セル層50、51を備え、各セル層はいずれも良導電性の銀インク層と高抵抗材料の感圧インク層とを積層して形成され、各感圧インク層は相互離間して対面配置されている。
【0006】
前記感圧センサ41の長手方向に沿って対向配置された蒲鉾形柱状の弾性部材52は、打鍵に応じた印加押圧力を前記センサセル42に伝達するための例えばエチレン−プロピレンゴム(EPDM)のような弾性材料で構成され、その長手方向の厚さはほぼ均等な厚さとされ、長手方向と直角な横幅方向の厚さは凸形状の横幅中央部が両側縁部より厚肉とされている。そして、前記弾性部材52の上方には前記各センサセル毎にそれぞれ対応する複数の鍵盤側押圧子53が配置され、感圧センサ41の下方には例えばABS樹脂製のベース板54が配置されている。
【0007】
この従来技術3では、打鍵対応の押圧子53が対向するセンサセル42に向けて前記弾性部材52の凸形状頂部に押圧力を印加した際、前記上部絶縁フィルム48はセル孔46内方に撓み前記上部セル層50は下部セル層51に接触することになる。前記各セル層50及び51の初期相互接触は、図4(b)に示すように、センサセル42の横幅方向中央部において長手方向に沿ったほぼ線状に起こり、その接触は横幅方向にその両側縁部へ向けて拡がり、前記押圧力増加に伴って前記各セル層50及び51相互の接触面積が増加し、セル抵抗が減少するように作用する。
【0008】
この種の感圧センサでは、押圧力とセル抵抗との相関特性におけるダイナミックレンジをできるだけ広くとれるようにしたいが、前記従来技術3では、前記各セル層50及び51相互の接触拡がりが横幅方向に展開されるために、その拡がり範囲が小さく、ダイナミックレンジを要求に応えるほど広くすることが困難な状況にある。
【特許文献1】特開平6−59795号特許公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、前記従来技術3の前記センサセル42の横幅寸法を大きくして接触拡がりを拡大することが考えられるが、センサ及びそのケースなどのアセンブリ部材が大きくなり材料コストが高くなり、また、特に前記横幅寸法の拡大は、収納場所が狭隘な種々の機器への装着を妨げやすく機器用途が限定され易い。
【0010】
また、前記弾性部材52は、前記押圧力をセル面積のほぼ全体に亘って伝達できるような変形反応を起こせることが望まれ、その材質の硬度(変形抵抗)、その厚さ及び厚さ分布などの形状/寸法の調整管理が重要である。しかしながら、前記弾性部材に用いるゴム材料の成形に当たり製品寸法のバラツキが生じ易いばかりでなく、前記従来技術3のように接触拡がりを横幅方向に展開させるものでは、センサ長手方向に比して小さい横幅寸法の弾性部材の横幅撓み変形度が低下するために、弾性部材の前記望ましい変形反応を得るようにその形状/寸法の調整管理を行うことが困難で、センサ製品歩留まり向上が難しくなるなどの問題がある。
【0011】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決し、広いダイナミックレンジをもってセンシング動作できる感圧センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、長軸及び短軸を有する被感圧センス範囲に配置される感圧センサ装置であって、荷重圧力に応じて抵抗が変化するセンサセル単位体を有し前記長軸方向に沿うほぼ長方形に形成されたフレキシブルフィルム状の感圧センサと、前記センサセル単位体に前記荷重圧力を伝達するために前記セル単位体に対向配置される弾性部材とを備え、前記センサセル単位体及び前記弾性部材はいずれも平面パターン形状が長軸及び短軸を有する形状とされこれらの各長軸が前記感圧センサの長手方向に沿うように配置され、前記弾性部材は前記セル単位体に対向される凸状部を有し、前記凸状部の荷重中心部が前記センサセル単位体の面中央部にほぼ重なる位置関係にあり、前記凸状部は前記センサセル面の初期荷重エリアからそのセル面の長軸方向に沿って遠ざかる方向へ荷重圧力を伝達させる構造となっていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の感圧センサ装置において、前記感圧センサは長尺状に形成されその長手方向に沿って配列された複数の前記センサセル単位体を有し、前記各セル単位体の長軸は前記前記感圧センサの長手方向に沿う方向に向けられ、前記弾性部材は前記各センサセル単位体に対応する部分にそれぞれ複数の凸状部を有し前記セル単位体相互間に肉薄部を有する長尺状に形成され、前記各凸状部の荷重中心部が前記各センサセル単位体の面中央部にそれぞれほぼ重なる位置関係となっていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2記載の感圧センサ装置において、前記センサセル単位体及び前記弾性部材の形状寸法は、前記センサセル単位体の平面パターンの短軸W、その長軸L2及び前記弾性部材の凸状部の長手方向の長さL1の関係がほぼL1>L2>Wとなされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感圧センサ装置によれば、センサセル単位体及びこのセル単位体に対向配置される弾性部材はいずれも平面パターン形状が長軸及び短軸を有する形状とされ、前記センサセル単位体及び弾性部材は各長軸が前記感圧センサの長手方向に沿うように配置され、前記弾性部材の凸状部が前記センサセル面の初期荷重エリアからそのセル面の長軸方向に沿って遠ざかる方向へ荷重圧力を伝達させる構造となっているために、前記セル単位体の面内での圧力伝搬拡がりを主として前記長軸方向の広い範囲に亘って発生させることができ、押圧力とセル抵抗との相関特性における直線的なダイナミックレンジを大きくすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明による感圧センサ装置の一実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。
【0017】
図1は例えば電子楽器の鍵盤に対向して配置或いは装着される本発明の感圧センサ装置の一実施形態を示すものであり、図1(a)はその感圧センサ装置の全体構造を示す縦断面図、図1(b)はそのセンサセル単位体を示す一部切欠拡大平面図である。
【0018】
例えば電子オルガンのように鍵盤を有する電子楽器においては、多数の鍵盤が横並びに配置されているので、打鍵に応じた荷重或いは押圧力を検知或いは感圧測定するための被感圧センス範囲は鍵盤の配列に従った矩形長尺状或いは帯状の範囲とみることができる。この場合、この長手方向に沿った寸法を表す長軸及び横幅方向に沿った寸法を表す短軸を有するものとして前記被感圧センス範囲の形状を表現する。
【0019】
前記楽器への装着に当たって、前記被感圧センス範囲に対向配置される感圧センサ1は、前記被感圧センス範囲の長軸方向の長さに見合った例えば矩形の長尺状(長方形)に形成されており、その長手方向に所定のピッチで配列された複数(前記鍵盤数に対応する)のセンサセル(またはその単位体)2を有する。
【0020】
前記各セル単位体2はその平面パターンが長軸及び短軸を有する長方形であり、その長軸(長辺)が前記センサ1の長手方向に沿う方向に向けられている。また、前記各セル単位体2は、前記セル単位体と同様に長方形状の貫通孔からなるセル孔3を有するフィルム状の絶縁スペーサ4、このスペーサの両面に粘着されたフレキシブルフィルム状の第1(上部)及び第2(下部)絶縁フィルム5、6、及び前記各セル孔3内で前記各フィルム内面にそれぞれ被着された第1(上部)及び第2(下部)感圧抵抗セル層7、8を備えている。
【0021】
前記各セル層7、8はいずれも前記セル孔3内径とほぼ同じ形状/寸法の長方形であり、例えば銀インクからなる良導電層と高抵抗材料の例えば感圧インクからなる感圧抵抗層とを積層して形成され、各感圧抵抗層は相互離間して対面配置されている。
【0022】
前記第1絶縁フィルム5側の各第1セル層7は前記銀インクからなる良導電性の配線層(図示せず)によって一連に電気的に接続されて外部端子9へ導かれ、第2絶縁フィルム6側の各第2セル層8も同様に他の銀インク配線層(図示せず)に電気的に接続されて外部端子10へ導かれている。
【0023】
前記感圧センサ1の長手方向に沿ってその上方に配置された長尺状の弾性部材11は、例えばエチレン−プロピレンゴム(EPDM)或いはシリコンゴムなどの弾性材料を成形して製作したものであり、前記各セル単位体2毎に対応する各押圧子53によって発生される打鍵押圧力を受けて、その押圧力を前記各セル単位体2毎に伝達する。
【0024】
そして、前記弾性部材11は、前記各セル単位体2にそれぞれ対応する凸状部12、及び各凸状部12相互を連結する肉薄の連結部(肉薄部)13を有しており、前記各凸状部12は、平面パターンが長軸及び短軸を有する長方形で、その長軸(長辺)が前記弾性部材11の長手方向に沿う方向に向けられている。また、前記各凸状部12は、図1(b)に示すように、長軸方向の長さが前記セル単位体よりも大きくされ、周縁部がセル面を囲むような外形寸法とされている。
【0025】
前記各凸状部12の3次元構造は、図3(a)の斜視図から分かるように、前記長軸方向に沿う縦断面がほぼ三日月形の蒲鉾状となっていて、その蒲鉾頂部の荷重中心部となる稜線が前記センサセル単位体2の面中央部にほぼ重なる位置関係にあって、前記稜線が前記短軸に沿う方向に向けられた状態とされている。
【0026】
言い換えると前記凸状部12は、前記稜線に沿う部分で最も肉厚が厚く、その稜線に交差してその稜線から両方向(前記長軸方向に沿う)に遠ざかるに従って肉厚が薄くなるように蒲鉾傾斜面が傾斜づけられていて、一連の凸状部12は前記長手方向に沿う所謂蒲鉾状家屋の横並び状態となっている。
【0027】
また、前記感圧センサ1の下方にはポリスチレン系樹脂(ABS樹脂)からなる耐衝撃性の高いベース板54が配置されていて、前記感圧センサ装置のアセンブリ構造は、図示されていないが、ほぼU字溝状の長尺な筐体に前記ベース板54及び感圧センサ1を順次重ねて収納し、前記筐体の蓋体を兼ねる前記弾性部材11の側縁部をU字開口端に重ね合わせた構成とされる。
【0028】
ここで、前記実施形態の感圧センサ装置の各部の寸法を例示すると、アセンブリ全体の長さは約1300〜1500mm、その横幅は約15〜20mm、セル単位体2(セル孔3)の横幅(短軸)及び長さ(長軸)はそれぞれ約6mm及び12mm、スペーサ4の厚さは約100μm、各感圧抵抗セル層7、8の厚さはいずれも約30μmとされている。
【0029】
このような前記一実施形態の感圧センサ装置によれば、打鍵対応の一押圧子53が押し下げられ弾性部材11の一凸状部12の頂部に荷重押圧力が印加されると、前記弾性部材の凸状部は、初期段階で前記センサセル面に、ほぼ直角にその圧力を伝達して前記凸状部12の稜線に対応する初期荷重エリアを発生させ、引続いてセル面の長軸方向に沿ってこの初期エリアから遠ざかる方向へ荷重圧力を伝達させるように弾性変形する。
【0030】
そのために、第1及び第2セル層7、8相互の接触は、まず、前記初期荷重エリアの発生に従って図1(b)に示すように、前記弾性部材凸状部12の稜線に対応する初期接触エリアCaにおいて起こる。この段階での前記セル層の相互接触の状態はセル単位体2の長軸方向のほぼ中心位置にて交差する短軸に沿ったほぼ直線状の接触分布或いは接触面積を示す状態にある。
【0031】
更に、前記各セル層7、8の相互接触は、前記荷重押圧力に対する前記弾性部材の弾性変形に伴う圧力伝達の進行に従い長軸方向に沿って初期接触エリアCaから両方向への面接触拡がりCbを生じ、最大圧力印加に対し、セル単位体のほぼ全面に亘る接触分布或いは接触面積を示す状態に至る。
【0032】
このように、セル単位体2の長軸方向に沿って前記各セル層相互の面接触拡がりCbが生じることにより、この面接触拡がりCb長(範囲)が前記従来技術3に比して著しく大きく、押圧力とセル抵抗との相関特性におけるダイナミックレンジを著しく大きくできる。
【0033】
そこで、前記押圧力P(対数)−抵抗R(対数)の相関特性に関して図2を参照して説明すると、特性曲線21、22及び23はそれぞれ前記実施形態、前記従来技術3及び前記従来技術1における各センサの特性を示している。
【0034】
即ち、前記従来技術3のセンサでは、特性曲線22のように圧力Pの変化中途において抵抗値Rが低い値に達し、それ以上の圧力に対する抵抗値Rの変化が飽和傾向を示し、また、前記従来技術1のセンサでは低抵抗スイッチ接点機能のため、特性曲線23のように、荷重印加のほぼ瞬間に抵抗値Rが著しく低いオン抵抗値に飽和する。
【0035】
これに対して前記実施形態の感圧センサでは、特性曲線21のように、圧力Pの変化がこれら従来技術よりも著しく広い範囲に亘って抵抗Rが直線性(リニアリティ)をもって連続的に変化することができ、ダイナミックレンジを大幅に増加させることができる利点がある。このような利点は100乃至6000kPaにも及ぶ押圧力を発生する機器の圧力測定或いは感知においても得られるので、その用途範囲が広い(従来技術1の分野のスイッチでは、押圧力は一般に1乃至20kPa程度の範囲で使用される)。
【0036】
また、アセンブリ装置外形及びその内蔵部品の寸法設計において、前記内蔵部品の寸法増加分に対する装置外形内での寸法吸収は短軸方向よりも長軸方向の方が容易であるので、前記各セル単位体2の長さ寸法が横幅(短軸)の約2倍に増加されても、その増加分はセンサ装置及びアセンブリの長手方向のほぼ現状の外形寸法範囲内において吸収可能である。
【0037】
そのために、感圧センサ1の外形は、その長尺全体に亘ってその横幅を大きくする場合に比して大形化を抑えることができるので、感圧センサ装置及びそのアセンブリも大形化が避けられ、収納場所が狭隘な種々の機器への装着が容易で多くの用途に適用でき、これらの材料コストの高騰化も抑えられる。
【0038】
前記弾性部材11は、前記各セル単位体2に対応する各凸状部12の長軸(長辺)が前記弾性部材11の長手方向に沿う方向に向けられ、その長手方向の撓み変形度が前記従来技術3の横幅撓み変形に比して大きくとれるので、形状/寸法誤差の影響は少なく一般的公差で製造可能であり、その調整管理が容易である。しかも、前記弾性部材11は、前記押圧力に応じて連続的に変形反応し、前記各セル単位体2のほぼ全面積に亘って第1及び第2セル層7、8相互接触の初期接触エリアCaからの面接触拡がりCbを確実に作用させることができる。
【0039】
また、前記セル単位体2及び前記弾性部材の凸状部12の形状は、前記セル単位体(セル孔)の平面パターンの短軸W、その長軸L2及び前記弾性部材の凸状部の長手方向の長さL1との関係が、ほぼL1>L2>Wとなるよう形成されていることが好ましい。
【0040】
この場合、前記各セル層形状L2>Wにより前記面接触拡がりCbの範囲拡大が図れると共に、前記各凸状部12は、その周縁部の少なくとも短軸方向に沿う両側縁がスペーサ上に位置しセル単位体の全面を囲む状態となるので、L1≦L2とする場合に比し、初期接触エリアCaをできるだけ所望の狭い面積とさせ、面接触拡がりCbを長軸方向にフルに連続的に起こさせるように、連続的かつ円滑な弾性変形及び押圧力の伝達作用を行い、ダイナミックレンジを最大限に拡大させることができる。
【0041】
次に、弾性部材の他の例について図3を参照して説明する。図3(b)に示された弾性部材11では、肉薄の連結部131相互間に挟まれた各凸状部121は、その周縁部平面パターンが短軸及び長軸を有するほぼ長方形でセル単位体全面を囲む形状とされ、3次元構造としてはその長方形の対角線の交点を頂部とする山なりの形状とされている。
【0042】
このような形状の凸状部121によれば、凸状部121の弾性変形に伴う圧力伝達作用により、前記第1及び第2セル層7、8相互接触の初期接触エリアCaは前記対角線の交点に対応するセル中心部にほぼ楕円状に発生され、図1(b)に示すように、前記長軸方向の面接触拡がりCbに加えて、短軸方向に沿って中心部から両方向への面接触拡がりCc成分が発生される。この場合は、小さな荷重或いは押圧力でも凸状部121先端の変形量が大きいので、小さな応力測定に好適である。
【0043】
図3(c)に示された弾性部材11では、肉薄の連結部132相互間に挟まれた各凸状部122は、直方体状の平板形状となっていて、その外形寸法比や弾性変化度(硬度)の異なる材料成分の体積内密度分布などを調整して、面中心から周辺部に至る弾性変形の難易分布を与えることによって、このような外形でも前述のような作用効果を得ることが可能である。
【0044】
また、前記各弾性部材の各凸状部12、121、122の各底面はフラットにされて感圧センサ1に接触させてあるが、図中、破線で示すように、凹曲面状の凹状部を形成すれば、前記凸状部12、121、122の中央部からその周縁部に至る肉厚分布を調整することによって、弾性部材の撓み変形度を適切に調整することができる。
【0045】
前記弾性部材の凸状部は、図3に示された形状或いは構造に限らず、セル層の面接触拡がりが主として長軸方向に沿って発生するように、前記弾性部材の凸状部が前記センサセル面の初期荷重エリアからそのセル面の長軸方向に沿って遠ざかる方向へ荷重圧力を伝達させる構造となっていれば種々の変形例を適用してよい。
【0046】
更に、前記複数セル単位体2を有する長尺状の感圧センサ1をその横幅方向に配列することによって、複数セル単位体2をマトリックス状に分布することもできる。この場合も、センサ装置全体形状はほぼ長方形となり、その長手方向に対し各セルの長軸は平行な方向に向けられ、より広い被感圧センス範囲に関する圧力変化の感知あるいは測定が可能である。
【0047】
前記各センサセル単位体2は、その平面パターンが楕円、長楕円、樽形或いは鼓形など様々な形状であってもよく、ここで表現した短軸に相当する短辺、横幅或いは短径と、長軸に相当する長辺或いは長径を有する形状とすることができる。この場合、前記各弾性部材11の凸状部の平面パターン形状も前記セル単位体2の種々の形状に対応したほぼ相似状の形状とするとよい。
【0048】
前記実施形態における感圧センサ装置は、電子楽器に適用した例を示しているが、自動車の衝突検知用として、そのバンパーセンサに適用してもよい。弾性部材11の材質は、使用温度範囲を勘案して選択することになるが、自動車用途においては、温度特性(変化)の小さいシリコンゴムが適している。
【0049】
なお、前記感圧センサ1、センサセル単位体2及び弾性部材11の形状は、本発明の本質を逸脱しない範囲において前記以外の形状としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る感圧センサ装置を示すもので、(a)はその全体構造を示す断面図、(b)はそのセンサセル単位体を拡大して示す一部切欠拡大平面図である
【図2】本発明の一実施形態に係る感圧センサ装置及び従来技術とを比較説明するための押圧力P−抵抗R相関特性を示す特性図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る感圧センサ装置に組込むの弾性部材の構造例を示すもので、(a)、(b)及び(c)は相互に異なる各構造例の要部拡大傾斜視図である。
【図4】従来の感圧センサ装置を示すもので、(a)はその全体構造を示す傾斜視図、(b)はそのセル単位体を拡大して示す一部切欠拡大平面図、(c)は(b)のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 感圧センサ
2 センサセル(単位体)
3 セル孔
4 絶縁スペーサ
5 第1(上部)絶縁フィルム
6 第2(下部)絶縁フィルム
7 第1(上部)感圧抵抗セル層
8 第2(下部)感圧抵抗セル層
11 弾性部材
12、121、122 弾性部材の凸状部
13、131、132 連結部(肉薄部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸及び短軸を有する被感圧センス範囲に配置される感圧センサ装置であって、荷重圧力に応じて抵抗が変化するセンサセル単位体を有し前記長軸方向に沿うほぼ長方形に形成されたフレキシブルフィルム状の感圧センサと、前記センサセル単位体に前記荷重圧力を伝達するために前記セル単位体に対向配置される弾性部材とを備え、前記センサセル単位体及び前記弾性部材はいずれも平面パターン形状が長軸及び短軸を有する形状とされこれらの各長軸が前記感圧センサの長手方向に沿うように配置され、前記弾性部材は前記セル単位体に対向される凸状部を有し、前記凸状部の荷重中心部が前記センサセル単位体の面中央部にほぼ重なる位置関係にあり、前記凸状部は前記センサセル面の初期荷重エリアからそのセル面の長軸方向に沿って遠ざかる方向へ荷重圧力を伝達させる構造となっていることを特徴とする感圧センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の感圧センサ装置において、前記感圧センサは長尺状に形成されその長手方向に沿って配列された複数の前記センサセル単位体を有し、前記各セル単位体の長軸は前記前記感圧センサの長手方向に沿う方向に向けられ、前記弾性部材は前記各センサセル単位体に対応する部分にそれぞれ複数の凸状部を有し前記セル単位体相互間に肉薄部を有する長尺状に形成され、前記各凸状部の荷重中心部が前記各センサセル単位体の面中央部にそれぞれほぼ重なる位置関係となっていることを特徴とする感圧センサ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の感圧センサ装置において、前記センサセル単位体及び前記弾性部材の形状寸法は、前記センサセル単位体の平面パターンの短軸W、その長軸L2及び前記弾性部材の凸状部の長手方向の長さL1の関係がほぼL1>L2>Wとなされていることを特徴とする感圧センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−266812(P2006−266812A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84052(P2005−84052)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】