説明

感放射線性樹脂組成物

【課題】放射線に対する透明性に優れ、レジスト溶剤に対する溶解性に優れ、高コントラストを有する感放射線性樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位および下記式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体と、感放射線性酸発生剤とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、KrFエキシマレーザーあるいはArFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線の如き各種の放射線を使用する微細加工に有用な化学増幅型レジストとして好適に使用できる感放射線性樹脂組成物に関し、特に環状カーボナート化合物を分子内に有する繰り返し単位を含む重合体を樹脂成分とする感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、最近ではKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザーあるいはEUV(極紫外線)等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線等を用いた100nm程度以下のレベルでの微細加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。
このような微細加工に適したレジストとして、酸解離性官能基を有する樹脂成分と放射線の照射により酸を発生する成分である酸発生剤とによる化学増幅効果を利用した化学増幅型レジストが数多く提案されている。化学増幅型レジストの樹脂成分として、ラクトン環を側鎖に有する樹脂も数多く提案されている。
しかしながら、半導体分野において、より高い集積度が求められるようになると、従来の技術では新たなレジストの要求特性を十分に満足できる樹脂成分が得られないという問題があり、新規な樹脂の出現が望まれている。
【0003】
一方、環状カーボナート化合物を側鎖に有する樹脂を製造するための原料となる環状カーボナート化合物の合成については、既に知られている。例えば、常圧下でエポキシドと二酸化炭素とを反応させて高い効率で環状カーボナート化合物が得られることを遠藤等は報告している(非特許文献1)。
また、触媒としてベタイン塩基類を用いてエポキシドと二酸化炭素とを反応させて環状カーボナート化合物を得る方法についても知られている(非特許文献2)。
さらに、エポキシドを側鎖に有する単量体を用いた共重合体も知られている(特許文献1、特許文献2)。
しかしながら、半導体分野において、より高い集積度が求められるため、レジストに用いられる樹脂成分は、放射線に対する透明性が高く、レジスト溶剤に対する溶解性が優れている等の特性などが同時に求められるようになってきた。
エポキシドを側鎖に有する単量体を用いた共重合体など、これまでの技術ではこれらの要求特性を十分に満足できる樹脂成分が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Endo et. al. J Org. Chem, 1993, 58, 6198-6202
【非特許文献2】Y.Zhou et. al.J of Molecula Catalysts A:Chemical 284(2008)52-57
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−133373
【特許文献2】特許第3055495号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に対処するためになされたもので、放射線に対する透明性に優れ、レジスト溶剤に対する溶解性に優れ、高コントラストが得られる感放射線性樹脂組成物の提供を目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、下記式(1)で表される繰り返し単位および下記式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体と、感放射線性酸発生剤とを含有することを特徴とする。
【化1】

式(1)および式(2)において、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、式(1)において、Xは単結合またはヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基を表し、pは0または1、nは0または1、mは0、1または2を表し、
式(2)において、R1は、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であり、R2は相互に独立に炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、または2つのR2が相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の脂環式炭化水素基を形成する。
また、上記式(1)で表される繰り返し単位は、pが0または1でnが0のとき、mは1または2であり、pが0でnが1のとき、または、pが1でnが1のとき、mは0であることを特徴とする。
また、上記式(2)で表される繰り返し単位は、下記式(2a)および下記式(2b)から選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位であることを特徴とする。
【化2】

式(2a)および式(2b)において、RおよびR1は上記式(2)におけるRおよびR1とそれぞれ同一であり、kは0〜6の整数を表す。
本発明の感放射線性樹脂組成物は、さらに酸拡散制御剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、樹脂成分として式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体を用いるので、現像液に対する溶解性が向上する。その結果、レジストプロセスにおけるコントラストが向上する。レジストプロセスにおけるコントラストが向上すると、マスク・エラー許容度(パターン線幅の変動に影響しない焦点ずれの許容度)が大きくなり、解像度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】式(ll)で表される化合物の1H NMRである。
【図2】式(ll)で表される化合物の13C NMRである。
【図3】式(ll)で表される化合物の赤外分光チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<重合体>
本発明に用いる重合体は、アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性であって酸の作用によりアルカリ易溶性となる重合体であり、感放射線性樹脂組成物の樹脂成分として使用される。
上記式(1)におけ繰り返し単位において、Rとして表される炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、1−メチルプロピル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基が挙げられる。これらの中で原料入手が容易であるメチル基が好ましい。
本願発明において、Rは水素原子またはメチル基であることがラジカル重合における高い反応性、得られる重合体の物性解析の容易さから好ましい。
【0011】
Xとして表されるヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基もしくは1,2−プロピレン基等のプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、インサレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、または、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチレン基等のシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基等のシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等のシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基等のシクロオクチレン基等の炭素数3〜10のシクロアルキレン基等の単環式炭化水素環基、−CH2CH2−O−基等が挙げられる。
これらの中で、メチレン基、エチレン基、−CH2CH2−O−基が工業的に原料入手が容易であるので好ましい。
【0012】
上記式(1)において、pは0または1、nは0または1、mは0、1または2を表す。
特に、pが0または1でnが0のとき、mは1または2であり、pが0でnが1のとき、または、pが1でnが1のとき、mは0であることが好ましい。
すなわち、p、n、mは以下の関係を有する。
(1)p=0、かつn=0のとき、m=1または2、
(2)p=0、かつn=1のとき、m=0、
(3)p=1、かつn=0のとき、m=1または2、
(4)p=1、かつn=1のとき、m=0である。
【0013】
上記p、nおよびmを含む基の好ましい例を以下の(a)〜(e)に表す。
【化3】

上記(a)〜(e)の基の中で、好ましいものは(a)および(d)である。その理由は前駆体の入手および合成が容易なためである。
【0014】
式(1)で表される繰り返し単位は、環状カーボナート化合物を側鎖に有する(メタ)アクリル酸誘導体を重合させることにより得られる。
式(1)で表される繰り返し単位を生成する好ましい(メタ)アクリル酸誘導体の具体例を以下の式(1−1)〜式(1−6)に表す。
【化4】

【0015】
式(1)で表される繰り返し単位を生成する(メタ)アクリル酸誘導体(1a)は、式(1b)で表されるエポキシ基を有する化合物と二酸化炭素とを触媒の存在下で反応させる、以下の方法で製造できる。
【化5】

【0016】
式(1b)で表されるエポキシ基を有する化合物は市販品として入手できる。
触媒としては、アミジン構造を有する化合物およびハロゲン化アルカリ金属を用いることが好ましい。
好ましいアミジン構造を有する化合物としては、下記式(1c)で表される環状アミジン化合物が挙げられる。
【0017】
【化6】

式(1c)におけるR3およびR4としては、水素原子、炭素数が1〜12のアルキル基、アリール基等が挙げられる。また、R3とR4とが相互に結合する窒素含有脂環式基としては、炭素数5〜8の窒素含有脂環式基が挙げられる。
これらの中で、好ましい環状アミジン化合物を式(1c−1)〜式(1c−3)に挙げる。
【化7】

上記式(1c−1)〜式(1c−3)で掲げる環状アミジン化合物は、化学的に安定で、工業的に入手しやすいので本発明の触媒として好ましい。
【0018】
ハロゲン化アルカリ金属としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、沃化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウム、沃化リチウムを挙げることができる。
これらの中で臭化リチウムが反応定数が大きく、また高い収率を得られるので好ましい。
また、ハロゲン化アルカリ金属にアルキルオニウム塩を併用することができる。アルキルオニウム塩は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、またはドデシル基などの炭素数1〜12のアルキル基、またはベンジル基の4級化アンモニウム塩、4級化ホスホニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられ、オニウム塩の対イオンとしては、臭素イオン、塩素イオン、よう素イオンが挙げられる。具体例としては、テトラブチルアンモニウムブロミドを挙げることができる。また、これらを混合物として用いることができる。
【0019】
アミジン構造を有する化合物と、ハロゲン化アルカリ金属と、アルキルオニウム塩との併用において、その割合は、[アミジン]/[エポキシド]=0.01〜1(モル/モル)、[ハロゲン化アルカリ金属]/[エポキシド]=0.01〜1(モル/モル)、[アルキルオニウム塩]/[エポキシド]=0.01〜1(モル/モル)であることが好ましい。この範囲とすることにより、反応温度100℃未満の反応温度で(メタ)アクリル酸誘導体1aを高い収率で製造できる。
【0020】
反応条件を以下に示す。
二酸化炭素が充填されたガスバルーンが取り付けられた反応容器にアミジン構造を有する化合物を所定量投入して、その後ハロゲン化アルカリ金属、アルキルオニウム塩および原料のエポキシ基を有する化合物を添加し、1時間〜10日間の反応時間、好ましくは3時間〜7日間の反応時間、100℃未満の反応温度、好ましくは室温〜80℃、より好ましくは室温〜60℃の反応温度で、大気圧(1気圧)下に反応させる。
上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒中でも反応できる。好ましい溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン極性溶媒が好ましい。この条件とすることにより、反応温度100℃未満の反応温度で(メタ)アクリル酸誘導体(1a)を高い収率で製造できる。
【0021】
上記製造方法で得られる式(1a)で表される(メタ)アクリル酸誘導体は、化学増幅型のフォトレジスト用重合体の物性改良材料として、またはラクトン構造を側鎖に有する単量体の代替として利用できる。
【0022】
本発明の感放射線性樹脂組成物の樹脂成分である重合体において、繰り返し単位(1)の割合は、重合体を構成する全繰り返し単位に対して、5〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることが更に好ましく、10〜50%であることが特に好ましい。繰り返し単位(1)の割合が70モル%をこえると、パターン倒れやパターン剥れを起こすおそれがある。
【0023】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記式(1)で表される繰り返し単位および上記式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する。
式(2)で表される繰り返し単位において、R1で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。また、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基は、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0024】
式(2)で表される繰り返し単位において、相互に独立にR2で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
また、相互に独立にR2で表される炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
また、2つのR2が相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に形成する炭素数4〜20の脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0025】
式(2)で表される繰り返し単位として、下記式(2−1)〜式(2−18)に示す繰り返し単位を例示できる。
【化8】

【化9】

【0026】
上記式(2−1)〜式(2−18)で示される繰り返し単位の中で、上記式(2−2)〜式(2−10)に相当する下記式(2b)で表される繰り返し単位、上記式(2−11)〜式(13)に相当する下記式(2a)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化10】

式(2a)および式(2b)において、RおよびR1は上記式(2)におけるRおよびR1とそれぞれ同一であり、kは0〜6の整数を表す。
式(2a)および式(2b)で表される繰り返し単位の中でも、式(2−3)、(2−4)、(2−9)、(2−12)が特に好ましい。
【0027】
本発明の感放射線性樹脂組成物の樹脂成分である重合体において、繰り返し単位(2)の割合は、重合体を構成する全繰り返し単位に対して、5〜80モル%であることが好ましく、10〜80モル%であることが更に好ましく、20〜70%であることが特に好ましい。繰り返し単位(2)の割合が80モル%をこえると、レジスト膜の密着性が低下し、パターン倒れやパターン剥れを起こすおそれがある。
【0028】
上記重合体は、上記繰り返し単位(1)および繰り返し単位(2)と共に下記式(3a)〜式3(e)で表されるラクトン骨格を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3)」ともいう)を1種以上含有することができる。
【化11】

上記式中、RおよびR'は相互に独立に水素原子またはメチル基を表し、R''は水素原子またはメトキシ基を表し、Aは単結合またはメチレン基を表し、Bはメチレン基または酸素原子を表し、aおよびbは0または1である。
【0029】
好ましい繰り返し単位(3)を以下式(3−1)〜式(3−6)に示す。
【化12】

上記式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0030】
樹脂成分である重合体において、繰り返し単位(3)の割合は、重合体を構成する全繰り返し単位に対して、繰り返し単位(3)の総量が、0〜70モル%であることが好ましく、0〜60モル%であることが更に好ましい。このような含有割合とすることによって、レジストとしての現像性、欠陥性、低LWR、低PEB温度依存性等を向上させることができる。一方、70モル%をこえると、レジストとしての解像性やLWRが低下するおそれがある。
【0031】
また、重合体は下記式で表される官能基を有するその他の繰り返し単位を含有することができる。
【化13】

【化14】

上記式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0032】
さらに、重合体は、その他の繰り返し単位として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[4.4.0]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニルエステル等のアルキル(メタ)アクリレートが重合して得られる繰り返し単位を含有することができる。
【0033】
上記重合体は、例えば、その各繰り返し単位に対応する重合性不飽和単量体を、ラジカル重合等の常法に従って合成することができる。例えば、(1)単量体およびラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;(2)単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;(3)各々の単量体を含有する、複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒または単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;等の方法で合成することが好ましい。
【0034】
なお、単量体溶液に対して、単量体溶液を滴下して反応させる場合、滴下される単量体溶液中の単量体量は、重合に用いられる単量体総量に対して30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることが更に好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。
【0035】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常、30〜180℃であり、40〜160℃が好ましく、50〜140℃が更に好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1〜5時間が更に好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜7時間が好ましく、1〜6時間が更に好ましい。
【0036】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を挙げることができる。これらの開始剤は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
重合溶媒としては、重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等の重合を阻害する溶媒以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば使用することができる。例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル・ラクトン類、ニトリル類およびその混合溶媒等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、上記重合溶媒として例示した溶媒を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。即ち、重合反応終了後、重合溶液を適宜濃縮して、例えば、メタノール/ヘプタン等の2液に分離する溶媒系を選択して加え、重合体溶液から低分子成分を除去し適宜必要な溶媒系、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル等に置換し、目的の重合体を溶液として回収する。
【0039】
重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)は、特に限定されないが、1,000〜100,000であることが好ましく、1,000〜30,000であることが更に好ましく、1,000〜20,000であることが特に好ましい。重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、重合体のMwが100,000をこえると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。
また、重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」と記す。)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1.0〜5.0であり、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましい。
【0040】
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、上記重合体は樹脂成分として使用できる。また、上記重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
<酸発生剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物を構成する酸発生剤としては、スルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、ジスルホン類やジアゾメタンスルホン類等のスルホン化合物を挙げることができる。
酸発生剤の具体的な好ましい例としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート等のトリフェニルスルホニウム塩化合物;
【0042】
4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0043】
4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0044】
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート等のジフェニルヨードニウム塩化合物;
【0045】
ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等のビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩化合物;
【0046】
1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0047】
1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0048】
1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0049】
N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等のビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド類化合物等を挙げることができる。
【0050】
酸発生剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。酸発生剤の配合量は、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることがさらに好ましい。この場合、酸発生剤の配合量が0.1質量部未満では、感度および現像性が低下する傾向があり、一方30質量部をこえると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンが得られ難くなる傾向がある。
【0051】
<酸拡散制御剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物には、さらに酸拡散制御剤を配合できる。酸拡散制御剤としては、例えば、含窒素有機化合物を用いることができる。
含窒素有機化合物としては、例えば、下記式(12)で表される化合物(以下、含窒素化合物(i)」という)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、含窒素化合物(ii)という)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体(以下、これらをまとめて含窒素化合物(iii)という)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等を挙げることができる。
【0052】
【化15】

式(12)において、各R5は、相互に独立に、水素原子、直鎖状、分岐状もしくは環状の置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を表す。
【0053】
含窒素化合物(i)としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジ(シクロ)アルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;トリエタノールアミン等の置換アルキルアミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、2,4,6−トリ−t−ブチル−N−メチルアニリン、N−フェニルジエタノールアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類が好ましい。
【0054】
含窒素化合物(ii)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン等が好ましい。
【0055】
含窒素化合物(iii)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等が好ましい。
【0056】
アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、N,
N'−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N'N'−テトラ−
t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニ
ル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジア
ミノオクタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,
N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル
−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾー
ル、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物のほか、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が好ましい。
【0057】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が好ましい。
【0058】
含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン、2,2':6',2''−ターピリジン等のピリジン類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が好ましい。
【0059】
また、酸拡散制御剤として、下記式(13)で表される含窒素化合物を挙げることができる。
【化16】

式(13)中、R6は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R7は、水素原子または炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表すか、または、R6とR7とが結合して、両者が結合している窒素原子と共に、炭素数4〜20の複素環構造を形成する。また、R8は、1価の酸解離性基であり、qは1〜6の整数である。R9は、相互に独立に、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、または2つのR9が相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の脂環式炭化水素基を形成する。
【0060】
式(13)で表される含窒素化合物の好ましい例を下記式(13a)〜式(13i)に示す。
【化17】

【化18】

式(13a)〜式(13i)において、−C(R93で表される基は、tert−ブチル基またはtert−アミル基であることが好ましい。
式(13)で表される化合物の合成方法としては、水酸基含有アミン化合物に対し、ジ−tert−ブチルジカルボネート等によりアミンを保護した後、メトキシメチルクロライド等を用いてアルコール部位を保護する方法が挙げられる。また、化合物の分子量は、好ましくは180〜400である。
【0061】
酸拡散制御剤は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.1〜10質量部である。
【0062】
<溶剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、通常、溶剤を含有する。用いられる溶剤は、少なくとも樹脂成分である重合体および酸発生剤、所望により後述する添加剤を溶解可能な溶剤であれば、特に限定されるものではない。
例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル・ラクトン類、ニトリル類およびその混合溶媒等を使用することができる。
これらの中でも、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いることが好ましい。他には、ケトン類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類、γ−ブチロラクトン等が好ましい。これらの溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0063】
<添加剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、フッ素含有樹脂、脂環式骨格含有化合物、界面活性剤、増感剤等の各種の添加剤を配合することができる。各添加剤の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0064】
フッ素含有樹脂は、特に液浸露光においてレジスト膜表面に撥水性を発現させる作用を示す。そして、レジスト膜から液浸液への成分の溶出を抑制したり、高速スキャンにより液浸露光を行ったとしても液滴を残すことなく、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制する効果がある成分である。
フッ素含有樹脂の構造は特に限定されるものでなく、(1)それ自身は現像液に不溶で、酸の作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有樹脂、(2)それ自身が現像液に可溶であり、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有樹脂、(3)それ自身は現像液に不溶で、アルカリの作用によりアルカリ可溶性となるフッ素含有樹脂、(4)それ自身が現像液に可溶であり、アルカリの作用によりアルカリ可溶性が増大するフッ素含有樹脂等を挙げることができる。
フッ素含有樹脂としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有繰り返し単位を含むフッ素含有繰り返し単位を有する重合体からなる樹脂を挙げることができる。
【0065】
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を更に改善する作用を示す成分である。
脂環式骨格含有化合物としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル等のアルキルカルボン酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等を挙げることができる。これらの脂環式骨格含有化合物は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0066】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名で、KP341(信越化学工業社製)、ポリフローNo.75、同No.95(共栄社化学社製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックスF171、同F173(大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子社製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0067】
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を有する。
増感剤としては、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等を挙げることができる。これらの増感剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0068】
添加剤としては、その他、染料、顔料、接着助剤等を用いることもできる。例えば、染料あるいは顔料を用いることによって、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できる。また、接着助剤を配合することによって、基板との接着性を改善することができる。他の添加剤としては、アルカリ可溶性樹脂、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等を挙げることができる。
なお、添加剤は、以上説明した各種添加剤1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、化学増幅型レジストとして有用である。化学増幅型レジストにおいては、露光により酸発生剤から発生した酸の作用によって、樹脂成分である重合体中の酸解離性基が解離して、カルボキシル基を生じる。その結果、レジストの露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、この露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のフォトレジストパターンが得られる。フォトレジストパターンの形成方法としては例えば以下の方法が挙げられる。
【0070】
<フォトレジストパターンの形成方法>
フォトレジストパターンの形成方法は、例えば、以下に示すようにしてフォトレジストパターンを形成することが一般的である。(1)感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にフォトレジスト膜を形成する(工程(1));(2)工程(1)で形成されたフォトレジスト膜に(必要に応じて液浸媒体を介し)、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射して露光する(工程(2));基板(露光されたフォトレジスト膜)を加熱する(工程(3));次いで現像する(工程(4));等の工程を経てフォトレジストパターンを形成することができる。
【0071】
工程(1)では、感放射線性樹脂組成物、またはこれを溶剤に溶解させて得られた組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、基板(シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等)上に塗布することにより、フォトレジスト膜を形成する。具体的には、得られるレジスト膜が所定の膜厚となるように樹脂組成物溶液を塗布した後、プレベーク(PB)することにより塗膜中の溶剤を揮発させ、レジスト膜を形成する。
【0072】
工程(2)では、工程(1)で形成されたフォトレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光させる。なお、この際には、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等から適宜選択して照射する。ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、なかでも、ArFエキシマレーザーが好ましい。
【0073】
工程(3)は、ポストエクスポージャーベーク(PEB)と呼ばれ、工程(2)でフォトレジスト膜の露光された部分において、酸発生剤から発生した酸が重合体を脱保護する工程である。露光された部分(露光部)と露光されていない部分(未露光部)のアルカリ現像液に対する溶解性に差が生じる。PEBは、通常50℃から180℃の範囲で適宜選択して実施される。
【0074】
工程(4)では、露光されたフォトレジスト膜を、現像液で現像することにより、所定のフォトレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0075】
また、水等の液浸媒体を介して液浸露光を行う場合は、工程(2)の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、工程(4)の前に溶剤により剥離する、溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報参照)、工程(4)の現像と同時に剥離する、現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。実施例および比較例における各測定・評価は、下記の要領で行なった。
【0077】
ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):
東ソー社製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0078】
ポリスチレン換算数平均分子量(Mn):
東ソー社製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0079】
13C−NMR分析:
それぞれの重合体の13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(商品名:JNM−ECX400、日本電子社製)を使用し、測定した。
【0080】
感度(単位:mJ/cm2):
8インチのウエハー表面に、下層反射防止膜形成剤(商品名:ARC29A、日産化学社製)を用いて、膜厚77nmの下層反射防止膜を形成した。この基板の表面に、実施例および比較例の感放射線性樹脂組成物をスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、100℃で60秒間SB(SoftBake)を行ない、膜厚100nmのレジスト被膜を形成した。
このレジスト被膜を、フルフィールド縮小投影露光装置(商品名:S306C、ニコン社製、開口数0.78)を用い、マスクパターンを介して露光した。その後、105℃で60秒間PEBを行なった後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(以下、「TMAH水溶液」と記す。)により、25℃で30秒現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。
このとき、寸法90nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅90nmの1対1ラインアンドスペースに形成される露光量(mJ/cm2)を最適露光量とし、この最適露光量(mJ/cm2)を「感度」とした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(商品名:S9260、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
【0081】
露光余裕(EL):
90nm1L/1Sマスクパターンで解像されるパターン寸法が、マスクの設計寸法の±10%以内となる場合の露光量の範囲の、最適露光量に対する割合を露光余裕とした。具体的には、露光余裕が13%以上の場合「良好」、13%未満の場合「不良」と評価した。なお、パターン寸法の観測には上記走査型電子顕微鏡を用いた。
【0082】
マスク・エラー許容度を表す指標(MEEF):
上記走査型電子顕微鏡を用い、最適露光量において、5種類のマスクサイズ(85.0nmL/170nmP、90.0nmL/180nmP、95.0nmL/190nmP)で解像されるパターン寸法を測定した。その測定結果を、横軸をマスクサイズ、縦軸を線幅としてプロットし、最小二乗法によりグラフの傾きを求めた。この傾きをMEEF(Mask Error Enhanced Factor)とした。具体的には、MEEFが1.3以上の場合「良好」、1.3未満の場合「不良」と評価した。
【0083】
単量体の合成例
【化19】

セプタムキャップ付き反応用試験管内に8ml(50ミリモル、9.7g)の上記式(l)で表される化合物(ダイセル(株)社、市販品)と487mg(4.96ミリモル)のMTHP(N−メチルテトラヒドロピリミジン)をとり、セプタムキャップを用いて蓋をした。二酸化炭素バブリング用のシリンジ針と圧抜き用の二本のシリンジ針をセプタムキャップに差し込んだ後、二酸化炭素ガスを室温で15分間バブリングした。その後、2.31g(7.17ミリモル)のBu4NBr(テトラブチルアンモニウムブロミド)と347mg(4.00ミリモル)のLiBr(臭化リチウム)を添加した後、55℃で二酸化炭素をバブリングしながら7日間反応させた。
【0084】
反応終了後、室温に戻し、アセトン10mlを添加し、30分間放置した。500mlビーカーに反応混合物を移し、200mlの酢酸エチルを添加した。不溶部が生じるので、酢酸エチル可溶部を分液ロートに移し、水で3回洗浄した。酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を除去することにより9.8gの粗生成物を得た。得られた粗成生物を30mlのサンプル瓶に移し、20mlのシクロヘキサンを添加し、2時間激しく撹拌した。2時間後、シクロヘキサンが上層として分離するので除去した。同様の操作を2〜3回繰り返した。得られたシクロヘキサン不溶部を、酢酸エチルに溶解後、水および飽和食塩水で洗浄した。酢酸エチル層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を除去することにより4.7gの上記式(ll)で表される化合物を収率40モル%で得た。
【0085】
得られた式(ll)で表される化合物の1H NMR結果を図1に、13C NMR結果を図2に、赤外分光チャートを図3にそれぞれ示す。
異性体と思われるピークが一部見られるが、図1〜図3の結果より、式(ll)で表される化合物の生成が確認された。
【0086】
重合体の合成例1
【化20】

上記式(ll)で表される化合物15.19g(50モル%)、上記式(lll)で表される化合物14.81g(50モル%)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.04gをメチルエチルケトン60gに溶解して、単量体溶液を準備した。
別に、容量500ミリリットルの三口フラスコに、メチルエチルケトン30gを入れて、30分間窒素パージを行なった。その後、反応溶液を攪拌しながら78℃に保持して、上記単量体溶液を滴下漏斗から3時間かけて滴下し、さらに3時間加熱して重合した。重合終了後、反応溶液を水冷して30℃以下に冷却し、メタノール600g中に投入して、析出した白色粉末をろ別した。ろ別したのち、60℃にて8時間乾燥して、白色粉末の重合体22.8g(収率76質量%)を得た。
この重合体はMwが7,600、Mw/Mn=1.38であり、13C NMR分析の結果、化合物(ll)、化合物(lll)に由来する各繰り返し単位の含有率が、化合物(ll)/化合物(lll)=48.2/51.8(モル%)の共重合体であった。この共重合体を樹脂(A−1)とする。
【0087】
重合体の合成例2
【化21】

上記式(ll)で表される化合物17.64g(50モル%)、上記式(lV)で表される化合物12.36g(50モル%)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.21gをメチルエチルケトン60gに溶解して、単量体溶液を準備した。
別に、容量500ミリリットルの三口フラスコに、メチルエチルケトン30gを入れて、30分間窒素パージを行なった。その後、反応溶液を攪拌しながら78℃に保持して、上記単量体溶液を滴下漏斗から3時間かけて滴下し、さらに3時間加熱して重合した。重合終了後、反応溶液を水冷して30℃以下に冷却し、メタノール600g中に投入して、析出した白色粉末をろ別した。ろ別したのち、60℃にて3時間乾燥して、白色粉末の重合体22.5g(収率75質量%)を得た。
この重合体はMwが5,620、Mw/Mn=1.38であり、13C NMR分析の結果、化合物(ll)、化合物(lV)に由来する各繰り返し単位の含有率が、化合物(ll)/化合物(lV)=51.7/48.3(モル%)の共重合体であった。この共重合体を樹脂(A−2)とする。
【0088】
重合体の合成例3
【化22】

上記式(ll)で表される化合物16.32g(50モル%)、上記式(lll)で表される化合物7.96g(25モル%)、上記式(lV)で表される化合物5.72g(25モル%)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.12gをメチルエチルケトン60gに溶解して、単量体溶液を準備した。その後の重合は、上記重合体の合成例1と同じ条件で重合して白色粉末の重合体を得た。
この重合体はMwが6,800、Mw/Mn=1.35であり、13C NMR分析の結果、化合物(ll)、化合物(lll)、化合物(lV)に由来する各繰り返し単位の含有率が、化合物(ll)/化合物(lll)/化合物(lV)=48.9/23.7/27.4(モル%)の共重合体であった。この共重合体を樹脂(A−3)とする。
【0089】
重合体の合成例4
【化23】

上記式(V)で表される化合物14.60g(50モル%)、上記式(lll)で表される化合物15.4g(50モル%)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.08gをメチルエチルケトン60gに溶解して、単量体溶液を準備した。その後の重合は、上記重合体の合成例1と同じ条件で重合して白色粉末の重合体を得た。
この重合体はMwが4,900、Mw/Mn=1.40であり、13C NMR分析の結果、化合物(V)、化合物(lll)に由来する各繰り返し単位の含有率が、化合物(V)/化合物(lll)=49.1/50.9(モル%)の共重合体であった。この共重合体を樹脂(B−1)とする。
【0090】
酸拡散制御剤の合成例
窒素雰囲気下、0℃にて、アルドリッチ社製のN−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン2.01g(10ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン2.58g(20ミリモル)が溶解したテトラヒドロフラン(THF)溶液10mlに、2−メトキシエトキシメチルクロライド1.37g(11ミリモル)のTHF溶液10mlを滴下した。滴下終了後、反応液の温度を室温まで戻し、さらに1時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)にて原料の消失を確認した後、反応液を0℃に冷却し、水を加えて反応を停止した。その後、反応液に水および酢酸エチルを加えて抽出を3回行ない、得られた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、水、飽和食塩水でそれぞれ1回ずつ洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。その後、減圧下で溶媒留去して得られた生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、N−t−ブトキシカルボニル−4−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]ピペリジンを無色液体として1.7g得た(収率60%)。この化合物を酸拡散制御剤(C−2)とする。
【0091】
以下、各実施例および比較例に用いた樹脂成分以外の成分を以下に示す。
<酸発生剤>
(B−1):トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート
<酸拡散制御剤>
(C−1):2−フェニルベンズイミダゾール
(C−2):N−t−ブトキシカルボニル−4−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]ピペリジン
<溶剤>
(D−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(D−2):シクロヘキサノン
【0092】
実施例1〜4、比較例1
表1に示す樹脂、酸発生剤、および酸拡散制御剤を表1に示す割合で溶剤に溶解して、混合溶液を得て、得られた混合溶液を孔径200nmのフィルターでろ過して、各実施例および比較例の感放射線性樹脂組成物を調製した。
得られた各実施例および比較例の感放射線性樹脂組成物について、ArFエキシマレーザーを光源として、感度、EL、およびMEEFについて評価を行なった。評価結果を表2に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、KrFエキシマレーザー、およびArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー材料として好適に用いることができる。また、液浸露光にも対応可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位および下記式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体と、感放射線性酸発生剤とを含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
【化24】

(式(1)および式(2)において、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、
式(1)において、Xは単結合またはヘテロ原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基を表し、pは0または1、nは0または1、mは0、1または2を表し、
式(2)において、R1は、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であり、R2は相互に独立に炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、または2つのR2が相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の脂環式炭化水素基を形成する。)
【請求項2】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、pが0または1でnが0のとき、mは1または2であり、pが0でnが1のとき、または、pが1でnが1のとき、mは0であることを特徴とする請求項1記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(2)で表される繰り返し単位は、下記式(2a)および下記式(2b)から選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位であることを特徴とする請求項1記載の感放射線性樹脂組成物。
【化25】

(式(2a)および式(2b)において、RおよびR1は前記式(2)におけるRおよびR1とそれぞれ同一であり、kは0〜6の整数を表す。)
【請求項4】
前記感放射線性樹脂組成物は、さらに酸拡散制御剤を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の感放射線性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−48175(P2011−48175A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196918(P2009−196918)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】