説明

感放射線性組成物及びスルホンイミド化合物

【課題】KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線に有効に感応し、感度に優れ、微細パターンを高精度に且つ安定して形成可能な化学増幅型ポジ型レジスト膜を成膜することができる感放射線性組成物を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表されるスルホンイミド化合物と、酸解離性基含有化合物と、溶剤と、を含有する感放射線性組成物である。


(一般式(1)中、Mは一価のオニウムカチオンを示し、Yは、カルボニル基等を示し、R及びRは、相互に独立に、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基等を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感放射線性組成物及びスルホンイミド化合物に関する。更に詳しくは、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線の如き各種の放射線による微細加工に適した化学増幅型レジストとして使用される感放射線性組成物及びそれに用いるスルホンイミド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線から、i線、KrFエキシマレーザー光、更にはArFエキシマレーザー光というように短波長化の傾向が見られる。更に、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、或いはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
【0003】
EUV光を用いたリソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられ、高感度、高解像性のポジ型レジストが望まれている。特に、ウェハー処理時間の短縮化のために高感度化は非常に重要な課題である。しかし、EUV用のポジ型レジストにおいては、高感度化を追求しようとすると、解像力の低下のみならず、ナノエッジラフネスの悪化が起こるため、これらの特性を同時に満足するレジストの開発が強く望まれている。尚、ナノエッジラフネスとは、レジストのパターンと基板界面のエッジがレジストの特性に起因して、ライン方向と垂直な方向に不規則に変動するために、パターンを真上から見たときに設計寸法と実際のパターン寸法に生じるずれのことをいう。この設計寸法からのずれがレジストをマスクとするエッチング工程により転写され、電気特性を劣化させるため、歩留りを低下させることになる。特に、EUVが適用されようとしている32nm以下の超微細領域では、ナノエッジラフネスは極めて重要な改良課題となっている。高感度と、高解像性、良好なパターン形状及び良好なナノエッジラフネスとはトレードオフの関係にあり、これを如何にして同時に満足させるかが非常に重要である。
【0004】
EUV用のポジ型レジストに関しては、これまで主にKrFエキシマレーザー用のレジスト技術が転用されて検討されてきた。例えば、特許文献1には、4−ヒドロキシスチレンと2−メチル−2−アダマンチルアクリレートとの共重合体を含有する感放射線性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、光酸発生剤を2種用いる感放射線性樹脂組成物が開示されている。更に、特許文献3には、強酸を発生する光酸発生剤と、弱酸を発生する光酸発生剤を併用する感放射線性樹脂組成物が開示され、特許文献4及び特許文献5にはオキソ酸以外の酸を発生させる化合物を用いる感放射線性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−166478号公報
【特許文献2】特開平5−323590号公報
【特許文献3】特開平5−181279号公報
【特許文献4】特開2002−6482号公報
【特許文献5】特開平8−526859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜5に開示された感放射線性樹脂組成物を用いても、高感度と、高解像性、良好なパターン形状及び良好なナノエッジラフネスとは同時に満足できないのが現状である。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線に有効に感応し、感度に優れ、微細パターンを高精度に且つ安定して形成可能な化学増幅型ポジ型レジスト膜を成膜することができる感放射線性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の構造式で表されるスルホンイミド化合物を含有することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示す感放射線性組成物及びスルホンイミド化合物が提供される。
【0010】
[1]下記一般式(1)で表されるスルホンイミド化合物(以下、「化合物(C)」ともいう)と、酸解離性基含有化合物と、溶剤と、を含有する感放射線性組成物。
【0011】
【化1】

(前記一般式(1)中、Mは、一価のオニウムカチオンを示す。Yは、カルボニル基、スルホニル基、又は単結合を示す。R及びRは、相互に独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、又は脂環式炭化水素基を示す。但し、RとRとが結合してRとRの炭素数を足して員数6〜12の環状構造を形成しても良い。)
【0012】
[2]前記酸解離性基含有化合物が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位、及び一般式(3)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも一の繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」ともいう)を有する樹脂である前記[1]に記載の感放射線性組成物。
【0013】
【化2】

(前記一般式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシメチル基を示す。複数のRは、相互に独立に、炭素数4〜20の一価の脂環式炭化水素基、又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に脂環式炭化水素基を形成してもよい。)
【0014】
【化3】

(前記一般式(3)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシメチル基を示す。複数のRは、相互に独立に、炭素数4〜20の一価の脂環式炭化水素基、又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に脂環式炭化水素基を形成してもよい。)
【0015】
[3]下記一般式(4)で表されるオニウム塩(以下、「酸発生剤(B)」ともいう)を含む感放射線性酸発生剤を更に含有する前記[1]又は[2]に記載の感放射線性組成物。
:(4)
(前記一般式(4)中、Aは1価のオニウムカチオンを示す。Bは、下記一般式(B−1)又は下記一般式(B−2)で表される一価のアニオンを示す。)
【0016】
2nSO :(B−1)
SO :(B−2)
(前記一般式(B−1)中のR及び前記一般式(B−2)中のRは、フッ素原子又は置換されていても良い炭素数1〜12の炭化水素基を示す。前記一般式(B−1)中、nは、1〜10の整数を示す。)
【0017】
[4]下記一般式(1)で表されるスルホンイミド化合物。
【0018】
【化4】

(前記一般式(1)中、Mは、一価のオニウムカチオンを示す。Yは、カルボニル基、スルホニル基、又は単結合を示す。R及びRは、相互に独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、又は脂環式炭化水素基を示す。但し、RとRとが結合してRとRの炭素数を足して員数6〜12の環状構造を形成しても良い。)
【発明の効果】
【0019】
本発明の感放射線性組成物は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線に有効に感応し、ナノエッジラフネス、感度及び解像度に優れ、微細パターンを高精度に且つ安定して形成可能な化学増幅型ポジ型レジスト膜を成膜することができるという効果を奏するものである。
【0020】
また、本発明のスルホンイミド化合物は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線に有効に感応し、ナノエッジラフネス、感度及び解像度に優れ、微細パターンを高精度に且つ安定して形成可能な化学増幅型ポジ型レジスト膜を成膜することができる感放射線性組成物に用いることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ラインパターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0023】
I.スルホンイミド化合物:
本発明のスルホンイミド化合物は、前記一般式(1)で表される化合物である。化合物(C)は、通常は塩基性を示すが、リソグラフィープロセスにおいて、レジスト被膜に電子線や放射線等を照射することによってレジスト被膜内でスルホンイミドを発生し、塩基性を失う。そのため、露光部においては分解して酸解離性基の解離反応に影響を及ぼさないが、未露光部においては酸発生剤から発生した酸と反応して未露光部での解離反応を抑制することができる。
【0024】
前記一般式(1)中、Mは一価のオニウムカチオンであり、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンであることが好ましいが、一般式(5)で表されるスルホニウムカチオンであることが特に好ましい。
【0025】
【化5】

(一般式(5)中、複数のRは、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合してイオウカチオンとともに環状構造を形成し、残りの1つのRが置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であってもよい。)
【0026】
前記一般式(1)中、Yは、カルボニル基、スルホニル基、又は単結合を示す。感度、安定性の観点からYはカルボニル基であることが好ましい。R及びRは、相互に独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、又は脂環式炭化水素基を示す。但し、RとRとが結合してRとRの炭素数を足して員数6〜12の環状構造を形成しても良い。
【0027】
及びRとして表される基は、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基が好ましい。これらの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルブチル基等を挙げることができる。なお、これらのアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシル基は置換基を有していてもよい。
【0028】
置換基の例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シアノ基、水酸基、アミド基、エステル基、カルボニル基、スルホニル基、スルホンアミド基、ニトロ基等がある。
【0029】
前記一般式(1)中のアニオン構造としては、例えば下記一般式(X−1)〜(X−5)で表される構造がある。
【0030】
【化6】

(一般式(X−3)〜(X−5)中、R及びRは、相互に独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、又は脂環式炭化水素基を示す。但し、RとRとが結合してRとRの炭素数を足して員数6〜12の環状構造を形成しても良い。一般式(X−1)中のR及び一般式(X−2)中のRは、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、又は脂環式炭化水素基を示す。一般式(X−1)中、xは、0〜2の整数を示す。一般式(X−2)中、yは、0〜6の整数を示す。)
【0031】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物等を挙げることができる。
【0032】
【化7】

【0033】
(合成方法)
化合物(C)は、例えば、下記反応式のように合成することができる。先ず、一般式(6)で表される化合物を、水溶液中で炭酸水素ナトリウムと反応させることにより、一般式(7)で表される化合物とする。次に、所望のオニウムカチオンMのハロゲン化物(例えば、MBr)と水溶液中で反応させることにより合成することができる。
【0034】
【化8】

(一般式(6)〜(8)中、Yは、カルボニル基、スルホニル基、又は単結合を示す。R及びRは、相互に独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、又は脂環式炭化水素基を示す。但し、RとRとが結合してRとRの炭素数を足して員数6〜12の環状構造を形成しても良い。また、一般式(8)中、Mは、一価のオニウムカチオンを示す。)
【0035】
II.感放射線性組成物:
本発明の感放射線性組成物は、「I.スルホンイミド化合物」に記載のスルホンイミド化合物と、酸解離性基含有化合物と、溶剤と、を含有するものであり、通常、感放射線性酸発生剤を更に含有するものである。化合物(C)を含有することで、放射線の照射領域では感放射線性酸発生剤から発生した酸による解離反応が進行し、非照射領域においては、照射領域で発生した酸の拡散による解離反応を抑制することができる。そのため、形成されるレジストパターンの寸法精度がきわめて良好なものとなる。
【0036】
1.酸解離性基含有化合物:
酸解離性基含有化合物としては、酸解離性基含有樹脂(以下、「樹脂(A)」という)、又は分子量5000以下の酸解離性基含有低分子化合物がある。これらの中でも、樹脂(A)が好ましい。
【0037】
(樹脂(A))
樹脂(A)は、酸解離性基を有する繰り返し単位を有する樹脂であり、通常、アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性であり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる樹脂である。なお、ここでいう「アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性」とは、樹脂(A)を含有する感放射線性組成物を用いて形成したレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、レジスト被膜の代わりに樹脂(A)のみを用いた膜厚100nmの被膜を現像した場合に、被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質をいう。
【0038】
感放射線性組成物が、このような樹脂(A)を含有する場合、特に感度に優れるものとなる。そのため、リソグラフィープロセスにおいて、電子線又は極紫外線に有効に感応し、低ラフネスであり、感度及び解像度に優れ、微細パターンを高精度に且つ安定して形成することができる化学増幅型ポジ型レジスト膜を成膜可能である。
【0039】
(1)構成成分:
樹脂(A)は、前記繰り返し単位(1)を有する樹脂であることが好ましい。
【0040】
前記一般式(2)中、Rとして表される基のうち、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等がある。また、炭素数4〜20の一価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタンや、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類等に由来する脂環族環からなる基;これらの脂環族環からなる基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基の1種以上で置換した基等がある。更に、いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に形成される脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン、シクロペンタン、シクロヘキサンに由来する脂環族環からなる基や、これらの脂環族環からなる基を前記アルキル基で置換した基等がある。
【0041】
前記一般式(3)中、Rとして表される基の具体例としては、一般式(2)中、Rとして表される基と同様のことがいえる。
【0042】
繰り返し単位(1)の中でも、一般式(2−1)〜(2−7)で表される繰り返し単位、及び一般式(3−1)で表される繰り返し単位が好ましく、一般式(2−2)〜(2−4)で表される繰り返し単位が特に好ましい。
【0043】
【化9】

(一般式(2−1)〜(2−7)及び(3−1)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシメチル基を示す。Rは、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。但し、Rが複数存在する場合は相互に独立である。)
【0044】
なお、樹脂(A)は、繰り返し単位(1)を1種のみ有しても良く、2種以上有しても良い。
【0045】
樹脂(A)は、繰り返し単位(1)のみにより構成されていても良いが、繰り返し単位(1)以外に、一般式(9)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」という)、一般式(10)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3)」という)、及び一般式(11)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(4)」という)からなる群より選択される少なくとも一の繰り返し単位を有することが更に好ましい。
【0046】
【化10】

(一般式(9)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。Rは、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基を示す。iは、0〜3の整数を示す。jは、0〜3の整数を示す。但し、i+j≦5である。)
【0047】
【化11】

(一般式(10)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。Rは、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基を示す。kは、0〜3の整数を示す。lは、0〜3の整数を示す。但し、k+l≦5である。)
【0048】
【化12】

(一般式(11)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。Rは、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基を示す。mは、0〜3の整数を示す。nは、0〜3の整数を示す。但し、m+n≦5である。)
【0049】
一般式(9)中、Rとして表される基のうち、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等がある。また、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等がある。これらの中でも、Rとして表される基は、メチル基、エチル基、n−ブチル基、又はt−ブチル基であることが好ましい。
【0050】
一般式(9)中、iは、0〜3の整数であり、1又は2であることがより好ましい。また、jは、0〜3の整数であり、0〜2の整数であることがより好ましい。
【0051】
繰り返し単位(2)の具体例としては、式(9−1)〜(9−4)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。なお、樹脂(A)が繰り返し単位(2)を有する場合、繰り返し単位(2)を1種のみ有しても良く、2種以上有しても良い。
【0052】
【化13】

【0053】
一般式(10)中、Rとして表される基のうち、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基及び炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基の具体例としては、一般式(9)中、Rとして表される基と同様のことがいえる。
【0054】
一般式(10)中、kは、0〜3の整数であり、1又は2であることがより好ましい。また、lは、0〜3の整数であり、0又は1であることがより好ましい。
【0055】
繰り返し単位(3)の具体例としては、式(10−1)及び(10−2)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。なお、樹脂(A)が繰り返し単位(3)を有する場合、繰り返し単位(3)を1種のみ有しても良く、2種以上有しても良い。
【0056】
【化14】

【0057】
一般式(11)中、Rとして表される基のうち、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基及び炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルコキシル基の具体例としては、一般式(9)中、Rとして表される基と同様のことがいえる。
【0058】
一般式(11)中、mは、0〜3の整数であり、1又は2であることがより好ましい。また、nは、0〜3の整数であり、0又は1であることがより好ましい。
【0059】
繰り返し単位(4)の具体例としては、式(11−1)及び(11−2)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。なお、樹脂(A)が繰り返し単位(4)を有する場合、繰り返し単位(4)を1種のみ有しても良く、2種以上有しても良い。
【0060】
【化15】

【0061】
式(9−1)〜(9−3)で表される繰り返し単位を有する重合体は、対応するヒドロキシスチレン誘導体を単量体として用いて重合することにより得ることができる。更には、加水分解することにより、ヒドロキシスチレン誘導体が得られる化合物を単量体として用いて重合することにより得ることもできる。式(9−1)〜(9−3)で表される繰り返し単位を有する重合体を得るために用いられる単量体としては、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン等が好ましい。これらの単量体を用いた場合には、重合した後、側鎖を加水分解することにより、式(9−1)〜(9−3)で表される繰り返し単位を有する重合体が得られる。
【0062】
また、式(9−4)、(10−1)、(10−2)、(11−1)、及び(11−2)で表される繰り返し単位を有する重合体は、対応する単量体を用いて重合することにより得ることができる。式(9−4)、(10−1)、(10−2)、(11−1)、及び(11−2)で表される繰り返し単位を有する重合体を得るために用いられる単量体としては、p−イソプロペニルフェノール、4−ヒドロキシフェニルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等が好ましい。
【0063】
樹脂(A)は、繰り返し単位(1)〜(4)以外に、非酸解離性化合物に由来する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(5)」という)を更に有しても良い。
【0064】
非酸解離性化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、イソボロニルアクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデセニル(メタ)アクリレート、式(12)で表される化合物等がある。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、トリシクロデカニルアクリレート、式(12)で表される化合物が好ましい。なお、樹脂(A)が繰り返し単位(5)を有する場合、繰り返し単位(5)を1種のみ有しても良く、2種以上有しても良い。
【0065】
【化16】

【0066】
繰り返し単位(1)の含有率は、樹脂(A)における全繰り返し単位の合計を100mol%とした場合に、1mol%以上であることが好ましく、20〜70mol%であることがより好ましく、20〜60mol%であることが更に好ましい。繰り返し単位(1)の含有率が1mol%以上であると、ナノエッジラフネスに優れるものとすることができる。
【0067】
また、繰り返し単位(2)〜(4)の含有率の合計は、樹脂(A)における全繰り返し単位の合計を100mol%とした場合に、1〜95mol%であることが好ましく、10〜95mol%であることがより好ましく、40〜80mol%であることが更に好ましい。繰り返し単位(2)〜(4)の含有率の合計が95mol%超であると、ナノエッジラフネスが悪化する場合がある。
【0068】
更に、繰り返し単位(1)〜(4)の含有率の合計は、樹脂(A)における全繰り返し単位の合計を100mol%とした場合に、10mol%以上であることが好ましく、40〜100mol%であることがより好ましく、50〜100mol%であることが更に好ましい。繰り返し単位(1)〜(4)の含有率の合計が10mol%以上であると、ナノエッジラフネスに優れるものとすることができる。
【0069】
また、繰り返し単位(5)の含有率は、樹脂(A)における全繰り返し単位の合計を100mol%とした場合に、通常、60mol%以下であり、50mol%以下であることが好ましい。繰り返し単位(5)の含有率が60mol%以下であると、解像性能とナノエッジラフネスとの性能バランスに優れるものとすることができる。
【0070】
(2)調製方法:
樹脂(A)の調製方法は特に限定されないが、例えば、公知のラジカル重合又はアニオン重合により行うことができる。また、繰り返し単位(2)〜(4)における側鎖のヒドロキシスチレン単位は、重合反応終了後、有機溶媒中で塩基又は酸の存在下でアセトキシ基等の加水分解を行なうことにより得ることもできる。
【0071】
ラジカル重合は、例えば、窒素雰囲気下、適当な有機溶媒中で、ラジカル重合開始剤の存在下において、繰り返し単位(1)を与える単量体等の必要な単量体を攪拌し、加熱することにより実施することができる。
【0072】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素等がある。なお、この重合の際には、必要に応じて、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、沃素、メルカプタン、スチレンダイマー等の重合助剤を添加することもできる。
【0073】
ラジカル重合における反応温度は特に限定されず、ラジカル重合開始剤の種類等により適宜選定される(例えば、50〜200℃)。特に、アゾ系開始剤やパーオキサイド系開始剤を用いる場合には、ラジカル重合開始剤の半減期が10分〜30時間程度になる温度が好ましく、ラジカル重合開始剤の半減期が30分〜10時間程度になる温度がより好ましい。また、反応時間は、ラジカル重合開始剤の種類や反応温度により異なるが、ラジカル重合開始剤が50%以上消費される反応時間が望ましく、通常、0.5〜24時間程度である。
【0074】
また、アニオン重合は、例えば、窒素雰囲気下、適当な有機溶媒中で、アニオン重合開始剤の存在下において、繰り返し単位(1)等の必要な単量体を攪拌し、所定の温度で維持することにより実施することができる。
【0075】
アニオン重合開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム等の有機アルカリ金属がある。
【0076】
アニオン重合における反応温度は特に限定されず、アニオン重合開始剤の種類等により適宜選定される。特に、アルキルリチウムをアニオン重合開始剤として用いる場合には、−100〜50℃であることが好ましく、−78〜30℃であることがより好ましい。また、反応時間は、アニオン重合開始剤の種類や反応温度により異なるが、アニオン重合開始剤が50%以上消費される反応時間が望ましく、通常、0.5〜24時間程度である。
【0077】
なお、樹脂(A)の調製においては、重合開始剤を用いずに、加熱により重合反応を行なうことや、カチオン重合を行なうことも可能である。
【0078】
樹脂(A)の側鎖を加水分解することでヒドロキシスチレン単位を導入する場合、加水分解の反応に用いられる酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸及びその水和物、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の無機酸;ピリジニウムp−トルエンスルホネート等の塩等がある。また、塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基;トリエチルアミン、ピペリジン等の有機塩基等がある。
【0079】
また、重合や加水分解に用いられる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、臭化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化アルキル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブ類等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロアミド等の非プロトン性極性溶剤類等がある。これらの中でも、アセトン、メチルアミルケトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。
【0080】
(3)物性:
樹脂(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、3000〜100000であることが好ましく、3000〜40000であることがより好ましく、3000〜25000であることが更に好ましい。また、樹脂(A)のMwと、GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(以下、「Mn」ともいう)との比(Mw/Mn)は、通常、1〜5であり、1〜3であることが好ましく、1〜2.5であることが更に好ましい。
【0081】
(酸解離性基含有低分子化合物)
本明細書において、酸解離性基含有低分子化合物とは、分子量5000以下であり、その構造中に酸解離性基を少なくとも2個有し、酸解離性基間の距離が最も離れた位置において、酸解離性基を除く結合原子を少なくとも4個経由する化合物をいう(以下、「化合物(A’)」という)。
【0082】
化合物(A’)は、その構造中に酸解離性基を2個有する場合、酸解離性基を除く結合原子を少なくとも10個経由することが好ましく、少なくとも11個経由することが更に好ましく、少なくとも12個経由することが特に好ましい。また、その構造中に酸解離性基を3個以上有する場合、酸解離性基を除く結合原子を少なくとも9個経由することが好ましく、少なくとも10個経由することが更に好ましく、少なくとも11個経由することが特に好ましい。なお、酸解離性基を除く結合原子の上限は、50個以下であることが好ましく、30個以下であることが更に好ましい。
【0083】
化合物(A’)が、酸解離性基を3個以上、好ましくは4個以上有する場合、又は酸解離性基を2個有する場合においても、酸解離性基が互いにある一定の距離以上離れていれば、アルカリ可溶性樹脂に対する溶解阻止性が著しく向上する。なお、化合物(A’)における酸解離性基間の距離は、酸解離性基を除く、経由結合原子数で示される。例えば、下記一般式(A’−1)及び(A’−2)で表される化合物の場合、酸解離性基間の距離である、経由結合原子数はそれぞれ4であり、下記一般式(A’−3)で表される化合物の場合、経由結合原子数は12である。
【0084】
【化17】

【0085】
また、化合物(A’)は、1つのベンゼン環上に複数個の酸解離性基を有していても良く、1つのベンゼン環上に1つ又は2つの酸解離性基を有する骨格から構成されることが好ましい。更に、化合物(A’)の分子量は5,000以下であり、500〜4,000であることが好ましく、1,000〜2,500であることが更に好ましい。
【0086】
化合物(A’)は、酸解離性基、即ち、−COO−A基、−O−B基を含む基として、−R−COO−A基、又は−Ar−O−B基で表される基を有することが好ましい。
【0087】
ここで、Rは、置換基を有していても良い2価以上の、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示す。Arは、単環又は多環の置換基を有していても良い2価以上の芳香族炭化水素基を示す。Aは、−C(R01)(R02)(R03)、−Si(R01)(R02)(R03)、又は−C(R04)(R05)−O−R06で表される基を示す。Bは、A、又は−CO−O−Aで表される基を示す。
【0088】
01〜R05は、相互に独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を示す(但し、R01〜R03の内、少なくとも2つは水素原子以外の基である)。R06は、アルキル基又はアリール基を示す。なお、R01〜R03の内の2つが結合して環状構造を形成してもよい。また、R04〜R06の内の2つが結合して環状構造を形成してもよい。
【0089】
01〜R05として表される基のうち、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。また、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましい。更に、アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数2〜4のアルケニル基が好ましい。また、アリール基としては、フェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6〜14のアリール基が好ましい。
【0090】
やArが有していても良い置換基としては、水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ベンジル基、フェネチル基、クミル基等のアラルキル基;アラルキルオキシ基;ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ベンゾイル基、シアナミル基、バレリル基等のアシル基;ブチリルオキシ基等のアシロキシ基;アルケニル基;ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;アリール基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンゾイルオキシ基等のアリールオキシカルボニル基がある。
【0091】
酸解離性基として、好ましくは、シリルエーテル基、クミルエステル基、アセタール基、テトラヒドロピラニルエーテル基、エノールエーテル基、エノールエステル基、第3級のアルキルエーテル基、第3級のアルキルエステル基、第3級のアルキルカーボネート基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基、第3級アルキルカーボネート基、クミルエステル基、テトラヒドロピラニルエーテル基である。
【0092】
化合物(A’)には、特開平1−289946号公報、特開平1−289947号公報、特開平2−2560号公報、特開平3−128959号公報、特開平3−158855号公報、特開平3−179353号公報、特開平3−191351号公報、特開平3−200251号公報、特開平3−200252号公報、特開平3−200253号公報、特開平3−200254号公報、特開平3−200255号公報、特開平3−259149号公報、特開平3−279958号公報、特開平3−279959号公報、特開平4−1650号公報、特開平4−1651号公報、特開平4−11260号公報、特開平4−12356号公報、特開平4−12357号公報、特開平4−271349号公報、特開平5−45869号公報、特開平5−158233号公報、特開平5−224409号公報、特開平5−257275号公報、特開平5−297583号公報、特開平5−303200号公報、特開平5−341510号公報等に記載されたポリヒドロキシ化合物のフェノール性水酸基の一部若しくは全部を、−R−COO−A又は−Ar−O−B基で結合し、保護した化合物が含まれる。
【0093】
また、化合物(A’)としては、例えば、下記一般式(A’−4)で表される化合物もある。
【0094】
【化18】

(一般式(A’−4)中、Rは、相互に独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換の酸解離性基を示す。Xは、相互に独立に、炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキレン基を示す。Zは、相互に独立に、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示す。qは、相互に独立に、0又は1である。)
【0095】
2.感放射線性酸発生剤:
感放射線性酸発生剤は、リソグラフィープロセスにおいて、本発明の感放射線性組成物に電子線や放射線等を照射したときに、感放射線性組成物内で酸を発生する物質である。感放射線性酸発生剤から発生した酸の作用によって酸解離性基含有化合物中の酸解離性基が解離することになる。
【0096】
感放射線性酸発生剤としては、酸発生効率、耐熱性等が良好であるという観点から、例えば、オニウム塩、ジアゾメタン化合物、及びスルホンイミド化合物(但し、前記一般式(1)で表される化合物を除く)からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。なお、これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
オニウム塩としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等がある。これらの中でも、前記一般式(4)で表されるオニウム塩が好ましい。
【0098】
良好な感度を得るために、前記一般式(4)中、Aは、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンであることが好ましい。これらの具体例としては、前記一般式(5)で表されるスルホニウムカチオン、下記一般式(13)で表されるヨードニウムカチオン等を挙げることができる。
【0099】
【化19】

(一般式(13)中、複数のRは、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。但し、2つのRが相互に結合してヨウ素カチオンとともに環状構造を形成してもよい。)
【0100】
で表される1価のオニウムカチオンの部分は、例えば、Advances in Polymer Sciences,Vol.62,p.1−48(1984)に記載されている公知の方法に準じて製造することができる。
【0101】
前記一般式(4)中、Bで表される1価のアニオンの具体例としては、前記一般式(B−1)及び(B−2)で表されるアニオンや、下記一般式(B−3)及び(B−4)で表されるアニオン等を挙げることができる。これらの中でも、前記一般式(B−1)及び(B−2)で表されるアニオンであることが好ましい。
【0102】
【化20】

(一般式(B−3)中、複数のR10は、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基を示す。但し、2つのR10が相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された員数6〜20の環状構造を形成してもよい。一般式(B−4)中、複数のR11は、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基を示す。但し、いずれか2つのR11が相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された員数6〜20の環状構造を形成し、残りの1つのR11が少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基であってもよい。)
【0103】
また、ジアゾメタン化合物としては、例えば、下記一般式(14)で表される化合物等がある。
【0104】
【化21】

(一般式(14)中、複数のR12は、相互に独立に、1価の有機基を示す。)
【0105】
一般式(14)中、R12として表される1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等がある。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基を挙げることができる。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基等の炭素数6〜22のアリール基を挙げることができる。
【0106】
ハロゲン置換アルキル基の具体例としては、上述のアルキル基における少なくとも1つ以上の水素原子がハロゲン(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換された基を挙げることができる。ハロゲン置換アリール基の具体例としては、上述のアリール基における少なくとも1つ以上の水素原子がハロゲン(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換された基を挙げることができる。
【0107】
更に、スルホンイミド化合物としては、例えば、下記一般式(15)で表される化合物等がある。
【0108】
【化22】

(一般式(15)中、Dは、2価の基を示す。R13は1価の有機基を示す。)
【0109】
一般式(15)中、Dとして表される2価の基としては、メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、又はアルコキシレン基等がある。アルキレン基の具体例としては、エチレン基、1−メチルエチレン基、n−ブチレン基等の炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を挙げることができる。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、クロロフェニレン基、ブロモフェニレン基、フルオロフェニレン基等の炭素数6〜22のアリーレン基を挙げることができる。アルコキシレン基の具体例としては、エトキシレン基、プロポキシレン基、ブトキシレン基等の炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状のアルコキシレン基を挙げることができる。
【0110】
また、一般式(15)中、R13として表される1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等が挙げられる。これらの説明は、一般式(14)のR12として表される1価の有機基における各説明をそのまま適用することができる。
【0111】
感放射線性酸発生剤の含有量は、酸解離性基含有化合物100質量部に対して、0.1〜40質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることが更に好ましい。含有量が0.1質量部未満であると、感度及び現像性が低下するおそれがある。一方、40質量部超であると、放射線に対する透明性、パターン形状、耐熱性等が低下するおそれがある。
【0112】
3.一般式(1)で表される化合物:
一般式(1)で表される化合物は、「I.スルホンイミド化合物」に記載のスルホンイミド化合物である。
【0113】
化合物(C)の含有量は、酸解離性基含有化合物100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることが更に好ましい。化合物(C)の含有量が30質量部超であると、形成したレジスト被膜の解像度が低下するおそれがある。一方、5質量部未満であると、解像度が低下するおそれがある。
【0114】
4.溶剤:
本発明の感放射線性組成物は、通常、酸解離性基含有化合物、感放射線性酸発生剤、及び化合物(C)を、溶剤に溶解させた組成物溶液として使用する。
【0115】
溶剤としては、直鎖状又は分岐状のケトン類、環状のケトン類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類、及びγ−ブチロラクトン等からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0116】
溶剤の使用量は、感放射線性組成物中の全固形分濃度が、1〜70質量%となる量であることが好ましく、1〜15質量%となる量であることがより好ましく、1〜10質量%となる量であることが更に好ましい。
【0117】
本発明の感放射線性組成物を使用する際の組成物溶液は、酸解離性基含有化合物、感放射線性酸発生剤、化合物(C)、及び必要によりその他の成分(溶剤を除く)を、全固形分濃度が前記範囲となるように、溶剤に均一に溶解した後、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することが好ましい。
【0118】
5.酸拡散制御剤:
本発明の感放射線性組成物は、酸拡散制御剤を更に含有してもよい。酸拡散制御剤は、露光により感放射線性酸発生剤から生じる酸の、レジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有するものである。
【0119】
このような酸拡散制御剤を含有させることにより、得られる感放射線性組成物の貯蔵安定性が向上し、露光後からその後の加熱処理までの引き置き時間(PED)の変動に起因するレジストパターンの線幅変化を抑えることができる。そのため、プロセス安定性に極めて優れる感放射線性組成物が得られる。
【0120】
酸拡散制御剤としては、例えば、含窒素有機化合物がある。含窒素有機化合物としては、例えば、下記一般式(16)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(i)」という)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(ii)」という)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体(以下、これらをまとめて「含窒素化合物(iii)」という)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等がある。
【0121】
【化23】

(一般式(16)中、複数のR14は、相互に独立に、水素原子、置換されていても良い直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、置換されていても良いアリール基、又は置換されていても良いアラルキル基を示す。)
【0122】
含窒素化合物(i)としては、モノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;トリエタノールアミン等の置換アルキルアミン;芳香族アミン類がある。
【0123】
含窒素化合物(ii)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等がある。
【0124】
含窒素化合物(iii)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等がある。
【0125】
アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物の他、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等がある。
【0126】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等がある。
【0127】
含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類の他、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等がある。
【0128】
なお、感放射線性組成物は、酸拡散制御剤を1種単独で又は2種以上を組み合わせて含有しても良い。
【0129】
酸拡散制御剤の含有量は、酸解離性基含有化合物100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、0.001〜10質量部であることが更に好ましく、0.005〜5質量部であることが特に好ましい。酸拡散制御剤の含有量が15質量部超であると、形成したレジスト被膜の感度や露光部の現像性が低下するおそれがある。一方、0.001質量部未満であると、プロセス条件によっては、形成したレジスト被膜のパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0130】
6.その他の成分:
本発明の感放射線性組成物は、その他の成分として、必要に応じて、界面活性剤、増感剤、脂肪族添加剤等の各種の添加剤を更に含有させることができる。
【0131】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名で、KP341(信越化学工業社製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学社製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子社製)等がある。なお、これらの界面活性剤は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、界面活性剤の含有量は、酸解離性基含有化合物100質量部に対して、0.001〜2質量部であることが好ましい。
【0132】
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを感放射線性酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加させる作用を示すもので、感放射線性組成物のみかけの感度を向上させる効果を有する。このような増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等がある。なお、これらの増感剤は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、増感剤の含有量は、酸解離性基含有化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0133】
また、染料又は顔料を配合することにより、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和することができる。また、接着助剤を含有させることにより、レジスト被膜と基板との接着性を改善することができる。
【0134】
脂環族添加剤は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を更に改善する作用を有する成分である。このような脂環族添加剤としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、等のリトコール酸エステル類や、3−(2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル)テトラシクロ(6.2.1.13,6.02,7)ドデカン等がある。なお、これらの脂環族添加剤は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0135】
脂環族添加剤の含有量は、酸解離性基含有化合物100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましい。この脂環族添加剤の含有量が20質量部超であると、形成したレジスト被膜の耐熱性が低下するおそれがある。
【0136】
更に、これ以外にも、アルカリ可溶性重合体、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等を含有させることができる。
【0137】
(レジストパターンの形成方法)
本発明の感放射線性組成物は、化学増幅型ポジ型レジスト膜を成膜可能な材料として有用である。化学増幅型ポジ型レジスト膜においては、露光により感放射線性酸発生剤から発生した酸の作用によって、酸解離性基含有化合物中の酸解離性基が解離し、酸解離性基含有化合物がアルカリ可溶性となる。即ち、レジスト被膜に、アルカリ可溶性部位が生じる。このアルカリ可溶性部位は、レジストの露光部であり、この露光部はアルカリ現像液によって溶解、除去することができる。このようにして所望の形状のポジ型のレジストパターンを形成することができる。以下、具体的に説明する。
【0138】
本発明の感放射線性組成物を用いてレジストパターンを形成するには、先ず、本発明の感放射線性組成物によってレジスト被膜を形成する。感放射線性組成物としては、例えば、上述したように、全固形分濃度を調整した後、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過した組成物溶液を用いることができる。この組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウェハー等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成する。その後、場合により、予め70〜160℃程度の温度で加熱処理(以下、「PB」という)を行っても良い。
【0139】
次いで、所定のレジストパターンが形成されるように、このレジスト被膜を露光する。この露光に使用することができる放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、EUV(極紫外線、波長13.5nm等)等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線等がある。また、露光量等の露光条件は、感放射線性組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選定することができる。なお、この露光は、液浸露光とすることもできる。
【0140】
露光後には、加熱処理(以下、「PEB」という)を行うことが好ましい。このPEBにより、酸解離性基含有化合物の酸解離性基の解離を円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、感放射線性組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、30〜200℃であることが好ましく、50〜170℃であることがより好ましい。
【0141】
本発明においては、感放射線性組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば、特公平6−12452号公報(特開昭59−93448号公報)等に開示されているように、使用される基板上に有機系又は無機系の反射防止膜を形成することもできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、特開平5−188598号公報等に開示されているように、レジスト被膜上に保護膜を設けることもできる。なお、これらの技術は併用することもできる。
【0142】
次いで、露光したレジスト被膜を現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも一種を溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。
【0143】
アルカリ性水溶液の濃度は、10質量%以下であることが好ましい。アルカリ性水溶液の濃度が10質量%超であると、非露光部も現像液に溶解するおそれがある。また、現像液は、pH8〜14であることが好ましく、pH9〜14であることがより好ましい。
【0144】
また、アルカリ性水溶液からなる現像液には、例えば、有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等がある。これらの有機溶媒は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0145】
有機溶媒の配合量は、アルカリ性水溶液100体積部に対して、100体積部以下が好ましい。有機溶媒の配合量が100体積部超であると、現像性が低下して、露光部の現像残りが多くなるおそれがある。また、アルカリ性水溶液からなる現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ性水溶液からなる現像液で現像した後は、水で洗浄して乾燥することもできる。
【実施例】
【0146】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。また、本実施例においては、レジスト被膜の露光にEB(電子線)を使用している。しかしながら、EUV等の短波長放射線を使用した場合でも、基本的なレジスト特性は類似しており、それらの間に相関性があることも知られているため、特別除外されるわけではない。
【0147】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]:東ソー社製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本)を用い、流量:1.0ミリリットル/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。また、分散度Mw/Mnは測定結果より算出した。
【0148】
13C−NMR分析]:日本電子社製、型式「JNM−EX270」を用いて測定した。
【0149】
H−NMR分析]:日本電子社製、型式「JNM−Delta400」を用いて測定した。
【0150】
[感度(L/S)(μC/cm)]:線幅150nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が150nmのスペース部(即ち、溝)と、からなるパターン(いわゆる、ライン・アンド・スペースパターン(1L1S))を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量により感度を評価した。
【0151】
[ナノエッジラフネス(nm)]:設計線幅150nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)のラインパターンを、半導体用走査電子顕微鏡(高分解能FEB測長装置、商品名「S−9220」、日立製作所社製)にて観察した。観察された形状について、図1に示すように、シリコンウエハー1上に形成したレジスト被膜のライン部の横側面2aに沿って生じた凹凸の最も著しい箇所における線幅と設計線幅150nmの差「ΔCD」を、CD−SEM(日立ハイテクノロジーズ社製、「S−9220」)にて測定することによりナノエッジラフネスを評価した。なお、図1で示す凹凸は、実際より誇張している。
【0152】
[解像度(L/S)(nm)]:ライン・アンド・スペースパターン(1L1S)について、最適露光量により解像されるラインパターンの最小線幅を解像度とした。
【0153】
(合成例1:樹脂(A−1)の調製)
p−アセトキシスチレン56g、式(M−1)で表される化合物(以下、「化合物(M−1)」ともいう)44g、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という)4g、及びt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1000gのn−ヘキサン中に滴下して、共重合体を凝固精製した。
【0154】
次いで、この共重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、更に、メタノール150g、トリエチルアミン35g、及び水7gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行なった。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥した。得られた共重合体は、Mwが11000であり、Mw/Mnが2.0であり、13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位及び化合物(M−1)に由来する繰り返し単位の含有比(mol比)が65:35の共重合体であった。以下、この共重合体を、樹脂(A−1)とする。
【0155】
【化24】

【0156】
(実施例1:化合物(C)の合成)
下記式(C’−1)で表される化合物(40mmol)を水に溶解し、30分攪拌した。そこに、下記式(C’−2)で表される化合物(30mmol)の水溶液を加え、1.5時間攪拌した。反応液に塩化メチレン500gを加え、更に1時間攪拌した後、塩化メチレン層を回収し、水500gで5回洗浄した。その後、塩化メチレンを減圧留去し、乾燥させることで化合物を得た。
【0157】
【化25】

【0158】
得られた化合物のH−NMRを測定した。測定結果を以下に示す。なお、測定試料は得られた化合物(0.03mmol)を重ジメチルスルホキシド(1.0ml)に溶解して調製した。
【0159】
H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d6、内部標準TMS):δ(ppm)=7.75−7.90(15H,m)、5.25(1H,s)、1.90(3H,s)。
【0160】
H−NMRの結果より、得られた化合物の構造は下記式(C−1)で表される構造であることがわかった。以下、この化合物を化合物(C−1)とする。
【0161】
【化26】

【0162】
(実施例2)
合成例1で調製した樹脂(A−1)100部、酸発生剤(B−1)15部、実施例1で合成した化合物(C−1)5部、酸拡散制御剤(D−1)2部、溶剤(E−1)1100部、及び溶剤(E−2)2500部を混合し、得られた混合液を孔径200nmのメンブランフィルターでろ過することにより、感放射線性組成物の組成物溶液を調製した。
【0163】
(実施例3〜4及び比較例1〜2)
表1に示す仕込み量にて、樹脂(A)、酸発生剤(B)、化合物(C)、酸拡散制御剤(D)、及び溶剤(E)を混合し、得られた混合液を孔径200nmのメンブランフィルターでろ過することにより、各感放射線性組成物の組成物溶液を調製した。
【0164】
【表1】

【0165】
なお、酸発生剤(B)、酸拡散制御剤(D)、溶剤(E)の詳細を以下に示す。
【0166】
(酸発生剤(B))
(B−1):式(B−1)で表される化合物
(B−2):式(B−2)で表される化合物
【0167】
【化27】

【0168】
(酸拡散制御剤(D))
(D−1):トリ−n−オクチルアミン
【0169】
(溶剤(E))
(E−1):乳酸エチル
(E−2):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0170】
(感放射線性組成物の評価)
東京エレクトロン社製の商品名「クリーントラックACT−8」内で、シリコンウエハー上に感放射線性組成物の組成物溶液をスピンコートした後、表2に示す条件でPB(加熱処理)を行い、膜厚50nmのレジスト被膜を形成した。その後、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社製、型式「HL800D」、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm)を用いてレジスト被膜に電子線を照射した。電子線の照射後、表2に示す条件でPEBを行った。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した。その後、純水で水洗し、乾燥して、レジストパターンを形成した。このようにして形成したレジストパターンについて評価試験を行った。評価結果を表2に示す。
【0171】
【表2】

【0172】
表2からわかるように、化合物(C−1)を含有する実施例2〜4の感放射線性組成物は、化合物(C)を含有しない比較例1及び2の感放射線性組成物に比べて、電子線に有効に感応し、低ラフネスであると共に感度にも優れており、微細パターンを高精度に且つ安定して形成することが可能な化学増幅型ポジ型レジスト膜を成膜することができる。特に、化合物(C−1)を含有し、酸拡散制御剤(D)を含有しない実施例3〜4の感放射線性組成物は、化合物(C−1)と酸拡散制御剤(D)を含有する実施例2の感放射線性組成物と比較して、感度が特に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の感放射線性組成物は、レジストパターン形成時におけるライン・アンド・スペースパターンの解像度に優れるだけでなく、ナノエッジラフネスにも優れるので、EB、EUVやX線による微細パターン形成に有用である。従って、本発明の感放射線性組成物は、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用の化学増幅型レジストを形成可能なものとして極めて有用である。
【符号の説明】
【0174】
1;シリコンウエハー、2;レジストパターン、2a;レジストパターンの横側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるスルホンイミド化合物と、
酸解離性基含有化合物と、
溶剤と、を含有する感放射線性組成物。
【化1】

(前記一般式(1)中、Mは、一価のオニウムカチオンを示す。Yは、カルボニル基、スルホニル基、又は単結合を示す。R及びRは、相互に独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、又は脂環式炭化水素基を示す。但し、RとRとが結合してRとRの炭素数を足して員数6〜12の環状構造を形成しても良い。)
【請求項2】
前記酸解離性基含有化合物が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位、及び一般式(3)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも一の繰り返し単位を有する樹脂である請求項1に記載の感放射線性組成物。
【化2】

(一般式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシメチル基を示す。複数のRは、相互に独立に、炭素数4〜20の一価の脂環式炭化水素基、又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に脂環式炭化水素基を形成してもよい。)
【化3】

(一般式(3)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシメチル基を示す。複数のRは、相互に独立に、炭素数4〜20の一価の脂環式炭化水素基、又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。但し、いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に脂環式炭化水素基を形成してもよい。)
【請求項3】
下記一般式(4)で表されるオニウム塩を含む感放射線性酸発生剤を更に含有する請求項1又は2に記載の感放射線性組成物。
:(4)
(前記一般式(4)中、Aは1価のオニウムカチオンを示す。Bは、下記一般式(B−1)又は下記一般式(B−2)で表される一価のアニオンを示す。)
2nSO :(B−1)
SO :(B−2)
(前記一般式(B−1)中のR及び(B−2)中のRは、フッ素原子又は置換されていても良い炭素数1〜12の炭化水素基を示す。前記一般式(B−1)中、nは、1〜10の整数を示す。)
【請求項4】
下記一般式(1)で表されるスルホンイミド化合物。
【化4】

(前記一般式(1)中、Mは、一価のオニウムカチオンを示す。Yは、カルボニル基、スルホニル基、又は単結合を示す。R及びRは、相互に独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、又は脂環式炭化水素基を示す。但し、RとRとが結合してRとRの炭素数を足して員数6〜12の環状構造を形成しても良い。)

【図1】
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【公開番号】特開2011−201810(P2011−201810A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70606(P2010−70606)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】