説明

感湿粘着力可変性粘着剤組成物およびその用途

【課題】 常態では十分な粘着力を有し、エネルギー線照射や加熱を必要とせずに、簡便な手段で粘着力を制御可能であり、かつ剥離後の被着体における粘着剤残渣が低減された粘着剤組成物および粘着シートを提供すること。
【解決手段】 本発明に係る感湿粘着力可変性粘着剤組成物は、
粘着性ポリマー100質量部に対し、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを0.01〜15質量部含み、
23℃、50%RH環境下に30分放置した後の、シリコンウエハ鏡面に対する粘着力Aと、
60℃、90%RH環境下に2時間放置した後の、シリコンウエハ鏡面に対する粘着力Bとの比B/A×100(%)が3〜70%の範囲にあることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関し、詳しくは周辺の湿度に対応して粘着力が変化しうる粘着剤組成物(以下、「感湿粘着力可変性粘着剤組成物」と呼ぶことがある)に関する。また、本発明は、かかる感湿粘着力可変性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートおよびこれを用いた各種被着体の一時的な保持方法および、半導体ウエハの裏面研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気部品、電子部品、半導体部品を生産する際に、半導体ウエハの裏面研削やウエハのダイシングなどの処理工程において、回路の保護やウエハの固定を目的として粘着シートが使用されている。このような粘着シートとしては、基材フィルムに再剥離性の弱粘着性アクリル系粘着層が設けられた粘着シートや、当初は強い剥離抵抗性があるが、エネルギー線照射により小さい力で剥離可能となるエネルギー線硬化型粘着剤層が設けられた粘着シート、あるいは加熱により粘着力を低減できる粘着シートなどがある。
【0003】
しかし、弱粘着性アクリル系粘着層が設けられた粘着シートでは、半導体ウエハなどの被加工物(被着体ともいう)が、加工時に位置ずれを起こしたり、脱落することがある。また、エネルギー線硬化型粘着シートを用いる場合には、エネルギー線照射装置が必要であり、導入費用が大きくなる。また、保管時や使用時における酸素との接触により光開始剤が失活し、必要な時点で硬化が効率的に進行せず剥離不良となるいわゆる酸素阻害の問題の可能性を払拭できない。さらに加熱を利用する粘着シートの場合には、耐熱性の低い被着体には適用できず、また加熱時に粘着シートの基材が熱により変形してしまうことがある。
【0004】
特許文献1(特開2008−222781号公報)には、上記のようなエネルギー線硬化型粘着シートの一例として、粘着剤層にポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを配合してなる帯電防止性能を有する粘着シートが開示されている。しかし、特許文献1においては、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートによる帯電防止性能の付与を作用効果としてあげているものの、本願発明が目的とする感湿粘着力可変性については何ら言及されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−222781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑み、エネルギー線硬化型粘着シートや加熱により粘着力を低減できる粘着シートの代替となる粘着シートを鋭意探索してなされたものであり、常態では十分な粘着力を有し、エネルギー線照射や加熱を必要とせずに、簡便な手段で粘着力を制御可能であり、かつ剥離後の被着体における粘着剤残渣が低減された粘着剤組成物および粘着シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決する手段に応用可能な現象として、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを含有する粘着剤組成物において、高湿環境下に放置した場合に粘着力が低下し、常態に戻した場合には可逆的に粘着力が回復する場合があることを見出した。この現象を鋭意究明したところ、特に、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートの配合量が所定範囲にあると、被着体への残渣の発生を抑制しつつ、湿度に対する粘着力の低下およびその可逆的復元性が顕著になるとの知見を得た。
【0008】
上記のような知見に基づいて完成された本発明は、下記の事項を要旨として含む。
(1)粘着性ポリマー100質量部に対し、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを0.01〜15質量部含み、
23℃、50%RH環境下に30分放置した後の、シリコンウエハ鏡面に対する粘着力Aと、
60℃、90%RH環境下に2時間放置した後の、シリコンウエハ鏡面に対する粘着力Bとの比B/A×100(%)が3〜70%の範囲にある、感湿粘着力可変性粘着剤組成物。
【0009】
(2)ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが下記式にて示される化合物である、(1)に記載の感湿粘着力可変性粘着剤組成物。
【化1】

(式中、R1は(メタ)アクリロイル基であり、R2は炭素数1〜4のアルキレン基であり、nは1〜20の整数を示す。)
【0010】
(3)紫外線照射前の、シリコンウエハ鏡面に対する前記粘着力Aと、
紫外線照射後(照度190mW/cm2、光量220mJ/cm2)の、シリコンウエハ鏡面に対する粘着力Cとの比C/A×100(%)が90〜110%の範囲にある(1)または(2)に記載の感湿粘着力可変性粘着剤組成物。
【0011】
(4)光重合開始剤を実質的に含有しない、(1)〜(3)の何れかに記載の感湿粘着力可変性粘着剤組成物。
【0012】
(5)基材および該基材の片面または両面に積層された粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層の少なくとも一層が、(1)〜(4)の何れかに記載の感湿粘着力可変性粘着剤組成物からなる粘着シート。
【0013】
(6)粘着剤層に、被着体を貼付した後、被着体および粘着シートを高湿環境下に投入し、または水中に投入し、被着体を粘着剤層から剥離することに用いる(5)に記載の粘着シート。
【0014】
(7)上記(5)に記載の粘着シートの、感湿粘着力可変性粘着剤組成物からなる粘着剤層に、被着体を貼付し、被着体の加工、運搬、保管または保護を行った後、被着体および粘着シートを高湿環境下に投入し、または水中に投入し、被着体を粘着剤層から剥離する、被着体の一時的な保持方法。
【0015】
(8)上記(5)に記載の粘着シートの、感湿粘着力可変性粘着剤組成物からなる粘着剤層に、表面に回路が形成された半導体ウエハを貼付し、半導体ウエハの裏面を研削した後、粘着シートを高湿環境下に投入し、または水中に投入し、半導体ウエハを粘着剤層から剥離する、半導体ウエハの裏面研削方法。
【0016】
(9)粘着剤にポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを粘着性ポリマー100質量部に対して0.01〜15質量部配合することを特徴とする粘着剤への感湿粘着力可変性の付与方法。
【0017】
(10) ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートからなる、感湿粘着力可変性付与剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明の粘着剤組成物は、常態では十分な粘着力を有し、エネルギー線照射や加熱を必要とせずに、簡便な手段で粘着力を制御できる。具体的には、高湿環境下に所定時間放置することで、粘着力が低下し、また常態に戻すことで粘着力が可逆的に回復する(以下、湿度に感応して粘着力が低下すること、およびその後湿度に感応して可逆的に粘着力が回復することを併せて「感湿粘着力可変性」ということがある。)。したがって、本発明の粘着シートによれば、半導体ウエハなどの各種被着体を一時的に保持して、裏面研削などの所望の処理を施した後に、簡便な操作により粘着シートから被着体を剥離することができる。また、剥離後の粘着シートの粘着力の回復が容易であり、粘着シートを再使用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の粘着剤組成物には、常態では十分な粘着力を有し、高湿環境下に所定時間放置することで、粘着力が低下し、また常態に戻すことで粘着力が可逆的に回復するという特異な性質を有する。
【0020】
このような本発明の粘着剤組成物の特異な性質は、常態での粘着力Aと、高湿環境下での粘着力Bとから、以下のように定義される。
【0021】
粘着力Aおよび粘着力Bを評価するため、粘着剤組成物はシート状に加工される。シートの形状は特に限定はされないが、基材として厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて、該基材の片面に厚み10μmの粘着剤層を剥離不能に形成した粘着シートを用いる。
【0022】
次いで、23℃、50%RH(相対湿度)環境下で、粘着シートを幅25mm、長さ250mmに裁断し、粘着力測定用の粘着シート片を得る。
【0023】
次いで、該粘着シート片をシリコンウエハ鏡面に貼付する。粘着シート片をシリコンウエハ鏡面に貼付し、23℃、50%RH環境下に静置した30分経過後に、23℃、50%RH環境下でシート片の180°剥離を行ったときの粘着力を測定し、この値を粘着力Aとする。また、粘着シート片を貼付後、60℃、90%RH環境下に2時間放置した後、23℃、50%RH環境下でシート片の180°剥離を行ったときの粘着力を測定し、この値を粘着力Bとする。なお、粘着力の測定は、上述した条件以外についてはJIS Z0237:2009に準じて行う。
【0024】
粘着力Aと粘着力Bとの比(粘着力B/粘着力A)×100(%)は、3〜70%、好ましくは3〜50%、さらに好ましくは3〜40%、特に好ましくは3〜25%の範囲にある。たとえば特開平8−27239号公報には、紫外線の照射によりその粘着力が照射前の1〜50%まで低下する粘着シートが開示されており、その粘着シートが利用される分野は半導体加工分野である。また、このような分野において現実に、紫外線の照射によりその粘着力が照射前の1〜50%まで低下する粘着シートが用いられていることは当業者に周知である。したがって、本発明の粘着剤組成物を当該分野で利用する場合には、粘着力Aと粘着力Bとの比を50%以下とすることが好ましく、この値は低いほど好ましい。また、粘着力Aおよび粘着力Bの絶対値は特に限定はされないが、粘着力Aは、好ましくは5000〜30000mN/25mm、さらに好ましくは8000〜20000mN/25mmであり、粘着力Bは、好ましくは0〜10000mN/25mm、さらに好ましくは10〜2000mN/25mm、特に好ましくは10〜1000mN/25mmである。
【0025】
したがって、本発明の粘着剤組成物は、常態では十分な粘着力を有し、高湿環境下に所定時間放置することで、粘着力が低下することがわかる。そして、さらに驚くべきことに本発明の粘着剤組成物は、上記のように粘着力Bを測定した後に、常態(23℃、50%RH環境下)に放置することで、粘着力が可逆的に回復するという特異な性質を有する。具体的には、粘着力Bを測定した後に、常態に10時間程度放置することで、粘着力Aの±20%、好ましくは±10%程度にまで、粘着力が回復する。このため、本発明の粘着剤組成物を用いた粘着シートは、高湿環境下で粘着力が低下する処理を行い、剥離した後に、常態に放置し粘着力を回復して、再使用することもできる。
【0026】
本発明の粘着剤組成物としては、粘着性ポリマーと、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートと、その他の汎用添加剤とからなる粘着剤組成物があげられる。
【0027】
粘着剤組成物は、粘着剤100質量部に対し、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを好ましくは0.01〜15質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは1〜5質量部含む。
【0028】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートの配合量が過剰であると、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが粘着剤の主成分である高分子の絡み合い構造に捉えられにくくなり、被着体に転着して汚染し、残渣となることがある。一方、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートの配合量が過小であると、上記のような感湿粘着力可変性が奏されず、または不十分となるおそれがある。
【0029】
前記ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートは下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0030】
【化2】

【0031】
式中、R1は(メタ)アクリロイル基、すなわちアクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0032】
2は炭素数1〜4のアルキレン基である。炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、2,3−ブチレン基が挙げられる。これらのうちで、帯電防止性能の観点から、エチレン基または1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。また、−(R2−O−)n―は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、オキセタン、テロラヒドロフラン等の環状エーテルの開環反応によって誘導される構造であってもよい。nは1〜20の整数、好ましくは4〜16の整数を示す。
【0033】
ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートは単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。粘着剤層に上記化合物を配合することで、上記のような感湿粘着力可変性を示すことは、驚くべきことであり、通常上記化合物は、エネルギー線硬化型単量体として知られているに過ぎない。このようなポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートは公知の方法によって得られる。
【0034】
粘着剤組成物に含まれる粘着性ポリマーとしては、適度な再剥離性を発現する性能を有していれば特に限定されず、このような粘着性ポリマーとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、アクリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。合成ゴムの具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0035】
アクリル樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主剤とするものである。(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種以上の単量体と、必要に応じて、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシブチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有化合物;アクリルアミドなどのアミド基含有化合物;スチレン、ビニルピリジンなどの芳香族化合物などの共重合性単量体の1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体における(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有割合は、50〜98質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、70〜93質量%がさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、30万〜250万が好ましく、40万〜150万がより好ましく、45万〜100万が特に好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度は、通常20℃以下、好ましくは−70〜10℃程度であり、常温(23℃)においては粘着性を有する。
【0037】
ポリビニルエーテル樹脂の具体例としては、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどが挙げられる。ウレタン樹脂の具体例としては、ポリオールと環状もしくは鎖状のイソシアネートの反応物などが挙げられる。シリコーン樹脂の具体例としては、ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0038】
これらの粘着性ポリマーは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの粘着性ポリマーのうち、アクリル系共重合体を、ポリイソシアナート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤などの架橋剤の1種以上で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤から粘着剤組成物を構成することが好ましい。
【0039】
ポリイソシアナート系架橋剤としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、キシリレンジイソシアナート(XDI)、水素化トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート及びその水添体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー、ポリメチロールプロパン変性TDIなどが挙げられる。
【0040】
エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0041】
アジリジン系架橋剤としては、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボキシアミノ)ジフェニルメタン、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)アジリジニル]フォスフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)アジリジニル]トリフォスファトリアジン等が挙げられる。
【0042】
キレート系架橋剤としては、アルミニウムキレート、チタンキレート等が挙げられる。
【0043】
架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤の使用量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。
【0044】
また、粘着剤組成物には、粘着性ポリマーおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートに加えて、本発明の趣旨を損なわない範囲で他の成分が配合されていてもよい。他の成分としては、無機充填材、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
なお、再剥離性粘着剤組成物の一種に、エネルギー線硬化型粘着剤組成物がある。エネルギー硬化型粘着剤組成物は、エネルギー線照射により粘着力を低下させることを目的として、エネルギー線重合性の単量体、オリゴマー、ポリマー等およびこれらの重合を開始するための光重合開始剤が配合される。しかしながら、本発明の粘着剤組成物には、エネルギー線硬化性は求められないので、エネルギー線重合性化合物、光重合開始剤が配合される必要はない。また、エネルギー線重合性化合物を配合している場合、保管時にその有する重合性の官能基が反応して粘着剤組成物の特性が変化する可能性があり、また、エネルギー線重合性化合物が低分子化合物である場合には残渣発生の原因となる可能性があるため、配合されていないことが好ましい。上記ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートは、末端に(メタ)アクリロイル基を有するため、エネルギー線重合性を有する。すなわち、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートは、光重合開始剤の存在下にエネルギー線照射することで重合する。しかし、本発明の粘着剤組成物には、光重合開始剤は配合されないので、本発明の粘着剤組成物の使用にあたり、たとえエネルギー線が照射される場合があるとしても、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが重合する可能性は極めて低い。また、本発明の粘着剤組成物は、湿度により粘着力が可逆的に回復することから、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基は、感湿粘着力可変性には寄与はしていないか、たとえ寄与しているとしても僅かであると考えられる。よって、本発明においては、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートはエネルギー線重合性化合物とは見做されない。
【0046】
したがって、本発明の粘着剤組成物は、エネルギー線硬化性を実質的に有しないことが好ましい。このような本発明の粘着剤組成物の非硬化性は、上記粘着力Aと、当該粘着力Aの測定サンプルに十分な量の紫外線を照射した後の粘着力Cとから確認できる。ここで、十分な量の紫外線とは、通常のエネルギー線硬化型粘着剤がほぼ完全に硬化する程度の照射量であり、光量220mJ/cm2以上、照度190mW/cm2以上の条件であればよい。なお、粘着力Cも、粘着力Aと同様に、シリコンウエハ鏡面に対する180°剥離粘着力を意味する。
【0047】
本発明の粘着剤組成物が、エネルギー線硬化性を実質的に有しないことは、本発明の粘着剤組成物における紫外線照射前の粘着力Aと、紫外線照射後の粘着力Cとの比(粘着力C/粘着力A)×100(%)が90〜110%であることで表される。紫外線照射前の粘着力Aと、紫外線照射後の粘着力Cとの比は、好ましくは95〜105%の範囲にある。
【0048】
なお、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートの意図しない重合を防止するために、光重合開始剤を添加しないという消極的な手段のほか、重合禁止剤を添加するという積極的な手段を採用してもよい。
【0049】
本発明の粘着シートは、基材および該基材の片面または両面に積層された上記粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する。以下、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層を「粘着剤層(1)」と記載することがある。粘着剤層(1)の厚みは、通常1〜200μmであり、好ましくは5〜100μmである。
【0050】
粘着剤層の表面形状は、通常平滑であるが、凹凸を設けた構成としてもよい。凹凸を設ける場合には、粘着剤表面に面方向に連続する溝(粘着剤層の形成がないか、または粘着剤層が他の領域よりも薄くなっている領域)を設けてもよい。このような溝を設けることで、雰囲気中の湿気と粘着剤層とが接触しやすくなり、感湿粘着力可変性がより発現しやすくなる。凹凸を設ける方法としては、後述するように粘着剤層と貼り合わされることのある剥離シートに凹凸を形成して、粘着剤層に凹凸を転写させる方法が挙げられる。
【0051】
基材は高湿環境下における耐湿性があれば特に限定されず、公知の基材から適宜選択して用いられる。基材としては、具体的には、樹脂フィルム、金属箔、金属を蒸着させた樹脂フィルム、紙、不織布、これらの積層体が挙げられる。
【0052】
樹脂フィルムの材料に用いられる樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン;
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、アクリル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂、ノルボルネン系樹脂、アイオノマー樹脂などが挙げられる。また、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどの成分を含む熱可塑性エラストマーを用いてもよい。これらのうちで、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンが好適に用いられる。
【0053】
また、樹脂フィルムとしては、発泡フィルム、上記樹脂の架橋フィルムを使用してもよい。金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔等が挙げられ、金属を蒸着させた樹脂フィルムとしては、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。紙としては、たとえば、湿潤紙力増強剤を添加したパルプを抄造した紙などが挙げられる。不織布としては、湿式法、スパンボンド法、スパンレース法等により製造されたナイロンやポリエステルの不織布が挙げられる。
【0054】
また、基材としては、透湿性を有する基材を用いてもよい。透湿性基材を用いることで、粘着シートを被着体に貼付後、粘着力を低下するために高湿環境下に投入した際に、雰囲気中の湿気と粘着剤層とが接触しやすくなり、感湿粘着力可変性がより発現しやすくなる。透湿性を有する基材としては、たとえば、ポリウレタンフィルム、多孔質ポリウレタンフィルム、多孔質ポリオレフィンフィルム、紙、不織布等があげられる。
【0055】
また、これらの基材を2層以上積層した積層基材であってもよい。上記基材の厚みは、通常12〜300μm、好ましくは50〜200μmである。また、基材の片面もしくは両面には、その上に形成される粘着剤層との密着性を向上するために、コロナ処理が施されていてもよく、プライマー層が形成されていてもよい。また、上記基材は帯電防止処理されているフィルムであってもよい。
【0056】
本発明の粘着シートは、基材の片面に粘着剤層(1)が積層されていても、基材の両面に粘着剤層(1)が積層されていてもよく、また、基材の一方の面に粘着剤層(1)が積層され、他方の面に、本発明の粘着剤組成物とは異なる粘着剤組成物からなる粘着剤層(2)が積層されていてもよい。
【0057】
粘着剤層(2)に含まれる粘着剤は、特に限定されず、再剥離性であってもよいし、強粘着性であってもよい。このような粘着剤としては、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などの粘着剤が挙げられる。これらのうちで、上記アクリル共重合体を主成分とするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。他の粘着剤層においても、粘着剤層(1)と同様に他の成分が含まれていてもよい。粘着剤層(2)の厚みは、粘着剤層(1)と同一であってもよく、また異なっていてもよく、通常1〜200μmであり、好ましくは5〜100μmである。
【0058】
また、本発明の粘着シートには、シートの表裏面に貫通する貫通孔が形成されていてもよい。貫通孔を形成することで、粘着シートを被着体に貼付後、粘着力を低下するために高湿環境下に投入した際に、雰囲気中の湿気と粘着剤層とが接触しやすくなり、感湿粘着力可変性がより発現しやすくなる。貫通孔の開口径は、好ましくは5〜500μm、さらに好ましくは10〜200μm、特に好ましくは30〜100μmの範囲にある。また、隣接する貫通孔同士の間隔(ピッチ)は、貫通孔間の平均距離で、好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは1〜3mmの範囲にある。粘着シート表面における貫通孔の開口率は、好ましくは0.0001%〜5%、さらに好ましくは0.001〜2.5%、特に好ましくは0.01〜0.5%の範囲にある。なお、貫通孔の穿孔方法は特に限定はされず、たとえば細い針を突き刺して貫通孔を形成してもよいが、レーザー穿孔加工によることが孔径の精度や微細加工が可能な点から好ましい。
【0059】
本発明の粘着シートの製造方法は特に限定されない。たとえば、粘着剤層(1)を構成する本発明の粘着剤組成物を作製する。なお、粘着剤組成物の固形分比率は上記のとおりであるが、粘着剤層の形成のために、適当な溶媒に分散または溶解して用いてもよい。次いで、ロールコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなど公知の方法により、この粘着剤組成物を上記基材上に適宜の厚さで塗工し乾燥して製造できる。製造後、必要に応じ粘着剤層(1)を保護するために、粘着剤層(1)上に剥離シートを貼付しておいてもよい。また、粘着剤組成物を剥離シート上に適宜の厚さで塗工し乾燥してから、基材を粘着剤層(1)に積層して製造してもよい。なお、他の粘着剤層を形成するときも同様に行えばよい。
【0060】
かくして得られる本発明の粘着シートは、常態では十分な粘着力を有し、エネルギー線照射や加熱を必要とせずに、簡便な手段で粘着力を制御できる。具体的には、高温高湿環境下に、または水中に所定時間放置することで、粘着力が低下し、また常態に戻すことで粘着力が可逆的に回復する。したがって、本発明の粘着シートによれば、半導体ウエハなどの各種被着体を一時的に保持して、裏面研削などの所望の処理を施した後に、簡便な操作により粘着シートから被着体を剥離することができる。また、剥離した後の粘着シートを再利用することもできる。
【0061】
したがって、本発明の粘着シートは、各種被着体の一時的な保持に好ましく用いられる。具体的には、本発明の粘着シートの、感湿粘着力可変性粘着剤組成物からなる粘着剤層(1)に、被着体を貼付し、被着体の加工等の処理を行った後、被着体が保持された粘着シートを高湿環境下または水中に投入し、被着体を粘着剤層から剥離する。
【0062】
被着体は、半導体ウエハであってもよく、また一時的に固定されて、加工等が施される限り特に限定はなく、ガラスやセラミック、金属、木材等であってもよい。被着体に施される処理は、研削、研磨、エッチングなどの加工処理であってもよく、運搬、保管、表面保護等であってもよい。被着体の剥離は、被着体が保持された粘着シートを、たとえば、60℃、90%RH環境下に2時間程度放置して粘着力を低下させればよい。高湿環境は、60℃、90%RH環境に限られるものではなく、標準環境よりも温度が低くなく、相対湿度が高い環境、すなわち23℃以上で50%RHを超えていればよい。温度が高く、相対湿度が高いほど粘着剤層が吸湿し、粘着力が低下する速度が上がるため、いずれも高いほうが好ましいが、温度については40℃以上が好ましく、50℃以上であることがより好ましい。相対湿度については、60%RH以上であることが好ましく、80%RH以上であることがより好ましい。高湿環境下に投入する時間は、粘着剤組成物のポリアルキレングリコールエーテルジグリシジル(メタ)アクリレートの含有量やその他の成分の組成、粘着シートの構成等により粘着力が低下する速度が異なるため、それに合わせて設定すればよいが、通常30分以上、好ましくは60分以上、より好ましくは90分以上投入することが好ましい。
【0063】
また、被着体が保持された粘着シートを水中に投入して粘着力を低下させてもよい。ここで水中に投入とは、本発明の効果が損なわれない範囲で水に他の成分を加えた混合物中に投入することも含む。
【0064】
このような本発明の粘着シートは、各種被着体の一時的な保持に好ましく用いられるが、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面研削時に半導体ウエハを一時的に固定するために特に好ましく用いられる。
【0065】
本発明の粘着シートを半導体ウエハの裏面研削時に用いる場合は、まず、常法により表面に回路パターンが形成された半導体ウエハを用意する。次いで、この回路面に、上記粘着シートの粘着剤層(1)を貼付し、ウエハ回路面の保護およびウエハの固定を行う。なお、粘着シートは、上述したように片面に粘着剤層が積層されたシートであっても、両面に粘着剤層が積層されたシートであってもよい。両面に粘着剤層が積層されたシートの場合には、ウエハに貼着する面と反対側の粘着剤層をガラス等の透明硬質板に貼着しておくことが好ましい。このように、粘着シートをウエハに貼着した後、常法により、ウエハ裏面の機械研削など所定の工程が行われる。所定の研削工程終了後、半導体ウエハが保持された粘着シートを、たとえば、60℃、90%RH環境下に2時間程度放置して粘着力を低下して、粘着シートを剥離する。本発明の粘着剤組成物は、常態に戻すことで粘着力が可逆的に回復するという特異な性質を有する。通常の使用方法では剥離時のシートの変形や粘着面同士の接着により再使用が難しい場合が多いが、両面に粘着剤層が積層されたシートが硬質板に貼着された場合にはこのような問題はない。したがって、高湿環境化に投入して被着体を剥離した後に、シートの貼られた硬質板を標準的な環境下で保管することで粘着力を回復させることができる。このため、粘着シートの取替えの必要がない。
【0066】
さらに、本発明を別の観点から記述すれば、粘着剤にポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを粘着性ポリマー100質量部に対して0.01〜15質量部配合することにより、当該粘着剤に感湿粘着力可変性を付与することを特徴とする。また、別の観点からは、本発明によれば、粘着剤に配合され、粘着剤に感湿粘着力可変性を付与するために用いられる、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートからなる、感湿粘着力可変性付与剤が提供される。
【実施例】
【0067】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。また、以下における配合量は、特に断らない限り固形分基準である。また、粘着力は以下のように測定した。
【0068】
(粘着力測定)
被着体として、シリコンウエハ(鏡面)(直径6インチ、厚さ600μm)を準備した。
【0069】
実施例および比較例で作成した粘着シートを、23℃、50%RH環境下で幅25mm、長さ250mmに裁断し、粘着力測定用の粘着シート片を得た。
【0070】
上記粘着シート片上を、2kgゴムローラーを一往復させて、シリコンウエハの鏡面に貼付した。23℃、50%RH環境下で30分経過後、万能型引張試験機(オリエンテック社製、商品名:テンシロンUTM−4−100)を用いて剥離角度180°、剥離速度300mm/minでJIS Z0237:2009に準じて180°剥離力を測定した。得られた測定値を粘着力Aとした。同様に、粘着シートをシリコンウエハ鏡面に貼付後、40℃、50%RHの環境、60℃、50%RHの環境、および60℃、90%RH環境下にそれぞれ2時間放置して、所定時間放置後、23℃、50%RH環境下で30分間放冷して、直ちに粘着力を測定した。60℃、90%RH環境下に2時間放置したシート片の粘着力を粘着力Bとする。この際に、シリコンウエハ鏡面に残渣が生じたか否かを目視で次の基準で判定した。
A:シリコンウエハ鏡面に曇りが生じなかった。
B:シリコンウエハ鏡面に残渣に起因した曇りを生じた。
【0071】
また、粘着シート片を上記と同様にシリコンウエハに貼付し、23℃、50%RH環境下で30分経過後、基材側より紫外線照射(リンテック社製、商品名:RAD−2000m/12、照度220mW/cm2、光量190mJ/cm2)を行った。次いで、上記と同様の方法により剥離力を測定し、得られた測定値を紫外線照射後の粘着力Cとした。
【0072】
(粘着力の回復力)
粘着シート片をシリコンウエハの鏡面に貼付し、60℃、90%RHの環境に12時間保管した後、さらに23℃50%RH環境下に12時間保管し、粘着力測定を行った。これを回復後粘着力とする。また同様に粘着シート片をシリコンウエハの鏡面に貼付し、23℃50%RH環境下に24時間保管した後、粘着力測定を行った。これを定温保管粘着力とする。
【0073】
(実施例1)
粘着剤の主剤として、アクリル酸エステル共重合体(アクリル酸n−ブチル91質量部およびアクリル酸9質量部から得られる共重合体、重量平均分子量:70万、溶剤:トルエン、固形分濃度33.6質量%)100質量部、架橋剤としてイソシアナート系架橋剤(東洋インキ製造社製、商品名「オリバインBHS8515」、固形分濃度37.5質量%)2質量部、および下記式(A)で表されるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート(n=13、新中村化学工業社製、商品名、NK オリゴ EA−5824)0.1質量部を配合(固形質量比)して粘着剤組成物を調製した。乾燥厚みが10μmとなるようにこの粘着剤組成物を剥離フィルムに塗布し乾燥して積層フィルムを得た。基材フィルムとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー50T60)上に、上記積層フィルムを粘着剤層を介して積層して、粘着シートを作製した。
【化3】

【0074】
得られた粘着シートを用いて、上記のように粘着力およびその回復力を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0075】
(実施例2)
実施例1において、NKオリゴEA−5284(新中村化学社製)の配合量を0.5質量部とした以外は実施例1と同様に、粘着剤組成物、粘着シートを調製した。結果を表1〜3に示す。
【0076】
(実施例3)
実施例1において、NKオリゴEA−5284(新中村化学社製)の配合量を1質量部とした以外は実施例1と同様に、粘着剤組成物、粘着シートを調製した。結果を表1〜3に示す。
【0077】
(実施例4)
実施例1において、NKオリゴEA−5284(新中村化学社製)の配合量を10質量部とした以外は実施例1と同様に、粘着剤組成物、粘着シートを調製した。結果を表1〜3に示す。
【0078】
(実施例5)
実施例3において、粘着剤の主剤であるアクリル酸エステル共重合体を(アクリル酸n−ブチル/アクリル酸=80/20(質量比)、重量平均分子量70万、溶剤トルエン、固形分濃度33.6質量%)に変更し、イソシアナート系架橋剤(東洋インキ製造社製、商品名「オリバインBHS8515」、固形分濃度37.5質量%)配合量を1質量部にした以外は実施例3と同様に、粘着剤組成物、粘着シートを調製した。結果を表1〜3に示す。
【0079】
(実施例6)
実施例3において、NKオリゴEA−5284(新中村化学社製)に代えて、式(A)におけるn=9であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルメタアクリレート(商品名:デナコールアクリレートDM−832(ナガセケムテックス)を用いた以外は実施例3と同様に、粘着剤組成物、粘着シートを調製した。結果を表1〜3に示す。
【0080】
(比較例1)
実施例1において、NKオリゴEA−5284(新中村化学社製)を配合しなかった以外は実施例1と同様に、粘着剤組成物、粘着シートを調製した。結果を表1〜3に示す。
【0081】
(比較例2)
実施例1において、NKオリゴEA−5284(新中村化学社製)の配合量を20質量部とした以外は実施例1と同様に、粘着剤組成物、粘着シートを調製した。結果を表1〜3に示す。
【0082】
(比較例3)
実施例1において、NKオリゴEA−5284(新中村化学社製)の配合量を30質量部とした以外は実施例1と同様に、粘着剤組成物、粘着シートを調製した。結果を表1〜3に示す。
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性ポリマー100質量部に対し、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを0.01〜15質量部含み、
23℃、50%RH環境下に30分放置した後の、シリコンウエハ鏡面に対する粘着力Aと、
60℃、90%RH環境下に2時間放置した後の、シリコンウエハ鏡面に対する粘着力Bとの比B/A×100(%)が3〜70%の範囲にある、感湿粘着力可変性粘着剤組成物。
【請求項2】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが下記式にて示される化合物である、請求項1に記載の感湿粘着力可変性粘着剤組成物。
【化1】

(式中、R1は(メタ)アクリロイル基であり、R2は炭素数1〜4のアルキレン基であり、nは1〜20の整数を示す。)
【請求項3】
紫外線照射前の、シリコンウエハ鏡面に対する前記粘着力Aと、
紫外線照射後(照度190mW/cm2、光量220mJ/cm2)の、シリコンウエハ鏡面に対する粘着力Cとの比C/A×100(%)が90〜110%の範囲にある請求項1または2に記載の感湿粘着力可変性粘着剤組成物。
【請求項4】
光重合開始剤を実質的に含有しない、請求項1〜3の何れかに記載の感湿粘着力可変性粘着剤組成物。
【請求項5】
基材および該基材の片面または両面に積層された粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層の少なくとも一層が、請求項1〜4の何れかに記載の感湿粘着力可変性粘着剤組成物からなる粘着シート。
【請求項6】
粘着剤層に、被着体を貼付した後、被着体および粘着シートを高湿環境下に投入し、または水中に投入し、被着体を粘着剤層から剥離することに用いる請求項5に記載の粘着シート。
【請求項7】
請求項5に記載の粘着シートの、感湿粘着力可変性粘着剤組成物からなる粘着剤層に、被着体を貼付し、被着体の加工、運搬、保管または保護を行った後、被着体および粘着シートを高湿環境下に投入し、または水中に投入し、被着体を粘着剤層から剥離する、被着体の一時的な保持方法。
【請求項8】
請求項5に記載の粘着シートの、感湿粘着力可変性粘着剤組成物からなる粘着剤層に、表面に回路が形成された半導体ウエハを貼付し、半導体ウエハの裏面を研削した後、粘着シートを高湿環境下に投入し、または水中に投入し、半導体ウエハを粘着剤層から剥離する、半導体ウエハの裏面研削方法。
【請求項9】
粘着剤にポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを粘着性ポリマー100質量部に対して0.01〜15質量部配合することを特徴とする粘着剤への感湿粘着力可変性の付与方法。
【請求項10】
ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートからなる、感湿粘着力可変性付与剤。

【公開番号】特開2013−104054(P2013−104054A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251061(P2011−251061)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】