説明

感覚器官及び有糸分裂後組織のための再生促進物質としての新規なアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミド

本発明の目的は、哺乳類の高度に専門化された器官、組織及び感覚上皮の内因性再生をその場で刺激する低分子量化合物を同定することである。本発明の目的は、下記式のアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミド、又はその医薬的に許容可能な塩、立体異性体、立体異性体混合物、互変異性体、もしくはプロドラッグ化合物、好ましくはプロドラッグエステルもしくはプロドラッグペプチドによって達成される:


式中、XはO又はSを表わし、
YはC又はNを表わし、その場合、二つの原子は互いに異ならなければならず、
R2は水素またはアシルを表わし、
R1及びR3は同一であっても異なってもよく、枝分かれした又は直鎖の、置換又は非置換のアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基、シクロアルキルアリール基、アリール基、及び任意選択的にヘテロ原子を含むアリールシクロアルキル基からなる群から選択される置換基を表わし、R1は好ましくは(1H−インドール−3−イル)エチルを表わし、R3は好ましくはシクロヘキシルを表わす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類における高度な専門器官、組織、及び感覚上皮の最終分化した細胞の内因性再生をその場で(インサイチュで)刺激する新規なアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドに関する。
【0002】
クレームされた低分子量化合物は、正常な有糸分裂後組織の細胞の脱分化、増殖、及び続く再分化のような対応する細胞生物学的変化を誘導することができる。
【0003】
特に、本発明は、コルチ器官における感覚有毛細胞のデノボ形成が内耳の支持細胞の細胞分離を誘導することによって得られることができ、かつ聴覚が有毛細胞損失後に回復されることができる化合物に関する。
【0004】
さらに、本発明は、本発明による化合物を製造するための方法、医薬調製物としてのその配合物、及び再生医療のための医薬を製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0005】
実質的に全ての職業的かつ社会的な面において、損われた聴覚、従って制限された伝達能力は、生活の質にかなり密接な関係を持つ。感覚疾患「難聴」は、伝達能力に依存する社会において最も緊急の健康の問題の一つである。
【0006】
平均して、難聴は、先進工業国の人口の約10%に影響を与えている。ドイツでは、難聴の人々は1600万人と見積られ、全人口のほとんど1/5を占めている(ifo−Institut,1986)。従って、難聴は、感覚器官の最も頻繁に起こる疾患であるだけでなく、一般的に最も頻繁に起こる慢性疾患の一つである。
【0007】
難聴の原因を見ると、ケースの約80%において罹患された人々は感音性難聴を患っている。これに対する最も多い理由の一つは、コルチ器官における感覚有毛細胞の損失であり、聴覚上皮が騒音への暴露、耳毒性薬剤の副作用、加齢に関連した変性、又は遺伝子的原因のために細胞死によって不可逆的に失われていることである(Nadol,1993)。
【0008】
これまで、補聴器の人工装具の提供だけがこの最も多い形態の聴覚の損失に対して与えられることができた。しかしながら、罹患した人々にとって、この人工装具の提供の結果は、音声認識の不足のために満足のいかないことが多い。従って、補聴器は、難聴の比較的少ない割合にしか実際には使用されていない。
【0009】
今日まで、感音性難聴の主な原因に対して治療的医療処置の選択肢が全くなかった。原因の処置は、コルチ器官の失われた感覚有毛細胞を置換又は再生することによってのみ可能であるだろう。
【0010】
ほとんどの哺乳類の器官及び組織では、損傷後の再生のための能力は限られているか、又は全く存在しない。例えば肝臓、骨、又は皮膚のような極めて少ない器官及び組織しか生物の全寿命にわたって新しい細胞を形成することによって自然再生する能力を持たない。多くの場合において、高度な専門器官及び組織(例えば心臓、脳、骨格筋、又は目及び内耳の感覚上皮)における対応する細胞は、細胞周期から不可逆的に去って最終分化した状態に留まる。結果として、これらの組織はまた、損傷事象が起こった場合にそれらの自然再生のための能力を失っている。従って、これは不可逆的な機能障害に導く。例えば、心臓の場合の心筋梗塞又は脳の場合の脳卒中は、罹患した組織領域の不可逆的な損傷を意味し、それは対応する機能の永続的な損失を伴なう。
【0011】
しかしながら、例えば両生類では、網膜及び四肢によって例示される、最終分化した組織及び器官があるが、それにもかかわらず、それらは生体内で自然再生することができる(Tsonis,2000;Tsonis,2002)。これらの例における中心的な細胞生物学的事象は細胞の脱分化であり、それは多機能性前駆細胞の生成を可能にし、それらから再生細胞が増殖及び再分化によって形成されることができる。
【0012】
従って、脱分化は、両生動物の最終分化した組織の再生に決定的役割を果たす。対照的に、他の脊椎動物は低い再生能力を持つ。
【0013】
約20年前まで、哺乳類及び鳥類の聴覚器官に対して、内耳中の感覚有毛細胞が胚発生の短い重大な段階でしか形成されることができないと思われていた(Ruben,1967)。この段階の後、感覚上皮は有糸分裂後のものであり、それゆえそれらの感覚細胞を再生することができないと考えられていた。しかしながら、驚くべきことに、音響外傷及び耳毒性損傷の後に、鳥類の蝸牛が感覚有毛細胞を自然再生できることが発見された(Cotanche 1987;Cruzら、1987)。
【0014】
破壊された感覚有毛細胞に直接隣接する支持細胞の細胞分裂は、鳥類の蝸牛における感覚有毛細胞に対する基本的な生物学的機構として記載され(Corwin及びCotanche,1988;Ryals及びRubel,1988)、そこでは新しく形成された感覚有毛細胞及び支持細胞に再分化できる未分化細胞の集団が形成されている。その結果は、鳥類の感覚上皮の実質的に完全な形態及び機能の回復である(Cotanche,1999;Smolders,1999)。
【0015】
これは根本的な細胞生物学的な差のために最初から明らかであったが、これまで他のモデルから哺乳類への知見の適用は可能でなかった。
【0016】
哺乳類における感覚有毛細胞の再生に関する対応する実験は、コルチ器官における支持細胞の自然な細胞分裂のための能力の示唆を全く与えないか又は極めて少ししか与えなかった(Roberson及びRubel,1994;Vagoら、1998;Daudetら、1998;Daudetら、2002;Yamasobaら、2003)。特に、成長因子の投与後であっても、コルチ器官における支持細胞の誘導可能な増殖の兆候は全くない(Staeckerら、1995;Daudetら、2002)。胎生期のマウスのコルチ器官の初期発生段階の培養での様々な実験は同様に、規定されたレーザ損傷後に個別の増殖事象のみを示した(Kelleyら、1995)。
【0017】
この細胞分裂の全体の不足は、正常な成体のコルチ器官における高度に専門化された支持細胞集団が最終分化した状態に到達しており、細胞周期に再び入ることができないことを示唆する。従って、内耳の場合には、単一の音響外傷であっても感覚有毛細胞の破壊を生じ、次いで不可避で不可逆的な聴覚の損失をもたらす。
【0018】
哺乳類の細胞であっても脱分化を誘導する能力を有する抽出物が再生中の両生類組織(例えば四肢)から得られることができることを最近見い出した(McGannら、2001)。この抽出物を使用して、適切な刺激により、最終分化した細胞の再生のための脱分化ベースのメカニズムが両生類から哺乳類へ移されることができる(Odelberg,2002)。しかしながら、述べられた再生抽出物は、「蛋白質カクテル」であり、それらの組成に関する詳細は知られていない。
【0019】
しかしながら、一方、規定された低分子量化合物を使用して哺乳類の筋細胞において対応する効果を達成することが可能であった(Chenら、2004)。さらに、スクリーニングによって、グリア細胞を含む様々な細胞タイプにおいて再生生物学関連効果を生み出す幾つかの低分子量化合物を同定することが可能であった(Xuら、2008;Schugarら、2008;Fengら、2009;Li及びDing,2009のレビュー)。これらの効果は、好適な低分子量化合物を使用して、さらなる細胞タイプにおいて脱分化ベースの再生を誘導することが可能であることを示唆する(Tsonis,2004;Kimら、2004;Odelberg,2002)。
【0020】
これまで、内耳に対する再生生物学的研究にこの概念を移すことはユニークなことであった。内耳における感覚有毛細胞の再生を実施することができる低分子量化合物は知られていないし、特許されてもいない。
【0021】
今までのところは、コルチ器官において感覚有毛細胞を再生するための現行の技術で追求される他の概念は、臨床用途に対する裏付けをほとんど示さない。
【0022】
細胞周期阻害剤p27Kip1を切ることによる支持細胞の細胞周期調節の変性において、生体内で細胞分裂を達成することが可能であった(WO99/42088)。しかしながら、感覚有毛細胞への分化は、これまで組織外の生体外条件下で観察されているだけであった(Whiteら、2006)。
【0023】
誘導された感覚有毛細胞損失を有する生体内モデルでは、感覚有毛細胞分化のために不可欠な転写因子Math1での支持細胞の遺伝子治療的に誘導された分化転換は、器官機能の部分的な機能回復であっても、支持細胞の感覚有毛細胞への変換に導く(Izumikawaら、2005;Kawamotoら、2003)。しかしながら、支持細胞の数の減少は、形質導入工程において微小機械的な複合体の通常の機能が支持細胞なしでは不可能であるため、コルチ器官に対する機能制限をもたらした。
【0024】
器官に存在する内因性前駆幹細胞の活性化又は内耳への異種幹細胞の外因性投与により、期待できる結果が得られた(Tateyaら、2003;Naitoら、2004;Martinez−Monederoら、2007a,b;Liら、2003)。しかしながら、内耳内への幹細胞の目標とされる又は機能的に関連する移植はこれまで実現されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従って、本発明の目的は、哺乳類の高度に専門化された器官、組織、及び感覚上皮における最終分化した細胞の内因性再生をその場で刺激する低分子量化合物を同定することである。特に、これらの化合物は、成体のコルチ器官における感覚有毛細胞のデノボ形成によって哺乳類の聴覚の回復を可能にすべきである。これらの化合物に基づいて、初めて、再生生物学的活性を有する医薬に基づく内耳の難聴の原因の治療を可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の目的は、請求項1に示されているように、再生促進特性を有する新規な低分子量のアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドを提供することによって達成される。これらの化合物の好ましい実施形態は、請求項2において述べられている。請求項3〜5は、医学治療における本発明による化合物の使用に関する。請求項6は、本発明による化合物の製造方法に関し、請求項7〜8は、本発明による化合物を含む医薬調製物、及びそれらの製造に関する。請求項10〜11は、本発明による化合物の使用、及び哺乳類における特定の疾患を治療するための医薬調製物に関し、請求項12〜13は、対応する治療手順を開示する。
【0027】
参照として、全ての請求項の用語は、これにより本明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明の本質的な特徴は、本発明による化合物が、哺乳類の最終分化された細胞、特に哺乳類の内耳の感覚有毛細胞の再生を実行することができる、構造的に規定された化学活性化合物を初めて提供するということにある。この理由のため、本発明は、正常な有糸分裂後の組織からの細胞の脱分化、増殖、及び生じる再生などの再生生物学的に関連するプロセスを刺激することができる、新規でこれまで知られていない低分子量化合物を同定することによって独自の特徴を持つ。
【0029】
本発明はさらに、コルチ器官における感覚有毛細胞の損傷及び損失後から人間及び動物における聴覚の完全な回復までの内耳の難聴の原因の治療のための本発明による化合物の再生促進特性の利用を含む。
【発明を実施するための形態】
【0030】
内耳における複雑な組織構造のため、再生医療の様々な方法のうちから、内因性再生のみがその場での再生として実行可能であるように思える。感覚有毛細胞のこの再生の誘導の前提条件は、正常に高度に分化された有糸分裂後の聴覚上皮の好適な刺激である。標的細胞は支持細胞であり、それらは損傷された細胞に直接隣接し、それらは感覚有毛細胞の再構築のための潜在的な前駆体として作用してもよい。
【0031】
現在の技術水準に基づくと、細胞の脱分化の再生生物学的機構が特定の活性化合物によって開始されることができるということが想定されるが、内耳における再生のための対応する化合物を同定する試みはこれまでうまくいってない。
【0032】
内耳における再生生物学的に関連する効果を引き起こすための有機化合物の能力は標的構造依存性であり、正確に予測することが不可能である。
【0033】
潜在的に活性な構造の特徴に加えて、生物学的試験における成功の見込みのための決定的要因は、標的システムに潜在的に依存してかつ標的システムに対して活性な化合物を有する好適な足場の選択である。
【0034】
様々な化合物の種類から潜在的に再生を促進する特性を有する化合物の広範なスクリーニングによって、耳の支持細胞の脱分化及び続く増殖から感覚有毛細胞の再生までのような対応する細胞生物学的変化を生体外及び生体内で誘導することができる低分子量化合物を同定することが驚くべきことに可能であった。主要構造最適化を使用して、哺乳類において優れた再生促進活性を有するこれらの化合物の構造的類似体を開発することが可能であった。
【0035】
従って、本発明は、式(1)及び式(2)のアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミド、及び高度に専門化された器官及び組織、好ましくは脳、心臓、骨格筋、特に好ましくは感覚上皮において最終分化した細胞の内因性インサイチュ再生を刺激するための活性化合物としてのそれらの使用に関する。

式中、XはO又はSを表わし、
YはC又はNを表わし、その場合、二つの原子は互いに異ならなければならず、
R2は水素またはアシルを表わし、
R1及びR3は同一であっても異なってもよく、枝分かれした又は直鎖の、置換又は非置換のアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基、シクロアルキルアリール基、アリール基、及び任意選択的にヘテロ原子を含むアリールシクロアルキル基からなる群から選択される置換基を表わし、R1は好ましくは(1H−インドール−3−イル)エチルを表わし、R3は好ましくはシクロヘキシルを表わす。
【0036】
好ましい実施形態は、下記式(3)〜(8)に対応する本発明によるアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドに関する。

【0037】
これらの規定は、医薬的に許容可能な塩(好ましくは、非毒性で生理学的に許容される塩)、立体異性体、立体異性体混合物、全ての互変異性体、プロドラッグ化合物、好ましくはプロドラッグエステル又はプロドラッグペプチド、及び式(1)〜(8)の本発明による化合物の混合物を含む。
【0038】
既に分化されている細胞を脱分化するための本発明による低分子量アミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドの潜在的能力は、耳成長潜在能力を有するマウスの内耳から単離した幹細胞を使用する細胞培養試験において証明され、細胞培養において元の感覚上皮と相対的に同様の上皮島に分化された。コントロールと比較して、Sox2発現細胞、即ちコルチ器官の個体発生時に発現されかつ細胞脱分化の指標として受け入れられている幹細胞マーカの割合は、本発明による化合物の投与によって2倍以上になることができる。細胞増殖の指標として、7.4%までのBrdU(ブロモデオキシウリジン)陽性細胞の割合で、本発明による化合物の活性は、BrdUが含まれていない分化及びDMSOコントロールのそれとは有意に異なる。
【0039】
従って、生体外モデルにおける分化耳細胞の脱分化の刺激及び続く増殖の意味において本発明による化合物の驚くべき生物学的活性を証明することが可能であった。
【0040】
脱分化した上皮の幹細胞マーカの免疫細胞化学的分析は、本発明による化合物が核内への蓄積後に、まず再プログラミングの意味において分化細胞の脱分化を誘導し、次いでそれらの増殖を促進するという仮定を確認した。
【0041】
細胞培養モデルでは、本発明による化合物の投与量/活性分析によって、増殖に対して有効な活性のための濃度範囲は、細胞培養培地中の物質の0.1μM〜100μM、好ましくは1μM〜3μMの範囲であるように規定された。
【0042】
細胞培養試験における効果に匹敵しうる効果がまた、マウスの生来の器官の生体外器官培養において、即ちコルチ器官の複雑な細胞構造において達成された。アミノグリコシド抗生物質ネオマイシンによる感覚有毛細胞の耳毒性損傷後、本発明による化合物の投与は、外有毛細胞の領域における側方に配向されたダイテルス細胞(外支持細胞)及び外境界細胞、内有毛細胞の領域における内支持細胞及び内境界細胞、及び内感覚有毛細胞の再生のための潜在的な前駆細胞であると考えられる他の支持細胞のようなコルチ器官における様々な支持細胞のその場での増殖をもたらした。詳細には、個々の標識化された核が、二つの核が存在する完全な細胞分裂を含む有糸分裂の様々な段階において存在することを証明することが可能であった。
【0043】
成体のモルモットの生体内モデルでは、免疫組織化学的な知見はさらに、好ましくは音響外傷によって損傷されたコルチ器官の領域において、支持細胞の細胞分裂に基づく感覚有毛細胞の本発明による化合物によって誘導される再生を示した。本発明の化合物の投与のない対応するコントロール動物およびコントロール器官では、自然に再生される有毛細胞は全く見い出せなかった。
【0044】
今日まで実施された生体外及び生体内試験では、本発明による化合物の毒性の影響又は不適合性は関連濃度範囲で観察されていない。
【0045】
本発明はさらに、本発明によるアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドの調製を提供し、それは、本発明によれば、高度に専門化された器官及び組織、好ましくは脳、心臓、骨格筋、特に好ましくは感覚上皮において最終分化した細胞の内因性インサイチュ再生を刺激するための活性化合物として使用されることができる。
【0046】
本発明による化合物の合成は、多数の工程で実施される。詳細な合成手順は、実施例Aで見い出されることができる。本発明による化合物を調製するための出発材料は知られており、専門商社から得られることができるか又は既知の手順によって調製されることができる。
【0047】
一つの可能な経路は、アミノ酸アミドで出発する固相での本発明による化合物の合成である。この目的のために、側鎖が置換基R1を表わすアミノ酸が活性炭素エステル基を有するポリマー支持体上に固定化され、その酸基が次いでアミド化される。アミノ酸アミドからオキサゾールへの環化又はアミノ酸チオアミドからチアゾールへの環化はブロモピルビン酸及びN,N−ジメチルアニリンを使用して実施される。もしブロモピルビン酸エステルが使用されるなら、形成されたエステル基は後で加水分解されなければならない。チアゾールの合成のためには、アミノ酸アミドは、Lawesson試薬を使用して対応するチオアミドへの環化の前に変換される。得られたアミノ酸オキサゾール/チアゾールカルボン酸は、次いで置換基R3を表わすアミンと反応される。最後に、アミノ酸オキサゾール/チアゾールカルボン酸アミドは合成樹脂から酸で開裂された後、クロマトグラフィー精製される。
【0048】
さらなる調製変形例では、本発明による化合物の合成は溶液中で実施される。合成は、側鎖R1を有するBoc保護アミノ酸で出発する保護基化学を使用して行なわれる。原則として、合成の工程は固相のために記載されたものに対応する。合成の終わりには、Boc保護基は酸で除去された後、クロマトグラフィー精製される。
【0049】
両調製法は、ラセミ化合物又は鏡像異性的に純粋な化合物の両方の合成を可能にする。化合物は、遊離形態で、又は塩として(塩形成基が存在する場合)のいずれかで得られる。本発明による化合物の好ましい塩は医薬的に許容される塩である。かかる塩の例は、無機又は有機酸の塩、無機又は有機塩基の塩、及び塩基性又は酸性のアミノ酸の塩である。
【0050】
本発明による化合物はまた、プロドラッグ化合物として、好ましくはプロドラッグエステル又はプロドラッグペプチドなどとして変性されることができる。ある場合には、例えばビオチン又はマレイミドプロピオン酸のような細胞透過促進分子を好適なスペーサ分子を介して第一級アミノ基に結合することによって、又は置換基R2に対応してこのアミノ基のアシル化によって、本発明による化合物のバイオアビリティ及び有効性を改良することが可能である。
【0051】
本発明はさらに、損傷した有糸分裂後組織と関連した哺乳類における疾患を治療するため、特にコルチ器官の感覚有毛細胞の損傷及び損失によって起こされる哺乳類における内耳の難聴を治療するための医薬調製物を調製するために本発明によるアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドの使用を与える。本発明による少なくとも一種の活性化合物を単独で又は組み合わせて含むこれらの調製物は、さらなる医薬的に好適な補助剤及び添加剤、例えば担体物質、保存剤、安定剤、乳化剤、洗浄剤、溶剤、可溶化剤、浸透圧を調整するための塩、及び緩衝塩を任意選択的に含む。さらに、それらは、さらなる治療的に関連する活性化合物、アジュバント、及び再生促進物質、例えば成長因子又は抗炎症薬を含んでもよい。
【0052】
医薬的に好適な材料は、薬学及び食品技術の分野及び関連分野に使用するために好適であると知られている化合物、特に関連薬局方収載のもの(それらの特性は生理学的投与からそれらを除外しない)である。
【0053】
本発明による化合物によって生じる効果はまた、それらの配合に依存する。適切な医薬調製物は、哺乳類の蝸牛内への医薬調製物の直接投与を可能にすべきである。式(1)又は(2)の少なくとも一種の活性化合物を含む本発明による医薬調製物の好適な投与形態は、例えば溶液、懸濁液、スプレー、ゲル、ヒドロゲル、ローション、乳剤、ペースト、軟膏、又はクリームであることができる。
【0054】
本発明による医薬調製物は、関連薬局方収載の当業者に公知の方法によって、例えば混合、造粒又は積層によって慣例的な方法で調製される。本発明による医薬調製物はさらに殺菌されてもよい。
【0055】
本発明はまた、人間及び動物において損傷した有糸分裂後の組織と関連した疾患を治療するため、好ましくは内耳における感覚有毛細胞の損失又は損傷後の聴覚の回復のための再生促進活性化合物として本発明によるアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドの使用に関する。この目的のために、かかる治療を必要とする人又は動物は、本発明による式(1)又は(2)の少なくとも一種の化合物を含む本発明による再生促進調製物の治療有効量を投与される。ここで、本発明による活性化合物又は医薬調製物は、直接的又は間接的に(全身的に)、好ましくは損傷した組織構造に又はその上に直接局所的に付与される。内耳の上又は内耳の中への投与は、例えば鼓室を経由して中耳内への注射によって、内耳の丸窓又は卵円窓上への付与によって又は内耳内への注射によって行なわれる。活性化合物の投与のための様々なシステム(ゲル処方、ポンプ)を使用してもよい。
【0056】
本発明による化合物及び医薬調製物は、それら自身で、本発明による他の化合物と組み合わせて、又は本発明による化合物の記載された各治療指標に対して関連する一つ以上の活性化合物と組み合わせて使用されてもよい。投与の順序に関して制限はない。本発明による化合物は、別個の医薬として又は組み合わせ医薬として及び同じ又は異なる投与経路によって、他の活性化合物と同時に、それより前に又はそれより後に投与されてもよい。
【0057】
対象の内耳難聴の治療のための正確な治療有効量は様々な要因に依存し、特に組織損傷の程度に、患者の身長、成長度、年齢、及び健康状態に、投与経路及び投与形態、実際に使用される化合物、及びもし当てはまるなら使用される他の医薬に依存する。従って、現時点で正確な量を特定することは好ましくない。しかしながら、原則として、活性化合物の計量された持続放出のための機構を与えられた「徐放」システムを使用して1〜7日から連続投与までの間隔で8週間までの期間にわたって本発明による医薬調製物の繰り返し投与が想定されうる。使用される活性化合物の量は1つの内耳に対して1回投与あたり0.5μg〜1.0mgの範囲であるべきである。
【0058】
商業的有用性
脱分化、増殖、又は最終再分化のような対応する細胞生物学的変化を誘導することができる再生生物学的に関連する化合物及びそれらの配合は、治療概念が完全に新しいので新規な形態の活性化合物を表わす。
【0059】
本発明によるアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドを使用して、初めて、低分子量化合物によって誘導される耳支持細胞の細胞分裂、及び哺乳類におけるコルチ器官の高度に分化した有糸分裂後組織における感覚有毛細胞の再生を証明することが可能であった。医薬的に活性な化合物に基づく感覚有毛細胞の生体内再生のための比肩しうる方法はこれまで記載されていない。
【0060】
本発明による化合物の観察された活性プロフィールによって、これらの化合物は、再生生物学に基づいて感覚神経的な聴覚の損失の原因の治療処置のための医薬的に活性な化合物として使用するために好適である。原理的には、この治療アプローチは、遺伝子治療又は幹細胞移植のような今日まで議論された全ての他の方法より優れている。今日まで調査された生体外及び生体内モデルにおいて、否定的効果は全く観察されていない。
【0061】
本発明の特に好ましい実施形態及びさらなる特徴及び利点について詳細は、従属請求項と関連した実施例の以下の記載から明らかであり、従属請求項では上で述べられかつ以下に示された個々の特徴は、各場合においてそれ自体で、互いに組み合わされてクレームされる。
【0062】
実施例は純粋に説明のためのものであり、本発明の範囲を制限しない。
【実施例】
【0063】
(実施例A)2−[1−アミノアルキル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド及び対応する2−[1−アミノアルキル]チアゾール−4−カルボン酸アミドの合成
【0064】
本発明による化合物の合成は、同様の化合物を調製するための関連出版物(Videnovら、1996;Stanchevら、1999;Stankovaら、1999;Kaiserら;2000)を使用することによってアミノ酸アミドで出発して実施された。
【0065】
中間体及び最終生成物の両方は、HPLC及び質量分析法によって精製及び同定のために調査された。さらに、最終生成物はNMR分光法によって特性決定された。全ての出発材料及び試薬は商業的に入手可能である。
【0066】
以下に記載されるものは、アミノ酸アミドで出発する固体ポリマー相についての合成経路である。合成手順の大部分は同一であるので、オキサゾール及びチアゾールのために別個の合成法は使用しなかった。最初に、特に好ましい化合物(3)及び(4)のための出発材料としてトリプトファンアミド(11)の合成を例示的な方法で示す。
【0067】
溶液における代替合成経路が次いでチアゾールのみに対して記載された。しかしながら、熟練した当業者にとって、合成条件をオキサゾールに適応することは難しくない。
【0068】
実験の記載では、特許請求の範囲において同じ意味を有する略語X,R1及びR3は変化しうる置換基のために使用された。
【0069】
記載された合成は、立体化学的に純粋な形態の化合物の調製を可能にする。それらは遊離形態で又は塩として(塩形成基が存在する場合)のいずれかで得られる。
【0070】
D−トリプトファンアミド(11)の調製

N−Boc−D−トリプトファン(9)(1等量;2.75mmol;1.00g)、ヒドロキシベンゾトリアゾールアンモニウム塩(2等量;5.50mmol;924mg)、及びジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(1.1等量;3.03mmol;382mg;454μl)を、分子篩上で乾燥したジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、溶液を室温で18時間攪拌した。次いで溶媒を減圧下でロータリーエバポレータ上で除去し、残留物を酢酸エチルに吸収させた。不溶残留物は濾別され、有機相は次いで洗浄され(1×1M KHSO溶液、2×飽和炭酸ナトリウム水溶液、1×飽和塩化ナトリウム水溶液)、硫酸ナトリウム上で乾燥され、蒸発された。
【0071】
Boc保護基を除去するために、粗生成物(10)を、ジクロロメタン(DCM)における50%トリフルオロ酢酸(TFA)の溶液に吸収させ、室温で3時間攪拌した。溶媒の蒸発後、生成物(11)を再結晶化した。
【0072】
アミノ酸アミド(13)によるクロロ−(2′−クロロ)トリチルポリスチレン樹脂(12)の充填

【0073】
クロロ−(2′−クロロ)トリチルポリスチレン樹脂(12)(Rapp Polymere H10033;充填1.31mmol/g)(1等量;655μmol;500mg)を、(分子篩上で)DMFで二回洗浄し、DMFにおけるアミノ酸アミドヒドロクロライド(13)(2等量;1.31mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(5等量;3.28mmol;424mg)の溶液を加え、混合物を室温で18時間振とうした。樹脂にキャップを形成するため、メタノール(MeOH)を次いで懸濁液に添加し、混合物を室温でさらに15分間振とうした。反応溶液を吸引で濾別し、充填された樹脂(14)を洗浄し(5×DMF,3×それぞれMeOH、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル)、オイルポンプ減圧下で乾燥した。
【0074】
固定化されたアミノ酸アミド(14)のオキサゾール(15)への環化

【0075】
エチルブロモピルベート(5等量;3.28mmol;640mg;412μl)及びN,N−ジメチルアニリン(10等量;6.55mmol;794mg;832μl)をジオキサン(5ml)に溶解し、アミノ酸アミド樹脂(14)(1等量;655μmol;500mg)に添加した。懸濁物を室温で16時間振とうし、次いで60℃で2時間温ためた。反応溶液を吸引で濾別し、樹脂を乾燥溶媒で洗浄した(5×DMF,5×DCM)。
【0076】
乾燥DCM(5ml)におけるピリジン(10等量;6.55mmol;520mg;530μl)の−20℃に冷却された溶液をトリフルオロ酢酸無水物(5等量;3.28mmol;688mg;456μl)と混合し、洗浄された樹脂に添加した。−20℃で30分後、懸濁液を室温に温ため、室温でさらに2時間振とうした。反応溶液を吸引で濾別し、樹脂(15)を洗浄し(3×それぞれDMF,MeOH,THF,DCM、ジエチルエーテル)、デシケータ中で減圧下で乾燥した。
【0077】
Lawessonの試薬での固定化チオアミド(16)の調製

【0078】
ジメトキシエタン(DME)(10ml)におけるLawessonの試薬(3等量;1.97mmol;797mg)の溶液をアミノ酸アミド樹脂(14)(1等量;655μmol;500mg)に添加し、混合物を室温で18時間振とうした。反応溶液を吸引で濾別し、樹脂(16)を洗浄し(6×DMF,3×それぞれMeOH,THF,DCM、ジエチルエーテル)、デシケータ中で減圧下で乾燥した。
【0079】
固定化チオアミド(16)のチアゾール(17)への環化

【0080】
エチルブロモピルベート(5等量;3.28mmol;640mg;412μl)及びN,N−ジメチルアニリン(5等量;3.28mmol;397mg;416μl)をDMF(4ml)に溶解し、アミノ酸チオアミド樹脂(16)(1等量;655μmol;500mg)に添加した。懸濁液を室温で16時間振とうした。反応溶液を吸引で濾別し、樹脂(17)を洗浄し(3×それぞれDMF,MeOH,THF,DCM、ジエチルエーテル)、デシケータ中で減圧下で乾燥した。
【0081】
室温で一時間、DCM中の5%TFAを使用する試験開裂の後、反応生成物(17)の正体と純度をクロマトグラフィー及び質量分析法によって調査した。
【0082】
固定化エチルエステル(15)及び(17)の加水分解

【0083】
アミノ酸オキサゾールカルボン酸エチルエステル樹脂(15)又はアミノ酸チアゾールカルボン酸エチルエステル樹脂(17)(1等量;655μmol;500mg)をTHF(2.5ml)中で予備膨潤し、水(1.25ml)及びMeOH(1.25ml)における水酸化リチウム一無水物(5等量;3.28mmol;137mg)の溶液を添加した。室温で3時間後、反応溶液を吸引で濾別し、樹脂(18)又は(19)を洗浄し(3×それぞれ水、水/DMF1:1,DMF、ジオキサン、THF,DCM、ジエチルエーテル)、デシケータにおいて減圧下で乾燥した。
【0084】
カルボン酸(18)及び(19)のアミド化及び樹脂からの開裂

【0085】
乾燥DMF(5ml)における1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(5等量;3.28mmol;443mg)及びDIC(5等量;3.28mmol;413mg)の溶液をアミノ酸オキサゾールカルボン酸樹脂(18)又はアミノ酸チアゾールカルボン酸樹脂(19)(1等量;655μmol;500mg)に添加した。室温で30分の振とう後、R3−アミン(10等量;655mmol)を添加し、懸濁液を室温でさらに16時間振とうした。反応溶液を吸引で濾別し、次いで樹脂を洗浄し(3×それぞれDMF,MeOH,THF,DCM、ジエチルエーテル)、空気の蒸気で乾燥吸引した。
【0086】
次いで生成物(20)または(21)を、DCMにおける5%TFAの溶液を使用して室温で1時間、樹脂から開裂した。
【0087】
開裂溶液の蒸発後、粗生成物をtBuOH/水4:1から凍結乾燥し、DCM/MeOH勾配を使用してシリカゲル上でクロマトグラフした。
【0088】
溶液におけるLawessonの試薬でのチオアミド(23)の調製

【0089】
攪拌しながら、Lawessonの試薬(0.75等量;750μmol;305mg)を乾燥DME(7.5ml)におけるBocアミノ酸アミド(22)(1等量;1.00mmol)の溶液に添加した。反応溶液を室温で16時間攪拌し、溶媒を減圧下でロータリエバポレータ上の蒸留によって除去した。残留物を酢酸エチル(30ml)中に吸収し、10%濃度の重炭酸ナトリウム溶液(15ml)で30分間強く攪拌した。相の分離後、水相を酢酸エチルで2回抽出した。組み合わされた有機相を10%濃度の重炭酸ナトリウム溶液で3回洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で乾燥した。濾過後、溶媒を蒸留し、生成物(23)をオイルポンプ減圧下で乾燥した。
【0090】
粗生成物は、酢酸エチル又は酢酸エチル/石油エーテルから再結晶化されることができ、又はシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製されることができる。
【0091】
溶液におけるチオアミド(23)からチアゾール(24)への環化

【0092】
炭酸カルシウム(2等量;1.60mmol;161mg)を、無水エタノール(6ml)におけるBoc−アミノ酸チオアミド(23)(1等量;0.80mmol)の溶液に添加し、懸濁液を室温で10分間攪拌した。次いでブロモピルビン酸(1.5等量;1.20mmol;201mg)を添加した。室温で4時間の攪拌後、反応混合物を濾過し、残留物をエタノールで洗浄した。組み合わされた濾液を減圧下でロータリエバポレータで濃縮し、残留物を酢酸エチル(10ml)に吸収し、10mlの5%濃度の重炭酸カリウム溶液で3回抽出し、飽和塩化ナトリウム溶液で1回抽出した。次いで有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥した。濾過後、溶媒を蒸留し、生成物(24)をオイルポンプ減圧下で乾燥した。
【0093】
粗生成物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0094】
溶液におけるチアゾール(24)のアミド化及びBoc保護基の除去

【0095】
(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピローリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(1.05等量;0.84mmol;437mg)及びトリエチルアミン(TEA)(3等量;2.40mmol;242mg;330μl)をTHFにおけるBoc−アミノ酸チアゾールカルボン酸(24)(1等量;0.80mmol)に添加し、混合物を室温で30分間攪拌した。次いでR3−アミン(1.3等量;1.04mmol)を添加し、混合物を室温で18時間攪拌した。
【0096】
反応溶液を蒸発し、粗生成物を、DCM/MeOH勾配を使用してシリカゲル上でクロマトグラフした。
【0097】
Boc保護基を除去するために、アミドを室温で1時間DCM中の25%TFAにおいて攪拌し、次いで蒸発した。繰り返して、ヘプタンを粗生成物に添加し、再び減圧下でロータリエバポレータ上で蒸留によって除去した。次いで生成物(25)をtBuOH/水4:1から凍結乾燥した。
【0098】
N−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)のN−アセチル化

【0099】
酢酸無水物(5等量;140μmol;14mg;13μl)及びTEA(2等量;56μmol;6mg;8μl)をDCM(0.5ml)中のアミノアルキルオキサゾールカルボン酸アミド(3)(1等量;28μmol;10mg)に添加し、混合物を室温で18時間攪拌した。次いで反応溶液を蒸発し、粗生成物(4)をtBuOH/水4:1から凍結乾燥した。
【0100】
(実施例B)生体外細胞培養試験における再生特性の証明
まず、マウスの出生後のコルチ器官から分離した耳の発達可能性を有する幹細胞で出発して、一般的な細胞群「球体」を懸濁培養物で増殖した。B27及びN2を補足したDMEM/F12培地(Dulbeccoの改変Eagle培地)において既知の方法と比較して最適化された培養条件(Oshimaら、2007;Sennら、2007)下で、コルチ器官あたり約1600個の固形球体を、FGF(繊維芽細胞増殖因子)及びIGF(インシュリン様成長因子)を添加した幹細胞培養物から発生されることができた(図1C)。
【0101】
タンパク質レベルで標識化し(図1A)、mRNAレベルで複数の幹細胞マーカを明示する(図1B)ことによって、これらの培養条件下で形成された耳球体(otospheres)が、コルチ器官における個体発生時の初期状態に相当する脱分化状態にあることが示された。加えて、耳球体における細胞分裂を明示することができた。
【0102】
その場で、支持細胞は感覚有毛細胞の再生のための潜在的な前駆体であり、それゆえ感覚有毛細胞再生の誘導のための実際の標的細胞である。この目的のため、コルチ器官の細胞構成の相対的に良好な表現を構成する有毛及び支持細胞様細胞の結合培養を生体外で確立することが必要であった。
【0103】
この目的のために、培養された耳球体は、元の感覚上皮と比較的同様の単層上皮島を与えるためにオルニチン/フィブロネクチン表面上の付着培養条件下の第二工程で分化された。
【0104】
免疫細胞化学的な検出によって、タンパク質レベルで、各場合において支持細胞及び感覚有毛細胞のための三つの好適なマーカを同定することができた。図2は、これらのマーカを使用した自然器官(生体内)及び細胞培養物の分化された上皮島(生体外)の状況の比較を示す。
【0105】
本発明による化合物の添加がない従来技術の方法によって実施されたこれらの予備的研究は、培養された耳上皮島が内耳の支持細胞様細胞のための本発明による化合物の再生能力を示すための細胞ベースとして好適であることを示した。支持細胞、有毛細胞、及び幹細胞のためのマーカのタンパク質発現の変化は、投与される物質によって媒介される影響を示すために使用されることができる。
【0106】
スクリーニングのため、まず生体外培養物におけるSox2−陽性細胞の割合が測定された。Sox2は幹細胞マーカであり、それはまた、コルチ器官の個体発生時に発現される。それは胎生期幹細胞の多能性において及び分化された細胞からの多能性幹細胞の誘導時に重要な役割を持つと考えられる(Takahashi及びYamanaka,2006)。従って、Sox2は、特に細胞の誘導された脱分化/再プログラミングにおいて重要なマーカである。
【0107】
本発明による化合物N−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)を細胞培養物に添加することによって、Sox2発現細胞の割合が分化コントロールと比較して二倍より多くなることができる(図3)。
【0108】
化合物によって誘導された幹細胞マーカの発現が培養物における細胞の増殖の増加と最終的に関連されるかどうかが、BrdU−陽性細胞の定量化によって調査された。
【0109】
ここで、物質投与時に培養物はチミジンアナログBrdUで5時間インキュベートされた。細胞周期のS期中、細胞分裂はBrdUの取り込みをもたらす。もし物質の一つが細胞分裂を刺激するなら、これは検出され、BrdUに対して向けられた抗体で視覚化されることができる。
【0110】
本発明による化合物N−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)を細胞培養物に添加することによって、前もって分化された細胞の4.8%に増殖を誘導することができた(図4)。
【0111】
Sox2発現及びBrdU取り込みの両方に対して、本発明による化合物2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸N−シクロヘキシルアミド(3)は有意なプラスの結果を達成した。このように、本発明による化合物は耳支持細胞の脱分化及び続く増殖を誘導することができることが示された。
【0112】
投与量/活性分析では、この化合物が細胞培養物においてその最大の再生生物学的効果を表わす最適濃度範囲が決定された。
【0113】
この目的のために、幹細胞ベースの生体外細胞培養試験におけるBrdUの取り込みが培養培地において0.3μM〜10μMの4つの濃度で決定された。0.3μMの濃度では、有意な効果は達成されなかったことが見い出された。しかしながら、1μMの濃度では、平均が既に向上した。3μMの濃度から、約9%BrdU陽性細胞の飽和レベルが既に達成される(図5)。
【0114】
(実施例C)生体外器官培養モデルにおける再生特性の証明
生来の器官の細胞培養試験において(即ちコルチ器官の複雑な細胞構造においてその場で)観察される効果を確認するために、培養される組織(本ケースではマウスの内耳全体)が培養培地で充たされた回転シリンダーに位置された器官培養物の形が使用された(Hahnら、2008)。実験の開始前、蝸牛は鼓室階の領域において基底から頂端を切開された。この方法では、重力の影響を最小にし、同時にコルチ器官の組織と培養培地の間の最適なガス及び栄養交換を達成することが可能であった。これらの条件下では、外植片が静止培養物と比較すると、より長く培養物に維持されることができた。
【0115】
本発明による化合物の投与の結果として、感覚有毛細胞の損失後にコルチ器官に残る支持細胞が前駆細胞に脱分化し、次いで増殖することを証明するために、難聴に類似した状況が確立された。耳毒性アミノグリコシド抗生物質ネオマイシン(1mM)の投与後、全ての感覚有毛細胞の2/3が24時間以内に細胞死を被った。蝸牛の先端領域においてのみ、一部の感覚有毛細胞が生き残り、その数は初期損傷の結果として実験中にさらに減少した。培地からネオマイシンを除去した後、残っている支持細胞はさらに培養されることができた。
【0116】
次いでBrdUを本発明による化合物(5μM)と同時に培養培地に添加し、4日後、BrdUの取り込みによって増殖が定量化された。
【0117】
器官培養物に本発明による化合物N−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)を添加した後、BrdUの取り込みが最も遠い側方に向けられたダイテルス細胞において証明されることができた(図6B)。これはまた、内部感覚有毛細胞と関連する個々の内部支持細胞及び境界細胞に対して当てはまり(図6C)、それらの再生のための潜在的な前駆細胞であると考えられる。物質投与のないコントロール実験では、ダイテルス細胞、内部支持細胞及び内部境界細胞内へのBrdUの自発的な取り込みはなかった(図6A)。
【0118】
BrdU陽性細胞核の異なる形態は、完了した細胞分裂までの有糸分裂の様々な段階を示した。クロマチン凝縮は様々な核において観察できた(図6D,E)。同時に、BrdU陽性細胞核は、互いに極めて近くに近接して見い出された(図6E,F)。
【0119】
これは、本発明による化合物N−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)のために、支持細胞の細胞分裂による再生の意味における新しい細胞がコルチ器官の感覚上皮に形成されたことを意味する。
【0120】
(実施例D)生体内投与後の再生特性の証明
本発明による化合物の再生生物学的効果は成体のモルモットの生体内モデルでも同様に証明された。特に外部感覚有毛細胞の領域においてコルチ器官の感覚有毛細胞の損失をもたらす急性聴覚損傷が強い音によって起こされた。本発明による化合物N−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)は次いでミニ浸透圧ポンプ(Alzet(登録商標))から連続的に局所的に投与され、胆管造孔術によって蝸牛の鼓室階内に直接皮下移植された。ポンプでの物質の投与量は、外リンパにおいて予期される希釈効果を考慮して、200μMと比較的高い。
【0121】
投与は、2週間の続く待ち間隔を伴なって6週間にわたってなされた。並行して、BrdUが飲料水又はミニ浸透圧ポンプを介して投与され、コルチ器官中の増殖細胞を標識化した。
【0122】
コルチ器官の除去後、BrdU(細胞分裂)、ミオシンVI(感覚有毛細胞)、及びDAPI(核の染色)(図7)で、及びSox2(多機能支持細胞)で免疫組織化学的な三組の標識化を実施した。
【0123】
BrdU標識化支持細胞及び感覚有毛細胞は、音響外傷によって損傷されたコルチ器官の領域において示されることが好ましい。聴覚損傷あり/なしで物質投与なしの反対側のコントロール器官では、BrdU標識化された感覚有毛細胞は見い出されず、要するに、自然増殖についての既知の知見によれば、BrdU標識化細胞はほんの少ししか見い出せなかった。
【0124】
生体内の知見は、細胞分裂に基づく感覚有毛細胞の再生が本発明による化合物N−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)の投与によって成体動物であっても誘導されることができることを明白に示す。これは、感覚有毛細胞の再生によって内耳の難聴の原因の治療のための活性化合物としての本発明による化合物の驚くべき大きい潜在的な可能性を明示する。
【0125】
(実施例E)毒性
細胞培養、器官培養、及び生体内研究において、本発明によるアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドの毒性効果の兆候は、0.3μM〜200μMの検査された濃度範囲では見い出されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】マウスのコルチ器官からの幹細胞の単離及び培養。
【0127】
(A)内耳からの幹細胞は、出生後のコルチ器官の細胞を個別化し、なお存在する幹細胞を単離し、懸濁培養で選択的条件下でそれらを培養することによって得られることができる。これらの条件下では、球体が形成され、それは幹細胞マーカSox2(A′)を発現し、それは胎生期の幹細胞の多機能性及び分化された細胞からの多機能幹細胞の誘導において決定的な役割を有すると考えられる(Takahashi及びYamanaka,2006)。さらに、球体における核はBrdU(A′′)を取り込み、それは細胞の増殖を示す。
【0128】
(B)コルチ器官における個体発生時に検出されることもできる幾つかの幹細胞マーカは球体で発現される。陽性コントロール(pos)として、胎生期の発達日14.5のコルチ器官からのmRNAを付与した。ハウスキーピング遺伝子GAPDHに標準化すると、Jag1、ネスチン、Sox2及びNanogが形成された内耳において及びそこから単離された幹細胞において発現されることを示すことができた。
【0129】
(C)最適化された方法を使用して、現在出版されている文献(Oshimaら、2007;Sennら、2007)と比較して初期培養物から形成された球体の割合を二倍にすることができた。
【0130】
【図2】有毛及び支持細胞マーカの生体内及び生体外タンパク質発現プロフィール。
【0131】
(A)p27Kip1はコルチ器官の全ての支持細胞で発現される。内部又は外部の感覚有毛細胞はいずれもp27Kip1陽性ではない。上皮島内のp27Kip1発現を証明することが可能であった(A′)。
【0132】
(B)ダイテルス細胞の核のすぐ下のコルチ器官における及び内部支持細胞の領域における支持細胞のGFAP標識化。フィラメントのパターンは生体外でも見い出された(B′)。
【0133】
(C)E−カドヘリンは、柱細胞に対して側方に向けられた全ての支持細胞を標識化する。E−カドヘリンはまた、上皮島の膜に位置される(C′)。
【0134】
生体内で、ミオシンVIIA(D)、ミオシンVI(E)、及びカルレチニン(F)のような感覚有毛細胞マーカは内部及び外部感覚有毛細胞を確実に標識化する。全てのマーカはまた、生体外培養の個々の細胞において検出されることができる(D′,E′,F′)。
【0135】
生来の器官では、各場合の星印は3つの外部感覚有毛細胞及び内部感覚有毛細胞(常に右手側)をマークする。
【0136】
縮尺:生来のコルチ器官の写真において20μm(A−F)、細胞培養物において10μm(A′−F′)
【0137】
【図3】スクリーニング検定におけるSox2を発現する細胞の相対数。
【0138】
どの低分子量化合物が(分化コントロールのレベルに標準化された、細胞の脱分化のためのマーカとして)Sox2陽性細胞の割合の増加を誘導することができるかを調査した。
【0139】
七つの化合物がコントロールから有意に異なる(p<0.05,n=10)。
【0140】
【図4】スクリーニング検定におけるBrdU陽性細胞の相対数。
【0141】
BrdUの検出によって、どのくらい多くの細胞が一定期間内に細胞周期のS期に入ったことを定量化することができる。
【0142】
スクリーニング中、細胞はBrdUで5時間インキュベートされた。
【0143】
示されているものは、物質投与によって増殖するようにシミュレートされた全集団における細胞の割合である。
【0144】
八つの化合物は有意な増殖を誘導することができた(p<0.05,n=10)。
【0145】
【図5】N−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)(物質33)の投与量/活性分析。
【0146】
付着細胞において、誘導されたBrdU効果の投与量依存性がチェックされた。培養培地中の物質濃度が0.3μMから3μMに増加したとき、BrdU取り込みは有意に高いレベルに増加した(p<0.05,n=10)。より高い濃度では、BrdU取り込みはもはやさらに増加することができなかった。コントロール、即ち物質投与なしで匹敵する量のDMSOでの生体外培養からの細胞の集団はいかなる効果も媒介しなかった。
【0147】
【図6】器官培養モデルにおいてN−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)(物質33)によって誘導されたBrdUの取り込み。
【0148】
支持細胞の誘導された増殖の程度はBrdUの取り込みによって証明された。
【0149】
物質投与のないコントロールでは、ダイテルス細胞、内部支持細胞及び境界細胞においてBrdUの取り込みは観察されなかった(A)。本発明による化合物(3)(物質33,5μM)の投与後、BrdUは、側方に配向されたダイテルス細胞(B)中に、そして個々の内部支持細胞及び内部境界細胞(C)中に取り込まれた。
【0150】
BrdU陽性細胞核は有糸分裂の異なる段階にあるか、又は細胞分裂を完了していた(D,E,F)。
縮尺:20μm
【0151】
【図7】N−シクロヘキシル−2−[1−アミノ−2−(1H−インドール−3−イル)エチル]オキサゾール−4−カルボン酸アミド(3)の生体内での蝸牛内投与後の三つの標識化。
【0152】
成体のモルモットでの生体内実験では、本発明による化合物の再生効果は現実的な条件下(BrdUと並行してAlzet(登録商標)ポンプ(200μM)を使用した6週間にわたる投与(100mg/ml)、器官の除去、及び8.5週間後の染色)で証明された。
【0153】
示されているものは、ミオシンVI(感覚有毛細胞のためのマーカ)及びBrdU(細胞分裂のためのマーカ)で標識化された内部感覚有毛細胞である。細胞核はDAPIで標識化される(核染色)。
【0154】
BrdUでの標識化は、細胞分裂に基づく再生を示す。
【0155】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式のアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミド、又はその医薬的に許容可能な塩、立体異性体、立体異性体混合物、互変異性体もしくはプロドラッグ化合物、好ましくはプロドラッグエステルもしくはプロドラッグペプチド:

式中、XはO又はSを表わし、
YはC又はNを表わし、その場合、二つの原子は互いに異ならなければならず、
R2は水素またはアシルを表わし、
R1及びR3は同一であっても異なってもよく、枝分かれした又は直鎖の、置換又は非置換のアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基、シクロアルキルアリール基、アリール基、及び任意選択的にヘテロ原子を含むアリールシクロアルキル基からなる群から選択される置換基を表わし、R1は好ましくは(1H−インドール−3−イル)エチルを表わし、R3は好ましくはシクロヘキシルを表わす。
【請求項2】
下記式からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、又はその医薬的に許容可能な塩、立体異性体、立体異性体混合物、互変異性体、もしくはプロドラッグ化合物、好ましくはプロドラッグエステルもしくはプロドラッグペプチド:

【請求項3】
医療目的のために、好ましくは人間の様々な適応症のための薬剤及び獣医学のための薬剤として使用するための請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
再生促進活性化合物としての請求項1又は2に記載の化合物の使用において、高度な専門器官及び組織、好ましくは脳、心臓、骨格筋、特に好ましくは感覚上皮のものの損傷した組織に対する治療有効量の作用で、正常な有糸分裂後組織の内因性インサイチュ再生が、最終分化した細胞の脱分化、増殖及び続く再分化のような再生生物学的効果によって刺激されることを特徴とする化合物の使用。
【請求項5】
哺乳類の耳感覚上皮を再生するための再生促進化合物としての請求項1又は2に記載の化合物の使用において、治療有効量の作用で、コルチ器官において損傷されかつ失われた感覚有毛細胞の内因性インサイチュ再生が内耳における支持細胞の脱分化、増殖、及び続く再分化のような再生生物学的効果によって刺激されることを特徴とする化合物の使用。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のアミノアルキルオキサゾール及びアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドを製造するための方法において、オキサゾール又はチアゾールへの環化及びそれらの続くアミド化が、固相でアミド化される天然又は非天然アミノ酸で出発して又は溶液におけるBoc保護基化学を使用して実施されることを特徴とする方法。
【請求項7】
治療有効量の請求項1又は2に記載の少なくとも一種のアミノアルキルオキサゾール又はアミノアルキルチアゾールカルボン酸アミドの単独又は組み合わせ、任意選択的にさらなる再生促進活性化合物又は別の方法で治療のために関連する活性化合物、及びさらなる医薬的に好適な成分、例えば担体物質、補助剤及び添加剤、洗浄剤、アジュバントなどを含む医薬調製物。
【請求項8】
哺乳類の損傷した組織又は蝸牛への直接(局所)又は間接(全身を含む)投与のために好適な配合で、好ましくは溶液、懸濁液、スプレー、ゲル、ヒドロゲル、ローション、乳剤、ペースト、軟膏、又はクリームとして存在することを特徴とする請求項7に記載の医薬調製物。
【請求項9】
成分が、物理学的又は生物学的担体と混合されるか、及び/又は物理学的又は生物学的担体と溶解されるか、及び/又は物理学的又は生物学的担体と結合されることを特徴とする請求項7又は8に記載の医薬調製物。
【請求項10】
損傷した組織構造への治療有効量の直接又は間接投与による再生生物学に基づいて損傷した有糸分裂後組織と関連した哺乳類疾患の原因の治療のための医薬を製造するための請求項1又は2に記載の化合物又は請求項7〜9のいずれかに記載の医薬調製物の使用。
【請求項11】
蝸牛における損傷した組織構造への治療有効量の直接又は間接投与による再生生物学に基づいてコルチ器官における感覚有毛細胞の損傷及び損失後に哺乳類の聴覚の回復及び内耳難聴の原因の治療のための医薬を製造するための請求項1又は2に記載の化合物又は請求項7〜9のいずれかに記載の医薬調製物の使用。
【請求項12】
再生生物学に基づいて損傷した有糸分裂後組織と関連した人間及び動物の疾患の原因の治療のための方法において、治療有効量の請求項1又は2に記載の化合物又は請求項7〜9のいずれかに記載の医薬調製物が、損傷した組織構造に直接的に、好ましくは局所的に適用されるか、又は間接的に、好ましくは全身的に投与されることを特徴とする方法。
【請求項13】
再生生物学に基づいてコルチ器官における感覚有毛細胞の損傷及び損失後に人間及び動物の聴覚を回復するため及び内耳難聴の原因の治療のための方法において、治療有効量の請求項1又は2に記載の化合物又は請求項7〜9のいずれかに記載の医薬調製物が、好ましくは鼓室を経由して中耳への注射によって、内耳の丸窓又は卵円窓への付与によって、又は内耳への注射によって、蝸牛における損傷した組織構造へ直接的又は間接的に投与されることを特徴とする方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−518917(P2013−518917A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552297(P2012−552297)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000502
【国際公開番号】WO2011/095338
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512206895)イーエムシー マイクロコレクションズ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】